都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「風と共に去りぬ」 ル テアトル銀座 1/7
2006-01-08 / 映画
ル テアトル銀座(中央区銀座)
「風と共に去りぬ」
(1939年/アメリカ/ヴィクター・フレミング監督)
映画史上不朽の名作とも呼ばれる「風と共に去りぬ」。そのデジタル・ニューマスター版が今、「ル テアトル銀座」にて公開されています。休憩を挟んで全4時間弱。重厚長大な大河、あるいはメロドラマにどっぷり浸かってきました。
あまりにも有名でかつ、語り尽くされた作品でもあるので、今更私がどうこう言うまでもありませんが、「タラのテーマ」を初めとしたプッチーニ風の甘美でゴージャスな調べにのる、愛に支配されたスカーレットの生き様。時にディケンズ風の冒険劇を交えた、アメリカ南北戦争を舞台とする大河ドラマの壮大さと、まるで「アンナ・カレーニナ」のようなあまりにも哀れな女性の悲劇。メロドラマが限りなく大きく脚色され、ニューマスターによって驚くほど鮮明となった南部の美しい映像と合わさります。これほどにダイナミックなメロドラマもありません。
スカーレットはあまりにも愛に生き過ぎ、また愛にすがり過ぎました。だからこそわがままで、まるでじゃじゃ馬のように振る舞って、ともかく愛を求めるのでしょう。アシュリーに抱いていた愛は、メラニーの死によって初めて幻想だと分かった。この映画で最も美しいシーンは、まるでマグダラのマリアのように描かれたメラニーの死です。スカーレットのアンチテーゼとしても描かれた彼女は、死ぬことによって、ようやくスカーレットに真の愛の姿を示します。しかしそれに気付いたスカーレットはもう遅かった。バトラーは最後までスカーレットを愛していたからこそ、彼女に試練を与えるかのように、自立を促します。スカーレットは、全ての源であるタラへ舞い戻って、本当の愛を獲得するための生活を始める。彼女の強い生への執念は、ようやくここで真の愛と交わるのかもしれません。
劇中でのスカーレットのわがままぶりには半ば呆れ果ててしまいますが、見終わってしばらく経ち、彼女の心の弱い部分に気がつくと、バトラーの彼女への想いが、メラニーの天使的な愛を上回るほどの、大きな慈愛に繋がっていたように見えてきます。アシュレーこそ全く軽薄です。(個人的にはかなり好きなキャラですが…。)彼女はスカーレットに何も示せなかった。しかしバトラーは違う。いくら成金的で、娼婦を囲った生活を送っていたとしても(むしろだからこそ。)愛の意味を知っていた。常にアイロニー的な人物描写が鼻につきますが、それは彼の人物の大きさを示さないための隠れ蓑だったのかもしれません。激しい情熱を見せながら、愛を妄信し過ぎたためにあまりにも哀れだったスカーレットと、軽佻浮薄で哀れなはずでありながらも、実は激しく真に人を愛すことを知っていたバトラー。最後になってようやく惨めさに気付いたスカーレットが、バトラーへの愛に目覚めたのも当然です。
南部の生活や、黒人奴隷の描かれ方などは、やや時代を感じさせるものもありましたが、4時間という上映時間の長さを感じさせない、濃密な愛の物語を楽しませてくれました。テアトル銀座では今月31日までの上映です。
「風と共に去りぬ」
(1939年/アメリカ/ヴィクター・フレミング監督)
映画史上不朽の名作とも呼ばれる「風と共に去りぬ」。そのデジタル・ニューマスター版が今、「ル テアトル銀座」にて公開されています。休憩を挟んで全4時間弱。重厚長大な大河、あるいはメロドラマにどっぷり浸かってきました。
あまりにも有名でかつ、語り尽くされた作品でもあるので、今更私がどうこう言うまでもありませんが、「タラのテーマ」を初めとしたプッチーニ風の甘美でゴージャスな調べにのる、愛に支配されたスカーレットの生き様。時にディケンズ風の冒険劇を交えた、アメリカ南北戦争を舞台とする大河ドラマの壮大さと、まるで「アンナ・カレーニナ」のようなあまりにも哀れな女性の悲劇。メロドラマが限りなく大きく脚色され、ニューマスターによって驚くほど鮮明となった南部の美しい映像と合わさります。これほどにダイナミックなメロドラマもありません。
スカーレットはあまりにも愛に生き過ぎ、また愛にすがり過ぎました。だからこそわがままで、まるでじゃじゃ馬のように振る舞って、ともかく愛を求めるのでしょう。アシュリーに抱いていた愛は、メラニーの死によって初めて幻想だと分かった。この映画で最も美しいシーンは、まるでマグダラのマリアのように描かれたメラニーの死です。スカーレットのアンチテーゼとしても描かれた彼女は、死ぬことによって、ようやくスカーレットに真の愛の姿を示します。しかしそれに気付いたスカーレットはもう遅かった。バトラーは最後までスカーレットを愛していたからこそ、彼女に試練を与えるかのように、自立を促します。スカーレットは、全ての源であるタラへ舞い戻って、本当の愛を獲得するための生活を始める。彼女の強い生への執念は、ようやくここで真の愛と交わるのかもしれません。
劇中でのスカーレットのわがままぶりには半ば呆れ果ててしまいますが、見終わってしばらく経ち、彼女の心の弱い部分に気がつくと、バトラーの彼女への想いが、メラニーの天使的な愛を上回るほどの、大きな慈愛に繋がっていたように見えてきます。アシュレーこそ全く軽薄です。(個人的にはかなり好きなキャラですが…。)彼女はスカーレットに何も示せなかった。しかしバトラーは違う。いくら成金的で、娼婦を囲った生活を送っていたとしても(むしろだからこそ。)愛の意味を知っていた。常にアイロニー的な人物描写が鼻につきますが、それは彼の人物の大きさを示さないための隠れ蓑だったのかもしれません。激しい情熱を見せながら、愛を妄信し過ぎたためにあまりにも哀れだったスカーレットと、軽佻浮薄で哀れなはずでありながらも、実は激しく真に人を愛すことを知っていたバトラー。最後になってようやく惨めさに気付いたスカーレットが、バトラーへの愛に目覚めたのも当然です。
南部の生活や、黒人奴隷の描かれ方などは、やや時代を感じさせるものもありましたが、4時間という上映時間の長さを感じさせない、濃密な愛の物語を楽しませてくれました。テアトル銀座では今月31日までの上映です。
コメント ( 10 ) | Trackback ( 0 )
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まだ、スカーレットとレッドに酔っています
素晴しい名画でしたね!!
これ以上の映画はなかなかありませんが、また何か企画して皆様とご一緒に観に参りたいと思います。
はろるどさんのアシュレー好きがはろるどさんっぽくて、また素敵です
とうとうご覧になりましたね。おめでとうございました。(^^;)
記事中にお書きですが、僕も、この作品はスカーレットとメラニーと、2人で1つの物語だと思いました。表面的には随分とタイプが違うように見えて、どちらも新しい「時代」に向き合って新しい生き方を切り開いていったのではないでしょうか。それに比べると、登場する男性陣の情けないこと…。スカーレットのお父ちゃん然り。アシュレーも、結局は現実を直視できずに南部の「理想」に生きるしかできなかった訳ですし。唯一まっとうな存在に見えるのがバトラーですが、その彼はあきれるほどの成金、女たらし。
ということで、登場する男性どもの情けないことに呆れさせられました。
相変わらずの素晴らしい批評ですね。
Juliaさんのブログからリンクされている原作者マーガレット・ミッチェルの家を読んでみました。そして、スカーレットもレット・バトラーも彼女の人生に根ざした存在であることに気づきました。アシュレーも、結果は正反対なのですが、彼女の第二の夫のネガ・ポジの反転像なのかもしれななと思ったりしました。
こんばんは。改めまして先日はありがとうございました。
>アシュレー好きがはろるどさんっぽくて
そうですか。
あのような優男は少し放っておけなくて…。?
あの弱さを、どこか自分に投影させている部分があるのかもしれません。
またよろしくお願い致します。
@GAKUさん
こんばんは。コメントありがとうございます。
>スカーレットとメラニーと、2人で1つの物語だと思いました
そうですね。表裏一体とでも言うか、
意図的に明暗を分けて描かれていて、
相互補完的な存在となっていましたよね。
男性陣のなさけなさ、そうですね。
ともかくスカーレットの強烈なエネルギーに、
ひたすら振り回されているところはありましたよね。
ドラマチックなメロドラマ、4時間、あっという間でした!
@とらさん
こんばんは。コメントありがとうございます。
原作者が登場人物を、そのように処理することは多々ありそうですよね。
バトラーは、そしてスカーレットはどの部分なのだろうか。
そんな見方が出来れば良いなあと思います。
年齢を重ねて見た時にどう感じるか。
それも楽しみな作品でした。
テアトルのクラシックシリーズは今回初めて知ったのですが、
興味深い試みですよね。今後は追っかけてみたいとも思いました。
>私はレット様一筋です。男性の一つの理想像ではないでしょうか
私も好きです!カッコいいですよね。
絶対ああいう風にはなれないなあと憧れます。
>画質はずいぶん修復されて良いとの話でしたがいかがでしたか?
元々の画質を知らないもので、何とも言えないのですが、
記事にも書いた通り、
画像は年代を感じさせないほど鮮明でした。
プチプチノイズや線がチラチラ入ったりしません。
スゴい技術です!
昔から大好きな映画ですが、改めてものすごいドラマチックな展開に酔いしれ、感動の涙でした。
画像もとてもきれいでしたね、スカーレットの瞳がキラキラ輝いていました。
TBさせていただきました。
コメントありがとうございます。
>ドラマチックな展開に酔い
私は初めてだったのですが、
特に第一部の展開が圧巻だと思いました。
間髪入れずに次から次へと話が進んで…。
手に汗握る冒険劇!というような感じでした。
>スカーレットの瞳がキラキラ輝いていました
キレイでしたよね。
とても戦前の映画とは思えなかったです。
スカーレットとメラニーの両極端な女性のまばゆい魅力に対して、最初の頃のレットや、アシュリーその他、男性が総じてパッとしませんね。時代を先取りしてますね(笑
遅ればせながら記事にしたのでTBさせていただきました
コメントとTBをありがとうございます。
>時代を先取りしてますね
そうですね。
いつの時代も男はだらしないと言うことでしょうか。
メラニーもスカーレットも強烈ですものね!