トランプ大統領にとって良い結論が出ましたね。トランプは大喜びです。私はがっかりです(笑)。モラー特別検察官は結論を出さず、すべてを司法長官に委ねました。バー司法長官が出したコメントのポイントは2つ、
1. ロシア疑惑についてトランプ氏と陣営を含め共謀の事実は見当たらない
2. 司法妨害については、特別検察官の捜査から得られた証拠は、大統領が司法妨害の罪を犯したことを立証するに充分ではない。(つまり推定無罪だ)
これに対して反トランプの旗幟鮮明なNTタイムズは、こう噛みつきました。
「バー氏が報告書を受け取って48時間で結論を出したのは軽率だ。トランプ氏が先月選んだばかりの司法長官なので、トランプ氏の望み通りの結論を出した。モラー氏の捜査を正当に評価していない。」
今後も報告書の公表や内容などを巡り様々な動きはあるでしょうが、私はこれで一区切りついたと見ています。早々と結論を出すようですが、その理由は本当にヤバイものがあれば、ここで出るはずだから「無駄な抵抗はやめておけ」ということです。
今後世界にとって、そしてアメリカにとって最も大事なことは、トランプを再選させないことです。そのためには弾劾の長いプロセスは逆効果だと思っているのです。
司法長官の結論が出される2週間も前に、民主党の下院議長であるナンシー・ペロシ氏のインタビューにそのヒントを得ました。彼女はワシントン・ポスト紙のインタビューに答えて、こう言っていました。
「ドナルド・トランプ大統領の弾劾を追求することについて、米国の分断をあおることになるとして、支持しない考えを示した。また、民主党はそれよりも2020年に政権を奪還することに注力すべきだと述べた。」
民主党のリーダーが何故?といぶかる向きもあるかもしれませんが、彼女はよく先を見ていると思います。私の勝手な解釈は、以下の通りです。
不十分な証拠を元に弾劾のプロセスに入り、下院は過半数を占める民主党の賛成により弾劾すべきと結論を出せるかもしれません。しかし上院は共和党が過半数を得ているし、弾劾には3分の2が必要で簡単に弾劾とはならないでしょう。長い弾劾プロセスの最中、あるいは弾劾否決という結論が出た後に大統領選挙のタイミングが来ると、逆効果でトランプの勝利に貢献してしまう可能性が大きいと思うのです。ペロシ氏はきっとそうしたことを読んだ上での発言なのではないか、それが私の解釈です。
さて今回の本題です。先週金曜日、22日のNYダウは460ドルの暴落。それを受けて月曜日の東京市場も650円暴落しました。その一番の原因として挙げられたのは、米国債のイールドカーブが逆イールドになったということでした。
イールドカーブをおさらいしますと、国債の金利を年限別に短期金利から長期金利にむかってプロットし、それを線でつなげたものがイールドカーブで、通常は短期金利は低く、長期になればなるほど金利は高くなるので右肩上がりのカーブになります。それが今、短期のほうが長期金利より高くなっていますが、それが逆イールドと言われるものです。実際の年限別イールドを並べて見ておきましょう。
3か月 6か月 12か月 2年 5年 10年 30年
金利% 2.43 2.45 2.40 2.26 2.20 2.42 2.88
この状況についてロイターの記事を引用します。
「22日の米債券市場で3カ月物財務省短期証券(Tビル)と10年債の利回りが2007年以来約12年ぶりに逆転した。製造業統計が予想を下回る中、景気の減速が意識されている。長短金利の逆転は景気後退(リセッション)入りの兆候ともみられる」。
特徴的なのは3か月物と10年物です。なぜこの二つかと申しますと、短期金利の代表選手が3か月物、長期金利の代表選手が10年だからで、短期といっただけで3か月物を指すことが多いし、長期といっただけで10年を指すからです。
長期の米国債投資を考えていらっしゃる方にとっては、金利動向が気になることと思います。今後リセッション入りするとすれば、しばらくは投資を控えざるを得ませんね。
ではいったいどれくらいの間、長期債の投資を控えることになりそうなのでしょう。これはとりもなおさず今後のアメリカ経済の見通しはどうかということにつながります。私個人が的確に見通すことなどできないので、いつも世界を俯瞰している国際通貨基金IMFを頼ってみます。年初に出された2年後までの見通しは以下の通りです。アメリカ以外も参考までにつけておきます。
18年 19年 20年
アメリカ 2.9 2.5 1.8
先進国 2.3 2.0 1.7
世界 3.7 3.5 3.6
中国 6.6 6.2 6.2
日本 0.9 1.1 0.5
どうやら2020年までは昨年今年よりかなり下向きになっていて、それはアメリカもその他の国も同じ傾向ですが、直近で欧州の見通しがより悪化していることから考えると、もう少し下も見ておく必要があるかもしれません。IMFは2年後までしか発表していません。それに対して世銀ワールドバンクは一応3年後の見通しを出しているのですが、ほとんどの国と地域の見通しは20年と同じような数字が並んでいます。どうやら1年あるいは2年先までリセッションには入らずとも、スローな景気が続きそうです。
ではこうした見通しを受け、今後の投資はどうすべきでしょうか。私は黙って2年以上先まで現金で置いておくのは得策ではないと思います。現状で取る手立てがあるかといえば、それは短期債を買って様子を見ることです。「逆イールドとは、短期の金利は高い」ということでもあるからです。
21年の見通しはよくわかりませんが、20年まではどうやらアメリカをはじめとして経済見通しが上向くことはなさそうです。であれば、それまで現金のままにしておくのではなく、2~3年の短期債券を買ってすこしでも稼いでおく。よしんば20年中に経済が回復し金利の上昇があったとしたら、乗り換えればいい。もちろん保有している債券は値下がりしますが、残存期間が非常に短い債券の値下がり幅はたいしたことはないからです。例えば20年の年央に長期の10年物が3%に乗るようなことがあれば、喜んで短期債を損切りして長期債に乗り換えましょう。それぞれの年限の金利を厳密に想定するのは難しいので避けますが、半年を残して値下がりした債券の損失は、3%の長期債が買えれば、1年もすれば取り戻せる可能性が高いのです。
ここでの注意点は、為替変動です。現在のドル円レートは110円程度です。ドルを保有していれば問題はありません。それがたとえば円から2年物米国債を買って2年で合計5%弱の金利を得たとしても、その分以上の為替変動で2年後に損失を出す可能性はあります。しかし、償還時のドルをそのまま再投資に向かわせるのであれば、損失を確定することにはなりません。為替の損得は買い替えた長期債が償還を迎える時で、それまでにはたっぷりと金利を稼げますので、跳ね返せる可能性が高いのです。
以上逆イールドの現在、米国債投資はどうすべきかについてでした。