都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「ピカソとモディリアーニの時代」 Bunkamura ザ・ミュージアム 10/1
Bunkamura ザ・ミュージアム(渋谷区道玄坂2-24-1)
「リール近代美術館所蔵 ピカソとモディリアーニの時代」
9/2-10/22
フランス北部、ベルギーとの国境に面した街リールから、20世紀絵画の充実したコレクションがやって来ました。表題のピカソやモディリアーニを初めとして、ブラック、レジェ、ルオー、ミロ、それにビュッフェなど、約100点ほどの作品が並ぶ展覧会です。
キュビズムでは、お馴染みのブラックとピカソよりも、一風変わったロランスの静物画と彫刻に惹かれました。特に、力強い造形に迫力のある「瓶のある静物」(1917)と、逞しい魂の宿る女性のオブジェ「座る女像柱」(1930)は魅力的です。静物画では、木炭やチョークを駆使したコラージュ風の画面が面白く、まるで二人の人間が抱き合うかのようなその構図も、シンプルでありながら力強く感じました。そしてオブジェでは、それこそ古代の祭儀にでも使うようなシンボリックな女性に目を奪われます。秘められたパワーがブロンズの表面から滲み出していました。実に神秘的な彫像です。
モディリアーニは少々苦手な画家でしたが、マチエールに妙味がある「肌着を持って座る裸婦」(1917)には素直に惹かれました。面長のふくよかな裸女が一名、胸元に肌着を寄せて佇んでいます。深いワイン色の背景と女性の赤らんだ肌、そして清潔感のある白い肌着が、調和しながらも鮮やかなコントラストを描いていました。そして画肌に見るその温もりです。オレンジ色がかったその艶やかな体が、色香を仄かに醸し出していました。モディリアーニの作品の中では、意外なほど逞しく、また彫刻のような立体感を思わせる作品かと思います。
大好きなクレーやミロ、それにカンディンスキーとくれば楽しめないはずがありません。中でもクレーの「のみ込まれた島」(1923)のたたえる美しい詩情には感銘しました。透き通るような瑞々しいブルーに包み込まれ、またまさにのみ込まれている孤島。天には星が瞬き、可愛らしい魚が気持ちよさそうに駆けています。ちなみにクレーでは、一見カンディンスキーの画風を思わせるような「17種類の香辛料」(1931)も優れていました。薄い水色のドットに浸食された画面に、伸びやかな線がゆらゆらと泳いでいます。魔術師のように空間を操る線が自在に動き廻り、その痕跡を数字で書き留めていた。せめぎあう色の遊びが何とも微笑ましい作品です。
最終章では、それまでの展示の展開からするとやや違和感すら抱く、ビュフェの険しい絵画が心に留まりました。激しく強いタッチでありながらも、どこか無機質で生気のない線が画面をザクザクと切り刻んでいます。宗教的な主題の作品も見応えがありましたが、それこそあまりにも物静かな「メロンのある静物」(1949)が一番印象的でした。ビュフェの白は、清潔でも美でもなく、ただ死を思わせるような物悲しい色です。描かれた事物がまるで突きつけられるように、敢然と前に立ちはだかっていました。
ボーシャンやランスコワなど、あまり聞き慣れない画家の作品を数多く展示されています。20世紀前半のフランス絵画を楽しむには絶好の展覧会です。今月22日までの開催されています。
「リール近代美術館所蔵 ピカソとモディリアーニの時代」
9/2-10/22
フランス北部、ベルギーとの国境に面した街リールから、20世紀絵画の充実したコレクションがやって来ました。表題のピカソやモディリアーニを初めとして、ブラック、レジェ、ルオー、ミロ、それにビュッフェなど、約100点ほどの作品が並ぶ展覧会です。
キュビズムでは、お馴染みのブラックとピカソよりも、一風変わったロランスの静物画と彫刻に惹かれました。特に、力強い造形に迫力のある「瓶のある静物」(1917)と、逞しい魂の宿る女性のオブジェ「座る女像柱」(1930)は魅力的です。静物画では、木炭やチョークを駆使したコラージュ風の画面が面白く、まるで二人の人間が抱き合うかのようなその構図も、シンプルでありながら力強く感じました。そしてオブジェでは、それこそ古代の祭儀にでも使うようなシンボリックな女性に目を奪われます。秘められたパワーがブロンズの表面から滲み出していました。実に神秘的な彫像です。
モディリアーニは少々苦手な画家でしたが、マチエールに妙味がある「肌着を持って座る裸婦」(1917)には素直に惹かれました。面長のふくよかな裸女が一名、胸元に肌着を寄せて佇んでいます。深いワイン色の背景と女性の赤らんだ肌、そして清潔感のある白い肌着が、調和しながらも鮮やかなコントラストを描いていました。そして画肌に見るその温もりです。オレンジ色がかったその艶やかな体が、色香を仄かに醸し出していました。モディリアーニの作品の中では、意外なほど逞しく、また彫刻のような立体感を思わせる作品かと思います。
大好きなクレーやミロ、それにカンディンスキーとくれば楽しめないはずがありません。中でもクレーの「のみ込まれた島」(1923)のたたえる美しい詩情には感銘しました。透き通るような瑞々しいブルーに包み込まれ、またまさにのみ込まれている孤島。天には星が瞬き、可愛らしい魚が気持ちよさそうに駆けています。ちなみにクレーでは、一見カンディンスキーの画風を思わせるような「17種類の香辛料」(1931)も優れていました。薄い水色のドットに浸食された画面に、伸びやかな線がゆらゆらと泳いでいます。魔術師のように空間を操る線が自在に動き廻り、その痕跡を数字で書き留めていた。せめぎあう色の遊びが何とも微笑ましい作品です。
最終章では、それまでの展示の展開からするとやや違和感すら抱く、ビュフェの険しい絵画が心に留まりました。激しく強いタッチでありながらも、どこか無機質で生気のない線が画面をザクザクと切り刻んでいます。宗教的な主題の作品も見応えがありましたが、それこそあまりにも物静かな「メロンのある静物」(1949)が一番印象的でした。ビュフェの白は、清潔でも美でもなく、ただ死を思わせるような物悲しい色です。描かれた事物がまるで突きつけられるように、敢然と前に立ちはだかっていました。
ボーシャンやランスコワなど、あまり聞き慣れない画家の作品を数多く展示されています。20世紀前半のフランス絵画を楽しむには絶好の展覧会です。今月22日までの開催されています。
コメント ( 10 ) | Trackback ( 0 )
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三島にあるビュフェ美術館に行った時、前半の
人物画や風景画はよかったのですが、
最後の宗教画のコーナーは、この展覧会に出ていたような
作品ばかりで強烈でした。
この展覧会はちょっと軽い感じでした。
大分前に書いたのですが、TBしました。
クレーの画像観られて嬉しいです。
ビュフェもまた。
それにしてもBunkamuraってモディリアーニ好きですよね。
確か近々またやりますよね。
Bunkamuraは苦手なのですが、今回は楽しめました。
大ゴマの間に上手く小品を挟んだような構成が、あの少々手狭なアートコンプレックスという立地に合っていました。
お宝展とは違った、散歩するように楽しめる展示だったと思います。
青色好きにはたまりません!!
《17種類の香辛料》もカンディンスキーみたいで面白かったです。
私が鑑賞した時は空いていたため、どの作品も独り占めできました( ̄ー ̄)v
こんばんは。早速のコメントとTBをありがとうございました。
>三島にあるビュフェ美術館に行った時、前半の
人物画や風景画はよかったのですが、
最後の宗教画のコーナーは、この展覧会に出ていたような作品ばかりで強烈
ビュフェ美術館は素晴らしいですよね。
展示の最後に出ていた宗教画のビュフェは確かに強烈でした。
シーンと静まり返った館内で、
しばらく見入っていたことを思い出します。
@とらさん
こんばんは。
>ちょっと軽い感じ
そうですね。気軽に拝見出来るような展覧会でした。
それに無理なく好きな作品を探せるような内容でしたよね。
ロランスとの出会いが新鮮でした。
@Takさん
こんばんは。
>それにしてもBunkamuraってモディリアーニ好きですよね。
確か近々またやりますよね。
近々ありましたか。
モディリアーニはまだ苦手な作家ですが、
今回はまとめて拝見出来たこともあって楽しめました。
展示でも人だかりが出来ていましたし、
根強い人気がありますよね。
@mizdesignさん
>お宝展とは違った、散歩するように楽しめる展示
同感です。
ぶらぶら二、三周して歩きながら楽しむのにはピッタリですよね。
とらさんの仰るように、肩肘張らずにと言った展覧会です。
>Bunkamuraは苦手なの
そうですねえ。私もどちらかと言えば苦手かもしれません。
まずあの立地が…。(ちなみにホールは××です…。)
@りゅうさん
こんばんは。ご無沙汰しております。
コメントとTBをありがとうございました。
>《17種類の香辛料》もカンディンスキー
そうですよね。
私も一瞬カンディンスキーかと思ってしまいました。
意外な作品です。
>私が鑑賞した時は空いていたため、どの作品も独り占めできました
良いですねえ!
巡り合わせが悪いのか、
この美術館は私が出向くときはいつも混雑しています…。
TB&コメントをありがとうございました。
写真や何かで見ただけでは伝わらない何かってありますよね。実際に見るとかなり偏見もあったりして、目からうろこが落ちたり、って事がたくさんあります。
モディリアーニはもっと無骨さあるタッチだと思ってましたが、もっとあったかくて重厚ですごく圧倒されちゃいました。
かなり魅かれた絵もあったりして、今回はとても堪能できた気がします。
拙記事をご丁寧に読んでいただいて、ありがとうございました。
はろるどさんの素敵な記事も拝読させていただいたら
また、モディリアーニやクレーやカンディンスキーなどの絵に合いに行きたくなりました!
TBさせて頂きます。
最初がキュビスムだからかとっつきにくい展覧会かと思いましたら、中へ進めば進むほど楽しい空間になりました。
近代絵画は人によっては「わからない」と言われてしまうことがありますが、ここに集まった作品たちは割とわかりやすい、または叙情的な作品が多かったように思いました。
はろるどさんが上げられているクレー「のみ込まれた島」の青は本当に叙情的で、水の存在を強く感じることができました。
きっと今行ったら混んでいるでしょうね…
こんばんは。コメントありがとうございます!
>モディリアーニはもっと無骨さあるタッチだと思ってましたが、もっとあったかくて重厚ですごく圧倒されちゃいました。
同感です。特に温かみを強く感じました。
絵に近づいて拝見すると、当然ながら特に画肌などで図版と大きく異なりますよね。
今後とも宜しくお願いします。
@Juliaさん
こんばんは。コメントありがとうございます。
>モディリアーニやクレーやカンディンスキーなどの絵に合いに行きたくなりました!
今回のクレーもまた良かったですよね。
モディリアーニも私としては再発見したような感じでした。
とても楽しめました。
@アイレさん
こんばんは。
>ここに集まった作品たちは割とわかりやすい
同感です。
もはやクレーやカンディンスキーは、
一般的な人気を得ていますよね。
複雑に読み解くだけが抽象絵画の見方ではありません。
>本当に叙情的で、水の存在
そうですね。水の潤いを感じるような作品でした。