都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「若冲展」(プレビュー) 相国寺承天閣美術館(その1)
相国寺承天閣美術館(京都市上京区今出川通烏丸東入)
「若冲展 - 釈迦三尊像と動植綵絵120年ぶりの再会 - 」(先行プレビュー)」
5/13-6/3
「若冲展」の先行プレビューに参加してきました。会場はもちろん、烏丸今出川の相国寺承天閣美術館です。参加者は15組、計24名でした。(応募は50件程度だったそうです。)
相国寺より烏丸通方向をのぞむ。右はご機嫌のジョー・プライス氏
相国寺へは烏丸線今出川駅1番出口が最短です。北へ向った一つ目の信号を右折すると、すぐさま大通りの喧噪は消え、緑に包まれた相国寺の境内へと入ることが出来ます。駅から5分程度です。
相国寺境内。右奥が美術館への入口です。
伊藤若冲(1716-1800)と相国寺のゆかりは極めて深いものがあります。彼は家業の青物問屋を一度継ぎながらも、40歳の頃に隠居し、絵を描きながらここ相国寺の大典禅師の教えを受けました。(若冲という名自体も禅師より授けられたものです。)そしてその後、「釈迦三尊像」を飾り、相国寺へ寄進するために、いわゆる「動植綵絵」の制作に取りかかります。完成までに費やした時間は約10年でした。
「動植綵絵」とお寺との関係はやや複雑です。寺の大部分が焼失してしまったという「天明の大火」もくぐり抜けた「動植綵絵」は、若冲の年忌法要の時にだけほぼ継続的に掲げられていたそうですが、明治期の廃仏毀釈の荒波にのまれると、寺は明治22年、皇室へ「動植綵絵」を献上します。もちろんその際の下賜金(一万円)にて寺の規模を損なうことなく維持することが出来ましたが、結果的に、残された「釈迦三尊像」と「動植綵絵」は切り離されてしまいました。それが今回、とうとう明治以来初めて、一時的ではありながらも「再会」して展示されるわけなのです。前置きが長くなってしまいましたが、ようは「動植綵絵」と「釈迦三尊像」は本来一つになって見るべき作品であり、それが今、ようやくほぼ本来的な意味合いにそって鑑賞出来る機会が訪れたと言えるのだと思います。
今回の展覧会にかける相国寺の力のいれようは並大抵ではありません。昭和59年に完成した展示室が、そもそもこの33幅を飾るために設計されていたと言えば、その熱心な思いが汲み取れるというものです。実際、33幅は、展示室の空間を全く無駄なく使って見事に展示されています。昨年、三の丸尚蔵館にて「動植綵絵」を6幅ずつ見た方も多いとは思いますが、「三尊像」を中心に左右へ整然と並ぶ姿は殆ど別の趣をたたえていました。尚蔵館の展示では、現代的な感覚すら思わせる綵絵の細部などに見入ることが多かったのですが、今回は煌めく綵絵全体の息遣いにのまれ、まさに言葉を失うような「感動」を覚えることになるのです。かつての展示ではあまり印象に残らなかった「群魚図(蛸)」が、全体を構成するための欠かせない一つになった時、非常に重い意味をもって輝いてきます。これは驚くべき「体験」です。
展示室は一階と二階にわかれています。順路はまず、金閣寺の障壁画や墨絵などが並ぶ二階の第一会場より進み、そして一階(第二会場)へと降りて「釈迦三尊像+動植綵絵全33幅」とのご対面という流れでした。入場者は一日5千人を見込んでいるそうです。(ちなみに初日は、4~5千人程度だったと聞きました。)会場自体はそう広くなく、並ぶための誘導路も設置されています。実際にこれからどの程度混雑して、また「動植綵絵」をどのような環境で拝見出来るかは率直なところ分かりませんが、仮設ながらも充実したグッズショップ等、会場の雰囲気はかなり盛り上がっているように感じました。
相国寺にある若冲のお墓へも手を合わせることが出来ました。
第一、第二会場の様子については、学芸員村田隆志氏のお話も交えて、また明日以降にアップしたいと思います。
*関連エントリ
「若冲展」(先行プレビュー) 相国寺承天閣美術館(その3・『第2会場、動植綵絵。』)
「若冲展」(先行プレビュー) 相国寺承天閣美術館(その2・『第1会場、鹿苑寺障壁画など。』)
「若冲展」オープン!(相国寺承天閣美術館)
*展覧会基本情報(混雑情報)
「若冲展 - 釈迦三尊像と動植綵絵120年ぶりの再会 - 」
会期:5/13 - 6/3(無休)
場所:相国寺承天閣美術館(京都市上京区今出川通烏丸東入上る相国寺門前町701)
開館時間:10:00 - 17:00
入場料:一般1500円、大学生/高校生/65歳以上1200円、中学生/小学生1000円
「若冲展 - 釈迦三尊像と動植綵絵120年ぶりの再会 - 」(先行プレビュー)」
5/13-6/3
「若冲展」の先行プレビューに参加してきました。会場はもちろん、烏丸今出川の相国寺承天閣美術館です。参加者は15組、計24名でした。(応募は50件程度だったそうです。)
相国寺より烏丸通方向をのぞむ。右はご機嫌のジョー・プライス氏
相国寺へは烏丸線今出川駅1番出口が最短です。北へ向った一つ目の信号を右折すると、すぐさま大通りの喧噪は消え、緑に包まれた相国寺の境内へと入ることが出来ます。駅から5分程度です。
相国寺境内。右奥が美術館への入口です。
伊藤若冲(1716-1800)と相国寺のゆかりは極めて深いものがあります。彼は家業の青物問屋を一度継ぎながらも、40歳の頃に隠居し、絵を描きながらここ相国寺の大典禅師の教えを受けました。(若冲という名自体も禅師より授けられたものです。)そしてその後、「釈迦三尊像」を飾り、相国寺へ寄進するために、いわゆる「動植綵絵」の制作に取りかかります。完成までに費やした時間は約10年でした。
「動植綵絵」とお寺との関係はやや複雑です。寺の大部分が焼失してしまったという「天明の大火」もくぐり抜けた「動植綵絵」は、若冲の年忌法要の時にだけほぼ継続的に掲げられていたそうですが、明治期の廃仏毀釈の荒波にのまれると、寺は明治22年、皇室へ「動植綵絵」を献上します。もちろんその際の下賜金(一万円)にて寺の規模を損なうことなく維持することが出来ましたが、結果的に、残された「釈迦三尊像」と「動植綵絵」は切り離されてしまいました。それが今回、とうとう明治以来初めて、一時的ではありながらも「再会」して展示されるわけなのです。前置きが長くなってしまいましたが、ようは「動植綵絵」と「釈迦三尊像」は本来一つになって見るべき作品であり、それが今、ようやくほぼ本来的な意味合いにそって鑑賞出来る機会が訪れたと言えるのだと思います。
今回の展覧会にかける相国寺の力のいれようは並大抵ではありません。昭和59年に完成した展示室が、そもそもこの33幅を飾るために設計されていたと言えば、その熱心な思いが汲み取れるというものです。実際、33幅は、展示室の空間を全く無駄なく使って見事に展示されています。昨年、三の丸尚蔵館にて「動植綵絵」を6幅ずつ見た方も多いとは思いますが、「三尊像」を中心に左右へ整然と並ぶ姿は殆ど別の趣をたたえていました。尚蔵館の展示では、現代的な感覚すら思わせる綵絵の細部などに見入ることが多かったのですが、今回は煌めく綵絵全体の息遣いにのまれ、まさに言葉を失うような「感動」を覚えることになるのです。かつての展示ではあまり印象に残らなかった「群魚図(蛸)」が、全体を構成するための欠かせない一つになった時、非常に重い意味をもって輝いてきます。これは驚くべき「体験」です。
展示室は一階と二階にわかれています。順路はまず、金閣寺の障壁画や墨絵などが並ぶ二階の第一会場より進み、そして一階(第二会場)へと降りて「釈迦三尊像+動植綵絵全33幅」とのご対面という流れでした。入場者は一日5千人を見込んでいるそうです。(ちなみに初日は、4~5千人程度だったと聞きました。)会場自体はそう広くなく、並ぶための誘導路も設置されています。実際にこれからどの程度混雑して、また「動植綵絵」をどのような環境で拝見出来るかは率直なところ分かりませんが、仮設ながらも充実したグッズショップ等、会場の雰囲気はかなり盛り上がっているように感じました。
相国寺にある若冲のお墓へも手を合わせることが出来ました。
第一、第二会場の様子については、学芸員村田隆志氏のお話も交えて、また明日以降にアップしたいと思います。
*関連エントリ
「若冲展」(先行プレビュー) 相国寺承天閣美術館(その3・『第2会場、動植綵絵。』)
「若冲展」(先行プレビュー) 相国寺承天閣美術館(その2・『第1会場、鹿苑寺障壁画など。』)
「若冲展」オープン!(相国寺承天閣美術館)
*展覧会基本情報(混雑情報)
「若冲展 - 釈迦三尊像と動植綵絵120年ぶりの再会 - 」
会期:5/13 - 6/3(無休)
場所:相国寺承天閣美術館(京都市上京区今出川通烏丸東入上る相国寺門前町701)
開館時間:10:00 - 17:00
入場料:一般1500円、大学生/高校生/65歳以上1200円、中学生/小学生1000円
コメント ( 7 ) | Trackback ( 0 )
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先日は楽しく濃厚な旅をご一緒でき
大変有意義な時間を過ごすことができました。
とりあえずノルマの記事は書き上げました。
ふ~
さすがですね。
私は昨日の月曜日に行ってきました。
第2室に入ったとたん、あの光景に心奪われました。
タコの意義、確かにああして展示されると伝わってきますね。
更なるレポート楽しみです。
プレビューに参加できてよかったですね。
>「群魚図(蛸)」が、全体を構成するための欠かせない一つ
こういう話を耳にするとますます実際に33幅並んだ状態で見てみたくなりますね。
ああ、出来ればいつでもみられるといいのですが。
朝一でしたが、もう60名程並んでいました。
やはり33幅並ぶと壮観でしたね。
「池辺郡虫図」は楽しませて貰いました。
こんばんは。
早速のTBをありがとうございます。
今になると、あれほど行くのを迷っていた自分が馬鹿らしくなってしまいます。
若冲にはもう言葉を失いますね。放心状態でした…。
@テツさん
こんばんは。
テツさんも早速出向かれたのですね。
さすがにこれだけの数となると、一点一点をじっくり見るのは難しくなりますが、
尚蔵館の時とは全然異なった趣きに、
実に新鮮な気持ちで見入ることが出来ました。
タコがあのような意味をもっていたとは…。
思いもよりません。
@あおひーさん
こんばんは。コメントありがとうございます。
>こういう話を耳にするとますます実際に33幅並んだ状態で見てみたくなりますね。
ああ、出来ればいつでもみられるといいのですが。
33幅並ぶ姿はもう何ともいいようがありません。
ため息しか出ませんでした…。
是非!
@花子さん
こんばんは。花子さんも早速でしたか!
会期が短いこともありますし、
ヒートアップしていくと大変な混雑になるかもしれませんね。
次回、このようにして33幅並ぶのはいつのことでしょうか。
また見たいです。
プレビューという企画は画期的ですね。
今後こういった機会が増えるかもしれませんが、その時は私も是非参加したいものです。
さて、若冲展、私が行った時は凄い人でした。どこからこんなに来たのだろうかというくらいでしたよ(笑)
展覧会はとても質の高いものでした。初期のわんこの図、南画を模写しまくり時代の図、鹿苑寺大書院、障壁画、そして動植綵絵ですから、若冲芸術の粋を集めたと言っても過言ではありませんでした。
疲れましたが、京都まで行った甲斐がありました。
コメントとTBをありがとうございます。
>プレビューという企画は画期的ですね。
今後こういった機会が増えるかもしれませんが、その時は私も是非参加したいものです。
私も本当に運良く参加できたのですが、
その機会があればぜひご一緒したいです。
宜しくお願いします。
>若冲展、私が行った時は凄い人でした。どこからこんなに来たのだろう
混雑状況を見る限りでは、80分待ちやら何やらで…。
会場が手狭なせいもありますが、
多くの方々が詰め掛けられたのは間違いないですね。
>初期のわんこの図、南画を模写しまくり時代の図、鹿苑寺大書院、障壁画、そして動植綵絵ですから、若冲芸術の粋を集めたと言っても過言ではありませんでした。
全く同感です。たんなる「動植綵絵展」ではありませんよね。
「奇想」とは異なった、又新たな若冲像を示したような内容でした。
>疲れましたが、京都まで行った甲斐
お疲れ様でした…。他にも廻られたのでしょうか。また後ほどTB先を拝見させていただきます!