ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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個人相談、HKさんの体験談

2020年05月30日 | 個人相談の内容と感想

  5月19日にコメント欄にいただいたHKさんからの感想を、遅くなりましたがあらためて本文にて紹介させていただき、私のコメントも付けさせていただきます。HKさんとは直接の面談を避けて、テレビ電話を使用した面談でしたが、どうやらワークすることがわかり安心しています。

  ではまず感想をそのまま引用します。

コロナ下での個人資産運用相談 (HK) 5月19日

   3年前に先生の著書に出会い、日頃からブログを拝見しておりましたHKと申します。
4月から5月に掛けて林先生の個人相談を受けさせて頂いたので、お礼を兼ねて感想を書かせて頂きます。


  まず今回相談を受けたいと思ったきっかけですが、私自身、株式投資を10年程度、米国債投資を3年程度行っておりますが、3月のコロナショック時に株式での難平買いを繰り返した事で含み損が最大で30%までいき、夜中に米国マーケットが気になって目が覚めたりなど精神状態がよろしくない状態になっておりました。
  幸い3月下旬より株価が好転し、下落時に購入した資産に含み益が出たことでポジションが解消し易い状況になった事で、同じ過ちを犯さないために、林先生のアドバイスと受けさせて頂く事にしました。
  早速、ご相談させて頂きましたところ、現在コロナウィルス蔓延の環境下のため対面でのやり取りを避け、メールと電話でのやり取りをご提案頂きました。
  数日後林先生より自身の将来に向けての収支計算表が送られてきました。
内容は自身のリスクポジション、将来のインカム、年金や将来の支出など、生涯に渡っての計算を行うものでした。
  自分自身で計算して先生に送信、先生のコメント付きで返信、再度記入して送信を繰り返し行いました。複数回のやり取りを行った事で分かった事は、現在の貯蓄を続けて行けば大きなリスクを取らなくても、生涯何とかなりそうだったと言う事でした。
  その後、TV電話を使っての振り返りや今後のアドバイスをいただきました。
そこで頂いたアドバイス通り、積立以外の株式、投資信託を売却しました。
また、将来に向けての米国債の買い方やドル預金についてのアドバイスをいただき、これから実行していく段階です。
  とても有意義なご相談が出来、ありがとうございました。
同様のお悩みを抱えている方が居られたらと思い、コメントさせて頂きました。

引用終わり

 

  私とHKさんのやりとりは、個人相談を考慮中のみなさんの参考になると思い、これまでの進行具合にかんして日にちを追ってお知らせしたいと思います。およそのスケジュール感もつかんでいただけると思います。

 

4月25日 HKさんがフェイスブック「ストレスフリーの資産運用」の「メール送信」ボタンを押され、当日私にメールが到着。私からHKさんに「基本情報」の提供を依頼。

 

4月26日 HKさんより「基本情報」到着。

 

4月28日 基本情報を基に、私から次のステップである生涯にわたる「基本収支計算」を依頼。基本収支計算とは、生涯にわたり年代別にどのような収入が見込まれ、逆にどれくらい生活費使うかの想定をしてもらう計算表です。HKさんの場合現役時代には貯蓄をすることが可能で、リタイアするまでにある程度資産形成が可能でした。この計算で重要なのは、キャピタルゲインや利子所得など、「捕らぬ狸の皮算用」をしないことです。ちまたにあふれる資産運用を含めたライフプランなどは、現在の状況とはかけ離れているものが多いと思われます。

HKさんはリタイア後年金生活に入られますが、すると資産をすこしずつ取り崩す必要が出ます。その収支計算を生涯にわたりライフステージごとにしていただくのが、基本収支計算です。

 

5月2日 HKさんより基本収支計算表が到着し、ふたたびそれに関してメールでのやりとりが続きました。そのあたりのことについてHKさんは次のように書かれています。再度引用します。

「収支計算表の内容は自身のリスクポジション、将来のインカム、年金や将来の支出など、生涯に渡っての計算を行うものでした。自分自身で計算して先生に送信、先生のコメント付きで返信、再度記入して送信を繰り返し行いました。
複数回のやり取りを行った事で分かった事は、現在の貯蓄を続けて行けば大きなリスクを取らなくても、生涯何とかなりそうだったと言う事でした。」

つまり「リスクを取る運用は必ずしも必要ない」ということが判明しました。

 

5月14日 スマホでラインを使用したテレビ電話にて面談

  実際の面談に至るまで約3週間が経過しています。その間にHKさんはかなりの計算をされたりしたため、ご自分の将来に関して自信を持たれたように思います。私としても面談の前におおかたの情報を得ることができました。その結果、面談自体はとてもスムーズで、時間も有効に使えたと思います。

  HKさんにはさらに宿題をお願いしました。その内容は基本収支計算の結果、各ライフステージにおいて貯蓄額がどのような推移をたどるかの計算です。

 

5月29日 昨日ですが、HKさんから追加の計算書が届きました。拝見するととても綿密に計算されていました。結果として生涯の収支結果はプラマイゼロに近いという理想的なものでした。こうして何度かやり取りをすると、ご自身で収支計算の修正なども行われ、より正確なものになったと思います。このあとは追加計算を含めた内容を私が検証し、コメントをさせていただき、一段落となります。時間的にはトータルで約一か月でした。

 

  普通のサラリーマンであるHKさんのケースは、スケジュール感を含めてとても「標準的ケース」と思われますので、みなさんのために本文にて紹介させていただきました。HKさんは最後にこう述べられています。

「複数回のやり取りを行った事で分かった事は、現在の貯蓄を続けて行けば大きなリスクを取らなくても、生涯何とかなりそうだったと言う事でした。」

 

  HKさんはご自身の将来、いや生涯について、大きな安心感を得られたと思います。それこそが私が個人相談で最も大事な目標としていることですので、安心しました。

  HKさん、どうもご苦労様でした。

 

  個人相談はその方により相談内容から当方の回答内容までかなり差があります。従って個人相談は決して標準化されるものではなく、個々の方にとってもっとも大事なことは何かということを考慮したカスタムメードであることを付け加えます。

 

  最後にみなさんが気にされるであろう費用についてですが、当初費用3万円でここまではすべてカバーされます。HKさんが費用に関してどのような感想をお持ちか、できればコメント欄で正直なところを書いていただけると、みなさんの参考になると思いますので、遠慮なくお願いしたいと思います。

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「ダイヤモンドプリンセス号の真実」 by 岩田健太郎

2020年05月23日 | コロナショック

  先日NHKのドキュメンタリー番組で、「ダイヤモンドプリンセス号内で何が起こっていたか」が放映されました。ご覧になった方も多かったと思います。トイレの便器や風呂の床など意外なところからウイルスが発見され、感染が拡がったということが報道されていました。その番組ではあまり詳しく報道されなかったのですが、大混乱の中実際に船に乗り込んだものの2時間でたたき出されてしまったのが感染症の現場の専門家岩田健太郎です。氏の著書、「新型コロナウイルスの真実」を読みましたので紹介をさせていただきます。今回の私のタイトルは著書のタイトルとは変えて、「ダイヤモンドプリンセス号の真実」としています。そのほうが本の趣旨に合うとみているからです。

 

  岩田健太郎氏を覚えている方は、あまりいらっしゃらないかもしれません。あのダイヤモンドプリンセス号に入って行って、わずか2時間で放り出された感染症の専門家です。彼はニューヨークでは炭疽菌テロ、SARSの時には北京に、エボラの時にはアフリカにと、それぞれ現地での治療や感染予防に当たっている現場第一主義の神戸大学病院教授です。

 

  彼のように非常にシビアな現場で場数を踏んでいる専門家は日本には非常に少ないのに、ダイヤモンドプリンセス号では入ってすぐに放り出されたのです。その後もマスコミなどが彼を取り上げもしましたが、非難にもさらされました。その彼が放り出された直後に書いた本を読んでみました。日本政府の感染対策の稚拙さがよく理解できました。

 

  もっとも印象に残った言葉は、彼自身の言葉ではなく中で引用されていた東大教授安富歩氏の、「東大話法」という言葉でした。本の114ページからその部分を引用します。

 

「厚労省は少しずつ巧みに言葉をずらして、『自分たちは常に正しい』という話にもっていこうとする。それを安富さんが『東大話法』と名付けています」

 

  この本が書かれたのはダイヤモンドプリンセス号直後の2月、出版は3月です。加藤厚労大臣が巧みに言葉を変えて「誤解だ」と言い張り、日本中から顰蹙を買った最近の話ではありません。

 

  では本の中身のハイライトであるダイヤモンドプリンセス号(DP)内部の実態を部分ダイジェストします。ここではあえて「笑い話」としますが、本当に笑えるほどひどいからです。彼が指摘する笑い話の第一は、「政府はDP乗船者の救済にDMATを派遣した」という部分です。DMATとは災害派遣医療チームで台風や大地震の時に緊急派遣されますが、怪我人の出血や骨折の手当はできても、感染症の専門家は皆無なのです。その人たちには気の毒ですが、感染症対処の基本知識がないため、自分たちが感染してしまったのです。

 

  笑い話その2、彼が船内に入った時、清潔ゾーンと不潔ゾーンの区分はあっても不潔ゾーンから医療用ガウン(PPE)をまとって出てきたチームの人が背広を着てうろうろする厚労省派遣者と一緒に行動したため、両方に感染者が出てしまった。PPEの脱ぎ方の基礎知識がない人が着ていて、その危険性の認識のない役人がうろうろしていたためです。PPEは脱ぎ着の訓練を何十回もしないと感染防止はできない、難しいガウンなのです。

 

  笑い話その3、厚労省から派遣されていた検疫官が乗客・船員など感染者がいるかもしれない3千人を対象にPCR検査をする際、全員に紙の同意書を書かせた。規則上同意書なしに検査はできないというのが理由で、おかげでペンや紙から検疫官も検査される側も感染者が出てしまった。

 

  笑い話その4、DMATの他に精神科のチームDPATが派遣された。精神的ストレスを緩和するケアの専門チームですが、そのチームは感染症の専門家ではないため、直接患者乗客と面談をしてしまい感染。そのチームの感染者が乗客への2次感染も起こした。DP船上ではそもそも緩和ケアの必要はなく、下船してからでもよい。もし必要があってもスマホのテレビ電話でできたはず。

 

  ついでに笑い話その5は、そもそも彼を派遣した厚労省は彼を災害派遣医療チームDMATの一員として送り込んだのです。そのため彼は感染症の何たるかを知らないDMAT指揮官に従い、そのDMATも厚労省の役人指揮下に入った。

  

  彼は船内のメチャメチャな状況に危機感を抱き、ゾーニングの大切さや感染専門家として積極的に改善すべ事項などその場で意見を述べたところ、厚労省の現場指揮官から対策チームの和を乱したとして即刻たたき出されてしまった。厚労省のやることはいつでも間違いはなく、無謬性こそが日本の役人の寄って立つところだからです。そして間違ったことがわかっても「東大話法」で交してしまう。絵にかいたような日本のお役所仕事です。

 

  すべて決められたマニュアルどおりにしかやらない役人たちがマニュアル通りに動いていたが、彼にいわせればそもそも役人たちは感染症の蔓延している現場などの経験者はほとんどいない。役人たちが普段やっている仕事は、全国の保健所などから上がってくる感染者などの統計を集計し、対処方針を決めるのが仕事。感染者の多数出ている現場の仕事を経験してもいない、感染防止の仕方すら知らない役人が派遣部隊全体の指揮をとり、笑い話にあるような感染の拡大に貢献してしまった。

 

  彼への非難のネットニュースも見ておきましょう。

 

「船内は適切な感染対策をしていたのに、わずか2時間程度で一部しか見てない部外者が不安をあおるようなことを言うな。いわく、仮に感染対策が不完全だったとしても、不安や疑念が交錯するときだからこそ一致団結していかなければいけないんだから、スタンドプレーで船内に潜り込んで一方的な批判だけするのはいかがなものか」。

 

  こうしたお役所の普段からの集団行動様式がせっかく派遣されてきた専門家をたたき出すことになり、結局ダイヤモンドプリンセス号の乗船者合計3711人中712人もの感染者が出て、うち13人が死亡してしまいました。私が犠牲者の家族だったら、厚労省を告訴します。

 

  以上を告発した岩田氏は今後も厚労省からは忌み嫌われるでしょうし、彼の意見を決して聞こうとはしないでしょう。

 

 

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景気の先行きはV字、U字、L字、それともスウォッシュ型

2020年05月19日 | コロナショック

  昨日、日本の1-3月期のGDPが2期連続でマイナスになったと発表されました。10月から消費税が引き上げられたため前の期は△7.1%でしたが、それに続いて△3.4%で2期連続マイナスのため、景気は後退期に入ったと認定されます。しかし問題はもちろん次の4-6月期です。すでに大方のエコノミストの予想は△20%前後となっていて、リーマンショックをはるかに超えそうです。アメリカでは失業率も20%超が予想され、不況の程度は大恐慌以来というような声まで聞こえます。

  世界経済の将来を巡っては様々な見方が議論されています。その中にあって一昨日アメリカのFRB議長パウエル氏がCBSのインタビューに答え、かなり慎重な見方を示しました。そのニュースをNHKニュースから引用します。5月18日のNHKニュースから引用します。

引用

FRBのパウエル議長は17日CBSのインタビューに答え、新型コロナウイルスの感染拡大で悪化した景気の先行きについて「回復にはしばらく時間がかかるだろう。来年の終わりまでかかる可能性もある」と述べた。
そのうえで「景気が完全に回復するためには、人々が確信を持つ必要があり、ワクチンの開発を待たなければならないかもしれない」と述べ、ワクチン開発の状況が景気回復にも影響する可能性があると指摘した。

さらに失業率について、1930年代の世界恐慌の時と同じ水準の25%まで悪化するおそれがあるのかという質問に対し、「さまざまな見方があるが、ピークでそれくらいではないか」と述べ、先月14.7%となった失業率が、さらに悪化する可能性もあるという厳しい見方を示した。
アメリカの多くの州では、感染拡大のピークは過ぎたとして経済活動を再開させる動きが始まり、経済や雇用の回復への期待が出ているが、FRBとしては感染の第2波への警戒もあり、慎重な見方を示した。

引用終わり

 

  さて、こうした大きな激震があった後の回復過程を表す言葉には、V字回復とか、U字回復、そして回復なんか当分望めないという意味でL字型と言うような表現がよく使われます。

  一方、最近アメリカではやっている回復イメージは「スウォッシュ型」です。英語ではSWOOSHと書きますので、音としてはスウッシュに近そうですが、とりあえずよく使われるスウォッシュでいきます。

  これが何の意味だかご存知の方は、かなりの経済通です。これは実はナイキのマークです。と聞くと、なるほどと思われるでしょう。ドカンと落ちた後に、底這いに近いもののL字ではなく先行き徐々に回復するイメージです。

  では突然ですがここで質問です。ナイキは何故このスウォッシュマークをロゴとしたのでしょうか。

  むかしよくNIKEをニケと読んで笑われたという話がありました。しかしこれは笑い話ではなく、そもそもナイキは勝利の女神「ニケ」をイメージに使ったのだそうです。ニケとは神話に出てくる勝利の女神で、有名な「サマトラケのニケ」とは、エーゲ海のサマトラケ島で見つかってルーブルが収蔵している、首がなく翼の生えた大理石の女神像です。ご覧になった方も多いでしょう。私はあの像を見るたびに、首は落ちたのに大きく広がった翼はよく落ちなかったものだ、と思います。

  それが何故あのスウォッシュマークになったかというと、ニケの翼のイメージを模したのだそうです。そういわれてみると確かに翼を切った断面は、あのロゴのような形状をしています。いわゆる浮力を得るための形状です。昨日、空飛ぶマイケル・ジョーダンがプロ入り初期に履いたシューズ、エア・ジョーダン1がオークションに出され、6千万円で落札というニュースもありました。85年のあの大ヒットが今日のニケじゃなくて、ナイキの隆盛を作り出しました。

 

  話を景気に戻します。FRBのパウエル議長の言うような来年末の回復となると、たしかに回復イメージは長く伸びたスウォッシュマークのようになるかもしれません。かなり慎重な見方ですが、一つにはトランプ政権の前のめりな経済活動再開に向けた姿勢をけん制したのだと思われます。もちろん先行きはコロナウイルスの感染状況によるのでしょうが、オレ様独裁者たちが跋扈している世界を見ていると、そうした慎重な見方をしておくのが間違いなさそうに思えるので、コロナ感染の先行きが見えない中ではありますが、私もま延びしたスウォッシュ型を支持します。

  11月の選挙しか考えていないトランプは、すべてを中国のせいにしてコロナの大爆発から責任逃れをして、経済回復に賭けています。150万人の感染はトランプの責任以外、誰のせいでもありません。このため自分に対して諌言を吐く側近はことごとく首にし続け、「そして誰もいなくなった劇場」がいまだ続いています。しかし事は彼の思惑通りには進みそうもありません。トランプ支持者が多く大統領選でも選挙人の数が多い重要州テキサスでは、コロナ感染者数が4月には大きく低下して5月1日に規制緩和宣言をしたのですが、このところ感染者数はまた力強く急上昇し始めました(笑)。

  現時点での世界各国の感染者数順位は以下のように、オレ様独裁者たちの愚かさ加減どおりの順位になっています。そしてこのところ頭角を現している大バカ者ボルソナロは、やがてプーチンや感染経験者ジョンソンを抜いて2位の栄冠に輝くに違いありません。気の毒なのはブラジル国民です。すでに病院すらないアマゾンの奥地まで感染が拡がっていますが、彼は依然「コロナなんかインフルエンザと同じだ」というスタンスを変えずまともな経済封鎖をしようとせず、国民から見放されつつあります。

世界の感染者数順位5月17日

1位 トランプのアメリカ  147万7815人
2位 プーチンのロシア   28万1752人
3位 ジョンソンのイギリス 24万4603人
4位 ボルソナロのブラジル 23万3648人

  日本がこの中に入っていないのが、せめてもの救いです。ちなみに現在15位ですが、順位は下がりつつあります。

  安倍政権はこのところの支持率低下に仰天し、検察庁法案を引っ込めました。この一両日に行われた朝日新聞の世論調査では支持率わずか33%、不支持率47%と大逆転。モリカケ問題が沸騰した18年春の31%につぐ低さでした。三権分立無視では同列の安保法案で強行採決に及んだものの、さすがにコロナ感染下では強行採決できなかったのでしょう。おかげで私自身は多少留飲を下げることができました。マスクをしないトランプに比べ、極小マスクをしているだけ多少マシなのでしょう(笑)。

  でもあのビキニマスク、要注意です。洗いすぎるとTマスクになるそうですので(爆)。

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新型コロナウイルス治療薬の現状、Puffinさんによる解説

2020年05月13日 | コロナショック

  いまだ先の見えないコロナウイルスとの戦いが続いています。治療薬さえあれば、これほど深刻に受け留めなくても済みますし、緊急事態宣言により多くの方が多大な経済的悪影響を受け続けることもないと思います。

  しかし一方、治療薬の開発は日々実用化に向けて進んでいるようです。7日に緊急承認された重症者用と言われるレムデシベルや、日本発として注目されているアビガンについてなど、Puffinさんがサイバーサロンというクローズドなネット上のサロンに投稿されました。その情報を、私のブログで公開すること許可してくださいましたので、早速みなさまにお知らせしたいと思います。ブログでの公開を前提にしたものではなかったため、難しい用語を含む解説ですが、どうぞしっかりとお読みいただき、ご質問などあれば私でなくPuffinさんにお願いしたいと思います(笑)。

 

新型コロナウイルス治療薬の進展状況

レムデシビル(ベクルリー)が本邦でも承認されました。
最近色々脚光を浴びる形となっている両薬剤について、まとめてみました。

  ファビピラビル(アビガン)は、本邦の富山大学医学部の白木公康教授と富士フィルム傘下の富山化学工業が共同研究して開発し、2014年に承認認可を受けた、抗インフルエンザ治療薬です。
体内に投与されると化学変化して作用発現する「プロドラッグ」で、RNAウイルスが生体細胞内で自己のRNAを複製する際に働くRNAポリメラーゼ(RNA複製酵素)作用を阻害させます。
RNAを構成する4種類の核酸のうちのアデノシン及びグアノシンと類似した構造を持つことにより、RNA複製酵素に誤認させて取り込まれますが、紛い物のため、取り込まれた部位以降のRNA鎖の伸長を阻害する伸長阻止薬として作用します。


インフルエンザウイルスのみならず、同じRNAウイルスであるエボラ出血熱やノロウイルス、ウエストナイル熱ウイルス、黄熱ウイルスなどにも効果があると考えられ、今回の新型コロナウイルスに対しても現在治験が行われている。中間報告では、無症状もしくは軽症例への投与では、1例も死への転帰を辿った症例がなく全例完解したとの報告がありました。

インフルエンザ治療薬としては認められていますが、胎児への催奇形性の副作用があることや、他剤での治癒不能例への最終兵器として使いたい、という日本政府の意向により、薬価収録されていないため、市場に出回ることはなく、政府が認めた場合にのみ製造が許可される限定条件が付けられています。更には、中国企業が特許ライセンス契約を締結しておりましたが、2019年に物質特許が失効したのち、まだ残る製造特許には抵触しない形で中国においてジェネリック薬が製造されるようになっています。



レムデシビル(ベクルリー)は、米国にて希少疾患専門の治療薬を開発しているギリアド社がエボラ出血熱治療薬として開発途中の薬剤です。
この薬剤については、ギリアド社はその詳しい作用機序などは開発途中であることを理由に開示しておりません。現在は第3層治験中で、それまでに判明している結果などから、やはりRNA複製酵素の作用を阻害するもの、と推測されています。


4月29日に世界68施設での重症COVID-19患者に対する臨床試験の予備的解析結果が発表され、主要評価項目の回復までの期間はプラセボ群15日に対してレムデシビル群11日、副次的評価項目の患者死亡率はプラセボ群11.6%に対してレムデシビル群8.0%と発表され、一般紙などの報道では注目が集まりました。

しかし、統計学的有意差が認められたのは、回復までの期間のみで、死亡率には有意差は認められておらず、さらに同日「Lanset誌」において発表された中国での重症新型コロナウイルス患者への投与試験結果では、症状改善効果に有意差なし、という結果が出ております。

こうしたRNA複製酵素阻害薬は、ウイルスの「増殖」を抑えるもので、すでに増えてしまったウイルスを破壊する効果はありません。従って、病状が進行した重症例では劇的効果を期待するのは早計です。無生物であるウイルスは生きてはいないので「殺す」こともできず、自己免疫力で一つ一つ破壊していくしか治癒するすべがありません。両剤とも、感染初期や軽症例での効果には十分期待が持てるので、こうした治療の選択肢が増えることを祈念しております。

ここまでがPuffinさんの最初の投稿で、その後にいただいた追加の投稿も以下に転記させていただきます。


特にレムデシビルについてはマスコミでは期待先行ですが、冷静に適応症例を選んでの投与をしないと現場が混乱してしまうと思います。なお、レムデシビルは点滴投与、アビガンは内服投与の薬です。

また、既に30年くらい前から「急性膵炎」や「汎発性血管内血液凝固症(DIC)」の治
療に使われていたナファモスタット(商品名フサン)という蛋白質分解酵素阻害薬がありますが、こちらが、ウイルスが人間の細胞内に侵入する過程の「膜融合」を阻止する効果が報告されており、侵入後のRNA複製を阻害するアビガンと併用する治験も始まったようです。フサンも、日本の鳥居薬品が開発した薬で点滴投与する薬です。既に市場では、備蓄に走った病院が多く、品薄状態となっています。

Puffinさんからの情報は以上です。

 

  コロナウイルスによる影響が果たしてどこまで続くのかとても懸念されます。その中でこうした薬剤がしっかりと効果を発揮し、一般に普及し、コロナ感染がインフルエンザ感染並みになってくれることを期待したいと思います。

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コロナウイルスを巡る偽情報

2020年05月11日 | コロナショック

  ブログの更新を忙しさにかまけ、ちょっとさぼり気味でしたが、また復活いたします。

  この3~4か月ほどの間に、みなさんのもとにも様々な怪しげな情報が飛びこんできたと思います。5月4日付の日経新聞ニュースを引用します。タイトル「有害デマ 視聴1億回超 新型コロナ、止まらぬ情報汚染」

引用 デマの例

「水蒸気を5分吸うと、ウイルスが不活性化される」(スペイン)

「靴を屋外に置くべきだ」(クロアチアなど)

「酢と塩の入ったぬるま湯うがいが効く」(トルコなど)

ファクトチェック団体のファクトチェック・イニシアティブ(東京・千代田)によると、世界各地で新型コロナウイルスを巡る真偽不明のネット情報が観測されている。いずれもSNS(交流サイト)が主な発信源だ。

引用終わり

  その他、2月頃に拡散されたかわいいものでは、「今回の武漢ウイルスは耐熱性がなく、26-27度の温度で死にます。 そのため、お湯をたくさん飲む、お湯を飲ませれば予防になります」。というものがありました。だったら人間の体温で何故死なないのだ!

  こうしたかわいいウソなら無視できます。私のところに来たメールは、NYのマウントサイナイ病院発情報として、「コロナウイルスの解説と予防法」というのがありました。マウントサイナイ病院は、NYで最も権威のある病院で、いまでも毎日のニュースで発表される世界の感染者数・死者数などを集計し発表している病院です。内容的には大きな問題はないのですが、この文書について病院側は、「そのようなものを発表したことはない」とはっきりHP上で表明しています。

   かわいいものや内容にあまりウソのないものであれば、さほど影響力もないのでスルーすれば済みますが、私が参加しているクローズドなサイバーサロンでは、大学の名誉教授という名も権威もある方が、間違った理論をもとにセンセーショナルな数字を発表し問題になっています。

  その理論、統計学に明るくない一般の方にはとても説得力があり、信じてしまうのも無理はないという内容です。しかも名誉教授は間違いを指摘されても、絶対に正しいと信じているため、ガンとして訂正などしないのです。内容は、5月初めの時点で、「もし今アメリカで感染すると致死予測率は28.5%、3-4人に1人は死ぬ。日本で感染すると13.4%で、7-8人に1人は死ぬ」というものです。実にセンセーショナルで、本当なら世界がひっくり返るほどの大事です。内容をその方の投稿からかいつまんで引用します。

 

部分引用

医学の分野で伝統的に用いられている「致命率」は、「ある時点」の「死亡者数」の「感染確認者数」に対する割合です。

「5月2日」に世界の感染者は「3,386,519人」で死亡者は「240,654人」ですから、致命率は「7.1パーセント」です。(*240,654人/3,386,519人x100=7.106235)

この致命率は、疫病の流行の全体の中で、幾らの人が死亡しているかを「ある時点」で把握するものです。しかし、その分母の「感染確認者数」には、これから死亡する人数が含まれていますから、油断ならぬ数値です。たとえば、流行の初期に感染者だけがいて未だ死亡者がいない時点での致命率 CFRは「0パーセント」ですね。

最初 WHOは、武漢の数値から「致命率はおよそ2パーセント」などと公表していました。その後だんだん増え続けて現在「7.1パーセント」になっているわけです。私の「致命予測率」の定義はそれとは異なっています。

私の定義は「死亡者数」の「死亡者数と回復者数との合計数」に対する割合です。これは「私が感染確認者になると、どれくらいの割合で私が死ぬか」という致命予測率です。

4月30日に世界の死亡者は「240,654人」、回復者数は「1,063,521人」ですから、その合計数は 「1,304,175人」です。

よって、私の定義では、致命予測率「18.5パーセント」です。

残りの感染確認者は、この「18.5パーセント」でこれから生きるか死ぬかが振り分けられるに相違ないという割合です。

日本は、検査数152,029人、感染者14,305人、死亡者455人、回復者 2,975人ですから、致命率は 3.2パーセント、致命予測率は 13.4パーセントです。日本ではいったん感染すると 7~8人に1人は死ぬという予測です。

アメリカは、検査数 6,551,810人、感染者 1,117,979人、死亡者 65,416人、回復者 164,015人ですから、致命率は5.8パーセント、致命予測率は28.5パーセントです。アメリカではいったん感染すると 3~4人に 1人は死ぬという予測です。

引用終わり

 

  日米ともに一般的に言われている死亡率、あるいは致命率が、致命予測率ではなんと数倍に跳ね上がるというのです。これは聞き捨てなりません。

 

  もちろんこれは統計学を無視したまやかし、あるいは失礼ながら統計学の無知によるものなのですが、統計学にある程度通じていないと論破するのは結構難しいのです。では私の反論をかいつまんで引用します。比較してみてください。

引用

これが予測として正しいとすると、日本もアメリカも大パニックになるでしょう。しかしそんなことはありませんでした。なぜなら感染症の専門家でこの理論を適用する方はいないし、この理論は広まっていないからです。


  では私の考え方を以下に説明いたします。

  • そもそも致死率とは死亡者数を感染者数で割ったもので、これは収束した場合のみに正確な計算ができる。
  • したがって途中経過で回復者数という別の指標を用いて将来予測をするのは合理性に欠ける。
  • その合理性を欠いた数値に「致死予測率」などの名称を付すのは、まぎらわしく危険である。
  • アメリカと日本の致死予測率が5%と13.4%で大きく違うのは、同じ病気なのに疫学的におかしい。すでにほぼ終息に近い中国は5%台であったと結論が出ているが、その数値とも違いすぎる。

 

  ではほぼ結果が出ていることをI名誉教授も認めている中国の当初から現在までの数字を追って、この理論を検証しましょう。数字はWHOのサイトからです。

https://www.worldometers.info/coronavirus/country/china/)グラフにポインターを当てると、日付と実数が見られます。

 

      感染者数  死亡数  回復者数  回復+死亡数 I名誉教授致死予測率

2月2日   17,205   361   836     1,197     30.0%

2月17日   72,436   1,868  14,420      16,288     11.5%

3月1日     80,026   2,912  47,410    50,322     5.7%

 

3月初めから現在までの変化は微小なので省略します。

   致死率の結果の出ている中国でも途中経過の致命予測値と最終数値はそれぞれ大きく違います。最初の2月2日は30%、17日には11.5%、最終的には5%台です。それ自体予測率としては意味を成しません。

  日本はそろそろ新たな感染者数がピークに近いため、中国で言えば2月17日の11.5%に近いと思われます。I氏理論の日本の瞬間数値はそれに近い13.4%で符合します。しかし中国の最終結果は5%台ですから、13.4%に慌てる必要などありません。回復には時間がかかるという「時間軸のずれが数字の振れを起こしている」と推定できます。

  予測値が大きく振れる推計値は統計学的に申しますと、「有意ではない」となります。予測数値として採用は不可という意味です。有意でなくなる理由は、最初に指摘したように、感染者数と死亡者数の最終数字を比較をしなければならないものを、回復者数という別の指標を混入させたためと推定できます。

 

  従って私はI名誉教授理論を「予測数値として妥当ではない」と結論付けました。この記事のタイトルにある「偽情報」とは違います。

  みなさん、どうぞご安心ください。日本でいま感染しても、7-8人に1人死ぬ、なんてことはありませんので。

引用終わり

  ちなみに私の指摘した以下の3つに対しての反論はありませんでした。

  • 同じ感染症なのに、日米で致死予想率がこれほど違うのはおかしい
  • 同じ中国内でも時間経過により数字が大きく違うのは、予測値として有意でない
  • 致死予想率の計算過程で時間軸を無視している

  そのかわり反論として出てきたのは、「私の理論はSNS上で大きな反響を呼び、読者数は延べ数万人です」とのこと。

 さて、みなさんは両者の議論をどう思われますか。そしてこの理論を聞いたことのある方がいらしたら、どのようなところで入手されたのか、是非お知らせいただけますか。

  ちなみに私は大学では経済学部だったので、統計学と計量経済学の授業は受けていますが、そんなものはほとんど忘却の彼方にありました(笑)。しかし20歳代後半、日本経済研究センターで経済予測の研究員をしていた時に、統計学を再度一から教えられ、徹底的に鍛えられたおかげで、マクロの経済モデルも手繰れるようになりました。そのあたりから「林は数字ヲタクだ」と言われています(笑)。

 

コメント (5)
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