ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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警鐘;日銀のゼロ金利解除について その2

2024年03月29日 | 日本の金融政策

 前回は、日銀がゼロ金利を解除したが、その後のドル円レートは大方の予想に反して、円高ではなく反対のドル高に動いてしまった。その理由として私が指摘したのは、

  • 日本は貿易立国にもかかわらず貿易収支は赤字が常態になっている。
  • 海外投資の黒字分を外貨のまま現地に残すことが当り前になってきて、日本に還流させないこと。つまり経常黒字が円高要因ではなくなっている。
  • 日本の一般投資家も企業同様賢くなり、成長力の衰えた日本から海外へ投資マネーを移している。

ということを理由に挙げました。

  では、このドル円レートを専門家はどう予想していたか、まだ年が明けて3か月も経過していませんが、昨年末に行われた為替のアナリスト達のドル円予想を見てみましょう。ダイヤモンド誌が年末に恒例として行っているアンケート調査の結果です。著名な為替アナリスト8人が予想をしていましたが、そのうち今後1年で円高予想をしていたのが7人、円安予想はたった一人でした。

公表されていることなので名前をあげますと、当たりは「ふくおかファイナンシャル・グループ」の佐々木融氏だけで、今年のドルの予想値は155円で今後はしばらく円安と予想しています。佐々木氏は元日銀マンで、その後JPモルガンで為替のアナリストをしていました。

 もちろんまだ3月ですから1年間の結果は出ていませんが、少なくともここまでは大外れで、8人中方向を当てたのはたった一人。それほど為替の予想は難しいということです。

 では日銀の政策変更で実際に金利はどうなったかを検証します。短期金利変更はただちに普通預金の金利の変更という影響をもたらしています。3月19日のロイターニュースを引用します。

引用

日銀の政策変更を受け、大手銀行が預金金利を引き上げる。三菱UFJ銀行は19日、日銀の利上げを受けて普通預金金利を0.001%から0.02%に引き上げると発表した。日銀が前回利上げをした2007年2月以来。3月21日から引き上げる。定期預金の利率も見直し、1年物は0.002%から0.025%とする。優良企業に融資する際の最優遇金利、短期プライムレートは1.475%を維持する。同レートは、住宅ローンの変動金利の基準でもある。

三井住友銀行も普通預金金利を年0.02%(従来は年0.001%)に引き上げ、4月1日から適用する。定期預金金利も引き上げを予定しているという。

みずほフィナンシャルグループも、普通・定期預金の金利を引き上げる。木原正裕社長は日銀の利上げ決定後、ビジネスの原資として「預金を持つことの重要性が一層増す」とのコメントを出した。

グループに4行を抱えるりそなホールディングスも、預金金利を引き上げる検討に入ったことを明らかにした。

引用終わり

 

 では三菱銀行に普通預金で100万円を預けていると、1年でいったい金利がいくらになるのでしょうか。

利上げ前 100万円 X 0.001% = 10円

利上げ後 100万円 X 0.02%  = 200円

 200円だと1回でも振り込み手数料をはらうと吹き飛んでしまう額です。とてもじゃないですがこれで預金をしようと思うような金利ではありません。しかもこれから源泉税を2割取られます。つまり円預金は金利を期待して預けるようなものではないということです。 

 では預金の代わりに円建てのMMFへの投資はどうか。MMFとは、マネー・マネージメント・ファンドの略称で主な投資対象を国債など国内外の公社債や譲渡性預金、コマーシャル・ペーパーなど、短期金融資産とするオープン型の公社債投資信託で、1円以上1円単位で購入でき、毎日収益が計上され、運用成果は実績に応じて変わりますが、投資とは言え預金にかなり近い投資です。

 しかしネットで調べた結果、野村證券のMMF金利は年率0.021%で、預金より0.001%だけ上ですが、とてもこの商品に投資する気にはなれません。

 では、ドル建てのMMFはどうか。同じく野村のMMFでは4.739%(予想金利)。これだと金利をしっかりもらえるので投資する気になります。あくまで変動金利のため、日々変動するリスクはありますが。100万円の投資をすると年に4万7390円もらえる勘定です。もちろん為替のリスクはありますし、利回りも変動しますが、この1年あまりは4%台が続いているようです。

 ではこの円とドルの金利差はいったいどうして生じるのでしょうか?

 一番の理由は、ドルと言う通貨は金利を生む力がある通貨であり、円と言う通貨は金利を生み出す力はないということなのです。

 一般の投資家もこのことをうすうす感じ始めていて、円よりドルへの志向が強くなってきているのではないでしょうか。その証拠がNISAによるアメリカ中心となるオルカン投資です。

続く

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ガンバレ、大谷翔平!

2024年03月26日 | ニュース・コメント

 大谷選手の会見、「何も知らなかった。ギャンブルには一切関わっていない」。

 実にクリアーで率直な会見でしたね。普段から我々が彼に感じている率直で正直な翔平のままでした。子供のころからこれ以上はないほど優しい人柄だったことを知っている者にとっては100%信じられる話の内容でした。

「あーよかった」というのが私の感想です。

 私に残る疑問は水原氏が何故大谷選手の口座から送金手続きを行えたのか、その一点です。想像できるのは、普段から日常的な様々な支払いを水原氏に依頼していたということです。とにかく彼はスポンサー収入だけで100億円もあるので、口座の出入りが多少大きな額であっても気が付かない、あるいはチェックすらしない、ということもあるかと思います。その送金方法についてもいずれクリアーされると思います。

 全幅の信頼をしていた人から裏切られることのショックはとてつもなく大きいと思いますが、それを知った後の開幕第2戦のプレーぶりにそれが出なかったのはさすが大谷とおもいました。

 

 今後一刻も早くすべてがクリアーになり、彼がプレーに専念できることを祈ります。

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警鐘;マイナス金利解除について その1

2024年03月25日 | 日本の金融政策

 しばらくご無沙汰してしまいました。理由の一つは個人的運用相談が多かったこと。もう一つが花粉症です。3月に入って何度か寝込むほどの花粉症に見舞われました。いつもこの時期は気をつけているので、これほどひどいことはないのですが、今年は格別です。ブログを書くには全力を使うほどの集中力が必要なのですが、症状がひどいと集中力に欠け、持続力もなくなります。書きかけていた投稿をやっと完成させることができましたので、アップさせていただきます。

 

 このところスポーツ界では大ニュースが連続していますね。せっかく大谷翔平がドジャースデビューを果たしたのに、通訳水原一平氏のギャンブル・スキャンダルは暗いニュースとしてとても衝撃的でした。大谷選手にはめげずに頑張って欲しいと思います。

 一方相撲界では110年ぶりの快挙という超明るいニュースがありました。まだ大銀杏を結えないちょんまげ頭の尊富士の優勝、心から「おめでとうございます」と申し上げます。しかも今回優勝争いをしたもう一人の若手大の里も、髷も結えないザンバラ頭で準優勝。驚くしかありません。相撲界はきっとこのあとも二人の活躍で久々に明るいニュースで盛り上がりそうで楽しみです。

 

 では本題です。日銀がマイナス金利を解除し、短期の誘導金利をゼロ近辺にしました。また長期金利を強引に抑える政策を解除する方向に変更しています。

 しかしその結果円は下落しました。市場関係者の大方の予想とは逆の展開です。何故逆かといいますと、円金利の上昇はドルとの金利差を縮小させるためドル選好を弱め、円高要因のハズだからです。

 

 ではどうしてそのような反対の展開になっているのか。多くの為替のアナリストが説明しているのは、「マイナスだった金利がゼロになったり、長期金利が多少上昇したところで、依然として日米の金利差は大きいからだ」という説明をしています。

 

 ちょっと待てよ。そんなことは今さら指摘されなくても事前にわかっていたはずで、日銀が長短金利を予想以上に大きく上げることなどありえません。従ってこれでは説明になっていません。

 

 私の見方は以下のとおりです。

  • 日本は貿易立国にもかかわらず貿易収支は赤字が常態になっていること。
  • 海外投資の黒字分を外貨のまま現地に残すことが当り前になってきて、日本に還流させないこと。つまり海外で稼いだ外貨を、投資機会が少なくかつ金利ゼロの国内円預貯金に戻す理由が見当たらないのです。そのため対外収支統計上の経常収支は黒字でも、稼いだ外貨を国内に還流させていないので、実務上外貨を売って円転換することが少なくなっているのだと思われます。つまり経常黒字が円高要因ではなくなっているのです。
  • 新たにNISA投資が加わりました。日本の一般投資家も企業同様賢くなり、成長力の衰えた日本から海外へ投資マネーを移しています。今回の新NISAの一番人気の投資先が「オールカントリー投信(オルカン)」と呼ばれる海外メインの投信であることを先日書きました。しかも投資の仕方で毎月同じ投信を買い続ける積立投資が多くなっているため、外向きのフローは一過性ではなく、継続することになります。

 

 もちろん為替の変動要因はこれらばかりではないため、今後様様々な雑音も交じりますが、大きな動きをつかむことは大切です。

続く

 

 

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「本阿弥光悦の大宇宙」展

2024年03月08日 | アートエッセイ

 毎日のようにガザ地区でのイスラエルの残虐な殺りくや、ウクライナでのロシアによる一般市民の住む住宅への爆撃など、目を覆いたくなるようなニュースが続いていますね。

 そんな中、一服の清涼剤を得ようと上野に行きました。「本阿弥光悦の大宇宙」と名付けられた展覧会です。本阿弥光悦はその後の日本の芸術文化の源流を作り出した人物で多芸多才、芸術の総合プロデューサーとも称されます。

 

 茶道具や書画骨董をお好きな方であれば、本阿弥光悦の名声はよくご存じでしょう。そうでない方にはなじみのない名前かもしれません。私が日本で最も好きな芸術家の一人です。その不思議な響きを持つ名前に初めて出会ったのは小学校6年生の夏でした。

 友人のお姉さんが吉川英治作「宮本武蔵」、全六巻という大作を読んでいたのですが、その本を見て、読みたいと母親にせがみ買ってもらいました。小学生で何故そのような大部の本を読みたがったかと申しますと、二刀流の剣術使いに憧れたからで、私の子供の頃は近所の悪ガキと毎日のようにチャンバラごっこをしていたからです。元々新聞に連載されていたため、本になっても見開きで必ず挿絵があったのも、読手の助けになったのだと思います。

 小学校時代に、やっと六巻を一度読み終え、その後中学・高校時代、そして大学時代にも読んでいます。ストリーをすべて記憶していてもなお面白さを感じる本でした。その中で武蔵は本阿弥光悦と出会い、それが光悦を知るきっかけになりました。

 本の中での光悦と武蔵の出会いは、京都にあって天下にその名を轟かせていた剣術道場、吉岡一門との決闘直後、野点をしていた光悦と偶然に出会ったという設定でした。戦を終えて血なまぐさいままの武芸者とは正反対の芸術家に出会い、光悦は彼のその後の人生に大きな影響を与えることになりました。この出会いの場面は、吉川英治の創作と言う説が有力です。

 武蔵は晩年になると多くの水墨画を描き残しています。中でも有名なのは重要文化財となっている掛け軸「枯木鳴鵙図(こぼくめいげきず )」で、細く長い枯れ木の上にモズがとまっているだけの図柄ですが、一筆で一気に書いたと思われるその枯れ木の鋭さが、私には真剣で見事に空を切り裂いた跡ように見えるのです。

 彼は晩年を肥後細川家で過ごしています。その関係でしょう、細川家の家宝を収蔵する「永青文庫」にはいまだに彼の書画が多く残されていて、拝観することができます。今回も永青文庫からは数多く出展されています。

 

 次に私と光悦が出会ったのは、芸術雑誌の芸術新潮誌上です。JALに就職してすぐ、トレーニーとしてフランクフルト支店にいた時代に出会った方が芸術新潮で仕事をされていて、日本に帰ってからも交流が続き、芸術好きの私に毎月月刊誌を送ってくれたのです。その中に本阿弥光悦の特集号がありました。学生時代に読んだ本に出てきた本阿弥光悦の芸術作品に初めて写真で出会い、特に茶碗の造形にいたく感動しました。今さらながらですが、私は若いうちからやけに老人趣味だったのです。それまでは父親の趣味とドイツにいたことも影響し、ヨーロッパの音楽と絵画に傾倒していたのですが、芸術新潮のおかげで日本の芸術文化にも目覚めることができました。友人に感謝です。

 本阿弥光悦の陶芸の代表作には、国宝の白楽茶碗「不二山」や、私が大好きな赤楽茶碗「乙御前(おとごぜ)」。黒楽茶碗「雨雲」などがあり、それらも展覧会に出展されていました。展示された茶碗の前に立つと、その瞬間、いつも鳥肌が立ちます。

 

 また今回展覧会のポスターにもなっている代表作のひとつが、装飾的な国宝の硯箱「船橋蒔絵硯箱(ふなばしまきえすずりばこ)」です。硯箱といいながら実にユニークな造形美を持つ漆工芸の傑作として国宝にも指定され、代表作の一つとして知られています。

光悦展のHP;https://koetsu2024.jp/

 今回のもう一つの目玉作品が本阿弥光悦筆、俵屋宗達下絵「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」です。俵屋宗達と言えば、琳派を代表する絵描きですが、その絵を下絵として上に筆で和歌を書くという大胆不敵なことをしています。それもそのはず、俵屋宗達は若い時に光悦に見いだされ、鷹峯に移り住んだ一人なのです。そのまき絵、上下34㎝、幅13m半に及ぶ大作です。琳派の始祖は尾形光琳ではなく実は光悦と宗達の二人であると言われています。

 

 そもそも光悦は京都の洛北、鷹峯(たかがみね)に徳川家康から9万坪もの土地を拝領し、そこに工芸家集団を集めた芸術村を作りあげました。絵描きでは後の琳派の俵屋宗達、尾形光琳の祖父宗伯、陶芸家では楽家一族も居を構え、光悦とともに作陶に励みました。そのためか光悦の茶碗はほとんどが楽茶碗です。

 面白かった展示物に、「茶碗のための土をおくれ」という、光悦が楽長次郎宛に書いた走り書きがありました。お隣さんに「ちょっとしょうゆをおくれ」と言っているようで笑えます。一帯は光悦村とも呼ばれ、現在も光悦寺が存在しています。そして京都市は最近「新光悦村」という工芸村の開発を鷹峯付近で始めていて、土地の分譲をしています。さすが伝統工芸都市京都、成功を祈ります。

 本阿弥家の本職は刀の研ぎと目利きです。刀の鑑定は刀身だけでなく、鞘や鍔などのしつらえを見る目も必要で、金工・木工・漆芸・蒔絵・螺鈿(らでん)など様々な工芸の専門知識が必要です。今回の展示にも光悦のお墨付きを得た名刀の数々がしつらえとともに展示されていました。彼は本阿弥家の後継ぎとして幼いころから厳しく仕込まれたと言われています。それが後年の活躍にも存分に生かされたにちがいないのです。そうした力は彼をいわば芸術の総合プロデューサーの地位にまで押し上げました。

 

 以上、私が最も好きな芸術家の一人、本阿弥光悦とその展覧会でした。

 

 内外で不穏なニュースばかりが多い中、わたしにとっては一服の清涼剤となりました。

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日本半導体産業の復活

2024年03月01日 | 日本経済コメント

 「現在の日本の株価を主導しているのは半導体産業だ」と言ったら、驚かれる方がいらっしゃるかもしれませんが、それは紛れもない事実です。日本の半導体産業は駆逐されてしまったというのが一般的評価ですから。思い返しますと、

50年代;トランジスタ時代

60年代;IC時代

70年代;LSI時代

80年代;VLSI時代

 このあたりまでは日本の半導体メーカーが世界を席巻していました。89年の世界ランキングでは、

1位NEC

2位東芝

3位日立

5位富士通

7位三菱

9位松下

と、ベスト10に実に7社も入っていました。

 

 現在の半導体メーカーのランキングは以下のように日本のメーカーは一つも入っていません。

23年世界の半導体メーカー別ベストテン(百万ドル) ガートナー調べ

             23年売上 シェアー

1

2

Intel

48,664

 

9.1%

 

 

2

1

Samsung Electronics

39,905

 

7.5%

 

 

3

3

Qualcomm

29,015

 

5.4%

 

 

4

6

Broadcom

25,585

 

4.8%

 

 

5

12

NVIDIA

23,983

 

4.5%

 

 

6

4

SK hynix

22,756

 

4.3%

 

 

7

7

AMD

22,305

 

4.2%

 

 

8

11

STMicroelectronics

17,057

 

3.2%

 

 

9

9

Apple

17,050

 

3.2%

 

 

10

8

Texas Instruments

16,537

 

3.1%

 

 

 

 日本には半導体メーカーが全くないのではなく、過去の上位だったメーカーが連合体を作り、ルネサス、ラビダス、キオクシアなどがありますが、全くのランキング外になってしまったということです。

 80~90年代くらいまでは、日本が得意としたメモリー・チップとそれを動かすCPUという大きくは2つの区分でしたが、現在は半導体がより多くの製品に細分化されたため、単純には比較できません。

 たとえばSONYはCMOSと呼ばれる画像センサー半導体の分野では世界最大手で40%ものシェアーを有します。それはアップルなどを含む世界中のスマホ、デジタルカメラやセキュリティ用カメラ、車載カメラなどに搭載されています。それでも規模は小さいということです。

 上記のランキングで注目されるのは、生成AI向け需要の急拡大で絶好調のNVIDIAです。売り上げが前年比56.4%増と急成長を遂げていて、前年の12位から5位へと大きく順位を上げ、初のトップ5入りを果たしています。今やAIの旗手といわれるほどで、株価も猛烈に上昇し時価総額は2兆ドル、300兆円です。日本のトップはトヨタの60兆円ですから、なんと5倍。

 しかしこのメーカー・ランキングには半導体世界トップと言われる台湾のTSMCが入っていません。理由は、TSMCはブランド名を持たないファウンドリだからです。ファウンドリはブランド名を持つメーカーの下請け工場の役割を担っていて、それを加えるとダブルカウントになってしまうため、ランキングでは通常除いてカウントします。

 

 このような状況にありながら、今回の投稿タイトルは、「日本半導体産業の復活」としました。どこが?といわれそうですが、次にその理由を説明します。日本の半導体関連企業は上記メーカーなどに向けて非常に重要な半導体の材料や製造装置を作っているのです。つまり広い意味で半導体産業は復活し、現在の株高もそうしたメーカーが支えているのです。

 今週号のダイヤモンド誌は5,000号記念ですが、「一冊丸ごと半導体」という特集号になっています。その記事によれば、半導体部材製造の48%半導体製造装置の31%は実は日本のメーカーなのです。

 ではそれらの企業を現在株高に沸く上場企業時価総額ランキングで見ていきます。半導体関連は注書きを入れてあります。

2月29日の日本株時価総額ランキング

1位 トヨタ

2位 三菱UFJ銀行

3位 東京エレクトロン・・・半導体製造機器メーカー

4位 キーエンス・・・・ファブレス

5位 NTT・・・・半導体

6位 SONY・・・CMOSメーカー

7位 ファストリテーリング

8位 三菱商事

9位 ソフトバンクグループ・・・半導体設計アームなどの大株主

10位 信越化学・・・フォトレジストと言われる感光材をウエハーに塗布

 

 半導体に関わる企業はトップ10社中7社を占めます。驚くべきランキングです。これが株高を演出している日本企業の現在の姿で、要はのき並半導体関連銘柄が注目を集め市場を席巻しているのです。

 上記のランキング外でも半導体の部材や製造装置で名を馳せるメーカーを挙げておきます。

・大日本印刷(フォトマスク制作)

・TOPPAN(フォトマスク制作)

上記2社で世界の5割強

・SCREEN HD(旧大日本スクリーン、フォトレジスト塗布)

・フジミインコーポレーテッド(シリコンウェハーの鏡面研磨材世界1位9割)

・アドバンテスト(完成品検査)

 

 コロナによるパンデミックの最中世界は半導体不足となり、いまや半導体の塊である自動車のメーカーは製造をストップせざるを得ない状況にまで追い込まれました。ところがそれが終わると一転。半導体の市況はまさにシリコンサイクルのダウントレンドに巻き込まれ、23年の世界の半導体売上が前年比でマイナスにまで落ち込みました。しかしその最中から今度はAIのブームが始まり、AI関連の企業は世界的に注目を浴びています。その旗手がNVIDIAで、実は裏方でサポートしている日本のメーカーが、したたかに復活しているのです。

 そして特記すべきは研究開発中の量子コンピュータとNTTの光電融合デバイスです。演算スピードが飛躍的に高くなる量子コンピュータは世界中が競争していますが、NTTの光電融合デバイスはおそらく独自の開発で、電力消費量を劇的に下げる大きなメリットを持っています。その概要を、新会社であるNTTイノベーティブデバイス株式会社のHPから引用します。


引用

光電融合技術とは、電気信号を扱う回路と光信号を扱う回路を融合する技術のことです。NTTは新中期経営戦略「IOWNによる新たな価値創造(構想から実現へ)」の一環として電力負荷問題を提起しており、それにつながる解決策として「光電融合技術」の研究・開発に取り組んでいます。

引用終わり

以上が「日本半導体産業の復活」というわけです。

 

 私は日本の製造業の専門家でもなければ半導体の専門家でもありませんので、投稿の内容中に不備があるかもしれません。専門家の方で間違いなどにお気づきでしたら、どうぞ遠慮なくご指摘、訂正をおねがいします。

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