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「このままでは国家財政は破綻する」   矢野君、よく言った!

2021年10月27日 | 大丈夫か日本財政

  選挙直前のこの時期に、これだけはっきりと「このままでは国家財政は破綻する」と財務省次官が発言するとは驚きですね。しかもそれに対して経済団体の首脳までが「そのとおりだ!」と述べていますし、私も当然そのとおりだと思います。

  各党の選挙公約を見て、よほど腹に据えかねたのでしょう。各党の選挙公約はバラマキ一色で、財政的裏付けなど一切なし。いや、すべて国債発行でまかなうとなっています。

  しかし今回の選挙に関する意識調査を見ると、選挙民は決して愚民ではありません。10月15日の読売新聞ニュースによると、政府の経済政策について「国の借金が増えても経済対策を優先すべきだ」と「国の借金が増えないよう財政再建を優先すべきだ」のどちらに考えが近いかを聞くと、「財政再建を優先」が58%で、「経済対策を優先」は36%だったのです。

  

  矢野事務次官の発言は文芸春秋のインタビューで出てきた内容ですが、実際の記事のサマリーが文春のサイトに行くと見られます。直接お読みになりたい方は、以下の文春オンラインにありますが、以下にそれを引用しておきます。

 https://bunshun.jp/articles/-/49082?page=2

 

引用

タイトル;「このままでは国家財政は破綻する」矢野康治財務事務次官が“バラマキ政策”を徹底批判

 

本文サマリー;

「もちろん、財務省が常に果敢にモノを言ってきたかというと反省すべき点もあります。やはり政治家の前では嫌われたくない、嫌われる訳にはいかないという気持ちがあったのは事実です。政権とは関係を壊せないために言うべきことを言わず、苦杯をなめることがままあったのも事実だと思います。

 財務省は、公文書改ざん問題を起こした役所でもあります。世にも恥ずべき不祥事まで巻き起こして、『どの口が言う』とお叱りを受けるかもしれません。私自身、調査に当たった責任者であり、あの恥辱を忘れたことはありません。猛省の上にも猛省を重ね、常に謙虚に、自己検証しつつ、その上で『勇気をもって意見具申』せねばならない。それを怠り、ためらうのは保身であり、己が傷つくのが嫌だからであり、私心が公を思う心に優ってしまっているからだと思います。私たち公僕は一切の偏りを排して、日本のために真にどうあるべきかを考えて任に当たらねばなりません」

矢野康治氏

“破滅的な衝突”を避けるためには……

「昨今のバラマキ的な政策論議は、実現可能性、有効性、弊害といった観点から、かなり深刻な問題をはらんだものが多くなっています。それでも財務省はこれまで声を張り上げて理解を得る努力を十分にして来たとは言えません。そのことが一連のバラマキ合戦を助長している面もあるのではないかと思います。

 先ほどのタイタニック号の喩えでいえば、衝突するまでの距離はわからないけれど、日本が氷山に向かって突進していることだけは確かなのです。この破滅的な衝突を避けるには、『不都合な真実』もきちんと直視し、先送りすることなく、最も賢明なやり方で対処していかねばなりません。そうしなければ、将来必ず、財政が破綻するか、大きな負担が国民にのしかかってきます」

 国家財政をあずかる現役トップ官僚の告発財務次官、モノ申す 『このままでは国家財政は破綻する』」全文は「文藝春秋」11月号(10月8日発売)に掲載される。

 

引用終わり

 

  この発言に対して政治家、経済学者などこころある方々は賛成の意を表しています。一方いつもの「国家は破綻しない」派の面々がいつもの根拠のない反論を試みています。私から見ると反論に有効打は見当たりませんでした。

 

代表例は、

1.国内債務で破綻した国はない。円建て債務なので返済は可能である

2.日本国は売る資産をたくさん保有している

3.日本は経常黒字国で、債権国だ

 

というような具合です。

では上記の議論に私が反論して差し上げましょう。

 

  1の「国内債務で破綻した国はない。国債は円建て債務なので返済は可能である」と、2の「日本国は資産をたくさん保有しているので売れば返済可能である」をまとめて反論します。日本はもちろん破綻した経験があります。

  そもそもこうした「破綻しない派議論」は、国債などの利払いができなくなった時の経済状態がどうなっているか、またその時為替レートはどうなっているかの議論を避けています。

  日本を含め過去に破綻したどの国も同じですが、破綻する時はその国だけでなく世界経済が大恐慌に陥ったり、為替レートが乱高下したり株式市場が混乱して閉鎖されたりします。日本の敗戦直後45~46年、97年のアジア通貨危機の時のアジア諸国、同時期のロシアなどがそれにあたります。

  日本の為替レートは1ドルに対して明治の初めは1円程度、第2次大戦前の40年には4円程度、戦後49年に一気に360円となった歴史があります。つまりたとえ国家は債務返済をしたとしても、返済される時の通貨価値は何分の1,いや何百分の1になりえます。であれば、それは支払い不能と同じです。

  経済的大混乱は株式や不動産価値の大暴落を伴うこともよくあることです。そのような破綻国家の資産を誰が買うのでしょうか。日本人はもちろん、海外投資家も見放すに違いない。つまり国家に資産があっても価格は暴落し続け、あてにできないのが国家破綻時の資産価値です。例えば日本政府保有の国有企業の株式や国道・橋・堤防などはもちろんだれも買いません。収入を上げられる港湾施設・空港・高速道路などは買いの手が出てくる可能性はなきにしもあらずですが、高齢化が進み経済発展の見込めない国の施設に買いの手が入るかは極めて怪しいのです。買われるときはとんでもない安値になっている可能性が大です。

その3.「日本は経常黒字国で、債権国だから大丈夫だ」という議論、これは国が民間企業や投資家の資産を収奪するということです。

  そもそも経常黒字を作り出したのは民間企業で、その黒字を海外や国内に蓄積しているのもその企業です。国ではありません。それなのに国が赤字を垂れ流した後始末をどうやって企業に負担させるのでしょう。国家の命令で内部留保を収奪する以外に方法はありません。そんな事態が予想されれば、みなさんはどうしますか。もちろんどうやって自分の資産や会社の資産を隠すか、あるいは逃避させるかを考えますよね。みんながそうした行動を取れば、その頃には円はさらに暴落していることでしょうし、その前に海外投資家は先物を売りたたいて、あらゆる市場であらゆる日本の資産価格を暴落させるに違いないのです。ロシアなどの破綻国家はそれを経験しています。

 

 この私の議論、著書でも書いているしブログでも何度も書き、講演会でも何度も説明しました。しかしそれに対する有効な反論を受けたことはありません。相手にされていないのかも(笑)。

 

  私は逃げも隠れもしません、いつでも受けて立ちますので遠慮なくカウンターパンチを繰り出してください(笑)。

 

  ちなみにGDP対比で現在の国家債務とちょうど同じ240%のレベルに達していた戦時の国家債務を、戦後日本政府はどう処理したのでしょう。もちろんすべてロハにしていますが、実に姑息な手段でデフォルトではないと主張していました。その手口は以下を参照してください。一口に言えば「国民の預金を封鎖して召し上げ、国家の債務を税金として奪い取り返済したことにした」。それを研究者が歴史の経緯として説明していますので、興味のある方は以下をお読みください。ちょっと長いですが、さほど難しことはかいてありません。将来の参考になりますよ。

 

日本総合研究所調査部主任研究員河村小百合氏によるレポート

引用

 昭和21年10月19日には、「戦時補償特別措置法」が公布され、いわば政府に対する債権者である国民に対して、国側が負っている債務金額と同額の「戦時補償特別措置税」が賦課された(図表5)。これは、わが国の政府として、内国債の債務不履行は回避したものの、国内企業や国民に対して戦時中に約束した補償債務は履行しない、という形で部分的ながら国内債務不履行を事実上強行したものである。そしてこれも、国民の財産権の侵害を回避すべく、「国家による徴税権の行使」という形であった。 

政府の戦時債務の不履行や、旧植民地・占領地における対外投資債権請求権の放棄等により、企業、ひいては民間金融機関の資産も傷み債務超過となった。このため同じ10月19日には、「金融機関再建整備法」および「企業再建整備法」も公布された。これを受け、民間金融機関等の経営再建・再編に向けての債務切り捨ての原資として第二封鎖預金が充当された(実施は昭和23年3月、図表6)。要するに、債務超過状態を解消するために、本来であれば国が国債を発行してでも調達すべき、民間金融機関に投入する公的資金を、国民の預金の切り捨てで賄ったのである。

国債が国として負った借金である以上、国内でその大部分を引き受けているケースにおいて、財政運営が行き詰まった場合の最後の調整の痛みは、間違いなく国民に及ぶ、という点である。一国が債務残高の規模を永遠に増やし続けることはできない。「国債の大部分を国内で消化できていれば大丈夫」では決してないのだ。

無論、世界大戦の敗戦国という立場に陥り、社会全体が混乱のさなかにあった当時と、平時の現在とは状況が全く異なる。政府債務残高の規模が、当時とほぼ並ぶGDP比250%の規模に達したからといって、すぐに財政破たんするというものでもなかろう。しかしながら、国債の大半を国内で消化するという現在の状況は終戦当時に通じるし、現時点で債務の膨張に歯止めがかかる見通しは全く立っていない。

 今後のわが国が、市場金利の上昇等により、安定的な財政運営の継続に行き詰まった場合、それが手遅れとなれば、終戦後に講じたのと同様の政策を、部分的にせよ発動せざるを得なくなる可能性も皆無ではなくなろう。この点こそを、現在のわが国は、国民一人一人が、自らの国の歴史を振り返りつつ、しっかり心に留めるべきである。

引用終わり

 

  大変興味深い歴史の考察です。こうした政府による姑息な手口があることを国民はしかと頭に入れて、自分の資産をどこに置くのが安全か、準備をおこたりなくすべきでしょう。

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よくやった、反田恭平!

2021年10月19日 | クラシック音楽

  反田恭平君のファイナルコンサートが終わりました。ファイナルのコンサートは進出した12人のファイナリストが4名ずつに分れ、それぞれ4人ずつ3日間に渡って行われます。反田君は1日目の3人目、日本時間では19日の早朝でした。

  ファイナルはワルシャワフィルとピアノコンチェルトを共演すると決まっていて、ショパンのコンチェルトはたった2曲ですので、どちらかを演奏します。初日は全員が1番を演奏していました。

 

  4人の演奏を聞いて私は反田恭平の出来が抜群だったと感じました。ミスのないことはもちろん、とても余裕がありました。彼は独奏者として指揮者を見て合わせるだけでなく、その他の演奏者を見渡しながら全員とチームプレーを楽しんでいました。

  このところ彼はピアノ協奏曲を演奏するだけでなく、指揮をしながら演奏もするということを時々行っています。そのせいか、演奏中に自分の手に余裕が出ると楽員に対して指揮をするしぐさがわずかですが出てしまっていました。これはちょっとやり過ぎかもしれません。

 

  個人的確信を裏付けるのに、3つのポイントを上げます。まず最初は簡単な比較です。それは演奏後の聴衆の反応です。意外なことにショパンコンクールの拍手はルール違反がまかり通ります。それは演奏家が最後の音を出し、普通は音の余韻がなくなってから拍手が始まるのですが、このコンクールに限り最後の音を弾くか弾かないうちに拍手や歓声が始まってしまうのです。何故だかはわかりませんが、素晴らし演奏だったということを思い切り表現するためにフライイングするのでしょう。そのフライイングの程度と何分拍手が続くかで、少なくとも地元の聴衆の反応がすぐにわかるのです。なにせ何度も何度もコンクールを聴き続けているベテランの聴衆ですから、聞く耳は確かです。

 

  ちなみに3次予選ではそれが明らかな差となって現れました。3次予選のプレー順位が反田恭平君のすぐあとに角野隼人君でした。反田君の拍手は楽屋に入ってからも延々と続き、驚くほど長かったのです。角野君もいい演奏ではあったと思うのですが、長さが3分の1程度で、これは他の演奏者とほぼ同じでした。ワルシャワの聴衆の耳を信用するなら、3次予選ですでに尋常ならぬ聴衆の反応を見たと思いました。そして今回のファイナルも反応は同様で、驚くほどの激しい拍手が沸き起こっていました。

 

  ポイントその2は反田恭平君自身の演奏後の反応です。舞台から降りた演奏者をライブで部屋に入るまでテレビが追い続けるのですが、彼は舞台から階段を降りながら楽屋のカメラに向いVサインを出したのです。慎重な彼としては、驚くべき所作です。

  実は3次予選直後のインタビューで彼が言ったのは、「3次予選は恐いものです。自分に負けたので、悔しい」と正直な感想をもらしていました。「でも伝えたいことは伝えられたかなと思っています」。私は正直これを聴いたときは、もしや・・・と思いましたが、反面自分に対して厳しすぎる恭平なので、最後の言葉に救われました。

 

  そしてポイント3つ目。ファイナルの演奏直後のインタビューで言った言葉、これがなんと「演奏は大満足で、ほっとしています」だったのです。自分に超厳しい恭平のVサインと「大満足」と言う言葉は、私には勝利宣言に聞こえました。これらにワルシャワの聴衆の反応、これ以上何が必要でしょう。

  さらに彼は一緒にファイナルに進んだ小林愛実さんに対して「小林さんのサポートに感謝します」とし、演奏が終わった自分はこれから小林さんのサポートに回るとの言葉を残しています。実はこの二人、12歳ころからの友人だったとのこと。お互いの友情もどうやら大きな味方だったようです。

  小林愛実さんの演奏は最終日、現地時間21日の最初です。そしてそれが終わり優勝者・入賞者の発表が行われ、1・2位の凱旋コンサートが翌日行われます。

 

  果たして誰が優勝するか、期待は一段と高まります。

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ショパンコンクール、ファイナリストに日本人2人!

2021年10月17日 | クラシック音楽
今朝、嬉しい知らせが入りました。
 
3次予選まで残っていた日本の反田恭平君と前回ファイナリストの小林愛実さんの二人が、日本時間月曜日深夜から行われるファイナルに勝ち残りました。
 
ファナリスㇳ12名の中に日本人二人が残るのは快挙と言えます。
 
私の勝手なイチオシ反田恭平君、是非初の優勝者になって欲しいし、小林愛実さんも是非前回を超える6位までの入賞を果たして欲しいです。
 
コロナ禍の今年は、ゴルフのマスターズで夢としか思えなかった優勝を松山英樹が果たし、
これまた夢としか思えなかったメジャーリーグで大谷翔平が大活躍、MVP有力候補です。
 
その上ショパンコンクールで日本人が勝てば言うことなし、最高の一年です。
 
あと一歩、頑張れ恭平!
 
 
 
 
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第18回ショパンコンクール

2021年10月13日 | クラシック音楽

  現在第18回ショパンコンクールが行われています。

  5年ごとに行われ世界の注目を集めますが、昨年はコロナのために延期されました。今年はしっかりと開催されていて、ライブでネット配信もされています。世界から7月の予備予選に参加したのは151人。そのうち87人が10月の本選に出場。日本からはなんと14人も本選に参加資格を得ました。各予選の通過人数の目安としては、80人が1次予選で40人ほどになり、2次予選ではそれがさらに20人ほどになってセミファイナルに進みます。そして最終選考は10人程度が臨みますが、最後はピアノソロではなく、ワルシャワフィルとのピアノコンチェルトを演奏し、最終順位を決めることになります。

 

  予選はすでに1次、2次が終わりました。今回2次予選に進んだのは全体では45人で、日本人は8人も残りました。国別では地元ポーランドが9人、次いで日本8人、中国7人、イタリア7人と続きます。日本人8人の名前はあいうえお順に沢田蒼梧、進藤実優、反田恭平、 角野隼斗、牛田智大、古海行子、小林愛実、京増修史です。

 

  昨日10月12日に2次予選を終えてセミファイナルの3次に進むコンテスタント23人が発表されましたが、日本人はいぜん5人も残っています。その名前は、古海行子、小林愛実、進藤実優、反田恭平、角野隼斗です。国別ではポーランド人が最多の6人、次が日本人5人で、これまでにない人数です。

 

  日本人ピアニストはそれぞれが様々なバックグラウンドと個性を持っていますが、私の一押しはもちろん反田恭平27歳で、これまで何度かブログの投稿で取り上げました。彼はピアノの実力もさることながら、コロナ禍で若手の音楽家を助ける意味も込め、ジャパン・ナショナル・オーケストラをなんと株式会社として立ち上げ、今はオンラインをメインに活動を続けています。ちなみに彼は私が注目している比較的新しいピアノメーカーであるFAZIOLIのピアノを使う可能性があると思っていましたが、今回選んだピアノはオーソドックスにSTEINWAYでした。これまでの優勝者はほとんどSTEINWAYです。

 

  私は他にも過去に一度コンサートの様子を投稿したことのある若手、牛田智大に注目していましたが、残念ながらセミファイナルに進めませんでした。2次通過者の中で小林愛実は前回の同コンクールでファイナルまで残り、ワルシャワフィルとコンチェルトを演奏している実力者です。

 

  そして同じくセミファイナルに進む中では「題名のない音楽会」やYouTubeで活躍している面白いプレーヤー角野隼斗(すみのはやと)にも注目しています。彼はなんと東大理I卒でそのまま東大大学院に進み、情報理工学研究科で創造情報学を専攻し卒業。その時に東京大学総長大賞まで受賞している異色のピアニストで、彼女がミス東大というオマケまでついていて、ユーチューブでは「かてぃんさん」の名で知られている有名人です。

 

  しかしこの「かてぃんさん」と言うハンドルネーム、私は若干ひっかかります。それはご存知の方もいらっしゃると思いますが、ポーランド人虐殺の悲劇を描いた映画「カティンの森」というアンジェイ・ワイダの作品があるからです。アウシュビッツはドイツ軍による虐殺でしたが、こちらはロシア軍による虐殺で、カティンの森で行われました。まあこの名はそんなことは全く知らない若い時につけられたニックネームですから、気にする必要はないでしょう。

  さて今後は10月14日~16日のセミファイナル、そして18日~20日のファイナルと進行し、最終発表はそのあとすぐに行われます。

  そして優勝者と準優勝者による凱旋コンサートが23日に行われます。私はこのあと4K映像で見ることのできるライブやビデオでフォローして楽しむつもりです。

 

 

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ファンド資本主義が資本主義を救う、7.気候変動の予測にノーベル賞

2021年10月08日 | ファンド資本主義への変貌

  今年のノーベル物理学賞の受賞者にプリンストン大学の日本人研究者、真鍋さんが選ばれましたね。とても嬉しい知らせです。受賞に関して世界の関係者やメディア報道で言われているのは、物理学賞が気候変動に関する研究者に授与されることの驚きでした。

  物理学賞の多くが理論物理学などの分野に与えられる中、まさかの選定だったと言われています。直接の関係は全くないのですが、私自身もこのブログで取り上げている資本主義の変貌の最大の関心事が気候変動であるため、タイミングのよさに驚きました。人類が気候変動の激しさに日々翻弄されているため、この問題がノーベル賞選定委員会でもトッププライオリティーになったのでしょう。

  しかし驚いたのは真鍋さんの気候変動モデルによる研究が60年代に始まり、その時代に学問的な証明がかなりの程度できていたという事実です。選定理由について発表された内容では、

地球の気候は人類にとって極めて重要ですが、「真鍋さんは大気中の二酸化炭素の濃度が上がると地表の温度上昇につながることを明らかにした」。また物理学には基本的なルールを使って複雑なプロセスや現象を説明する役割があるとして、真鍋さんは「力学を通じて地球の気候を研究し、初めて信頼性のある予測を出した。二酸化炭素が2倍になれば表面温度が2度上がると予測した」。     

 

  いまでこそ気候変動の予測はスパーコンピューターを使って効率よくモデルを導き、シミュレーションが可能になっていますが、ほぼ手計算に近い道具立てにもかかわらず成果を上げていました。そしてその気象予測手法は現在でも長期予報に使われているということにも驚かされました。我々は日々真鍋さんの研究成果の恩恵にあずかっているわけですね。

 

  さて本論に戻りますが、ここまで「ファンド資本主義が資本主義を変える」というシリーズで私は、モノ言う株主が議決権行使のアドバイザーの指針により、勝手気ままな経営を許さなくし、その指針の中心的課題が気候変動に多大な影響を与えるCO2の削減にあると説明してきました。

  一昨日の日経ニュースでは、金融庁が上場企業など約4000社を対象に、気候変動に伴う業績などへの影響を開示するよう義務付けることを検討するとのこと。

  開示すべき項目とは、(1)温暖化ガス排出量(2)気候変動に伴う事業・戦略・財務に及ぼす影響(3)リスクと機会に対する取締役会の監督体制(4)リスク管理のプロセスがある。金融庁は有識者を交えた作業部会を9月に設け、有報に気候変動リスクの記載を義務付ける検討を進めている、とのことです。企業にとりこの開示義務は事務的にもかなりの負担になりそうですし、開示だけでなく排出量の削減に本気でとりくまなくてはならなくなります。

 

  一方CO2削減の目標は、民主主義・自由主義陣営にとって最大の脅威となっている中国でも強権的に進められていて、それにより経済活動にブレーキがかかるほどになっています。中国国内ではCO2排出の本丸である石炭火力発電所の操業が停止させられ電力不足が深刻化し、製造業などに広範な影響が出ています。それは当然中国をサプライチェーンの一環として利用している自由主義陣営の企業にも出ていて、影響は世界に拡がりつつあります。

  そしてCO2を最も輩出している石炭火力発電の停止などは先進各国でも大きな広がりを見せ、11月に開催されるCOP26では中心的議題になると思われます。

  ネットで「COP26」を検索すると驚いたことに、最初に登場するのが民間企業である日立のホームページです。これまでの経緯を含め実によく説明されているので、それをそのまま引用し紹介します。

https://www.hitachi.co.jp/cop26/

 

引用

「世界がひとつになって取り組む気候変動対策」

英国グラスゴーで2021年11月 1~12日、「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議」(COP26)が開催されます。

COP26では、「パリ協定」と「気候変動に関する国際連合枠組条約」の目標達成に向けた行動を加速させるため、締約国が一堂に会して議論します。COP26の開催地となる英国では、すべての国と協力し、企業や市民と力を合わせ、気候変動対策への取り組みを推進します。

「気候変動対策が必要な理由」

地球規模で平均気温が上昇し続けています。また、これまで経験したことのないような豪雨や嵐による災害、異常気象による農作物への被害が発生しています。いま行動しなければ、私たちはさらなる影響を受けることになるでしょう。

こうしたなか、世界中のリーダーたちが2015年、フランスのパリで気候変動対策に取り組むための歴史的な合意をしました。これが「パリ協定」です。合意された内容は、「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2度より十分低く保つとともに、1.5度に抑える努力を追求する」ことです。

さらに、気候変動対策に必要な適応策や資金面での支援を強化することについても合意されました。パリ協定の実施と実現に向けて、世界が協力してこの重要な課題に取り組み、将来の世代のために環境を守ることを示していく必要があるのです。

引用終わり

 

  いまやCO2削減の話は日常的にどの分野でも話題になりニュースにも毎日取り上げられ、我々消費者もエコバッグだけでなく今後一段とエコに気を使う必要がでてきそうです。

 

  次回は「私のエコ実践講座」を書いてみます。

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