ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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ドル高での米国債投資はどうなの?

2024年04月16日 | 投資は米国債が一番

 ドル高が高進していますね。投稿時点では154円台です。最大の原因はアメリカ経済が好調でドルの金利が高いからです。

 

 多くの方から、「このドル高でも長期のアメリカ国債に投資しても大丈夫か?」というご質問をいただいています。

 私からの回答は、「もちろん大丈夫です」というものです。理由は単純で、ドル高に動いている時には、米国債の金利も高いからです。

 ブログのコメント欄でも「安全性第一」さんというハンドルネームの方からその質問をいただきました。私からは逆にブレークイーブンの為替レートをその方に確認していただきました。ブレークイーブンの為替レートとは、いくらまでドル安になった場合、投資元本がマイナスになるかを確認する計算で、そこまでは損することはないというレートです。

 

 ご質問は、「SBI証券のストリップス債は、1ドル153円超の本日ですと、17年~25年物で利回り4.5%を越えておりますが、153円の現在でも米国債購入はお勧めでしょうか?」というものでした。

 そこで私から「SBIのサイトで、償還時のブレークイーブン為替レートがあるはずなので、調べてください」と依頼すると、早速回答をいただき、

「ブレークイーブンは、45円~67円でした。」とのこと。

 1ドルが将来45円~67円になるとはとても思えません。17年~25年後には逆に200円~300円にもなっている可能性すらあると私は思っています。たとえ為替レートがいまのままであっても、ドル額では大きな利益が出ます。簡単に計算してみましょう。

現在の米国債の年限別金利をブルームバーグで確認しますと、

10年物;4.61%・・・複利運用で10年後に1,000ドルは1,577ドル

30年物;4.72%・・・複利運用で30年後に1,000ドルは4,053ドル

 

  為替レートが変化していなくとも、10年後には約1.6倍、30年後では約4倍にもなります。なにもせずにこれだけの利益が出る、夢のようなお話です。

ブルームバーグでは20年物の表示はありません。理由はアメリカ国債には20年物の発行はないからです。そこで簡便法で20年物の金利を10年と30年の平均値とすると、4.67%になります。

20年物(仮定);4.67%・・・複利運用で20年後に1,000ドルは2,517ドル

20年後為替レートが今と同じレベルだとしても投資金額は約2.5倍にもなり、金利を生む米国債の威力は莫大だという事が理解できます。

 

 では米国債投資の長期での投資実績を確認しておきましょう。

 私が最初の著書、「証券会社が売りたがらない、米国債を買え」を出版したのが2011年8月です。その中で2011年末までの30年間の実績をあげていました。1981年に米国債を買って2011年に償還を迎えた時、どのような実績をあげたか。

 81年当時の為替レートは1ドルが240円。それが2011年になんと3分の1の83円になってしまいました。ところが、81年時点の金利が非常に高く8%台でしたので、ドル建ての元本は複利計算でなんと24倍にもなっていました。

 ですので、24を3で割ると8。つまり為替で3分の1になっても、金利で24倍になったため、結果は円建ての元本が8倍にもなったのです。100万円の投資は800万円になりました。

 

 ではそれから12年後、昨年2冊目を出版した時におなじように計算すると、果たしてどうなったか。1993年に100万円投資すると、22年末で786万円になっていました。こちらも約8倍です。

 二つの実績はほぼ同様の倍率になる結果を生み出しました。これはもちろん偶然で、今後を保証するものではありません。

ではもう一つ、2011年出版の著書を読んで、そこから開始した投資の現時点での結果はどうか。

 その時点での30年債金利は4.37%で、ドル円は83円でした。そこで100万円投資すると、どうなったか。これまでにドルの元本は複利で1.75倍になっています。それにドルの値上がり分は83円が154円、つまり1.85倍ですので、両方を掛け合わせると、3.24倍。円建てでは100万円がすでに324万円になったということです。しかも今後20年近く毎年4.37%の金利をエンジョイできます。

 しかし何よりも大事なのは、先週に続き本日も暴落している株式投資と違い、戦争が起ろうが、石油価格が上がろうが、米国債は暴落などしないという安心感が得られ、しかもきっちりと成果が出る投資対象だということです。

 以上、「154円でも米国債は買いだ」でした。

 

蛇足;一平も、米国債には気が付かず(笑)

 

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7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (みい)
2024-04-17 21:07:53
林先生こんばんは。お忙しいところ質問すみません。
米国債も種類があって、何を買うのが良いのかわからないのですが単純に金利が高い物を購入するのが良いのでしょうか?
購入する際に重視するべき点はございますか?
みいさんへ (林 敬一)
2024-04-18 08:10:19
>米国債も種類があって、何を買うのが良いのかわからないのですが単純に金利が高い物を購入するのが良いのでしょうか?
購入する際に重視するべき点はございますか?

ご質問は失礼ながら漠然としすぎてて、お答えのしようがありません。

年齢はおいくつか、資産総額は、なんのために米国債に投資をするのか。などの基本的情報抜きにはおこたえできません。

あしからず
Unknown (みい)
2024-04-18 21:51:20
前回の質問大変失礼致しました。申し訳ありません。
年齢が33歳で、老後の為に貯蓄をしておく目的で最低50万から最高100万までで米国債の購入を考えておりました。
ゼロストリップ債で30年ほどの長期の物を検討中です。
この内容でアドバイス頂けたらありがたく思います。よろしくお願い致します。
みいさんへ (林 敬一)
2024-04-20 21:40:23
私の著書には、およその年齢別の投資の仕方が書いてあります。それを是非参照してください。

若いかたにお勧めしているのは、途中で金利をもらう利付債投資ではなく、ゼロクーポン債で複利運用をする投資です。

ですので、最終利回りの高い長期のゼロクーポン債です。
Unknown (みい)
2024-04-21 13:13:41
林先生お忙しい中返信ありがとうございました。
もう一度著書を読み返してみたいと思います。
ご対応感謝致します。
資産課税強化について (用心棒)
2024-04-26 21:48:15
先生、お久しぶりでございます。
額面総額50万ドルを受け取れる体制は作り終えましたが、最近気になるのがせっかく頑張って貯めたお金をかすめ取ろうとする財務省や自民党の資産課税強化についてです。

NISAなどを見ても、株式ばかりで債券に至ってはETFですらまともに投資できないひどい状況です。僕らが欲しいのは安心して受け取れる投資の果実であり、回転売買を繰り返しながら、ドキドキしたいわけではありません。

証券投資させたいなら、税率を下げるくらいしなければお金持ちの資金は動かないのに逆の動きをするのは意味不明です。

年間で利益を出す金額に応じて、たとえば1000万円以下なら、利益の30%を税金に取られるとか1億円以上の利益を出せば、40%取られるとかいろいろ案が出てくるのでしょうが、リスクを背負って、運用している人が何もせずに政府に甘え切っているだけの者たちの暮らしを支えなければいけないというのは不平等にも思えます。

こういうときでもクオリティ重視で黙々とゼロクーポンを積み上げていっておりますが、どうも不安を感じております。
気にしても、僕らに決定権はないのでどうしようもないのですが、皆さまはこの課税強化等についてどう思われているのでしょうか。

考えがまとまらず、申し訳ございません。
Unknown (まーくん)
2024-04-28 23:26:14
用心棒さんの懸念の実現は厚労省からでしたね。
金融所得で保険料アップのニュース。
債券利金も対象のようで、国保料・後期高齢者医療保険料にはねる。料率は自治体毎に異なりますが、クーポンの20%前後は持っていかれます。
売却益は記述がありませんね。財源としては不安定ですからね。ゼロクーポンは助かるかも。
これを避ける方法は75歳まで被用者保険の加入者か扶養にはいること。そちらは変更は難しいと言ってます。75歳以降はどうしようもない。
国からのメッセージは75歳までは働け。さすが憲法ですべて国民は勤労の義務を負うと書かれているだけのことはある(憲法で勤労義務があるのは日本、北朝鮮、旧ソ連だけらしいです)

証券投資の税率はNISAの普及次第ではないでしょうか。家計の株・債券・投信の残高が400兆円、NISAの積立額は年20兆円ペース。NISAで徴収しそびれた税収をNISA外から取るとしたら、10年後税率30%、20年後税率40%。

この2つだけで負担率50~60%が見えてきました。江戸時代の五公五民が羨ましい。

金融資産課税(富裕税)はその後じゃないでしょうか。OECD加盟国でも数えるほどしかないそうですし。

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