ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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消費増税対策、あなたらどうしますか?

2019年09月29日 | ニュース・コメント

   やりましたね、アイルランド戦の勝利。見ていてついつい体に力が入ってしまいました。この勝利を是非決勝トーナメント進出につなげてほしい。そして、トーナメントに入っても1回でも多く試合が見たいです。

   ブレイブ・ブロッサムのニックネームはいまいち浸透していませんが、このチームがいったいどこまで勝ち進むかを予想した中で、たった一人「優勝しますよ」とまじめに言っていたラグビー関係者がいました。他でもない前回Wカップの立役者である五郎丸歩氏です。彼はTVインタビューに答えて真顔でこの予想を立てたのですが、さらに「冗談だと思っているでしょ。冗談じゃありませんよ。ほんとに優勝しますよ」と言い切っていました。その時は私も日本チームを鼓舞するための言葉だと思っていたのですが、今回の勝利で可能性なきにしもあらずだと思えるようになりました。ガンバレニッポン!

 

   さて今回の本題、消費増税対策です。ちょっと話はそれるようですが、こういう時の私の対処法はいつも、

「人の行く裏に道あり、花の山」です。

   これは株式投資の最も大切な格言です。私のようなアマノジャクは日常でもこの教訓を活かすことが結構あります。09年から11年にかけて地デジ導入の時のエコポイント騒動がそのよい例でした。

   導入前に家電量販店などが地デジ対応の大型テレビの販売促進のため20%-30%の大幅ディスカウントセールをして、それにエコポイントが10%付与されました。私の友人がそれを利用して「3割引きの20万円ちょっとで大型テレビを買ったら、エコポイントだけで掃除機をもらえたよ、すごく得した。お宅もそうしたらと」言ってきました。それに対してアマノジャクの私が返した言葉は「メーカーが大増産したんだから、ポイント還元が終ったら大バーゲンになるんじゃない。それまで待つよ。幸いうちのマンションは全戸ケーブルテレビなので、地デジに切り替わっても古いテレビで映るから」と我慢。そしていよいよ地デジに切り替わった時を見計らって量販店に行くと、友人の買ったものと同じテレビが大安売りでなんと7万9,800円なり!

   まさに「人の行く裏に道あり、花の山」でした。

   今回の2%増税前の駆け込み需要は、そこまで大きなものではないし、還元率もわずかです。それでも近所の家電量販店を覗くと駆け込み需要のため週末は混雑し、スーパーでも買いだめに走っている人々を多く見かけます。大型のカートを夫婦で2台押しながら、缶詰やトイレットペーパー、洗剤などを買いだめしています。報道でも多くの店舗で家具や衣料品などが売れている様子が映し出されています。それにも増して通販サイトのTVでのあおり宣伝はすさまじいものがありますね。

   私はもちろんストックを大量に持つのが邪魔なので何も買いだめはしないし、高額商品は必ず反動の大バーゲンのほうがはるかに安くなると見ていますので「これを機会に無理に買い替え」などしません。「2%を得ようと焦ると、2割引きのチャンスを逃す」ことになるかもしれません。この戦略、果たして奏功するでしょうか。

   今回はさらに、軽減税率とキャッシュレス化の普及を目指したポイント還元が混乱に拍車をかけていますね。この騒動、政府が自ら作り出した自作自演の混乱です。税率変更だけでも中小小売店では大きな負担になるのに、無理やりキャッシュレス化と同時進行させるから余計に混乱しています。お気の毒と言うよりほかありません。

  キャッシュレス化への対応は例えば半年くらい前に終了させておけばいいのに。早めに対応を終了したら設備とかを無料にするインセンティブを与えることで、少なくとも同時進行の混乱は避けようがあるのでは、と思われます。

   ところで、みなさんはポイント還元は何で受けますか。私は今日常的に使っているクレジットカードとPASMOにしようと思っています。クレジットカードは元いたJALへの恩返しと、大きなメリットのあるグローバルクラブメンバーのステータス維持のためJALカードを長年使用しています。おかげで海外を含め旅行の半分はマイルによるタダ券を使っています。今年も6月に夫婦で行った北海道、10月に予定している宮崎のフェニックスでのゴルフと、2回ともマイルを使った旅行です。マイルを得るために、日常の支払いのほとんどはカードで、現金はほとんど使いません。

   そしてもう一つはPASMOです。東急沿線に住むため、PASMOが便利です。最近はクレジットカードを使用できない場合でも、PASMOが使用できるケースがとても多くなっています。電車やコンビニはもちろんですが、高速道路のサービスエリア、最近はスキー場の山の上にある食堂までPASMOが使えます。小銭を持つ煩わしさから解放されるだけで大きなメリットです。そこで今回のポイント還元もこの二つのカードでいくことにしました。PASUMOのポイント還元の登録はすでに済ませました。これは「人の行く道を行く」ですね。

   私のもう一つの注目点はうちのそばの世田谷区用賀に2軒もあるスーパー、OKストアの対応です。OKストアーは大手ではなく、大田区や世田谷区が地盤の地方スーパーです。そのモットーは、Everyday Low Price。これって世界最大のチェーンストアであるウォールマートのモットーをパクッているように思えます。

  そのためOKはバーゲンセールを一切しませんが、価格は常に他のストアより圧倒的に安いので、バーゲンは必要なし。できるだけここで買うようにしています。テレビによく出てくるスーパーの「あきだい」はそばにありませんが、価格は近いものがあります。例えばいわゆるナショナルブランドの食品・飲料などは、どこのスーパーよりも2-3割安。そしてさらに200円払っていったんオーケークラブの会員になると、年会費無料で食品全部がそこからさらに3%引きになります。3%引きは、89年の最初の消費税導入時に消費者のために還元し、それが現在も継続しているのだそうです。

  このオーケーストアが今回どんな策を打ち出すか楽しみです。店内には昨日の時点でも何もお知らせがないので、そのまま3%の増税かもしれません。それでも私はオーケーストアを愛し続けます(笑)。

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ひよこさんへの回答  短期債でしばし待機することについて

2019年09月23日 | 米国債への投資

  多くのみなさんも同じように悩まれている質問だと思いますので、本文にて回答させていただきます。

 まずひよこさんのご質問をそのまま引用します。

 いつも有益な情報をありがとうございます。

また皆さんのコメントからも勉強させて頂いています。
千葉県の被害、本当に大変だと思います。私は雨漏りの修理だけでも気落ちしていますが・・・比べ物にならない大変さ、一日も早い回復をお祈りしています。

本とブログを何度も読ませて頂き米国債を買い始めています。逆イールドの時のコメントを参考に短期債を買っていますが少し解らない点がありお尋ねしたいと思いました。
8月16日の記事「…アメリカの金利低下」では

私は当然ながらこのレベルでの米国債投資はお勧めしません。むしろ同時進行しているドル安を利用してドルの仕込みをするべき時だと思います。そして将来の金利高を待つ。もしその間もドルを遊ばせていることが無駄だと思われる方は、短期債への投資をお勧めします。2・3年の範囲であれば償還前に金利が上昇した場合の価格下落もたいしたことはありません。

3月26日の記事「逆イールドは短期債投資のチャンスだ」では
21年の見通しはよくわかりませんが、20年まではどうやらアメリカをはじめとして経済見通しが上向くことはなさそうです。であれば、それまで現金のままにしておくのではなく、2~3年の短期債券を買ってすこしでも稼いでおく。よしんば20年中に経済が回復し金利の上昇があったとしたら、乗り換えればいい。もちろん保有している債券は値下がりしますが、残存期間が非常に短い債券の値下がり幅はたいしたことはないからです。例えば20年の年央に長期の10年物が3%に乗るようなことがあれば、喜んで短期債を損切りして長期債に乗り換えましょう。それぞれの年限の金利を厳密に想定するのは難しいので避けますが、半年を残して値下がりした債券の損失は、3%の長期債が買えれば、1年もすれば取り戻せる可能性が高いのです。

と書かれていましたが、8月の記事を参考に2021年5月と2021年11月償還のゼロクーポン債を円定期の満期に伴い多めに購入しました。

3月の記事でも2-3年とありましたが、「20年中に回復し金利の上昇があったら乗り換え・・」とあるので、それを考えると2年より短くした方が良いのかと解らなくなりました。
悩める初心者さんへの回答では2年で良いと書かれていましたが、私は超初心者なので乗り換えというのがうまくできるかとても心配になりました。
償還まで置いてからうまく長期に乗り換えられたら良いのですが、長期が良くなったらやはり行動した方が良いという事でよろしいでしょうか?

円の預金の半分は米国債にしましたが、残りの半分も短期で購入しようか悩んでいます。償還まで保有するのが一番安全だと思いますが、長期の金利が良くなって乗り換える時の方法についてもう少しご説明頂けると助かります。
まだ扶養範囲内での仕事はしていても年齢は60なので長期を購入する場合は利付債にした方が良いのでしょうか?その際10年が良いのか30年が良いのかも迷います。一体自分は何歳まで生きるのか解らないので林さんが書かれています様に、何も使わないで寿命がきてしまうリスクと、長生きリスクも考えなければならず、悩むところです。

本の出版で大変お忙しいと思いますが、お時間の許すときにでもご回答頂けると嬉しく思います。よろしくお願いいたします。

 

  ひよこさん、著書とブログを相当しっかりと読まれているようで素晴らしいですね。ありがとうございます。

ひよこさんへまず申し上げたいのは、「あまり細かいことは心配しなさんな」ということです。逆にストレスになります。

例えば2年と3年のどちらにするか、さほどの金利差はないので、どちらでもよいと思います。長期金利の上昇が2年後なのか3年後なのかもわかりませんので。

 >償還まで置いてからうまく長期に乗り換えられたら良いのですが、長期が良くなったらやはり行動した方が良いという事でよろしいでしょうか?

基本はそういうことです。多少のキャピタルロスには目をつぶりましょう。乗り換えれば高い金利を長期間エンジョイできるのですから。しかし「良い」という金利レベルがどのレベルなのかの判断も難しいですよね。先行きの金利の見通しを的確にできるなら別ですが。

 例えば2年物を今買ったとします。これだけリスクにあふれる世界ですから。2年後に金利が上昇してきたと思っていても、ある日突然イランとサウジが全面戦争になり、アメリカやロシアが支援する形で巻き込まれるなどとなれば、株や為替が大変動を起こします。その中でもひとつだけ言えるのは、米国債金利は確実に低下するということです。世界のお金はリスクから逃げ、いわゆるフライト・トゥー・クオリティーが起こります。それが2年後あるいは3年後に起こるかもしれません。その時に買った債券が償還を迎えれば、長期債には投資すべきではない時期になっているかもしれません。もう一度短期債を買いなおしましょう。

 >円の預金の半分は米国債にしましたが、残りの半分も短期で購入しようか悩んでいます。償還まで保有するのが一番安全だと思いますが、長期の金利が良くなって乗り換える時の方法についてもう少しご説明頂けると助かります。

 たとえばひよこさんなりの目標金利を定めておくという手があります。10年物が2.5%になったら残り半分のうちの半分を投資する。さらに10年ものが3%になったら最後の分を投資するというようにされてはどうでしょう。

 それとその時期が来たらどうぞ遠慮なくまたこのコメント欄で相談ください。幸い健康オタクでもある私の体はいたって健康です(笑)。

 基本的に長期債への投資はそれで10年~20年、あるいはそれ以上の固定になるので、投資も時期を分散しながらが安全です。その点、短期債は固定されてもたかが2・3年です。償還までの間に長期金利が上昇したら、多少の損失があっても、ニッコリ笑って乗り換えましょう。


>まだ扶養範囲内での仕事はしていても年齢は60なので長期を購入する場合は利付債にした方が良いのでしょうか?その際10年が良いのか30年が良いのかも迷います。一体自分は何歳まで生きるのか解らないので林さんが書かれています様に、何も使わないで寿命がきてしまうリスクと、長生きリスクも考えなければならず、悩むところです。

私の考え方は、オカネは使ってなんぼです。このご質問への回答は次の著書で詳細に述べていますので、それまでしばしお待ちください。幸い金利はすぐに高くなる心配はないと思いますので。

 

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そうだ、もう一度千葉に行こう!

2019年09月19日 | 旅行

  今回の台風では千葉県が大変な被害を受けましたね。今回被害を受けられた方には心からお見舞い申し上げます。

  ここ東京では、いまだにNHK地デジの画面は左側と上側に災害関係のテロップが常時流れています。避難所や水食糧の情報などです。今回の台風では東京電力関係だけでなく、様々な被害が当初の見込みより大きなものでしたね。その原因を私は以下のように考えています。それは台風の通過が夜間だったためでしょう。

  今回同様かあるいはより大きな被害を伴う台風は、去年大阪を襲った台風でもあったのですが、大阪の場合は昼間だったため多くの衝撃映像がTVやSNSに映し出され、誰もがそのひどさに気が付きました。ところが今回は夜間だったために強風が屋根や車を吹き飛ばしたり、電柱、送電線の支柱やゴルフ練習場の支柱を倒す様子が一切画像として流れませんでした。この差はかなり大きいと思います。そのため、救援・復旧などの初動で圧倒的に後れを取ったのだと思うのです。


   今年の4月初旬、私は家内と一緒に千葉県の鋸南町(きょなんまち)を訪れました。一泊どまりの温泉旅行です。鋸南町という地名も台風被害がひどかったため一気に有名になりましたね。鋸山(のこぎりやま)の南にあるため付けられている地名だと思われます。我々は鋸山観光をしてから、「ビーチサイド・温泉リゾート・ゆうみ」という名前のホテルに泊まりました。自宅からほぼすべて高速道路で行けるため、1時間半もかからずに着けます。今回は千葉を応援するために、来月早々もう一度そこに行くことにしました。

   台風のあと心配だったのでHPを見ると、やはり被害を受けていて、ホテルは当分クローズとなっていました。それもそのはず。このホテル、砂浜の波打ち際に建っていて、ふだんでも西からの風が強ければ波しぶきを直接受けるほどのロケーションにあるのです。

  前回は穏やかな快晴に恵まれたため、夕方波打ち際を散歩した後、海岸に面したテラスでカクテルを飲みながら夕日と富士山を眺めることができました。夕食はもちろん海の幸のてんこ盛りのフルコースで、とてもおいしくいただきました。温泉風呂も海に面した側が外に向かって解放されているので、セミ露天風呂になっています。

  こうして書くといかにも高級なリゾートホテルを想像しますが、ロケーションと施設の割に料金は割安です。理由はホテルの成り立ちが元損保会社の保養所だったからです。それをまるっきり新しくリノベーションして、きれいな今どきのリゾートホテルに仕上げているのです。

  しかも驚いたのは従業員が全員若い。温泉というと年齢のいったサービス係を想像しますが、ここは20代・30代の人がほとんどで、しっかりと教育も受けている様子でした。聞いてみるとほとんどが地元の出身者で、東京などからの出戻り組も多いとのこと。きっと彼らの自宅も台風被害に遇われているかもしれません。今回は応援のつもりでホテル「ゆうみ」の再開に合わせて再度訪れることにしました。

 

  以上、「そうだ、もう一度千葉に行こう」でした。

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夏休み明けの世界、アップデート2

2019年09月13日 | ニュース・コメント

  ホワイトハウスの国家安全保障補佐官のボルトンが解任されました。トランプは「俺がもう働かなくていいと言った」。ボルトンは「私が先に辞任すると言った」と、どうでもいい醜い争いをしています。

   これでトランプ政権を去った長官あるいは主席補佐官級の人数は25人と報道されています。というより逆に政権発足当時から残っているのは、たった一人、財務長官のムニューチンだけだとも言えます。トランプは「オレ様は人と会って5分で人物を見抜ける、いや5秒だ」という大ウソが25回積み上げられたということです。

   ちょうど1年前、18年9月10日の記事で私は、トランプの高官たちがどんどん辞めていくという同じような内容の記事を書いています。その中でその時点でホワイトハウスに留まる高官がトランプの言動を暴露した新聞記事を次のように引用していました。

 「トランプ氏はまったく分かっていないが、我々のジレンマは、トランプ政権の高官の多くが、トランプ氏の政策や、彼の最悪の考えをくじくことに絶えず努力しているということだ」と指摘した。

 続けて、「大統領は我が国の健全性に有害なやり方で行動している。だからこそ、トランプ氏に任命された者の多くは、トランプ氏が政権から出ていくまで、彼の見当違いの衝動を防ぎながら、民主的な制度を維持するためにできることをやると心に誓った」と吐露している。

  その上で、トランプ氏が抱える問題の根源の一つに、政策を決める時、当初の原理・原則をすぐに曲げてしまうことを挙げた。同幹部は「トランプ氏は会議で、話題が大きく変わり、脱線する。繰り返しわめくし、衝動的に物事をきめるため、生焼けで情報不足、時おり無謀な決断をしてしまう」と説明した。

  同幹部の懸念は外交政策にも及ぶ。「トランプ氏は、ロシアのプーチン大統領や北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長のような、専制君主や独裁者を好む。一方で、同盟国や友好国との絆にはほとんど理解を示さない」と指摘した。政権幹部に何度も、ロシアとの衝突を避けるよう文句を言い、ロシアへ経済制裁を続けることにも不満だったという。

  この幹部は、自分や同僚の行為について「我が国を第一に考える政権内の人々による静かな抵抗運動だ」と表現した。さらに分断や党派を乗り越え、国民的な対話を取り戻すことを呼びかけた。

引用終わり

 

  この状況は一年後の今も全く変わっていません。暴露した高官はどうしているのでしょう。聞いてみたいですね。

  さてボルトンの解任について、一応アメリカのメディアの反応を見ておきましょう。というのも根っからの「戦争屋」と呼ばれる最強硬派の彼の辞任は、世界の国際関係に大きな影響を及ぼすからです。日本語で引用できるものがないので、WSJやCNNなどから私がピックアップし、ポイントを記します。

 

・ボルトンの辞任でほくそ笑んだのは国務長官ポンペイオだ。国家安全保障補佐官であるボルトンとはことごとく衝突していた

・トランプはこれまで外交安全保障面でボルトンの極端なタカ派政策を折に触れて採用してきたが、今後はそれがマイルドな政策に転換される可能性が出てきた

・より柔軟な政策に転換されると、北朝鮮、中国、ロシア、イラン、アフガニスタンのタリバンなどが喜ぶだろう

・2日前にタリバンとの直接会談を予定したトランプは、ボルトンの反対で会談をドタキャンしたが、そもそもタリバンとのミーティングは最悪の政策だ。なぜならテロリストとは絶対に交渉しないというのが対テロ対策の重要戦略だからだ。ボルトンのストップが効かないことは、それはそれで非常に危険だ。

・金正恩のミサイル発射はボルトンがいなくなれば拍車がかかり、日本を含む周辺国には大きな脅威になる。

・イランのトップ、ハメネイ氏との直接会談も可能性が大きくなる

 

  世界の平和にとってはよいことが多いようにも思えますが、きまぐれトランプはまったく信用できません。例えば自分のノーベル賞のため金正恩との安易な妥協に走り、日本が危険な状況にさらされる。北が毎週のように実験している短距離ミサイルは、アメリカに届かずとも日本には届くと言われています。

   このように実は世界の外交安保に重大な影響のあるボルトンの辞任なのに、日本と言う国は政府も国民も外交問題に関する感度が鈍いので、目立った反応は出ていません。台風と安倍内閣の改造ニュースで手いっぱいになっています。

  

  もう一方で、混乱の極みにあるイギリスも見ておく必要があります。トランプ同様のオレ様首相が10月末のBREXITをあきらめずに吠え続けています。国会を強引に閉鎖したものの、そのやり口に対して議会が裁判に訴え、スコットランドの裁判所が違法だと認定しました。政府は対抗して最高裁まで行きそうです。国会閉鎖の違法性が認定されると、ジョンソン首相はエリザベス女王に国会閉鎖は違法ではないとウソをついて閉鎖の承認をそそのかしたことになり、これまた大問題です。

 

  では今後いったいイギリスはどうなるのか。ロイターの記事を一部引用しながら私の見方を紹介します。

 

「英議会は、10月19日までに議会が受け入れられる新たな合意案をジョンソン氏がまとめるか、合意なき離脱を議会が承認しない限り、同氏に来年1月末まで離脱期限を延期するようEUに要請することを義務付ける離脱延期法を可決した。ジョンソン氏は、過半数議席を獲得して必要なら合意なき離脱を実現する道筋を付けようと、総選挙の前倒しを2回提案したが、いずれも議会で否決されてしまった。」

   これで離脱は法的には延期されたのですが、抵抗するジョンソン首相の今後の選択肢は、

 新たな合意;ジョンソン氏は、10月17─18日に開催されるEU首脳会議でEU側が新たな離脱案を提示するよう働き掛けると表明している。もしこれまでと違う条件を勝ち取り、英議会がそれを承認すれば、10月末に合意を伴うEU離脱が可能になる。」

 しかしEUがそんなイギリスを利する提案をするわけがないので、これは可能性なしでしょう。

 離脱延期法を無視;同法に基づくと、ジョンソン氏は10月19日までに議会が受け入れられる新たな合意案をまとめるか、合意なき離脱を議会が承認しない限り、EUに離脱期限延期を書面で申請しなければならない。」

   これを無視して申請しないという暴挙に出ると、これまた議会は裁判所に訴えるでしょう。果たして裁判所が国の行く末を決める判断をするでしょうか。私はそれについては懐疑的で、裁判所は「裁判にはなじまない」として避けるのではないかと思います。

  こうして見てくると、どうやら議会が決めた来年1月までの離脱延期が最も可能性大。その場合、ジョンソン氏の辞任による抗議も大いにありえますが、辞任しても結局は離脱延期となります。

   愚か者のオレ様トップをいただくと、国民はいかに迷惑か、よい実例がイギリスとアメリカで積みあがっていきます。3選禁止を曲げて居座るどこぞの首相も、我々はしっかりと監視していく必要があります。

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夏休み明けの世界、アップデート

2019年09月06日 | ニュース・コメント

  夏休みが明けた世界は、ひどく荒れ模様ですね。その荒れた世界を作り出しているのは、いずれも唯我独尊のオレ様指導者たちです。政策すべてが選挙対策でしかないトランプは中国との貿易戦争に明け暮れ、軍事費をメキシコ国境の壁建設に流用して民主党の非難を浴びています。

   イギリスではジョンソン首相がトランプ同様のオレ様ぶりを発揮して、BREXITの最も大事な時期に議会を閉じるという暴挙に出た。世界に関たるイギリスの議会制民主主義を自己主張のために否定して見せました。しかし議会の反撃を受け、のたうち回り始めています。彼は読みが甘すぎです。票読みもできないようでは、選挙民は国民投票の時にウソで騙せても、議員はプロです。口先では騙されない。彼のことなので、本当に切羽詰まったら突然首相の座を投げ出すこともありえるでしょう。

   日本の安倍政権と大もめの韓国でも、文在寅大統領が疑惑の玉ねぎ氏を擁護し、法相にする可能性が出てきています。今日の国会の人事聴聞会で野党が詰め切れないと、一両日中に文在寅は彼を法相に指名する可能性がでてきました。すると韓国の混乱はおさまるどころか、朴槿恵と側近の時のように、長くもめた末に自滅する可能性もある。すでに韓国の報道は対日問題そっちのけで焦点が完全に移ってしまいました。

   習近平も表には出ないが香港の林鄭月娥長官を擁護するため、武装警察と言う名の軍隊で脅しをかけています。こちらも長期化するとアジアの火種になります。

   こうしてのたうち回るオレ様たちの今後について見ると、米中貿易戦争、BREXIT、日韓問題、香港問題のすべてが解決には相当な時間がかかりそうな問題ばかりです。これらのオレ様たちは国の将来などよりも、目先の選挙や駆け引きに追われ、敵との非難合戦にあけくれています。そうしているうちに、実は経済など大事な部分に赤信号が灯りかねません。

  

  たとえばアメリカの景気はすでに黄色信号が点滅を始めています。重要指標の一つISM製造業指数が49.1と、判断の分かれ目である50を下回りました。一作日のロイターを引用します。

 引用

米中貿易摩擦が企業業況感の重しとなる中、内訳の新規受注や雇用が悪化し、全体を圧迫した。

日本、ユーロ圏、英国、中国ではすでに製造業活動が縮小しており、米国もこれに追随する格好となった。ただ、エコノミストが景気後退(リセッション)の水準とみなす43の水準はなお上回っている。

8月の製造業景気指数はまた、16年1月以来の低水準となり、市場予想の51.1も下回った。同指数の低下は5カ月連続。

ISMは「企業信頼感が著しく低下した」と指摘。「貿易は引き続き最大の課題で、輸出向け新規受注が大きく落ち込んだことがそれを示している」とした。

引用終わり

 

  「アメリカのファンダメンタルズは悪くない、経済は順調だ」という言葉もさすがに空しく聞こえ始めました。5か月連続の低下は見過ごせません。ましてや指数の50割れは大きな節目を迎えていると見たほうが安全で、43を待つなんて遅すぎです。それでも強気派は、アメリカにおける製造業は経済全体に占める比率が少なという言い訳をしていますが、今後はこの影響が広がりを見せる恐れがあります。

   それが証拠にこのニュースだけでNYダウは一時400ドルを超えて下げ、長期金利も16年につけた数字を割り込む場面も出現してこの日は1.47%で終わっています。その後トランプの「中国とは来月首脳会談を行う」の一言で相場は戻しました。しかしファンダメンタルズの下降トレンドはトランプのつぶやきでは戻せません。

   それとみなさんが普段あまりウォッチしていない世界の商品相場を見ると、さらなる景気悪化の芽に気づきます。商品相場の代表的指数は原油、銅、鉄鉱石などの重要原材料を含むCRBインデックスです。金融危機後11年に370程度だった指数は現在170程度と半分まで低下しています。長期のダウントレンドは金利の低下と軌を一にしています。これが製造業の世界景気を占う指数の一つであることをお忘れなく。

   では今後の経済や金融市場を見るのに大事なポイントは何かを私なりに指摘してみます。それはアメリカの大統領選挙です。冒頭に申しあげたとおり、トランプという選挙だけを見ている怪物がいよいよ本領を発揮すると思われるからです。

  米中摩擦で世界経済に暗雲が垂れ込めても、それは自分のせいではなくFRBのパウェル議長が金利をもっと引き下げないからだと責任を転嫁し、政府として打てる手を打とうとしない。理由は手を打つということは、自分の負けを意味すると思っているからです。景気は悪くないという主張がウソになるのを防ぎたいのです。対する中国はきのうトランプが言っていた通り解決を急ぐつもりはなく、彼の落選を待っていると思われますので、トップ会談くらいで貿易戦争は解決などしっこない。中国は得意の持久戦に持ち込もうとしています。

   その上トランプは欧州の暗雲であるBREXITに対して、わけもなくジョンソンを支持し、合意なき離脱を実質的に後押ししています。そして香港問題までも米中摩擦に含めて中国と対峙し、解決をより難しくしています。暗愚なオレ様大統領をいただくアメリカは不幸だし、影響の大きなアメリカの不幸をひっかぶる世界も不幸です。

 

  では大統領選挙の前にアメリカがリセッションに入ったらどうなるかを見ておきましょう。まず金融市場では当然株価が下がり米国債が買われ、金利低下はドル安要因となります。世界各国のうちアメリカ依存の大きな中国、日本、メキシコ、そして韓国、東南アジアの諸国は大きな影響を受けます。とにかく金融危機のボトムであった09年以降、景気の下降局面がなくガス抜きができていないため、逆にリセッションの程度も世界的に大きくならざるを得ません。

   当のアメリカは大統領選挙と重なるため、再選を目指すトランプは死に物狂いでのたうち回るに違いない。とにかくリセッションを自分の責任ではなく、他人、他国に押し付けようと理由にならない屁理屈を付けては責任転嫁を図ろうとする。そのため日本もとばっちりを受け、米中の裏で安閑としてはいられなくなりそうだ、というのがこの先1・2年の私の見立てです。

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