スウェーデンの今
スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員
 



レスリング84kg級の準決勝で大きなスキャンダルが起きた。スウェーデンの選手Ara Abrahamian(アラ・アブラハミアン)イタリアのAndrea Minguzziの対戦だった。第一ラウンド、第二ラウンドが終了した時点で、得点で見るとスウェーデンの選手が優勢だった。さて、次の第三ラウンドが勝負になる、とみんなが注目していた。そして、その前に短い休憩がとられた。

しかし、イタリアの監督が発した「俺たちの勝利だ」という声に、主審が反応し、第3ラウンドが始まるのを待たずして、それまでの得点をすべてくつがえし、イタリア選手の手を取って掲げ、彼の勝利宣言を発表したのだった。

全くわけの分からない判定であった。困惑のための沈黙がその場を一瞬のあいだ包んだが、すぐにスウェーデン選手「異議あり」の叫び声を上げた。止血のために頭に巻いていたテーピングを剥ぎ取り、会場に投げ捨てた。怒りに包まれた彼は、会場を歩き回り、罵声を発した。

彼の監督スウェーデン・レスリング協会の代表も審判陣のもとに駆け寄り、ビデオ録画による検証を求めた。しかし、それは受け入れられなかった。また、審判陣はイタリア選手が勝利することになった理由として、Abrahamianが不当なやり方で相手の手を押さえつけたため、と伝えた。しかし、スウェーデン側は、そのような行為は確認できなかった、といい、またそれが本当だったとしても、そのような僅かなミスで、試合全体がひっくり返ることは前代未聞だ、と反論した。


スウェーデン側はその後も、ビデオ録画の検証、および試合のやり直しを大会事務局に求めたが、取り合ってもらえなかった。レスリング競技の規則として、試合が終わってしまった後に「抗議」を提出するのは認められていないからだと言う。

結局、スウェーデンの選手Ara Abrahamian(アラ・アブラハミアン)は3位決定戦を制し、表彰台に上ることができたのだが、彼は突如としてある行動に出たのである。というより、そうすることで自分の不服を国際レスリング協会に示すことを予め決めていたようであった。何をしたかというと、彼は銅メダルを首に掛けてもらった直後、表彰台を降り、メダルを首から外して、レスリングのマットの中央に置き、会場を後にしたのである。表彰式の真っ只中のことであった。











彼はこの翌日、国際オリンピック委員会から事情徴収を受けた。そして、処分が昨日決まった。銅メダル剥奪、というものだった。しかし、彼は「自分のメダルは既に表彰式で放棄しているから、今さら関係ない」と意に介す様子はない。それに「自分のとった行動を後悔することはない」とも話している。

動画(日本からアクセスできるかは不明だけど)
――――――

日本の新聞では「投げ捨てた」とか「投げつけ」たと書かれていたが、そこまで激しいものではなく、むしろ「置き捨てた」という表現のほうが当てはまると思う。

読売新聞:銅メダル投げつけスウェーデン選手失格、メダルはく奪
朝日新聞:表彰式で銅メダル投げ捨てた選手、メダルはくだつ

では、何がスキャンダルだと考えられているのか、詳細は次回。(車の共同所有の話はその次回)


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コメント
 
 
 
レスリング (おじぃ)
2008-08-17 20:08:27
Yoshiさん

非常に悲しい出来事です。スキャンダルのだいたいの内容はあるスウェーデン在住の人から聞きました。選手の心情は計り知れないものがあると思います。詳細はYoshiさんのブログで確認したいと思います。

それと、日本の報道のいいかげんなこと。私は鵜呑みにして「興奮状態で投げ捨てた」ものと思っていました。しかし、Yoshiさん添付の画像を見てびっくり。「冷静に置き去った」ですね。

私はスウェーデン語のテレビ放送が理解できないので悔しいですが、スウェーデンではオリンピックがどのように報道されているのか非常に興味深いです。
 
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