「李禹煥新作版画展・旧作展」 シロタ画廊 1/28

シロタ画廊(中央区銀座7-10-8)
「李禹煥新作版画展・旧作展」
1/10-1/28(会期終了)

銀座7丁目のシロタ画廊にて開催されていた李禹煥の版画展です。今年に入ってまだひと月も経たないというのに、2006年制作の新作版画6点と、かつて手がけた版画数点が並べて展示されています。「展力 Recommend & Review」掲載の展覧会です。

新作版画のタイトルは「黙」です。「照応」シリーズを思わせる大きな点、あるいは太いストロークが、余白たっぷりの空間に静かに配されています。「照応」よりもやや点に揺らぎが感じられるかもしれません。手でちぎったような紙に黒の点。その向きによって、何時ものことながら画面に動きも生まれます。版画だからなのか、キャンバスの作品に見られたようなストローク上の細かい線は殆ど確認出来ませんが、その分、点がまるで紙にのしかかる石のような存在感を見せています。

6点の「黙」シリーズでは、一際目立っていた「黙1」(2006)が非常に魅力的です。この作品のストロークには、他にはない、まるで生き物のような生気が感じられます。版画でありながら、水墨画の濃淡の揺らぎと、瑞々しい水彩絵具のグラデーションを同時に味わうことが出来る。そう言っても良いほど美しく、また多様に表情を変化させるストロークです。また水滴のような小さな点が、刷毛の先からほとばしっています。それがストロークの中の、小さな小さな無数の点や線ともつながっていく。即興的に、まさに創作の一瞬を捉えた、まるで書のような味わいも大変に美的です。

過去の作品は、この「黙」や近作の「照応」などと比べると、例えばデザインとしての面白さも持ち得るような魅力が感じられますが、その中では特に「島より」(1989)や「遺跡地にて」(1984)などに惹かれます。これらがまた「黙」とどう響き合うのか。多様に組み合わせることで、会場全体がインスタレーションとしても美しくなってくるのは、まさに李ならではなのかもしれません。

既に終了してしまいましたが、とどまらない李の今を味わうことが出来る展覧会でした。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
李禹煥「黙1」の件です。 (yann)
2006-05-25 18:28:08
たいへんご無沙汰しております。

あの時に「黙1」を購入したyannと申します。



ずいぶん時間がかかりましたが、やっと先週、作品が我が家に届きました。



やっぱりこの作品は好きです。

単純であるがゆえか、毎日違って見えるんですよ。

面白い作品だと思います。

 
 
 
Re.李禹煥「黙1」の件です (はろるど)
2006-05-25 22:27:25
yannさん、こんばんは。

「黙1」、ついにご自宅に!

良いですねえ!!



>単純であるがゆえか、毎日違って見えるんですよ



あの瑞々しいストロークが、お部屋の空気を変えてくれそうです。

羨ましい限りです。
 
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