ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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トランポノリスクとアベノリスク その4 アメリカの金利低下

2019年08月16日 | トランポノリスクとアベノリスク

  嫌われ者トランプがまた人々が嫌がる政策を発表しました。それはアメリカに生息する絶滅危惧種の動植物を保護する地域指定を緩和する、つまり地域指定を狭め、保護をはずすとしたのです。日経ニュースを引用します。

 「トランプ米政権は12日、野生の動植物を保護する規制を緩和すると発表した。絶滅危惧種の指定にあたって迅速に対象を入れ替えられるようにするほか、経済的な影響も考慮に入れて判断するようにする。生息地域で資源開発を進めやすくなる効果があるとみられるが、環境保護団体は反発している。」

   要は経済を優先するということで、環境保護を経済の邪魔物とするトランプ政策の一環です。パリ協定からの離脱や石炭産業の復活政策は世界から非難を受けましたが、こうしたあまり目立たない面でも世界の動植物、ひいては人間への悪影響もかまわない。まさに彼の製造業寄り、そして不動産屋としての悪人ぶりをいかんなく発揮している政策です。


  さて、アメリカの長期金利が異常ともいえるほど低下し、短期金利と逆転して、おとといはNYダウが800ドルの暴落になりました。株の暴落を単に逆イールドの出現によるテクニカルな原因だとするような解説が見られます。逆イールドは景気後退のシグナルと言うわけです。しかし今回の暴落はそのシグナルだけが原因ではないと思います。このシリーズで私が述べているように株価も景気もすでにピークアウトしつつあるのが真の原因で、相場が高所恐怖症になっているのです。なのでちょっとしたインパクトが強調され暴落につながりやすくなっているのでしょう。

   この半年くらいの相場と解説を見ていると本末転倒の解説に相場が影響されることが多くなっていました。どういうことか。例えば景況指数の悪化が報告されたとします。すると株価が上昇することが多かったのです。そのとき市場寄りの御用エコノミストたちはこう解説します。

 

「今回の指標悪化により利下げのペースが早まる可能性があると見て、相場は上昇するだろう」

  実体経済の指標が悪いと利下げ期待で相場煽り、無理やり相場を支える。それを当然視するように相場は動く。私に言わせればそうした実態の悪さまでよい材料視するような動きはいずれ破綻を招く。悪材料もいい材料にしてしまうようなおかしな論理が横行する時は、崩壊は近いというシグナルだと見ておくべきなのです。


   一方債券市場では昨日のNYで10年物米国債のイールドは一瞬1.4%台に達し、1.5%台で終わりました。このところの金利低下は尋常ではありません。実は動かないようで動くのが米国債金利です。この3年の上下動をピークとボトムだけ拾ってみますと、

 

16年7月  1.37%

16年12月 2.59%

17年9月  2.05%

17年12月 2.57%

18年11月 3.24%

19年8月  1.53%

 

   半年で0.5%から1.2%くらい当たり前に動いています。特に昨年11月の3%台 から現在の1.53%に至る動きは、まさに国債価格の暴騰ともいえるほど大きな値動きです。債券の金利と価格は反比例しますので、金利低下とは価格の上昇です。今回の価格暴騰の背景にあるのは世界の株式相場の動揺で、その大きな原因はまさにトランプリスクの一つ米中貿易摩擦であり、さらに言えばここまで蓄積されたトランポノリスクのせいなのです。

  私は当然ながらこのレベルでの米国債投資はお勧めしません。むしろ同時進行しているドル安を利用してドルの仕込みをするべき時だと思います。そして将来の金利高を待つ。もしその間もドルを遊ばせていることが無駄だと思われる方は、短期債への投資をお勧めします。2・3年の範囲であれば償還前に金利が上昇した場合の価格下落もたいしたことはありません。

 

  またこのところトランプの陰であまり話題になっていない欧州が、次第に世界の足を引っ張るようになってきていることには注意が必要です。一つは昨日発表されたドイツのGDP成長率がわずか0.1%ですがマイナス領域に入りました。ドイツは健全な財政政策の下、経済は順調に推移していたのですが、若干ですが陰りが見えています。そしてジワリと効いてくるのが合意なき離脱に近づくイギリスです。BREXITの危険性を察知した海外企業はイギリスを脱出しつつあり、それが静かに加速しています。

   それに加えて中国のスローダウンが見込まれると、世界経済全体の成長率見通しが悪化することは間違いありません。

 

  しかし米国債に投資をしている、あるいは投資を考えているみなさんにとって大切なことは、世界がトランプリスクによる株安で動揺する中、震源地であるはずのアメリカに向かって「質への逃避、FLGITH TO QUALITY」が起こっているという事実です。これは前回の世界的金融危機の時にも見られたことで、「世界に激震が走ると頼りになる投資先は米国債だけだ」としてカネが集まるということなのです。

 

  では今後不況を防ぐ切り札はあるのか。普通の政策手段は金利引き下げ財政出動です。しかし残念ながらアメリカは金利の引き下げ以外ありません。普通であれば経済が好況にあり失業率が歴史的に低いときには財政出動などしませんが、トランポノミクスは就任2年半で好況下でも財政を拡張し続けるという愚を犯していますので、いざとなったらこの手が有効に使えないのです。しかも、もし日本を含めて世界全体が本格的スローダウンとなった際、最も大事な主要国の協力体制が取れないことは大きなリスクです。

   来週は世界の中央銀行総裁や大手金融機関のCEOなどが一堂に会するジャクソンホール会議がワイオミング州で開かれます。きっと世界経済への大いなる懸念が表明され、トランプ政策が非難されるでしょう。共同で対処していこうとはならないのがトランプ以降の世界の金融政策です。

 次回は現状のアベノリスクについて解説します。

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トランポノリスクとアベノリスク その3 トランプリスク、今後の予想

2019年08月10日 | トランポノリスクとアベノリスク

 

    このところ珍しくトランプの支持率が多少なりとも下がっています。理由は他でもないテキサスとオハイオの銃乱射事件です。それに関してまずBBCの日本語ニュースを引用します。

「アメリカのドナルド・トランプ大統領は5日、テキサス州とオハイオ州で相次いで起きた銃乱射事件を受け、憎悪(ヘイト)や白人至上主義を非難する演説を行った。ホワイトハウスでの演説でトランプ氏は、「引き金を引くのは銃そのものではなく、精神疾患と憎悪だ」と述べ、精神疾患を持つ人への銃規制や、大量殺人を行った犯罪者への死刑の適用、銃規制をめぐる党派を超えた協力などを求めた。また、「アメリカは声をひとつにして、人種差別や偏見、白人至上主義を非難するべきだ。こうした悪のイデオロギーを打ち負かすべきだ。アメリカに憎悪の居場所はない」と話した。一方、米連邦議会に提出されている銃規制法案への支持は表明しなかった。」

   アメリカでは今回の二つのほぼ同時乱射事件の原因は、誰もがトランプによる先月の民主党の非白人女性議員に人種差別的攻撃を行い、「アメリカから出て、国へ帰れ」という暴言を浴びせたことだと思っています。その中でトランプは上のニュースにあるような言葉、

 アメリカは声をひとつにして、人種差別や偏見、白人至上主義を非難するべきだ。

  というような白々しいスピーチをしても誰も共感しません。それが証拠にトランプはテキサスとオハイオの現場に出向き哀悼の意を表しましたが、地元民は「トランプ帰れ!」の大合唱に終わっています。そして報道写真はすべて反トランプデモでした。いつもの支持者集会で見られるような被害者を横に置いての演説もなし。テキサス、オハイオともすべての遺族がトランプの彼らへの訪問や招待を拒否したのです。

   それでも自分がヘイトクライムの首謀者だとは決して思わないのがサイコパスのサイコパスたるゆえんです。きっと来週になればトランプはまた人種差別的言動を繰り返し、次の大量殺りく事件を引き起こすきっかけを作るに違いありません。

  彼のこのところの人種差別発言に関して、海外のおもしろい分析がありましたので紹介します。どこの報道だったかは忘れました、すみません。

 「トランプの支持層である白人は有権者の6割を占めている。そのうちの7割がたの支持を得ればそれだけで4割強を得られる。(注;0.6x0.7=0.42) そこで非白人の投票率の低さを考えれば十分に当選圏に達する。従って今後も白人至上主義的言動を続けるだろう」

というものです。確かに一理あります。前回も非白人の投票率はトランプが自分たちを非難し続けているのに異常に低かったことを思い出します。しかし昨年の中間選挙では非白人やトランプ支持者の少ない若年層が投票したことによって共和党は負けました。

  このアメリカ分断という政治リスクに加えて、経済リスクも株価暴落で顕在化しました。こうしたリスクはすべてがトランプ再選に向けて組み立てられているものです。経済面では株価を上昇させるのが再選につながるとしてトランプはあらゆる手段を動員して煽り、叫び続けています。最近もまた株価暴落に対して「一番悪いのは中国ではなくFRBだ」と叫びました。しかしこの暴言に歴代FRB議長4人が連名で大統領に対し、反トランプの論説を寄稿しました。ブルームバーグを引用します。

 「イエレン氏とベン・バーナンキ、アラン・グリーンスパン、ポール・ボルカーの歴代議長4氏は米紙ウォールストリート・ジャーナルに連名で論説を寄稿し、『FRBとその議長は独立して行動し、経済の利益に最大限かなうために活動することを認められ、短期的な政治圧力や、特に政治的理由によるFRB幹部の解任あるいは降格という脅しを受けるべきではないとの信念でわれわれは一致団結している』と表明した。」

   トランプの暴言に対して株式相場は暴落で答えています。それにしても、株式投資をされている方は毎日トランプに振り回され、本当にお気の毒ですね。

  では株式相場とトランプ再選に関して、私なりの勝手な見通しを立ててみましょう。

  トランプは再選に向けて株価を人為的に上げることに必死になっています。ということは、もし高い株価が来年の選挙までもったとしても、再選されないと当然一気に崩れ落ちます。

  逆にもし再選されるとどうなるでしょう。3度目の再選はないのでトランプ本人は「再選のため」という最大の株価引き上げインセンティブを失い、これまた一気に崩れ落ちる可能性があります。

   彼は自分のことしか考えないので、共和党の明日のことなど興味はありません。そしてアメリカ経済の実態が天井に近いため、ファンダメンタルズから見ても株式市場には高所恐怖症が蔓延しつつある。選挙がらみの押上がなくなり、実体経済のピークアウトがそれに重なると、結構大きな下落の可能性あり。それが私の見方です。

   では政治面の見通しはどうか。

  私の見るところ、トランプが再選されたところで今の悪夢のような状態は長く続くことはないと見ています。その理由の一つは、トランプは世界に対する悪事の大半をやりつくしたこと。といっても彼の実績は破壊に成功しただけで、築き上げたことなどほとんどありません。対外的にも中国とは対立したままだし、北朝鮮やイランしかり。破壊ならだれでも簡単にできます。そのため私の見立てはその名のとおり、早めにドナルド・レイムダックになるに違いない、というものです。普通は2期目の後半になるとレイムダックと呼ばれるようになるのですが、彼の場合はその時期が早まる、これが私の見立てです。

   一方議会民主党はすでに下院で多数を得ていますので、トランプの政治的自由度は大きく制限されています。ですので彼の最大の公約、メキシコの壁などできるはずはありません。さらに共和党内のトランプ支持者の政治家も、トランプに次がなければ気を遣う必要はなくなる。レイシスト(人種差別主義者)でセクシスト(セックス至上主義の女好き)、そしてモラルのかけらもないウソつきトランプに反旗を翻す可能性が強いのです。そうしないと共和党議員たちは自分もトランプと同類に見られることになり、次はなくなる危険性を感じるからです。トランプと同じレベルでウソをつき続けることなど、まともな人間にはできないはず。もしできたとしても、選挙民はその議員を当選させない反トランプの大反動の空気が拡がるに違いない。以上が私の考える政治面に関してのトランプのリスクシナリオです。

  じゃ、彼自身は一体何をするんでしょう。彼の後半4年間の目標はノーベル賞の受賞です。彼はオバマ前大統領の政策をことごとく覆しましたが、ノーベル賞だけは取れていません。しかしたとえ北朝鮮と和解できたとしても、ノーベル賞委員会は歴史に汚点を残すようなことはしないでしょう。

  以上、トランプリスクのまとめでした。

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トランポノリスクとアベノリスク その2

2019年08月03日 | トランポノリスクとアベノリスク

  トランプが嵩にかかって人種差別発言を強め、アメリカ社会の分断を図っていますね。大統領が国を分断し、それを与党共和党が支持するなんて、まるでこのアメリカという多民族国家の終末を見ているようです。著名な黒人議員の非難をする際、彼の選挙区であるボルティモア市をネズミだらけでメチャクチャと言い放ち、「差別発言だ」と非難されると、「事実を言っただけだ」と開き直る。サイコパスのサイコパスたるゆえんを自ら示しています。

   しかしワシントンポスト紙もそれに反論し、「汚いのはホワイトハウスも同じで、ネズミだらけだ。大統領夫人がプールで泳いだら、となりでネズミが泳いでいたことがある」と報道しています(爆笑)。


   一方でトランプはFRBの利下げに対しても噛みついています。「もっと下げろ」の大合唱です。日経ニュースを引用します。

 トランプ米大統領は31日、米連邦準備理事会(FRB)のパウェル議長が今後の継続的な利下げを明言しなかったことについて「いつも通り失望した」とツイッターでなお不満を表した。「私は確かにFRBから多くの助けを得られない!」と強調し、今後も米経済を下支えするため追加の利下げを長期的に続けるよう圧力をかけた。

   パウェル議長はトランプの圧力をものともせずに我が道を行っています。心配なのは理事会メンバーが今後任期ごとに徐々に入れ替えられ、トランプ色を強め、トランプの圧力に屈しやすくなることです。パウェル議長は利上げ後の声明で、「アメリカは好調を維持しているが、世界経済は通商問題からスローダウンの兆しがあるので予防的に利下げをした」と表明。

  これをもっとはっきり言ってしまえば、「大統領、あんたの貿易政策のおかげで世界は不況への淵に立たされた。あんたが勝手にリスクを大きくしたんだから、後始末はあんたがしろ。FRBじゃない」ということです。FRBの独立性の意味を知らない無知な大統領がこうした発言をすればするほど、世界はリスクを積み上げることになります。

 

  そのリスクの好例が一昨日のNYダウの暴落とドルの暴落です。トランプのツイッターで600ドルを超える大暴落となりました。発言の中身は他でもない「中国からの輸入品に10%の関税を上乗せする」という発言です。その発言までは300ドルの上昇でしたが、発言後一気に600ドル暴落したのです。すると早速トランプは自分のせいなのにFRBに転嫁するため、「利下げが足りないからだ」と発言。あおりを食って日本の株式も一時600円の暴落となり、終値も453円安でした。また米国債10年物金利も一気に2%を割り込み、1.9%台に突入。それに影響を受けドル円レートはNYで109円台を付けたのですが、日本では106円台となりこの数か月では最大の下げ幅です。株式投資をされている方は、大変ですね。

 

  さて本題のトランプリスクです。前回はトランポノミクスとそのリスクを簡単に説明しました。それは減税やインフラ投資などで成長を促し、輸入に関税を課して製造業を復活させれば、結果として国は成長し税収が上がるはずというバラマキ政策でしたが、実際には全く成果を上げられず、ひたすら政府は赤字を積み上げる結果になっている、ということでした。

     トランプのリスクは経済面だけではありません。世界に放火して回ることで地政学上のリスクも大きくなり、それらが一気に噴き出す危険性があるのです。これまでの放火実績はシリアへの直接爆撃、エルサレムへの大使館移転、ロシアと結んでいたINF(中距離核ミサイル)削減協定の一方的破棄、北朝鮮の締め付け強化などがあります。そして今世界が注目しているのがいわれなきイランへの締め付けです。これは世界中が大迷惑をこうむりかねません。

  その一環でボルトン米安全保障担当補佐官とポンペイオ国務長官が世界中を巡って有志連合への参加を募っています。有志連合が組まれたらまず最初にやるべきことは何か。それは軍事行動などではなく、みんなで声を揃えて、

 

「おいトランプ、放火はいい加減にしろ」と叫ぶことです。それがホルムズ海峡の波を鎮める唯一の平和的方法です。

 

  トランプがこうしたバカなことをしなければ報復の連鎖などなく、ホルムズ海峡に波など立たず有志連合など不要で、世界が身構える必要などないはずです。

   ホルムズ海峡を通過するタンカーの輸送量は世界の石油需要の3分の1程度です。日本に限っては8割と飛びぬけて高くなっています。1973年、第4次中東戦争がきっかけとなった第1次オイルショックでは、OPECの原油公示価格が3か月余りでバレル当たり3.01が11.65ドルと約4倍に上昇。そして79年のイラン・イラク戦争をきっかけとした第2次ショックでは価格が40ドルと、さらに4倍近くに上昇し、この間世界は石油価格に翻弄され続けました。私のいたJALでは、第一次オイルショック後、全コストに占める燃油費が1割から3割に上昇、大赤字を計上しました。

   その後価格は落ち着き、00年代は20ドル台で推移していたものが、中国などの新興国の爆買いや投機マネーの流入で08年には瞬間ですが最高値147ドルに達しました。ところが直後に起こった世界的金融危機で40ドル台まで大暴落。その後いったんは100ドル程度に回復したものの、アメリカのシェールオイル増産により現在は50~60ドル前後で推移しています。

   こうしてみると価格変動はすさまじいのですが、供給がストップするようなことはありませんでした。それがもしホルムズ海峡の閉鎖で世界の3分の1の供給がストップされるとどんなことが起こるのか、なかなか想像はつきませんが、影響度を測るため、日本の石油への依存度を見ておきましょう。数字は資源エネルギー庁の「日本のエネルギー17年度版」を使います。

   そもそも日本全体のエネルギー消費に占める石油の割合は40%、石炭が25%、LNGが24%と続きます。依然として化石燃料に9割を頼っているのが日本の実態です。そして一兆事が起こった時のための石油備蓄がどの程度かと申しますと、国家備蓄が約100日分、民間備蓄が約70日分で合計170日分と、かなり潤沢です。このため、ホルムズ海峡の閉鎖があったとしても、約半年は持ちこたえられるといえるでしょう。

   ただ私が恐いのは日本人のパニック買いです。73年のオイルショック時に起こったトイレットペーパーの奪い合いや、93年の米騒動など、日本人特有のパニック買いが恐ろしい。ホルムズ海峡が閉鎖されれば、日本中でガソリンの買い占め騒ぎが勃発しそうです。

 つづく

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トランポノリスクとアベノリスク その1

2019年07月24日 | トランポノリスクとアベノリスク

  ホルムズ海峡の波はますます高くなっていますね。アメリカがイランの無人偵察機を報復攻撃し、撃墜しました。イギリスに対してはイランがまた船舶を拿捕し、それに対してイギリスが有志連合を組んで対抗すると宣言。こうした報復の連鎖は本格的戦闘行為を招く恐れが大いにあります。特にアメリカはオレ様が世界の帝王だというトランプを擁し、イランは妥協のない宗教指導者が率いるという最悪のパターンで、お互いが直接ツイッターで罵り合う。そこにイギリスのジョンソンが首相として加わるので最悪のシナリオも考えておく必要がありそうです。

   これだけは見たくないと16年5月に私が引用したのが、今回首相に選出されたジョンソンとトランプのキスシーンの落書きでした。その落書きが書かれた16年5月は、BREXITの国民投票直前で、トランプも11月に向けまだ大統領選を戦っていました。恐いもの見たさで見たい方は以下をクリックすると二人のキスシーンの巨大な絵が見られます。

 https://www.afpbb.com/articles/-/3088208?pid=17918904

 

  ホルムズ海峡ではイランは「やめとけ」という私のアドバイスも聞かず(笑)、トランプの挑発に乗り続ける愚を犯しています。負けず嫌いのトランプは選挙を控えているため、なりふり構わずちょっかいを出し続け、直接攻撃のきっかけをつかもうとしているきらいがあります。トランプは「イランとの戦いに勝利した」という勲章を選挙戦で誇示したいがために戦争を起こしかねない、非常に危険なサイコパス男であることを忘れてはいけません。シリアにも突然爆撃した過去があります。そこに同様にサイコパスと言われているジョンソンが加わり、危険性は増します。

  以前も掲げましたが、サイコパスについて復習しておきましょう。Wikipediaを引用します。


犯罪心理学
者のロバート・D・ヘアは以下のように定義している。

   これ以上トランプという人間を表すにふさわしい定義はありません。100%該当します。いままで大量殺人を犯した犯人の多くはこの定義に該当しています。このトランプの危険性が、今後世界の大きなリスクになるという警鐘を鳴らし、今回の話題につなげます。

 

  今回のタイトルは二つの言葉、「トランポノリスク・アベノリスク」です。説明します。これは本来であれば両者の経済政策を示す言葉で、トランポノミクスとアベノミクスです。しかし私のみるところは、これらが今後とてつもない大きなリスクとして世界を混乱に陥れる可能性があるので、両方ともミクスではなく「リスク」だと名付けたのです。

   ではまずトランポノリスクから。彼が就任して以来アメリカの株式相場は上昇を続け、NYダウ、S&P500、ナスダックという3大指標はいずれも最高値を更新。現状も最高値に張り付いています。そのどこが悪いのでしょうか。トランポノミクスとはそもそも次の政策により成り立っています。

1.法人税の大幅減税により経済を活性化させ逆に税収を増やす

2.インフラへの財政出動により経済を活性化し、財政出動以上の税収を上げる

3.貿易赤字国への関税引き上げ貿易収支を改善して関税収入を上げ、産業を国内回帰させ雇用増につなげる

4.政策金利を下げることで金利全体を押し下げ、設備投資や住宅投資を増やし雇用増につなげる

   減税による経済活性化の大胆な経済政策を最初に実行したのは80年代のレーガン大統領で、その政策をレーガノミクスと呼びますが、トランポノミクスもアベノミクスもそれをもじったものです。

   アメリカの経済学者は2年半を経たトランプ政権の評価を、財政検証などを含め数字面で行っています。その検証結果によると、経済はオバマ時代の継続で依然として好調を持続し雇用も強いが、税収は思惑とは違い全く上がらず、財政赤字は大きく増加。自らをタックスマンと呼ぶトランプによる関税上げでも貿易赤字は増え続け、アメリカから製造業は逃げ続けています。

  経済メカニズを知らない、あるいは知っていても平気でウソをつくトランプは「関税は中国が払う」と言い続けていますが、そんなことがあろうはずもなく、関税上げによる輸入価格の上昇分は、すべてアメリカの消費者と業界が払っています。「壁の建設費はメキシコに払わせる」と同じたぐいの稚拙なウソです。そしてトランプが重視する製造業界の先行き見通しインデックスは18年の4月をピークに下降の一途をたどっています。

  つまり私の見るところアメリカの株高はリスクに目をつぶり、緩和マネーに支えられた「カネ余りによるあだ花」を咲かせているのが実態だということです。

 

  今回はここまで。次回に続きます。

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