「フォスター+パートナーズ展」 東京シティビュー

東京シティビュー内スカイギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52階)
「フォスター+パートナーズ展:都市と建築のイノベーション」
1/1~2/14



東京シティビュー内スカイギャラリーで開催中の「フォスター+パートナーズ展:都市と建築のイノベーション」を見てきました。

1935年にイギリスに生まれ、1999年にはプリツカー賞を受賞した世界的建築家、ノーマン・フォスター。彼が設立した「建築設計組織」(チラシより)がフォスター+パートナーズです。

すでに設立から約50年経過。世界各地で700の受賞歴を持ち、140超のコンペに勝利しているそうです。うち代表的な50のプロジェクトを紹介。現在進行形のものも含みます。大掛かりな模型、そして写真がメインです。逆に図面などはあまりありません。直感的に楽しめました。


「セインズベリー視覚芸術センター」 ノーウィッチ、英国 1974-1978

まずはキャリア初期です。「セインズベリー視覚芸術センター」は民俗学的文物と20世紀美術のコレクションを展示する美術館。空間を一つにまとめ、大胆にも天井のルーバーから光を取り込んでいます。「軽量でフレキブルな構造」(キャプションより)を探求したという建築、その魅力は模型からも見ることが出来ました。


「スタンステッド空港」 スタンステッド、英国 1981-1991

この軽量というキーワード。フォスター・パートナーズ建築の特徴とも言えるのではないでしょうか。一例が「スタンステッド空港」です。複数の鉄骨で支えるツリーの構造、設備機器をコンコース下の地下空間に移し込んでいます。ゆえに屋根は防水と採光の機能を持つのみ。軽い大屋根が内部空間の全てを覆っています。


「ドイツ連邦議会新議事堂、ライヒスターク」 ベルリン、ドイツ 1992-1999

ドイツ連邦議会新議事堂「ライヒスターク」もフォスター・パートナーズの仕事です。と言ってもライヒスタークは既存の建築。完成は1894年、帝政ドイツ時代に建てられたものです。度重なる戦争や過度の改修によってかなり損傷を受けていたそうです。それを東西ドイツ統合後に再生。天井にはモニュメンタルなガラス張りのドームを設置しました。


「大英博物館、グレート・コート」 ロンドン、英国 1994-2000

このリノベーションとも呼べるプロジェクトはほかにもいくつかあります。有名なのは大英博物館です。博物館内部の中庭の「グレート・コート」をフォスターが担当しました。内部はレストランと教育センター。屋根はやはり軽量なガラスです。太陽光が降り注ぐ広場としても機能しています。当時の最先端の工学によって設計されたそうです。


「ボストン美術館」 ボストン、米国 1999-2010

いわゆるミュージアム建築は大英博物館のみに留まりません。「ボストン美術館」です。こちらも開館は19世紀。近年になって改修計画が持ち上がりました。その際に美術館の展示空間を大幅に増やしたそうです。写真中央に光って見えるのが「クリスタル・スパイン」です。建物の主要な二つの構造物の間に差し込みました。やはりガラス。既存の中庭を「宝石箱」と呼ばれるガラスの中に取り込んでいます。


「スイス・リ本社ビル」 ロンドン、英国 2001-2004

高層ビルもずらり。とりわけ目を引くのがスイス・リ本社ビルです。繭のような形をしています。高さは180メートルで41階建てです。最上階には360度で展望可能なクラブ・ルームがあります。また設備においても内部の空調の依存度を下げるなど、環境負荷に配慮した設計となっています。


「北京首都国際空港」 北京、中国 2003-2008

スケールの観点からも圧巻なのは「北京首都国際空港」です。2008年の完成当時は世界最大。北京オリンピックの玄関口として整備されました。増え続ける航空需要に配慮しての巨大なターミナルです。何と全長3キロにも及びます。Y字型に広がるビルはまるで龍のようです。中国の伝統的な文化を象徴してもいます。


「ミヨー橋」 タルン渓谷、フランス 1993-2004

力技だけではない建築における繊細さ。それが最も現れているのは橋のデザインではないでしょうか。とりわけ美しいのが「ミヨー橋」です。フランスはタルン渓谷にまたがる二つの高原を繋ぎ合わせています。全長は2460メートルで高さは344メートルです。なんと東京タワーより高い場所を通過しています。景観に配慮しているというよりも、新たな景観を作り出すデザイン。実に優美な姿を見せていました。


「西九龍文化地区」 香港、中国 2009-

近年では香港の「西九龍文化地区」も凄まじいスケールです。全40ヘクタールの都市プロジェクト。構想は文化地区です。現代美術館、オペラハウス、そしてアリーナ、さらに公園までを一帯で整備しています。

ほぼ全ての写真が撮れましたが、唯一、本年竣工予定のアップル新社屋こと「アップル・キャンパス2」のみ撮影が出来ませんでした。建物は巨大なサークル、まるで飛来しては着陸した異星人の母船のようです。高さは4階建て。床から天井までが凸面ガラスに覆われるそうです。いかにも近未来、次世代を切り開く建築として注目を集めるのではないでしょうか。


「フォスター+パートナーズ展」会場風景

それにしてもフォスター+パートナーズが成し遂げたプロジェクトは多彩。巨大な都市計画からインフラに空港、さらにオフィスや個人住宅にプロダクトデザインまでと規模の如何を問いません。


「火星住居」 2015-

最後に驚いたのが火星住宅のデザインです。これはNASA主催のコンペで、3Dプリンターによって作られたもの。火星の赤茶けた大地にクレーターを掘り、その中で膨らませたモジュールを住居としています。ドーム型にしているのは、火星の過酷な外的環境を踏まえたゆえのことでしょう。また建設を担うのは宇宙飛行士ではなく、事前にプログラムされた半自動ロボットだそうです。いつ実現するかは見当もつきませんが、現実と夢の双方を見据えた面白いプロジェクトではないでしょうか。


「フォスター+パートナーズ展」会場風景

会場は六本木ヒルズ森タワーの東京シティービュー。森美術館の一つ下の展望台内のフロアです。森美術館の「村上隆展」、及び森アーツセンターギャラリーの「フェルメールとレンブラント展」のチケットでは入場出来ません。ご注意下さい。


「フォスター+パートナーズ展」会場入口

2月14日まで開催されています。

「フォスター+パートナーズ展:都市と建築のイノベーション」 東京シティビュー内スカイギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52階)
会期:1月1日(金・祝)~2月14日(日)
休館:会期中無休。
時間:10:00~22:00
 *ただし火曜日は17時で閉館。(11/3は22時まで。) 
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1800円、大学・高校生1200円、中学生以下(4歳まで)600円、65歳以上1500円。
 *本展のチケットで展望台にも入館可。(スカイデッキを除く)
 *森美術館「村上隆の五百羅漢図展」、森アーツセンターギャラリーには入館不可。別途料金が必要。
場所:港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52階
交通:東京メトロ日比谷線六本木駅より地下コンコースにて直結。都営大江戸線六本木駅より徒歩10分。都営地下鉄大江戸線麻布十番駅より徒歩10分。
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