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トランプの精神分析

2020年06月30日 | トランプのアメリカ

  ボルトンによる暴露本の報道により、いよいよトランプの心の中の本質が明らかになりつつあります。しかし実は精神分析医の間では、選挙運動中から彼の危険性について様々な分析が行われ、危険性が指摘されていました。それを引っ張り出してみなさんにお見せしたいと思います。

  日本でもトランプの大統領就任直後に脳科学者である中野信子氏が文芸春秋誌上で「トランプはサイコパスである」という記事で彼の脳内を分析し、私もそのサマリーをブログの記事に載せました。

  今回はアメリカの精神医学の専門家が危惧する、トランプの「病的自己愛」と「ソシオパス」についてアメリカ在住のエッセイスト渡辺由佳里氏がニューズウィーク日本語版に寄稿した記事を長文ですが、そのまま全文を引用します。

   アメリカ人をまんまと騙して大統領になりおおせた人物の本質をとくとご覧ください。

 

記事のタイトルは、

<トランプの危険な人格を「警告」する義務感に駆られた専門家が寄稿した解説書は、何より米社会の「邪悪の正常化」に警鐘を鳴らす>

 

引用

2015年6月16日に大統領選への出馬を発表して以来、ドナルド・トランプの常軌を逸した言動に関する話題は途切れたことがない。

ビデオやツイッターでの揺るぎない証拠があるというのに平然と嘘をつきとおし、それを指摘されたり、批判されたりすると、逆上する。そして、こともあろうか、ツイッターで個人を執拗に攻撃する。

これまでの大統領候補や大統領からは想像もできなかったトランプの言動に対し、インターネットやメディアでは「彼は単にクレイジーなのか、それともキツネのようにずる賢いのか?(Is the man simply crazy, or is he crazy like a fox?)」という疑問が繰り返されてきた。

しかし、精神科医や心理学者、心理セラピストなど精神医学の専門家の大部分は、専門的な見解は述べず沈黙を守ってきた。その主な理由は、「ゴールドウォーター・ルール」というアメリカ精神医学会の行動規範だ。

この行動規範の名前は1964年大統領選の共和党候補バリー・ゴールドウォーターから来ている。核兵器をベトナム戦争で標準兵器として取り扱うことを推奨するゴールドウォーターに対して「Fact」という雑誌が精神科医からアンケートを取り、「1189人の精神科医が、ゴールドウォーターは大統領になるには精神的に不健全だと答えた」というタイトルの特集号を刊行した。大統領選に敗戦したゴールドウォーターは名誉毀損で雑誌の編集者を訴え、勝訴した。

この経緯から、精神医学専門家の品格や信頼性を維持し、公人や有名人を名誉毀損から守るために「公的な人物について、直接に正式な検査を行なわず、また承諾を得ずして、その人の精神の健康について、専門家としての見解を述べることは非倫理的である」というゴールドウォーター・ルールが生まれた。

トランプ大統領が就任した2カ月後の3月、アメリカ精神医学会の倫理委員会は、「もしある個人が国や国の安全にとって脅威だと信じている場合に意見を述べても良いのか?」という仮の質問を挙げた上で、改めてゴールドウォーター・ルールを遵守するよう呼びかける声明を発表した。

だが、このアメリカ精神医学会の対応に疑問を抱く専門家は少なくなかった。

17年4月20日、イェール法律大学院でも教鞭をとる精神科医のバンディ・X・リー准教授が「『警告義務』も専門家の責務に含まれるのか?」というカンファレンスを企画した。

リーに招待された多くの専門家は関わるのを避けたようだが、インターネットやメディアで関心を集め、複数の大手出版社が出版を持ちかけた。執筆希望者も多く、その中から27人が3週間というタイトなスケジュールで書き上げたのが本書『The Dangerous Case of Donald Trump (ドナルド・トランプの危険な症例)』だ。

内容は大きく三部に分かれている。

 

一部の「われわれの警告する義務」では、「警告義務」は専門家と患者の間にある「黙秘義務」を覆すという立場で書かれている。「警告義務」とは、患者から特定の人物への殺意を告白されていたのに、治療者が「黙秘義務」を守ったために実際に殺人が起きたタラソフ事件が発端である。この事件で治療者は責任を問われ、現在では、第三者への危険が明らかになった場合には「黙秘義務」より「警告義務」が優先されることになっている。

この部分では、それぞれの執筆者が「検査もせずに診断はできない」というゴールドウォーター・ルールをわきまえたうえで、公の場で簡単に入手できるトランプの言動から該当する人格障害などを挙げ、「トランプは大統領として危険だ」と警告している。

二部は精神医学専門家が抱えるジレンマがテーマだ。国や人々の安全が脅かされる場合、ゴールドウォーター・ルールよりも「危険を知らせる義務」のほうが大きいのではないか、というものだ。

三部のテーマは、トランプが社会に与えた影響や、今後の危険性についてだ。

だが、読み逃してはならないのは、本文に移る前のロバート・J・リフトンによる「まえがき」だ。

朝鮮戦争のとき空軍の精神科医として日本と韓国に駐在したリフトンは、戦争と人間の心理に興味を抱くようになり、原爆の被害者、ベトナム戦争帰還兵士、ナチスドイツの医師などについて本を書いた。そんなリフトンが警告するのは、「Malignant Normality(悪性の正常性)」だ。

私たちのほとんどは、自分が暮らしている環境が「正常」だと思っている。けれども、「正常」の基準は、特定の時代の政治的環境や軍事的な動向の影響を受けて変化する。そして、私たちは、その変化にたやすく慣れてしまう。

極端な例はリフトンが研究したナチスドイツの医師たちだ。彼らは、アウシュビッツで恐ろしい人体実験や殺人を行った。

「動揺し、震え上がった者がいるのも事実だ。しかし、手慣れた者が一緒に大量の酒を飲み、援助や支援を約束するなどのカウンセリング(歪んだ心理セラピーとも言える)を繰り返したら、ほとんどの者は不安を乗り越えて殺人的な任務を果たす。これが、『邪悪への適応』プロセスだ」とリフトンは言う。ナチスドイツの医師たちの間に起こったのは、「邪悪への適応」から「邪悪の正常化」だった。

リフトンによると、近年のアメリカにも「悪性の正常性」の例がある。ジョージ・W・ブッシュ政権下で、CIAは「増強された尋問のテクニック」と称して「拷問」を取り入れた。その拷問プロトコルの作成者の中に心理学者が2人含まれていたのだ。

冷戦時代の初期には、政府が核兵器の大量貯蔵を「正常なこと」とアメリカ国民に説得させる任務を精神心理学の専門家が導き、近年では地球の温暖化を否定するグループのために専門家が働いた。

このような過去を念頭に、「(トランプ時代の専門家は)この新しいバージョンの『悪性の正常性』を無批判で受け入れることを避けなければならない。そのかわりに、我々の知識と経験を活かしてあるがままの状況を暴露するべきだ」とリフトンは主張する。

さて、肝心のトランプの精神状態だが、専門家はどう見ているのだろうか?

自己愛(ナルシシズム)の専門家でハーバード大学メディカルスクール教授のクレイグ・マルキンは、まず「pathological narcissism(病的な自己愛)」について説明する。

自己愛そのものは病気ではなく、自信を持って幸せに生きるためには必要なものだ。自己愛を1から10までのスペクトラムで測ると、4から6は健全なレベルであり、それより低かったり、高かったりすると問題が生じる。有名人は普通より高いものだが、10に近づくと「病的な自己愛」の領域になる。「自分が特別だという感覚に依存的になり、ドラッグと同様に、ハイになるためには、嘘をつき、盗み、騙し、裏切り、身近な人まで傷つけるなどなんでもする」という状態だ。この領域が「自己愛性パーソナリティ障害(NPD)」だ。

トランプの言動パターンは、この自己愛性パーソナリティ障害(NPD)と精神病質(サイコパシー)が混ざりあったときの「malignant narcissism(悪性の自己愛)」だと言う。

「悪性の自己愛」は診断名ではない。元はパーソナリティ障害の専門家であるエーリヒ・フロムの造語で、「自分のことを特別視するあまり、他人のことを自分がプレイしているゲームで殺すか殺されるかの駒としか見ていない」。いとも簡単に殺人命令を出したヒトラー、金正恩、プーチンなどが例として挙げられており、このエッセイのタイトルである「病的な自己愛と政治:致命的な混合」の意図が理解できる。

専門家としてさらに踏み込んでいるのがハーバード大学メディカルスクールの元准教授のランス・ドーデスだ。冒頭の「トランプは単にクレイジーなのか、それともキツネのようにずる賢いのか?」という疑問に対して、はっきりと自分の見解を述べている。ドーデスは、トランプの言動がもっと深刻なものであり、「精神錯乱」の徴候だと考えている。

ふつうの人間には他人への「empathy(共感、感情移入)」がある。それが欠落しているのが「ソシオパス(社会病質者)」だ。深刻なソシオパスの多くは社会から脱落するが、チャーミングで思いやりがあるフリができるソシオパスも存在する。彼らは人の操縦に長けているので、成功していることが多い。

ソシオパスはときおり「サイコパス(精神病質者)」と同様に使われるが少し異なり、上記の「病的な自己愛」の重要な側面であり、公式の診断名である「反社会的パーソナリティ障害」と同意語だとドーデスは説明する。

ドーデスは公の記録にあるトランプの言動から、「重篤な社会病質者の傾向がある」と結論づけている。そして、「これまでトランプ氏ほどの社会病質的な性質を顕わにした大統領はほかにいない」と言う。

ドーデスがこれほどはっきりと発言する理由は「重篤な社会病質によるパラノイアは、非常に大きな戦争のリスクを生む」からだ。戦争を起こせば、国の指導者として非常事態のために大きな権力を手にすることができる。この際に、憲法で保証されている人権を停止し、戒厳令を出し、マイノリティを差別することも可能になるという計算が背後にあるというわけだ。

論文を書くのに慣れている専門家たちなので、根拠もきちんと書かれており、本書を読むとトランプの精神状態への危機感を強く感じる。

この本を読了した翌日、筆者は別件でホワイトハウスを訪問する機会があった。

招待してくれたのは、これまで4回の大統領選挙を経験している共和党のベテラン戦略家である。彼自身は「社会的にはリベラル、経済的には保守」という立場であり、筆者がヒラリー・クリントン支持だったことも承知している。

雑談のときに率直な意見を求めたところ、彼は言いにくそうにこう語った。

「(共和党の議員たちは)みな、トランプはクレイジーだと知っている。トランプに票を投じた者の多くもそう思っている。だが、有権者は自分たちの生活を良くするために何もしてくれない議会にうんざりして、ぜんぶ捨ててしまいたいと願った。彼らは、すべてをぶち壊して、新しく何かを始めてくれる者としてトランプを選んだのだ」

最近になってようやくジョン・マケインなど何人かの共和党議員がトランプ批判に乗り出したが、いずれも再選を狙わない者だけだ。そのほかの共和党議員らが後に続かないのは、次の選挙で有権者から見捨てられるのがトランプではなく自分だと分かっているからなのだろう。

翌日のパーティでも、集まったのは共和党の人たちばかりなのだが、みな税金を湯水のように使うトランプ政権の閣僚たちに呆れ果てていた。だが、それを公に追及するのは「大人げない」という雰囲気があるのも事実だ。民主党の議員やヒラリーの支持者がトランプを糾弾するのもそうだ。「選挙に負けたのだから、潔く沈黙せよ」と批判されてしまう。

先の共和党の知人も「メディアはトランプの言動にいちいち振り回されてはならない。自分に都合が悪いことから目をそらすための目くらましなのだから」と言う。

しかし、こういう態度こそが、先に出てきた「悪性の正常化」の一種ではないかと感じた。

トランプ大統領の精神状態について最も重要な点を指摘しているのは、二部の「トランプ・ジレンマ」に寄稿したニューヨーク大学教授の精神科医ジェームズ・ギリガンかもしれない。

『男が暴力をふるうのはなぜか そのメカニズムと予防』の著者であるジェームズ・ギリガンは、エッセイの中で「われわれが論点として挙げているのは、トランプに精神疾患があるかどうかではない。彼が危険かどうかだ。危険性は、精神科の診断ではない」と主張する。

トランプの危険性を証明する言動は多く記録に残っているが、ギリガンが例として挙げているのは、「使わない核兵器を持っていることに何の意味があるのかという発言」、「戦争の捕虜に対して拷問を使うことを奨励」、「すでに無罪であることが証明している黒人の少年5人に対して死刑を要請」、「『スターならなんでもやらせてくれる』と女性に対する性暴力を自慢」、「政治集会で、自分の支持者に抗議者への暴力を促す」、「(大統領選のライバルである)ヒラリー・クリントン暗殺をフォロワーに暗に呼びかける」、「5番街の真ん中に立って誰かを拳銃で撃っても支持者は失わないと公言」といった多くのアメリカ国民が熟知しているトランプ発言だ。

 

これらは、ギリガンも書いているようにほんの一部でしかなく、暴力の威嚇、自慢、鼓舞が次から次へと絶え間なく続いている。

「ドナルド・トランプが繰り返し暴力の威嚇をし、自分の暴力を自慢しているのに対して私たちが沈黙を守るとしたら、彼のことをあたかも『正常な』大統領、あるいは『正常な』政治的指導者だとして扱う危険でナイーブな失敗に加担し、可能にすることになる」とギリガンは訴える。

トランプが独裁者になりたがっていることは、専門家の指摘を待つまでもなく、彼の言動から明確だ。だからこそ、次のギリガンの呼びかけが重要になる。

「1930年代にドイツ精神医学会がおかした過ちを繰り返さないようにしよう」

これこそが本書の真髄だろう。

引用終わり

 

  我々は今後11月の選挙までに彼がどれほど危険な賭けに出るか、しっかり見守る必要があります。ただ一つの救いは、この期に及んで共和党内にも新たな離反者が出てきていて、彼の愚かな大統領令などに耳を貸す者がいなくなりつつあることです。

  ちなみに6月29日現在、トランプの支持率は41%、不支持率は56%で、その差は15ポイントと順調に開いています。

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レーム・ドナルドダック

2020年06月21日 | トランプのアメリカ

  アメリカ大統領がレームダック化するのは2期目の半分を過ぎてからと言われています。次がない大統領の言うことなど聞くもんか、というわけです。今回のドナルドダックは1期目の終わりを前にレームダック化が始まっています。

  いつも強気のトランプが、先週お気に入りのFOXニュースのインタビューで、「落選したらどうしますか」と聞かれ、「何もしないよ」と弱気の答えをしました。ただしこれはその前にインタビュアーから、「あなたは落選してもホワイトハウスに居座るのではないか」と聞かれて答えた言葉で、抵抗はしないよという意味で言っています。しかしいずれにしろ支持率が明らかに落ち始めた彼から出た初めての弱気の言葉です。

  本日グッドニュースが飛び込んできました。みなさんご存知のように、ボルトン回顧録の差し止め請求が連邦裁判所判事により棄却されました。政権が出版を差し止めたいということは、暴露内容の信憑性が高いという証拠で、出版がますます楽しみになりました。内容には、トランプが習近平に再選サポートを依頼したというだけでなく、各国首脳との会談でもトランプのあまりの無知さにあきれられたということなどが書かれているそうです。例えばイギリスのメイ首相に、「イギリスは核を保有しているのか」と聞いた、などです(笑)。

  ついでにトランプの姪がトランプ一族の脱税行為をはじめ、スキャンダラスな内幕を暴露する本を8月に出版するそうで、その頃にはきっと溺れた犬を棒で叩くことにもなりそうです。親族であっても彼にあきれ果て、アメリカのためにならないので落選させようという動機があるようです。

  ですが裏ではホワイトハウスは非常に陰湿なことを画策していました。本日のニュースですが、トランプ政権による違法な司法介入を捜査しているNY州の判事をバー司法長官が解任しようとし、なんと本人が何も知らない中で「彼はいい仕事をしたが、辞任した」と勝手に述べたのです。驚いた本人が「辞任などしていない」と早速否定しました。当然、民主党が判事をやめさせようとするホワイトハウスの違法な司法介入である、と追及を始めるようです。

 

  先日の記事、「オレ様独裁者たちのたそがれ」で述べたように、トランプの身内の離反はますます広がりを見せています。司法界では出版差し止め棄却だけでなく、不法移民の子供を強制送還させないようにするDACAという制度をトランプが、撤廃してやると表明しましたが、それも最高裁により棄却。またLGTBを差別するのは違法との判決を示されこれも敗北。いずれもトランプ自らが自分の考えに近いとして選んだ最高裁判事により否定されています。6月17日のウォールストリートジャーナル日本語版を引用します。

引用

米連邦最高裁判所が職場での性的少数者(LGBT)差別は違法との歴史的な判断を下したことで、キリスト教福音派の有権者のつなぎとめを重視するドナルド・トランプ大統領にとっては、再選の行方を巡り新たな不透明感が生じている。

 最高裁は6対3で、1964年制定の公民権法は、性的指向や性自認に基づき雇用主が労働者を差別することを禁じているとの判断を示した。保守派は今回の判断を激しく非難するとともに、その矛先をニール・ゴーサッチ判事に向けた。ゴーサッチ氏はトランプ氏が任命した保守派判事だ。

引用終わり

 

  そして記事にもあるように、前回の選挙でトランプ当選の原動力になったキリスト教福音派の多くの信者が、これまでのトランプによるあまりの蛮行に離反し始めたといわれています。特に福音派新聞の編集長すらトランプ不支持を表明しています。もっとも私に言わせれば、そんなことはトランプの過去の蛮行から分かり切っていたのに、何をいまさらなのです。

  そして昨日はトランプが暴挙ともいえる選挙運動をしました。オクラホマ州で大規模な支持者集会を開催。スタッフ6名がコロナに感染したことが判明しても強行しました。会場ではトランプも支持者もマスクをせず密集して着席し、ひんしゅくを買っています。感染を恐れている支持者も多かったため、満員にはほど遠い集会になっていました。そこで訴えたえたことはもちろん、「経済優先で、オレ様が勝つ」でした。

  アメリカの感染者数は経済活動を再開させた州でふたたび増加し始め、いつまた制限を発動するかわからない状況に至っている州が多くなっています。きっとコロナウイルスも、トランプ再選の邪魔をしてくれるに違いありません(笑)。

 

  アメリカをメチャクチャにし、世界もメチャクチャにした大統領がどんなレームダックになるか、じっくりと眺めることにしましょう。

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オレ様独裁者たちのたそがれ

2020年06月11日 | コロナショック

   トランプの支持率対不支持率の差が節目の10ポイントを越えました。支持42%対不支持55%とその差約13ポイントと大きく拡がったのです。私が見ている統計はいつものとおりReal Clear Politicsというアメリカのサイトで、全米をカバーする世論調査と、その2週間分の平均値が算出されています。これはトランプの差別的発言に対する反対運動が、単に人種問題のデモにとどまらず、反トランプ運動に変質しつつあることを示しています。ついでに大統領選挙での支持率も、およそトランプ40対バイデン50とかなりバイデンがリードを拡げています。

 

  死亡した黒人フロイド氏に対するトランプ大統領のツイッター攻撃内容があまりにひどく、さすがに岩盤支持にひび割れが生じてきたようです。それに加えて警官によるデモ参加者への突き飛ばし行為に対しても、トランプが余計なことをツイートし、墓穴を掘っています。

  ひび割れは岩盤支持層だけでなく、共和党内にも生じています。ブッシュ・ジュニア大統領時代に国務長官だった保守党の重鎮コリン・パウエル氏「トランプは嘘ばかりつき、憲法をないがしろにし、国を混乱に陥れている」と最大限の非難声明を出しました。またトランプ政権の元国防長官であったマティス氏も、「トランプは私が出会った大統領で初めて国を分断しようとした大統領だ。大統領は国をまとめるのが仕事なのに」と語っています。

  本当はトランプ当選からずっと苦々しく思っていた共和党員が全米のデモに乗じ、遂に耐えかねて本音を語り始めたのでしょう。今後は現役の共和党議員にも同様の動きが拡がる可能性があると私は見ています。つまり大統領選と同時に行われる下院・上院の選挙でトランプ支持を表明すると落選の憂き目に遭うので、トランプ支持の意思表示をしなくなる。そこまで行くと、一気に雪崩を打つ可能性すらありそうです。

 

  人種差別反対の動きはデモ隊や政治家などにとどまらず、セレブの間でも起こっていて、自分のツイッターなどを真っ黒にする「ブラックアウト・チューズデー」運動が起こりました。最初はアメリカの音楽業界の大企業がこぞって参加したのですが、その動きに同調したハイテク業界や、個人では歌手、俳優、スポーツ選手などが参加しています。アメリカで活躍する日本人選手でも、八村塁、大谷翔平、大阪なおみ、錦織圭、ダルビッシュなども参加し、みずからのツイッターなどのアカウントを真っ黒にしました。

 

  私は前回の投稿で、オレ様独裁者に率いられている国であればあるほど経済優先のためコロナ感染者は多くなる傾向があると指摘しました。オレ様たちはみんな「コロナなんて恐くない。インフルエンザと同じだ。マスクなんかするもんか」と同じ強がりを言っていて、その結果感染者数はオレ様独裁者のいない国が収まりつつあるのに、いぜん拡大しています。感染者数世界一のアメリカに、遂にボルソナロのブラジルが追い付いてきました。そしてロシアも追随してきています。

 

  どのオレ様たちも高い支持率を誇っていたのですが、コロナに負けたのかここにきて異変が起きています。トランプと限らずどのオレ様も支持率を落としていて、反政府デモが渦巻くようになっているのです。ロシアのように言論封殺がひどい国でも、反プーチンデモが起こっています。もちろんその矛先はコロナ制圧の失敗だけではなく、プーチンを終身皇帝ともいえる大統領にしようとするインチキな憲法改正にも向けられています。反ボルソナロのデモは最大都市サンパウロを中心に行われ、市長が大統領に反旗を翻し、市民がそれを支持しています。自分の地位安定のために経済を優先するボルソナロの姿勢に対し、命の危険を感じている市民が立ち上がっています。

 

 「オレ様独裁者たちが跋扈し始めた世界をコロナが変えた!」と言える日が近づいているのかもしれません。  

 

  ひるがえって日本はどうか。コロナ感染者数が少ないにもかかわらず、感染対策や経済支援の遅れ、黒川問題などから安倍政権がやはり大きくつまずいています。世論調査の支持率はおおむね3割台に下がり、調査によっては3割を切るところまで出てきました。5月26日の時事通信ニュースを引用します。

「毎日新聞の23日の調査によると、支持率は前回から13ポイント急落して27%。朝日新聞の23、24両日の調査は29%で、第2次安倍政権発足以来最低を記録した。安倍首相は25日の記者会見で「日々の支持率に一喜一憂することなく、与えられた使命に全力を尽くしていきたい」と述べるにとどめた。
 自民党の閣僚経験者は「黒川氏問題が響いた。想定外だ」とため息を漏らす。10万円の一律給付をめぐる迷走などが相次ぎ、党内からは「政権運営の歯車が狂いだしたのではないか」(ベテラン)との声も出ている。」

 

  ついに世界のオレ様独裁者たちにたそがれが来たと見ておくべきでしょう。

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オンラインコンサートについて

2020年06月08日 | アートエッセイ

  私のようなクラッシックファンにとって、コロナ感染の影響でコンサートが制限されてしまうのはとても残念です。ライブハウスと違い、観客が立ち上がってみんなで一緒に歌ったり叫び声を上げることはないのですが、それでも隣や前後の方との距離はかなり接近していますので、制限を受けていました。そのかわり芸大の澤和樹学長などをはじめ、日本や世界の多くの演奏家たちがオンラインでコンサートを行い配信されています。私も澤学長のコンサートをはじめ、機会あるごとに視聴しています。

 

  私と家内が行く予定にしていた4月2日のピアニスト反田恭平のコンサートは8月に延期されることが3月は中に発表されました。すると彼はすかさず4月1日にサックス奏者の上野耕平など総勢8人でオンライン有料コンサートを企画。我々もモノは試しと視聴してみました。視聴料は千円、クレジットカードで前払いでした。

 

  当日の配信画面にはカウンターがあって、視聴者数が出るようになっていました。反田恭平のコンサートは今日本で一番入手困難なコンサートと言われていて、いったい何人くらいが視聴するのか、興味を持って見ていたのですが、一番多かった時間でも2千人弱程度で、金額的には2百万円という結果でした。サントリーの大ホールは2千人のホールですから人数的にはまあまあだったのですが、主催者である反田恭平氏としてはちょっと期待外れだったかもしれません。

 

  では実際にPC画面での実況はどうだったか。予想通りではありますが、正直申し上げて期待外れでした。問題はもちろん音質と画質。それとオンラインのライブ実況にありがちな動画の一時停止です。停止問題の在りかが発信側にあるのか、受信側にあるのかはわかりませんが、画像の中断は視聴者には残念でした。

  クラシックのファンは音には非常に敏感です。どんなにいいステレオ装置よりも、やはりホールでの生演奏だし、PCでの視聴より大型テレビです。PC画面をテレビにつないで見ることはできるのですが、中断は阻止できません。

  だからといって今後も私たちファンは彼をはじめ演奏家への支援を続けたいと思っていますので、またオンラインのライブ演奏があれば、視聴するつもりです。

 

  そのリベンジではありませんが、5月18日のNHKBSプレミアムで「反田恭平オールショパン」という番組を見ることができました。彼のソロコンサートですが、どうもスタジオ録画ではなさそうな場所での画像が配信されたのです。ピアノの置いてある舞台の奥がガラス張りで、小ぶりの石庭があるのです。興味津々で調べてみると、そのホールは立川市にある「CHABOHIBA」、チャボヒバという不思議な名前のホールでした。HPから説明を引用します。

 

   「CHABOHIBA HALLは優れた音響効果を持つ約100席の小さなホールです。」

ここにはかつて広い庭があり、蚕の住む大きな家屋がありました。 ホールの名の由来となった樹齢130年を越えるチャボヒバの木は 今も中庭に聳え立ち、歴史を見守っています。

そしてホール内にはベーゼンドルファーのグランドピアノが静かに佇み、 皆さまをお迎えします。身近で文化・芸術を楽しめる場として、 多くのみなさまに愛されるホールを目指しております。

 

以下のHPでチャボヒバという不思議な形の木をはじめ、多くの写真を見ることができます。

http://chabohiba.jp/

 

  反田恭平については以前も何度か投稿しています。朝日ホールで3晩連続コンサートをこなし、その時の使用ピアノはなんと巨匠ホロヴィッツが愛していた古いスタインウェイ、CD75 だったとか、子供のころの先生はテレビアニメ「ピアノの森」だったとか、父親はいまだに「ピアニストなんか」と彼をバカにしているというようなことを書きました。彼は今ベースをワルシャワ音楽院に置き、ショパンコンクールを目指していますが、今年予定されていた5年に一度のショパンコンクールは残念ながら延期されてしまいました。

  

  NHKBSプレミアムの話に戻ります。チャボヒバホールのHPにはコンサート用にベーゼンドルファーのピアノが用意されていますと書いてあります。ベーゼンドルファーもプロがコンサートで使用する世界的メーカーのピアノです。ところが番組で彼が使用したのはみなさんがあまりご存じないイタリアのFAZIOLIというピアノでした。

  世界のホールで使用されているコンサートグランドのほとんどはスタインウェイなのですが、最近はヤマハもけっこう頑張ってはいます。それでもスタインウェイの牙城は崩せません。ところがFAZIOLIというメーカーは、その牙城を崩そうとしている新興メーカーで、私も注目しています。

 

  脱線が長くなりそうなので、今回はここまでにします。

 

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暴走老人トランプのクラッシュ

2020年06月01日 | トランプのアメリカ

  この3・4日のトランプの暴走ぶりが目に余りますので、ちょっとオチョクッておきます。

 

その1.アメリカと中国が衝突しているのに、アメリカが香港に与えている優遇措置を取り上げると宣言。内容は香港人のビザ優遇やアメリカが中国に課している高関税の免除をやめ、中国並みにするというもの。

  いったい何を血迷っているのか。

  可哀そうなのは香港人で、踏んだり蹴ったりです。

 

 

その2.ツイッター社によるフェイク拡散防止策をオレ様に適用するなら、ツイッター社をつぶしてやると宣言。オイオイ、ツイッターで自分の宣伝を何万回もしているのは、おまえだろ。

いったい何を血迷っているのか。

 

その3.G7サミットをテレコンファレンスではなく、実際に会って行うと言っていたが、メルケルが参加しないと言ったら、9月に延期だと前言をひるがえした。その上中国包囲網を築くためにロシア・オーストラリア・韓国・インドを招くと言い出した。メルケルをはじめ欧州の参加者がそれを支持するとはとても思えない。

  いったい何を血迷っているのか。

 

その4.白人警官による黒人容疑者への暴行殺人に端を発した全米デモ参加者に「略奪したら軍に発砲させるぞ」と脅迫ツイートした。ツイッター社はそれを脅迫であるとして見えなくし、見る人は脅迫であることを理解したうえで見ろとした。

  いったい何を血迷っているのか。しかしデモ隊の暴力行為はよくないし、ましてや略奪はご法度です。

 

その5.WHOに「1か月以内に改善策を示さなければ、カネを払わず脱退する」と宣言したのに、わずか11日で「脱退だ」とわめいた。

   いったい何を血迷っているのか。ちなみに議会はすでにWHOへの拠出を承認済のため、取り消しは簡単ではありません。

 

  トランプがこんなことをしまくる理由は二つ。

一つ目はすべて選挙で勝つため。上の政策は自分の支持者が喜ぶに違いないと勝手に思っている。二つ目はサイコパスのトランプは自分が絶対に間違っていないとしか考えられない構造の頭を持つため。自分の言っていることのウソや矛盾や間違いなどに意識が回らない暴走老人だから。

 

  この暴走ぶりにさすがの岩盤支持にヒビが入り始めトランプの支持率が下がり、不支持率が上昇。支持44%対不支持54%と、その差が珍しく10ポイントになりました。

 

  ポイントを5つあげましたが、彼にとって一番の問題は、今や内乱寸前まで行っている警官による黒人の殺人問題でしょう。デモ隊に参加しているのは黒人ばかりでなく、トランプの暴走をいままで指をくわえて見ていた白人やヒスパニックも含め国民的運動の様相を呈し始めました。彼がそれに対抗するような言動をすればするほど運動は激しくなり、反トランプ国民運動になりつつあるのです。

 

  そして血迷った彼の暴走行為で一番怖いのは、先日も書きましたが、支持率向上のために物理的戦争を始めることです。近くはブッシュの父子のように、イランなど中東での小競り合いを戦争にまで発展させるのは実に容易だし、北朝鮮を突っつくのも簡単です。

 

  さあどうするトランプ。彼の発言の「ウソ・マコト」をチェックするツイッターを廃止するか?

 

できるものならやってみろ!

 

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