「鍋島 -精緻な技・優雅な意匠- 」 栗田美術館 2/12

栗田美術館(足利市駒場町1542)
「特集陳列 鍋島 -精緻な技・優雅な意匠- 」
2005/9/17-2006/2/19(会期終了)

栗田美術館所蔵の鍋島から、特に優れた作品が展示された展覧会です。伊万里とは全く異なった性質の図柄と、落ち着いた色合いの妙をたっぷりと味わうことが出来ます。伊万里か鍋島かと問われれば、この鍋島に軍配をあげたくなるような魅力ある企画です。

一口に伊万里と言っても内実は多くの様式に分かれていますが、少なくとも西洋向けに大量生産された伊万里であるなら、明らかにこの鍋島の方が魅力的です。無駄のない簡素な絵柄と、全く華美でない色づけ。もちろん器にはたっぷりと余白がとられていて、伊万里のような徹底した装飾美を見せつけることもありません。白地に配された淡い草花や風景の図。鍋島は当時、お上への献上品として生産された経緯があり、どれも高級品扱いされていたとのことですが、今回展示されたものも確かに全くスキのない作品ばかりでした。

展示作品の中でも特に重要なものとして扱われていた「色絵岩牡丹植木鉢文大皿」(1688-1736。上にアップしたパンフレットはその一部です。)は、白い大皿の中に、瓶のような器と共に、岩と赤や白の牡丹が描かれたもので、まるで盆栽のような箱庭的な味わいがとても魅力的な作品です。色は実に落ち着いていて、牡丹の赤も白も決して主張し過ぎることがありません。皿の上にて、全てがこじんまりと完璧に調和している点に美しさがあるのでしょう。この作品にも見られる赤色は、他の鍋島でもまさに紅一点のように美しく映えていて、その抑えられた美感が深い味わいをもたらします。赤が豪華絢爛に舞う伊万里とは全く異なった美意識がそこにありました。

栗田美術館のウェブサイトでは、所蔵の鍋島と伊万里が一点一点画像付きで丁寧に紹介されています。これはなかなか有難い試みです。

*拙ブログにおける栗田美術館の紹介はこちらへ
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コメント
 
 
 
鍋島大好き。 (遊行七恵)
2006-02-21 10:56:48
おはようございます。



栗田が昔、明治座の傍・浜町河岸にあった頃、よく行きました。



わたしは鍋島が日本の磁器では最愛です。

うちの母は古伊万里ですが、わたしは最盛期の鍋島が一番好き。

古伊万里には『世界の眼』というかそんな意識があるように思いますが、鍋島は鎖国された中での美意識が極度に高まった精華だと思えるのです。



桜や椿の文様。あの美しさは日本の小袖にも通じる独特の美意識の賜物だと思うのです。



栗田が遠い地に移転したことであきらめましたが、はろるどさんのブログを読んで、わたしも行ってみようと思いました。

そのときには足利学校にも足を伸ばすぞ!

今からワクワクしてきました。
 
 
 
Unknown (るる)
2006-02-21 18:51:02
私も鍋島の洗練された無駄の無いデザインが好きです。

伊万里は見る器、鍋島は使ってこそ…という感じがして好きなのです。



是非、行ってみたいです。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2006-02-22 01:20:19
@遊行七恵様



こんばんは。



>明治座の傍・浜町河岸にあった頃



以前東京にあったということを聞いたのですが、

明治座の近くだったのですか。

やはり採算面で厳しかったのでしょうか…。



>鍋島は鎖国された中での美意識が極度に高まった精華



そうですね。

私も今回鍋島を見て、兄弟分の伊万里との違い、

なによりもその美意識の違いに驚きました。

もちろん西洋へ売られた伊万里の美は、

あちら側のものによるのでしょうが、

この鍋島のそれは、

まさに仰られる通り日本人の美的感覚がこめられた作品だと思います。

実用性も兼ね備えた名品は、

ただ飾っておくだけのものにはない美がありますよね。



>そのときには足利学校



実は私もこの足利へは初めて出向いたもので、

何とも言いようがないのですが、

足利は小京都として有名ですし、

なかなか見る所が多そうです。

東京から日帰りの旅も宜しいかと…。





@るる様



こんばんは。



>伊万里は見る器、鍋島は使ってこそ…という感じがして好き



同感です。

伊万里の大きな壷は日本家屋のどこに置いても似合いませんよね。

鍋島の小さな器、

あれにちょっとした前菜でものっていたらどれだけ美しいか…。

このお皿だったら何が合うかなあなどと考えながら見るのも楽しかったです。
 
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