「応挙の藤花図と近世の屏風」 根津美術館

根津美術館
「コレクション展 応挙の藤花図と近世の屏風」
7/28-8/26



根津美術館で開催中の「コレクション展 応挙の藤花図と近世の屏風」のプレスプレビューに参加してきました。

「近世屏風で楽しむ真夏のお花見。」

この展覧会を一言で表せばそのような言葉になるかもしれません。

同館の近世絵画コレクションから屏風絵、中でも主に草花図のモチーフとる作品、計11点が出品されました。

さてまずは表題の応挙の「藤花図」からいきましょう。

金地の虚空を駆ける藤の幽玄な美しさ。


円山応挙「藤花図屏風」 江戸時代 根津美術館

もちろん可憐に咲く花の美しさにも見惚れますが、いつもながらに卓越した応挙の筆さばきに感心するのは私だけではないかもしれません。

幹と枝はほぼ墨のみ、輪郭線を用いずに描いていますが、ともかくその墨の繊細な階調が木の立体感を巧みに示しているのがよく分かります。


円山応挙「藤花図屏風」(右隻) 江戸時代 根津美術館

とりわけ面白いのが枝同士の重なり合う部分です。

その交差する箇所、つまりは筆の向きの変わるところへ緑の点を組み込ませることで、筆致の変化を違和感なく見せることに成功しています。

また葉においても緑の下におそらくは墨を入れ、豊かな質感を出しているのも見逃せません。

さらにはかの美しい花々です。藤の花の構造に従い、胡粉の上に青や紫の絵具を載せていくなど、半ば油画的ともいえる表現をとっています。


円山応挙「藤花図屏風」(左隻) 江戸時代 根津美術館

応挙はとかく写生的とも評されますが、彼は何も対象をリアルにだけ描こうとしたのではなく、それを装飾的な画面へと転化させたことにこそ、大きな魅力があるのではないでしょうか。

応挙の写実と装飾、両者を互いに引き立てあった名品、「藤花図」。この画面にはかくも巧妙な技術が隠されていたというわけでした。

さて本展、「藤花図」の他に、もう一つ見逃せない作品があります。 それが伊年印、つまりは宗達工房による「草花図屏風」です。

実はこの作品、かなり昔にモノクロ図版で紹介されたことはあるものの、自立出来ないほどに痛んでいたため、長らく収蔵庫にあったものでしたが、昨年に修復、今回、目出度くも初公開となりました。


「伊年」印「草花図屏風」 江戸時代 根津美術館

春から初夏にかけての草花が6曲1隻の空間にあしらわれた作品ですが、隣の同じく伊年印の「夏秋草図屏風」と比べると一目瞭然、全体として温和でナイーブ、またどこか野趣に富んでいることが見て取れます。

対角線上に草花を配し、構図としても完成度の高い「夏秋草図屏風」からすれば、モチーフ自体も未整理、言わば様式化される以前の作品とも受け取れますが、この抒情性、時代を大きく超えての抱一画に近い点がありはしないでしょうか。

実際に所々、抱一の十二ヶ月花鳥図に似通った描写があるのも気になるポイントです。

琳派変奏の観点から見る伊年印の草花図と抱一画の関係、ちょっと興味深いところかもしれません。


右:伝立林何げい「木蓮棕櫚芭蕉図屏風」、左:鶴沢探鯨「秋草図屏風」 江戸時代 根津美術館

なおその他にも琳派系の作品としては2点、光琳に連なる乾山の弟子、伝立林何げいの「木蓮棕櫚芭蕉図屏風」と、狩野派ながらも草花の描写に光琳を思わせる鶴沢探鯨の「秋草図屏風」も展示されています。

実は鶴沢探鯨の孫弟子が円山応挙でもありますが、そうした系譜、また表現の違いなどを追っていくのも面白いかもしれません。


右:長沢芦雪「赤壁図屏風」 江戸時代 根津美術館

この他には同じ赤壁をモチーフとした蘆雪VS文晁対決、また江戸狩野三様態、探幽、尚信、宗信の作品なども見どころです。


左:狩野宗信「桜下麝香猫図屏風」 江戸時代 根津美術館

点数こそ多いとは言えませんが、琳派、円山派、文人画、そして江戸狩野と、バラエティの富んだ作品はさすがに充実していました。

本展から販売の始まった年間パスポート、根津倶楽部も入会受付中です。



根津美術館が年間パスポート「根津倶楽部」を発売!(拙ブログ)

根津美術館アプリでも情報更新中です。



8月26日まで開催されています。

「コレクション展 応挙の藤花図と近世の屏風」 根津美術館@nezumuseum
会期:7月28日(土)~8月26日(日)
休館:月曜日
時間:10:00~17:00
住所:港区南青山6-5-1
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅A5出口より徒歩8分。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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