『板倉鼎・須美子展』 千葉市美術館

千葉市美術館
『板倉鼎・須美子展』 
2024/4/6~6/16


板倉鼎『黒椅子による女』 1928年 松戸市教育委員会

幼い頃より松戸市に過ごした板倉鼎(1901年生まれ)は、東京美術学校西洋画科に進んだのち、ロシア文学者である昇曙夢の長女須美子と結婚すると、ハワイを経由してパリへと留学しました。


板倉鼎『雲と秋果』 1927年 松戸市教育委員会

そのふたりの画業を紹介するのが『板倉鼎・須美子展』で、会場には鼎と須美子を長く顕彰してきた松戸市教育委員会の全面的な協力のもと、約240点もの作品と資料が展示されていました。

東京美術学校の在学中より帝展への入選を果たした鼎は、パリにて斎藤豊作や岡鹿之助と親交すると、アカデミー・ランソンではロジェ・ビシエールに絵を学びました。

そして若手芸術家の登竜門であるサロン・ドートンヌやサロン・ デ・ザンデパンダンなどに入選を果たすと、エコール・ ド・パリの画家たちの影響を受けながら、窓辺の静物を描いた作品や須美子をモデルとした連作などを制作しました。


板倉須美子『午後 ベル・ホノルル12』 1927〜28年 松戸市教育委員会

一方で須美子は鼎に出会って油彩画を手がけると、ホノルルの風物を描いた作品で独自の画風を切り開き、代表作「ベル・ホノルル」では当時のパリで鼎を上回るほどの評価を得ました。どことなく童話の世界を思わせるような幻想的な作風も魅力といえるかもしれません。


板倉鼎『垣根の前の少女』 1927年 千葉市美術館

『垣根の前の少女』とは鼎がサロン・ドートンヌに初入選した1927年に描かれた作品で、表題の通り垣根の前で立つ少女が、鼎の妹から送られたという孔雀草を口にくわえるすがたを捉えていました。必ずしも一概に言えないものの、女性の肖像画で人気を博したキスリングの画風を彷彿させる面があるかもしれません。


板倉鼎『ダリアと少女』 1929年 松戸市教育委員会

パリで新境地を開いた鼎は、帰国を目前とした1929年、敗血症により28歳の若さにて急死しました。そして幼い子を連れて帰国した須美子も1934年、結核によりわずか25歳にて世を去りました。


板倉須美子『ベル・ホノルル24』 1928年頃 松戸市教育委員会

夭折した洋画家夫妻の足跡を丹念に追いつつ、手紙などを交えて、1920年代のパリで活動した日本人画家の生き様を浮き彫りにするような展覧会だったかもしれません。作品や資料に不足はありませんでした。


一部作品のみ撮影が可能です。6月16日まで開かれています。おすすめします。

『板倉鼎・須美子展』 千葉市美術館@ccma_jp
会期:2024年4月6日(土)~6月16日(日) 
休室日:4月15日(月)、5月7日(火)、20日(月)、6月3日(月)*第1月曜日は全館休館
時間:10:00~18:00。
 *入館は閉館の30分前まで
 *毎週金・土曜は20時まで。
料金:一般1200(960)円、大学生700(560)円、高校生以下無料。
 *( )内は前売り、市内在住の65歳以上の料金。
 *常設展示室「千葉市美術館コレクション選」も観覧可。
 *ナイトミュージアム割引:金・土曜日の18時以降は観覧料が半額
住所:千葉市中央区中央3-10-8
交通:千葉都市モノレールよしかわ公園駅下車徒歩5分。京成千葉中央駅東口より徒歩約10分。JR千葉駅東口より徒歩約15分。JR千葉駅東口より京成バス(バスのりば7)より大学病院行または南矢作行にて「中央3丁目」下車徒歩2分。
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