「竹岡雄二 台座から空間へ」 埼玉県立近代美術館

埼玉県立近代美術館
「竹岡雄二 台座から空間へ」
7/9~9/4



埼玉県立近代美術館で開催中の「竹岡雄二 台座から空間へ」を見てきました。

京都に生まれ、現在はドイツに在住する美術家、竹岡雄二(1946~)。とりわけ「台座そのものをモチーフ」(解説より)とする彫刻作品で知られています。

いわゆる立体の展示です。とは言え、面白いのは立体それ自体だけではありません。作品は空間へ半ば拡張しています。美術館そのものを変容させていました。

展示室の造作からして異なりました。間仕切りはほぼ全て開放。ぶち抜きで奥行きのある空間が広がっています。

「クリーン・ルーム・ジャパン」に目が留まりました。大きさは約3メートル弱四方。高さも2メートル以上ある箱型の作品です。素材は透明のガラスです。黒いフレームに収まっています。床には白い大理石が敷かれています。ほぼ4畳半。茶室のようにも見えなくもありませんが、入口はなく、中に入ることは叶いません。


竹岡雄二「無題」 1996年 マンツ・コレクション, シュトゥットガルト

ガラス面には僅かに周囲の風景が映りこんでいます。ちょうど奥の彫刻がボックスの向こうに重なって見える位置に立ってみました。するとさもその作品がボックスの中へ入ったような錯覚に陥ります。作品の配置関係は絶妙です。意識は確かに「台座から空間へ」と働きました。

竹岡の台座に対する関心はドローイングからも知ることが出来ます。一例が「オーギュスト・ロダン 青銅時代」です。水彩の一枚、まさしく台座だけが描かれていますが、これは本来ある彫刻から人体の部分を消して表したものです。「マルセル・デュシャン 自転車の車輪へのオマージュ」では車輪の部分だけが省かれています。車輪なしです。つまり台座しかありません。


竹岡雄二「七つの台座」 2011年

ずばり台座と名付けられた作品がありました。「七つの台座」です。素材は真鍮。金のメッキが施されています。いずれも大きさは50センチ四方です。反面に厚さは20センチ弱。やや薄い。形も真四角であったり、台形であったり、また角を削っていたりと変化があります。床面へ直に間隔をあけて置かれていました。何やら庭石のようにも見えます。


竹岡雄二「無題」 1996年 個人蔵

家具を連想させる彫刻があるのも興味深いところです。「無題」はどうでしょうか。4つの細い脚に支えられた立体、中がくり貫かれています。キャビネットと呼んでも良いかもしれません。中に物を収納しようと思えば可能です。

素材が多彩なのには驚きました。ガラスに真鍮、そして人工大理石。テラコッタや木材に銅板も使用しています。またブロンズに緑青を吹き付けるなど色や質感の表現も細かい。作品の仕上げに抜かりはありません。

物理的に美術館の施設へ手を加えた作品がありました。「サイト・ケース1」です。分厚い透明のアクリルボックスです。壁に打ち付けられています。中は空洞です。よく見ると奥の面には何やら石膏を塗り固めたような層が広がっていました。はじめはそれもてっきり竹岡が手を加えたものかと思ってしまいました。

実はこの面、美術館の壁なのです。つまり手前のボードを切り取り、ぴたりと作品をはめ込んでいます。ゆえに切り取った奥の壁の部分が露出して見えているわけです。



「竹岡雄二 台座から空間へ」@遠山記念館(7/9〜9/4)
https://www.e-kinenkan.com/exhibit/index2.html

なお本展は遠山記念館と同時開催です。同記念館のコレクションもやって来ています。とは言え、一工夫がありました。とするのも竹岡自身が台座に因んだ古美術品を選定しているのです。江戸時代の蒔絵を施した文台や盤、それに琉球の螺鈿の杯などが並んでいました。


竹岡雄二「インターナショナル・アート・マガジン・ラック」 1997年 個人蔵

作品を介在しては変化する景色が面白い。思わず会場内をうろうろと彷徨ってしまいます。いつもとは異なる埼玉県立近代美術館の空間を楽しむことが出来ました。



9月4日まで開催されています。

「竹岡雄二 台座から空間へ」 埼玉県立近代美術館@momas_kouhou
会期:7月9日 (土) ~9月4日 (日)
休館:月曜日。但し7月18日は開館。
時間:10:00~17:30 入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1000(800)円 、大高生800(640)円、中学生以下は無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *MOMASコレクションも観覧可。
住所:さいたま市浦和区常盤9-30-1
交通:JR線北浦和駅西口より徒歩5分。北浦和公園内。
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