フィンランド放送交響楽団 「シベリウス:交響曲第2番」他

フィンランド放送交響楽団 2007年来日公演

ブラームス 悲劇的序曲
チャイコフスキー ロココ風の主題による変奏曲
シベリウス 交響曲第2番

指揮 サカリ・オラモ
フリューゲルホルン セルゲイ・ナカリャコフ
演奏 フィンランド放送交響楽団

2007/2/15 19:00 ミューザ川崎シンフォニーホール3階

来日ツアー中のフィンランド放送響の川崎公演です。十八番のシベリウスから、特に名高い交響曲第2番をメインとしたプログラムでした。



定評のあるオラモとフィンランド放送響のコンビを聴いたのは今回が初めてでしたが、思っていたよりもはるかに力強く、またどこか粗さも感じさせるほどエネルギッシュな音楽を聴かせてくれました。まさに煽り立てるようなオラモの指揮によるものなのか、金管は吼え、時にティンパニは雷鳴の如く響き渡ります。そしてヴァイオリンは冷ややかでありながらも音に厚みがあり、コントラバスは殆どゴリゴリとうなるほど鈍く轟きました。もちろんそんな中でも、例えばシベリウスの第2番の冒頭の主題などで、その独特なリズムと響き(何やら大地がうごめくような律動を持ち、それでいて木立に風が駆け抜けるような感覚を思います。)が実現されているのです。シベリウスの語り口は既に十全に内包された上で、さらにそこから放たれる強い情熱を感じさせる演奏だったとも言えるのではないでしょうか。純度の高い美感や合奏の精度よりも、その表現の志向や音楽を超えた意思が追求されています。第4楽章にて歌われる高らかな讃歌が、あれほど激しく、またドロドロとうねるように鳴っていたのには驚かされました。ここに、北欧の風を感じるような冷ややかなシベリウス像はなく、むしろシューマンのシンフォニーがさらに破滅的に解体されたような、極めて主観的な音楽が生み出されています。シベリウスを聴いて、その響きにどこか背筋が寒くなるような薄気味悪さを感じたのは初めてです。少なくとも有りがちなシベリウスのイメージは吹き飛んでいました。

フリューゲルホルンの名手、ナカリャコフを迎えての変奏曲は、全く危なげのない充実した演奏です。ここでは、さすがのオラモもシベリウスで見せるような情熱を控え、ひたすらナカリャコフのサポートに徹します。フィンランド放送響は、ピアニッシモでも比較的響きが強いオーケストラです。単にか弱い音になるのではなく、しっかりとした音の面を構築してホルンを支えていました。

アンコールは続いて2曲も演奏されました。(グリーク「ペールギュント」より「朝」と、シベリウスの「悲しきワルツ」です。)ここでは、やはり後者の「悲しきワルツ」が秀逸です。決して華やかな曲ではありませんが、オラモは音楽を大きくまとめ上げて、雄大で恰幅の良いワルツを披露してくれます。彼にはもっと颯爽とした、スマートな音楽をつくるイメージがありましたが、少なくともこの日の演奏を聴く限りでは違ったようです。アタックも強く、前へ前へと畳み掛けるように音楽を進めますが、時折意表を突くかのように流れを止め、その断絶より生み出される不思議な緊張感を音楽に与えます。ワルツでも、単に音を流麗に奏でるのではなく、むしろ静と動の交錯する、随所に仕掛けの施された演奏になっていました。

シベリウスの音楽を抉りに抉った、オラモの力業を堪能出来るようなコンサートだったと思います。これは是非、他の交響曲も聴いてみたいです。
コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
シベリウス (菊花)
2007-02-18 22:08:57
今年はシベリウスのメモリアル・イヤー(没後50年)なので、いろんな音楽会でシベリウスが聴けることが予想され。
でも、誰の指揮の、どの楽団の、どの曲が「買い」なのか分からず、薄らぼんやりしていたら!
シベリウスをフィンランド放送交響楽団…うわーっ。そんなベタに「当たり」ぽい演奏会があったとは。不覚。
とりあえず私は、5月の「ラ・フォル・ジュルネ」でお手軽にシベリウスを聴くことにします。たぶん(笑)
 
 
 
Unknown (はろるど)
2007-02-19 01:01:16
菊花さんこんばんは。

>メモリアル・イヤー(没後50年)なので、いろんな音楽会でシベリウス

思ったより取り上げられないなというのが印象です。
この分では、昨年のショスタコの方が盛り上がったかもしれませんね。

>ベタに「当たり」ぽい演奏会があったとは。

確かにベタでしたが当たりでした!
熱狂は先日プログラムが発表されましたね。
まだチェックしていないのですが、
そちらでもシベリウスが聴ければと思います。
(何か良さそうものがありましたか?)
 
 
 
オラモという指揮者 (oki)
2007-02-22 21:50:42
CDショップに行ったらブラームスの二番とベートーヴェンの運命を組み合わせたCDが発売されていました、選曲が面白いですね。
はろるどさんは実演を聴かれたわけですが、実演とスタジオ録音で人が変わるようになる指揮者は数多くいますから、ドイツ音楽へのアプローチとともにこの人の演奏を楽しみたいです、CDは購入してまだ未開封ですがー。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2007-02-23 00:32:09
okiさん、こんばんは。

>ブラームスの二番とベートーヴェンの運命

重厚なカップリングですね。
フィンランド放送響とのものでしょうか。熱演になりそうです。

>ドイツ音楽へのアプローチとともにこの人の演奏を楽しみたいです

そうですね。
私はお国ものだけを今回楽しんだわけですが、
彼が独墺系をどう料理するかも気になるところです。
CDでも少し追っかけてみたいですね。
 
 
 
Unknown (oki)
2007-02-27 10:15:33
CD聴きました。
オラモはかなりおとなしい演奏をしていますね。
ブラームスでもベートーヴェンでも気負ったところがないのはいいのですが、迫力に乏しいです。
ライブ録音のようで拍手が収められていますが、拍手がなければライブとわからないほど雑音はない。
レコード芸術などでどう評価されたのでしょうか?
 
 
 
Unknown (はろるど)
2007-03-01 22:04:14
okiさんこんばんは。
お返事が遅れてしまい申し訳ありません。
コメントありがとうございました。

>迫力に乏しいです。

CDでは大人しい演奏でしたか。
実演ではとても力強い感触だったので、
それは少々意外です。

>レコード芸術などでどう評価

どうなのでしょうか。
あまりオラモの名前が積極的に出ている印象はありません…。
これからの方、というような位置付けかもしれませんね。
 
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