ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

新刊「投資は米国債が一番」幻冬舎刊
「証券会社が売りたがらない米国債を買え」ダイヤモンド社刊
電子版も販売中

平成とはどんな時代だったか、その5(最終回)  新時代「令和」を幸せに生きるために

2019年04月01日 | 平成とはどんな時代だったか

  新元号が発表され、平成もあとひと月を切りましたので、私もこのシリーズを今回で終わりにします。

   最初の回で述べたのは、「平成とは昭和のバブルのツケを政府に付け回した時代だった」でした。多くの論者が成長の鈍化を「失われた30年だった」というような言葉で表していました。私はそれよりもっと深刻で、バブルの付け回しが行われ、「将来のリスクが増した」と分析しました。理由はバブル時代を懐かしむ政治家・経済人が踊らぬ経済を躍らせようと、あらん限りの無駄金を注ぎ込み、借金の山を築いたからです。

   私はこれまで何度も「そんなに無理してバブルの頂点を目指して何になるんだ。また破裂しまっせ」とこのブログでも言い続けてきました。成長至上主義には背を向け、実力どおりの経済で十分じゃないか、と思うからです。

   無駄金の規模がいくらになったかは、財政の累積赤字の増加額が示してくれます。巨額の赤字予算を組み、毎年それに補正予算を積み上げ続けたため、政府の累積赤字は平成元年の250兆円が1,300兆円に膨らみました。ということは、30年で1,050兆円も収入以上のカネを使ったということです。その額は年平均で35兆円にもなります。そしてその借金は新時代令和の若い世代が背負いこむことになります。 

  しかしそれだけではありません。2012年4月に就任した黒田日銀総裁は、バズーカ砲を構え、「2年で、2倍の資金供給を行い、2%の物価上昇を実現する」とぶっ放したのですが、実はバズーカの砲口は真上に向かっていて、今砲弾が頭上に落下しつつあります。2年どころかその後6年も連続で砲弾を打ち続け、いよいよ落下速度を増して頭上に迫りつつあるのが現状です。彼は国債を460兆円も買うばかりでなく、日本株をも買い続け、すでに24兆円程度になっています。

  それでも彼は進軍ラッパを吹き続けざるをえません。お気の毒としか言いようがないのですが、砲弾は黒田氏に降り注ぐだけでなく、日本人全員にあまねく降り注ぎます。それをどう防ぐか、それが最終回のテーマです。

   対処案は8年前と全く変わりません。私がネット上のプライベートなサイバーサロンに初めて投稿したのが2010年の夏ごろ、「日本の財政、日本国債は大丈夫か」というのがテーマでした。私の見立ては「ダメでしょう」でした。そしてその年の10月頃にリスクの回避策として提案したのが、世界で一番安全な金融資産である「米国債への投資」でした。そうした提言のまとめが約1年後、11年8月にダイヤモンド社から出版された「証券会社が売りたがらない米国債を買え」です。

   ではそれを真に受けて投資を実行していると今どうなっているかを数字で検証します。出版当時の10年物と30年物の米国債の利率は10年が3.12%、30年債が4.23%で、円レートは81円でした。その後もし極端な円高になっていったとしても、10年債では1ドル65円までは損しない。30年債では1ドル26円まで耐えられるという計算結果を著書でお示ししました。それでも実際に購入されたのはサロンのメンバーの方のうちたった数%だと思われます。その後の私の講演会でのアンケート調査から推測される結果です。

   ではその数%の方の現在の微笑み方をご覧に入れます。2011年8月、10年債あるいは30年債に100万円投資したとすると、

 ・10年債の金利累計は為替差益を含めて約26万円、プラス元本の値上がり益が40万円ですので、合計66万円の利益。率では66%です。

・30年債の金利累計は為替差益を含めて約36万円、プラス元本の値上がり益が70万円ですので、合計106万円の利益。2倍以上です。

  このシミュレーションは投資額100万円で計算していますが、多くの方は100万円よりもかなりの額を投資されていることでしょう。だとすると微笑みの域を超え、満面の笑みですね。これが長期保有の債券の威力です。

   でも実は米国債に投資をされた方々は、得したから満面の笑みを浮かべているかと申しますと、そうではありません。実際に投資をされた方々の声がこのブログに届けられているのですが、声の内容はお陰様で「ストレスフリーの幸せな生活に入れた」という声なのです。それもどの方も例外がないことに驚きます。

   平成時代の付け回しによるひどい将来見通しを憂いている方にとって、米国債投資は駆け込み寺以上の「幸せな国への入り口」だったのです。では実際に寄せられた声を私のブログの読者のコメント欄から引用します。お名前はイニシャルにしてあります。

まずはSTさんから14年9月に寄せられた声です。

 引用

林さんのご本やブログに謳われている「ストレスフリー投資」に幸運にも出会えて、人生の過ごし方が本当に変わりました!決して大げさな言い回しでなく、「お金の心配」に向けられていた意識が、毎日の生活の中で見つける細やかなりとも豊かな「幸せ」にちゃんと向くようになり、生き方も幸福度も本当にアップしました。

   20余年の投資人生は、訳もわからず証券会社の担当者と私の欲の二人三脚で、一瞬儲かったらすぐに大損。すると担当者はすげ替えら、損は損切りで気持ちを無理やり整理するさんざんな結果でした。

   確かに若い頃は投資=リスク=利益と思って、私の中の欲に押され、自分で理論的にも数値的にも理解できていない投資先に、無謀にもお金を向けていました。でも、もっと早く林さんに出会えていたら、理解→自信→運用→利益と来る間、ストレスフリーで違った時間の過ごし方が出来たと思います。

  今はおかげさまで私の欲も小さくなり、残存寿命と持っているお金の帳尻さえ合えばそれでいいし、長い田舎暮らしで少しずつ創ってきた快適で安心な環境の中で暮らしを楽しむことが嬉しくって。そこにはもうお金に苦しむ私はいません。今はこの国の愚かな治世者や、いつ来るとも知れないまさかの天変地異に対して、増やすのではなく、今あるお金を守るべく運用したい。それは米国債だと思っています。」

引用終わり

   私にとってとてもありがたい言葉です。今後もこのように幸せになれる方を増やしていくのが私の使命だと思うきっかけになりました。別の方からの投稿も見てみましょう。

引用

  私は70代にさしかかり公務員だった夫と二人暮らしです。2013年このブログに出会い、当時少し持っていた株をすべて売却しました。その時の身軽さ、爽快感は格別なものでした。また円のリスクは感じていたので、同時にドルを購入しました。この間の円安で出た利益で家のミニミニ改修をしたり、家族旅行にも行くことができました。その意味で2013年は私にとっては「投資・資産運用」の転機になりました。感謝申し上げます。

   林様は以前から「70歳を超えたら資産運用などするべきではない」と言われておられたのでこれはしっかり守っております。というか、我が家の場合は貯蓄の取り崩しをしているからです。今日は私(持たざる高齢者)の本音を書いてみます。

  友人達(高齢者)との楽しいおしゃべりの間に出てくる話題は「この先、いつまで寿命があるかもわからないものね。それまでやっていけるかしら」という長生きすることへの不安であり、ホント切ない話です。

  子供に残すより前に自分達の命の終わりにちょうどプラマイナスゼロになることができれば、という私のような高齢者もこのサイトを見ておりますことをちょっとお話しさせて頂きました。いつも林様の文章は楽しく、また道しるべのような気持ちで拝見しております。今後もご教授をお願いいたします。

引用終わり

   UZさんは米国債を買われてもいないのに、この様にコメントされています。それに対する私の返信コメントも、一般の高齢の方にも参考になると思いますので、引用することにします。

 引用

  UZさん、不安をたくさん抱えている高齢者を代表するご意見、ありがとうございます。ご自分は十分な貯えがないと思われている方が、『とてもじゃないが不安で使えない』、よくわかりますね。私がお金は残さず死ぬまでに全部使ってしまえというのは、もちろん貯えの十分な方へのアドバイスです。

  ただし一方で私は、『70歳を超えたら運用などするべきでない』、とも言っています。これは貯えの多寡によりません。たくさんありすぎて、相場で減らしても十二分に遺産は残るというのであれば別の話ですが。

  ブログのタイトルでもあり、私が最も言いたいことは「ストレスフリーの資産運用」です。高齢の方であればあるほど、特に70歳過ぎてストレスを感じながらの運用に果たして意味があるでしょうか。

  米国債は安全です。しかし為替のリスクは大いにあります。たまたま著書を出版して以来円安に動いているので、お読みになったみなさんはかなり安心していらっしゃると思います。しかし相手は為替相場です。円高になることは大いにありえます。ファンダメンタルズにかかわらず、突然の大幅円高もあるのです。97年には日本中が金融危機であたふたしていましたが、その中で突然ドル円レートが79円台に突入しました。そうしたことが今後絶対にないとは言いきれないのが、投資です。それでも長期保有をしていれば、これまで金利収入は為替変動に勝ち続けてきました。

引用終わり

  UZさんは私のブログでのアドバイスをそのまま実行し、ドル預金の他に何も投資をしていらっしゃらないのですが、幸せな暮らしを実現でき、感謝されています。

  これに対して50歳くらいのNKさんからご自分の将来も見据えて、以下の意見が寄せられました。

引用

林さん、皆さん、 こんにちは。

 高齢者の資産運用については、結局のところ各々の望む人生の在りかたと現実的算用をすり合わせて導き出すものかと思います。

 自分の余命期間に財が足りないようなら、投資をするか、人生の在りかた、つまり幸せの求めかたを変えるしかありません。これは自分次第で、結構どうにもなるものです。あくまでお金は幸せの道具ですから、使ってなんぼの価値。ただ持っているだけで、漠然とした不安に対する安心を得ているだけなら、本末転倒ですね。モヤッとした将来図をハッキリしたかたちに描けると、どんな老後なら自分は受け入れられるかが分かるように思います。その上で余りがあれば使えばいいし、無ければ無いなりに生きます。

心配を背負い込んで、お金に翻弄されるような老後だけにはしないようにと自分に言い聞かせています。もうそれだけはうんざり!そんな不毛な時間はもう残っていません…はい。

 引用終わり

  この投稿に対して私は以下のように意見を述べました。

 引用

「お金は幸せの道具ですから、使ってなんぼの価値」と書かれているNKさんのご意見に私も大賛成です。老後の資金はしっかり増やさないといけないというのは、証券会社の常套句です。増やそうとすればするほどリスクをとることになりストレスを溜め、果ては投資で損失を抱え、大事な老後の資金を失う可能性があります。それよりもUZさんやNKさんのように手元の資金と相談しながら無理のない生活をすることで余計なストレスから解放されることこそ、人生を幸せに送る秘訣だと思います。

引用終わり

  これらはほんの一部の方のご意見ですが、その他にも多くの方々が同じような趣旨でブログのコメント欄に投稿をされています。そうした応援投稿こそ私が2冊目の本を書こうと思ったきっかけを作ってくれました。

   現在最終段階にある新たな著書の内容をかいつまんで申し上げれば、令和時代の日本財政の巨大なリスクに備える有力な手段は米国債への投資であること。そして米国債への投資は単なる投資と違い、大きな安心感を得られ、「ストレスフリーの幸せ投資」でもあることをお伝えしています。

  なお、幸せ投資クラブは入会随時、そして入会金・年会費は無料です(笑)。

 以上、新時代「令和」を幸せに生きるために、でした。

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平成とはどんな時代だったか その3

2019年02月23日 | 平成とはどんな時代だったか

 合意なきBREXITへのカウントダウンが始まっています。イギリス国会はひたすら小田原評定を続けるだけでなすすべもなく、メイ首相はむしろ時間切れを狙って最後の賭けに出ているようにしか見えません。つまり「迫りくる悪夢を避けるためには、私に賛成しなさい」という破れかぶれの戦略です。それが成立したところでEU側は再交渉には応じないとしているので全く無意味です。

  敵が目の前に迫っているのに小田原城内で評定を続ける北条氏そっくりです。メイ首相はEU側も混乱を避けるためギリギリで妥協してくれるのではないかというはかない夢を追っていますが、ありえません。せいぜい期限の引き延ばしでしょう。

   ホンダはイギリスからの撤退を発表しました。社長は「BREXITとは関係ない決断だ」などと見え透いたウソを言っていますが、そんな言い訳をしたところで得るものがあるとは思えません。ポピュリストの煽りに乗った愚かな国のツケがどうなるか、高見の見物することにしましょう。

 

さて「平成とはどんな時代だった」かの続きです。

   その1では、

「平成の30年とはバブルのツケを政府に付け替えた30年だった」と記しました。その2では、

 「ツケの規模は平成の30年間で政府の累積債務が250兆円から1,300兆円と1,050兆円増加した」ことでひどさが理解されることを示しました。

  さらに「アベノミクスの6年間、戦後最長の景気回復を記録したと喜ぶが、裏で200兆円も赤字を増やしたから」で、いずれそのツケをまとめて払うことになると数字で示しました。

   一方最近になり異次元緩和を手放しで礼賛していたエコノミストたちもほぼ全員が、さすがに「このままではいかん、幕引き方法をさぐろう」と言いだしています。

 時すでに遅し!

   景気の回復局面でこそ実行しなくてはいけない異次元緩和の撤収を少しもせずに、さらに戦線を拡大して伸び切り、兵站はもう追い付きません。オリンピック景気なるものは今がすでに絶頂で、あとは坂を下るだけです。

  日銀のクロちゃんは世界景気のスローダウンが見込まれているのに、依然として黒田節をうなり続けています。うなっていることはこれまでと変わらず、「打つ手はいくらでもある」

   金利をゼロからマイナスにするほど日本国債を買いまくったため、ついに国債も買えるタマがなくなりつつあります。株を買いまくればリスクを膨らませるだけだと言われているのに買い続ける。ではいったいあとは何の手を打つというのでしょう。ヤケ酒を飲んでゼロ戦による特攻ですか?自爆テロはコンビニだけでたくさんですよ!(笑)。

   では5月からの新元号の時代、今後の日本の危機に我々はどう対処したらよいのでしょう。打つ手はもちろんたった一つ。世界がひっくり返ってもたった一つだけ買われる超安全資産、みなさんの予想通り、

 「米国債を買え!」 です。

   日本の財政金融政策に対する疑念が膨れあがると、すべての日本の資産は売られます。きっかけが何になるかは予想しづらいのですが、私は日銀政策への疑念が大きいと思っています。

  その一つはやらなくてもいい株買いです。日本国債の買い入れは停止すればいずれ保有額は減ります。債券は償還を迎えるからです。しかし株式は売らない限り減りません。しかも値下がりが始まると損失が膨らみ、日銀までが計算上債務超過に陥る可能性があるのです。日銀が保有する上場投資信託(ETF)は昨年末時点で簿価は23.5兆円。それに対して自己資本は8.4兆円しかないのですから、値下がりによるインパクトはかなり大きいのです。もちろんそればかりでなく、日本国債の保有高は444兆円もありので、ちょっとした金利上昇による価格下落で自己資本は吹き飛びます。

   海外勢は日本円、日本株、日本国債、など売りやすい金融資産をはじめ、不動産を含む売りにくい資産まで手を伸ばします。特に金融資産は現物とともに先物市場での売りも可能なため、持たなくとも売れるカラ売りが可能です。

   すると資産価格のマイナス効果だけではすみません。円安は物価高を招きますので、悪性インフレにつながります。もちろんそうした日本売りが本格化すると、個人の金融資産1,800兆円のうち半分近くを占める預貯金も防衛に動き出します。それが円売りを加速させるのは間違いありません。

   こうした見方はすでに多くの方が気が付いていて、先に手を打とうとされる方が多くなっています。私がサイバーサロンへの投稿をまとめた著書、「証券会社が売りたがらない米国債を買え」を2011年に出版して間もなく、米国債を買いたいがどうしたらよいか、という問い合わせを数多く受けました。しかし実際に買った方はとても少なく、例えばサイバーサロンのメンバーで私の講演会に出席された方でも1割程度だったと記憶しています。きっとその方々は今頃密かにほくそえんでいらっしゃるでしょう。

  すでに申し上げているように、私は現在2冊目の著書を書き進めていて最終段階にいます。ここで初めて披露させていただきますが、タイトル案は「ストレスフリーの幸せ投資」です。

  こう書けば前の著書やブログを知らない方からは当然、

「ストレスフリーの投資なんてあるの?」

「幸せ投資なんてありえないでしょ」

という疑問をぶつけられます。

   でも回答はもちろん、

「あります!」 (キッパリ)

   その証拠はこのブログの読者のみなさんからの投稿です。しかも驚くのは、実際に投資を開始していなくともブログにたどり着いたとたんに安ど感から幸せを感じ、投稿をしていただいています。ブログの読者の方々の多くは私の著書「証券会社が売りたがらない米国債を買え」を読んでたどりつくか、あるいは米国債投資というキーワードでたどりついた方々です。

   ちなみに印刷書籍としての出版は第2版をもって終了していますが、今は電子書籍で毎年数百冊程度売れ続けています。売れない作家にとって電子書籍はとてもありがたい存在です(笑)。

   次回は幸せになられたブログ読者の方々の実例投稿をお目にかけます。すでにコメント欄にありますが、再度確認してみてください。

 

  ここで読者の方々にお願いです。私は2冊目の著書でいままでいただいた多くのコメントの中から特に今回の著書の趣旨に合い、参考になる経験談などを少数ですが引用させていただきます。もちろんお名前はたとえハンドルネームであっても伏せて、イニシャルだけ表示するようにいたします。それでも著書への引用はいやだという方がいらしたら、どうぞ遠慮なく申し出てください。その方のコメントは著書では引用しないようにしますので。

 

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平成とはどんな時代だったか その2

2019年02月10日 | 平成とはどんな時代だったか

 前回その1で述べたことは、平成の30年間に日本のGDPはわずか1.4倍にしかならなかったが、同時期にアメリカは4倍、ドイツも3倍の経済規模になり、日本だけが置いてきぼりを食ったことを数字で示しました。

   そして「平成の30年とは昭和のバブルのツケを政府に付け替えた30年だった」という私なりの分析結果を示しました。

   その付け替えの結果は政府財政の赤字が平成初年度の250兆円から平成30年度には1,300兆円にもなってしまったことに象徴されるとも指摘しました。

   この分析の重要点は、次の新たな時代に我々はどう向き合ったらよいかの道筋を示している点です。平成でバブルの後始末が終わったというだけの認識であれば、あたかもツケは払い終わりめでたしめでたしということですが、私の分析ではそうは問屋が卸さないとなります。つまりこれからの新たな時代はいよいよ政府のツケ1,300兆円をみんなで始末をつけなければいけないのです。

  その第一歩はわずか2%の消費増税ですが、これによる増収額は約5.6兆円と見込まれます。しかしご存知のように景気対策のため消費税の還元策で2兆円が消えますので、ネットでは3.6兆円しか増税になりません。それでGDPの240%にもなる1,300兆円を返済するには単純計算で361年かかります。

   もちろん借金はすべて返し終わる必要はありません。どの会社もそうであるように、リーズナブルな額であれば、それを保ったまま経営は続けられます。国家の場合どの程度までなら大丈夫かは、国の発展段階や将来の成長力にもよりますが、例えば成熟国の多いEUの加入条件はGDPの60%以下です。これはちょっと厳しいので、先進国のざっくりとした平均的割合である100%としましょう。とすると現時点でのGDPは名目で560兆円程度なので、

 

1,300兆円 ― 560兆円=740兆円 

 

740兆円も借金を減らす必要があります。740兆円を3.6兆円で割ると205年です。笑うしかない期間です。

   でもその前に、もっと笑っちゃうことがあります。それは来年度予算の国債発行予定額は32兆円で、またその分累積赤字が増えるので、2%の増税分5.6兆円など焼け石に水にもならないのです。つまり消費増税などで累積赤字が減ることはありえないというのが、日本という超赤字国の実態です。

  となれば、アベノミクスとは累積赤字をものともせずに突き進む「付け回し政策だ」ということを、しっかりと見据える必要があります。累積赤字の数字を見ますと、安倍政権の6年間だけで200兆円も増加し、GDP比で35%も増加。これが「景気拡大は戦後最長の62か月になった」の裏の姿です。

  数字ばかり恐縮ですが、もう少しだけ。みなさんの家計の実態を俯瞰しておきましょう。

   日銀の資金循環統計によれば、日本の家計は18年9月末で金融資産を1,860兆円も保有しています。このうち現預金が970兆円、保険・年金525兆円、株式209兆円という内訳です。これだけ現預金を保有していても家計はそれを使おうとせず毎年増加する一方です。何故か?

  消費もしないし投資もしないのは、将来政府が破綻に瀕して年金を予定通りもらえなくなったり、介護・健康保険が十分に払われなくなったりするだろうと予見しているからです。財政破綻はないという論者は、政府の債務は1,300兆円あるが、家計の貯蓄が1,860兆円あるから大丈夫と言います。しかしその主張は、みなさんに貯蓄を政府に差し出せと言っているに等しい。

   そのような論者に私は言ってあげます、「だれが政府に自分のカネなんか差し出すもんか!」と。

   ではその付け払いはどうされていくのでしょうか。政府が自らに徳政令を出し、預貯金を召し上げますか?それともおバカな大統領をいただくベネズエラのように160万パーセントのインフレにしますか?

  そうした極端な手は取れません。そのかわり消費税をじわじわと増税し、健康保険・介護保険料をじわじわと上げ、公共料金もじわじわと上げ、医療・介護をはじめ公共サービスを減らし、年金をじわじわと減らしていく。その証拠はすでに家計の可処分所得の減少として現れています。可処分所得とは所得全体から天引きされる社会保険料などを差し引いた自分で使える額を表します。

  2月5日のNHKニュースのサイトから引用します。

「総務省の「家計調査」で2人以上の勤労者世帯の自由に使えるお金、「可処分所得」の推移を見てみます。これまで景気回復の最長記録だった「いざなみ景気」の終盤にあたる平成19年にはひと月平均44万2000円余りでしたが、平成29はひと月平均43万4000円余りと、わずかに減少しています。これに対して「社会保険料」の負担は、平成19年がひと月平均4万7000円程度なのに対し、平成29年はひと月平均でおよそ5万6000円まで増えています。」

   10年かかってちょっとだけ増えた所得も、社会保険料の増加で可処分所得は減少しているのが家計の実態です。これでは消費や投資に励めるはずはありません。

  一方でこのところ国会で大問題となっている厚労省による統計の不正問題があります。しかも一つこうしたことが起こるとイモヅル式にどんどん統計不正の事実が出てきてしまう。それもまたアベノミクスの結果偽装であり、今後の政策の方向性をゆがめる重大な事象ではあります。しかし私に言わせればたった6年で200兆円も赤字を積みあげることに比べればその程度のことは枝葉末節にしか見えません。

   この先いよいよ我々団塊の世代が70歳代に突入し、さらに5年後には全員が後期高齢者に仲間入りすることになり、医療費・介護費が爆発するのが見えています。もちろんその段階ではさすがに高齢者世帯では貯蓄の取り崩しが始まり、「財政は破綻しない論者」も根拠の一つを失うことになります。

 

 数字ばかりが並んでしまいましたので、今回はこの程度にとどめます。次回はそうした日本国の暗い行き先をどうしたら明るく生きることができるか、私の提案を差し上げることにします。

つづく

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平成とはどんな時代だったのか その1

2019年02月05日 | 平成とはどんな時代だったか

  平成もあと3か月ですね。こうして心の準備をしながら天皇の退位と元号が変わるのを待つというのはとても珍しいことなのでしょうが、今後はけっこうあるかもしれませんね。

   みなさんにとって平成はその名の通り平静な時代でしたか。私にとっては激動の時代でした。平成元年にJALをやめる決意をして、2年からアメリカの投資銀行ソロモンブラザーズに転職し約10年在籍。99年にイギリス系の投資会社に転職。投資会社では自らが買い手となり文字通りM&Aをしていました。文字通りとは、買収=Acquisition をして、自社グループに吸収もしくは合併=Mergerさせるという仕事です。サラリーマンにとって転職は激動そのものですが、外資系にしては20年で1回しか転職をしていないため、よく「めずらしいね」と言われます。

  年齢的には30歳代までがJAL、40歳代が投資銀行、50歳代が投資会社。そして平成最後の10年である60歳代は天職を得たりと、資産運用アドバイザーとして著述に励む充実の日々を楽しく過ごしています。でも人から見ればリタイアしたおやじが晴耕雨読ならぬ晴れればゴルフ、降れば稼ぎの悪い物書きと見えるにちがいありません(笑)。本人としてはそれでまことにけっこうなのですが、家内からは「元気なんだからもっとなんかして稼いだら」と言われています(笑)。

  上の記述でも元号と西暦がミックスしてしまいました。私自身、元号ははっきり言って面倒なので自ら進んで使うことはしません。公的な書類を記入する時や指定されている時に、しかたなく使用するくらいです。西暦の方が年齢などの計算が簡単なのが理由で、西暦を元号に変えたり、元号を西暦に変換するのはとても面倒です。だからと言って廃止すべきだとまで言うつもりはありませんが、なるべく西暦にしてほしいと希望だけ出しておきます。

   平成の最後に、「景気拡大は戦後最長の62か月になった」と発表されました。しかし実態としてはよく言われるように「実感なき景気回復」という表現が的を射ているように思います。

   年末年始には平成がどんな時代だったかのテーマで様々なテレビ番組が放映されていました。その多くが「失われた30年だった」とか「昭和のバブルの後始末の時代だった」というものでした。それは先ほどの実感なき景気回復に通ずるものです。

   その時に流されるお決まりの映像は証券取引所内の場立ちの混雑で市場の活況を映すバブル時代から始まり、ジュリアナのお立ち台で扇子を持って踊る姿が映り、最後は山一の社長の「悪いのは私で、社員は悪くありませんから!」で終わる映像で、何度となく流されました。

   映像内容はともかく、大事な部分は平成の30年間を失われた30年と呼び、「平成とは、昭和のバブルの後始末だった」と結論付けるストーリーです。私はその議論は映像と同じく非常に表面的で、誰もがわかっていることの繰り返しにすぎないとしか思えません。では本当はこの30年をどうとらえるべきなのでしょうか。

 私の見解は、

 「平成の30年とはバブルのツケを政府に付け替えた30年だった」というものです。

  そもそもバブルの後始末はどう行われたのでしょう。バブッたのは圧倒的に株式・不動産関連の企業と、それをうしろでファイナンスした銀行をはじめとする金融業界です。株式・不動産関連企業とは正確な言い方ではなく、それとは全く関係のない製造業や小売業からサービス業までが、株式投資や不動産投資にのめりこみました。それを煽るがごとく貸し付けでバックアップしたのが中小から大手、政府系までを含むすべての金融機関でした。

   では投資に当てられ返済不能となった巨額の負債はどうなったのでしょう。処理金額が大きかったのは企業・金融機関などの損金処理です。山一のようにインチキな飛ばしは処理とは言えません。企業も金融機関も会計上の損金処理を長く続けることで体力を消耗し、中小企業のなかには最近まで引きずってしまった企業もあるくらいです。

   私の分析は、後始末に実は日本政府と日銀が財政支出と異次元緩和で役割を果たしたというものです。その金額がどの程度かと言うと、平成元年の日本政府の累積赤字は250兆円くらいで、現在はそれが1,300兆円に膨らんでいます。つまり政府による身の丈以上の支出はその間だけで1,050兆円にのぼっています。

  その間30年のGDPは名目で88年の393兆円から557兆円と164兆円しか増えていません。年率ではわずか1.17%の成長です。ドーピングとしての1,050兆円は、ほとんど無駄打ちだったといえるかもしれませんし、もっと言えば「その間の成長などドーピング分でしかなかった」と言えなくもないのです。

  ちなみにアメリカを同年で比較しますと、88年の5,236兆ドルが20,513兆ドルに約4倍の増加で、成長率は年に4.66%でした。驚くべき差がついています。

   普通だったら赤字国債の莫大な発行はどこかで金利の上昇を招くのですが、それを日銀が日銀法に違反して異次元緩和でバックファイナンスしました。政府と日銀による違法行為が金利低下を招き、政府をいい気にさせていることを決して忘れてはいけません。

   ドイツのように財政収支が均衡している国では収入の範囲でしか国は金を使いません。それでも88年から18年の30年間でドイツのGDPはちょうど3倍になっています。日本は30年で1,050兆円も収入よりオーバーして政府が消費し投資しドーピングとして民間に注ぎこみました。その分民間は企業もそこで働く消費者も潤ったためバブルのツケをおおかた払い終わりました。結果として政府は1,050兆円も累積債務を増やしたのですから最初に申し上げたように、

 

「平成の30年とはバブルのツケを政府に付け替えた30年だった」というわけです。

 つづく

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