都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「李禹煥 展」 SCAI
SCAI THE BATHHOUSE(台東区谷中6-1-23)
「李禹煥」
9/14-10/27
日本での個展は、あの思い出深い横浜美術館(2005年)以来のことだそうです。お馴染みの『余白の絵画』、または石と鉄板のオブジェにて構成された李の新作展へ行ってきました。
展示されているのは、ほぼ「照応」シリーズに近い大作の「dialogue」(2007)4点と、石と鉄板の「関係項(Relatum)」(2007)3点、そして小品のドローイング1点の計8点です。やや「関係項」に床の面積が足りない、言い換えればいささか窮屈な印象も受けましたが、各々の作品が相互に影響し合って一つの完成された、また洗練された空間つくる様子はいつものことながら見事でした。見るというよりも、その場の空気、気配を感じるようにして楽しみたいインスタレーションです。李の作品はもちろん静謐ではありますが、例えば多様な表情をとる石に代表されるように、その空間のムードを一変させてしまうような力強さも併せ持っています。
今回興味深く感じたのはまず、ギャラリーの灰色の床との関連もあるのか、鉄板が総じてまるでゴムのように柔らかく見えるということでした。また「dialogue」においても、その点がかなり明確に白からグレーへのグラデーションを描いています。(かつての作品では、一つの点にこれほど色の変化を見せるものはなかったと思います。)刷毛の痕跡、そして顔料の粒が、今にも波に洗われて消えてしまいそうな砂浜のような質感を見せて輝いているのです。言ってしまえば、李の渾身の点一つ自体が、かつての「線より」シリーズで多様に変化していた線、または点の一つでもあるのではないでしょうか。その極限に最小化された点が、今回の「dialogue」の点の、さらにはその粒一つを象っているというわけなのです。
ゆるやかな曲線を描いた鉄板がその前の石と対話し、また「dialogue」の点が天井からの光を浴びて美しく煌めいています。銭湯跡のSCAIの空間とも相性の良い展覧会です。今月27日まで開催されています。当然ながらおすすめします。(9/22)
*関連エントリ(全て2005年の横浜美術館での「李禹煥展」より。)
・展覧会レクチャー、対談関連
李禹煥と菅木志雄の対談「もの派とその時代」
李禹煥本人によるレクチャー「現代美術をどう見るか」
横浜美術館学芸員柏木氏によるレクチャー「90分でちょっとのぞいてみる李禹煥の世界」(その1、その2)
・美術館前庭の「関係項」(写真)
・展覧会の感想(一回目、二回目)
(上に挙げた画像は、SCAIでの前回の個展の様子です。TABより。)
「李禹煥」
9/14-10/27
日本での個展は、あの思い出深い横浜美術館(2005年)以来のことだそうです。お馴染みの『余白の絵画』、または石と鉄板のオブジェにて構成された李の新作展へ行ってきました。
展示されているのは、ほぼ「照応」シリーズに近い大作の「dialogue」(2007)4点と、石と鉄板の「関係項(Relatum)」(2007)3点、そして小品のドローイング1点の計8点です。やや「関係項」に床の面積が足りない、言い換えればいささか窮屈な印象も受けましたが、各々の作品が相互に影響し合って一つの完成された、また洗練された空間つくる様子はいつものことながら見事でした。見るというよりも、その場の空気、気配を感じるようにして楽しみたいインスタレーションです。李の作品はもちろん静謐ではありますが、例えば多様な表情をとる石に代表されるように、その空間のムードを一変させてしまうような力強さも併せ持っています。
今回興味深く感じたのはまず、ギャラリーの灰色の床との関連もあるのか、鉄板が総じてまるでゴムのように柔らかく見えるということでした。また「dialogue」においても、その点がかなり明確に白からグレーへのグラデーションを描いています。(かつての作品では、一つの点にこれほど色の変化を見せるものはなかったと思います。)刷毛の痕跡、そして顔料の粒が、今にも波に洗われて消えてしまいそうな砂浜のような質感を見せて輝いているのです。言ってしまえば、李の渾身の点一つ自体が、かつての「線より」シリーズで多様に変化していた線、または点の一つでもあるのではないでしょうか。その極限に最小化された点が、今回の「dialogue」の点の、さらにはその粒一つを象っているというわけなのです。
ゆるやかな曲線を描いた鉄板がその前の石と対話し、また「dialogue」の点が天井からの光を浴びて美しく煌めいています。銭湯跡のSCAIの空間とも相性の良い展覧会です。今月27日まで開催されています。当然ながらおすすめします。(9/22)
*関連エントリ(全て2005年の横浜美術館での「李禹煥展」より。)
・展覧会レクチャー、対談関連
李禹煥と菅木志雄の対談「もの派とその時代」
李禹煥本人によるレクチャー「現代美術をどう見るか」
横浜美術館学芸員柏木氏によるレクチャー「90分でちょっとのぞいてみる李禹煥の世界」(その1、その2)
・美術館前庭の「関係項」(写真)
・展覧会の感想(一回目、二回目)
(上に挙げた画像は、SCAIでの前回の個展の様子です。TABより。)
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
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はろるど様の記事を拝見し、05年の横浜美での「李禹煥展」を思い出しました。
彼の作品には何か言葉に上手くできない魅力があります。
無機的な作品であるにも関わらず、場を演出する力がすごい。
展示空間が狭いとその良さが存分に活かせないかもしれませんね。
あ~この個展見たかったです(そんなことばっかり書いてますね)。
あれは本当に李の作品だけでなく、横浜美術館の心意気もかいたいような良い展覧会でした。何時行ってもガラガラでしたが、私にとっては忘れられない展示の一つであったと思います。
>展示空間が狭いとその良さが存分に活かせないかもしれませんね。
実は浜美の時も少し感じたので、もしかしたら李自身がそのような展示を望んでいるのかもしれません。
お庭に石を無造作に、言い換えればあえて整えないで置くという感覚でしょうか。
>無機的な作品であるにも関わらず、場を演出する力がすごい。
同感です。あれほどシンプルな素材を使いながら、場の雰囲気を一瞬にして変えてしまいますよね。余白の絵画も、見ていると何か吸い込まれてしまうような力を感じます。
石を超シンプルに描いたものかと思っていました。
美しいグラデーションでした...。
ああ、ドローイングも素敵でしたね。
余白部分の紙の質感すら魅惑的でした。
>石を超シンプルに描いたものかと思っていました。
そういう見方はありませんでした。さすが鋭いです…。
一応、「点より」始まった李の平面作品なので、あくまでも点の形態が変わったものかと理解しておりましたが、確かにそう仰られてみると「照応」シリーズ以降の点はそのようにも見えてきます。
次回出向く際は、点ではなく石だと見なしてまた楽しんでみますね。そうするとまたオブジェとの関連も変わってきそうです。