ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)

映画、旅、その他について語らせていただきます。
タイトルの由来は、ライプツィヒが私の1番好きな街だからです。

「と学会」の会長だった山本弘が、脳梗塞になり長期入院をしていたとのこと

2018-10-24 00:00:00 | Weblog

「トンデモ本」関係や、オカルト批判系の本しか読んでいない私がこんな記事を書くのもどうかかもですが、「と学会」の会長だった山本弘が、脳梗塞で入院していたとのことですね。こちらのブログさんで知りました。その記事が発表された日に知ったので、つまり10月19日金曜日です。私がこの記事を書いている10月20日時点で、最終更新日が19日になっています。私がブログさんからリンクしたのが19日夜ですから、この時点で19日の更新分は読むことができました。

それでかなり深刻な状況のようですね。記事の題名は、

>実録・プロ作家が語る感動と笑いとちょっぴり深刻な闘病生活

とありますが、ざっと読んだ限りでは、とても「ちょっぴり」なんていうレベルではありません。最初の部分を引用します。

>知らない人が多いと思うけど、僕は5月10日から9月5日まで病気で入院していた。病名は脳梗塞。
 文章が書けなくなり、絶望のあまり死を望んだこともあるが、今では立ち直り、このようにパソコンで文章を打てるようになっている。だが、かつてのように早くは打てない。この文章にしても、ほんの1ページを打つのに何時間もかかっている。
 ツイッターをやっている方なら、僕がこの数ヶ月、他の人のツイートにリツイートするばかりで、僕自身の文章をほとんど書いていないことにお気づきかと思う。言いたいことは山ほどあるのだが書きたくてもできないのだ。スマホでほんの2、3行のコメントを打ちこむでさえ、今の僕にとっては重労働なのである。
 しかし、いつまでも引きこもってはいられない。自宅でリハビリを続けながら、少しずつ、書くペースを上げていきたいと思う。
 そこでこの場では、リハビリの意味で僕の闘病生活を書いてみたいと思う。闘病生活と言っても、暗いものにはしたくない。この病気についてよく知らない人たちに知ってもらうため。そして何より、僕と同じ病気で苦しんでいる人にとっては、心の支えになるものにしたいと思っている。

 なお、前述のように、今の僕は長文のメールは書けない。質問をされても、お答えできないので、ご了承お願いしたい。

4か月弱入院したというのですから、相当な重症というものでしょう。ツイッターの話は上に書いてありますが、彼のブログも、この記事を執筆している10月20日現在で、4月23日付の記事が最終更新になっています。彼は、5月10日に、自宅近くの仕事場で気分が悪くなり、自宅になんとか戻ってきたのですが、自宅前で倒れてしまい、やっとのことで自宅に電話を入れ(彼は、この行動について

>そうして玄関先で一時間ほど倒れていたと思う。その時、ふと名案を思いついた。僕のポケットにはスマホがある。これで自宅に電話をかければいいではないか。

(もっと早く思いつけ、と言いたくなるが、当時の僕はそれほどまでに知能が低下していたのだ)

書いています。「知能」というより「判断能力」とでもいうべきものじゃないのと考えますが、そのあたりはともかく)、救急車に搬送されて、 吹田市の国立循環器病センターにかつぎこまれます。その後別の病院に転院しますが、彼は、自分の置かれた困難な状況に苦悩します。

運動能力ももちろんだが、他人とのコミュニケーションがとれなくなったことが最大の痛手だった。

 脳梗塞というものをよく知らない人にとってはよく分からないかもしれない。意味不明の言葉を一方的につぶやくだけの人を見て、知性が失われたと思うかもしれない。中にはそうした事例もあるのかもしれないが、だが僕が体験した事例に関する限り、そんなことは断じてない。

 この病気の犠牲者は、他人の喋っている内容をすべて理解できるのだ。ただそれに対して正しく反応することができない。答えようにも、口から出るのは何の意味もない戯言なのだ。

 たぶん人にとって脳の中の重要な回線だけが断線してるんだろう。

 喋る言葉が無理ならネット上に流れるメッセージならどうか。僕も最初、そう思った。文章なら正しく読み取ってくれるのではないかと。

 げんに僕の言語機能に異常は見られない。病院のデイルームに置いてある新聞や女性雑誌の記事、妻が買ってきてくれた『日経サイエンス』(僕は毎号読んでいる)の専門的なニュース記事なんかにしても、読み取るのに何の苦労もいらなかった。発音できないだけで。

 妻に頼んで愛用のポメラ(キングジムの小型文章作成機械)を持ってきてもらった。いつも持ち歩き、喫茶店などで小説の下書きをするのに重宝しているマシンだ。さあ、これで言葉など喋らなくても関係ない。自由に大勢の人と話ができるぞ……。

 などと考えていたら甘かった。

 僕はポメラを自由に使いこなせると思いこんでいた。病気になる前はあんなに自由に使っていたじゃないか。何も変わりがあるはずはないと。

 違っていた。大違いだった。

 僕はポメラのキー配列を完全に忘れ去っていた。

「配列を」「忘れ去った」という言葉すら打てないのだ。

  記憶喪失というのとは違う。僕はたとえば現住所は知っている。リハビリの人に「ヒントは、吹く……」と言われたら、「あっ、吹田市」と即座に答えられる。だから「吹田市」という地名を忘れたわけではない。だがノーヒントで「住所は」と訊ねられると答えられない。何て言ったっけ。喉元まで出てるのにと。

(今も思い出すまで一時間近くかかった)

 脳の中の「住所」のファイルは無事なのだが、それにアクセスできないのだ。おそらく「吹田市」という単語は、普段、使ってはいるが発音はしていないので、文字としては認識してはいない。文字として認識していない言葉は、読めはするが書けないのだ。

  住所だけではない。他にも知っているはずなのにアクセスできない情報は無数にあった。

 たとえば僕は何年も前からから「アシオス」という会の熱心な会員である。超常現象を科学的かつ懐疑的なスタンスで研究している団体で、これまでに大震災に関する未来予知、超能力、UFO、未知動物などについての著書にかんする本をたくさん出している。(あいにく本物の現象はまだひとつもない)

 その僕がなぜか「アシオス」という名称をど忘れしてしまった。

「何だっけ。確か名前の中にCとBという字が入ってるんだよなあ……」

 と考え込んでしまう。

(ASIOSのスペルにはCもBも含まれていなかった)

ということですから、物書き稼業としてはまさに致命的でしょう。今後どれくらい回復するのか、かつてと同じくらいかそれ以上の執筆ができるのか、心もとないところがありますが、脳梗塞というのは大変な病気だなと改めて思います。Wikipediaにも、

日本における患者数は約150万人で、毎年約50万人が発症するとされ、日本人の死亡原因の中で高い順位にある高頻度な疾患である。また、後遺症を残して介護が必要となることが多く、寝たきりの原因の約3割、患者の治療費は日本の年間医療費の1割を占めており、福祉の面でも大きな課題を伴う疾患である。

とあるくらいです。田中角栄氏もこれで倒れて事実上政治的な力を失いましたし、首相在任時に脳梗塞で倒れた小渕恵三氏は、Wikipediaによれば

>2000年(平成12年)4月2日に脳梗塞を発症した。実はこの前日、連立与党を組んでいた自由党との連立が決裂しており、4月2日午後、政権運営がより困難になったと思われるこの緊急事態について記者から質問されると小渕はしばし答弁できず、無言状態から言葉を出すのに10秒前後の不自然な間が生じていた。これは一過性脳虚血発作という一過性の脳梗塞の症状と考えられており、梗塞から回復したときに言葉を出すことができたとされる。

元々小渕には心臓病の持病があり、それに加えて首相の激務が脳梗塞を引き起こしたと考えられている。通常執務終了後、総理大臣公邸に戻ってもおびただしい数の書類、書籍、新聞の切り抜きに目を通し、徹夜でビデオの録画を見るのが普通で、一般国民にまでかける数々のブッチホンを始め、休日返上で様々な場所に露出するスタイルや、外相時代から引き続いて外遊を多くこなしたことも健康悪化に拍車をかけた。介護保険施行日の4月1日に小渕と介護施設で開かれたセレモニーに出席した厚生大臣丹羽雄哉に「最近、言葉が出てこないことがあるんだよ」と言ったと言う。

とのこと。大島渚氏も、やはり脳梗塞に倒れてからは、大変な苦労をしていました。

そう考えると、山本も大変でしょうが、そして安易に私が「がんばってください」というのもどうかですが、やはりぜひリハビリに励んでほしいと思います。彼の、疑似科学への突っ込みは好きなので。

鋭い切れ味の、山本の文章を再び読める日を期待して、この記事を終えます。

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