ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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米国債投資のチャンス到来、なのに愚かな日本の生保

2023年02月26日 | 米国債への投資

  米国債10年物金利が4%に接近していますね。また投資チャンス到来です。

  私は昨年10月21日に、「150円でも米国債は買いだ」という投稿をしていました。その時の金利は約4%で、10年後のブレークイーブン為替レートは100円でした。

  現在の金利は3.94%と4%に接近しています。しかし為替レートは137円ていどですからそのときよりさらに有利で、ブレークイーブンもより低下しています。その高金利をめがけて「世界のマネーが米国債に集中」というニュースがありました。23年2月21日付、日経新聞のニュースです。

タイトル;世界のマネー米国債集中

引用

世界の投資マネーが米国債に押し寄せている。米国外から米国債への資金流入は2022年に過去最大の規模となった。米連邦準備理事会(FRB)の利上げで投資妙味が増し、長期投資家やオイルマネーなどの資金流入が目立った。23年も積極的な投資が見込まれる。

米財務省の国際資本統計によると、米国外勢による22年の米中長期国債の買越額は世界全体で7500億ドル(約100兆円)と、22年の中長期国債の発行額の約2割に相当する。これまで買越額として最大だった10年を500億ドル上回り、12年ぶりに過去最大を更新した。

米国債に資金が流入した一因は投資妙味が増したからだ。長期金利の指標となる10年物国債利回りは21年末の1.5%から22年末の3.8%まで上昇(債券価格は下落)した。債券運用では債務不履行(デフォルト)に陥らなければ、購入時点の価格で満期まで保有した場合の利回りが決まる。生命保険会社や年金基金など満期保有を前提とした投資家のマネーが利回り水準が切り上がった米国債に流入している。

引用終わり

 

  リスクと金利を比較すれば、米国債に世界のオカネが集中するのは実に妥当な投資行動です。しかしだからといって金利は高いままなので、米国債投資を考えている方には依然として大きなチャンスが続いています。

 

ところが同じ日の同じ日経新聞では、正反対のニュースが流れていました。

2023/2/21付日本経済新聞

タイトル;生保、損失覚悟の外債売却
サブタイトル;昨年の売越額11兆円、05年以降最多、 為替ヘッジコスト重く


引用

生命保険会社が外国債券の売却を急いでいる。米ドルなど為替リスクをヘッジ(回避)するコストが上昇し、実質利回りを食い潰しているためだ。2022年12月単月の売越額は2.2兆円強と統計を遡れる05年以降で最高で、通年でも11兆円強と最も多かった

生保は外債投資の際、為替リスクをとる場合とそうでないときがある。足元で売却を進めているのが為替リスクを抑えたヘッジ外債だ。第一生命保険は22年4~12月に約2.7兆円分を純減させた。重本和之・常務執行役員は「ヘッジ外債の(実質)利回りがどんどんマイナスになり、売却額は当初考えていたより大きくなった」と話す。

主要生保12社の22年末の外債含み損は1兆円弱。その3カ月前は4600億円強の含み益で、外債の含み損益が急速に悪化している。

背景にあるのは為替ヘッジコストの急上昇だ。米ドル円の3カ月物は21年12月下旬の0.3%台を底に一本調子で上がり、22年末には4.9%台をつけた。ヘッジコストは異なる通貨間の短期金利差で決まる。急ピッチの利上げを進める米連邦準備理事会(FRB)と大規模な金融緩和を続ける日銀との政策の方向性の違いが反映された格好で、現在は5%台に乗せている。ユーロでもヘッジコストは上昇傾向にある。

ヘッジコストを引いた実質利回りの低下により、損失を覚悟する売却が増えてきた。住友生命保険は22年4~12月期決算で有価証券の売却損を2290億円計上した。前年同期の26倍で、多くが外債とみられる。日本生命は10倍の6616億円、かんぽ生命保険も8倍の1435億円を売却損として計上した。

引用終わり

 

  生保はドルをヘッジをしているためにチャンスを逃す愚かな投資をしています。この場合のヘッジとは、将来のドル安円高に備えて、投資しているドルをスワップなどでヘッジしていることを指します。それにはコストがかかるのです。

 

  ここへきての生保の行動の愚かさは、2重の愚かさになります。一つは米国債金利が上昇していると、当然米国債価格は下落しますので、最悪の時期に売却することになる。そして、金利高こそ米国債投資の絶好のチャンスなのに、ヘッジ付投資しか考えない愚かな生保は、そのチャンスで逆に売っている。なので、為替と金利の両方で愚かな行動と言えるのです。

  では何故これほどまでに愚かな投資をしているのでしょうか。

  その答えは私の著書「証券会社が売りたがらない米国債を買え」を読んでいないから。そしてついでに私のブログも読んでいないからです(笑)。

 

  このブログの読者の皆さんは、おおむね私が買いサインを出したときに投資をし、生保のようにドルをヘッジなどしません。というより、個人が債券の為替ヘッジなどできないからです。

 

  その結果、みなさんは大いに利益を享受しているはずです。私の最初の著書の結論は、「金利は為替に勝てる」というものでした。そしてその証左として、著書が出版された2011年まで、30年間、20年間、10年間の3とおりで米国債に投資をしていると、結果はどうだったかを数字で示しました。

 

1982年から2011年までの30年間の投資結果;ドル金額は100ドル→2347ドル、約24倍になりました。その間ドルは238円→83円とわずか3分の1になってしまいました。しかし円に戻した場合の元金は24÷3=8倍となっているのです。債券投資で8倍とは、驚きのパフォーマンスです。同様に20年では2.8倍、10年でも1.6倍になっています。金利は為替に勝ったのです。

 

  生保の運用者が私の本を読んでいれば、為替をヘッジするなどというおバカなことをしないでしょうし、金利が上がって価格が下落した現時点で米国債を売却するなんておろかなこともしないで済みます。

 

  生保も愚かなら一方で日経新聞もおろかです。なぜなら、

「世界のマネー米国債に集中」という記事と「生保が損失覚悟の外債売却」というニュースを同じ日に出し、生保の愚かさの指摘をしていないのですから。

 

  それぞれの担当記者はともかく、統括している編集長は何を見ているのか。

 

  喝―つ!

 

コメント (11)    この記事についてブログを書く
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11 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (吉田)
2023-02-28 21:08:01
林先生お疲れ様です。

今回は、昨年秋より米国債を買い進めて参りましたが、秋からの3回目の金利上昇に驚いております。それだけアメリカのインフレが深刻なのでしょうか。
明日、更に今持ってる株を米国債、社債に変えようとしております。
為替が130以下のときにドル転し、今買うというようなワザができたら嬉しかったのですが、欲張らないということでしょうか。

いくつか疑問が生じました。今更ではありますが、米国債の購入時の手数料です。証券会社により自由に決めていると思われますが、一説によれば購入価格の7%までいくというウワサもありますが、真偽不明です。社債は更に秘密なのでしょうか。

また、これ以上の米国債の利回り上昇は、政策金利上昇に伴い生じるのか、今がピークなのか、興味があります。

あと、我が日本国の利上げが新日銀総裁によってなされるのか、そのときに国債価格は暴落するのか、経済はどうなるかということにも興味があります。

いずれにしましても、米国債はじめドル建て債券は、株のように毎日毎日株価にヤキモキせずにすみ、本当に良かったと思っております。

ありがとうございます。😄
Unknown (吉田)
2023-03-01 10:14:15
追加で質問です。
林先生にではなく、ブログを見てる米国債に関心のある方々に、もしお時間あればと思います。

米国長期利回りは、1940年に2%だったものが、戦後一貫して右肩上がりとなり、40年間かけて、1981年に16%となりました。そこを頂点として、それ以降の40年かけて、2%からゼロとなっております。米国長期債利回り100年のグラフを見ていただけたらと存じます。キレイに40年間で線対称の三角形のグラフになります。

今後、再び長期的に、場合によっては数10年間利回りが上がっていくと、あくまで予想程度にも思えますが、皆様のご意見やお考えは如何ですか。
私は、仮にそうなったとしても、それに伴いドル高となることから、現時点は買いと判断してます。
どなたか見識ある方のご意見があれば嬉しいです。
吉田さんへ (林 敬一)
2023-03-01 15:42:45
吉田さんへ

ご質問にお答えします。

>米国債の購入時の手数料です。証券会社により自由に決めていると思われますが、一説によれば購入価格の7%までいくというウワサもありますが、真偽不明です。社債は更に秘密なのでしょうか。

米国債の手数料は購入価格に含まれていますので、それ以上の手数料はかからないことはご存知だと思います。また償還まで保有して償還を迎えれば価格は100で戻りますので、それ以上の手数料はかかりません。

では、実際に証券会社は売却時にどれほど乗せているのか、というのが吉田さんの質問の趣旨だと思います。

価格への上乗せ率は、一律で決まっていません。債券市場が現在のような下落基調であれば、証券会社は保有高を減らしたいので早く売るために安く出す、つまり利率は高くなります。上昇基調であれば逆です。

しかし事はさほど簡単ではありません。実際には保有している債券のほとんどにヘッジが掛けられていますので、下落してもさほど痛手は被らないようにしてあります。

私が証券口座を持つ友人に、証券会社に以下の質問をさせてみました。
「買った米国債をすぐ売ったら、いくら損するの?」という質問です。
答えは「およそ4%程度です」でした。つまり片道では2%程度だとのこと。それも金利環境によるという条件付き回答です。

証券会社も横にかなり多くの競争相手がいますので、7%などという手数料を取っていたら、相手にされないと思います。誰もがネットである程度の比較が可能ですから。

社債は「証券会社がどの程度売りたいか」に大きく依存しますので、一概には言えません。


>また、これ以上の米国債の利回り上昇は、政策金利上昇に伴い生じるのか、今がピークなのか、興味があります。

私も知りたいですし、世界の投資家も知りたいでしょうが、神のみぞ知るでしょうね。

>あと、我が日本国の利上げが新日銀総裁によってなされるのか、そのときに国債価格は暴落するのか、経済はどうなるかということにも興味があります。

私も興味があります。

超長期のトレンドも、私には競馬予想程度の話しかできません。

決してちゃかしているのではありません。あしからず
Unknown (吉田)
2023-03-01 18:05:33
林先生、
早速のご教示ありがとうございます!

米国債の売買手数料は、片道おおよそ2%程度という理解でしょうか。その程度ならば常識的な範囲と思います。社債はやはりブラックボックスといいますか証券会社の都合になるのですね。

今後の米国金利、そして日本国債などのこと、先生ほどの専門家をして神のみぞ知るということは、そういうことなのでしょう。
こうなると決めてはかかれない、ということと理解できました。あらゆる可能性を想定したいと思います。

今後ともご教示いただけましたら幸いです。
米国債の再投資 (救われた投資家)
2023-03-04 09:22:47
林先生、ご無沙汰しております。

私は林式の資産運用で自分年金を完成し、2018年から毎年60,000ドル相当の償還を受け生活をしております。
税引き後の手取り額は異なるものの、想定外の誤算として、ドル高で自分年金を使い切れません。
そこで、昨年に余剰金を残存2年ほどのゼロクーポン債を3.88%で購入しました。金利上昇傾向の為、、短期債が良いとの林先生の助言に従いました。

余剰金はドル高で更に増える傾向なので、更なる再投資を考えております。
そして、自分年金の余裕から次は高い利回りの残存10年位を狙っております。

米国債の償還は全てドル償還で、為替を気にすることがないこと、償還分は米ドルMMFに入れて金利も得られ、MMFから直ぐに米国債を買付できる利点もあります。
そして最近気が付いたのですが、MMFの配当が恐ろしいことになっております。3.905%です。

益々、再投資のハードルが低くなっております。

誰もが3.9%の金利を得ながらじっくりと米国債投資のチャンスを狙える絶好の時期であることに気付きましたのでコメント致しました。
母親の運用結果 (救われた投資家)
2023-03-04 22:36:09
林先生へ

母親の分の報告を忘れておりました。

母親は生活費の足しにと、384,000ドルを利付米国債で運用、今とは違い僅か1.625%でしたが、日本の金融機関の低利とは異なり、大変喜んでおりました。
その米国債は22年8月15日に償還、再投資は私と同様に金利上昇時ですので、24年5月15日償還の短いものにしました。金利は2.5%です。
それでも、金利が良くなりドル高と合わせて、以前の2倍の円ベースでの金利を享受して一層喜んでおります。

短期かつ私より短いものにしたのは、米国の利上げが落ち着き、しばらくは同程度の金利を維持するとの見方から償還の頃は10年債の高金利も見込めるとの判断からです。
仮に5%を享受出来れば、生活費の足しではなく生活費を全て賄うことが可能で母親の資産を取り崩さなくて済みます。
私への相続を見込んだものではなく、今年80才の母親が都内の老舗施設に入所しても困らない金額を目減りすることなく残せることを期待したものです。
当然に米国債の流動性から、いつでも現金化出来る安心も手に入れることが出来ました。

親子共々、完璧な老後設計が出来ました。
林先生には感謝以外の言葉が見つかりません。
大変ありがとうございました。
救われた投資家さんへ (林 敬一)
2023-03-05 10:03:13
お久しぶりです。

>親子共々、完璧な老後設計が出来ました。
林先生には感謝以外の言葉が見つかりません。
大変ありがとうございました。

この言葉、私事のようにうれしいです。
救われた投資家さんの長期を見据えた投資が大成功だと聞いて。
その上、お母様のことも報告いただき、ありがとうございます。
確かお母様は低い金利で米国債投資を始めたのに、投資をした直後から安寧な日々を送れるようになって喜んでいる、と投稿されていましたよね。

>私は林式の資産運用で自分年金を完成し、2018年から毎年60,000ドル相当の償還を受け生活をしております。
税引き後の手取り額は異なるものの、想定外の誤算として、ドル高で自分年金を使い切れません。

自分年金を使い切れないとは驚きです。すでに18年からしっかりと計画に沿った生活がはじまっていたのですね。
寿命は延びる一方なので、再投資は長生きの有効な対処策だと思います。

でも使うことも忘れずに。
「お金は使ってこそナンボ!」ですから。

また時折、報告をおねがいしますね。
米国債とMMFの違いについて教えてください。 (初心者)
2023-04-06 14:22:19
こんにちは いつも拝見させていただいております。

救われた投資家さんのコメントで教えていただきたいことがありましたのでコメントさせていただきます。

>米国債の償還は全てドル償還で、為替を気にすることがないこと、償還分は米ドルMMFに入れて金利も得られ、MMFから直ぐに米国債を買付できる利点もあります。そして最近気が付いたのですが、MMFの配当が恐ろしいことになっております。3.905%です。

とありました。

米国債とMMFの金利がさほど違いないのならば、MMFの方が出金しやすいのではないかと感じたりもしました。

私の認識が不足していると思いますが、米国債とMMFの違いを教えていただけませんでしょうか。

宜しくお願いします。
Unknown (初心者)
2023-04-13 08:08:14
はじめまして。お世話になります。
米国国債の金利が下がってしまいましたが、まだ買い時なのでしょうか。
よろしくお願いします。。
初心者さんへ (林 敬一)
2023-04-15 09:23:08
お返事が遅れ、失礼しました。

MMFはもちろん現金と同等に近い使いやすさがありますね。出し入れも最小金額で可能です。

ただし金利の有効期限は1日で、例えば2年固定の米国債とは比べものになりません。今後も低下しないと見込むなら、もちろんそれを利用する手もあります。

いまでも米国債は買いか?

この質問は初心者さんの資産構成や何年物への投資をするのか、あるいは何のために米国債に投資するのかなど、様々な要素がからみますので、軽々に回答は無理です。

あしからず

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