ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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アメリカ長期金利の見通し

2022年01月31日 | 米国債への投資

今回は今後のアメリカの長期金利について、私の見方を簡潔にまとめてみました。

  前回の投稿でインフレの危険性について述べました。それは金融市場に対する以下のような影響です。その図式は以下のどおりです。

インフレの高進→金利上昇→資産価格下落→消費低迷

  アメリカのインフレ率はすでに前年比で7.0%とほぼ40年ぶりの高さになっています。その原因を作っている主な要因は、

 

・世界的に大規模な金融緩和

・コロナからの経済回復による原油など国際商品価格の上昇

・港湾施設など物流のボトルネック

 

  これに対して今後FRBは利上げと緩和マネーを回収することで対処することになります。しかしそれが予想されているのに、長期金利は上昇していません。その理由を私なりに分析しますと、

 

1.現在のアメリカの物価上昇は長期間続くものではないこと

例えば原油価格は90ドル近いレベルですが、90ドルが1年継続するとその時点で前年比の上昇率はゼロになります。それと同様にあらゆる物価をまとめて代表する消費者物価指数も現状は7%と高率ですが、現在の指数の絶対的レベルがそのままのレベルを維持するとしても、1年後には上昇率はゼロになってしまうのです。もちろんその間に賃上げにより消費者の購買力が上昇すると、さらなるインフレ率の上昇もありえます。

 

2.長期金利は1年先だけを見据えるものではなく、もっと先を見ている

簡単に言えば10年物金利の相場は10年先を見据えます。10年は長すぎるとしても、最低限3~4年、あるいは数年先を見据えますので、インフレがよほど長期にわたると予想されなければ、簡単には上昇しないと見るべきです。冒頭に挙げた3つのインフレ要因は、いずれも長く継続するものではないと思われます。

 

3.長期金利の超長期トレンドは30年以上にわたり低下を続けたが、そのトレンドをくつがえす要因は見当たらないこと

長期の低下トレンドも、基本はインフレ率の低下が要因の一つで、さらに先進国でのカネ余りがもう一つの要因です。巨大な中進国であった中国経済もカネ余り国の仲間入りをし、日本同様巨額の米国債を保有しています。現状の1%台は非常に低いレベルですが、それを覆して反転させる要素は見出せません。 

  以上が長期金利の長期トレンドを含む私の見通しです。

  だからといって今後2%超えがないとも思いませんし、3%程度に届くタイミングもあり得ると思っています。そのタイミングが接近した時には、以前同様「チャンス到来」というサインを出しますので、それを逃さないでください。

 

 

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アメリカ株式の下落とインフレの脅威

2022年01月23日 | アメリカアップデート

  前回の投稿「世界の10大リスク」の最後に、私が見通している一番大きなリスクは「インフレ圧力」だと申し上げました。そしてこう続けました。「インフレのこれ以上の高進は、金融市場や実体経済に非常に大きなインパクトを与えるでしょう」。今回はそのインパクトについてです。

  簡単に図式化すれば、

インフレの高進→金利上昇→資産価格下落→消費低迷

  インフレのインパクトが顕著に表れるのは、大規模緩和のおかげで膨れ上がっていた株式市場と不動産市場の反転です。「山高ければ谷深し」の格言通り、特にアメリカのナスダック市場にその兆しが表れています。すでに高値より14%程度低下していて、いわゆる調整局面入りしました。そして株式相場と不動産の値下がりは、アメリカでは消費の低迷に直結しますので、日本で考える以上にマイナスのインパクトが大きくなります。

  そのメカニズムを簡単に説明します。アメリカ人はもともといざという時に備えて大きな貯金を持つということをしません。手元にあるお金はすべて使い、それ以上使うのも当然というのが一般的生活スタイルです。

  収入以上に使う必要のあるお金はクレジットカードのローンを使ったりしますが、持家のある人は自宅を担保にしてローンを組むのが普通のやりかたです。それをホーム・エクイティー・ローンといいます。例えば5千万円で買った家のローンが3千万円残っていても、2千万円は自分の持分つまりエクイティーです。それを担保に使うローンの金利は通常のカードローンより低いため、使い勝手が良いのです。通常のカードローンが15%前後ですが、ホーム・エクイティー・ローンは3-5%程度です。最近は日本でもこの手のローンが導入されています。それゆえ家の価格が上がり例えば6千万円になっていれば、ローン残高を引いたエクイティーは3千万円になり、枠が拡がります。逆に不動産価格の低下はローンバリューを低下させ、消費を押さえつけてしまうという日本にはないメカニズムがあるのです。

  さらにアメリカ人の多くは預金や債券投資より株式投資が大きいため、株式価格の高騰はマインドも含め大いに消費を刺激します。株式担保のローンも金利が低いのです。ですので株価が反落した場合、これまた消費行動に大いに水を掛けることになります。

  インフレが高進すると値上がり分だけ消費を減らさざるを得なくなるのに加え、ローンを多用するアメリカ人の消費行動が上記のようなルートがあることを理解しておいてください。

 

  では最近特に高進しているアメリカのインフレの中身を見ておきます。前年比のインフレ率を見ますと昨年11月が6.8%、12月は7.0%と驚異的な数字になっています。品目別では原油価格高騰の影響でエネルギー価格が29・3%上昇、うちガソリンは58%もの上昇。半導体不足に伴い新車価格は11・8%、中古車は37・3%も上昇。エネルギーと自動車が物価上昇要因のほぼ半分を占めています。また家賃も4.1%上昇、衣料品も5.8%上昇、食品は外食を含め6.1%と多くの分野で物価が大幅に上昇しています。特に自動車社会のアメリカでガソリンが58%も上昇すると生活に大きな打撃を与え、物流コスト全体も大きな影響を受けます。原油価格の指標であるWTIは1年前の53ドルから87ドルと64%上昇しています。

 

  さすがにアメリカの中銀であるFRBもインフレは一時的だというこれまでの主張を取り下げ、しばらくは継続すると見通しを一変させました。FRBはこれまで継続していた大規模な金融緩和を停止するどころか、逆に引き締める必要に迫られています。

 

  市場の短期金利はすでに年4回のFRBによる引き上げを示唆するほど上昇していますが、長期金利は前年の1.5%前後のレンジが1.8%と0.3ポイントの上昇になった程度です。しかし株式市場はインフレの脅威が直撃しています。

  アメリカ株式市場の下落幅を見てみます。ダウは市場最高を付けた昨年の高値から直近までの下落率は6%程度ですが、ナスダック市場はすでに14%ほど下落しています。中央銀行の引締め手段は2つあり、政策金利を上昇させるかこれまでさんざん市場から買い上げた国債を売却するかです。金利がまださほど上昇していないのに株式市場を直撃している理由は、今後の金融の引き締め策が金利上昇より、市場に出回るマネーの量的引き締めにつながると見ているからです。コロナ禍でこの2年FRBが供給した過剰流動性を市場から回収する局面が来たと見るべきなのです。

 

  世界のGDPの24%、約4分の1を占めるアメリカですが、そのGDPの7割を占める消費が低迷することで世界経済に大きな影響を及ぼす、それこそが今年の世界のもっとも大きなリスクだと私は思っています。

  アメリカ国債の金利動向についてはまた別途。

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2022年世界の10大リスク

2022年01月15日 | ニュース・コメント

  年初の恒例となっているイアン・ブレマー氏による「世界の10大リスク」が発表されました。このブログで毎年全項目を掲げ、私なりの論評を書いていたのですが、今年はそこまで詳細に見ずに、ニュースによる解説だけを取り上げることにします。理由はどうも最近の予想があまり的確とはいえず、疑問符が付くものが多いためです。

 

  昨年の世界的ニュースの筆頭はアフガニスタンの混乱でしたが、ブレマー氏は全く触れていませんでした。もちろん他の予想でも触れているものはないのでしかたない部分もあるでしょう。しかしその影響は非常に大きく、最も影響受けたのはバイデン大統領です。対アフガン政策の失敗から支持率を大きく下げ、いまだに回復の兆しがありません。就任から半年後の6月くらいまで支持55%対不支持40%程度で順調だったものが、タリバンの進攻開始以降一気に拮抗してしまい、その後大きく逆転したままとなり、現状は支持42%対不支持53%となっています。今年11月のアメリカの中間選挙で民主党が負けると、次の大統領選挙に大きな影響が出そうです。

 

  では今年の10大リスクを羅列するのではなく、1月15日の日経ニュースが要点をうまくまとめていますのでそれを引用します。

引用

【ニューヨーク=宮本岳則】米政治リスクの調査会社ユーラシア・グループは3日、2022年の世界の「10大リスク」を発表した。1位に「No zero Covid」(ゼロ・コロナ政策の失敗)を挙げた。中国が新型コロナウイルスの変異型を完全に封じ込められず、経済の混乱が世界に広がる可能性を指摘した。

 報告書は冒頭で、米中という2つの大国がそれぞれの内政事情から内向き志向を一段と強めると予測。戦争の可能性は低下する一方で、世界の課題対処への指導力や協調の欠如につながると指摘した。

 21年の首位にはバイデン米大統領を意味する「第46代」を選び、米国民の半数が大統領選の結果を非合法とみなす状況に警鐘を鳴らした。予測公表の2日後、トランプ前大統領の支持者らが選挙結果を覆そうと米連邦議会議事堂に乱入した。

 22年のトップリスクには新型コロナとの戦いを挙げた。先進国はワクチン接種や治療薬の普及でパンデミック(感染大流行)の終わりが見えてくる一方、中国はそこに到達できないと予想する。中国政府は「ゼロ・コロナ」政策を志向するが、感染力の強い変異型に対して、効果の低い国産ワクチンでは太刀打ちできないとみる。ロックダウン(都市封鎖)によって経済の混乱が世界に広がりかねないと指摘する。

 先進国はワクチンの追加接種(ブースター接種)を進めている。ブースター需要が世界的なワクチンの普及を妨げ、格差を生み出す。ユーラシア・グループは「発展途上国が最も大きな打撃を受け、現職の政治家が国民の怒りの矛先を向けられる」と指摘し、貧困国はさらなる負債を抱えると警告する。

 2番目に大きいリスクとして挙げたのは、巨大ハイテク企業による経済・社会の支配(テクノポーラーの世界)だ。米国や欧州、中国の各政府は規制強化に動くが、ハイテク企業の投資を止めることはできないとみる。人工知能(AI)などテクノロジーの安全で倫理的な利用方法を巡って、企業と政府が合意できていないため、米中間、または米欧間の緊張を高めるおそれがあるという。

 米議会の中間選挙後の混乱もリスクに入れた。11月の同選挙では野党・共和党による上下院の過半数奪還が「ほぼ確実視されている」と指摘する。与党・民主党は共和党系州知事が主導した投票制限法に批判の矛先を向ける一方、共和党は20年の大統領選で不正があったとの主張を強めると予想する。共和党がバイデン大統領の弾劾に動き、政治に対する国民の信頼が一段と低下する可能性にも言及した。

 引用終わり

 

  この記事では3点を取り上げていますが、全体は以下のURLで見ることができます。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN032ZX0T00C22A1000000/

 

  トップに掲げられた中国の「ゼロ・コロナ」失敗リスクですが、世界各国は昨年のサプライ・チェーンの失敗を繰り返さないための方策を打ちつつあり、中国の地方都市に封鎖があっても大きな混乱は起きていません。中国は今後オリンピック開催に伴いさらに国内を引き締めるでしょうが、今年最大のリスクになるほど世界へ悪影響があるとは思えません。

  2つ目は巨大ハイテク企業による経済・社会支配のリスクです。各国は独禁法などで対抗措置を取っていますが、それをめぐる国家間対立はむしろ山を越えていているのではないでしょうか。

  3つ目はアメリカ中間選挙後の混乱リスクですが、昨年のトランプ支持者による国会乱入事件ほどの混乱が生じるとは思えません。理由は、民主党はたとえ僅差で負けても、それを覆すためデモ隊を扇動するようなことはしないからです。民主党支持のリベラル層や左派は保守のトランプ支持者のようにマインドコントロールされてはいませんし、バイデンは支持者を煽ったりしないでしょう。民主党の負けはすでに織り込み済と見るべきです。

 

  ということで、昨年、今年と見ていると、どうも最近のブレマー氏の予測は切れ味を失っているように思えるのです。

  まあ、批判するのは簡単ですが、「じゃ、あんたはどうなんだ」と言われても、それに的確に返答するする力は私にはありません。

  ただ一つだけ指摘するとすれば、それは「インフレ圧力のリスク」です。インフレのこれ以上の高進は、世界の金融市場や実体経済に非常に大きなインパクトを与えるでしょう。それについてはまた別途取り上げます。

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2021年アメリカの金利動向、さときびさんの質問への回答

2022年01月10日 | アメリカの金融市場

  さときびさんからの質問、「テーパリング、利上げ局面の展開の見方」への回答です。

 

  タイトルにある「テーパリング、利上げ局面の展開の見方」という質問は、そのまま回答するには専門的かつ難しすぎるため、これを「今後の金利動向をどう見るか」に変更させていただきます。たぶん多くの方の関心はこの点にあると思うからです。結論的にはさとうきびさんの見方と同じで、金利は簡単には上がらないだろうと思っています。その根拠をかいつまんで説明します。

  私は従来から金利見通しに重大な影響を及ぼすファクターは、「物価と雇用」だと申し上げてきました。これが最重要であることに変わりはありませんが、現在の局面には債券投資の需給状況というファクターを入れる必要があると思っています。

  21年11月のアメリカの消費者物価上昇率は前年同月比6.8%上昇、変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数でも4.9%の上昇と、FRBが利上げに踏み切るには十分な数値でした。レベルとしてCPIは1982年以来の高い数字です。先行きの物価についても、「しばらくすればインフレは収まる」から、「今年は年間を通じて高水準だろう」という見方に変わっています。従来から目標としてきた2%に行くか行かないかの攻防など、どこへ行ってしまったのかというとんでもない水準です。

 

  一方の雇用を見ると、1月の発表数字で失業率は3.9%と非常に低い水準でしたが、指標として重要な非農業部門雇用者数が前月比19万9千人増と、市場予想の40万人増を下回ったため、市場関係者はご不満のようです。

  しかし21年通年でみると増加幅は640万人と、1939年の統計開始以降で最大となり、非常に好調だと言えます。技術的には労働参加率が低いなどと指摘する向きもありますが、そこにはコロナと言う不確定要素もあり増加の多さは経済の強さを十分に反映していると見るべきでしょう。

 

  では「物価と雇用」がいずれもかなりのレベルなのに、何故金利がそれもFRBの操作できる短期ではなく、10年物に代表される長期金利が上昇しないのでしょうか。その答えは私の見るところいわゆる「カネ余り」です。

  コロナ禍の経済的打撃を回復するためFRBがジャブジャブに資金を供給していることもあり、各セクターが莫大な待機資金を抱えているからです。

  まず機関投資家が抱える待機資金を保有MMFで推定すると、3.2兆ドル=約360兆円あります。個人投資家は1.6兆ドル=180兆円。企業の流動資産は69兆ドル=790兆円。このうち企業の流動資産は設備投資などへの待機という面もあるため、すべてが自社株買いや債券投資に向かうわけではありませんが、それにしても巨額の待機資金です。

  これではギャンブル的株式投資は続くでしょうし、一方大きなリスクを取りたがらない向きの債券投資も、金利が上昇すれば投資してくるにちがいないと思われます。

  FRBの金融政策は買い入れを縮小するテーパリングどころか、これまでに買い入れた米国債などの売却=資産縮小すらありうるという姿勢に変化しつつあるため、市場への債券放出はあるでしょうが、買い入れ圧力は非常に高いものがあるのではないでしょうか。

  ちょっと古いのですがNY連銀によるおもしろい予測があるので参考までに紹介します。昨年5月のロイター電です。

引用

ニューヨーク連銀は5月24日、米連邦準備理事会(FRB)の継続的な資産買い入れにより、FRBのバランスシートが2022年末までに9兆ドルに拡大するとの予測を発表した。

民間銀行の準備預金は22年末までに6兆2000億ドルのピークを付ける可能性があり、その後は安定的に減少すると予想。NY連銀の市場チームによる年次報告書に予測が盛り込まれた。

償還国債および政府機関(エージェンシー)保証モーゲージ担保証券(MBS)の再投資を継続した場合、FRBの保有資産は25年まで同じ水準を維持する可能性があると指摘。「その後は、連邦公開市場委員会(FOMC)が金融政策のスタンスを正常化するのに伴い、保有資産についてどのような選択をするかで、道筋が決まる」とした。

月額1200億ドルの債券買い入れを21年末まで継続し、22年末までに緩やかに縮小させゼロに達するとの前提を置いて試算した。NY連銀による市場参加者とプライマリーディーラーの調査に基づき、将来的な資産買い入れと金利に関する前提を立てた。

フェデラルファンド(FF)金利の中央値は23年第3・四半期まで0.125%で推移したあと、26年末には2%強に上昇すると想定。長期的には2.25%に達するとした。

また10年債利回りは長期的に2.5%に、30年固定住宅ローン金利は4.1%に上昇するとした。

FRBが昨年、米経済や企業の資金調達を支援するために金利をゼロ近辺に引き下げ、緊急資金供給を相次ぎ打ち出し、毎月の資産買い入れ規模を増やしたため、バランスシートは膨れ上がった。

先週時点で保有資産は8兆ドル弱となり、2020年初め時点の約4兆1000億ドルから急拡大した。

報告書は、さまざまな状況を想定すると、FRBのバランスシートは2030年まで9兆ドル近くに維持されるか、6兆6000億ドルまで減少する可能性があるとの見通しを示した。

引用終わり

 

  現実はこの予想よりかなり早くテーパリングが完了し、利上げも行われると思われるのですが、それでも待機資金の多さから長期金利の上昇は緩慢なものにならざるを得ないだろうというのが私の見方です。

 

  以上ですが、回答になりましたでしょうか。

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明けましておめでとうございます & Puffinさんのコロナ解説

2022年01月08日 | コロナショック

 新年早々、東京の雪には驚かされました。

  雪の積もった関東のみなさんは、無事でしたか。転倒などのけが人は250人を超えたそうです。特に東京人は弱いですね。

  私は年末年始の主夫から解放され、昨日まで志賀高原でスキーに行っていました。関東に雪が降った日は快晴のコンディションに恵まれ、よい景色を含め楽しく滑ることができました。スキーの往復は車、スキー場のゴンドラは仲間のみで乗車、ホテルなどでも十分な対策が取られていましたので、感染リスクは比較的低いと思われます。

  新年早々Puffinさんから最新のコロナに関する解説をコメント欄にいただきました。現状やウイルスの今後のトレンド予想など貴重な情報ですので、この本文にて再掲させていただきます。

 Puffinさん、ありがとうございます。

引用

2022-01-06 15:23:38

新年あけましておめでとうございます。

すっかりご無沙汰しております。
62歳になったのに、その齢で敢えて転職活動していたため、忙しくてなかなか時間が取れませんでした。

新年早々、オミクロン株の爆発的感染が広がりつつあるようです。
私、一応医療機関で働いておりますが、急性期病院の手術部門の為、実は全然仕事に変化はなく(多少手術が減ったくらい)、新型コロナの問題はどちらかというと第三者的立場で眺めてきました。

初期型のアルファ株よりも感染力・毒性ともに高いデルタ株の第5波襲来の時は、ちょっとひやりとはしました。
しかし、ウイルスの特性として最終的には感染力がより高く、その一方で毒性が低い変異型こそが最終形態である、との感染症学のドグマがある限り、心穏やかにみていました。

同じ感染症でも、ウイルスと細菌(バクテリア)とでは、とても大きな違いがあります。
ウイルスは無生物、細菌は生物です。生物には自己増殖機能を有するため、至適環境下では放っといてもその数は増えていくのに対して、ウイルスのような無生物は宿主となる生きた細胞内に侵入して、ウイルス本体であるDNA若しくはRNA遺伝子の複製を乗っ取った細胞に作らせて増えていきます。
つまり、毒性が強くてせっかく獲得した宿主を殺してしまうようなウイルスは、進化の競争の中では自己を十分に増やすことで残る事は出来ないのです。
無治療なら致死率ほぼ100%のエボラ出血熱やマールブルク熱、狂犬病等が、人類を破滅に導くような脅威ではないのは、こうした理由によります。

オミクロン株は、恐らく発生源とみられている南アフリカの状況を見る限り、感染力は強い一方、その毒性はそれまで猛威を振るっていたデルタ株よりもかなり劣ります。
南アでは、殆どの感染者がデルタ株からオミクロン株に置き換わりました。先程の原理が、正に実現したのです。

元々、コロナウイルスは、約百年間にわたって子供の感冒の約1/3を占めている感染症です。たいていの人は免疫力が最強の子供の頃に感染し、抗体が免疫記憶細胞に記憶され、高齢になっても重症化しません。
新型コロナでは、高齢者や合併症を持つ人たちなどのハイリスク層が、当然小児期に感染していないため、このような事態を招きました。
感染力が強い一方、弱毒化した変異株の登場は、ワクチンを打ってない人を含む万人に、感染治癒後に免疫力を与えます。
約百年前に全世界で猛威を振るった「スペイン風邪」、今でいうインフルエンザの変異株は、ワクチンも人工肺(ECMO)もなかった時代にもかかわらず、約2年間で姿を忽然と消しました。
新型コロナが発生したとみられるのが、2019年11月とみられています。今、ちょうどその2年がたとうとしている時に登場したオミクロン株、これが新型コロナの最終型となって、新型→旧型コロナとなるのではないか、と思えてなりません。

日本は死亡者数が同様の医学・生活レベルの他の先進国群と比して1/100と少ないのが世界の医学会の中でも不思議とされていました。なお、新規感染者数は検査検体数が少ないので参考になりません。
ノーベル医学・生理学賞を受賞している京大の山中伸弥教授は、これを「Factor X」と名付けましたが、どうやら感染初期に細胞性免疫細胞を呼び集め役目をするHLA(ヒト白血球抗原)が関与していることがわかってきました。
HLA-A24と分類されるタンパク質抗原を、実に60%の日本人が生まれつき保有しております。新型コロナに感染すると、このタンパク抗原に新型コロナのRNAの一部が表示され、感染症の際に真っ先に駆け付ける役目のキラーT細胞にこの情報が伝達されて、瞬く間に初期段階でウイルスの増殖を防いでいるのです。重症化まで行くのは、残り4割の中でも更に高齢者や重篤な合併症を持つ人に限られるため、日本人では圧倒的に死者が少ない、と考えられています。
このHLAは人種間での保有率に大きなばらつきがあり、白人では10から20%、アフリカ系黒人に至ってはほぼゼロ、とされています。
先進国ではなくて人の移動が限られていたアフリカは感染の始まりも遅く、いよいよこれからか、というタイミングで偶然にも毒性の低いオミクロン株が南アフリカで発生したのは、天恵なのかもしれません。

第1波から第5波までの流行を見てみると、その発生からピーク、そして収束までの期間が次第に短くなってきています。その段でいうと、日本におけるオミクロン株のピークは、1月下旬から2月中旬にかけて、と思われます。
科学的に感染を防御できることのエビデンスが無い「ロックダウン」や「緊急事態宣言」など、経済を破壊して自殺者を増やすだけのFlawed Policyを取ることなく、皆様もコロナ第6波を無事通り過ごしてしまうことを願ってやみません。

 

引用終わり

 

 

  

 

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