秋田魁新聞「医学部新設構想 地域医療への配慮必要」(http://www.sakigake.jp/p/akita/editorial.jsp?kc=20131124az)。<以下引用>
<東北地方への医学部新設構想が持ち上がっている。東日本大震災の復興支援として政府が検討しているものだが、医師会などは、教員となる医師の引き抜きによる地域医療への影響を強く危惧する。ただでさえ深刻な東北の医師不足。これに拍車を掛けるような形での新設は絶対避けなければならない。大震災により被災3県で医師不足が一段と深刻化したため、宮城県知事が東北への医学部新設を政府に要望、具体化に向け検討が始まっている。医師不足が社会問題化している東北だが、医学部新設を手放しで歓迎できるかというと必ずしもそうではない。医学部ができれば教員などとして約300人の医師が必要という。東北の大病院から勤務医らが引き抜かれると、地域医療に深刻な影響が出るのは必至だ。仮に秋田大医学部や付属病院から医師が引き抜かれれば、大学病院の医師そのものが不足。地域の中核病院から派遣医師が引き上げられ、地域医療の崩壊が進むことは誰の目にも明らかだ。日本医師会は医学部新設に当初から反対し、開設を求めていた東北市長会さえも、東北の医師は教員として採用しないよう配慮を求める要望書を文部科学相に先ごろ提出した。引き抜きによる地域医療への影響に強い危機感を抱いているのだ。東北の医師不足は数字からも明らかだ。2010年末の人口10万人当たりの医師数は、本県(203・8人)を含め東北6県はいずれも全国平均219・0人を下回り、地域偏在や診療科偏在も深刻化している。政府が1979年の琉球大を最後に医学部を認可せず、医師抑制策を続けたのが最大の原因だ。ところが高齢化などで医療ニーズが急増したため政府は方針転換。医学部の定員増を進め、総定員は79年当時から約1400人増え、現在は9千人を超す。定員100人の医学部なら14大学分増えたことになる。秋田大医学部もかつては定員100人だったが、地域枠などを含め120人まで増えた。仮に医学部ができても、一人前の医師になるまでは10〜20年という長い年月を要する。卒業生が東北にどの程度定着するかという問題もある。とはいえ東北の医師数はまだ絶対的に不足しているのも事実。一段と進む高齢化で医療ニーズはさらに増すはず。地域医療への影響を最小限に抑えるような教員確保策を施した上で、復興支援など災害医療、地域・へき地医療に特化した医師の育成という考え方があってもいい。医学部の総定員は増えており、将来人口、高齢化率の推計や必要医師数なども考慮する必要があるだろう。将来を見据えた医師養成だけでなく、地域偏在と診療科偏在という当面の課題改善にも力を注ぐべきだ。政府には東北の現状を踏まえた真の意味での地域医療の確保策を求めたい。>
文科省「地域の医師確保等の観点からの平成26年度医学部入学定員の増加について(通知)」(http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/iryou/1340778.htm)(http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/iryou/1340780.htm)では、地域の医師確保のための入学定員増として、「各都道府県につき原則10名を上限に増員を認める。」「入学定員増について、都道府県は、地域医療再生計画に当該入学定員の増加を位置付け、大学と連携し卒後一定期間の地域医療等の従事を条件とする奨学金を設定すること」「入学定員増を希望する大学は、別添の「平成26年度入学定員増員計画」を文部科学省に平成25年10月29日(火曜日)までに提出すること。」とあったが、医師不足を強調される都道府県ではどうだったのであろうか。地元大学の入学定員増ではなく、医学部新設にこだわる理由はいったい何であろうか。今年9月25日、日本医師会が会見で医学部新設に反対表明(http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20130925_12.pdf)し、9月30日には全国医学部長病院長会議も医学部新設に反対を表明している(http://www.m3.com/open/iryoIshin/article/181761/?category=)中で、医学部新設が容易に進まないように感じる方が少なくないであろう。一旦、医学部が新設されると、医学部の定員調整と違って、柔軟な対応がしにくくなる。歯科医師過剰(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%AF%E7%A7%91%E5%8C%BB%E5%B8%AB%E9%81%8E%E5%89%B0%E5%95%8F%E9%A1%8C)や法科大学院定員割れ(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B3%95%E7%A7%91%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E9%99%A2%E5%AE%9A%E5%93%A1%E5%89%B2%E3%82%8C%E5%95%8F%E9%A1%8C)等と同じ轍を踏んではいけない、と思う方は少なくないかもしれない。なお、国家戦略特区の官邸資料(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/kadaibetu/dai1/siryou5.pdf)p1で、「国際医療拠点の創設と連携して、医学部の新設」があったが、10月18日の国家戦略特区における規制改革事項等の検討方針案(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/dai10/siryou.pdf)p2では、「医学部の新設については、高齢化社会に対応した社会保障制度改革や全国的な影響等を勘案しつつ、国家戦略特区の趣旨を踏まえ、関係省庁と連携の上、検討する。」とされている。しかし、医学部新設や入学定員の増加よりもさらに即効性があって、全くお金を使わず、医師数を増やす方法が一つある。それは医師国家試験の合格率をアップすることである。第107回医師国家試験は、受験者数8569人で合格率 89.8%(http://www.tecomgroup.jp/igaku/topics/107.asp)で、7696人の医師が誕生したが、4年前の第103回の合格率91.0%であれば、あと約100人の医師が増えていた。これは医学部一校分に相当する。安易な方法と批判されるであろうが、例えば、初期研修の充実(研修達成項目の厳格化)等でカバーできないものであろうか。
<東北地方への医学部新設構想が持ち上がっている。東日本大震災の復興支援として政府が検討しているものだが、医師会などは、教員となる医師の引き抜きによる地域医療への影響を強く危惧する。ただでさえ深刻な東北の医師不足。これに拍車を掛けるような形での新設は絶対避けなければならない。大震災により被災3県で医師不足が一段と深刻化したため、宮城県知事が東北への医学部新設を政府に要望、具体化に向け検討が始まっている。医師不足が社会問題化している東北だが、医学部新設を手放しで歓迎できるかというと必ずしもそうではない。医学部ができれば教員などとして約300人の医師が必要という。東北の大病院から勤務医らが引き抜かれると、地域医療に深刻な影響が出るのは必至だ。仮に秋田大医学部や付属病院から医師が引き抜かれれば、大学病院の医師そのものが不足。地域の中核病院から派遣医師が引き上げられ、地域医療の崩壊が進むことは誰の目にも明らかだ。日本医師会は医学部新設に当初から反対し、開設を求めていた東北市長会さえも、東北の医師は教員として採用しないよう配慮を求める要望書を文部科学相に先ごろ提出した。引き抜きによる地域医療への影響に強い危機感を抱いているのだ。東北の医師不足は数字からも明らかだ。2010年末の人口10万人当たりの医師数は、本県(203・8人)を含め東北6県はいずれも全国平均219・0人を下回り、地域偏在や診療科偏在も深刻化している。政府が1979年の琉球大を最後に医学部を認可せず、医師抑制策を続けたのが最大の原因だ。ところが高齢化などで医療ニーズが急増したため政府は方針転換。医学部の定員増を進め、総定員は79年当時から約1400人増え、現在は9千人を超す。定員100人の医学部なら14大学分増えたことになる。秋田大医学部もかつては定員100人だったが、地域枠などを含め120人まで増えた。仮に医学部ができても、一人前の医師になるまでは10〜20年という長い年月を要する。卒業生が東北にどの程度定着するかという問題もある。とはいえ東北の医師数はまだ絶対的に不足しているのも事実。一段と進む高齢化で医療ニーズはさらに増すはず。地域医療への影響を最小限に抑えるような教員確保策を施した上で、復興支援など災害医療、地域・へき地医療に特化した医師の育成という考え方があってもいい。医学部の総定員は増えており、将来人口、高齢化率の推計や必要医師数なども考慮する必要があるだろう。将来を見据えた医師養成だけでなく、地域偏在と診療科偏在という当面の課題改善にも力を注ぐべきだ。政府には東北の現状を踏まえた真の意味での地域医療の確保策を求めたい。>
文科省「地域の医師確保等の観点からの平成26年度医学部入学定員の増加について(通知)」(http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/iryou/1340778.htm)(http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/iryou/1340780.htm)では、地域の医師確保のための入学定員増として、「各都道府県につき原則10名を上限に増員を認める。」「入学定員増について、都道府県は、地域医療再生計画に当該入学定員の増加を位置付け、大学と連携し卒後一定期間の地域医療等の従事を条件とする奨学金を設定すること」「入学定員増を希望する大学は、別添の「平成26年度入学定員増員計画」を文部科学省に平成25年10月29日(火曜日)までに提出すること。」とあったが、医師不足を強調される都道府県ではどうだったのであろうか。地元大学の入学定員増ではなく、医学部新設にこだわる理由はいったい何であろうか。今年9月25日、日本医師会が会見で医学部新設に反対表明(http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20130925_12.pdf)し、9月30日には全国医学部長病院長会議も医学部新設に反対を表明している(http://www.m3.com/open/iryoIshin/article/181761/?category=)中で、医学部新設が容易に進まないように感じる方が少なくないであろう。一旦、医学部が新設されると、医学部の定員調整と違って、柔軟な対応がしにくくなる。歯科医師過剰(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%AF%E7%A7%91%E5%8C%BB%E5%B8%AB%E9%81%8E%E5%89%B0%E5%95%8F%E9%A1%8C)や法科大学院定員割れ(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B3%95%E7%A7%91%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E9%99%A2%E5%AE%9A%E5%93%A1%E5%89%B2%E3%82%8C%E5%95%8F%E9%A1%8C)等と同じ轍を踏んではいけない、と思う方は少なくないかもしれない。なお、国家戦略特区の官邸資料(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/kadaibetu/dai1/siryou5.pdf)p1で、「国際医療拠点の創設と連携して、医学部の新設」があったが、10月18日の国家戦略特区における規制改革事項等の検討方針案(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/dai10/siryou.pdf)p2では、「医学部の新設については、高齢化社会に対応した社会保障制度改革や全国的な影響等を勘案しつつ、国家戦略特区の趣旨を踏まえ、関係省庁と連携の上、検討する。」とされている。しかし、医学部新設や入学定員の増加よりもさらに即効性があって、全くお金を使わず、医師数を増やす方法が一つある。それは医師国家試験の合格率をアップすることである。第107回医師国家試験は、受験者数8569人で合格率 89.8%(http://www.tecomgroup.jp/igaku/topics/107.asp)で、7696人の医師が誕生したが、4年前の第103回の合格率91.0%であれば、あと約100人の医師が増えていた。これは医学部一校分に相当する。安易な方法と批判されるであろうが、例えば、初期研修の充実(研修達成項目の厳格化)等でカバーできないものであろうか。