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断末魔のJALとANA

2021年01月24日 | コロナショック

  全国のコロナ感染者数は増加一方でしたが、緊急事態宣言あたりをピークに、横ばいないしは若干の低下傾向に入ったようです。やはり感染防止には人の移動・経済活動の抑制が必要だということでしょう。飲食業界はかなり悲惨な状況ですが、旅行業界も同じように深刻です。

  JALとANA、コロナに打たれる両社はいったい大丈夫なのでしょうか。もちろん大丈夫なんかではありません。私は古巣のJALがとても心配なので、どのていど深刻なのかをANAと比較しながら見てみたいと思います。

  先週号の週刊ダイヤモンドの特集は「航空・鉄道 最終シナリオ」という恐ろしいタイトルです。2回目の緊急事態宣言を受けて果たして旅客運送業界各社はどうなるのかを特集しています。その中でも特に大きな影響を受けている航空業界を取り上げてみます。厳しい現実を突きつけられています。

  旅行業界全体では、国内旅行と海外旅行を比べると比較のしようがないくらい海外旅行が大きなダメージを受けています。一つには水際対策としての移動制限が入国に厳しい制限を課しているからですが、それと同時にこの数年政府が「観光立国」の旗を振って振興策を講じ大成功していた海外からの旅行者がほぼゼロになったからです。山を高く作り過ぎたのでそこから滑り落ちているのです。

 

  公式な出入国統計を見ますと2014年、訪日客数は1,340万人でしたが、コロナ前の2019年にはそれが3,190万人とわずか5年間で2.4倍にもなっていました。大成功といえます。それが20年には11月までですが、405万人と前年比85%も減少しています。一方日本からの出国者数は80%減です。両者とも1-3月期はコロナによる減少幅がさほど多くないので、それを勘案すると4月以降日本でのコロナ感染発生以降では訪日客は90%減、日本人の出国者は98%減ほどです。なんとも壊滅的な数字です。この2つの数字に8ポイントの差があるのは、日本は海外より相対的には安全であると外国人も日本人も思っているからでしょう。

  一方国内旅行者数の数字は 官公庁から発表されていますが、まだ9月末までの数字ですが、トラベルボイスの11月19日発表ニュースを引用します。

「日本人国内延べ旅行者数(速報)は、20年7-9月期に49.4%減の8574万人。4-6月期の77.4%減から減少率は改善した。このうち宿泊旅行が同51.4%減の4620万人、日帰り旅行が同46.8%減の3953万人。」

  10-12月期はまだ発表されていませんが、この半減トレンドが継続していると思われます。そのうちの航空旅客数は統計が見当たらないので、ダイヤモンド誌に出ている20年9月までの国内線航空旅客数のグラフを参考にします。それで推定してみますと、一昨年19年9月一か月の旅客数は930万人程度でしたが、20年9月はそれが320万人程度と約3分の1になっています。JALとANAも同じような影響を受けていると思われます。

 

  ではJALとANAの決算数値はどうなっているかを見てみます。これは19年度上半期の4-9月期と20年の4-9月期の比較ができます。売り上げは前年比7割減。損失額は21年3月までの年間予想ですが、JAL2千数百億、ANA5千億円の損失と壊滅的数字です。

                JAL       ANA

19年4-9月期 売上      7,489億円 1兆560億円

20年4-9月期 売上      1,948億円  2,918億円

   前年同期比      ▲74%    ▲72%

21年3月期予想純損益  ▲2,400~2,700億円  ▲5,100億円  

  

  航空産業は典型的装置産業で、稼働率の低下がそのまま利益の減少につながります。航空機材や飛行場の設備と人件費などが固定費。燃油費や空港使用料などが主な変動費です。

  では旅客数の減少に比例して便数を減らせるかといいますと、なかなかそうはいきません。その最大の理由は公共交通機関であるということです。離島などの便が典型で、一日の便数が多ければ多少の減便は可能ですが、全くなくすことはできません。

  ダイヤモンド誌はこのままの赤字が継続すると、いつキャッシュ不足、つまり倒産することになるかの計算をしています。両社ともすでに増資や借入れなどで目一杯資金調達をしていますので、それがいつまで持つか、手元の現預金と毎月の現金流失額を比較します。

  毎月の現金流出額はJAL283億円、ANA428億円で、持久力はJAL12か月、ANA11か月と計算されています。前提条件は政府からの資金支援はなし、コロナ対策の雇用調整助成金は活用するという前提です。要は両社ともあと1年の命と計算されています。ではそれに対抗策は果たしてあるのでしょうか。これまでも人員削減や経費削減などで打てる手は最大限に打っているため、決定打は残されていないと思われます。

  先週NHKはANAの現場社員の奮闘ぶりをテレビで特集していました。例えば収支を改善するため毎日便数の減便調整をしたり、客室乗員が全く違う社外の仕事、例えば果実や野菜の収穫に派遣されたり、まだ使用に耐える古い機材を売却したりする様子を取材していました。しかし毎月428億円の資金流失に対してはいずれの対策も焼け石に水です。航空会社の経営に本社で携わっていた私ですが、この状況への対処策はとても思い浮かびません。

 

  ダイヤモンド誌は最後の一手としてJALとANAの合併という案を検討しています。いまや海外のエアラインはたとえフラッグ・キャリア―であっても合併は当たり前に行われています。例を上げますと、AFとKLM、BAとIB、LHとOS、DLとNWなど。また隣の韓国では大韓航空とアジアナという国内合併もありました。しかし私は日本の2社は自ら合併はしないだろうと思います。現状での両社を足しあげても、マイナス足すマイナスはマイナスですし、大きなコストカットは両社ともすでにやっています。そして外部からの合併圧力に屈することもないと思います。狭い日本ですが航空需要自体は十分にあり、2社の他にLCCが数社も並び立つほどです。

 

  今後1年程度を乗り切れば、国内でメジャーキャリアーが1社となってしまうより、2社の方が我々旅客の側にも大きなメリットがあるのは目に見えています。

  では余命1年の宣告を受けた2社の将来はどうなるか。ひとえにコロナの収束にかかっていると思います。ワクチン接種のスピードとの戦いです。しかしたとえ1年後にある程度の需要が戻ったとしても、19年のピーク時の旅客数に早期に戻ることはなかなか見込めないと思います。それでも出血さえ止まれば、自力で存続することはできるでしょう。そしてダイヤモンド誌の計算は同じレベルの出血が1年続く前提ですが、ワクチン接種が徐々に進めば旅行需要も徐々に戻るため、半年もすれば出血レベルの低下が見込まれます。

 

  そうしたことを期待して、JALとANA両社のガンバリを期待したいと思います。

 

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2021年、世界の10大リスク

2021年01月17日 | トランプのアメリカ

  毎年恒例、ユーラシア・グループによる「世界の10大リスク」が発表されました。私の尊敬するイアン・ブレマー氏が率いる地政学上のリスクの調査会社ユーラシア・グループの発表です。その10大リスクをブルームバーグ社のサマリーで紹介します。ブルームバーグ1月6日より引用

 

1.米国の分断

  トランプ大統領の選挙結果受け入れ拒否が米国の深い分断を浮き彫りにしている。COVID19ワクチン接種がスムーズに進み、パンデミックが抑制されれば、バイデン氏が共和党からも一定の政治的評価を得る可能性があるものの、厳しい課題が続く。

2.コロナ問題長期化

  COVID19ワクチンは世界が21年に正常化に向かうことに寄与するが、「各国がワクチン接種のスケジュール達成に苦しみ、パンデミックが高水準の公的債務や離職者、信頼の喪失という負の遺産を残す」。

3.グリーン化

  米国はバイデン政権下で炭素排出の実質ゼロ目標など気候変動のイニシアチブに再び参加しようとしているが、「より野心的な気候変動対策による企業や投資家のコスト」と各国・地域の計画協調を「過大評価することによるリスク」がある。

4.米中緊張関係の波及

  米中間の経済関係は今年、これまでほど対立的ではなくなるだろうが、米国から同盟国へのストレス波及や他国へのワクチン配布での競争、グリーンテクノロジーに関する競合により、緊張が再燃する可能性がある。

5.データ競争

  国境を越えたデジタル情報の流れが鈍るに伴い米中間の競争が最重要となり、データに依存する企業の重しになるだろう。中国政府は恐らく国外技術への依存を減らし続け、米国は国民の個人情報を安全に保つ取り組みを進める。

6.サイバーリスク

  自宅からテクノロジーにアクセスする人々が増える中で、サイバースペースにおける国家の行動に関する世界的ルール作成で政府・民間部門の両方でほとんど前進が見られず、攻撃やデータ盗難の可能性が高まっている。

7.トルコ

  トルコは昨年、危機を回避することができたが、21年に入っても脆弱(なままだ。エルドアン大統領は4-6月(第2四半期)に再び圧力に見舞われ、景気拡大を促そうとするかもしれないが、そうすることで社会的緊張をあおる恐れがある。

8.産油国にとって厳しい年に

  中東・北アフリカのエネルギー生産国で抗議活動が激化し、改革が遅れる可能性がある。歳入の大半を石油から得るイラクは基本支出予算の確保や自国通貨安の阻止に苦しむ公算が大きい。

9.ドイツのメルケル首相退陣

  ドイツのメルケル首相は欧州で最も重要なリーダーであり、同首相が去れば欧州のリーダーシップが弱まることから、今年後半のメルケル首相退陣が欧州最大のリスクだ。

10.中南米が抱える問題

  中南米諸国がパンデミック以前に直面していた政治・社会・経済問題が、一段と厳しくなるリスクがある。アルゼンチンとメキシコでは議会選挙が行われ、エクアドルとペルー、チリは大統領選挙を控えている。ポピュリズムに訴える候補者が増え、特にエクアドルでは同国の国際通貨基金(IMF)プログラムと経済安定を危うくする可能性がある。

引用終わり

 

  このリストは1から順に重要性に序列が付けられています。私はどれも確かに大きなリスクで異論はないのですが、一つだけ違和感を感じるものがあるので、それにコメントを付けます。それは一番目の「米国の分断」です。

 

   1のタイトルは「1.米国の分断」となっていますが、英語のタイトルは単純に「46*」となっています。これは46代大統領を示しているのですが、バイデンが果たして今年最大のリスクでしょうか。英語の本文の内容はブルームバーグのサマリーどおり国の分断を指摘しています。昨年1年を通じた大統領選挙戦と選挙後の混乱を引継ぎ、アメリカの分断が世界の最大リスクであるとの指摘で、アメリカ国内の混乱がトランプ後も世界にリスクをもたらすということなのでしょう。私自身はトランプという不確定要素の取り除かれたアメリカの与える影響は、昨年までの半分もないと思います。その理由を説明します。

 

  トランプは17年の大統領就任演説の最初に世界に向かって「オンリー・アメリカ・ファースト」と3回も言い、それを文字通り推進し世界に大きな混乱と迷惑をかけ続けました。世界一の大国としての責任を放棄し、国際社会が長年かかって築き上げた国際機関や多国間条約などから脱退し、資金拠出を拒否してそれらを弱体化させました。

  現在最も大切なコロナ対策でも、最重要機関であるWHOから脱退を表明し資金拠出も拒否。それらが解消されるため、世界にとってバイデンは救世主です。少なくともバイデンはそうしたトランプが破壊しまくった国際関係を修復しようとします。日本も大きな迷惑をこうむっていたトランプの異常な行動から解放されます。だとすれば、少なくとも国際社会にとって46*は最大リスクなどではないと思うのです。

  アメリカ国内の分断は確かに大きなリスクですが、世界の他国にとって分断は直接攻撃をもたらすわけではなく、対岸の火事よりは少し多めに火の粉が飛んでくる程度でしょう。バイデンはトランプと違い、突然シリアに爆撃したり、イランの軍人をイラク領内で暗殺したりすることはありません。

 

  私はトランプのことを「去る者日々に疎し」と書きました。アメリカ国内でもすでにその兆候がはっきりと数字で表れ始めています。私がよく引用したアメリカの各社の世論調査のおまとめサイトであるRealClearPoliticsの最近のトランプ支持率調査結果では1月6日の国会暴動以降、それまで45%前後だった岩盤支持層に大きなヒビが入り、多数の調査結果はトランプ支持が30%台となっていいます。直近15日のクイニペグ社による調査では、遂に支持率が29%に落ち込んだというニュースが流れました。トランプ最後の1週間でさらに支持率は落ちるでしょう。

  単純計算をします。選挙ではトランプ7,400万票対バイデン8,100万票で、トランプの得票率は48%でした。しかしこの調子で支持率が下がり、最後に平均で35%程度に下がると仮定すると、計算上は5,400万票にさがります。つまり選挙での獲得投票数より2,000万票も少なくなる勘定です。7,400万票も支持者がいたというのはすでに過去の話で、暴動以降様変わりしているのです。

 

    それらに追い打ちをかけるのがアメリカ国内・海外を含む金融機関と企業などの動きです。トランプとその一族の関わる企業に対して融資を延伸しない、口座を封鎖する、取引を停止するという動きが顕在化しているのです。融資の継続停止によりトランプのグループ企業はあっという間にデフォルトしかねません。新規の融資先を見つけるのは非常に困難でしょう。アメリカをはじめ世界の金融機関や企業は今後トランプと取引したりすると暴力行為に加担する企業だとみなされ、ガバナンスの欠如を問われるため、停止せざるを得ません。私が先日指摘した「トランプの中核ビジネスは、コロナの影響を最も受けるビジネスだ」ということ以上のことが起こりつつあります。もちろん今彼が必死で集めようともがいている24年の大統領選に向けての献金もしかり。すでに大富豪の大口献金者たちはトランプとの決別を宣言しています。

 

  ツイッターという口をふさがれ、食い扶持も召し上げられ、その上弾劾されれば単なる犯罪者ですから、文字通り「去る者日々に疎し」となるのです。そしてさらに「溺れた犬を棒で叩く」以下のようなニュースも流れています。1月14日の日経ニュースから引用します。

  「トランプ米大統領の支持者が連邦議会議事堂に乱入した事態を受けて、バイデン氏の大統領選勝利認定に反対した共和党議員への献金を一時的に停止したり、打ち切ったりする企業が相次いでいる。11日にはアマゾン・ドット・コム、AT&T、ゼネラル・エレクトリック(GE)などが資金提供の停止を発表した。」

  アメリカの議員にとって献金の停止は致命傷になりかねませんので、共和党内のトランプ支持議員たちもさぞ慌てていることでしょう。それが大統領の任期後に行われる上院の弾劾裁判の賛否で大きな効果をもたらす可能性があると私は見ています。つまり「この際、トランプから離れておこう」という動きが顕在化するだろうということです。

  さて、今年の10大リスクのコメントのはずが、相変わらずのトランプ批判になってしまいました(笑)。このようにトランプの影響力が雲散霧消しつつあることから、46代バイデン大統領自体がリスクのトップであるとはとても思えないのです。もちろんユーラシア・グループは10リスクを国会での暴動以前に発表していますので、気の毒ではあります。

 

  しかし今後1年を見通すと、国際問題も国内問題もひたすら元に戻る復元力が働くに違いない。ただアメリカ国内の分断については、根本問題の解決には程遠いが、トランプなきあとはそれが世界に及ぼす影響は大きく減ずるだろうというのが、私の見方です。

 

  長くなりましたので、今回の投稿はここまでにします。次回は2番目のリスクであるコロナウイルス問題ですが、それに伴いアメリカの財政問題にも触れるつもりです。

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トランプはサイコパスである2

2021年01月13日 | トランプのアメリカ

  どうやらトランプの危険性がやっと世界で認知されましたね。もちろん遅すぎですが。それでも彼の本質が明らかになったので、弾劾できずとも今後の政治活動に一定の歯止めがかかるでしょう。

  トランプの危険性は早くからアメリカの精神分析医のあいだでは議論され知られていました。日本では彼が大統領に就任した直後の17年初めに、今を時めく脳科学者の中野信子氏が「トランプはサイコパスである」という題名で文芸春秋に投稿しています。私もその書評を17年春にみなさんに発信しました。一応サイコパスの定義をここで繰り返します。Wikipediaからの引用です。

「精神病質=サイコパスとは、成人において非社会性または反社会性を常況として社会生活上の困難をしめすパーソナリティ障害、と解釈されることが多い」

  ところが、中野氏の分析はこの表面的定義よりかなり深いものがあり、現在のトランプを取り巻く状況をより的確に予想していました。文芸春秋の記述を簡単に要約します。

・サイコパスは周囲の人々を強く引き付ける力を持ち、巧に他者を利用する
・最大の特徴は「冷酷な合理性」で、日本人で言うなら織田信長が代表である

  確かに信長が突然容赦ない殺りくを行うところは、トランプにそっくりです。そして中野氏がトランプの言動を細かく分析すると、以下のような特性が見られるとのこと。

1.根拠のない自信と罵詈雑言を常時発する
2.既存メディアを嫌い、ネットで自分の主張を発信し続ける
3.人をモノとして扱う。自分に利益をもたらさない人は排除する
4.特に女性をモノとしてしか見ない。相手にするのはセックスの対象でしかなく、結婚相手はトロフィーワイフである
5.人間関係とは利害関係にすぎないので都合が悪くなれば切って捨てる


  中野氏は実に的確に言い当てています。この4年間の言動と閣僚や補佐官など部下たちの扱いは、まったくもってそのとおりでした。その後中野氏はインタビューでこんなことも言っていました。「サイコパスは一般の人の中で現れる確率は100人に一人、1%くらいですが、経営者の中で該当する確率は10%にも上るという研究結果があります」。こわいですね、自分自身もこうならないよう注意が必要ですね。

  私はサイコパスと思われる人間と直接対峙したことがあるので、中野氏の上記コメントにもう一つ加えます。それは、

「自分が悪かったとは絶対に認めない」

です。

  どんなにしっかりとした数字をもとに「あなたの主張は間違っている」と指摘しても、彼は私に対する非難を続け、もちろん一言も謝ることはありませんでした。

  まさにトランプもそのことを証明して見せました。昨日のTVインタビューで彼は6日の暴動について後悔しているかと問われると、

  「オレ様は全く後悔などしていない。オレ様に責任など一切ない。あのスピーチに問題など全くない」と回答しています。これっぽっちも自分の非を認めず、典型的サイコパス症状を示していました。まあ、いつものことですし、それを愚かな支持者は喜ぶのですからしかたありませんね。

  私にはこれが「可愛いくて愚かなトランプちゃんの証拠」と見えるのです。100%確信犯であることを自ら認めることになるからです。さすがの共和党議員もあきれ果て、民主党の弾劾決議案に賛成票を投ずる議員が現れています。果たして何人離反者が現れるか、見ものです。

  下院でできるのは弾劾の訴追までで、その後上院で行われる判決は判事となる上院議員の3分の2の賛成が必要なため成立はしないでしょう。しかし私は知らなかったのですが、弾劾の成立は次の大統領選挙に出られなくなるという報道があります。民主党はそれを狙って何としても弾劾訴追をしたいのでしょう。

  しかし待てよ、もっとうがった見方をすれば、4年後の選挙では彼が候補となったほうが民主党は勝てるんじゃないの、という見方もできると思います。それは置いておきましょう。

  トランプは人格的に問題ありということは彼の当選前からわかりきっていたのですが、彼の扇動にまんまと乗って当選させたのはあの暴動を起こした支持者たちです。

  私が驚くのはトランプ・マジックにかかり彼を支持する人はアメリカ人だけでなく、日本人にもいるということです。裁判所が、トランプが「不正選挙だ」と主張する数十もの訴えのすべてを、「十分な根拠がない」とはねつけても、まだ彼の勝を信じる人がいます。

  トランプに対する精神分析はアメリカでも16年の選挙中からなされていましたが、ゴールドウォーター・ルールというルールがあって、公表しづらいのです。これもWikipediaを引用します。

「ゴールドウォーター・ルールとは、アメリカ精神医学会倫理規定第7.3節の非公式な呼び名であり、精神科医が公の場で、自身が直接診察しなかった公的な人物について、職業的な意見を発したり、彼らの精神保健状態を議論したりすることは、非倫理的な行為であると定めた条項である 。これは米国大統領候補であった上院議員のバリー・ゴールドウォーターにちなんで命名された。(中略)上院議員ゴールドウォーターは勝手に精神鑑定をした雑誌記事に対し名誉棄損訴訟を起こし、$75,000の賠償が認定された。上記のアメリカ精神医学会倫理規定は、1973年に第1版が制定され現在でも有効である 。」

  このルールがある限りなかなか公表できませんよね。それでもめげずに公表した分析結果もあって、当然のことながら結果はトランプは大統領には不適格とレッテルを貼っていました。

(注)バリー・ゴールドウォーター上院議員は、選挙で民主党のジョンソン大統領に負けた候補で、トランプと似た者同士の政治家でした。彼は党内極右と言われ、公民権法案にまで反対し、KKKが彼を支持したためかなり悪いイメージを持たれました。それもトランプとの類似性を想起させます。

  さてトランプはツイッターをもぎ取られ、「言論の自由の侵害だ」と騒いでいますが、それは自由のはき違いです。アメリカには通信品位法という法律があります。その中で有名な230条に書いてあるのは、

「インタラクティブ・コンピューター・サービスのプロバイダーまたはユーザーは、プロバイダーまたはユーザーが、わいせつ、淫ら、扇情的、不潔、過度に暴力的、嫌がらせ、その他好ましくないと考える素材へのアクセスまたは利用可能性を制限するために善意で行ったいかなる行為について、その素材が憲法上保護されているか否かに関わらず、責任を負わない」

  平たく言えば、プロバイダーがアクセスや利用を自発的に制限しても、善意に基づく限り法的責任を問われないという趣旨で、SNS運営企業が自らの裁量で投稿内容を削除できることを保証しています。

まあ、トランプ支持者に言わせれば、彼への制限は悪意に基づいているとなるに違いないでしょう(笑)。

  この法律自体、問題ありとして議論に上っているのですが、常識的に考えても「暴力の扇動」をすることはあってはならず、言論の自由のはき違いもはなはだしいと私は思います。

  さらに言えば、ツイッター、フェースブックなどアメリカの巨大SNSの脅威が言論の自由を脅かしているとの論調も見受けられましたが、それはお門違いです。大手の巨大化の弊害はもちろんありますが、それは独禁法などの範疇の問題で、言論の自由とは分けて考えるべきです。

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さよならトランプちゃん

2021年01月09日 | トランプのアメリカ

  トランプのサイゴッペがアメリカを混乱させていますね。トランプは支持者の前で「さあ、議会へ行こう、我々の力を見せつけよう!」とけしかけました。民主主義の牙城を力でねじ伏せようとするとんでもない暴挙です。その声に応えてあの革命騒ぎのような暴動が起こり、トランプの責任問題に発展しています。

  しかしアメリカのメディアやツイッター社が本当に怒ったのは「議会に行こう」だけではありません。暴動から3時間も経てやっとトランプ支持者へ向けて彼がビデオで流した以下の言葉です。

「Go home. We love you. You are very special.」という言葉です。

  Weとはいったい誰を巻き添えにしているのでしょう。議会に不法侵入し中をメチャクチャにした犯罪者たちに「君たちを愛しているよ、君たちは特別だ」と言ったのです。彼としては暴徒化してしまった責任を回避するため、デモ隊に「撤退しろ、家に帰れ」とツイートしたつもりですが白々しいかぎりです。自分を最終的にホワイトハウスから放逐する議決をデモで阻止しようとする行為は、大統領によるテロ行為です。

  これに対してツイッター社はトランプのアカウントを12時間停止し、これ以上煽ったら彼のアカウントを永久に停止すると宣言していましたが、遂に先ほど危険を予防するため永久停止にしました。フェースブックはすでに大統領任期中の使用を停止させています。当然でしょう。両社とも犯罪行為を煽ることを許さず、大統領特権などありえないという毅然とした姿勢です。これにてツイッター政治も、一巻のおわりー!

  トランプの別の工作も先ほどCNNが明らかにしました。それは議会で行われている議事にデモ隊が乱入している最中、共和党の上院議員に議事進行を妨害するために「動議を出して遅らせろ」という電話をしていたのです。議員はデスクの下に隠れながらその電話を取っていたとバラしました。悪魔のようなしつこさを持った所業です。

  一方、デモ隊側の女性が一人撃たれて死亡というニュースも流れました。NBCはセキュリティーガードが撃ったようだと報道していますが、相変わらず過剰防衛ですね。その後死亡者数は警官を含めて5人に。詳細はわかりません。

  この暴動にはさすがに共和党知事や議員、そしてトランプの元側近たちから、有力企業の経営者までもが「トランプよ、いい加減にしろ」と言い始めました。やっと気が付ついたようです。民主党はすでに弾劾手続きをしようと言っていますし共和党からも同意見が出てきています。しかし弾劾には上院の3分の2が必要なので、可能性は薄いでしょう。

  一方で憲法修正25条を適用して「トランプは大統領の能力を失ったので失職させよう」という意見もあります。しかしこれは副大統領のペンスの決断にかかっているのですが、ペンスは「私は反対だ」と表明したとのニュースがあるため、これも無理です。

  そして昨日書いたように、トランプをやめさせてもペンスが大統領としてトランプを恩赦するおそれがあるので、私は絶対にやるべきではないと思っています。彼は忠実なるトランプの犬ですから。トランプは自分と一族の恩赦を自分が大統領のうちにやってしまえと思っているようです。

 

  のたうち回るトランプ。どんなにのたうち回ったところであと11日の命。怪物の倒れるさまを、じっくりと見物することにしましょう。そして本当の苦しむ姿は大統領職を去った後に始まります。トランプインターナショナルの破綻や、かつでそうであった禁治産者の暮らし、さらに数多くの訴訟や訴追に苦しむさまをとくと拝見させていただきましょう。

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トランプを弾劾してはいけない、絶対にいけない!!!

2021年01月08日 | トランプのアメリカ

  理由はたった一つ。

  弾劾すると副大統領が自動的に大統領になる。ペンスは筋金入りのトランプ支持者なので、彼を恩赦してしまうおそれがあるからだ。

  ここへきてさすがのペンスもトランプをダメだと言い始めているようだが、一度はトランプ・マジックに引っかかった人間で、副大統領の地位に引き上げてくれた恩がある。

  なので、絶対にトランプを弾劾してはいけない!!!

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