ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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「投資は米国債が一番シリーズ」 1.日本の破綻はどう起きるか?

2023年09月26日 | 投資は米国債が一番

 日銀は9月22日の政策決定会合でこれまでの政策金利(翌日物の超短期のこと)の据え置きを決めました。つまり短期金利はマイナスのまま。長期金利のイールドカーブ・コントロール=YCCも上限1%を据え置きました。短期金利は99年にゼロ金利を導入して以来、24年もゼロ近辺のままで、我々の預金収入をほぼゼロにし続けています。

 一方、148円台に達している為替レートは、この数年日米の10年物金利差に同調して動いていますので、日銀YCCの変更がないと大きくは反応しません。

 10月になるとまた多くの物価が上昇を控えていますし、それ以前にガソリン価格も値上がりしたままで、家計は苦しくなる一方です。欧米をはじめとする世界各国はインフレ対策として当然中央銀行が金利を上げ、景気を冷やすことで対処しようとしていますが、日本はそれをせずに20年やってダメだった政策をそれこそ、20年一日のごとく継続したままです。

 9月8日の投稿のタイトルは「日本人の窮乏化」でした。それは物価上昇分を差し引いた実質賃金が目減りしているからでした。その時に使用した統計は8月分だったのですが、9月分の統計が出ていますので、その記事を日経ニュースから引用します。

引用

厚生労働省が9月7日に発表した7月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、1人当たりの賃金は物価変動を考慮した実質で前年同月比1.7%減少した。5カ月連続のマイナスとなった。円安や原油高による物価上昇に賃金の伸びが追いついていない。こうした状況が続けば家計の購買力が低下し、景気の下振れ圧力となる。

引用終わり

 

 日銀が景気を回復させるためにやっているつもりのマイナス金利政策が、インフレを通じて実は景気を冷やしている。この厳然たる事実を決して認めようとせず、植田日銀も継続しています。それがいつまで続くのか。エコノミストの大方の見方は、「来年の春闘の賃上げ率が判明するまで日銀は継続する」という見方です。

 しかし9月8日の投稿で書いたように、「春闘は日本の一部の人にしかない特権」であることに日銀もエコノミスト達も気が付いていません。連合のカバー率は全労働者の2割に過ぎないし、6,700万人に達する年金受給者は前年比マイナスの年金しかもらっていません。ですので、たとえ春闘の賃上げが3%台であっても、日本人全体の実質所得は物価上昇分を差し引くとマイナスを継続するに違いない。

 またボヤいてしまいました。

 

 では今回の本題に入ります。コメント欄に吉田さんからいただいた次の疑問に、答えていきたいと思います。

質問の引用

「日本の危機」とは具体的には何が想定されますか。
①金利を上げることで株価が暴落する
②日本国債を有する金融機関が膨大な評価損益に喘ぐ。場合により破綻
③国債価値が破綻し、日本円も価値が暴落する
こういったことでしょうか。

引用終わり

 

①の金利を上げることで株価が暴落する
については、「金利を上げる」のは日銀です。本格的暴落が始まったら金利を上げない、もしくは下げるという手段がありますので、株価大暴落による金融危機を起こす原因として決定的ではありません。株価暴落は政策的に金利をいじれる短期金利ではなく、すでに大量に発行され、そのうち半分近くを日銀が保有している長期債金利上昇が原因になる可能性が強いだろうということを指摘しておきます。しかしそれも、現在のように日銀がいつまでも買い続けると、破綻に至るかは定かではありません。

 

②日本国債を有する金融機関が膨大な評価損に喘ぐ。場合により破綻

これについては、評価損を棚上げするという非常手段が残されています。会計上保有資産は値洗いをして評価損益を決算に反映することになっていますが、評価損失が膨大になることを見込んで日銀・金融庁などが、「償還まで持ち切るのであれば時価評価は不要」だという方針を出せば、決算上の破綻はまぬがれる可能性があります。

 それでも海外投資家や格付け会社はごまかせません。日銀を含む国債保有者の財務悪化を株売りや格下げによって厳しく評価するでしょう。すると瞬時の破綻は免れても、銀行であれば預金者による引き出し行動を誘発する可能性があります。預金引き出しは簡単には阻止できないのですが、日銀特融で資金供給する可能性大です。しかしその時には日本人はトイレットペーパーを買い占めながら(笑)、全国の銀行で引き出しに走る国民です。すると大きなインパクトを持ちえます。その場合、ATMを停止させ、窓口では引き出し額の制限などをするでしょう。もちろん商売上の銀行決済取引に支障をきたし、大混乱になりそうです。

 

③国債価値が破綻し、日本円も価値が暴落する

前半部分は先ほどの議論と重なりますので省略しますが、後半部分の円の暴落は政府が買い支えに入っても、どこまでできるかは疑問です。政府保有の外貨には限りがあるためです。昨年の為替介入は主な相手が投機筋だったので、対処できました。しかし多くの日本の金融機関や事業法人、そして個人までもが一気に円売り=ドル買いに走ると、阻止するのは簡単ではありません。

さらに為替は日本政府の権限範囲外の海外市場でも、先物を含め取引は可能です。日本人が本格的に売れば、海外の投機筋はさらに空売りで拍車を掛けるに違いない。

 

 以上のような要因により日本が国際的信用を失い、株価が暴落し円も暴落すると、ボトムを打つまで海外投資家は背を向けるし、国内投資家も国家より自分の資産ヘッジが大事になるので、経済活動が停止しかねないほどの大きなショックになると思われます。

 そして何より、円の暴落は激しいインフレをもたらし、投資家だけの問題では済まず、我々一般消費者は最も大きな影響を受けます。

 以上、コメント欄にいただいた質問への回答でした。

 

 次回の解説はこの続きですが、逆に金利上昇が起らず、「日銀によるマイナス金利政策が継続し続けたらどうなるか」について解説することにします。

 みなさんはあまり意識していないかもしれませんが、それなりにかなり恐ろしい日本の衰弱死についてです。

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金融危機15周年、グリーンスパンの反省

2023年09月21日 | 警鐘、世界のバブル

 金融市場関係者が注目していたFRBによるFOMC公開市場委員会が終わり結果が発表されましたね。政策金利は今回利上げせずに据え置きましたが、年末までには利上げの可能性を残しています。金融市場においてアメリカの長期金利は上昇で反応し、10年物で4.4%台、為替は148円台に入っています。

 「それでも米国債の4%台は買いだ」と再度強調しておきます。

 

 さて、世間ではあまり注目されていませんが、9月15日は08年に「リーマンショック」が起きた日として有名です。世界的にはリーマンショックとは呼ばず、「金融危機」と言われています。というのは一投資銀行の破綻では終わらず、日本を除く世界的巨大金融機関・投資銀行のほとんどが危機に陥り、救済を受けるところに至ったからです。当時からトップと言われていたゴールドマンサックスやモルガンスタンレー、シティーバンクも救済の対象になりました。

 この危機をNYダウの株価で計りますと、リーマン破綻の直前から見ると半年後の翌年3月末にはちょうど半分になっています。その間日経平均も1か月で約4割下げました。衝撃の大きさはそれ以前に起こった9・11とかITバブル崩壊よりはるかに大きく、世界に波及しました。

 そもそもリーマンショックとはどうして起こったのか。それは、ローンを組んで住宅など買えない低所得者に、無理な高利のローンを組ませ住宅を購入させる。その返済を担保とした住宅ローン債権をリーマンなどが債券化して投資家に販売。家の購入者は住宅の価値が上がると低利のローンへの借り換が可能になるため、返済額が低く抑えられるはずだ。という極めて楽観的見通しの下、仕組んだものでした。ということは家の価格が上がらないとたちまち返済に行き詰るという高リスクの仕組みだったのです。

 基本構造は80年代後半の日本の不動産バブルの生成と同じ。価格上昇がストップし下落に転じたとたん、すべての見込みが狂って不動産や株など資産市場の崩壊に至る。日本では不動産はもとより、株式、ゴルフ場会員権、はては絵画まですべての資産価格が暴騰し、一場の夢と化し崩壊したのです。

 それをまた中国が同じことをしていいます。愚かな人間の性ともいうべき典型的パターンを示しています。

 アメリカはもともとある程度所得の裏付けのある借り手には住宅ローンを組ませ、それを債券化し投資家に販売するという仕組みがあり、うまく機能していました。それをサブプライムというカテゴリーの低所得者にまで度を超えて拡大したため、信用危機に陥ったのです。

 先週NHKのBSでリーマン危機後15年のドキュメンタリー番組を放映していましたが、内容はリーマン破綻時のCEO、ディック・ファルドを強欲な悪者扱いした組み立てでした。 

 

 危機に瀕した他の金融機関は、リーマンほどサブプライムローンにのめり込んではいなかったのに、金融市場を覆いつくした危機は巨大金融機関を押しなべて飲み込んだのです。その脱出のため、他社の力を借りて資本増強に踏み込み、その後うまく再生した例も多くあります。

 例えば投資銀行の老舗であるモルガン・スタンレーは08年9月のリーマン破綻直後、同様に株価が暴落して資金繰りに窮しました。しかし同月中に巨額の優先株を発行し、それを三菱UFJ銀行がなんと1兆円近い資金を出して買取り、かろうじて生き残りました。わずか2週間での意思決定は極めて異例です。そして現在も日本では投資銀行部門は「三菱UFJモルガンスタンレー証券」として大手の一角を占めています。いい投資でしたね。

 アメリカ政府はリーマンを見殺しにしたのですが、危機に瀕した多くの金融機関を救済するため、実に際どい政策を実施しました。リーマンはアメリカでは投資銀行、日本流にいえば証券会社で、破綻したところで一般の人々は株主でもない限り損失は被りません。それに対して市中銀行が破綻すると口座を持つ人々は生活に窮しますので、超法規的であっても救済することになります。

 そこで財務省とFRBそして議会が共同歩調を取って、破綻した場合影響が極めて大きいゴールドマン、モルガンスタンレーやメリルリンチなどの巨大投資銀行を銀行法で規制できる銀行として登録させ、むりやり救済したのです。

 議会側からは批判が多く難航しましたが、当時の財務長官ヘンリー・ポールソン、NY連銀総裁で後に財務長官となったティモシ―・ガイトナーらの説得に屈して最後は救済に賛成しました。

 そもそもリーマン危機を醸成した大本の責任者は、アラン・グリーンスパンFRB議長でした。彼は1987年から金融危機前の2006年まで超長期間にわたり連銀議長を務め、プラックマンデー、LTCM破綻、ITバブル崩壊、9・11テロ事件後の金融市場の混乱をうまく克服したので「マエストロ」とまで呼ばれた名議長でした。

 退任後にはアメリカの有名人の誰もが書くように自叙伝を書いています。それが分厚い「波乱の時代」というタイトルで、上下巻がリーマンショックの1年前、07年に出版され、私も読みました。

 しかし待てよ。それまでにリーマンなどのサブプライムローンはすでに相当なバブルを形成して、ベアスターンズなどがすでに07年には実質破綻をしていたはずです。ということは、バブル形成を許したのはマエストロだということになります。

 そのためか彼は自省をこめて「波乱の時代、特別編」という補完本をリーマン破綻直後に出版しました。内容はもちろん、「悪うございました。金融危機の責任は私にあります」ということでマエストロの称号を返還したのです。私は不本意ながらも特別編も数百円払って買いましたが、「ただにしろ!」が本音でした(笑)。

 その後アメリカ政府は危機全体をしっかりと反省するため「金融危機調査委員会」を立ち上げ、2011年には報告書を公表。「グリーンスパンの政策も大きな一因であった」と結論付けているのです。

 いずれ来る日本の危機、いったい誰が責任を取ることになるのでしょうか。どこぞの会社と違い当事者が生きているうちに責任を取らせたいものです。

 

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珠玉のゴルフ場、パサージュ琴海アイランドゴルフクラブ

2023年09月10日 | ゴルフ

 今週末日本女子プロ選手権が開催されているパサージュ琴海(きんかい)アイランドゴルフクラブは、私が日本でも有数の素晴らしいリゾート・ゴルフ場と思うコースです。

 リゾート・ゴルフ・コースの一般的定義があるわけではないのですが、少なくとも宿泊できるホテルが併設されていて、食事を含めたリゾートライフが楽しめるゴルフ場ということにしましょう。

 何故ここが日本有数の素晴らしいリゾート・ゴルフ場かともうしますと、まずはアクセスが船だということからはじまります。私は友人ご夫婦と一緒にまず長崎空港まで飛行機で行き、そこからホテルまでなんと小さなクルーザーでいくという経験をしました。長崎空港自体もともと大村湾に人工島を作った海上空港なのですが、対岸にあるこのゴルフ場までも小さなクルーザーで行くというおしゃれな嗜好が待っていました。ホテルのピアにはドアマンが待っていてゴルフバッグも一緒に運んでくれます。

 そして海辺のリゾートにふさわしい真っ白な建物が雰囲気を盛り上げてくれます。着いた日はゆっくりとテラスでお茶をして、あとはホテルご自慢のディナーを楽しみました。

 私の趣味はゴルフをプレーするだけでなく、日本各地のここぞというコースでプレーを経験することです。これまでに日本では約340コースをプレーしています。海外では比較的多いリゾート・ゴルフ場ですが、日本ではここぞというリゾートゴルフ場はとても少なく、数えるほどです。筆頭は川奈ホテルとそのゴルフ場でしょう。1936年、昭和11年に大倉財閥の総帥大蔵喜七郎が作り、ホテル・オークラが運営していました。しかし母体企業の経営不振により売却。2006年にプリンスホテルが引き継いでいます。コースは昔のままですが、ちょっと残念なのは食事です。オークラホテル時代とは異なる内容になったため、私を含め昔を懐かしむ人が多いようです。

 パサージュ琴海の売りは懐石料理のフルコース。海に面したレストランのテーブルには、新鮮でおいしい海の幸が次から次へと出てきて、これほどの和食を提供してくれるゴルフ場を私は知りません。この食事をするだけでも価値があると思います。

 ゴルフコースはどうかと申しますと、日本でも世界でも並ぶもののないユニークな地形を利用した素晴らしいコースです。設計したのは特に九州では有名だった「玄海の荒法師」と呼ばれたプロゴルファー、藤井義将氏です。

 大村湾付近はいわゆるリアス式海岸が続いていて、陸と海がとても入り組んだ地形です。そのためなんと海越えのホールが3つもあるという大変ユニークなコースに仕上がっています。コース・レイアウトを簡単に表現するなら、手のひらを拡げた地形で、ひらの部分に多くのホールがあるのですが、指の部分も利用していて、例えば親指から人差し指に海を越えたり、人差し指から中指に海を越えて、そのあとも海沿いの際どいホールがつながっているところをプレーするのです。

 アメリカ西海岸の世界的リゾートコースであるペブルビーチ・ゴルフ・リンクスも海沿いの際どいホールが多いのですが、海越えと言えるのは8番ホールくらいで、そこも迂回可能です。

 日本にも谷越え、川越え、池越えのホールがあるコースはいくらでもありますが、海越えは極めてユニーク。しかも迂回はできません。リアス式ということは陸上も小山が続いていて、ゴルフ場もその地形をなるべくそのままに設計したため、フェアウェイも起伏だらけの難しいコースです。

 

 玄海の荒法師と呼ばれた藤井氏は福岡県の出身で、私が福岡に赴任していた時によくプレーした玄海ゴルフ倶楽部に所属していて、ニックネームはそこからきたものです。彼は小柄ながらプレーぶりは小気味よく、日本オープンにも優勝しています。ゴルフは赤星四郎というアマながら日本のゴルフ界草分けのゴルファーに師事していたとのこと。赤星四郎は弟の六郎とともにゴルフ場の設計も手掛けていましたので、藤井氏はゴルフ場設計に関しても彼の薫陶を得たのかもしれません。私の勝手な推測です。

 

 この珠玉のゴルフ場で開催されている、今年の日本女子プロ選手権の覇者は誰になるのでしょうか。もうすぐ決まります。

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日本人の窮乏化 ― 8月の実質賃金、5か月連続のマイナス

2023年09月08日 | 日本経済コメント

 実質賃金とは、賃金の上昇率から物価上昇率を引いたもので、マイナスとは物価上昇に負けている、ということです。

 私は今年の1月11日に「物価上昇4%だって、冗談じゃない!」という投稿をしました。実感の物価と公式発表の物価が大きく違うからです。その原因の一つは帰属家賃というなじみのない仮想家賃を計上し、それが上昇率を薄めていることによると説明しました。二つ目は物価水準の議論をする政府や経済の専門家は、「コア指数」というこれまた実感とはなんの関係もない指数を金科玉条のごとく使用しているからです。コア指数とは主に食品と電気・ガス・ガソリンなどのエネルギーを除いた仮想数値です。

 今消費者が一番困っているのは食品とエネルギー価格の上昇です。ものによっては10%~20%は当たり前。にもかかわらず何故そのような無意味な数値を大事にするのか。理由は、食糧・エネルギーとも価格変動が大きいので、それを加味すると長期のトレンドを見誤るからというもの。我々一般人が困るか否かなど眼中にないのです。

 そしてこれだけ物価上昇が続くと、一番の問題点は物価上昇が賃上げを上回り、実質賃金が目減りしている、つまりは窮乏化することです。9月7日のロイター電をみてみましょう。

引用

 厚生労働省が7日公表した8月の毎月勤労統計(速報)によると、実質賃金は前年比1.7%低下となり5カ月連続の減少となった。マイナス幅は7月の1.8%から小幅縮小した。所定内給与などの現金給与総額は前年比が7月より拡大しており、消費者物価指数の上昇がそれを上回った格好だ。

引用終わり

 しかしちょっと待てよ、今年の春闘の結果はベースアップと定昇を入れて3.58%だったのに。日経新聞ニュースを見ましょう。

「連合が5日発表した2023年春闘の最終集計結果(3日時点)によると、基本給を底上げするベースアップ(ベア)に定期昇給を合わせた平均賃上げ率は3.58%(1万560円)と、3.90%だった1993年以来、30年ぶりの高水準を記録した。」

 であれば物価が3%上昇しても実質はプラスになるのでは?

 マイナスの理由は、連合に参加している企業の従業員数は全労働者の2割を切っているからです。8割の労働者にとって賃上げ3.58%など夢のまた夢。私を含む年金受給者も全く無関係です。今一度申し上げますが、7月の物価上昇率は3.1%でしたが、同月の労働者全体の給与はそれを1.7%も下回っていたのです。これが物価上昇率を差し引いた実質賃金がマイナスとなってしまうカラクリです。

 ついでに1月の投稿で私は年金受給額についてもこう述べました。

「これだけ物価が上がっている中で 日本の厚労省は年金支給額を減らす老人いじめもしています。老齢年金満額支給の月額は令和 2 年度の 65,171 円に対して今年度は 65,075 円。わずかですがマイナスで、「マクロスライド」という訳の分からない政府のごまかし政策により減らされているのです。一方私自身は、金額は少ないですがアメリカ合衆国から年金をもらっています。 毎年12月に翌年の年金額のお知らせが来るのですが、今年はなんとプラス 8.7% です。アメリカの物価上昇率をきっちりと反映してくれますので、納得の数字です。」

 ちなみに日本の年金受給者は一昨年度で6,700万人にもなっていて、日本の半数の人々は、賃上げなど全く関係ないという状態にまでなっているのです。

 最近よく「賃上げでも消費が伸びない」と言われていますが、消費には消極的にならざるを得ない年金受給者への手当をよほどしっかりとしなければ、全体の消費など伸びるはずがないのです。

 もう一つ話題にすべきことがあります。それは、

 家計はこのように厳しいのに、原油価格は一昨日のサウジの減産継続の発表によりまた跳ね上がりました。ロシアも減産を続けているため、原油価格の高止まりは続きそうです。それに加えて日本の場合は、政府・日銀の政策的円安も加担しているため、ガソリン価格はさらに高騰が見込まれます。

 日本政府は補助金政策によりガソリン価格を抑えにかかるとのこと。価格が抑えられることは歓迎ですが、長期的に見た場合正しい判断かはかなり疑問です。73年の第一次オイルショック時の物価はこんな生易しい上昇ではなく、1973年は11.7%、74年にはなんと23.2%まで急伸しました。政府も打つ手がないほどで、GDP成長率も74年にはマイナス0.5%にまで陥ったのです。

 そのため企業は必死に自助努力して克服。それがその後日本が原油価格に左右されない発展の礎になりました。逆にバブル崩壊以降、政府による莫大な公共投資や補助金漬けは企業や消費者をナマケモノにしたきらいがあると私は思っています。

 現在の政府の政策はどうか。23年度の労働白書の案ではつぎのようなアイデアが示されています。9月3日の日経ニュースを引用します。

「全労働者の賃金を1%あげるとおよそ2.2兆円の経済効果があると試算した。他国に比べて給与が伸びていない状況を踏まえ、離職率低下など企業側のメリットを前面に出し、賃上げを促す。賃上げ分は主に小売りなどの商業や不動産業で消費されるとみる。新たな需要に対応するため、雇用は16万人分増える。」

 計算はそうでしょうが、実現性は皆無。日本の全労働者の賃金を1%上げるなど、役人の幻想にすぎません。

 では1%で10兆円の効果を上げられる策を私が伝授しましょう。それはほんの数人の決断で可能です。日銀がいまの政策金利をマイナスからプラスにして銀行預金の金利を1%に上げるだけで可能なのです。なにせ家計の金融資産は2千兆円、うち現預金だけでも1千兆円あるので、預金金利たった1%で家計は10兆円の金利収入を得ることができます。

 というより、いままでクロちゃんの愚かな政策により「家計は10年で100兆円も損失をこうむった」というのが正解でしょう。そして実は残りの金融資産も、例えば保険資産や債券などの資産でも政策金利が上がれば、10年で数十兆円のプラスは見込めます。

 しかしそれらはすでに逸失利益。それを取り戻すには10年物米国債で年に4%もらうのが一番です。

 今後もし本当に金利が上昇すれば、日銀を始め日本中はひっくりかえるほどインパクトを受けざるを得ません。それへの保険にもなる米国債投資こそが決定打なのです。

 

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お気の毒な中国人へ

2023年09月01日 | ニュース・コメント

   迷惑電話に迷惑メールだけでなく日本大使館への投石など、中国の一般人がひどい行為を継続していますね。毎日のように中国外務省の超立堅報道官が「核汚染水を流すな」と言い続け国民を煽っていれば、こうした行為に及ぶのは当然でしょう。

 8月29日のNHKニュースを引用します。

中国外務省の報道官は、北京にある日本大使館の敷地に中国人がレンガの破片を投げ込んだことについて「日本政府が核汚染水の放出を一方的に強行したことが根本的な原因だ」と述べ、福島第一原発にたまる処理水を薄めて海に放出する措置を始めた日本側に責任があると主張し、正当化しました。

東京電力福島第一原子力発電所にたまる処理水を、基準を下回る濃度に薄めた上で海への放出を始めた今月24日、北京にある日本大使館で中国人が大使館の敷地にレンガの破片を投げ込み、その場で警察に拘束されました。
これについて、中国外務省の汪文斌報道官は29日の記者会見で「日本政府が核汚染水の海への放出を一方的に強行し、各国の国民の強烈な憤慨を引き起こしたことが根本的な原因だ」と述べ、日本側に責任があると主張し、レンガの破片を投げ込んだ行為を正当化しました。
そのうえで「日本側がすべきことは直ちに誤りを正し、核汚染水の放出を停止することだ」と従来の主張を繰り返しました。

引用終わり

 

 まるで大使館への投石をもっとやれと政府が煽っているように見えます。日経新聞によれば、共産党機関紙人民日報系の環球時報が『日本は中国を打ち負かすため卑劣な手段をとっている。前例のない環境リスクを引き起こしたのは他の誰でもない日本だ。日本当局が日本社会の反中感情をあおっている』との社説を載せたと報道しています。そして共産党の中央宣伝部は「処理水放出の科学的根拠を説明した投稿やアカウントを削除」

 我々は中国政府の非科学的主張を信じる中国人たちに腹が立ちますが、だからといってそれを非難しても無駄。過去を思い出してみれば何度もそのようなことがありました。

 例えば2012年9月、尖閣諸島の国有化を日本が決定した時にも、中国全土で激しい反日デモが繰り広げられ、日系スーパーや日本料理店でも破壊や略奪などが行われ、山東省のトヨタ自動車の販売店やパナソニックの工場でも放火事件が起きています。その時の標語は「反日無罪」、あるいは「愛国無罪」。でもそれらは時が経てば収まっています。別に尖閣諸島を中国に差し出したということはありませんでした。

 

 われわれは無知で愚かな中国人を煽る中国政府を非難するのではなく、「お気の毒に」と思っていればよいのです。

 

 ところが少し風向きが変わってきたようです。ユーチューバーなどで核汚染はデマだということを主張したり、計測器で海水を分析して「反応なし」ということをアップする中国人もあらわれています。それは共産党機関紙人民日報系の環球時報が8月30日の社説で抑えにかかったのが一つの原因のようです。朝日新聞ニュースを引用します。

東京電力福島第一原発処理水放出後に中国から嫌がらせ電話が殺到し、反発が強まっていることをめぐり、共産党機関紙・人民日報系の環球時報は8月30日、「中国社会も極端な情緒をあおり立てる言論に気をつける必要がある」として、行き過ぎた嫌がらせ行為に実質的に自制を求める社説を掲載した。

引用終わり

 

 この社説の影響でしょうか、テレビ報道で、「毎日大量の迷惑電話に悩んでいた日本国内のある居酒屋店主が、電話数が突然8割も減った」というニュースが流れていました。

中国人とは見事なまでに政府に踊らされる人種であることの証明ですね。しかし一方で日本からの水産物輸出先の2割を占める中国による禁輸措置はそのままで、漁業者の苦しみは変わっていません。

 

 今回も尖閣問題同様、科学的根拠のない主張を繰り返す政府報道官の非難が収まれば、迷惑電話やSNSでの日本非難は収まるにちがいない。特にSNSでの非難は、これに乗じた非難を行うことでアクセス数を稼いで収入を上げようとするユーチューバーなどが集中的に露出を増やしているとのこと。

 だからといって腹の虫が収まらない方も多いことと思います。そんな時の唯一の対処法は、「お気の毒に」と同情してあげることに尽きると私は思っています。報道官も実は若者の失業率の高さや少子高齢化、不動産バブル崩壊など、対処のしようのない大問題が山積するため、少しでも人民、特に若者の目を逸らすための絶好の材料にしているのです。

  そんな中国のひどい国内事情こそがこの日本非難の元凶と考えれば、いちいち腹を立ててもストレスがたまるだけ。沈没しつつある中国を見ながら「お気の毒に」と同情するのが一番です。

 

 

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