goo

トラキチ酒場せんべろ屋 第15回

「おもやん。ビールや、ビール」
「どうしたん、きーこう。えらい機嫌悪いやんか」
「おもろないな。なんや阪神は、ええとこなしで広島に負けたやんか」
「え、あて?なんでもええ。唐揚げ、それでええ」
「しゃあないわな。攻走守、すべてにおいて広島の方が上やからな」
「ヒットは阪神の方が多いねんで」
「野球はヒット打ちゲームちゃうで、点取りゲームや。ヒット30本打っても0点やったら負けるねんで。ヒット1本でも1点取ったら勝つねんで」
「わかっとう。なんかむしゃくしゃするなあ。おもやん、ビールまだか」
「おもやんに当たったらあかんがな。ほらビールきたで」
「ごめんな。おもやん」
「さ、乾杯」
「なんに乾杯や」
「きのうの雨に乾杯や」
「きょうも雨やったらよかったのにな」
「んぐんぐんぐ。ぷふぁあ。阪神負けてもビールはうまいな」
「お、トメさん、どや就職は」
「お、せーやん久しぶり。知り合いに教えてもろた代書屋が、うまいことリレキショー書いてくれてな。うまいこといったわ」
「どこいっとたんや」
「鎌倉や」
「鎌倉に若い女の子の代書屋がおってな。多部未華子によう似たかわいい代書屋がおってな。そこで書いてもろたリレキショーが良かったんや」
「へー、あのおっさんの代書屋は」
「そら、おっさんより若いかわいい女の子の方がええやんか」
「阪神の話はどうなったんや」
「もうええやん。阪神は。トメさん、あんたもいっしょに飲も」
「そやな。就職いわいや」
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

エビチリパスタ


 麻婆パスタに続く、四川+イタリアンの第2弾。エビチリパスタである。エビチリはおいしいな。ワシが大好きな中華料理や。プリプリのエビにちょっとピり辛なソース。そのまま食ってもうまいし、ホカホカのご飯にのっけて丼にしてもうまい。だいたいやなあ。(むかし、こんなことゆうおっさんがおったな)白いごはんにあうもんは、麺パスタにもあうんや。両方とも炭水化物やしな。
 エビチリはいつものワシのエビチリや。パスタはショートパスタがええやろ。ペンネを使うた。うん。けっこうイケるやんか。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

卵白あんかけ炒飯


 今日のお昼は炒飯です。普通の五目炒飯ではなく、ちょっと豪華な炒飯にしましょう。豪華といっても見た目だけです。お金はあまりかかってません。
 まず、普通の炒飯を作ります。具は焼豚とネギです。焼豚は私の手作りです。ハムメーカーが出している市販のできあいの焼豚は、もひとつ私の口にはあいません。簡単です。豚バラ肉のかたまりを醬油と味醂で煮ます。片側30分、ひっくりかえして30分。このとき八角を入れておけば本格中華の香りがします。これを一晩おいといて、調理する直前に魚焼きグリルに入れて軽く焦げ目をつければOKです。
 さて、炒飯ができました。卵白あんにかかりましょう。卵白をときほぐします。卵黄は炒飯に使いました。低温の油に卵白を流し入れます。全部入れないで。卵白がフワッとしてきたら取り出します。別鍋に塩、砂糖で味をつけたスープを入れ火にかけます。そこに卵白を入れ、水とき片栗粉を加えてとろみをつけ、残りの卵白を回しいれて、お皿に盛った炒飯にかければできあがりです。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

前立腺風雲録 第18回

 大腸からの出血は止まった。憩室は一段落したといっていい。主治医の見立てである。毎日のようにおこなっていた大腸の内視鏡もしなくなった。治療の主眼は消化器から泌尿器へと移ったのである。
 常時留置カテーテルが尿道に挿入されたままだ。当初は痛く気持ち悪かったが、二、三日もするとなれた。尿は尿袋に自動的に溜まる。看護師が定期的にそれを捨てに来る。捨てる時、尿量も計る。
 尿量が減っている。不自然な状態だという。カテーテルを交換してから順調に尿が出るようになった。どうもカテーテルが詰まっていたらしい。カテーテルは入れっぱなしの時は違和感はあるが痛みはさしてない。ところが入れられる時は痛い。トラブルなく入れっぱなしの状態が続いて欲しい。
 尿の出が順調なのが二日ほど続いた。その日、午後から尿量が極端に減少した。夜になると、ほとんど袋に溜まらなくなった。下腹が張っているような気がする。深夜、これはまともじゃない。というので当直の医師がポータブルのエコーを持ってベッドまで来てくれた。エコーをかける。「コアグラ」が膀胱内のカテーテルに詰まっている。との診断。急きょ、カテーテルを抜く必要がある。その医師と看護師2人。3人がかりでゆっくりとカテーテルを抜く。大きな「コアグラ」ようするに血のかたまりが出てきた。そのあと大量の尿が。カテーテルが尿道か膀胱の内壁に触れて出血して、それがかたまったらしい。
 また、詰まるといけないので、もう少し太いカテーテルにしましょう。太めのカテーテルを入れられる。さすがに痛い。痛かったが、その後はコアグラが詰まることはなく、尿の出は順調になった。
 1週間たった。泌尿器科の受診。8階の病室から1階の泌尿器科外来まで、看護師が連れて行ってくれる。泌尿器科の受付で、小生を連れてきてくれた病棟の看護師から泌尿器科外来の看護師に引き渡される。そこでしばし待たされる。平日の午後ではあるがけっこう外来の患者が多い。小生のように、入院中の他科の患者も何人かいた。小生のように複数の疾病で入院している人はめずらしくないのだな。
 診察室に呼ばれる。常時留置カテーテルを抜かれる。これからは自己導尿しなさいといわれる。
 自己導尿。自分でカテーテルを尿道に突っこんで尿を排出するのである。なんか痛そう。それは、どれぐらいの期間やるのですかと聞く。衝撃的なことをいわれる。
 
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

トラキチ酒場せんべろ屋 第14回

「ははは。大笑いやな」
「なにが?」
「きょうの阪神の試合や」
「え、きょう、阪神試合あったんか」
「あったやんか。見てへんかったんか」
「見てたで。サンテレビで」
「セリーグ再開やんか」
「え、あれ試合か。ワシは広島の打撃練習かと思うたで」
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )

ミスターけしごむの仕事

「おはようございます」
「あ、杉谷さん、おはようございます。もう、いいんですか」
「勝手しましてすみませんでした。熱も下がりましたし、もうだいじょうぶです」
 杉谷は自分のデスクに座った。一週間ぶりである。インフルエンザで寝こんでいたとのこと。
 課長の大北は、この年上の部下に妙に気を使う。他の課員にはあれこれ指示を出すが、杉谷には指示は出さない。杉谷以外にも年上の部下はいるが、杉谷だけは特別扱いだ。かといって課長は杉谷をえこひいきしているのではなさそう。シカトしているのでもない。昼食や飲み会にも課長は杉谷も忘れず声をかける。
「金目電機です。けしごむ三ダースお願いします」
 出入りの文房具屋にけしごむを発注した。社内で使うけしごむの在庫管理と仕入れ。これが杉谷の仕事だ。肩書きは金目電機総務部総務課用度係係長。係長ではあるが部下はいない。
 日がな一日、社内の各所を回って、けしごむの在庫をチェック。といっても、けしごむなんてものはそんなに多量に消費するモノではない。月に一度発注するだけで充分間に合う。
 杉谷の担当はけしごむだけ。ボールペンや鉛筆などの文房具、プリンター用紙、カセットインクなどのパソコンのサプライ用品はあつかわない。ほんとうにけしごむだけである。こんな杉谷に「ミスターけしごむ」のニックネームがついたのは自然なことだ。
 関岡は営業部員。営業部と総務部は隣どおし。大北と関岡の席は背中合わせだ。二人は課長とヒラだが同い年同期入社だ。
「お疲れ」関岡と大北はグラスをあわせた。 会社から地下鉄でひと駅向こう。駅裏の狭い路地のつきあたりに、その居酒屋がある。会社の近くにも適当な居酒屋はあるが、そこは金目電機の社員が多く来ている。他の社員を交えた酒席ならば二人はその居酒屋を使う。二人だけであう時は、ひと駅先のこの居酒屋で飲む。
「今度はなんだ」大北が聞いた。
「きのう、四葉に納めたホーム監視用テレビなんやけどな。えらい欠陥があることが納品後にわかった」
「どんな欠陥だ」
「撮影範囲が狭い」
「どういうことだ」
「カメラの首が三〇度しか回らない。ほんとは一二〇度回るはずだ」
「それでは三分の一しか映せないじゃないか」「で、四葉にはばれたか」
「ばれてない。明日四葉の映像監視システム課の検収を受ける」
 四葉電機は製品を納品しただけでは、納品書に受領印を押してくれない。四葉が預かっているというかたちだ。受領書がないと請求書を受け付けてくれない。支払いも先延ばしになる。しかも製品は四葉の敷地内にあるから保管料を請求してくる。一刻も早く受領印をもらう必要がある。そのためには四葉電機の検収を受けなくてはならない。
「何が悪いんだ」
「カメラ取付台の首のベアリングの受け金具が仕様とは違うものが取り付けられている」
「受け金具の納品先は」
「作本金属」
「作本のミスか」
「発注ミスだ」
「発注者は」
「資材購買課の高来」
「明日までに処置は可能か」
「可能だ。受け金具を交換するだけだ。十五分もあればできる」
「で、どうする」
「会社としてはこのミスを無かったことにしたい。発注ミスの購買、それをそのまま取り付けた工作課、それを見逃した品管。購買課長、工作課長、品質管理課長、三人ガン首そろえて俺に頼みに来た。社長の耳に入れたくないそうだ」
「わかった。ミスすりゃけしごむで消せばいいんだ」

「課長、勝手しました」
「もういいんですか。杉谷さん」
「はい。腰痛もだいぶんマシになりました。私、阪鉄電車の呉影から通勤してるのですが、あの駅のホームの監視用カメラ、わが社製ですね」
「ミスターけしごむ」五年後には自分の会社を消してしまった。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

久しぶりに梅田へ出る

 久しぶりに大阪は梅田へ出る。月に1度はSFのお仲間との会合でで大阪へは出ているが、梅田はいつも通り過ぎるだけ。神戸の田舎者が梅田にやってくると、人の多さに頭がクラクラする。神戸の三宮はそれに比べると人が少なくていい。
 なにしに梅田まで来たかというと、目的地は阪急である。梅田の阪急には京都の有次がテナントを出店している。小生の愛用の包丁は有次である。自分でも研いでいるが、半年に一度は有次で研いでもらう。阪急が取り次いでくれるわけ。出来上がりは一か月後だ。
 阪急を出て、紀伊国屋をのぞく。古本屋をのぞこうと思って、紀伊国屋を出ると、なんと、古書の町がすぐそこに移動している。紀伊国屋の東側に古本屋があった。梅田の久しぶりにくると、様変わりしているもんだ。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )

とつぜん上方落語 第13回 代書屋

 こんなことゆうたから、今回は「代書屋」である。上方落語の噺家で、「代書屋」の代表的な演じ手といえば、3代目桂春團治師匠と桂枝雀師匠だろう。この両師匠の「代書屋」は対照的だ。春團治師匠のは、きっちりした端整な「代書屋」枝雀師匠は自由奔放で破天荒な「代書屋」だ。いわば、春團治師匠のがクラシックだとするならば、枝雀師匠はアヴァンギャルドジャズといったところか。
 春團治師匠のが代書屋にポイントが置かれているが、枝雀師匠は客にポイントが置かれている。その客の名も春團治バージョンでは、河合浅治郎。枝雀バージョンでは松本留五郎。河合は春團治師匠の本名。一方、枝雀師匠は本名は前田。松本はどこから来ているのだろう。聞いた話では前田少年のおじいさんの名前だとか。この松本留五郎氏、上方落語きっての名キャラクターだと小生は思う。ボケキャラ。江戸落語では与太郎。上方落語では喜六といったキャラがあるが、枝雀師匠の松本留五郎氏は、ただたんにボケというのではなく、ぶれないボケというか、芯のあるボケっぷりが爆笑をさそう。この留五郎のボケにふりまわされる代書屋の混乱困惑がおかしい。この松本留五郎バージョンの「代書屋」は弟子の桂雀々さんがしっかり受け継いでいる。生年月日をいうのに「セーネンガッピ」といい、生年月日をいうてください「セーネンガッピ、ヲ」と、後半、ポン菓子のポンを「ポン」と大きな声でいうのには、いつも大爆笑する。
 で、河合浅治朗氏の職歴だが、巴焼き、下駄の減り止め売り、ガタロ。松本留五郎氏は巴焼き、下駄の減り止め売りは同じだが、ポン菓子をやっていた。巴焼きは回転焼きあるいは姫路あたりでは御座候ともいう。小生も作ったことがある
ガタロ。ガタロ=河童のことでんな。これは知らない人が多いだろう。春團治師匠は「河川に埋没せる遺失物を回収して生計をたつ」といったはる。今の川はそんなことはないが、昔の川にはいろんなモノが川底に落ちいていた。川の中に胴までの長い長靴をはいて入って、川底をさらって、クズ鉄や金属を集めて売って生活してた人がいた。これをガタロという。
 ポン菓子。これは小生の子供のころによく来ていた。機械をリヤカーに乗せておじさんがやって来る。町の路地なんかに機械を据えて、火を入れる。そこに米を持って、おじさんに渡すと、おじさん、機械に米を入れて圧力を加えつつゴロゴロゴロと米を炒る。そして圧力を一気に抜く。ポンと大きな音がして、機械の中でポン菓子ができているというすんぽうだ。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )

寒い国から帰ったスパイ


監督 マーティン・リット
出演 リチャード・バートン、クレア・ブルーム、オスカー・ウェルナー

 ジョン・ル・カレの原作は読んでないが、この映画もなかなか面白かった。東西冷戦時代のベルリン。もちろんベルリンの壁はまだあった。そのベルリンの西側に駐留する英国情報部のリーマス。最近仕事をよくしくじる。今日も、連絡員を射殺された。どうも東側におる元ナチの大物スパイ、ムントがワザしているようだ。
 リーマスは情報部をクビになり、図書館でアルバイト。そこの司書の女で共産党員とねんごろになったりするが、自堕落な生活をおくり酒びたりのアル中。あげくは食料品店のオヤジをぶん殴って刑務所送りに。出所した彼に妙な団体が接触してくる。
 全篇にわたって軽い緊張感が漂っている。桂枝雀師匠なら「緊張と緩和」で大爆笑なのだが、この映画は「緊張」はあるが「緩和」はないので大爆笑はない。だいたいが、リーマスのやってることが、その業務の性質上、どれがホンマでどれがウソかよく判らん。敵をあざむき味方もあざむくため、全部ウソかもしれん。あるいはリーマスは見たとおりの男で、全部ホンマかも知れん。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

トラキチ酒場せんべろ屋 第13回

「小野、よう投げたな」
「そやな。岸VS小野、こりゃ負けやなと思とったけど、互角の投げ合いしたな」
「ピッチャーは互角やった。岸→松井、小野→高橋→ドリス。先発もリリーフも両軍互角やったな」
「そやな、守備力の差がでたな。糸原と藤田の守備力の差が勝敗の分かれ目やったな」
「おもやん、ビールお代わりや」
「ワシも」
「しかし、若い小野を盛り立ててやれよ。福留、あんなとこで併殺打うつなよ」
「しかし、これで交流戦勝ち越しや」
「ま、ええんとちゃうか」
「そやな。あしたから四日間お休みやな」
「うん、夜、どないして過ごしたらええねん」
「屁でもこいで寝てたら」
コメント ( 2 ) | Trackback ( 1 )

エビとアボガドの春巻き


 えー。春巻きでございます。こういう春巻きもおいしゅうございますが、具が一つか二つのシンプルな春巻きもいいもんです。春巻きの皮で何を包んでもいいんです。きまりはありません。
 今回はエビとアボガドを包みました。エビは殻をつけたままお酒で蒸しました。中華料理なので紹興酒を使いました。殻のままのほうがエビのおいしさが逃げません。殻をむいてエビの背に包丁を入れます。背ワタが残っていたら取りましょう。食べやすい大きさに切ります。
 アボガドは皮と種を取って、適当な大きさに切ります。醬油、マヨネーズで和えます。ワサビもちょっと入れましょう。アボガドにはワサビがよくあいます。
 あとは、エビとアボガドを春巻きの皮で包んで揚げるだけでございます。エビは火が通っていますし、アボガドは火を通す必要がないでの、高温でさっと揚げるだけでよろしゅうございます。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

厚あげ麻婆


 みんな大好き麻婆豆腐。ちょっとピリ辛で、プルプルお豆腐がおいしい。ビールのアテにもいい。しかし、なんといっても、麻婆豆腐がいちばんあうのが、白いご飯。炊きたてのほかほかご飯に、うま辛の麻婆豆腐をのっけて、んぐんぐとかっこむ。も、サイコーですな。
 この大好き麻婆豆腐にアレンジを加えてみた。豆腐を厚あげに替えた。作り方はいつもの小生の麻婆豆腐と同じ。
 うん。これはうまい。食感が豆腐のよりしっかりしてて、ご飯にはこっちの方があうのではないか。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

とつぜん対談 第101回 正月との対談

 えー、このとつぜん対談も今回で101回目。前回は、100回目を記念して100回さんに来ていただきました。これより200回目への第一歩を踏み出すことになります。で、今回のゲストをいろいろ考えたのですが、第1歩ということで、その年の第一歩、お正月さんに来ていただきました。夏にお正月?違和感を感じるかも知れませんが、冬、特に1月はとてもお忙しいので、お呼びするのは遠慮しました。6月になって半年たちました。もういいだろうと思ってお呼びしたしだいです。

雫石
 どうも、よく来ていただきました。

正月
 おう。ほんとは、私は夏でも忙しいんだ。たってというから来てやったんだ。

雫石
 もうしわけございません。

正月
 何が聞きたい。とっとと聞いて、とっととすませてくれ。私は忙しいんだ。

雫石
 なぜ、お正月さんが夏に忙しいのですか。冬なら判りますが。

正月
 ぶぅわっかもん。正月の仕事をなんと心得おる。

雫石
 うへへー。すみませんすみません。

正月
 いってみろ。私の仕事はなんだと思う。

雫石
 年の初めにやってきて、人々に新しい年の喜びを与えるのが、お正月さんのお仕事でしょう。

正月
 そうだ。で、新しい年はだれがつくってると思ってるんだ。

雫石
 え、新しい年って、なにもしないでも、勝手に向こうからやって来るんではないのですか。

正月
 たわけ。この大たわけもの。新しい年は私がつくってるんだ。

雫石
 へえー。新しい年はお正月さんがつくってるのですか。

正月
 あたりまえだ。そんなことは常識だろ。

雫石
 で、それで、あなたが夏も忙しいのと、なんか関係あんのんですか?

正月
 とことんバカだな、お前。次の新しい年は、その年の春から、つくり始めないと間に合わんのだぞ。

雫石
 新しい年って、そんなに手間がかかるんですか。

正月
 そうだ。お前のアホ頭でも判るように「新しい年工程表」を見せてやろう。

 3月 旧年の反省点の洗い出しと分析。
 4月 旧年から引き継ぐべき点、新年に新たに付与すべき点。モデルチェンジ        
    の検討。マイナーチェンか大幅なモデルチェンジか。
 5月 設計。図面作成。組み立て図面。部品手配表作成。それを元にコスト計算。
 6月 最高経営会議でGOサインが出ればプロジェクト始動。修正指示が出れば6月中に修正。
 7月 組み立て人員手配。部品入手。工場に新ライン設置。
8月 組み立て開始。
9月 組み立て。
10月 組み立て。
11月 組み立て完了。ユニット検査。
12月 総合検査。試験運転。据え付け工事。

 どうだ。新しい年はこうして製作されてるんだぞ。

雫石
 へえ。まるで工業製品ですね。新しい年って、お正月さんがチマチマ手作りしてるんじゃないですか。

正月
 それは19世紀までだ。20世紀になって世界は大きく変わった。新しい年も工場で造らなければまにあわんのだ。

雫石
 へー。よく判りました。

ピコピコピコ。携帯電話の音。

正月
 はい。私だ。ええ、ほんとか。判ったすぐ帰社する。

雫石 
 どうしたんですか。

正月
 最高経営会議で大幅な修正指示がでた。過労死ラインを大幅に超えて仕事しても、8月の組み立て開始に間に合わんかもしれん。

雫石
 間に合わなかったらどうなります。

正月 
 新年になっても新しい年がこなくなるぞ。

雫石
 うへえ。それはエライことですね。

正月
 今まで一度もそんなことはなかったろ。

雫石
 はい。

正月
 私が必死で新しい年をつくる工程を守ってるからだ。毎年毎年つな渡りだ。

雫石
 わかりました。どうかがんばってください。
 

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

トラキチ酒場せんべろ屋 第12回

「きょうはあつかったな」
「そやな。ワシ、職場でことし初めてエアコンいれたで」
「30℃こしてたもんな」
「あ、大将、ビールや。生中」
「ワシも生中」
「え、アテ。そやな串カツ盛り合わせ」
「阪神、なんやかんやいいながらも強いな」
「そやな。ごっつい強いちゅうことないけど、なんや知らんまに勝っとうな」
「あの強いパリーグの首位の楽天に勝ったんやかな」
「しかし、そう喜べんで、梨田さんになめられた」
「そやな去年まで甲子園で投げとった高校生を原口のホームランの2点だけにおさえられとったんやから」
「しかし、中谷。きのう5打数5安打やのに、きょう、チャンスでなんで1本が出えへんねん」
「こんなとき頼りになるのんはやっぱりベテランやな。さすが鳥谷やな」
「これで明日も勝ったら、交流戦5カード勝ち越しやな」
「うん。阪神と広島2チームでセリーグの面目をたもっとうな」
「そやな。面目まるつぶれなんが2チームおるけどな」
コメント ( 0 ) | Trackback ( 2 )

ツバキ文具店


 小川糸      幻冬舎

 代書屋。小生のごとき上方落語ファンにとっては、先代桂米團治師匠作の落語を思い浮かべる。落語の代書屋は、字が書けない人のために、履歴書を書く噺。多くの上方落語家が演じている。代表的なところでは、3代目桂春團治師匠と、桂枝雀師匠だろう。
 枝雀師匠の「代書屋」に出てくる松本留五郎氏は、上方落語きっての名キャラクターだと思う。えもいわれぬ天然ボケで、留五郎氏のとんちんかんな受け答えが代書屋を困らせて爆笑を誘う。あ、いかん。これは「とつぜん上方落語」のカテゴリーではなかったな。「代書屋」はいつか「とつぜん上方落語」でネタにしなくてはいかんな。
 落語の代書屋は中年のおっさんだが、この本の代書屋は20代の若い女性。テレビドラマでは多部未華子が演じていたから、そういうキャラである。多部が原作の主人公雨宮鳩子のイメージに良くあっていた。だから、春團治師匠や枝雀師匠の顔をイメージしながらこの本を読むと混乱するかも知れない。
 古都鎌倉で古い文具店を営む雨宮鳩子は、看板は掲げてないが代書屋である。今どき字の書けない人はいないから、落語の代書屋とは違う。鳩子はお手紙を代わりに書く代書屋である。代書屋というよりコピーライターといった方がわかりやすいか。小生も、コピーライターの時、仕事でクライアントの社長の手紙の代書をしたこともあった。
 ワケありな人がワケありな手紙の代書を鳩子に頼みに来る。友人が大切にしていた「権之助さんが亡くなった」お悔みの手紙を書いてくれ。離婚する妻への別れの手紙。かって愛した女性へ幸せを願う手紙。親友への絶縁状。などなど。鳩子は、手紙の紙から筆記用具、文字の書体まで考え、文案を練り、封筒にはる切手まで吟味して、依頼主に変わり手紙を投函する。鳩子は自分が書く手紙で、人が不幸になることは決してしない。たとえ絶縁状であっても離縁状、借金の断り状のような手紙でも、双方に幸せがもたらされ、なおかつ依頼主の目的が果たせるような手紙を代筆する。
 鳩子が接するさまざまな人、代書屋の先代の祖母、隣の親友バーバラ夫人、パン作りが得意な先生パンティー、口が悪いおじさん男爵、鏡文字が得意な5歳の女の子で鳩子の友だちで最年少のQPちゃん。そしては鳩子はポッポちゃんと呼ばれる。登場人物は全員ニックネームで呼ばれる。このような人たちとの交友を通じて鳩子は成長していく。
 舞台は古都鎌倉。鎌倉の風景、文物、お店がいっぱい出てきて、鎌倉に行きたい気になる。登場人物が全員、ものすごく善意の人。人の善意がうれしい。ひと時の癒しを求める人はぜひ、お読みなればいい。
 
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 前ページ