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アメリカ経済 アップデート その4

2017年04月17日 | アメリカアップデート

  これまで述べてきたのは、アメリカ経済は今年中に利上げを繰り返すほど順調に推移している、ということでした。特に雇用が強く、賃金もそこそこ上昇しているので、GDP7割を占める消費が依然として強い。ただ、景気循環論からみると、そろそろ一休みしてもおかしくないほど拡大が長期にわたり続いている、ということでした。

  そしてサブプライム自動車ローンのバブルが崩壊するリスクを騒ぎ立てる人がいるが、実際の規模はさほどでもなく、巨大リスクなどではない。リスクは経済に内在するより、むしろトランプの地政学上のリスクの方が心配だ、とも申し上げました。

  北朝鮮は昨日ミサイル発射に失敗しました。トランプがそれにかこつけて反応するか否か、まだわかりません。政治の専門家や報道は、北朝鮮の金正恩は何をするかわからないと言いますが、彼の行動は大方が予測するのとたいした違いはありません。それよりも突然シリアを爆撃したり、アフガンに巨大爆弾で爆撃したりするトランプの方がよほど予測不能の大統領です。

   シリア爆撃も巨大爆弾投下も、それをもって戦況を変えるようなものでは決してなく、国内で自分の政策がうまくいかないトランプによる自作自演のパフォーマンスであるという見方が欧米では多くなっています。私もどちらかというとその見方をしています。なので予測のつかない出方をするのは金正恩よりトランプだ、ということなのです。実際、今回のミサイル発射も北朝鮮を分析しているアナリストの予想の範囲でした。

   ついでに言うなら、金正恩が何をするかわからない独裁者だという理由は、本気で戦争をすれば負けるに決まっているのに、何故そこまで国際社会に歯向かうのか、その非合理的行動のことを指すのでしょう。私の見立ては以前も申し上げましたが、彼は国内にいても日常的に自分が殺されるか、敵を先に殺すかの瀬戸際にいるため、常に外に敵を作り続けて国民の目を逸らし、国を自分中心にまとめなければならないからだと思っています。でなければスイスのボーディングスクールで国際社会を知ったエリートが、親類縁者まで殺しまくる殺人鬼にはなれないと思うのです。

 

   トランプのアメリカに戻ります。トランプのように突然海外で予想もできない火遊びをするような大統領がいるアメリカ、いったい経済は大丈夫なのでしょうか。すでにこのシリーズの最初に申し上げた通り、経済ファンダメンタルズは揺らいでいないし、今後も崩壊の可能性のあるバブルなどないので、大不況に陥るようなことはないという見方をしました。

    しかしこうしたトランプの気まぐれにより左右される金融市場は別です。相場をされている方は、さぞ大変なことと思います。トランプラリーに振り回され、それが反動を呼び、彼がひとこと「円は安すぎ」と言うだけで反応するような地合いですので。

    ではトランプ相場を見るために16年年初から数字を簡単に見てみましょう。117日は選挙結果寸前、31日は株価のピーク、そして先週末を比較します。

          16年年初  117日   31日  413

S&P500         2,012        2,131        2,396       2,329

米国債10年     2.13         1.83          2.45        2.24

ドル円レート    120.6        104.5         113.7      108.6

  まず株価ですが、16年年初から当選前までゆっくりと6%上昇していましたが、当選後はご存知の通りトランプラリーが始まり、31日までに11月比7%上昇。その後は現在まで3%の下落です。

   一方10年物国債のイールドは当選直前の1.83%が31日までに2.45%まで上昇。それにつられるようにドル円は9円も上昇しました。しかし実はドルのピークは1216日の117.9円で、その後はむしろ穏やかな下落基調です。

トランプラリーの一環として、ドルのラリーはすでに収束、株式のラリーも収束しつつある。それが現状だと私は見ています。

   昨年末私は、大学の同級生で大手金融機関の会長をしている友人と、トランプラリーはいつまで続くかという話をした、と書きました。株式相場については二人とも春頃までで一致し、今のところそのような推移です。しかし為替については友人が「もう115円は下回ることはない」と断言したのに対し、私は予想を出していません。自信がないのと、トランプリスクと口先介入に反応しやすいとみたからです。結果は年末のクラス会の時がドルのピークで、株価はさらに上昇したにもかかわらず、ドルはむしろ低迷しています。

   コメント欄でもシーサイドさんが為替変動の原因についてご自分の考え方を述べられていました。基本的には私も賛成です。4年ほど前に私がシリーズ「円高デフレのトラップにはまり込む日本」で書いた為替変動に関する長期的原因追求と同様だと思います。つまり長期の流れは経常収支に沿い、そこに投資による変動要素が加わる、というものです。

  従ってトランプラリーなどは雑音に近い。もしトランプが本当に貿易制限を実行すると対米黒字の流れが変化する恐れがあるので、それがドル高を一時的に演出したが、すでにトランプの力のなさが露呈したので、巻き戻しが起こっている。それでも短期的には口先介入による変動が加わるので、先を読むのはとても難しいと思います。

  トランプの言う事など朝令暮改。中国は為替操作国だとあれだけ言い続けていたのに、突然「中国は為替操作国ではない」と言い出す。「ドルは安いほうがいい」と言っていても、突然「ドルは高い方がいい」と言い出すにちがいない(笑)。

  それに付き合わないといけない為替のアナリストは本当にお気の毒様です。でもドルへ投資を考えている方には、トランプリスク=チャンス到来ということがあるので、リスク大歓迎かもしれませんね(笑)。

  では米国債金利はこの先どうなるのか。次回は当たるも八卦の金利予想をしてみます。

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