小倉遊亀 「浴女その二」 東京国立近代美術館より

東京国立近代美術館(千代田区北の丸公園)
常設展示
「小倉遊亀 -浴女その二- 」(1939年)

東京国立近代美術館の所蔵する、小倉遊亀(1895-2000)の「浴女」。以前に拙ブログでも紹介した「その一」と対になる作品であるのが、この「その二」です。

「その一」では、美しいエメラルドグリーン色を見せる爽やかな湯に、二名のなよやかな女性がのんびりと浸かっている様子が描かれていましたが、「そのニ」では、菱形のタイル模様が印象的な脱衣場へと場所を移して、三名の女性が髪を結ったり、またパイプを吹かしたりする様が描かれています。三名の女性とも入浴後であるのか、とてもサッパリした様子でくつろぎ、おもむろに脱衣場の湿り気を体に纏っています。右手奥にかかる浴衣と帯びは、画面の左で、大きな鏡に向かいながら髪を梳かしている女性のものでしょうか。上半身を露にして鏡に向かう女性の美しい所作。少し愉し気な目と尖った口が、湯上がり後に独特な気持ちの高ぶりを感じさせます。

菱形のタイルと、二名の女性の浴衣の文様は、「その一」で見せたような淡い感覚とは異なって、実に精緻な筆によって仕上げられています。後ろ姿でパイプを吹かす女性の波模様の浴衣と黒い帯、そして、画面の前面で大きく立つ女性の青く太い横線の入った浴衣。それらは、菱形のタイル地に細かく書き込まれた横線と、上手く呼応しているのではないでしょうか。まず、画面の多くを占めるタイルの文様に目線が行き、その後、その上で調和するかのような浴衣の文様に目が届く。遠近感も器用に表現されていて、バランス感にも長けた作品です。

「その一」で見せた素晴らしい湯の質感にも強く惹かれましたが、この「その二」も、またそれとは異なった魅力を持つ作品です。やや日本画離れしたような厳格な構図感の中に見せるのは、ゆったりとした時間の流れに漂いながらくつろぐ女性の優しさでした。「その一」を見て数ヶ月後に出会うことが出来た「その二」。期待を裏切ることはありません。
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