ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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でかしたマクロン!

2018年04月28日 | ニュース・コメント

  みなさん、大型連休はどのようにお過ごしでしょうか。私は家内のキャットシッターが稼ぎ時なので、主夫をして過ごします(笑)。そのかわり5月20日前後から旅行やゴルフをまとめてするつもりにしています。

  金正恩と文在寅の両氏の会談が無事終わりましたね。大方の論評は金正恩がまるでホストのように文在寅をリードしていた。そして非核化の合意はできても具体案がないので、今後に大きな課題を残した。今後の米朝会談を見守ろう、というものです。

  「Little Rocket Man, Sick Puppy」と金正恩をののしったトランプを、「おいぼれ狂人」とののしり返したお二人さんの初会談、見ものですね。もっともトランプはきのう言ったののしりなどすっかり忘れ、「あいつはいいやつだ、頭もいい」などと平気で言える人間です。ウソやウィットを含めどちらが上を行くか、今からとても楽しみにしています。

   その前に行われた日米首脳会談は、アメリカでは囲み記事扱の出来事だったようで、さしたる評判にもなっていません。それに引き換え、フランスのマクロンとトランプの会談は欧米ともに大きな扱いでした。なかでもマクロンが上下両院に向けて行った演説は実に秀逸でした。第三者であるイギリスのBBCニュースから一端を引用します。

見出し;「フランスのエマニュエル・マクロン大統領は25日、米議会の上下両院合同会議で演説し、国家主義と米国単独主義を非難した。」

本文;「マクロン氏は、国家主義的、米国単独主義的政策は世界的な繁栄に対する脅威だと述べた。同氏の言葉は明示的ではないものの、ドナルド・トランプ米大統領の掲げる米国第一主義的政策に対する事実上の攻撃だと広く解釈されている。

マクロン氏は演説で「自由と寛容さ、平等な権利」を掲げる米国とフランスの「壊すことのできない絆」を称賛しつつ、国際貿易やイラン問題、環境問題などでも立場の違いを鮮明にした。今回の訪米で見せてきたこれまでの温かい愛想のよさとは対照的だった。

同氏はこの議会演説で、3分間のスタンディングオベーションを受けた。

ただ、マクロン氏の言葉は、両大統領が全ての課題で合意しているわけではないことを示した。

「我々は、より素晴らしい繁栄への希望に満ちた世界を揺るがすような、急進的国家主義の始末に負えない働きを許さない」とマクロン氏は付け加えた。

マクロン氏はさらに、「米国が多国間協調主義を発明したのであり、今それが21世紀の世界秩序を作り出すために再発明される必要がある」と述べた。

同氏は、西洋諸国が世界で生じている新たな危機を無視するなら、国連と北大西洋条約機構(NATO)は負託に応えたり安定性を保証したりできないだろうとした。

貿易については、マクロン大統領は「商業戦争は適切な答えでない」と述べた。同氏は商業戦争が「雇用を破壊し、物価を上昇」させるだろうとし、「世界貿易機関(WTO)を通じて交渉するべきだ。我々が規則を書いたのだから、それを順守すべきだ」と付け加えた。

同氏は米国単独主義や孤立主義、国家主義は「恐怖に対する一時的な救済策として魅力的に思えるかもしれない。しかし、世界への扉を閉ざしても世界の進歩は止まらない。それは市民の恐怖をなくすのではなく、あおるのだ」と述べた。」

  こうしたマクロン演説はアメリカや欧州のマスコミでもかなり絶賛されています。さらにジョン・ソープル BBC北米編集長の言葉を引用します。

マクロン氏はトランプ氏を操縦する方法についての特別授業を世界の他の指導者たちに提供した。近くに寄り添い、必要な場面ではお世辞を言う。しかしそれは、大きな一撃を浴びせることを可能にすることにも使える。

  トランプにシッポを振ることしかできない、わが安倍首相にこの言葉を捧げます。彼がトランプに言った唯一のNOは、「TPP離脱への反対」でしたが、その場でトランプには「TPPへの復帰はありえない」と一蹴されました。あとはすべてにおいて「完全に意見の一致を見た」という相変わらずのお世辞交じりの決まり文句のみでした。やっぱりゴルフでお互い傷を舐め合いたかったのでしょうか(笑)。

  グローバル主義こそ世界を救うと言う哲学を持ち、トランプに「ダメなものはダメ」とはっきり言い、議会演説でもその姿勢は一貫していました。マクロン氏はトランプ氏の「アメリカを再び偉大に」というスローガンを借用し、「今こそ地球を再び偉大にするときだ」と最後に述べています。

  座布団3枚!

マクロン兄さん、お願いです。爪の垢をアベチャンにあげてください(笑)

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トランプでアメリカは大丈夫か7 米国債投資のチャンス到来

2018年04月24日 | トランプでアメリカは大丈夫か?

  米国債10年物金利が3%に接近し、ふたたび投資チャンスが到来しています。前回の記事では最後に世界経済のリスク要因として原油など資源価格の上昇と米国金利の上昇をとりあげました。米国債投資をお考えの方には、10年で3%に接近している長期金利は、絶好のチャンスと思われます。最も円安も急速に進んでいますので、ドル転の終わった方には金利上昇はとてもよいチャンスですね。

  金利高に関してある方から、最近米国金利は上昇しているが何故か、もっと上昇するのか、という質問をいただきました。回答は簡単ではありませんが、今回はそれについて私の見解を述べることにします。

  このところの最も目ざましい相場変動は、実は原油価格です。アメリカのシェールオイルの増産傾向にもかかわらず、WTI先物は60ドルの大台を固めた後そのまま上昇し、70ドルに接近しています。また同じ原油でも北海ブレントはすでに74ドルにまで達しています。2つの原油の価格差は質の差からきており、いつも北海ブレントが上鞘になっています。

  トランプちゃんはツイッターで原油相場に介入、「原油価格は高すぎる。OPECとロシアのせいだ」と言っているのですが、価格はそれをあざ笑うようにさらに上昇しています。そもそも原油価格上昇のきっかけはOPEC・ロシアの合意もさることながら、せっかく合意できていたイランの核に関する「6か国合意を破棄する」と言ったり、「アメリカ大使館をエルサレムに移す」などと中東情勢を危うくする政策を打ち出したトランプ自身が地政学上のリスクできっかけを作っているのです。それを棚に上げて相場に文句を言う、いつものおバカなトランプちゃんですね(笑)。

  それすら理解できないかわいいトランプちゃん、我々消費者はガソリン代が上昇しつつあり、すでに悪影響を受けています。アメリカの消費者も同様です。きっと日銀のクロちゃんだけは円安もあって物価上昇につながるので、人の不幸を喜んでいるに違いありません。

  資源価格の上昇は原油だけではありません。商品相場全体の動きを示すCRB指数も順調に上げています。指数を追うと昨年6月のボトム166から直近で203と1年弱で22%も上昇しています。これはもちろん世界経済が好調であることの証でもありますが、原材料高はやがては企業収益と消費に悪影響を及ぼし、景気の頭を抑える可能性があります。それが前回の私の指摘の中身です。

  そして金利にも当然影響します。常々申し上げているとおり、金利に最も影響を与えるのは「物価と雇用」です。アメリカの物価指数は3月で前年比+2.4%、コアインフレも3月に+2.1%となりました。そして好調な経済を反映し、3月の失業率は4.1%と最低水準で、賃金指数も前年比で2.7%となり、物価を押し上げる要因となっています。

  以上のように物価と雇用の指標は金利上昇に大きく貢献しています。そして一方の米国債の供給サイドを見ると、トランプ減税の本格化と今後見込まれるインフラ投資など、いずれも供給が大幅に増える政策をトランプは取り続けるのですから、上向き圧力がかかり続けます。そのうちきっと「金利は高すぎる」とかツイートするのでしょう。経済学の勉強をろくにしていないためか、自分のやっていることの影響を把握することもできないで文句ばっかりのかわいいトランプちゃん、困ったもんですね(笑)。

  しかしこうした材料はすでにある程度語られ、債券相場への織り込みはある程度進んでいると見るべきかもしれません。ただそれに加え来週には米国債の1千億ドル近い大量入札が予定されているため、その成否が今後の試金石の一つになるでしょう。

  しかし金利は果たして今後も上昇を続けるのでしょうか。アメリカの投資家も世界の投資家も株式市場の下落やボラティリティの高さを見て、若干株に及び腰であることから、金利がさらに上昇すれば債券へのシフトが起きる可能性があります。そのため3%を超えて大きく上昇することは見通しづらい、というのが私の見立てです。

  ちなみにこのタイミングでの投資を考えている方用に、米国債投資の為替と金利のシミュレーション結果を示しておきますので、参考にしてみてください。

 

想定;米国債10年物ゼロクーポン債   ドル円現在値 108.7

想定金利 2.8%複利 価格 75.73      B/E為替レート82.3円

想定金利 3.0%複利 価格74.25   B/E為替レート80.7円

想定金利 3.2%複利 価格 72.81      B/E為替レート79.14円

  見方は、例えば金利が3.0%の時に買ったとすると、10年物の価格は74.25%で、それが10年後の償還時は100%で返ってくるということを示しています。そして買った時の為替が108.7円として何円までの円高に耐えられるかですが、その計算は単純で、

108.7円 X 74.25% = 80.7円 

償還時にドル円が80.7円になるまでは損しない、ということです。

以上

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トランプでアメリカは大丈夫か6 中間選挙敗北の可能性

2018年04月19日 | トランプでアメリカは大丈夫か?

  いい加減にしろと言いたくなるほど、日米ともに政権側がスキャンダルまみれになっていて、重要審議はそっちのけ、両政権ともタブロイド紙か週刊誌並みの議論に明け暮れています。

  フロリダでのゴルフは、二人にとってそれらから逃げ一瞬の平穏を得るよい口実になったことでしょう。

  さて、本題である今後のアメリカ経済を見通すには、どうしてもある程度トランプ政権の行方をみておかないといけないと思い、今年11月の中間選挙までを私なりに見ることにします。

  前FBI長官コミー氏がトランプの本質を暴露する本を出版する予定で、出版前にそれを読んだトランプと非難合戦をしています。ロイターを引用します。

「米連邦捜査局(FBI)前長官のジェームズ・コミー氏は15日放送されたABCニュースのインタビュー番組で、トランプ大統領について、危険かつ「道徳的に不適格」な指導者であり、組織や文化の規範を「大きく損なっている」と指摘した。

コミー氏はインタビューで「女性を軽視する言動をし、重要度にかかわらずあらゆることにうそをつき続ける人間は、道徳的見地から米国の大統領にふさわしくない」と語った。

トランプ大統領は15日、ツイッターでコミー氏を批判。「不正直なジェームズ・コミーは史上最低のFBI長官として名を残すだろう」と罵った。」

  やくざ者トランプの手口は世界中で発揮されています。暴力を背景に脅すのがやくざの典型的やり口とすれば、トランプはまさにやくざです。アメリカの武力を背景に貿易問題で圧力をかけるやり口は、韓国との貿易交渉で発揮され、韓国はそれに屈しています。「お前たちを守ってやらない」というのは暴力による圧力そのもので、「暗い道では注意しろよ」というやくざの脅し文句と同じです。日本も同じやくざの手口で脅されているとみて差し支えないでしょう。

  ではいったい今後このトランプ大統領がどうなっていくのか、当たるも八卦で予想してみます。私の予想は「中間選挙で共和党が下院で過半数を割り込み、議会からの支持を得られない大統領はレームダックになるものの、弾劾まではされない。しかし次の大統領選挙では負ける」というものです。

  何故中間選挙で負けると言えるのでしょうか。

根拠1.絶対的トランプ地盤と言われていたペンシルバニアの補欠選挙で共和党候補が敗北した。その前にはルイジアナでも敗北している

根拠2.下院議長であるポール・ライアンの行動に代表される共和党議員のリタイアがあいついでいる

根拠3.アメリカと世界経済の変調

  以前から申し上げているようにポール・ライアンは48歳という若さですでに下院の議長という重責を担い、次期大統領候補の呼び声もあるのですが、リタイアを宣言してしまいました。理由は「家族との時間を大事にしたい」ですが、48歳です。そんなわけないでしょう。

  彼は大統領選挙中トランプを何度も非難し特に人種差別や女性蔑視の発言の度に非難し続けました。選挙直前のロッカールーム発言でもトランプを正面から非難。しかしトランプ当選後は共和党の重鎮としてウソツキでモラルのカケラもないトランプを支持せざるを得ず、また議長としての役割を放棄もできず、きっと悶々としていたにちがいありません。自分の良心に鑑みて、反トランプを表立って言えない立場に嫌気が指し、リタイアという形で良心に殉じた、というのが私の見方です。

  他の不出馬議員達も多かれ少なかれ良心のかけらもないトランプに嫌気がさしているし、共和党たる本質論から際立ってはずれるトランプ政策に反対しているのでしょう。共和党たる本質論とは「小さな政府による財政規律と規制緩和」です。トランプは軍事費増大とインフラへの財政支出増大により大きな政府を目指し、世界中を相手に貿易戦争をしかけ規制で国内産業を保護しようとしています。特に国内産業保護策のつもりの貿易戦争は相手国の報復措置や輸入物価上昇により国内産業を痛めつけ始め、100近い業界団体から保護主義反対のキャンペーンの嵐に見舞われています。保護主義で支持を得るどころか、実際には支持票を失っている可能性の方が大きいのです。

  実はこうした反トランプの共和党議員はポール・ライアンだけではなく、不出馬ドミノが起きつつあるというのがアメリカの選挙アナリストの見方です。これが中間選挙で共和党が負ける可能性があると見る私の見方です。

  では中間選挙で共和党が負けると、経済にはどのような影響があるのでしょうか。

  その前に前々回の記事では世界経済にスローダウンの兆しがあるとして、2点を指摘しました。

1.    中国経済の変調

2.    貿易戦争

今回はそれに以下の2点を加えます。

3.    ヨーロッパ経済の変調

欧州全体のPMI低下(昨年末の60台が3月には56台に)、3月の新車販売台数が前年比マイナス5.2%に大きく下落

4.    原油など資源価格の上昇と金利上昇

  原油価格ですが、NYのWTIは68ドル、北海ブレントにいたっては74ドルにもなっていて、金利の上昇とともにコストアップ要因になります。金利上昇は好調すぎるほど好調な住宅建設などに徐々に冷や水をかけ始めていますし、法人減税で伸びるとみられていた設備投資も、貿易戦争を見据えて萎縮しつつあります。

  世界経済はここまでしばし適温が続くゴルディロックス経済といわれてきましたが、どうやら変調の兆しが世界各地でみられるようになってきています。景況感も相場と同じで、どこかで曲がり始めると修復は容易ではありません。IMFあたりはずいぶん楽観的に来年の世界経済を見ていますが、楽観一色になったときこそ要注意です。すでに株式相場は各国ともそうしたことを読み始め、一方通行での上昇とはいかなくなっています。

つづく

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トランプでアメリカは大丈夫か5 ツイッター映えが生きがいのトランプ大統領

2018年04月13日 | トランプでアメリカは大丈夫か?

    昨日の夕方にアップした記事の内容を一部削除します。削除する部分は以下のカッコ部分です。

「なんとみっともない内閣府ウソツキ2でしょうか。「首相案件と話すことはありえない」が一転、面談したしそう話したとのこと。柳瀬元首相秘書官の告白懺悔、ミエミエのうそがばれましたね。ウソツキ1財務省では死者が出ましたが、今回はその前に降参したようです。』

  夕方の民放のニュースを家内と見ていた時に上記のニュースが流れ、「これは大変なことになったね」と話をしたのですが、その後銅ニュースが流れませんでしたので、削除することにしました。失礼しました。なんだかきつねにつままれたようで不思議です。以下は変更ありません。

  海外ではシリア情勢がきな臭さを増しています。トランプのツイッターでのツブヤキが大きなリスクをまき散らしているからです。彼は次のツブヤキでロシアを煽り、冷戦時代に戻そうとしています。本日のブルームバーグを引用します。

「トランプ氏は米国時間の11日朝、ツイッターで「ロシアはシリアに対するあらゆるミサイルを打ち落とすと公言している。ロシアよ、準備するがいい。新型で素晴らしく、『高性能の』ミサイルが(アメリカ軍から)やって来るからだ。自国民を殺りくし、それを楽しんでいるような化学兵器(を使うシリア)のけだものと仲間になるべきではない!」と述べた。さらに「われわれとロシアの関係は冷戦時代を含め、史上最悪だ。これに道理はない。ロシアは経済への後押しで米国を必要としている」とツイートを続けた。」

( )内は林の補足です。

  トランプの支持率を4割で下支えしている最も大きな要素は何でしょうか。以前も指摘しましたが、私は最大の要素はトランプのツイートの連発が支持率維持に効いていると思っています。維持と言ってももちろん相変わらず不支持が支持を10数ポイント以上上回っていますが、それでも支持率は40%くらいで岩盤に突き当り、決してそれ以下に沈みません。

  「インスタ映え」という言葉があります。若い人たちを中心にインスタでもフェイスブックでも人の気を引き続けることに快感を感じ、魔力にとりつかれている人々がいます。私もフェイスブックでアカウントを持っていますが、フェイスブック上の友人でも、ほぼ毎日写真とともに何らかの記事をアップし、それに「いいね」をしてもらうことを無上の楽しみにしている人たちがいます。そうした人の多くはSNSなどない時代からの目立ちたがりでしたが、SNSという手段を得たことでそれが爆発しているように思われます。しかも注目度を上げるために投稿内容がどんどん過激になっていきます。

  ユーチューバー日本一と言われるHIKAKIN をご存知でしょうか。彼は投稿から収入を得るというインセンティブが働いているため、とにかくユーチューブ上で再生回数を増やすことを至上命題にしていて、投稿内容がどんどん過激になっています。トランプも同じで、ありきたりの投稿ではフォロワーが満足しないため、どんどん過激にならざるを得ません。トランプの場合はHIKAKINよりはるかに必死で、ツイッターが大統領としての命脈を保つ命綱ですから、注目を集める続けるためなら、どんなことでも書いてしまうのです。

   後ほど解説する「ロシアよ準備しろ、ミサイルが飛んでいくぞ」も世界に対するとんでもない挑発ですが、自分の側近たちを辞めさせる時のツイッター辞令も度を超えています。支持者に対し、ニュースメディアよりも早く直接知らせ、「オレ様がキングだ、フェイクニュースのいう事など聞くな」ということを言い続けるのが、彼にとっては毎日快感を得ることのできる最大の楽しみです。それを年に千回も聞かされていれば、フォロワーがトランプだけが信用できる、となってもおかしくありません。

  トランプもフォロワーも完全にツイッター中毒で、そうした中毒患者からもしSNSを奪ったら、狂い死にするに違いありません。それは置いておきますが、トランプは毎日・毎時こうしたネタ探しに奔走し、ツイッター映えする政策を今後も連発するに違いありません。

  かわいそうなのは敵国やトランプの気まぐれに翻弄される同盟国ばかりではありません。一番大変なのは政権内部の人たちです。それでなくともトランプがどんどん首を言い渡して人材不足なのに、その上気まぐれ不規則発言の火消しに追われます。昨日、大統領府の女性報道官もさすがに参って言葉に詰まっていました。というのもこれまでトランプはシリアや北朝鮮問題などで武力行使に出るときに、「オレ様は予告など一切しない」という宣言を繰り返していたのですが、一転しシリア攻撃をツイッターでつぶやいてしまったからです。

  ABCニュースはこれまでの「予告などしない」発言を5通り放映し、なのにツイッターで攻撃を予告したというニュースを流しました。それに沿って大統領府の毎日の記者会見でABCの記者がその矛盾を報道官のサンダースに突いたのです。そると彼女は「いや、大統領は攻撃のスケジュールには言及していないし、すべての選択肢を持っていると常々言っているだろ、その一環だ」とぜんぜん言い訳にもならない答えをし、果ては食い下がる質問者を無視して次の質問に移りました。あの苦虫顔のサンダース女史、毎日々々苦虫を食べて、おなか痛くならないのでしょうか(笑)。

 

  ではトランプのツイッターのどこがいけないのでしょうか。衝動的でますます過激になる内容が世界を揺さぶり、株式、為替、石油などの商品市場を揺るがしています。2月の大荒れ相場の後、1か月半もNYダウはトランプ発言の度に大きく揺れています。そのため市場関係者は彼のツブヤキにますます注目せざるを得なくなり、ファンダメンタルズの分析などそっちのけになっています。

  シリア攻撃のツブヤキで原油価格はWTIで67ドル、北海ブレントで70ドル超えになっていて、それが株価の足を引っ張っています。やがてそうした商品相場の値上がりは我々のフトコロを直撃することにもなります。

世界の地政学上のリスクはサイバー上にあり!

震源地はトランプなのです。

  もし、彼のツイッターがシリア攻撃の最中に何者かに乗っ取られ、乗っ取り犯がトランプになりすまし「シリアを防衛しているロシア軍も直接攻撃をするぞ」などとつぶやこうものなら、地中海に展開する米海軍空母打撃群をロシアがあわてて直接攻撃し米ロが戦闘状態になるかもしれません。サイバー上のリスクは、そうしたこともあり得る恐ろしさをはらんでいるので要注意です。

 

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トランプでアメリカは大丈夫か4 自衛隊日誌とペンタゴン・ペーパーズ 

2018年04月08日 | トランプでアメリカは大丈夫か?

  財務省・厚労省・自衛隊をはじめ、日本政府内部の情報改ざん・隠蔽工作は目を覆いたくなるほどですね。と書いていたら、ニュースで自民党の竹下亘総務会長までが、「改ざん隠蔽には目を覆いたくなる」と言っていたので、思わず笑ってしまいました。昨年選挙民はウソの情報をもとに自民党安倍政権を選択したのかもしれません。それを思うと、冗談では済まされません。しかもそうした事案の調査をするのがいつも第3者を入れずにまず「内部で調査する」と言うのですから、日本の行政府にはあきれてものが言えません。政府そのものがまさに文字通りガバナンスに欠けるガバメントとはお粗末極まりない。「内部調査」とはまさしくブラックジョークです。

  一昨日、スピルバーグ監督による映画、「ペンタゴン・ペーパーズ」を見てきました。ワシントンポストの記者たちが政府の情報隠蔽を暴く話です。ワシントンポストの社主はかつてのグラハム一族から現在はアマゾンのジェフ・ベゾスに移っていますが、映画はそれよりはるか昔の60年代、ベトナム戦争時代の政府による情報隠蔽工作を新聞が暴く話です。ストーリーの一部を簡単に紹介しますと、

  社主は夫をなくしたメリル・ストリープ、編集長はトム・ハンクスという豪華メンバーで、ベトナム戦争が泥沼化していてアメリカ国内で反戦運動が盛んになっている頃、ペンタゴンが負け戦の報告(ペンタゴン・ペーパーズ)をひた隠し、それを新聞社がとり潰しのリスクを負っても暴くというストーリーで、ニクソン大統領と新聞の争う様子は現在の大統領対メディアの状況と同じ構図です。ウォーターゲート事件はこの後の話で、やはりニクソン大統領をワシントンポストの二人の記者が追い詰めました。

  横に逸れますが、実はその後70年代から長きにわたりワシントンポスト社主のグラハム夫人を支援したのが4分の1のシェアーを持っていた株主でかつ取締役でもあったウォーレン・バフェットでした。現在彼は退任し、株式も売却しています。

  さすがスピルバーグ監督、この映画は実に絶好のタイミングで上映されています。メディアをフェイクニュースだと決めつけ攻撃を続けるトランプ対メディアの構図がかつてのニクソンと新聞の対立を彷彿とさせるからです。今回の映画はワシントンポストの二人の記者がニクソンの陰謀を暴いた例のウォーターゲート事件の寸前のところで終わっていて、事件そのものを対象にはしていませんが、スピルバーグは最後にそれとなく暗示し、トランプを陰で攻撃しています。

 

  ところで現在トランプがアマゾンを毎日ツイッターで攻撃しているのをみなさんはご存知ですか。ワシントンポストの現在のオーナーはアマゾンのオーナーであるジェフ・ベゾスで、トランプはワシントンポストを不倶戴天の敵とみなし、当たり散らしています。トランプの現在の攻撃対象はワシントンポストがフェイクニュースだといういつものメディア攻撃ではなく、「USPS(米郵政公社)の赤字は通販のアマゾンが作り出している」という彼らしい独特の切り口でツイッター上で攻撃しています。それをブルームバーグの記事の引用で説明します。

4月3日のブルームバーグの記事を引用します。

『トランプ大統領は2日、ツイッター「損失を出し続けている郵政公社(USPS)がアマゾンで利益を得ていると言うのは愚か者か、それ以下の人間だけだ。USPSは(アマゾンにより)ばく大な損失を被っている。だがこの状況は変わる。また税金を満額納めている小売業者の閉店が全国で相次いでいる。公平な競争の場ではない」と述べた。トランプ大統領はここ数日、アマゾンに対し容赦ない批判を続けている。3月31日にはアマゾンは「実質コスト(と税金)を今支払わなければならない!」と投稿した。さらに大統領は具体名は出さず報道を引用し、『USPSはアマゾンの配達1つごとに平均1.50ドルの損失となるとした上で、「郵便制度を欺くのはやめなければならない」と訴えた。』

  不倶戴天の敵であるワシントンポストのオーナーがジェフ・ベゾスだし、実はUSPSの最大顧客であるアマゾンも攻撃対象とあって、トランプの格好の攻撃対象となってしまっていて、トランプの攻撃の度にアマゾンの株価と株式相場全体が乱高下しています。アマゾンも昨年税金を4億3千7百万ドルも払ったと反論していますが、トランプは聞く耳持たず。

  ついでにアメリカで言われているのは、ジェフ・ベゾスが最近アマゾン株の上昇により世界一の金持ちになったというニュースが流れ、『負けず嫌いのトランプが妬んで株価を下げるような発言をしている』というものです。まさに逆恨みそのものです。

  ワシントンポストにアマゾンという絶好の攻撃対象を得たトランプ、ツイッターのネタにフル活用し、ロシア疑惑などから目を逸らさせようと必死にもがいていますが、その一方で高校生が銃規制=反トランプを掲げ、全米で立ち上がっていて、現在非常に大きなうねりになっています。

  これはフロリダの高校で3月に起こった銃乱射事件を機に全米の高校生が銃規制に立ち上がり、トランプの「先生が銃を持てば防げた」というおバカな発言に対してワシントンでデモ仕掛けたのです。くしくも4月4日のキング牧師暗殺の記念日にキング師の孫がデモ隊に向けて演説をしました。その内容は「私には夢がある」と演説したキング師の言葉を引用し、「私には夢がある。銃のない世界だ」という的を射るスピーチでした。学校で銃撃戦をしようというおバカな大統領に向け、めずらしく全米の高校生が立ち上がったのです。しかも彼らは中間選挙に向け、「選挙人登録をして、銃規制派に投票しよう」という具体策も提案していますし、NRA(全米ライフル協会)から支持を受けている議員とタウンミーティングを行い、つるし上げをするという行動も行っています。彼らの親たちを含めると、決して小さな動きではないと評されています。

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