都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「モディリアーニと妻ジャンヌの物語展」 Bunkamura ザ・ミュージアム
Bunkamura ザ・ミュージアム(渋谷区道玄坂2-24-1)
「モディリアーニと妻ジャンヌの物語展」
4/7-6/3(会期終了)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/66/52/157ecf61476956df110b627ea357bb7d.jpg)
既に会期を終えています。「モディリアーニと妻ジャンヌの物語展」です。率直なところ、モディリアーニにもジャンヌの作品にも感じるものがあまりないのですが、(お好きな方には申し訳ありません…。)半ば非常に生々しい形で両者の関係を追うことが出来ました。以下、その印象を簡単に記しておきたいと思います。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3a/bb/e1bd9e92f3fba51e3a58ebd07d612746.jpg)
さてまずこの展覧会では、ジャンヌの画才を、それこそモディリアーニと並ぶと言わんばかりに高く評価していましたが、確かに彼女の絵がモディリアーニに影響を与えた部分はあったにしろ、画家として両者を同格に扱うのはかなり難しいのではないかと感じました。もちろん、キュビズムなどの影も濃いジャンヌの作品に素朴な魅力があるのは事実ですが、早くより自己のスタイルを確立して、繊細な感情を示す肖像画を描き続けたモディリアーニに及ぶものは殆ど見られません。また一部、キャプションにてジャンヌの作品を「女性的」と評している箇所がありましたが、もしその表現自体が適切であるならば、私はモディリアーニこそ「女性的」な作風を見る画家ではないかとも思います。(ただし、往々にしてそのような表現は意味をなさないことも付け加えておきます…。)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/12/3b/b801290b0ef95c7f5c81e5d9532a3070.jpg)
画家としてではなく、人として、つまりはかけがえのないカップルとしての二人を見ると、この展覧会のハイライトは必然的にジャンヌの残した最後の四作になるのでしょう。この連作は、二人の暮らしたニースの日々から、何とジャンヌの自殺までがスケッチ風に描かれたものですが、四枚目に見る「自殺」の恐ろしい表現にはもう何の言葉もありません。ナイフを胸に突き刺し、鮮烈な血も迸るジャンヌは、もの凄い形相でまさに地へと落ちるようにひっくり返っています。実際に彼女は、モディリアーニの死を聞いた48時間後、お腹の中の子どもを道連れに投身自殺をはかりました。この作品を見ると、絵がその「免罪符」になってしまうことへの抵抗感はあるにしろ、許されざる行為も運命だったのかと理解せざるを得ません。
ジャンヌの遺髪は、まだ生気すら漂うかのように輝いていました。「画家としてのジャンヌ」(パンフレットより。)があるとするならば、きっとこの後の人生にこそ花開いていたのではないでしょうか。少なくとも私はそう信じたいです。(6/2)
「モディリアーニと妻ジャンヌの物語展」
4/7-6/3(会期終了)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/66/52/157ecf61476956df110b627ea357bb7d.jpg)
既に会期を終えています。「モディリアーニと妻ジャンヌの物語展」です。率直なところ、モディリアーニにもジャンヌの作品にも感じるものがあまりないのですが、(お好きな方には申し訳ありません…。)半ば非常に生々しい形で両者の関係を追うことが出来ました。以下、その印象を簡単に記しておきたいと思います。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3a/bb/e1bd9e92f3fba51e3a58ebd07d612746.jpg)
さてまずこの展覧会では、ジャンヌの画才を、それこそモディリアーニと並ぶと言わんばかりに高く評価していましたが、確かに彼女の絵がモディリアーニに影響を与えた部分はあったにしろ、画家として両者を同格に扱うのはかなり難しいのではないかと感じました。もちろん、キュビズムなどの影も濃いジャンヌの作品に素朴な魅力があるのは事実ですが、早くより自己のスタイルを確立して、繊細な感情を示す肖像画を描き続けたモディリアーニに及ぶものは殆ど見られません。また一部、キャプションにてジャンヌの作品を「女性的」と評している箇所がありましたが、もしその表現自体が適切であるならば、私はモディリアーニこそ「女性的」な作風を見る画家ではないかとも思います。(ただし、往々にしてそのような表現は意味をなさないことも付け加えておきます…。)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5d/56/211f0e0016785b9c66bb032678c3f20e.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/12/3b/b801290b0ef95c7f5c81e5d9532a3070.jpg)
画家としてではなく、人として、つまりはかけがえのないカップルとしての二人を見ると、この展覧会のハイライトは必然的にジャンヌの残した最後の四作になるのでしょう。この連作は、二人の暮らしたニースの日々から、何とジャンヌの自殺までがスケッチ風に描かれたものですが、四枚目に見る「自殺」の恐ろしい表現にはもう何の言葉もありません。ナイフを胸に突き刺し、鮮烈な血も迸るジャンヌは、もの凄い形相でまさに地へと落ちるようにひっくり返っています。実際に彼女は、モディリアーニの死を聞いた48時間後、お腹の中の子どもを道連れに投身自殺をはかりました。この作品を見ると、絵がその「免罪符」になってしまうことへの抵抗感はあるにしろ、許されざる行為も運命だったのかと理解せざるを得ません。
ジャンヌの遺髪は、まだ生気すら漂うかのように輝いていました。「画家としてのジャンヌ」(パンフレットより。)があるとするならば、きっとこの後の人生にこそ花開いていたのではないでしょうか。少なくとも私はそう信じたいです。(6/2)
コメント ( 5 ) | Trackback ( 0 )
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はろるどさんの文章を読んで、
ぎょぎょぎょ
ジャンヌの写真素敵だなあ~
マンレイですかねえ???違うかな。
この展示はおっしゃるとおり「物語」としてとても強い力を持ってるものだったと思います。
二人の画家としての力量の比較という視点ではあまりみてきませんでしたが、ジャンヌの絵で何点か好きな作品があって、それを見ることが出来ただけでもよかったなと思ってます
こんばんは。
>ぎょぎょぎょ
最後が遺髪で終る展覧会などそうありませんよね。
私もあまり関心がなかったのですが、
見て行くうちに、いつの間にかその二人の世界に引きずり込まれてしまいました。衝撃的ですらあります。
>ジャンヌの写真素敵
申し訳ありません。撮影者までは確認してきませんでした…。
でも素敵ですよね。
@はなさん
こんばんは。
>この展示はおっしゃるとおり「物語」としてとても強い力を持ってるものだったと思います。二人の画家としての力量の比較
もしかしたら展覧会のスタンスは、「画家ジャンヌ」の魅力を見出す方向にあったのかもしれませんね。
ただ、私も彼女の作品に魅力を感じた部分もありましたが、
力量に関しての比較はまだ時期尚早なのかなと思いました。
のちほどTB先を拝見させていただきます。
ほら自分にないところに人は惹かれるというじゃないですか。
確かにジャンヌがモデイリアーニ死後も生きて絵を描いたらーとおもうところはありますよね。
>二人は対照的でお互い支え
そうですね。
ジャンヌの方はもう迷いに迷う絵ですし、
モディリアーニはほぼ揺らぎのない、まさに一貫したスタイルで勝負しています。正反対ですね。
>ほら自分にないところに人は惹かれるというじゃない
確かにそうですね…。絵も生き様もということでしょうか。