ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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「証券会社が売りたがらない米国債を買え」ダイヤモンド社刊
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大きなキャピタルゲインをどうすべきか、質問への回答

2020年03月18日 | 初歩の投資教室

初心者さんのご質問への回答

金利の急低下により大きな利益が出ている債券を売却するか、保有継続か、悩ましいことと思います。

このご質問がたいへん多くなっていますので、すべての方々に的確な回答をコメント欄でお示しするのは難しい状況です。そのかわりこの本文にて「保有継続」という事例と「一部売るべきだ」という事例を並べヒントをお出ししますので、ご自分はどちらの例に近いのかを判断し、結論をご自分なりに出してみてください。

初心者さんからついた質問への回答のヒントにしていただくため、いまいちどこれまでに私が差し上げたアドバイスの事例を反復させていただきます。ちょっと長いですが、参考にしてください。

 

まずは保有継続の例から。

 

以下は2月13日の記事に対し、救われた投資家さんから付いたコメントへのやりとりです。

 

2月13日の発言に対する質問コメント

Unknown (救われた投資家)

2020-02-14 14:31:07

林様 お久しぶりです。

ストレスフリーの生活に入って久しいですが、最近悩みが生じております。
それは購入したゼロクーポン債の含み益が直近の債券高で償還額面100万ドルに対して、現時点で800万円というとんでもない金額になっております。
為替が120円前後、金利が1.9%程度のお恥ずかしい数字での参入でしたので大変な驚きです。一刻も早くのストレスフリーの生活に憧れておりましたので、為替、金利はあまり考えずに一気に購入し、償還迄は一喜一憂しないと誓い、ストレスフリーを享受しておりました。
最近の米国の株高と債券高が同時という違和感も気持ちが落ち着きません。
この為、長期のゼロクーポン債を売却したいという誘惑に惑わされております。
林様のご趣旨とは全く異なりますが、一旦売却し、MMFに置いておき、金利上昇時に再度同じゼロクーポン債を購入を考えております。

 

救われた投資家さんへ (林 敬一)

2020-02-14 21:07:24

ほんとにお久しぶりですね。

早い時期にストレスフリーに入られてよかったと思っていました。
逆にそのための嬉しい悲鳴かもしれませんが、ちょっと以下の数字を見直してください。

>購入したゼロクーポン債の含み益が直近の債券高で償還額面100万ドルに対して、現時点で800万円というとんでもない金額になっております。

ご質問に答えるには、正しい数字と償還年限を教えてください。現時点での800万円が100万ドルになるのでしたら、保有継続以外ありませんが・・・。

 

 

Unknown (救われた投資家)

2020-02-14 23:53:01

林様

私の説明不足で大変申し訳ありません。

購入した米国債は下記の通りです。

2020年 60,000ドル ゼロクーポン
2021年 120,000ドル ゼロクーポン
2023年 120,000ドル ゼロクーポン
2025年 60,000ドル ゼロクーポン
2026年 120,000ドル ゼロクーポン
2028年 120,000ドル ゼロクーポン
2028年 127,000ドル クーポン債 ※
2030年 160,000ドル ゼロクーポン
2031年 80,000ドル ゼロクーポン

補足説明として、償還金額合計は967,000ドルが正確な金額でした。 2019年2月に自分年金の第1回目として60,000ドルの償還を既に受けており、100万ドルを切っておりました。
800万円という金額は現時点での評価損益合計の金額で、評価合計金額は96,886,114円です。益金が800万円で、取得金額は約8800万円ということになります。
2028年償還の127,000ドルのみクーポン債で利率は5.25パーセントです。

  

救われた投資家さんへ (林 敬一)

2020-02-15 10:09:17

回答ありがとうございます。

単純に現在の評価益から利回りの合計を計算しますと、

評価益800万円÷投資額8,800万円=9%

為替の評価損は、現在の為替レートを109円と仮定すると、

109円÷120円=90.8%・・・・評価損9%程度

両者をまとめてざっくり言いますと、「為替で10%程度の損があっても、債券の評価益が2割あるので、投資額に対して9%の利益がある」となります。

しかしこれは投資期間との兼ね合いで年率を算出しないと本来の利回りではありません。例えば平均で5年間の保有だと年率では2%程度ですね。3年なら3%程度です。

800万円の評価益が出ているという中身を分解すると以上のようになります。

これをもって救われた投資家さんはどう思われますでしょうか。

私なら「せっかく積み上げたラダー、つまり階段状に償還が来る自分年金を年率2%の評価益に目がくらんで手放すべきではない」となります。

思惑通りに今後金利が上昇すれば、してやったりとなりますが、今後何年か金利が変わらない、もしくは低下してしまうと、その間に生じる逸失利益の大きさを考えストレスを溜めることになります。
特にハイクーポンの債券では毎年70万程度のおこずかいまでもらえますよね。売るのは惜しいです。

以上ですが、救われた投資家さんの感想を聞かせてください。

  

救われた投資家さんからの感想

林様

正確な分析とアドバイス有難うございました。
証券会社の取引明細書を確認すると、2015年の3月の購入でした。もうすぐ5年になります。利率が1.9から2.1で、為替は121円52銭というのもありました。
5年保有なら2%という分析結果はご名答というしかありません。直近の債券高に惑わされておりましたが、5年間のストレスフリーの保有で当然に積み上がってしまうものだと十分理解出来る分析結果でした。

私よりも為替、利率で好条件な方が林様のブログの中では多いはずです。2018年の秋頃の利率3%越えの際に米国債購入の好機と林様がコメントされていたからです。ですから私の様な条件の芳しくない者が評価益に驚いている場合ではなく、他の皆様は更なる評価益にも一喜一憂していない現実を直視するべきだと反省しております。

最後にストレスフリーの米国債投資は恐るべしという感想と共に昨日に証券会社に売却の意向を打診しましたが、全ての売却でも問題ないとの回答に米国債の流動性の高さに感心したことをお知らせ致します。

来週以降に予定していた売却は止めることに致します。
林様、有難うございました。

 

以上が保有継続の例です。

 

  次は3月5日の記事にたいへん多くの質問があり、回答をさしあげましたが、その中で「運用下手」さんに対して私が示した「一部売却すべし」の事例です。

 

Unknown (運用下手)

2020-03-05 22:31:36

林様

ご無沙汰しております。
書籍の発行を待ちながらブログも引き続き拝見しております。
ありがとうございます。

先日、救われた投資家様から、米国債価格上昇を受けて売却是非の
ご相談がございまして、似たようなお話かも知れませんがご容赦下さい。

10年米国債金利が1%を割る状況を迎え、所持している28年償還の
米国債を売却して米ドルMMF待機するのが良い気がしていますが
決めあぐねています。

林様でしたらどうお考えになるか、ご見解伺えましたら幸甚です。


■目標
2036年以降、毎年10,000ドル以上ずつ償還するように、ゼロクーポン米国債の購入を進める。

■現状
・2018年5月に28年5月償還のゼロクーポン債を額面40,000ドル購入
 (10年債と30年等長期債の利回り差が少なかったため10年債を選択)
・2018年10-12月に、2036-2048年償還のゼロクーポン債を額面4,000ドル/年×13本購入
・2018年12月以降の金利低下で購入を一旦中断。購入原資の残り米ドルはMMFで待機中。
・すべて日本国内証券会社での買いつけ

■考えていること
・2028年5月償還のゼロクーポン債価格が75→93まで上昇したため、
 残存期間の利回りが0.85%/年位まで低下しました。購入後1.8年間で円高が多少進んでいますが、それを加味しても約11%/年の利回りになっています。
 一方、今のMMF金利は1%前後で、20%の源泉徴収税を考慮しても残存期間の利回り(0.85%)と大差ありません。今後の金利変動は誰にも読めませんが、
 1)このまま保有して、残存8.5年で93→100のリターンを確保
 2)一旦売却して上昇益を享受し、ゼロクーポン債購入原資として米ドルMMF待機。更なる金利低下で今後93→100未満のリターンになる恐れもあるが、反対に金利上昇すればゼロクーポン債を買戻して金利上昇リターンを享受できる可能性もある
を比べると、8.5年間における更なる金利低下による損失幅の方が限定的で、2)の方が合理的に思えている次第です。

 

運用下手さんへ

お久しぶりです。

極端な金利低下ですね。取り急ぎの返答です。

こんな事態は長期間続くものではないと思われますので、基本的には運用下手さんの2)の戦略に賛成です。つまり

>1)このまま保有して、残存8.5年で93→100のリターンを確保

 

これはたしかに低いリターンしかありません。

 

>2)一旦売却して上昇益を享受し、ゼロクーポン債購入原資として米ドルMMF待機。更なる金利低下で今後93→100未満のリターンになる恐れもあるが、反対に金利上昇すればゼロクーポン債を買戻して金利上昇リターンを享受できる可能性もある。比べると、8.5年間における更なる金利低下による損失幅の方が限定的で、2)の方が合理的に思えている次第です。

 

私もそう思います。

ただMMFはそもそも債券のようなフィックスとインカム商品ではなく、リターンの変動する投信です。従って今回の利下げをうけてリターンが低下する可能性は大いにあることはご注意を。

なお、救われた投資家さんのケースとはかなり事情は異なると思います。

 

以上が「一部売却」を勧めた事例です。

 

2つの事例は、売却か継続かという2つの選択肢だけをお示したわけではなく、それぞれの方のポートフォリオ全体と投資の長期的目標がどこにあるかを勘案して出した私の結論です。

保有継続のアドバイスは、せっかく構築したストレスフリーのゼロクーポン・ポートフォリオを継続保有することで、しっかりと自己年金を毎年のように享受できる体制になっていています。今では大変貴重な高クーポンものの長期債まで保有されています。それらを崩すと、いつまた構築できるかわかりません。それを気にしてストレスを溜めるくらいなら、一時的に出たキャピタルゲインはあきらめましょう、という戦略です。

逆に継続保有をお勧めしたのは、特定の債券の損得勘定をした結果、売却に分があると判断したものです。

みなさんの保有されている債券はどちらに近いものか、是非考えてみてください。

 

そして最後に私は別のコメント欄でこうも申し上げています。

「申し訳ありませんが、ご自宅の購入をすべきか否かに的確な回答はしかねます。用心棒さんへの回答に書きましたが、その方の置かれている様々な状況、家族構成からすべての資産状況、今後の生活に対する考え方、ご家族のご意見などを勘案して慎重にアドバイスをいたします。コメント欄だけで多数の方々を対象にはできかねること、ご理解ください。

個人的相談の窓口ですが、出版を待たずに早急に開設するようにいたしますので、どうかしばしお待ちを。」

相談窓口は私のフェースブック「ストレスフリーの資産運用」上に開設いたしましたので、どうぞご利用ください。ただし個別の相談は有料です。一両日中にブログ上で相談料などを含め案内はお出しするつもりです。

どうかそちらをご利用ください。

よろしくお願いします。

 

 

 

 

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初歩の投資教室 39 来年に向けての投資対象、米国債

2012年12月22日 | 初歩の投資教室

  来週の月曜日からベトナム旅行に出ますので、今回が今年最後の記事になります。

  前回は最近の国際収支について、経常収支だけでなく、最後の帳尻の総合収支にも注意信号が出ている、というお話を差し上げました。

しかし、それがよくない、というお話では決してありません。本来円高なのですから、それをエンジョイし、海外投資するのは当たり前。そうすれば行きすぎは戻る。そうしなかったのでこうなった、それが「円高デフレのトラップに嵌まり込む日本」だということを私は長々と説明してきました。


  では本題に戻りドル円レート、私のレベル感についてです。簡単に言いますとこんな具合に見ています。

・70円台はドルを買うレベルだ

・75円の史上最高値を上回って推移することは今後しばらくはない
理由は、それ以上の円高はどんなに国際的非難を浴びようが、為替介入によって戻そうとするから。円高阻止に対する安部政権のスタンスは非常に強いと思われる

・経常赤字が定着する方向に向かうと、ドルが100円に向かう可能性は大いにある

・その時期は2015年、プラスマイナス1・2年

・財政が危機的状況を迎えると本格的資本逃避が始まり、100円を超える怒涛の円安が起こる

・財政が危機的状況になるのも2015年プラスマイナス1・2年


15年マイナス2年なら来年13年はそのレンジに入り始めることになりますね。

  プラスマイナス1・2年ということは最大で4年もレンジがあります。長過ぎると思う方もいるかもしれません。私のように投資というものをすべて長期で見ている者には、それくらいのレンジで長期トレンドを見ることが大切なのです。短期の振れの予想など、どうせ当たりません(笑)。

  長期トレンドを頭に入れておけば、例えば今回のような政策変更のアナウンスや海外のビッグニュースで一時的に相場が振れても、元の長期トレンドに戻ること多いと考えることができます。実際にこれまでの長期に渡る円高局面では、一時の振れはトレンドに戻ってきました。

  もちろん相手は相場ですから、トレンドと逆方向でもみんなが「そっちだ」と思ってトレードすれば「ハズミ車」が回ってしまい、いくところまで行く、ということは往々にしてあります。それでも私は「いずれ戻るさ」と考えておいた方がよいとおもっています。

  例えば今回の安部政権の政策でかなりの円安に振れても、揺り戻しが来る可能性が大きいと私は見ています。

  こうした見方に対して、金融機関などに所属するエコノミストやファンドマネージャーはすぐにも商品を売らないといけないので、今日の相場はどうなるとか、来月はどうか、せいぜい来年はどうなるというくらいの期間でしか物を見ていません。でないと商売にならないからです。

  ではそうした専門家で、安部発言が出る前に「今年の年末に向けドル円は84円台になる」などと言っていた人がいたでしょうか。そんな人は皆無です。しかも彼らの来年の見通しは、この円安ですっかり変化してしまいました。

  株式相場も同じです。安部発言前に「年末には1万円に乗せる」などと言っていたストラテジストはいたでしょうか。少なくとも彼らの言うコンセンサスではなかったと思います。


  みなさんもご自分の相場観・レベル感を持つなら、30年程度の長期のトレンドを頭に入れた上で持つことをお薦めします。

  そして今後は安部政権の政策がうまく実現した場合にどうなるかを考えておく必要があります。次の簡単な図式を頭に入れておいてください。

・大型補正予算=財政出動 → 金利上昇 ←日銀引受で抑え込む ⇒ 信任喪失
⇒ 格下げ ⇒ 外人売り ⇒ 金利上昇 ⇒ 財政破綻

・インフレ2% + 実質成長2% = 名目4%成長 ⇒ 金利上昇 ⇒ 財政破綻


  市場は、はしゃいでいる状態が終われば、すぐ次の一手を考え始めます。無理に焼けぼっくいに空気を吹き込んだら、火はついてもいずれ息切れします。するとさらなる大型予算、大型補正予算を要求することとなり、いつか来た道につながります。

  しかし本当の問題は、今度は「いつか来た道はもうない」ということなのです。行く末は「財政破綻への一本道」、それが上の図式です。



  本年も、私の長話にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。

  今年は多くの方からたくさんのコメントや相談をいただき、様々な議論ができたことを大変嬉しく思っております。来年もまた、みなさんとそうした議論ができることを楽しみにしています。



  みなさんどうか、ストレスフリーのよいお年をお迎えください。


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初歩の投資教室 38 来年に向けての投資対象、米国債

2012年12月21日 | 初歩の投資教室
   これほど予想が難しいし、当たらないテーマはありません。それにあえて挑戦します。どうぞ、当たるも八卦くらいで、お読みください(笑)

  私はこのブログで昨年10月から約1年、為替を中心テーマのひとつにした「円高デフレのトラップに嵌まり込む日本」というシリーズを書き、私の考えを長々と述べてきました。ここに至ってもその時の基本的な考え方や長期的方向性の見方に変化はありません。

  そのシリーズで解説したのは、為替変動には様々な要素があり、例えば国際収支、金利差、インフレ較差、等などがある。そしてひとつひとつの要素ごとに解説しました。それらを簡単にまとめると以下のとおりでした。

1.為替相場は為替取引の結果であってそれ以外の因果関係ではない。つまり日本経済が強いとか弱いとかが要因ではなく、円とドルの実際の取引の結果だ

2.取引には動機があってその動機を調べると、一方的な長期の円高トレンドを作り出しているのは、外貨を得た輸出企業が外貨を売る取引と外人の円資産投資である。その対抗勢力は、日本人による外貨投資や最近は海外企業のM&Aなどだが、円高を相殺するほどの量ではない。

3.それ以外の様々な説や投機的取引はしょせん往復取引なので円高を説明するのには、あまり説得力をもっていない。

4.円安へのターニング・ポイントは経常赤字が定着しそうな2015年、プラスマイナス1・2年


  このまとめを書いていたのはちょうど1年前の11年12月で、国際収支の統計資料は11年第3四半期、つまり9月までが使用可能でした。

  その後この1年の国際収支に一つ変化が起こっています。それは上記2の点で述べている資本取引においてです。ちょっと面倒な統計数値になって申し訳ないのですが、大事なことなので解説します。

  国際収支の最後の帳尻は、経常収支に資本収支を加えた総合収支です。(厳密にはさらに追加すべき非常にマイナーな項目がありますが、無視できる程度です)

  経常収支は最近になって黒字幅が減少しつつあることでニュース種になっています。貿易収支の悪化が主な原因で、11月の結果もそうでした。しかし資本収支についてはあまり話題になっていません。理由の一つはわかりづらいこと、そして数値がさほど大きくなかったからだと思われます。そのため経常収支に資本収支を加えた総合収支も、あまり取り上げられていませんでした。

  今回ここにきて何故私が取り上げたかと申しますと、この総合収支がコンスタントにマイナスになる動きを示しているからです。

上記のまとめで3.に書いてあるのは、

>日本人による外貨投資や最近は海外企業のM&Aなどだが、円高を相殺するほどの量ではない

と書いていました。ところがこのところ買収の数とサイズの影響が大きくなり、少なくなりつつある経常黒字を相殺する規模になってきています。年間の総合収支の推移はこのところの3年間では以下の通りでした。

09年 マイナス5千億円
10年 プラス 2千億円
11年 プラス 10兆7千億円


暦年では09年は若干のマイナス、その後はプラス、つまり円高要素だったのです。

ところが4半期ごとに総合収支を見ますと、この1年では11年の第4四半期までのプラスが、マイナスに転じています。

11年10-12月期 プラス  7兆9千億円
12年1-3月期  マイナス1兆円
12年4-6月期  マイナス1兆9千億円
12年7-9月期  マイナス1兆1千億円


というように今年になってからはマイナスが3期連続し、このところの日本企業による海外企業買収の活発化から12年は暦年でもトントンからマイナスになる可能性が出てきているのです。

  もっともこの動きは、円安がさらに進むと日本企業は海外企業を買収しなくなるかもしれないので、トレンドが続く確証はありません。

  もう一度繰り返しますが、総合収支は経常収支に資本収支を加え、すべてをまとめた数字で、その数字の分為替の売買は必ず行われるのですから、長期的には円ドルレートに大きく影響します。総合収支は今後も追って行く必要があります。

つづく
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初歩の投資教室 37 来年に向けての投資対象、米国債

2012年12月18日 | 初歩の投資教室
あっ、誕生日だ、63歳だ!



  今回から、金利と為替の具体的レベル感の話に入ります。

  話の内容はちょっと難しくなるかもしれませんが、「極力易しく」を心がけます。難しいと思ったら、どんどん質問してください。まずは金利からです。

米国債金利のレベル感


  私は常に長い推移を見ながらレベル感を持つようにしています。長いと言っても約30年間くらいの推移です。

  米国債の長期債は30年債までありますので、30年を目安にするクセがついているのだと思います。世代も30年が一区切りですし、経済の推移もそのくらいのレンジを見るのが適当と思われます。では米国債30年物金利を80年代からサクッと見てみます。

  米国債の長期金利は1980年代の初めをピークに、30年以上の長期に渡り低下傾向にあります。チャートでそれを見るには、英語で恐縮ですが、Yahoo Financeを見てみます。

・googleで「historical treasury yield」とインプット

Treasury Yield 30 Years Index Chart-Yahoo Financeと出たらそれをクリック

・そのチャートは1Y(1年)となっていてハイライトされていますので、Max(最長期間)をクリック

すると77年から現在までのチャートを見ることができます。この歴史的推移のチャートは、是非みなさんも念頭にいれておいてください。ご自分の金利感を持つのに、役に立つと思います。Yahoo Financeのサイトは、金融関係のデータを見るにはとても役に立ちます。

  チャートを簡単に言葉で表します。78年くらいまで7%台で落ち着いていた30年物金利は、そこから81年まで一気に上昇し15%に跳ね上がりました。しかしその後反転し、2000年台初頭くらいまで約20年間にわたり徐々に低下していき、02年頃に5%前後になりました。

  2000年代は10年近くだいたい5%前後で落ち着いていました。しかし11年の夏、欧州問題と例の米国債デフォルト騒ぎからは一気に低下。2010年代はそのまま3%前後のレベルで推移しています。昨日のレートは2.96%です。これがおよその推移です。

  ちなみに77年から現在までの35年余りの平均値は7%半ば、2000年以降00年代を見ると平均値は5%前後です。

これほど金利が長期にわたり低下してきた理由は

・80年代初頭第2次オイルショックで、インフレ率が高謄。しかしオイルショックが収まった以降、米国のインフレは落ち着いたままであること


・米国経済が着実な歩みをつづけていること。つまり80年代後半にやっと米国経済がそれまでの低迷から再生し、90年代には世界をリードする産業を生み出し、00年代にはサブプライムでつまずいたがすぐ復活したこと

・製造業や資源産業まで米国内に戻りつつあること

・株式にも債券にも世界から「投資マネーと逃避マネー」が安全なアメリカに集まっていること

  こうしたことが、長期で金利レベルを低下させてきた原因です。

では、今後はどうみるか?

  私は今後数年の単位で30年物国債の金利レベルは、景気循環的な変動は2%台から4%台と見ています。

  米国景気の回復があっても、欧州、そして数年のうちには中国や日本を巡り世界的な資金逃避が繰り返される恐れがあることから、30年物金利が00年台の平均値5%前後を大きく上回り上昇する可能性は少ないと見ています。
  
  ということは、逆に超長期で見た低下傾向には歯止めがかかるということか?

はい、そう見ています。理由は、米国経済には日本経済とは違い、底力があるからです。

  10年物の金利で言いますと、30年物マイナス1%くらい。現状は1.7%くらいですが、循環的には1%台から3%台。2%台が居心地よいと思われますが、世界のどこかで危機的な状況が来るたびに1%台に戻される。

  こんなところが私の米国金利の数年レンジのレベル感です。

つづく
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初歩の投資教室 36 来年に向けての投資対象、米国債

2012年12月15日 | 初歩の投資教室
為替レートが円安に大きく振れ始めています。

早朝から円安を心配されているななしさんから、以前のコメントに再度コメントが付きました。

引用します。

11月19日のななしさんのコメント

(話全く変わりますが円安スイッチ入っちゃったのかな??)

林の返答は
ななしさんへ  2012-11-19  15:52:06
円安スイッチ、入っていませんよ。
安部氏に対する期待先行で、そのうち「はげ落ち」ますよ。
でもこればかりは、みんなが「そっちだ」と信じれば、行ってしまう可能性もないとはいえないのが相場です。
そのかわり「そっち」の方には日本破綻への崖がまっているのも忘れずに。


本日のななしさんのコメント、
2012-12-15  04:24:19
こんにちは。今日は2012年12月15日ですけど・・

>でもこればかりは、みんなが「そっちだ」と信じれば、行ってしまう可能性もないとはいえないのが相場です。
そのかわり「そっち」の方には日本破綻への崖がまっているのも忘れずに

なんかこっちの方が正解でもう円安スイッチ入っちゃってるような気がどうしてもならないのですが・・・
林様のおっしゃることを実行すべく米国債を買う予定ですが、私の場合まだ資産は全部円。
為替のタイミング・・これが一番難しい(^_^;)
為替リスクは長い年限で取り戻す・・っていうのも林様のブログでお勉強させていただきましたが、判ってはいますが、素人にはタイミング・・これが本当に難しい(^_^;)

引用終わり

ほんとですね。シロウトだけではなく、私を含めプロでも為替は当たりませんからご安心を(笑)。

  まず「円安スイッチ入っていませんよ」と私が言った根拠を説明しておきます。

  今回の根拠は、為替の投機筋に利用されるシカゴの先物市場の動きです。投機筋は安部発言が出始めてから円のカラ売りポジションを急激に積み上げました。これがまず円安を作り出したのだと思います。彼らは短期勝負ですから、売った円がさらに安くなったタイミングで買い戻しをする必要があります。そのためには日本のミセス・ワタナベに代表されるFXのギャンブラー達がくっついて来るのを待ちます。誰もついてこないと、自分達が買い戻さないといけない。つまり折角安くした円を買い戻して高くしたら往復しておしまい、何も儲かりません。

  そこで私の警鐘は、カモを待っている投機筋にネギをしょって行かないこと。つまり円売りドル買いをして、彼らのポジション解消=儲けの確定に貢献しないことです。

投機筋対ギャンブラーの戦いは、こうした筋書きになります。

  次は「みんなが『そっちだ』と信じれば、行ってしまう可能性も」の説明です。

  投機筋の筋書きをよくも悪くも狂わすのは、貿易や長期投資をする実需筋です。例えばドルを必要とする輸入業者が円安相場を見てあせってドル買いに走ったり、ななしさんのような長期の投資家が莫大な額をドル債に投資したら、投機筋を助けるだけでなく、もっと大きく「うーんとそっちの方」へ行ってしまう可能性もあります。なぜならそのドル買いは、すぐには売り戻さないからです。それが私の言う「そっちへ」の内容です。

  しかし今回の動きがどこまでいくか、私にはとてもそうした為替の読みはできません。毎日当たらない解説をしている為替のプロにお任せします(笑)。

  ただ私がはっきりとみなさんに表明していることは、「円高デフレのトラップに嵌まり込む日本」のシリーズでお伝えしたように、

① 経常黒字の解消から赤字に向けた流れが始まっていて、いずれは長期的円安へ転換する
② 財政赤字は支えられないほどに積み上がっていて、いずれ円からの逃避が起こる
③ そのタイミングは2015年を中心に、前後1・2年

こうしたことを申し上げてきました。このことは全く変化していません。


  さて、もともと今回のテーマは「現状の金利と為替レートで、果たして長期の米国債に投資する価値があるか」についてでしたので、そのまま続けながら、ななしさんへの返答を続けます。

  まず申し上げておきますが、私は1年の短期パフォーマンスなどほとんど気にしていません。長期のパフォーマンスだけを見ていますので、短期投資を目指す方の参考には全くならないことを申し上げておきます。年末のこの時期によくある『来年の推奨銘柄』のお話しではぜんぜんありません。

  米国債をはじめ外債投資を考えるには、「金利のレベル感」「為替のレベル感」を持つ必要があります。両方とも見通しを当てるなどという技を私は持っていません(笑)。
    
  ある時点で「米国債は買いか?」と聞かれますと私はいつも同じ話を差し上げていることにお気づきの方もいらっしゃると思います。最近では10月20日にモンドさんという読者の方からの質問に答える形で回答を差し上げています。

  「なーんだ、またそれか」と思われる方もいるかと思いますが、米国債への投資の判断の王道ですので、今一度それを繰り返します。その時点での円ドルレートは78円台でした。

引用します

「米国債はご自分で納得できる金利レベルでなかったら、無理に投資するのはやめて、気長に待つことです。このブログの読者の方で、待機中の方は多いと思われます。もし現在の円レートが十分に高いと思われるなら、以前にもお勧めしましたが、ドル建てのMMFを買って、ドルを確定しておくのも手です。」

引用終わり

  この回答ですが、春先に同様な質問をいただいた時も、また3・4か月前にコメントである方とやりとりをした時にも同様の回答を差し上げています。

実はこの回答の中に、重要なポイントがありますのでそれをしっかり押さえてください。それは、外債投資のやり方として、

1. 直接外債投資に踏み切る

2. 最初に為替投資をして為替を固め、債券投資のタイミングを計る



という2つのやり方がある、ということです。


  何故2段構えのやり方もあると言っているのか。その理由は

「為替変動のスピードと金利変動のスピードでは、一般的に為替変動のスピードのほうが早いし、変動幅も大きいから」
です。

  もちろん毎回そうとは限りませんが、今回の円安への振れも含めてみなさんの実感も同じだと思います。そうした急激な為替変動への対処はドルを買い持ちする以外にありません。70円台後半のレベルは十分円が高い、と考えればMMFでドルを買い持ちし、米国債金利が上昇するのを待つ。

  しかしいずれにしろこの回答、結局「タイミングはご自分で判断しなさい」と言って逃げていますよね。

  それだけではきっと満足されないベテランの方がいらっしゃると思いますので、もう一歩踏み込み、私の「金利感」と最近特に円安に振れ始めた「為替感」についてもお知らせすることにします。

つづく
コメント (6)
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