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日本経営合理化協会での講演内容 その1.決算から知る日本財政の姿

2022年10月31日 | 大丈夫か日本財政

 先週金曜日に私は日本経営合理化協会さんで講演を行いました。準備などでしばらくブログに投稿ができずすみません。このところのドル高と、アメリカ国債の金利が上昇したことで、10年ぶりに私にお呼びがかかったのでしょう(笑)。協会のサイトには、以下のような私のページがあり、過去の分を含め講演の音声CDなどが販売されています。

https://www.jmca.jp/prod/teacher/1734

 

 今回の講演は協会のメンバーの方向け、かつ3時間に及ぶ長丁場でしたので、著作権のこともありそのままお伝えすることはできませんが、かいつまんで要点をみなさんにもお伝えしたいと思います。コロナ禍でもあり協会のホールに直接いらした少数の方とライブのオンライン配信をご覧になる方へ、ハイブリッド方式で行われました。

 

その1.日本政府の財政問題

 私の話のポイントは、みなさんがほとんどご存じない政府予算の実態とそのファイナンスについてです。みなさんも毎年編成される政府の予算案はある程度ご存知でしょう。また先週決まった補正予算も30兆円にもなったことくらいはニュースで聞かれていると思います。これまでも補正予算は毎年作られてきました。

 政府予算をおよその平均値でみると、歳出100兆円、税収などの歳入60兆円、赤字40兆円=新規国債発行額です。しかしこれだけ見ていては、本質を見誤ります。実際の決算では歳出額は毎年とんでもなく予算をオーバーしているのです。その結果国債発行額は21年度には236兆円にもなったことをご存知の方はほぼいらっしゃらないでしょう。

 それは報道も同じで、当初予算と秋にプラスされる補正予算だけで、決算時には大幅な予算オーバーになっています。当初予算はニュースになっても、それ以外は報道されないか、政府発表もローキーのため目に留まることはありません。それにより赤字額も平均の40兆円が実際にはその2倍近い80兆円だと知る方は皆無に近いと思います。いいですか、歳入が60兆円なのに歳出は140兆円ですよ!

 

 いつも報道は予算だけですが、それはあまり意味がありません。どうぞ予算ではなく、結果の決算数字をご覧ください。

 報道はまた借換債が議論に入っていないことがほとんどですが、一部の方は問題なしと考えているようです。何故なら「それによって国債発行残高が増えることはない」という理由からです。毎年の借換債は100兆円から140兆円にものぼります。それが問題ないとは?

 国債の残高維持こそ、将来日銀が破綻する端緒になりうる大問題ですが、それはまた次回解説します。

 ほとんどの方は予算しかご存じないと思いますが、数字ヲタクの私の目はごまかせません。会社も予算ではなく結果がすべて。真実は、財務省のサイトに行けばすぐ見ることができます。財務省のサイトでは「年度の予算」ページもありますが、目に留まることのないようにひっそりと(笑)「年度決算」のページがありますし、実際の国債発行実績もあります。

 ではその決算数値などを見てみましょう。以下のようにとんでもなく予算を超過し、国債発行も莫大な数字になっています。

   

    当初予算  決算    国債発行額  うち借換債

20年度 102兆円  147兆    257兆     108兆

21年度 106兆円    143兆    236兆     147兆

22年度 107兆円  137兆(見込)245兆(見込)

 

 もちろんこのところ3年間の大きな予算超過はコロナ対策の影響が大ですが、コロナの無かった平年の補正予算も巨額です。22年度は当初予算にプラスし、先週成立した30兆円の補正予算を私が単純に追加しました。

 なんというひどい予算超過でしょう。会社であれば社長は株主からすぐ首にされます(笑)。この真実を知らずして、日本財政を語るなかれ。

 今回はここまでです。次回は日銀の本当の姿をお目にかけます。

 

 

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1ドル150円でも米国債は買いだ

2022年10月21日 | 米国債への投資

  クロちゃん、円安に追い詰められましたね。トラスさんのように、早めに「間違えました、すみません。これにて辞任します」と、2年でだめだった時に決断しておけばよかったのに。そうすれば日本の財政・金融は取り返しのつかない状況にはならなかったと思いますし、あなたも追い詰められることはなかったのにね。

  先日の国会予算委員会で野党議員に「即刻辞任すべきだ!」と問い詰められたのに対し「辞任するつもりはない!」と即答しました。刻一刻と大破綻に向かっていることを認めず、破綻のマグニチュードをひたすら大きくすることに邁進しています。

 

  そんな中、ドルは高くなると同時に、米国債金利も上昇を続け、投資を考えている方は、大いに迷っていることでしょう。私の個人相談窓口でも相談が際立って多くなり、過去に相談された方からも再び連絡をいただくようになっています。

 

  では、現状のドル円と米国債の金利で、いったいどう考えるべきなのか。私の結論は、

「ドルが150円でも米国債は買いだ」、です。

 

  その理屈を数字の根拠とともに示します。

 

  簡略化のため現状1ドル150円のレートで、金利4%のゼロクーポン債10年物を買うことにしましょう。10年後のブレークイーブン円レートはいくらか、計算します。

  まずは金利4%の10年複利で、元本はいくらになるのか計算します。以下のサイトに数字を入れれば簡単に計算できます。

https://keisan.casio.jp/exec/system/1248923562

  米国債1,000ドルを1ドル150円で買うと15万円です。すると10年後に元本はほぼ1,500ドルになります。投資時点の円額は15万円でしたから、以下のような割り算をするとブレークイーブンを計算できます。

150,000円÷1,500ドル=100円

  戻ってくる1,500ドルが15万円と等価になるのはドル円が100円のときです。つまり円レートが100円を切らなければ、損をすることはありません。

  100円以上であればすべて儲けになります。

  ちなみに10年後の為替レートが買ったときと同じ150円であれば、225万円になります。計算は、

1,500ドル X 150円 = 225,000円

225,000円 ÷ 150,000円 = 1.5倍

10年で1.5倍とは、大変なリターンですよね。それがもし円が200円になろうものなら・・・・。皮算用はやめておきましょう(笑)。

 

  金利というリターンをもたらすドルという通貨の強さを見せつけられます。それにくらべ雀の涙しかリターンのない通貨円。なさけないことおびただしい。

  我々家計の金融資産は2,000兆円もあり、そのうち1,000兆円がほぼなにも生み出さないブタ積みの現金・預金に放置されています。寺島実郎さんが言う様に、もし金利がたったの1%にでもなったら、我々の収入は黙っていても毎年10兆円も増えます。それをゼロに放置する、クロちゃん、あんたの罪は大きいよ!

  その機会損失を彼に罰金として払ってもらうのもいいかも(笑)

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プーチン、旗色悪し

2022年10月12日 | ロシアのウクライナ侵攻

  クリミア大橋の爆破が大きな余波を拡げています。プーチンはウクライナ全土に仕返しとしてミサイルを撃ち込み、子どもを含む多数の死傷者が出ています。ウクライナ側をテロリストと呼んでいますが、世界は民間人を殺害するプーチンこそテロリストだとして、戦争犯罪だと糾弾しています。なんというひどいことをするのでしょう。しかし原爆でなくてよかったと思います。

  ロシアの中立系レバダセンターによる9月の世論調査では、プーチンの支持率が8割を切り6ポイント低下し78%に、不支持率は6ポイント上がって21%になっています。果たしてこの無差別攻撃により今後どうなるか、注目されます。

 

  私は9月16日の投稿、タイトル「ロシア国内での反乱勃発」で、日本のマスコミがオリンピック賄賂疑惑と統一教会問題一色であることを批判して、ロシア国内のあり得ないほどの反プーチンの動きをお知らせしました。それからやっと一月近くたって日本でも多くのマスコミがロシア国内での反乱の状況を報道するようになりました。9月16日の私の投稿をサマリー引用します。

サマリー引用

  ウクライナが東部ハルキウ州で大攻勢をかけて奪還し、ロシア軍が撤退している中、小さなコラムで見逃せない大きなニュースが流れました。それはロシア国内で反プーチンののろしが各地で上がっているというとんでもない大ニュースです。何故とんでもないのか。それは政府や軍部への批判をすると、それだけで懲役15年に処されるという法律が春先に成立しているからで、そのリスクを取る勇敢な議員たちが出てきたというのです。

以下、朝日新聞記事とニューズウィークを引用。

モスクワやサンクトペテルブルクの18カ所の区議会議員がプーチン氏に辞任を求める要請書を公表した。要請書では侵攻を念頭に「プーチン氏の行動は時代遅れで、ロシアと市民の発展を妨げている」と指摘した。ある議員はツイッターでロシア兵の犠牲や経済低迷を問題視し、プーチン氏の弾劾を求めた。

モスクワなど複数の主要都市の区議グループも要請書に署名している。

要請書は「我々ロシア地方議会の区議グループは、ウラジーミル・プーチン大統領の行動がロシアと市民の未来に害を及ぼすと確信している」と述べ、さらにこう続けている。「プーチンがロシア連邦の大統領の座を退くことを要求する!」

スモルニンスコエ地区の議会は9月上旬にも、プーチンを反逆罪で弾劾することを提案していた。同議会のニキータ・ユレフェフ区議は、ウクライナに対する特別軍事作戦がロシア軍の兵士たちを死なせ、経済に打撃をもたらし、NATOの拡大を招いていると批判した。

  「プーチンを反逆罪で弾劾する」とは、本当なのかと思わせるくらいの大ニュースですが、日本では特に大きな報道がなされていません。35人の議員たちだけでなく、ウクライナ侵攻の開始当初、モスクワでデモを繰り広げた数万の若者は、もちろん拍手喝采しているでしょう。この動きがもっと拡大し、悪魔皇帝プーチンがハチの巣になる日を待っています。

サマリー引用終わり

 

  このところやっと日本の新聞・TVもロシア国内の反プーチン運動をきちんと報道するようになりました。予備役の強引な招集やクリミア大橋が爆破されたことから、プーチンの核使用が現実性を帯びた結果でしょう。そうした中から私が特に注目したロシア国内の発言を取り上げます。ロシア国会下院の国防委員長の発言です。

「国営テレビでの戦況報告でウソをつくのはやめるべきで、正確な戦況を伝えるべきだ」と国防省に要求しました。議会重鎮の国防委員長発言ですから、国防省も無視はできないでしょう。

  そして連日予備役の招集や、予備役の条件に該当しない一般の人々までが誰かれ構わず招集事務所に連行され、拉致同然で訓練所に送られ、2・3日で前線に投入されるというお粗末な様子も報道で明らかになりつつあります。それに対して国外脱出の長蛇の列が報道されています。ロシア脱出の動きは止まらないでしょうし、反プーチンの動きも止まらないでしょう。

 

  このところやっとプーチンの旗色が悪くなっていますが、「ウクライナ人は負けない」と、すでに2月24日の侵攻直後に予想した賢人がいました。イスラエルの歴史学者ユバール・ノア・ハラリ氏です。彼の著書「サピエンス全史」は世界中でベストセラーになっています。

 ハラリ氏は2月24日に侵略が開始された直後、28日に以下の文章を英ガーディアン紙に投稿していました。長いですが、そのまま再掲します。

 

引用

タイトル:「プーチンは負けた」  

開戦からまだ1週間にもならないが、ウラジーミル・プーチンが歴史的敗北に向かって突き進んでいる可能性がしだいに高まっているように見える。彼はすべての戦闘で勝っても、依然としてこの戦争で負けうる。ロシア帝国を再建するというプーチンの夢は、これまで常に噓を拠り所としてきた。「ウクライナは真の国家ではない、ウクライナ人は真の民族ではない、キエフやハリコフやリヴィウの住民はロシアの支配を切望している」、とプーチンは言う。だが、それは真っ赤な噓で、ウクライナは1000年以上の歴史を持つ国家であり、キエフはモスクワがまだ小さな村でさえなかったときに、すでに主要都市だった。ところが、ロシアの独裁者プーチンは、この噓を何度となく口にするうちに、自らそれを信じるようになったらしい。

 プーチンはウクライナ侵攻を計画していたとき、既知の事実の数々を当てにしていた。彼は、ロシアが武力でウクライナよりも圧倒的優位に立っていることを知っていた。北大西洋条約機構(NATO)がウクライナに援軍を派遣しないだろうことを承知していた。ヨーロッパ諸国はロシアの石油と天然ガスに依存しているので、ドイツなどの国々が厳しい制裁を科すのを躊躇するだろうこともわかっていた。彼はこれらの既知の事実に基づき、ウクライナを急襲して政府を倒し、キエフに傀儡政権を打ち立て、西側の制裁を乗り切る腹だった。

 しかし、この計画には大きな未知数が一つあった。アメリカがイラクで、旧ソ連がアフガニスタンでそれぞれ学んだとおり、一国を征服するのは簡単でも、支配し続けるのははるかに難しいのだ。自分にはウクライナを征服する力があることを、プーチンは知っていた。だが、ウクライナの人々が、ロシアの傀儡政権をあっさり受け容れるだろうか? プーチンは、受け容れるほうに賭けた。なにしろ、聞く気のある人になら誰にでも執拗に繰り返したとおり、ウクライナは真の国家ではなく、ウクライナ人は真の民族ではないというのが、彼の言い分なのだから。2014年、クリミアの人々はロシアからの侵入者にほとんど抵抗しなかった。それなら、2022年にもそうならない道理など、どうしてありえようか?

 ところが、日が経つにつれて、プーチンの賭けが裏目に出たことがますます明らかになってきている。ウクライナの人々は渾身の力を振り絞って抵抗しており、全世界の称賛を勝ち取るとともに、この戦争にも勝利しつつある。この先、長らく、暗い日々が待ち受けている。ロシアがウクライナ全土を征服することは、依然としてありうる。だが、戦争に勝つためには、ロシアはウクライナを支配下に置き続けなければならないだろう。それは、ウクライナの人々が許さないかぎり現実にはならない。そして、その可能性は日に日に小さくなっているように見える。

 ロシアの戦車が1台破壊され、ロシア兵が1人倒されるごとに、ウクライナの人々は勇気づけられ、抵抗する意欲が高まる。そして、ウクライナ人が1人殺害されるたびに、侵略者に対する彼らの憎しみが増す。憎しみほど醜い感情はない。だが、虐げられている国々にとって、憎しみは秘宝のようなものだ。心の奥底にしまい込まれたこの宝は、何世代にもわたって抵抗の火を燃やし続けることができる。プーチンがロシア帝国を再建するためには、あまり流血を見ずに勝利し、あまり憎しみを招かないような占領につなげる必要がある。それなのにプーチンは、ますます多くのウクライナ人の血を流すことによって、自分の夢が実現する可能性を自ら確実に消し去っている。ロシア帝国の死亡診断書に死因として記される名前は、「ミハイル・ゴルバチョフ」ではないだろう。それは「ウラジーミル・プーチン」となるはずだ。ゴルバチョフはロシア人とウクライナ人が兄弟のように感じられる状況にして舞台を去った。プーチンは逆に、両者を敵同士に変え、今後ウクライナが自国をロシアと敵対する存在として認識することを確実にしたのだ。

 突き詰めれば、国家はみな物語の上に築かれている。ウクライナの人々が、この先の暗い日々だけではなく、今後何十年も何世代も語り続けることになる物語が、日を追って積み重なっている。首都を逃れることを拒絶し、自分は脱出の便宜ではなく武器弾薬を必要としているとアメリカに訴える大統領。黒海に浮かぶズミイヌイ島で降伏を勧告するロシアの軍艦に向かって「くたばれ」と叫んだ兵士たち。ロシアの戦車隊の進路に座り込んで止めようとした民間人たち。これこそが国家を形作るものだ。長い目で見れば、こうした物語のほうが戦車よりも大きな価値を持つ。

 ロシアの独裁者プーチンは、誰よりもよくそれを知っていてしかるべきだ。彼は子供の頃、レニングラード(現サンクトペテルブルク)包囲戦におけるドイツ人の残虐行為とロシア人の勇敢さについての物語をたっぷり聞かされながら育った。今や彼はそれに類する物語を生み出しているが、その中で自らをヒトラー役に配しているわけだ。

 ウクライナ人の勇敢さにまつわる物語は、ウクライナ人だけではなく世界中の人に決意を固めさせる。ヨーロッパ各国の政府やアメリカの政権に、さらには迫害されているロシアの国民にさえ、勇気を与える。ウクライナの人々が大胆にも素手で戦車を止めようとしているのだから、ドイツ政府は思い切って彼らに対戦車ミサイルを供給し、アメリカ政府はあえてロシアを国際銀行間通信協会(SWIFT)から切り離し、ロシア国民もためらわずにこの愚かな戦争に反対する姿勢をはっきりと打ち出すことができるはずだ。

 私たちの誰もがそれを意気に感じ、腹をくくって手を打つことができるだろう。寄付をすることであれ、避難民を歓迎することであれ、オンラインでの奮闘を支援することであれ、何でもいい。ウクライナでの戦争は、世界全体の未来を左右するだろう。もし圧政と侵略が勝利するのを許したら、誰もがその報いを受けることになる。ただ傍観しているだけでは意味がない。今や立ち上がり、行動を起こす時なのだ。

 あいにく、この戦争は長引きそうだ。さまざまに形を変えながら、おそらく何年も続くだろう。だが、最も重要な問題にはすでに決着がついている。ウクライナが正真正銘の国家であり、ウクライナ人が正真正銘の民族であり、彼らが新しいロシア帝国の下で暮らすのを断じて望んでいないことを、この数日の展開が全世界に立証した。残された大きな疑問は、ウクライナからのこのメッセージがクレムリンの分厚い壁を貫くのに、あとどれだけかかるか、だろう。

引用終わり

 

  ハラリ氏は戦闘が長く続くことをキーウ攻撃開始の直後から予想し、プーチン自らが、かつてロシアへ侵攻したヒトラー役を演じていることを見事に喝破しています。ロシアの侵攻直後、わずか4日後のことでした。

 

  そして今ロシア国内では人々が反プーチンを声高に叫び、弾圧をものともせずに反プーチンデモが繰り広げられ、政府の要人までもがプーチンを表立って非難するところに至っています。今回のプーチンの無差別テロ攻撃は世界の人々を一層反プーチン側に寄らせるだけでなく、ロシア国内も反プーチンに大きく旋回するに違いないと私は思っています。

 

 

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芸術の秋だ、 もっくんどうもありがとう!

2022年10月08日 | アートエッセイ

  先日NHKのBS番組で、とても素晴らしい番組を見ました。

  私の参加しているサイバーサロンのメンバーでもある本木雅弘さんが主人公となって日本画・琳派の世界を案内し、実演するというアートの番組です。

番組名;「アート疾走 X 本木雅弘」、

副題; 金と黒の本木雅弘

 

  ただ古い絵画を見せて、それを論評するだけの番組ではなく、琳派を深く勉強できたし、それに感化されて絵を描いたり、踊りを振りつけたりするもっくんの技も見ることができました。

  琳派の代表作として取り上げられていた尾形光琳の紅白梅図屏風や、MOA美術館にある尾形光琳屋敷の金屏風なども専門家の解説で見ることができました。MOAは何度も行っているのに、あの屋敷には行ったことがありませんでした。

  そして一番驚いたのは、もっくんの毛筆の技です。家内が、もっくんに子供ができた時、命名書きを実際に毛筆で書いたのを見ていて、「すごく達筆で驚いた」と言っていましたが、それから年月を経て一層磨きがかかったにちがいありません。

  番組では、もっくんが画家の教えに従い、墨のたらし込み画法で描いた絵の上に毛筆で文を書いていましたが、その筆使いの見事さには本当に驚きました。とてもシロウト技ではありませんね。まるで俵屋宗達の鶴の群れの絵の上に本阿弥光悦が和歌を毛筆で書いた有名な合作のように思えました。

 

  そしてもう一つ。私が嬉しかったのは、久々に大好きな日本画家である鴻池朋子氏が出演し、もっくんと彼女の作品を見ながら対談していた部分です。

  彼女は、現役の日本画家としては3本指に入る私のお気に入りです。彼女がもっくんに投げかけた問いは、「琳派の画家が一枚のキャンバスとも言うべき用紙に絵を描くのではなく、真ん中が割れてしまっている2枚ものの屏風や、枠が邪魔する襖になぜ描くのか」という疑問で、彼女がその理由を説明していました。

  彼女は真ん中が割れている屏風の割れ目にこだわっていました。それは邪魔者ではなく、屏風に作られている内部の異世界への入口だというのです。それを聞いて私が思い出したのは2009年にオペラシティーで行われた彼女の展覧会です。

  私がこれまでに見た多くの展覧会で、勝手ながら最も高い評価をしている展覧会で「インタートラベラー 神話と遊ぶ人」と名付けられたストーリー性を持った展覧会です。

 

  一般的にある特定アーティストの展覧会といえば、その作家の作品を時系列に並べて展示するものがほとんどです。しかしこの展覧会はそうしたものとは全く異なり、彼女の持つ世界観が会場全体を使って表されていて、一方通行の会場を進むにつれてどんどん引き込まれていくストーリー展示でした。

 初めに巨大な襖絵があり、その襖絵が開かれていて、その入口を入るというところから始まり、さまざまな作品を見て歩くうちに、どんどん彼女の世界に引きずり込まれ、最後には真っ暗な地球の核にまで到達するという展開が待っていました。その地球の核にあったのは、怒った顔をした巨大な金属でできた子供の頭で、アース・ベイビーと名付けられていました。

 今を去る13年も前の展覧会ですが、ネットで検索してみるとその一端を見ることのできるサイトがありましたので、URLを貼っておきます。

https://www.operacity.jp/ag/exh108/

 

  ついつい鴻池朋子の話に逸れてしまいましたが、今一度もっくんに戻します。

  今回の番組構成は実に秀逸で、単なる芸術談義の域を超え、もっくんは絵画に合わせたダンスを振付け自ら踊り、絵画の技法を学びながら実際に描き、さらにお得意であろう書をその絵の上に書いて見せる。彼の素晴らしいマルチタレントぶりを存分に見ることができ、大満足の一時間でした。

  芸術の秋にふさわしい番組でした。

もっくん、どうもありがとうございました!

 

 

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