旅行から戻り、ブログに復帰します。今回は秋田県の大館市、十和田湖、奥入瀬渓流をめぐる東北地方の旅でした。東京にいると毎日トランプのたわごと、日大とモリカケ問題でうんざりですが、こうしたニュースから離れて大自然の中できれいな空気をたくさん吸ってすっかりデトックスし、リフレッシュすることができました。
旅の様子は別の機会に譲り、今回は先週から続くトランプによる、「米朝会談はやめた」、「やっぱりやる」、という言葉に世界がほんろうされたことにコメントします。これは彼独特の「ディール」という言われる手法だと言われます。今回は北朝鮮がトランプに翻弄され、おおいに慌ててリカバリーショットを打ち、どうやら会談にはこぎつけそうです。こうしたトランプの行動を、彼について書かれた全米ベストセラー記録を塗り替えた本、「炎と怒り」による分析を交えて書いてみたいと思います。
そもそも「炎と怒り」というタイトルですが、これは北朝鮮がミサイル発射や核実験を繰り返しているさなかに北朝鮮に向けてトランプの言った「世界が見たこともない炎と怒りに直面するだろう」という先制攻撃をにおわせる言葉から取ったものです。しかし私にはそれだけでなく、マスコミや批評家のトランプに対する批判に対する彼の「日常的炎と怒り」に満ち溢れた言動を表現したタイトルだと思えます。
この本は500ページ近くあるため、ゴールデン・ウィーク中にかなりの時間を取って読んだのですが、実はアメリカの事情を相当程度知る人でないと、読んでも面白さを感じないのではないかと思いました。その理由の一つは我々日本人にとってなじみのない多くの人名や弁護士事務所名などが出てきて、その人物などの重要度をある程度知らないと面白みを感じることができないと思うためです。
日本に例えれば、出てくる名前は例えばマスコミ界の大御所、読売のナベツネやフジテレビグループの鹿内ファミリー、浜田松本・森総合法律事務所と言っても、アメリカ人は誰も知らないし、それ誰?という程度でしょう。ちょうどその逆にアメリカ人の大御所やセレブの名前が連続しても、我々日本人にはピンときません。
理由の二つ目は、内容がトランプ政権内の人事抗争問題がほとんどでそれに時事問題がからみますが、時間軸がすでに古くなってしまったため新鮮味が薄いのです。もちろん私が1月に出版された本を読んだのではなく、翻訳本を今頃読んでいるからかもしれません。かなりの割合がホワイトハウス内部、それも大統領府の一番奥深い部分に関する内部対立に関するもので、すでに首になった過去の人である首席戦略官であったバノンとトランプの娘夫婦クシュナー・イバンカとの確執などが話題の中心になっています。そして時期的にはバノンが首になった去年の8月までのことが書かれています。
ただ、トランプが毎日何をしているとか、どんな考えを持ち行動をする人間かという部分などは、好奇心を大いにそそり、それを満たしてくれました。そこでせっかくですので今後のトランプを見る参考にしていただくために、そうした暴露部分を面白おかしく紹介させていただきます。まずは著者のことから。
驚くのは著者のマイケル・ウォルフがホワイトハウスに出入りする許可を得て実際に出入りしていたジャーナリストであるということ。その理由はトランプにある程度気に入られていたからです。彼が過去にメディア王であるルパート・マードックの伝記を書き、人物像を好意的に書いていて、トランプも将来マードックのように書いてほしいと思い、出入りを許していたのかもしれません。これは私の推測です。そのため著者はトランプの側近たちへの接触も許され、特にあの曲者である首席戦略官バノンと通じていて、彼のオフィスにも出入りして情報を入れていたというのです。
大富豪好きなトランプはマードックを尊敬し陰のアドバイザーとしてホワイトハウスから毎晩のように何時間も電話してアドバイスをうけていたという事実には驚きました。彼は毎日のようにマックのハンバーガーを食べ、夜8時にはベッドルームに入り、自分で持ち込んだなんと3台ものテレビから自分に関する報道をチェックします。そして気に入らないと朝の4時くらいから「フェークニュースだ!」とツイッター攻撃を始めるのです。しかし寝る前にもうひとつやることは、ほんの少数の友人に毎晩2-3時間も電話をするのです。そのなかでももっとも頻繁に話すのがこのマードックです。
すでに87歳のマードックはオーストラリアのメディア経営者からアメリカに進出し、ニューズ・コーポレーションを所有する世界有数のメディア王になった人間です。トランプのお気に入りであるフォックスニュースは彼の傘下にあり、トランプをあからさまに支持しています。彼の傘下にある主なメディアを上げますと、21世紀フォックス、ウォールストリートジャーナルを傘下に持つダウ・ジョーンズ社、英タイムズをはじめ数多くのイギリス、オーストラリアの新聞・雑誌などを所有しています。もっとも21世紀フォックスは16年にディズニーに6兆円弱で売却しています。それだけでも彼の富豪ぶりがわかりますし、トランプ同様4回も結婚していますので、とても気が合うのでしょう。結婚相手の一人はミック・ジャガーの元妻さんというセレブ好き。しかし政治信条は一貫せず、若い時は左翼系で今は保守系、それも極端なリバタリアンで、イスラエル支持者だと言われていますが、08年の大統領予備選ではヒラリーを支持しました。要は勝馬に乗ろうとする日和見だというのが彼に貼られたレッテルです。
そして本のかなりの部分を占める内部暴露の極めつけは、バノンとクシュナー・イバンカ夫妻が激しく対立し、お互いを蹴落とそうと醜い人事抗争に明け暮れたという部分です。あんなかわいい顔したイバンカちゃん、意外な側面が暴露されました。誰かが親父の悪口を言ったとか、気に入らない首席補佐官をイバンカに向かってこき下ろしたということが、どんどん暴露されていました。
大統領就任以来、数多くの側近とされる人材の首を切っていますが、ほとんどはその首切り以前にうわさ話が漏れていました。それは主要閣僚や娘夫婦までが内部抗争から意図的にリークすることがあったためです。例えば初代首席補佐官のプリーバスや首席戦略官のバノンが切られると言う噂はそのまま実現したし、トランプをバカだと国務長官ティラーソンが言ったという話はほぼすべて本当の話がリークしたのです。
ついでに追加すれば、著者はトランプ自身が毎日2-3時間も話す内容が、実は相手によりリークしていたとのこと。「漏洩は絶対に許さん」とさんざん言っていたトランプ自身が漏洩元とは、いかにもかわいいおしゃべりトランプちゃんのやりそうなことです。
もちろんそうした話が本によりすべて暴露されるなどということは、守秘義務の関係からありえないと言う前提に立って、漏洩者は著者に話したのですが、見事に裏切られました。
そのためこの本は暴露本としてアメリカでは大ベストセラーとなりました。しかも暴露された内容の信ぴょう性はかわいいトランプちゃんが保証してしまったのです。
何故か?
トランプは出版日の寸前に出版・販売差し止め請求を行ったので、真実が書かれていると保証したも同然になったのです。
なので私に、「かわいいトランプちゃんがまたやった」と揶揄されることになります。
つづく