ある土木技術者の雑記帳

日頃感じたメモ、新聞投稿。"野にして粗だが卑ではない"生き方を目指す・・んなこと言っても結構難しいと感ずる今日この頃

個人と国家ー中国残留孤児に国家賠償家命令の判決に思う

2006-12-03 20:39:07 | 政治
 平成18年12月1日に兵庫地裁での判決があったが、この結果は原告側の勝訴となり、一人当たり3300万円の賠償命令をする内容だった。この原告側が受けた運命の過酷さには言葉もない。
 中国残留孤児とは、満州開拓団が軍に見放されて開拓団(民間人の農民が主体)がソ連軍に追われ、父母が命を落とし、または親とはぐれてしまい中国人として育てられる運命を背負った方たちだ。この当たりは、上坂冬子さんや、澤地久枝さんの本を読むと分かる。私も満州開拓団に関しては、興味があり何度か読んだことがある。この開拓団の組織化や勧誘にも相当に政府、軍が関わってきたのだが。
 残留孤児は中国にいたときは、日本人と言われいじめられ、やっとの思いで日本に帰国すれば、中国人といわれ阻害される。このような運命を背負ってしまった人たちである。孤児といっても、帰国した時点では40~50歳になっており、この時点からの帰国とその後の日本人としての生活になじむことは難しいかったであろう。日本で職を得るには、どうしても「日本語」が必須であるが、高齢になって帰国した方には、日本語が身につかない、同時に職がない。これに対し、一時金32万円(大人1人)だけで済ませて、月々の生活支援金もない。
 同じような境遇にある方として、北朝鮮拉致家族がいるが、こちらの国家のきめ細かい対応に比べ、中国人帰国者の対応の貧相さには驚く。私達もこんな判決が無ければ分からない。帰国者の多く(61%)が生活保護を受け、生活不安から神経を病み、生活を切り詰めるために、1日2食にしている方もいることを。
 これらの方々2200人が16の裁判所に対し、国家賠償を求めている集団訴訟に中の最初の判決に位置づけられている。今回の判決は、戦時中の国家の戦争政策のことを言ってない。残留孤児帰国後のたいへんに貧しい日本の帰国者の受け入れ体制の不備を指摘している。
 同じ日本人なんだから「日本人らしく生活させて欲しい」という声をやっと、法の番人が認めたこととなる。
 重ねていうが、これら帰国者には全く責任はない。開拓団として渡満した親世代の自己責任まで当時幼児だった子が背負うことも”理”がない。純然たる日本人に対し、仲間意識を持つのは当然だが、阻害する理由もないのだが、何故か私達日本人は度量(器)が狭くなってしまった。


 国家(政府)と個人(国民)の間には、いつの時代も個人の側がこのような非情な対応を迫られる。特に日本という「国家」には。
 しかし、その空気も変わりつつあるものも感じる。小泉首相が就任してすぐに出たハンセン氏病判決では、小泉さんは判決を飲み(不控訴決定)患者に謝罪した。国家はいつの時代も一部の国民を見殺しにするものではない。そんな空気を感じる。ただし、これは判決という立法という三権の一方の権力部門が指摘するから変わってきたのだが。