ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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つれづれなるままに、松方コレクション展と那須の別荘

2019年08月21日 | エッセイ

  暑い夏の毎日を別荘で過ごされているうらやましい方もいらっしゃると思いますが、そんな余裕もない私はつれづれなるままにクーラーに浸りながら、エッセイを書いてみました。

  少し涼しい日を選んで、上野の西洋美術館で松方コレクション展を見てきました。西洋美術館自体がもともと松方コレクション主体の美術館ですので、なんでいまさらその展覧会を開いたのかと申しますと、開館60周年を迎えた記念として松方コレクション展を催したとのことです。

   西洋美術館には何度となく通い、多くの展覧会を見てきました。最初は64年オリンピックの年に来た「ミロのビーナス展」です。中学校の行事として連れて行ってもらったので、長蛇の列には並ばなくて済んだのですが、とにかく人が多くて像の前で立ち止まることもままならず、トコロテンのように押し出されたのを覚えています。幸いビーナス像はルーブルでの展示同様高い位置に置かれていたので、十分に見ることができました。その神々しさに心を打たれたのをいまでもよく覚えています。

  西洋美術館は16年に世界遺産に登録されました。私は正直申し上げて、世界遺産に値するか、若干の疑問を感じています。最近は全般的に世界遺産が安売りされ過ぎているように感じます。

   しかし展覧会は日本を代表する美術館らしさをいかんなく感じさせてくれました。松方コレクションの歴史はNHKの日曜美術館をはじめ多くのテレビ番組などで取り上げられているので繰り返しません。よくご存じない方のために、以下に展覧会概要をHPから引用します。

 「神戸の川崎造船所(現・川崎重工業株式会社)を率いた松方幸次郎(1866(慶応元年12月1日)-1950)は、第一次世界大戦による船舶需要を背景に事業を拡大しつつ、1916-1927年頃のロンドンやパリで大量の美術品を買い集めます。当時の松方のコレクションは、モネやゴーガン、ゴッホからロダンの彫刻、近代イギリス絵画、中世の板絵、タペストリーまで多様な時代・地域・ジャンルからなり、日本のために買い戻した浮世絵約8000点も加えれば1万点に及ぶ規模でした。

しかし1927年、昭和金融恐慌のあおりで造船所は経営破綻に陥り、コレクションは流転の運命をたどります。日本に到着していた作品群は売り立てられ、ヨーロッパに残されていた作品も一部はロンドンの倉庫火災で焼失、さらに他の一部は第二次世界大戦末期のパリでフランス政府に接収されました。戦後、フランスから日本へ寄贈返還された375点とともに、1959年、国立西洋美術館が誕生したとき、ようやく松方コレクションは安住の地を見出したのです。」

   まことに数奇な運命をたどったコレクションです。できれば浮世絵を除いても約2千点にもなるコレクション全体を見てみたかったと思います。それと最後の記述はちょっと違いますね。

>1959年、国立西洋美術館が誕生したとき、ようやく松方コレクションは安住の地を見出したのです。

  そうではなく、フランス政府に変換交渉し、フランス側が返還の条件として出したのが、「コレクションを散逸させないこと」でした。そこで収蔵する美術館をわざわざ作り、ここで全部引き取るので返還してくれ、と交渉したのです。

   私は美術の専門家ではないので絵画のことはともかく、このコレクションの元々のオーナーであった松方一族について書くことにします。松方幸次郎は明治の元勲松方正義の息子で、兄弟には松方三郎がいます。松方正義は首相や大蔵卿を何度も経験していて、インフレを抑えるため「松方デフレ」を起こしたことで有名です。私は偶然、三郎氏の息子である長男の峰雄さん、次男の富士夫さんと知己を得ていました。素晴らしいお名前の兄弟は、きっと父の三郎がエベレストへの登山隊の隊長だったほどのアルピニストだったため付けたお名前だろうと想像します。そのとき1970年、日本人初登頂に成功したのが故植村直己氏です。

   峰雄さんは松方家の4代当主で、私がJALの本社にいた80年代、東京支店長をされていました。絵にかいたような親分肌の方で、百名にもなる対代理店セールス部隊を率いていました。私は彼の部下のセールス部長と販売価格を巡って、本社側代表として攻防を繰りひろげていたのですが、支店長から「若造、それじゃ売れん!」と一喝され、おずおずと引き下がったのを覚えています(笑)。松方支店長はとても優しい方で、その後私を食事に誘ってくれました。

   次男の富士夫さんは現役時代にトヨタ自動車に務めていらして、これまた偶然にもご近所さんかつゴルフ仲間でした。90年代に上野毛に住んでいたころ、お隣が高倉健さんの家だったというお話を以前しましたが、3軒先には富士夫さんが住んでいました。

  そしてよく行くゴルフ練習場で頻繁に富士夫さんとお会いし、会話する仲でした。富士夫さんというお名前を伺い、「もしかして峰雄さんとはご兄弟ですか」と聞くと、「そうです」とのこと。当時富士夫さんは水戸の山奥にあるウィンザーパークというゴルフ場の支配人をされていて、時々そこでご一緒させていただいたり、学生時代の同期会コンペを開催させていただく機会がありました。

   富士夫さんはゴルフの他、夏には富士山登山をされていました。それも80歳を過ぎても、一シーズンに日帰りで10回ほど登られるのです。お名前もさることながら、さすがアルピニストの親譲りの健脚で、恐れ入る以外ありませんでした。

   そのご兄弟が大事にされていたのが、那須にある松方家の別荘萬歳閣で現在も存在し、昨年9月に放映された「ブラタモリ」では那須の代表的華族の別荘として紹介されていました。私は富士夫さんからゴルフ仲間とともに別荘泊バーベキュー付きのゴルフに誘われたのですが、残念ながら所用により参加することができませんでした。富士夫さんのお話では敷地が広大なため、戦国時代の合戦のロケ撮影では、しょっちゅう貸しているとのこと。隣の千本松牧場とどう区分けされているのかは知りません。ちなみに松方正義は千本松牧場も開墾したとのことで、その顛末をウィキベテアから引用します。

 「千本松牧場は那須野が原開拓の一環として1902年松方正義が那須開墾社から土地を譲り受けて開場。那須地方において、大型機械を投入する欧米式の農場経営の先駆的存在となった。牧場の名前の由来は、当時、周囲に多数自生していたアカマツ林から採られた。その後、1928年に蓬莱殖産株式会社(現:ホウライ株式会社)に移管する[1]太平洋戦争後に酪農へ進出。1964年ジンギスカン料理の提供を始めて観光牧場としての面を強め、1980年代以降、東北自動車道が延伸を続ける西那須野塩原インターチェンジの直近という立地条件から人気が高まった。体験型農業施設、飲食、農産物などの物販を行っているほか、遊具などを置いてる。熱気球乗馬馬車の体験、温泉入浴なども楽しめ、年間80〜90万人程度が訪れる。2000年代においても牧場としての事業は継続中であり、200haを超える牧草地と500頭を超える乳牛を有し、日産8tの生乳を生産している[2]。」

   千本松牧場の隣には私の大好きなゴルフ場、ホーライカントリー西那須野カントリーが並んでいます。とても美しい赤松林の中にあり、赤松とグリーンの緑のコントラストにはほれぼれします。ゴルファー用の宿泊施設があるため、必ず一泊2プレーを楽しむことにしています。そして食堂には毎日搾りたて牛乳が置いてあって、自由に飲むことができます。

   つれづれなるままに松方コレクションと那須のお話でした。

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トランポノリスクとアベノリスク その4 アメリカの金利低下

2019年08月16日 | トランポノリスクとアベノリスク

  嫌われ者トランプがまた人々が嫌がる政策を発表しました。それはアメリカに生息する絶滅危惧種の動植物を保護する地域指定を緩和する、つまり地域指定を狭め、保護をはずすとしたのです。日経ニュースを引用します。

 「トランプ米政権は12日、野生の動植物を保護する規制を緩和すると発表した。絶滅危惧種の指定にあたって迅速に対象を入れ替えられるようにするほか、経済的な影響も考慮に入れて判断するようにする。生息地域で資源開発を進めやすくなる効果があるとみられるが、環境保護団体は反発している。」

   要は経済を優先するということで、環境保護を経済の邪魔物とするトランプ政策の一環です。パリ協定からの離脱や石炭産業の復活政策は世界から非難を受けましたが、こうしたあまり目立たない面でも世界の動植物、ひいては人間への悪影響もかまわない。まさに彼の製造業寄り、そして不動産屋としての悪人ぶりをいかんなく発揮している政策です。


  さて、アメリカの長期金利が異常ともいえるほど低下し、短期金利と逆転して、おとといはNYダウが800ドルの暴落になりました。株の暴落を単に逆イールドの出現によるテクニカルな原因だとするような解説が見られます。逆イールドは景気後退のシグナルと言うわけです。しかし今回の暴落はそのシグナルだけが原因ではないと思います。このシリーズで私が述べているように株価も景気もすでにピークアウトしつつあるのが真の原因で、相場が高所恐怖症になっているのです。なのでちょっとしたインパクトが強調され暴落につながりやすくなっているのでしょう。

   この半年くらいの相場と解説を見ていると本末転倒の解説に相場が影響されることが多くなっていました。どういうことか。例えば景況指数の悪化が報告されたとします。すると株価が上昇することが多かったのです。そのとき市場寄りの御用エコノミストたちはこう解説します。

 

「今回の指標悪化により利下げのペースが早まる可能性があると見て、相場は上昇するだろう」

  実体経済の指標が悪いと利下げ期待で相場煽り、無理やり相場を支える。それを当然視するように相場は動く。私に言わせればそうした実態の悪さまでよい材料視するような動きはいずれ破綻を招く。悪材料もいい材料にしてしまうようなおかしな論理が横行する時は、崩壊は近いというシグナルだと見ておくべきなのです。


   一方債券市場では昨日のNYで10年物米国債のイールドは一瞬1.4%台に達し、1.5%台で終わりました。このところの金利低下は尋常ではありません。実は動かないようで動くのが米国債金利です。この3年の上下動をピークとボトムだけ拾ってみますと、

 

16年7月  1.37%

16年12月 2.59%

17年9月  2.05%

17年12月 2.57%

18年11月 3.24%

19年8月  1.53%

 

   半年で0.5%から1.2%くらい当たり前に動いています。特に昨年11月の3%台 から現在の1.53%に至る動きは、まさに国債価格の暴騰ともいえるほど大きな値動きです。債券の金利と価格は反比例しますので、金利低下とは価格の上昇です。今回の価格暴騰の背景にあるのは世界の株式相場の動揺で、その大きな原因はまさにトランプリスクの一つ米中貿易摩擦であり、さらに言えばここまで蓄積されたトランポノリスクのせいなのです。

  私は当然ながらこのレベルでの米国債投資はお勧めしません。むしろ同時進行しているドル安を利用してドルの仕込みをするべき時だと思います。そして将来の金利高を待つ。もしその間もドルを遊ばせていることが無駄だと思われる方は、短期債への投資をお勧めします。2・3年の範囲であれば償還前に金利が上昇した場合の価格下落もたいしたことはありません。

 

  またこのところトランプの陰であまり話題になっていない欧州が、次第に世界の足を引っ張るようになってきていることには注意が必要です。一つは昨日発表されたドイツのGDP成長率がわずか0.1%ですがマイナス領域に入りました。ドイツは健全な財政政策の下、経済は順調に推移していたのですが、若干ですが陰りが見えています。そしてジワリと効いてくるのが合意なき離脱に近づくイギリスです。BREXITの危険性を察知した海外企業はイギリスを脱出しつつあり、それが静かに加速しています。

   それに加えて中国のスローダウンが見込まれると、世界経済全体の成長率見通しが悪化することは間違いありません。

 

  しかし米国債に投資をしている、あるいは投資を考えているみなさんにとって大切なことは、世界がトランプリスクによる株安で動揺する中、震源地であるはずのアメリカに向かって「質への逃避、FLGITH TO QUALITY」が起こっているという事実です。これは前回の世界的金融危機の時にも見られたことで、「世界に激震が走ると頼りになる投資先は米国債だけだ」としてカネが集まるということなのです。

 

  では今後不況を防ぐ切り札はあるのか。普通の政策手段は金利引き下げ財政出動です。しかし残念ながらアメリカは金利の引き下げ以外ありません。普通であれば経済が好況にあり失業率が歴史的に低いときには財政出動などしませんが、トランポノミクスは就任2年半で好況下でも財政を拡張し続けるという愚を犯していますので、いざとなったらこの手が有効に使えないのです。しかも、もし日本を含めて世界全体が本格的スローダウンとなった際、最も大事な主要国の協力体制が取れないことは大きなリスクです。

   来週は世界の中央銀行総裁や大手金融機関のCEOなどが一堂に会するジャクソンホール会議がワイオミング州で開かれます。きっと世界経済への大いなる懸念が表明され、トランプ政策が非難されるでしょう。共同で対処していこうとはならないのがトランプ以降の世界の金融政策です。

 次回は現状のアベノリスクについて解説します。

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日本のゴルフ中継に異議あり!

2019年08月11日 | ゴルフ

  ゴルフに興味のない方には、どうでもいいお話ですので、無視してください。ただ私の人となりの一端は覗けると思いますので、よろしかったらどうぞお付き合いください。

 

  シブコ・スマイルで全英女子オープンから帰国した渋野選手、マスコミの大攻勢を受けながらもスマイルを絶やさず、38度の高熱をおして国内試合に臨みました。その試合前に小泉進次郎氏と滝川クリステルさんの結婚宣言のニュースに対して彼女は記者会見で面白いコメントを出しています。

 「おめでとうございます。よかった、これで注目が逸れてくれそう(爆笑)」。きっと本音でしょう。

   そして予選通過後、首位と5打差の9位となって臨んだ昨日のインタビューでは、

  「これで優勝したらヤバイですよね」と、いまどきの若い子らしい言葉を残しました。本音の出るシブコにゴルフファンはくぎ付けです。

   私は日本のゴルフ中継はすべてビデオで見ることにしています。そのためビデオ画面では時間の経過が分単位でわかり、おかげで昨日はとても気になることがありました。それは中継内容がゴルフトーナメントではなく、ただの「渋野選手凱旋パレード」だったことです。それも度を越えたひどさでした。

   全体の中継時間は1時間50分でしたが、最初の58分間は渋野選手しか写っていませんでした。トップ争いをしている選手や同組のプレーヤーは一瞬も写っていなかったのです。そこでさらにしっかりと時間を計測して見ていると、渋野選手以外の選手のプレーが写っていたのはわずかに11分です。110分のうちCMは無視すれば、なんと90%が渋野選手だったのです。

   この日の中継は実況だったため、例えばショットを終えて他の選手がショットをする間や、2打目地点まで彼女が歩いたりするときに、いくらでも他選手を映せたはずですが、全くなし。渋野選手が最終ホールのプレーを終了するまで、他の選手はほとんど無視されていて、彼女がプレーを終えた後に残ったわずか10分ちょっとの中でやっとトップ争いの選手が出てきました。

   しつこいようですが、各ホールで渋野選手がティーショットを終え、同組の2人の選手のティーショット中も2人は無視され、ショットの終わった渋野選手の顔を映すだけ。パチンという打音だけが聞こえていたのです。2人のプレー映像は最後までほとんど見ることができませんでした。

  ビデオ中継なら余分な部分をカットすることがあっても、実況ですからカメラは回っています。なのにプレーを無視して彼女の顔だけを延々と映し続ける。私は見ているうちに腹が立ってきました。もし私が同組のプレーヤーのファンだったら、絶対にテレビ局に抗議します。きっと2人のファンはそうしていることでしょう。

 

  こうしたことはその昔、80年代から90年代のジャンボ尾崎の全盛時代もまったく同じことが行われていました。まだ喫煙に対する認識が緩い時代だったので、彼はティーショットを終えるとカメラの前でタバコを吸うのです。その間同伴プレーヤーのショットは音だけで、ジャンボの喫煙シーンが延々と映っていました。しかももっとひどかったのはジャンボの横にいるキャディーまでがタバコを吸うのですが、それも中継で流れていたことです。

   私はこうしたテレビ局の偏った姿勢は耐えがたいため、好きなゴルフであってもジャンボの時代はほとんどゴルフ中継を見ていません。もちろん今回の時間配分と同じで、優勝争いに加わっていないジャンボの映像を90%以上映し、ひどいときは優勝プレーヤーの映像は最後の18番ホールの最終パットの10秒のみの、ということまであったのをよく覚えています。

   さて今日の最終日、渋野選手の映像時間がどれほどだか、しっかりと見ることにします。

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トランポノリスクとアベノリスク その3 トランプリスク、今後の予想

2019年08月10日 | トランポノリスクとアベノリスク

 

    このところ珍しくトランプの支持率が多少なりとも下がっています。理由は他でもないテキサスとオハイオの銃乱射事件です。それに関してまずBBCの日本語ニュースを引用します。

「アメリカのドナルド・トランプ大統領は5日、テキサス州とオハイオ州で相次いで起きた銃乱射事件を受け、憎悪(ヘイト)や白人至上主義を非難する演説を行った。ホワイトハウスでの演説でトランプ氏は、「引き金を引くのは銃そのものではなく、精神疾患と憎悪だ」と述べ、精神疾患を持つ人への銃規制や、大量殺人を行った犯罪者への死刑の適用、銃規制をめぐる党派を超えた協力などを求めた。また、「アメリカは声をひとつにして、人種差別や偏見、白人至上主義を非難するべきだ。こうした悪のイデオロギーを打ち負かすべきだ。アメリカに憎悪の居場所はない」と話した。一方、米連邦議会に提出されている銃規制法案への支持は表明しなかった。」

   アメリカでは今回の二つのほぼ同時乱射事件の原因は、誰もがトランプによる先月の民主党の非白人女性議員に人種差別的攻撃を行い、「アメリカから出て、国へ帰れ」という暴言を浴びせたことだと思っています。その中でトランプは上のニュースにあるような言葉、

 アメリカは声をひとつにして、人種差別や偏見、白人至上主義を非難するべきだ。

  というような白々しいスピーチをしても誰も共感しません。それが証拠にトランプはテキサスとオハイオの現場に出向き哀悼の意を表しましたが、地元民は「トランプ帰れ!」の大合唱に終わっています。そして報道写真はすべて反トランプデモでした。いつもの支持者集会で見られるような被害者を横に置いての演説もなし。テキサス、オハイオともすべての遺族がトランプの彼らへの訪問や招待を拒否したのです。

   それでも自分がヘイトクライムの首謀者だとは決して思わないのがサイコパスのサイコパスたるゆえんです。きっと来週になればトランプはまた人種差別的言動を繰り返し、次の大量殺りく事件を引き起こすきっかけを作るに違いありません。

  彼のこのところの人種差別発言に関して、海外のおもしろい分析がありましたので紹介します。どこの報道だったかは忘れました、すみません。

 「トランプの支持層である白人は有権者の6割を占めている。そのうちの7割がたの支持を得ればそれだけで4割強を得られる。(注;0.6x0.7=0.42) そこで非白人の投票率の低さを考えれば十分に当選圏に達する。従って今後も白人至上主義的言動を続けるだろう」

というものです。確かに一理あります。前回も非白人の投票率はトランプが自分たちを非難し続けているのに異常に低かったことを思い出します。しかし昨年の中間選挙では非白人やトランプ支持者の少ない若年層が投票したことによって共和党は負けました。

  このアメリカ分断という政治リスクに加えて、経済リスクも株価暴落で顕在化しました。こうしたリスクはすべてがトランプ再選に向けて組み立てられているものです。経済面では株価を上昇させるのが再選につながるとしてトランプはあらゆる手段を動員して煽り、叫び続けています。最近もまた株価暴落に対して「一番悪いのは中国ではなくFRBだ」と叫びました。しかしこの暴言に歴代FRB議長4人が連名で大統領に対し、反トランプの論説を寄稿しました。ブルームバーグを引用します。

 「イエレン氏とベン・バーナンキ、アラン・グリーンスパン、ポール・ボルカーの歴代議長4氏は米紙ウォールストリート・ジャーナルに連名で論説を寄稿し、『FRBとその議長は独立して行動し、経済の利益に最大限かなうために活動することを認められ、短期的な政治圧力や、特に政治的理由によるFRB幹部の解任あるいは降格という脅しを受けるべきではないとの信念でわれわれは一致団結している』と表明した。」

   トランプの暴言に対して株式相場は暴落で答えています。それにしても、株式投資をされている方は毎日トランプに振り回され、本当にお気の毒ですね。

  では株式相場とトランプ再選に関して、私なりの勝手な見通しを立ててみましょう。

  トランプは再選に向けて株価を人為的に上げることに必死になっています。ということは、もし高い株価が来年の選挙までもったとしても、再選されないと当然一気に崩れ落ちます。

  逆にもし再選されるとどうなるでしょう。3度目の再選はないのでトランプ本人は「再選のため」という最大の株価引き上げインセンティブを失い、これまた一気に崩れ落ちる可能性があります。

   彼は自分のことしか考えないので、共和党の明日のことなど興味はありません。そしてアメリカ経済の実態が天井に近いため、ファンダメンタルズから見ても株式市場には高所恐怖症が蔓延しつつある。選挙がらみの押上がなくなり、実体経済のピークアウトがそれに重なると、結構大きな下落の可能性あり。それが私の見方です。

   では政治面の見通しはどうか。

  私の見るところ、トランプが再選されたところで今の悪夢のような状態は長く続くことはないと見ています。その理由の一つは、トランプは世界に対する悪事の大半をやりつくしたこと。といっても彼の実績は破壊に成功しただけで、築き上げたことなどほとんどありません。対外的にも中国とは対立したままだし、北朝鮮やイランしかり。破壊ならだれでも簡単にできます。そのため私の見立てはその名のとおり、早めにドナルド・レイムダックになるに違いない、というものです。普通は2期目の後半になるとレイムダックと呼ばれるようになるのですが、彼の場合はその時期が早まる、これが私の見立てです。

   一方議会民主党はすでに下院で多数を得ていますので、トランプの政治的自由度は大きく制限されています。ですので彼の最大の公約、メキシコの壁などできるはずはありません。さらに共和党内のトランプ支持者の政治家も、トランプに次がなければ気を遣う必要はなくなる。レイシスト(人種差別主義者)でセクシスト(セックス至上主義の女好き)、そしてモラルのかけらもないウソつきトランプに反旗を翻す可能性が強いのです。そうしないと共和党議員たちは自分もトランプと同類に見られることになり、次はなくなる危険性を感じるからです。トランプと同じレベルでウソをつき続けることなど、まともな人間にはできないはず。もしできたとしても、選挙民はその議員を当選させない反トランプの大反動の空気が拡がるに違いない。以上が私の考える政治面に関してのトランプのリスクシナリオです。

  じゃ、彼自身は一体何をするんでしょう。彼の後半4年間の目標はノーベル賞の受賞です。彼はオバマ前大統領の政策をことごとく覆しましたが、ノーベル賞だけは取れていません。しかしたとえ北朝鮮と和解できたとしても、ノーベル賞委員会は歴史に汚点を残すようなことはしないでしょう。

  以上、トランプリスクのまとめでした。

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やったね、猿っ手シブコ!

2019年08月06日 | ゴルフ

  やりましたね、渋野日向子プロ、全英女子オープン、優勝おめでとう!

ゴルフファンとしてはたまりません。

 

  欧米ではスマイリング・シンデレラと呼ばれ、日本ではシブコ・スマイルと呼ばれる笑顔が評判になりました。何故ヒナコスマイルじゃないのかと申しますと、多分ヒナコが多すぎるからでしょう。

   私は彼女の勝因は二つ。一つはそのスマイルと、もう一つは彼女の素早いスイングにあると思っています。

   スマイルが勝負をしているプレーヤーに大事な要素であると最近やっと言われるようになっていますが、一昔前までは「勝負師は笑うもんじゃない」。「緊張の糸が切れるし、相手に失礼だ」というような言われ方もしていました。

   私はスマイルがゴルフ上達の一助になると考えています。ゴルフをされる方はよくわかると思いますが、アマチュアゴルファーの一番の悪い癖はボヤキです。特に心的要素の大きなショートパットになると、打つ前に自分はいかにパットが下手か、自分のパットラインは難しいのでツキがないかというようなボヤキを自己解説する人が多いのです。打つ前に自己否定を言いまくれば、簡単に入るパットまで入らなくなります。ボヤケばスマイルどころではなく苦虫をかみつぶしたような硬い表情になり、表情の硬さは体の動きを悪くするので結果にも悪影響が出ます。そして否定的言葉はパットをはずす自己暗示に確実につながります。


   渋野のスイングの特徴はバックスイングからダウンスイング、そしてフィニッシュまで非常に速いことです。それが男子も女子も最近のプロゴルファーの特徴です。しろうと同士が教えあうとコーチ役の人が必ずいう言葉に、「早すぎる。もっとゆっくり」ということがあります。

   プロでゆったりとしたスイングする人はほぼ皆無です。特にトップで止まるようなタイミングを作るプロはほとんどいません。例外は今をときめく松山秀樹と、すでに引退した宮里愛です。二人ともメジャーを取れていません。

   特に愛ちゃんのスイングはトップでハエがとまると言われたほどゆっくりとしていました。松山秀樹もトップで一瞬、タメを作るように止まるのですが、私はそれがダウンで無駄な力みを作ってスイングの乱れにつながっているとシロウト分析をしています。もっとよどまずにきれいな流れを保つスイングをすればいいと思うのです。

   日本のプロも欧米のプロも、そして強い韓国の女子プロもスイングリズムは誰もが例外なく早いのです。早いスイングは力むことを許しません。早くスムーズなスイングは現在のとてつもない飛距離を生み出す秘訣の一つでもあります。私もバックスイングを早くすることで、ヘッドスピードを2mほど上げることに成功しました。飛距離で言うと15ヤードほど伸びたことになります。

   渋野日向子のスイングもバックスイングからダウン、フィニッシュまでとても速いのが特徴です。その証拠はトップでのシャフトのしなりに現れます。女子とは思えないほどトップでシャフトがグニャリと曲がるのです。まさにクラブをムチとして使っている今風のスイングです。

  

  もう一つ彼女には身体的特徴があります。「猿っ手」です。この言葉、すでに死語でしょうか?両腕を体の前で伸ばして手のひらを合わせると、普通の人の腕はまっすぐですが、肘の部分がくっつくほど内側に曲がっている人がいます。特に体の柔らかい女子に多いような気がします。それが猿っ手、あるいは猿腕です。渋野プロの場合は、10度から15度近く曲がっているのです。

  そのことがよくわかるのは、彼女が最後のパットを沈めて両腕を突き上げた写真です。こんなに曲がっているの?と思わせるほど内側に曲がっていますので、是非見てください。私は彼女が春に日本のツアーで勝ったとき初めてスイングを見てそれに気づきました。アドレスした時に左の腕は普通まっすぐに伸びていますが、彼女の場合、内側にひどく曲がってセットされるのです。

   昔からゴルフで言われたことは、「猿っ手の人はゴルフはうまくなれない」という格言です。何故かはわかりません。まあ、アーチェリーだとまっすぐ左腕を伸ばして弓を弾き絞るので、もしかすると肘が邪魔になるかもしれませんし、弓を放ったときに弦が肘に当たるかもしれません。

  しかしゴルフでは渋野プロがそのジンクスめいた言葉を見事に否定してくれました。そのうち逆に「猿っ手はゴルフがうまくなる」って言われるかもしれませんね(笑)。

   では明日からは渋野プロのスイングをまねて頑張ることにします。

 

  これからもガンバレ、猿っ手のシブコ!

  そして例年は笑って金メダルを取ってください!

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