ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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ツイッター社の英断

2019年06月30日 | トランプのアメリカ

  ツイッター社が政治家によるウソや誹謗中傷のツイートに警告を出すという英断をしました。ロイターニュースを引用します。ウソつきトランプのツイートをどの程度防ぐことができるか、見ものです。

 「[ワシントン/サンフランシスコ 27日 ロイター] - 米ツイッターは27日、表現の自由と説明責任の均衡を取ることを目的に、同社の利用規約に違反した政治家などのツイートに警告を表示する方針を発表した。警告で不適切なツイートが隠れる形となり、利用者はリンクをクリックすれば投稿を読むことができる。」

 さらに共同通信とAFPによる解説記事がありますので、引用します。

6月28日共同通信;導入の意図

政治家によるルール違反の不適切な投稿にういて、削除せず閲覧者に警告する仕組みを導入。表現の自由を守りつつ、公人として投稿への説明責任を求める狙い。

 

6月28日;AFP時事  適用事例は

適用される事例は「まれ」になるとの予想を示し、立候補者や政府高官でフォロワーが10万人を上回る、認証済みアカウントのみに適用されるとしている。

 

  このタイミングでツイッター社がこうした決断をするということは、大統領選挙が実質的にスタートしたからでしょう。これでトランプのツイートが防げるわけではないし、警告の出たツイートを支持者が見なくなるわけでもないでしょうが、それでも毎回警告が表示されれば、中にはうるさいので見なくなる人がいるかもしれないし、「えっ、そんなにウソばかりなの」と思う人がいるはず。世の中の悪を指摘する効果は十分にあると思います。

   私の6月23日の記事「マッチポンプ・トランプのウソ」では、メキシコとの交渉で「メキシコが譲歩して新たな合意に達した」というトランプの演説はウソだというニューヨークタイムズの指摘を引用しました。果たしてツイッター社のウソ指摘システムが、こうした発言までウソと指摘できるかわかりませんが、期待だけはしましょう。

   それとは別にワシントンポストは6月7日に更新したファクトチェッカーで、以下のような発表をしています。

 In 869 days, President Trump has made 10,796 false or misleading claims.

The Fact Checker’s ongoing database of the false or misleading claims made by President Trump since assuming office.

Updated June 7, 2019

 

  上記の記事を要約しますと、トランプは大統領に就任以来わずか869日で、1万件以上のウソもしくは誤解を招く言動を行ったというのです。割り算すると一日につき12.4件にもなります。実はこの件数は発言数より多いので、一つの発言に複数のウソが入っているというカウントになります。

  ちなみにファクトチェッカーとは政治家の発言などの真偽をチェックしてカウントしデータとして蓄積しているワシントンポストのサイトです。

https://www.washingtonpost.com/news/fact-checker/

 

  これだけのウソツキ大統領を当選させその後も支持するアメリカ人の心の内がどうなっているのか、是非覗いてみたいと思います。少なくとも私のアメリカ人の友人たちは例外なく「恥ずかしくてしょうがない」と言っています。

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マッチポンプ・トランプのウソ

2019年06月23日 | トランプのアメリカ

  私がしばらくトランプ叩きをしないうちに、すっかり世界を混乱させているので、ちょっと叩いておきます(笑)。

  イラン攻撃の寸止めは「オレ様が10分前に攻撃を停止させた!」と、相変わらず自分で火をつけたのに、消したのはオレだと自慢して、選挙向け票稼ぎに走っています。

   「爆撃の結果何人死ぬのかを確認したら、150人くらいだというので、寸前に停止させた」と見え透いたウソを言っています。そんなシミュレーションも示さずにアメリカ軍が大統領に命令を促すことなどありえません。この幼児のようなウソをつく大統領のやり口は、対メキシコでも発揮されました。

   トランプはメキシコの国境管理の甘さを非難し、しっかりと対策を取らなかったらメキシコからの輸入品すべてに5%の関税を課すと脅迫していましたが、それを取り下げました。新たにに関税を課すぞと脅して「課さないことにした」。これもまったく同じマッチポンプです。

  そして「メキシコが譲歩をしたので、関税はやめた」と演説で言ったのですが、ワシントンポストとニューヨークタイムズは、その「メキシコの妥協提案は、すでに今年の初めに決まっていたことで、脅しに屈したものではない」とばらしています。しかもその演説のすぐあとに「これがメキシコとの契約だ」とペーパーを持って記者会見をしたのですが、メキシコ政府は即日、「トランプと新たな契約などした事実はない」と真っ向から否定。まったくみっともない結末でした。

   一応、ロイターの記事を引用します。

「トランプ氏は7日、メキシコからの全輸入品に5%の関税を導入する計画を無期限で停止すると表明した。その代わり、メキシコは中米諸国からの移民流入を阻止するために治安部隊を派遣するとしている。

一見するとトランプ氏の勝利に見えるが、実際はそうではないかもしれない。ニューヨーク・タイムズ紙によるとメキシコ政府は3月には、国境に部隊を送ると約束していたし、米国への難民申請者を手続き中にメキシコに送還・待機させる案は、1月に米国土安全保障省が打ち出していたからだ。」

 

  ではホルムズ海峡に戻ります。この海峡の重要性はいうまでもありません。原油需給・価格動向の研究機関や専門家の見立てでは、「もしホルムズ海峡が封鎖されると、原油価格は現在の2倍、100ドル以上に上昇する」というものです。

  アメリカは原油を自国で賄える生産国ですから、痛くもかゆくもないのでホルムズ海峡を自国の切り札にしてしまいました。そのため怪しげな証拠でイランの責任を追及しています。今回の危機のきっかけになった2隻のタンカーへの攻撃をイランの革命防衛隊の仕業だと決めつけ写真を示しました。その証拠写真は、犯人が証拠隠滅のため爆破したタンカーに再度接近し、証拠とおぼしき物体を除去しているところだ主張しています。

   しかし待てよ、犯人がまた本当に戻るか? 私はそうは思いません。

  もし本当にそれを相手に気づかれずに写真や動画で捉えることができるなら、何故その犯人たちがイランに戻るところを最後まで追わなかったのか。きっと追っていったらイランに帰らなかったのでそれを示さなかった。というのが私の推測です。

   安倍首相がイランを訪問中に、いくらはねあがり連中だとしても日本のタンカーに攻撃を加えるでしょうか。ほかでもない最高指導者のハメネイ氏への訪問中なのですから。

  ついでにお門違いのイラン訪問をしたアベちゃんも、世界ではやり玉に挙げられています。そもそもアメリカとイランの関係悪化をとりもつとして訪問したのですが、世界のメディアの報道は「アメリカ大統領と一番仲がいい安倍首相は仲介役などできない。何しに行ったんだ」というものです。もちろん現地イランのメディアも、「トランプの犬が何しに来た」という論調だったそうです。そして彼がイランのローハニ大統領やハメネイ氏に言った言葉「核の合意から離脱しないでほしい」については、「そんなことはおまえの友達トランプに言え!離脱したのはトランプだ」という反応でした。

 

  この報道、まことにごもっともです。そもそも核合意の条件に反したという証拠もないのに、ユダヤ人票を集める目的でいきなり合意から一方的に離脱したのはトランプです。たとえタンカー攻撃やアメリカのドローン攻撃がイランの仕業としても、その原因を作ったのはトランプに間違いありません。そして湾岸への兵員を増強するなど、火に油を注いでいます。今後どう火消しをして票につなげるか、しっかり見ていきましょう。もし突発的戦闘状態に陥ったら、全責任はトランプにあります。

   このマッチポンプ・トランプに騙されるアメリカ人支持者に向け、先週フロリダでトランプは再選出馬宣言をしました。「Keep America Great!」が今回のうたい文句ですが、世界のメディアの論評は「新たな政策はなにひとつない」というものです。

   次回の大統領選挙、実はすでにトランプは大苦戦しています。それがマッチポンプの原因かもしれません。そもそも今世界が最も注目している経済問題は米中貿易戦争の行方ですが、トランプの目的は中国を叩くことで中西部のラストベルトの雇用・産業を復活させることでした。それに対する中西部の大事な選挙区の反応は、実はとても冷たいものです。

   よくメディアが書く「トランプの岩盤支持層の45%程度の支持率は全く崩れていない」という論調に対して、私はいつも正反対のことを言ってきました。「そりゃ逆だよ、トランプに反対する岩盤不支持層55%は全く崩れていない」でしょうと。

 

  大統領選に向けてすでにアメリカでは各選挙区での支持率調査が始まりました。現在までの調査結果は私の指摘を裏付けるものです。ちなみにトランプが前回勝利し、今回出馬宣言をしたフロリダ州でのトランプ対バイデンの支持率は、41:50でバイデンの優勢。なんと相手が社会主義者サンダースでも42:48でサンダース優勢。そして最もトランプが重要視し、前回勝利を収めたは中西部の諸州、たとえばウィスコンシン、ミシガン、ペンシルベニア州などでした。その諸州のいずれもで、トランプ43~45%対バイデン53~55%程度と、すべてバイデンがリードしています。

   トランプがスリーピー・ジョーと呼ぶ元副大統領のバイデンや、バーニー・サンダースでさえトランプより支持率が高いということは、「トランプでなきゃ誰でもいい」ということを表していると私は解釈しています。

   ちなみに本日現在の世論調査のおまとめサイトReal Clear Politicsのこのところのトランプの平均支持率は44.6%、不支持率は52.0%と、上記の調査結果と符合しています。

https://www.realclearpolitics.com/epolls/other/president_trump_job_approval-6179.html

 

 トランプ再選という悪夢は見たくありませんが、相手がバイデンでは正直ちょっと心配です。

 

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米国債投資にあたっての証券会社選び

2019年06月21日 | 米国債投資にあたっての証券会社選び

  悩める初心者さんから、以下のような質問がコメント欄に寄せられました。

引用

林先生、諸先輩方

  いつもお世話になっております。本当に初歩的な質問で恐縮です。

  証券会社の選択について教えてください。各々の証券会社で米国債でも違いがあり、取り扱っている米国債の数も違いどこで購入するのがよいのか悩んでおります。とりあえず、短期をSMBC日興証券で購入しました。

  現在、SMBC日興証券、野村證券、SBI証券、三菱UFJモルガンスタンレー証券に口座を開設しております。

  一長一短はあるかと思いますが、今後進めていくうえでご意見などを頂けますと大変助かります。お手数ですがどうぞ宜しくお願い致します。

引用終わり

 

  お勧め証券会社に関してですが、私は自分のポリシーとして「私から特定の証券会社を推薦することはしない」と決めています。このブログの中立性を保つためです。従ってアフィリエイト広告なども取らないことにしています。

   といってもこの問題でお悩みの方も多いと思います。私も今回、この問題の扱いには悩んだのですが、有用な情報に違いないと思い、思い切ってブログを開放することにしました。

  この本文記事にコメントの形で読者の皆さんからお勧め証券会社を、理由とともに書き込んでいただけますでしょうか。ぜひ実際の経験を元に、おすすめをいただきたいと思います。また証券会社のホームページの外債投資ページに関するコメントもお願いできますか。それぞれ扱いやすさなどの特徴があると思いますので。


  悩める初心者さんへ

  すでに多くの証券会社の口座をお持ちですので、それぞれの証券会社での経験を書き込みいただけますか。みなさんへの情報になると思いますので。

  なお、コメント欄はいつでも自由に書き込んでいただいて結構ですし、期限は設けません。

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老後資金2千万円の不足だって? つづき

2019年06月17日 | 老後の備えはどうするか

   年金の不足問題は、週末のニュースショーで日本中を巻き込み、一層激しい論争を起こしていますね。それに輪をかけて財務大臣兼金融大臣が火に油を注ぐ発言の連発です。そろそろ安倍首相も彼の処遇を考える必要がありますね。

   前々回私は「次回は2千万円の作り方についてです」と書きました。一回あきましたが、今回はその回答です。回答は実に簡単です。

   「ご自分で計算して老後資金が〇千万円足りないと思った方は、その分貯金すればいい」以上です。

   「それじゃ、身もふたもないじゃないか」と言われそうですが、このブログをコンスタントにご覧のみなさんは、ご自分の年齢と必要資金くらいもうとっくに計算されていますよね。ある程度以上の年齢の方はご自分の余命と老後の楽しみ方の見当をつけ、必要資金を計算されていることでしょう。若い方には別途安全な運用方法を説明します。

   私は資産運用に関して著書やこのブログで何度も同じことを申し上げてきました。それは、

「70歳過ぎたら、運用なんかしなさんな」です。

   これは本心から言っています。70歳過ぎてリスクを取って増やしてどうする。そんなことでストレスを感じたら、老化した脳の血管が破裂するだけだからです。運用するより、余裕のある方は「使って楽しめ」。余裕のない方は「使い方をセーブするべし」。

  それぞれの方の資産額や人生の楽しみ方に差がある以上、一般論で言えることはこれ以上ありません。それでも説明不足なら、個別の相談にはいつでも応じます。

   今回の2千万円の話で驚いて運用を始めようと思っても、70歳どころか60歳過ぎていたら、ほとんどの方ははっきり言って手遅れです。65歳から収入を年金だけに頼るのであれば、65歳までに2千万円貯めておく必要があります。年に100万円貯めても20年かかるので、45歳で始めなくてはいけません。

   それを、運用をうまく行うことで1千万円の投資額を2倍にしようとするとどうでしょう。例えば45歳から55歳まで10年で1千万貯め、その後毎年7%で複利運用できれば10年後の65歳で2千万円になります。しかしそんなうまい話は昔の高金利時代の話です。今年に7%を得ようとして株式などの高リスク資産に投資すると、2年後には半分の500万円になってしまうかもしれません。

  少額の積立NISAならいかにもお手軽で安全だ、というような宣伝文句がまかりとっています。リスクの程度を率で計ったら金額は関係なし。半分になってしまうのは、1千万円でも1万円でも同じこと。リスクの程度は投資対象によるのです。

 

  毎日株式相場や為替相場を眺めては喜びと嘆きを繰り返して、いったい何になるのでしょう。今回のニュースを見て、資産運用セミナーに人が集まり、これまでの5割増しとか、5倍も集まったと喜んでいる業者がいます。集まる人たちの付け焼刃ぶりにもあきれますが、セミナー主催者は何のリスクもなく運用資金のおこぼれで収入を得られます。たとえ運用に失敗しても自分は損をかぶることはありません。

 

  では若い人はどうすべきか。答えは、「超長期の超安全な債券で運用せよ。」です。超安全な債券とはもちろんアメリカ国債です。

   まず100万円を元手にアメリカ国債への投資を始めたらどうなるか。単純な計算結果をお見せします。金利想定は3とおりで、30年後の結果を単利と複利で示します。

30年物     単利    複利

金利  3% →   190     244 

    4% →   220     328 

          5%  →   250    440

  日本国債では複利の運用はできません。米国債だと複利の運用が可能です。金利が低くとも、超長期の複利運用ではとてつもなく大きな成果が出ます。例えば金利を現在の金利に近い3%としても、複利だと30年後に2.4倍になります。単利と複利で結果は190対244と3割近い差が出ます。5%のケースではその差は7割以上になります。運用資金の乏しい方こそ将来をみすえ超長期の米国債に投資すべきなのです。

  もちろん米国債投資には為替のリスクがあります。あくまでドルでの運用ですから、ドルが安くなるとその分金利収入や最後にもらえる償還額は減ります。逆にドルが高くなればその分増えます。たとえば1ドルが100円だと想定し、100万円、つまり1万ドルを投資したとしましょう。金利が4%だと投資開始時点で4%の利回りは固定されますので、30年後の償還時には先の表の数字のとおり、1万ドルが確実に3万2,800ドルになるということです。将来の償還時点でも為替レートが100円であれば為替の損得はなし。金利のおかげで投資額が3.28倍になります。複利で運用すれば金利にはとてつもない力があることを実感できる数字です。では、100円より円高だとどうなるでしょう。例えば過去の最低水準である80円になってしまったとすると、その分損失が出てしまうのでしょうか。

   いいえ、そうではありません。ドルベースで元本は3.28倍になっているため、為替で2割減ったとしても、まだ元本は2.6倍になって残っているのです。いくらまで円高が進むと元本が100のまま増えない、ブレーク・イーブンなのでしょう。答えは1ドル約30.5円です。どう考えてもなりっこない数字です。ちなみに金利が3%でも為替レートが45円なるまでは損失なしです。

  長い期間を考えた場合、成長力に大きな格差がある日本の円とアメリカのドル、どちらが力を有するでしょうか。私は今後深刻な財政問題や少子高齢化問題を抱える日本の円には分がないと思っています。であれば、1ドル45円や30円にはとうていなりそうもありません。逆にドルは2倍3倍、200円―300円になるかもしれません。

  では次に、満期になる30年後に1万ドルもらうには、いくら初期投資すればよいか、逆算をしてみましょう。金利が3%だとすると、答えは4,100ドルです。1ドルが100円で変わらないなら41万円を30年間複利運用すると100万円になります。4%だと初期投資は31万円、5%だとわずか23万円で済みます。

   その程度なら若い方でも調達可能な金額ですよね。それを毎年20年間続けるとどうなるか。35歳で開始すると、30年後の65歳から85歳まで、毎年100万円がもらえる勘定になります。言い換えると、合計820万円の投資が2千万円になります。毎年41万円の調達は決して不可能ではありませんよね。投資期間の間に金利が上昇していれば、もっと大きなリターンになります。

 

  日本のように金利ゼロの貯金だけでは、何年たっても41万円は41万円。100万円ほしければ100万円が必要です。株式投資だとどうか。大きなリスクがあります。今から30年前の89年6月の日経平均株価は33,300円くらい。それが今21,000円です。ご愁傷様という以外ありませんし、今後おなじようなことが起こらない保証はありません。

  そして米国債への投資で一番大切なことは、単に増えるということではありません。ドルに資産を移すので、日本のひどい財政や年金のリスクから逃れることができることです。その安心感付きの投資は、世界で一番安全な米国債以外にありません。

   私の2冊目の著書では、より詳しい老後資金の作り方を書いてありますので、お楽しみに。

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老後資金2千万円不足の補足

2019年06月12日 | 老後の備えはどうするか

  「老後資金は2千万円足りない」という報告書が国会にも大きな波乱を巻き起こしています。それを隠滅しようと麻生大臣が「受け取らない」と必死に叫んでいますが、遅きに失しています。

   報告書の発表時に自分が作らせたと誇らしげに述べた言葉との矛盾がひどすぎ、彼自身の資質と信頼性が問題になりつつあります。彼はこれまでも財務省を巡る森友問題などの責任をうまく逃れてきていたのですが、今回は簡単には済まされないとの観測が出ています。もっとも安倍首相にとって麻生派56票は絶対に必要な票なので、必死で守るでしょう。

   今回の答申を出した金融審議会のメンバーが判明しました。一般的に有識者と言われるメンバーの他に、予想通り見事なまでの「資産運用シフト」が敷かれていました。株高演出政権の舞台裏を見ますと、メンバーには以下の組織からの人が含まれていました。

 ・野村資本市場研究所

・セゾン投信

・みずほ総研

・ブラックストーン・グループ・ジャパン(世界最大の投信会社の日本法人)

・FPアソシエーツ(フィナンシャル・アドバイザー)


 そしてオブザーバーには、以下の組織から人が送り込まれていました。

 ・日本取引所グループ(証券取引所)

・日本証券業協会

・投資信託協会

・日本投資顧問業協会

・信託協会(投資信託の業務を行う信託銀行)

・国際銀行協会

・生命保険協会

   なんとも言い難いほどの出来レースぶりですね。これでは「国民よ、資産運用に励め。でないとえらいことになるぞ」という答申が出るわけです(笑)。

 

  しかし一方で実際に出来上がった答申書の内容には、「今後の日本の老人大国の姿」など、見るべきものもありますので、興味のある方は、以下のサイトを見てください。

https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603.html

 

  さらりと見たい方のために目次を以下に紹介します。内容を全部読むのはたいへんなので、35ページからわずか2ページのサマリーを読む手もあります。「おわりに」がそれに該当します。

 

  目 次

1.現状整理(高齢社会を取り巻く環境変化) 3

(1)人口動態等 ....................................................... 3

ア.長寿化 ........................................................ 3

イ.単身世帯等の増加 .............................................. 4

ウ.認知症の人の増加 .............................................. 6

(2)収入・支出の状況 ................................................. 8

ア.平均的収入・支出 .............................................. 8

イ.就労状況 ..................................................... 10

ウ.退職金給付の状況 ............................................. 13

(3)金融資産の保有状況 .............................................. 15

(4)金融環境に対する意識 ............................................ 18

2.基本的な視点及び考え方 ............................................ 21

(1)長寿化に伴い、資産寿命を延ばすことが必要 ........................ 21

(2)ライフスタイル等の多様化により個々人のニーズは様々 .............. 23

(3)公的年金の受給に加えた生活水準を上げるための行動 ................ 24

(4)認知・判断能力の低下は誰にでも起こりうる ........................ 24

 3.考えられる対応 .................................................... 25

(1)個々人にとっての資産の形成・管理での心構え ...................... 25

(2)金融サービスのあり方 ............................................ 26

(3)環境整備 ........................................................ 29

ア.資産形成・資産承継制度の充実 ................................. 29

イ.金融リテラシーの向上 ......................................... 32

ウ.アドバイザーの充実 ........................................... 33

エ.高齢顧客保護のあり方 ......................................... 34

おわりに .............................................................. 35

【付属文書1】高齢社会における資産の形成・管理での心構え .............. 37

【付属文書2】高齢社会における金融サービスのあり方 .................... 44

 

   以上、目次を見ると実に立派な内容になっていますので、読む価値はあると思います。

 最後に一言。

   お読みになっても、くれぐれもその気になって株式投資などには絶対に手を出すべきでないとご忠告申し上げます。

   なお、NISAはギャンブル投資用口座で、安全な米国債は買えません(笑)。

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