ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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逆イールドとは、短期債投資のチャンスだ

2019年03月26日 | 米国債への投資

 トランプ大統領にとって良い結論が出ましたね。トランプは大喜びです。私はがっかりです(笑)。モラー特別検察官は結論を出さず、すべてを司法長官に委ねました。バー司法長官が出したコメントのポイントは2つ、

 

1.  ロシア疑惑についてトランプ氏と陣営を含め共謀の事実は見当たらない

2.  司法妨害については、特別検察官の捜査から得られた証拠は、大統領が司法妨害の罪を犯したことを立証するに充分ではない。(つまり推定無罪だ)

 

これに対して反トランプの旗幟鮮明なNTタイムズは、こう噛みつきました。

 「バー氏が報告書を受け取って48時間で結論を出したのは軽率だ。トランプ氏が先月選んだばかりの司法長官なので、トランプ氏の望み通りの結論を出した。モラー氏の捜査を正当に評価していない。」

   今後も報告書の公表や内容などを巡り様々な動きはあるでしょうが、私はこれで一区切りついたと見ています。早々と結論を出すようですが、その理由は本当にヤバイものがあれば、ここで出るはずだから「無駄な抵抗はやめておけ」ということです。

  今後世界にとって、そしてアメリカにとって最も大事なことは、トランプを再選させないことです。そのためには弾劾の長いプロセスは逆効果だと思っているのです。

  司法長官の結論が出される2週間も前に、民主党の下院議長であるナンシー・ペロシ氏のインタビューにそのヒントを得ました。彼女はワシントン・ポスト紙のインタビューに答えて、こう言っていました。

 「ドナルド・トランプ大統領の弾劾を追求することについて、米国の分断をあおることになるとして、支持しない考えを示した。また、民主党はそれよりも2020年に政権を奪還することに注力すべきだと述べた。」

  民主党のリーダーが何故?といぶかる向きもあるかもしれませんが、彼女はよく先を見ていると思います。私の勝手な解釈は、以下の通りです。

   不十分な証拠を元に弾劾のプロセスに入り、下院は過半数を占める民主党の賛成により弾劾すべきと結論を出せるかもしれません。しかし上院は共和党が過半数を得ているし、弾劾には3分の2が必要で簡単に弾劾とはならないでしょう。長い弾劾プロセスの最中、あるいは弾劾否決という結論が出た後に大統領選挙のタイミングが来ると、逆効果でトランプの勝利に貢献してしまう可能性が大きいと思うのです。ペロシ氏はきっとそうしたことを読んだ上での発言なのではないか、それが私の解釈です。


   さて今回の本題です。先週金曜日、22日のNYダウは460ドルの暴落。それを受けて月曜日の東京市場も650円暴落しました。その一番の原因として挙げられたのは、米国債のイールドカーブが逆イールドになったということでした。

  イールドカーブをおさらいしますと、国債の金利を年限別に短期金利から長期金利にむかってプロットし、それを線でつなげたものがイールドカーブで、通常は短期金利は低く、長期になればなるほど金利は高くなるので右肩上がりのカーブになります。それが今、短期のほうが長期金利より高くなっていますが、それが逆イールドと言われるものです。実際の年限別イールドを並べて見ておきましょう。

       3か月 6か月 12か月  2年  5年 10年  30年

金利%    2.43   2.45   2.40    2.26   2.20   2.42    2.88

 

   この状況についてロイターの記事を引用します。

 「22日の米債券市場で3カ月物財務省短期証券(Tビル)と10年債の利回りが2007年以来約12年ぶりに逆転した。製造業統計が予想を下回る中、景気の減速が意識されている。長短金利の逆転は景気後退(リセッション)入りの兆候ともみられる」。

   特徴的なのは3か月物と10年物です。なぜこの二つかと申しますと、短期金利の代表選手が3か月物、長期金利の代表選手が10年だからで、短期といっただけで3か月物を指すことが多いし、長期といっただけで10年を指すからです。

   長期の米国債投資を考えていらっしゃる方にとっては、金利動向が気になることと思います。今後リセッション入りするとすれば、しばらくは投資を控えざるを得ませんね。

   ではいったいどれくらいの間、長期債の投資を控えることになりそうなのでしょう。これはとりもなおさず今後のアメリカ経済の見通しはどうかということにつながります。私個人が的確に見通すことなどできないので、いつも世界を俯瞰している国際通貨基金IMFを頼ってみます。年初に出された2年後までの見通しは以下の通りです。アメリカ以外も参考までにつけておきます。

         18年  19年  20年   

アメリカ     2.9   2.5   1.8

先進国      2.3   2.0   1.7 

世界         3.7   3.5   3.6

中国       6.6         6.2        6.2

日本       0.9    1.1   0.5

   どうやら2020年までは昨年今年よりかなり下向きになっていて、それはアメリカもその他の国も同じ傾向ですが、直近で欧州の見通しがより悪化していることから考えると、もう少し下も見ておく必要があるかもしれません。IMFは2年後までしか発表していません。それに対して世銀ワールドバンクは一応3年後の見通しを出しているのですが、ほとんどの国と地域の見通しは20年と同じような数字が並んでいます。どうやら1年あるいは2年先までリセッションには入らずとも、スローな景気が続きそうです。

  ではこうした見通しを受け、今後の投資はどうすべきでしょうか。私は黙って2年以上先まで現金で置いておくのは得策ではないと思います。現状で取る手立てがあるかといえば、それは短期債を買って様子を見ることです。「逆イールドとは、短期の金利は高い」ということでもあるからです。

    21年の見通しはよくわかりませんが、20年まではどうやらアメリカをはじめとして経済見通しが上向くことはなさそうです。であれば、それまで現金のままにしておくのではなく、2~3年の短期債券を買ってすこしでも稼いでおく。よしんば20年中に経済が回復し金利の上昇があったとしたら、乗り換えればいい。もちろん保有している債券は値下がりしますが、残存期間が非常に短い債券の値下がり幅はたいしたことはないからです。例えば20年の年央に長期の10年物が3%に乗るようなことがあれば、喜んで短期債を損切りして長期債に乗り換えましょう。それぞれの年限の金利を厳密に想定するのは難しいので避けますが、半年を残して値下がりした債券の損失は、3%の長期債が買えれば、1年もすれば取り戻せる可能性が高いのです。

   ここでの注意点は、為替変動です。現在のドル円レートは110円程度です。ドルを保有していれば問題はありません。それがたとえば円から2年物米国債を買って2年で合計5%弱の金利を得たとしても、その分以上の為替変動で2年後に損失を出す可能性はあります。しかし、償還時のドルをそのまま再投資に向かわせるのであれば、損失を確定することにはなりません。為替の損得は買い替えた長期債が償還を迎える時で、それまでにはたっぷりと金利を稼げますので、跳ね返せる可能性が高いのです。

     以上逆イールドの現在、米国債投資はどうすべきかについてでした。

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 737MAXの運航停止

2019年03月20日 | ニュース・コメント

    ボーイング737MAXがやっと世界的に運航停止となりました。「やっと」というのは遅すぎだということを言いたいためです。それも最も大事な当事者であるアメリカのアクションが遅く、その裏にはトランプによるFAAアメリカ連邦航空局の私物化があったとは驚きです。初めに2つの報道をみておきましょう。まずはエチオピアの事故以前、そしてトランプの妨害です

    Business Insider Newsによりますと、エチオピアでの事故以前にパイロットによる不具合の指摘が出ていたことを報道しています。

引用

短期間での2度目の大事故となった3月10日(現地時間)のエチオピア航空の墜落事故に先立つ数カ月前、数名のパイロットがボーイング737MAX8に関して、少なくとも問題を5件報告していた。ダラス・モーニング・ニュース(Dallas Morning News)によると、ここ数カ月で少なくとも5件の問題が航空当局に提出されていた。ある機長はフライトマニュアルを「不適切で、ほぼ犯罪と言えるほど不十分」と呼んだ。

問題はパイロットがインシデント(事故につながりかねない事態)を匿名で報告できるFAA(アメリカ連邦航空局)のインシデント・データベースに書き込まれていた。特に737MAXのオートパイロット・システムの問題点が強調された。オートパイロットは2018年10月のライオンエア610便の墜落事故の後にも疑問視されていた。ライオンエアの墜落現場から回収されたブラックボックスの解析結果から、610便はセンサーの不具合が原因で操縦不能となり急降下したようだと伝えられた。

エチオピア航空のCEO、テウォルデ・ゲブレマリアム氏はライオンエアの墜落事故と10日の墜落事故には類似点が「存在する」とCNNに語った

引用終わり

  そしてもう一つ、遅すぎたという私の指摘を裏付けてくれる日経新聞3月18日に引用されたフィナンシャル・タイムズの記事を見る必要があります。トランプが「ボーイングはとてもいい会社だ」と言って、アメリカFAAの飛行停止措置が遅れた理由がよくわかる記事です。

引用

トランプ米大統領が現実を受け止めるまでに約72時間を要した。まず中国、そして欧州連合(EU)が米ボーイングの新型旅客機「737MAX」の運航停止を決め、他の航空当局も続いた。米連邦航空局(FAA)はトランプ氏からの圧力を受けて踏みとどまっていたが、カナダも停止を決めたことで、米国はほぼ完全に孤立した。米国が主導してきた航空安全性の分野で、世界が米国の判断にノーを突き付けたのは異例のことだ。最終的にはトランプ氏も運航停止に動いた。この一件はオバマ前大統領の言葉を借りれば、世界が急速に変化している現実を「教えてくれる良い機会」となった。今回の出来事の背景には、米行政機関に対する各国の信頼の低下がある。米国の航空管制システムは他国よりかなり古いのに、トランプ氏が11日に出した予算教書では、FAAの予算は削られていた。しかもFAAには目下、司令塔がいない。トランプ氏は昨年、自身の専属パイロットをFAA長官に指名した。上院は年間予算180億ドル(約2兆円)の政府機関のトップにはふさわしくないと一蹴し、それきりになっている。1年以上もパイロット不在で飛行しているようなFAAに、他国が信頼を置かなくなるのも当然だ。

引用終わり

   一連の737MAXのニュースを、私自身は複雑な思いで見ていました。というのも今を去ること40年前、1979年にとても苦い経験をしているからです。当時私はJALの福岡支店で対航空代理店セールスの業務部にいました。そこでダグラスDC-10の世界的運航停止への対処に追われたからです。すでに予約されていた旅客をどう振り分けるか、もしくは「ごめんなさい」をするか、2か月くらいの間毎日空港に行き、セールスマンや空港スタッフと頭を下げまくった経験をしていたからです。

   DC-10という旅客機は主翼に2つと垂直尾翼に一つ、計3つのエンジンを持つ特殊な形の飛行機で、72年のアメリカンの事故と74年のトルコ航空の機材で貨物室のドアが吹き飛ぶ事故を起こし、いずれも製造したダグラス社の責任とされていたのです。そのため79年にエンジン落下の事故を起こしたときも、またかということでFAAが全機運航停止の措置を取りました。

   そもそもアメリカ製の航空機、あるいはアメリカを飛ぶ航空機の運航停止はFAAと略されるアメリカ連邦航空局が発するのですが、FAAは航空機の型式証明や耐空証明を出す権限を有していて、例のちっとも就航できない三菱航空機のMRJもそこで型式証明を得ないと飛べないのです。

   79年のDC-10の運航停止は最終的には機体の欠陥ではなく整備ミスと判明したのですが、よく落ちるという評判からその後人気がなくなり製造停止に追い込まれました。

   今回のエチオピア航空の事故の前に、同型機がインドネシアでも似た事故をおこし、かつ複数のパイロットの指摘があったのに、なぜいち早くFAAがMAXの運航停止の措置を取らなかったのか、不思議に思っていました。もしかすると昔の経験がよぎったのかもしれません。しかし人命を預かる航空機ですから、私は安全性は「疑わしきは罰せよ」の考ええ方でいくべきだと思っていました。

   MAXを導入済の機数はアメリカが一番多く、ついで中国のLCCで、世界では350機ほど。日本ではANAが発注しているだけで導入は21年からです。世界的にヒットしている機種なので、欠陥を早く治して安全になって欲しいと思います。でないと世界を安全に旅行できません。

   最後に元JALから一言。航空機の機材を予約段階で完全にチェックするのは無理ですし、確認出来て違う機種だと思って空港に行ったらそれだった、ということは大いにありえます。

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BREXITとは英国の離脱ではなく、英国からの離脱だ

2019年03月18日 | ニュース・コメント

  スキーばかりやっていたため、ちょっとお留守にしていた世界の動きのアップデート を私させていただきます。今回の話題の中心は BREXIT なのですが、その前に このところ打ちのめされ続けているトランプのことに触れないとすぐヒガムので、ふれてあげましょう(笑)。

   昨年末私は「トランプ恐怖政治の終焉」というタイトルで今後の私の見方を皆さん にお伝えしました。では本当にそのようになっているか簡単に顛末を見ておきます。

 ・北朝鮮はトランプの脅しに屈せず、核兵器の完全放棄をはねつけ、2 回目の会談は 物別れに終わった

 ・アメリカ議会はトランプが要求しているメキシコの壁予算を承認せずはねつけた

 ・さらに壁をめぐるトランプのいわれのない「非常事態宣言」を無効とする決議をし、そ れにはいままでトランプに従順だった共和党議員までが反対側に加わった

 ・米中協議はトランプが、「うまくいっている。3 月中に開催する」と言い続けていたが、 中国が事前交渉でトランプに屈せず、開催すらできなくなった

   このように彼の重点政策はことごとく相手が屈しなくなり、「トランプンなんか怖くない」 ということになっています。

 

  では本題の BREXIT です。

   今回のタイトルは、「BREXIT とは英国の離脱ではなく、英国からの離脱だ」です。 どういうことかと申しますと、企業や金融機関のイギリスからの離脱が予想以上に続い ているということです。

   このところ英国議会を映すテレビで議長のおじさんの出番が多いですね。議会内 ではマイクをあまり使用しないため、顔を真っ赤にして大声で、

 “Order!Order!”   ご静粛に、に続いて賛否の票数を読み、

 The nays have it,  The nays have it!  ナイズハブイット を連発していました。

 これは議会用語で、反対多数で否決された、ということです。それが、先週の2日間は連続で 

 The ayes have it!  The ayes have it!  

  アイズハブイットに変わりました。賛成多数で可決ということです。もっともそれでも事態 は好転しません。この小田原評定、いつまでつづくのでしょう。イギリス議会がどう騒ご うが、EU 側は「びた一文譲歩はしない」と言っているのに。

  以前にも書きましたが、EU にとってイギリスの離脱ほど苦々しいものはありません。 EU 内部でもイタリアやオーストリア、ポーランドなど、ポピュリスト政党が多数派になっ ている国が多くて、ポピュリスト達の政策はことごとく EU離脱が含まれていま す。それらの国への見せしめの意味もあり、EU側に譲歩のインセンティブなどないのです。それに加えて離脱に時間がかかっても、それに乗じ混乱を嫌う企業や金融機関の移転先を獲得できるメリットもあるため、EU各国は本心では急ぐ必要なしと思っているにちがいありません。

  すでに日本の自動車メーカーはホンダや日産のように英国からの離脱を決めたと ころもあれば、パナソニックやソニーのように欧州本社をオランダに移してしまったとこ ろもあります。金融機関も続々と離脱しそうです。アメリカの金融機関ではゴールドマン やモルガンスタンレーが離脱をすでに決行しました。金融機関は EU 内に本社があれば域内のすべての国で別々のライセンスを取得する必要がなく、ユニバーサル・パス ポートを得られるからです。

   離脱組がどこへ行くかと申しますと、それぞれの事情にもよりますが、オランダ、ベ ルギー、ドイツ、そしてフランスといった順です。なぜオランダやベルギーが多いのか。 理由は、オランダやベルギーはかねてからイギリスに次いで金融業などの商売をする のに自由度が非常に高いためです。私もソロモンブラザーズの資本市場部にいたころ、 日本企業のファイナンス子会社が多いアムステルダムなどにたびたび出張していまし た。私の仕事は日本企業がユーロ市場で債券発行による資金調達をする際、それを 引き受け機関投資家にセールス部隊を通じて販売するというものでした。債券は発行 されるときには株式と同様に、発行後の売買が行われる取引所を決めておく必要があ ります。

   EU 以前の時代から取引所の選択では発行体のロケーションにかかわらずロンド ンかルクセンブルグが多かったのです。理由は上場に際して開示する書類が簡単だからで、日本での開示要件である有価証券報告書を英訳すれば事足りました。ルクセ ンブルグが多いのは、英語での登録が認められていたからです。それがニューヨーク への上場となると、英語ではあっても開示内容が全く異なり非常に厳しいし、その後四 半期開示が義務付けられ、コストが莫大になるので避けられています。

 

   イギリスの日本企業は、今後 BREXIT の迷走による混乱が続こうが収束しようが、欧州本社や製造拠点にイギリスは選ばないでしょう。残念ながら小さな島国になったイギリスは小さな市場がある以外、経済金融分野において存在価値が減る一方だと思わ れます。実際に合意なき離脱が可能性を増す一方なのですが、そうなった場合のイギリスの受けるインパクトについては、すでに「さよならをもう一度」という記事で書いていますので、それを簡単に引用しリマインドしておきます。

 引用

イギリス政府も中央銀行であるイングランド銀行も、それぞれ合意なき離脱の影響を試 算していますので、そのうちの最悪シナリオの数値をあげます。政府試算では 15 年後 に EU 残留と離脱の差は GDP で▲9.3%。イングランド銀行は 4 年後の 23 年末で▲ 10.5 とさらに厳しい結果を予想しています。エコノミストなどにはこれでも甘いという見方が多いのです。それにもしイギリスのGDP の9%を占めるスコットランドの離脱が現実となると、イギリスはさらに小さな島国でしかなくなります。

引用終わり

   こうした見通しに対してイギリス国内では離脱する日本企業に反対デモをかけたりする動きがありますが、今となっては空しい抵抗と言わざるを得ません。今後一縷の望みにかけるとすれば、国民投票のやりなおしでしょうが、メイ首相はそれを頭から否定しているため、3か月程度の離脱猶予期間では実施不能。結局ポピュリストの煽りに乗った哀れな末路を甘んじて受ける以外なさそうです。

   そのことで想起されるのは国民が飢えに苦しみ始めているベネズエラです。たわけたポピュリスト大統領によりインフレは遂に220 万パーセントに達し、電気と水までストップする事態になっています。この国の人たちに自業自得というのはあまりにも酷だし、救援したいと心から思います。

   しかし彼らを見捨て自業自得だと言っている他国の大統領がいます。それはロシアのプ ーチンで、あの大統領マデューロを支持しています。ところがおひざ元ロシアでも大きな変化が起こりつつあります。ロシア国民がプーチンに反旗を翻し始めたのです。経済が一向に好転せず、自国民が不況に苦しんでいるのに、「あのマデューロを支援するのか」という声が挙がっているのです。最近支持率が劇的に落ち、8 割程度を保っていたのが6 割程度まで低下していたのですが、先週のニューズウィークでは3割に急低下しているという調査をしめしていました。おごれるものひさしからず!

   ささっと世界を一望しましたが最後に、「トランプを含む世界のポピュリスト政権の 流れに変化の兆しあり!」と指摘しておきます。

 以上

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ニセコの変貌から見えるもの

2019年03月14日 | 旅行

  旅行と著書の取り組みで、最近記事が減っていますね。でもしっかりネジを巻きます(笑)。  

突然ですが、質問です。

 「2018年の市町村基準地価ランキング上昇率1位はどこでしょう?」

   答えは北海道倶知安町(くっちゃん)です。理由はニセコがあるから。年間の上昇率はなんと33.3%。今後もスキー場周辺は大規模開発が続くので、まだまだ上昇しそうです。毎年同じスキー場に行っているのでよくわかるのですが、周辺地区の変貌ぶりはすさまじく、終わる気配は全くありません。

   スキー場周辺の大規模開発といえば、越後湯沢を思い出す方が多いと思います。バブル時代に高層のリゾートマンションを作りまくり、それがバブル崩壊とともに一気に暴落。今やゴーストタウン一歩手前です。価格は3千万~4千万円程度で売り出されたものが、今や数万円~数十万円と100分の1から1,000分の1。時にはただ同然で売られています。管理費を払うのが負担になり、タダでもいいから売りたいのです。都会で1部屋5万円の安いアパートに住んでいる老夫婦がただ同然のマンションに引っ越し、同じ5万円程度の管理費だけを払って3倍の広さの部屋に住めますし、暖房や給湯も込みです。

  ニセコもいずれ将来は、と思うのは間違いです。去年もレポートしましたが、開発主体は海外のリゾート開発業者が中心で、かなりしっかりした開発計画を持ち、需要も海外中心のため、日本特有のバブルとは色彩が異なります。

   昨年の同時期に私はニセコの不動産に関して以下のようにみなさんに報告しています。

引用

驚異的なのは、この2-3年で建てられたコンドミニアム群です。ゲレンデに面していたり、街なかに建てられていたりするのですが、外国人のデザイナーによる素晴らしい外観とインテリアで、驚くほどの高価格です。英語の不動産情報を探すと、

・リフト5分、330平米、ツイン4部屋+シングル4部屋、リビング、キッチン 価格3億5千万

・リフト5分 223平米、ツイン4部屋、リビング、キッチン 価格2億8千万

・ゲレンデに面するコンドのペントハウス277平米、4部屋、4億9,800万円

引用終わり

  いわゆる億ションばっかり。

  そして今年新たに目を引いたのは、ニセコでも海外スキーヤーがほとんどの花園スキーエリアの大規模開発でした。我々は滞在しているヒラフ地区からリフトを乗り継いで花園まで滑走して行くのですが、ふもとには建設中のリゾート物件、ハイアットリゾート・ホテル&レジデンスがゲレンデ横に4棟も並んでいて、写真に写りきらないほどの規模になっていました。ゲレンデの最下部なのでリフトのすぐ脇、スキーヤーにはとても便利な一等地です。  

  開発主体は香港のパシフィック・センチュリー・グループで、ホンコンフラワーから身を起こし世界でも有数の金持ちになった李嘉誠氏の一族です。これらの物件をホテルとコンドミニアムとしてハイアット・リゾーツが運営を受託します。コンドは一般オーナー兼投資家にも販売して、家主は自分が使わないときにホテルとして貸し出すこともできるようになっています。今世界の一流リゾートで、はやりのシステムです。

   こうした世界的なリゾート開発グループのやることですので、湯沢の轍は踏まないでしょう。そもそも日本人からの需要はあまり期待せず、世界の金持ちのための資産でありリゾートなので、景気の影響を受けにくいのです。北海道の大自然が迎えてくれるので、本州のチマチマしたスキー場とはわけが違います。

   遊びのバラエティも驚くほどあります。スノー・シーズンだけでも、ガイド付きバックカントリー(ゲレンデ外滑走)、スノーシュートレッキング(かんじきでのトレッキングです)、スノーモービル(エンジン・キャタピラ付きの雪上バイク)、テレインパーク(ボーダーがジャンプしたりレールを滑ったりできる施設)など。子供にはスノーパークやスキー教室が英語で用意されています。

   そしてみなさんがきっと心配されるオフシーズンですが、ニセコにオフはなく、グリーン・シーズンと呼び、様々なアクティビティーが用意されていて、どれも本格的です。ゴルフはもちろん、激流でのラフティング、渓流でのカヌー、ちょっと野蛮ですがキャニオニングと呼ばれるスケルトンでの滝や渓流下り、フィッシング、絶景を楽しみながらのマウンテンバイク。これはスキー用のリフトを利用して上り、頂上から下るだけの比較的楽なバイクツーリングです。

  食の楽しみはホテルや街でもでも味わえますが、花園にはゲレンデ脇に今シーズンオープンした本格フレンチレストランがあります。このレストラン、ロケーションのよさと格式からしてさすがの野沢温泉ハウスサンアントンもかないません。ランチコース4,500円、ディナーは16,000円なりとかなり高級でスキー場のレストランとはいいがたいものがあります。北海道は食材の宝庫ですから、さぞかし美味しいでしょう。我々は高くて行けませんでした(笑)。

   では一体このリゾートに来るのはどんな金持ちか。例として今回出会った人々のお話しをします。まずはニュージーランドからのご夫婦です。彼らとは夕刻に倶知安のすし屋に行く往復のシャトルバスで知り合い、30分ほど話し込みました。彼らは我々がいつもベースにしているニセコのヒラフ地区に数年前から別荘を持っていて、今回の滞在予定は2か月とのこと。もともとニュージーランドのスキー場のホテルのオーナーでしたが、それを売ってリタイア。日本とスキーとゴルフが大好きでニセコに別荘を買ったそうです。2か月の間に北海道の主なスキー場を巡り、本州に渡って蔵王をはじめとする東北のスキー場も車で巡りたいとのこと。さらに夏はゴルフをするために訪れるそうです。

  ご婦人はゴルフの腕前がハンディ4というトップクラスのプレーヤーで、アマチュア選手権に出場する腕前。ご主人は彼女のお供でただのダッファーと言っていました。ダッファーとはボールより芝生を飛ばすほうが得意な腕前だという意味です(笑)。北海道は優雅な暮らしぶりの人々にとって食事はもとより、夏冬両方楽しめる理想郷だと言っていました。私にスキー場とゴルフ場、たくさんあるけどこを巡ったらよいかという質問をぶつけ、熱心に聞いていました。答えているうちに別れの時間が来てしまい、再会を期して別れました。

  次の例はオーストラリアのシドニーからの家族連れで、やはり日本の食と景色とスキーが大好きで、それに加えて日本人が親切なので、やはりニセコに別荘を買ったとのこと。ゴンドラの中のためわずか20分程度の会話でしたが、ご主人は不動産の販売業で財をなしたようです。彼らもスキーのほかに冬も避暑地として使っているとのこと。オーストラリアと日本は夏と冬が逆です。でも去年からオーストラリアの不動産は下落し始めたので、これから商売は厳しそうだと言っていました。

  私がなぜ便利で安いホテルでなく、別荘を買うのかと質問したところ、「ニセコに可能性を感じている」という不動産屋らしい答えが返ってきました。さらに「でも往復の運賃を考えたらペイしないでしょう」と聞くと、「いや、ここと同じ雪質を求めるならヨーロッパまで行かなくてはならないので、ニセコはとても手ごろだよ、時差もないしね。」というのです。多くの海外スキーヤーが世界でもトップクラスのパウダースノーを求めてニセコに来るのです。

  それにしてもここの地価が前年比で3割も上昇し、全国一番の上昇率だったのには驚きました。その上昇を支えているのはオーストラリア人ばかりでなく、資本としては中国資本も入ってきていて、開発も湯沢のように一つのリゾートマンションを単独で開発するといういかにも日本型ではなく、オールシーズンを考え非常に大規模で計画的であること。そして投資家と利用者をうまく結びつける仕組みで開発会社もオペレーターも投資家もリスクを分散できることなど、学ぶことは多いと思います。

   私はいつもみなさんに、「外資は三顧の礼をもって迎えよ」、と言い続けてきました。株式投資しかり、企業買収しかり、ゴルフ場買収しかり、都心のビル投資しかり、そしてリゾート投資も。特に不動産は持って帰れないので、いくら外資が入っても大丈夫です(笑)。

   日本の観光資源の豊富さを見つけてくれているのは、最近は海外客かもしれませんね。

  以上、ニセコからのレポートでした。

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トランプ対金正恩、どっちが勝ったの?

2019年03月01日 | トランプのアメリカ

   お互いに負け、それが私の勝手な評価です。久々に彼をおちょくってあげましょう。

   理由は簡単で、お互いに国民に何もおみやげを持ち帰れなかったからです。今回の結果に関してトランプ側と北朝鮮側の主張が完全に行き違っています。どっちがウソをついているか、今後しっかりと見ていきましょう。

    12月末に私は「トランプ恐怖支配の終焉」というタイトルで記事を書きました。「何でそんなことが言えるの?」と思った方は多いと思います。しかしその後のトランプ政治の顛末をチェックすると、おおむねその予想が正しいことがわかると思います。箇条書きにします。

 

その1.議会は政府閉鎖のプレッシャーにもめげず、トランプの悲願メキシコ国境の壁建設を阻んだ

その2.金正恩がトランプの経済封鎖に屈することなく、核の全面放棄を拒否した

その3.腹心の側近であるコーエン弁護士がトランプの脅しにもめげず、議会でトランプの悪事をあばく証言をした

 

  このようにビッグイベントのすべてでトランプの恐怖支配に抵抗され、実質的に終焉しています。

「トランプなんか怖くない!」。


  もうトランプがいくら脅しても、誰も屈しなくなったのです。

  コーエン氏の7時間に及ぶ議会証言の実況中継は全米をくぎ付けにしました。アメリカ人の友人は「北朝鮮なんかどうでもいい、こんなに面白い見世物はなかった」とFBでいっていました。

 

  コーエン氏は証言ではっきりと「トランプはうそつきで、詐欺師、ペテン師、人種差別主義者、他人を脅した回数は500回くらいだ」と証言しています。しかも今後さらにヤバイ証拠を示してやるとも。

  ついでにフェイクニュース(笑)CNNの昨日の記事を日本語サイトから引用します。これは20ページに及ぶコーエン氏の証言原稿をCNNが入手したものの一部の翻訳です。

 

引用

トランプ氏は大統領選挙期間中を通して、モスクワにトランプタワーを建てる事業計画に深く関与し、交渉の指揮を執っていたという。(これ違法行為です)。コーエン被告は同事業をめぐって議会に虚偽の説明をした罪を認めているが、これについてはトランプ氏から間接的にうそをつくよう指示されたと証言する。

トランプ氏本人が同事業のことでうそをついたのは、「大統領選に勝つとは思っていなかったから。そして何億ドルものもうけになる事業計画だったからだ」と指摘する。

女性への口止め料に関しては、トランプ氏から払い戻しを約束されたと述べ、同氏の署名が入った17年8月付の小切手を証拠として示す。

このほかにも、トランプ氏が卒業した高校や大学に対し、当時の成績を公表しないよう求めた書簡や、ベトナム戦争への徴兵免除の理由とされてきた「かかとの骨の損傷」が虚偽だったことに関する情報も提供する。

また、トランプ氏が黒人に対する差別発言を繰り返していたとも証言する。ある時は車でシカゴの貧困地域を通過しながら、被告に「あんな生活ができるのは黒人だけだ」などと話し、さらに「黒人は頭が悪すぎるから、私に票を入れることはないだろう」とも発言したという。

引用終わり

 

さーどうするトランプちゃん。

学校でもそうとうひどっかたんだね、きっと。

 

  大統領としてだけでなく人間としても「うそつき、詐欺師、ペテン師、人種差別主義者」と、名誉をこれだけ傷つけられたら、もちろん訴えるよね。

ぜひ訴えて証言の真偽を争ったらどうかな?

 

  これだけの証拠を突き付けられてもなおも議会の公聴会自体を記者会見で「フェーク公聴会だ」と非難。議会をフェークと侮辱して大丈夫かな。サンダース報道官も同じことを言っています。

あれ?サンダースおばさん、去年末で辞めるって言ってたよね、どうしたの?

 

  このTV中継をトランプはハノイでしっかりと見ていたそうです。どおりで心ここにあらず。金正恩との会談は上の空だったにちがいがありません(笑)。

 

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