「建築家ピエール・シャローとガラスの家」 パナソニック汐留ミュージアム

パナソニック汐留ミュージアム
「建築家ピエール・シャローとガラスの家」 
7/26-10/13



パナソニック汐留ミュージアムで開催中の「建築家ピエール・シャローとガラスの家」を見て来ました。

「アール・デコ時代の最も革新的な建築家」(同館WEBサイトより)と呼ばれるピエール・シャロー。日本初の個展だそうです。パリのポンピドゥー・センターより図面、模型、写真のほか、家具や照明器具などがやって来ています。

さてシャロー、ひょっとするとあまり知られていないかもしれません。生まれは1883年です。青年期に家具会社に入社。デザインと製図を学び、後に独立。早くも1920年頃にはフランスの装飾芸術家展やサロンにインテリア家具を発表します。


ピエール・シャロー「透視図 サロン」制作年不詳 ポンピドゥー・センター、パリ国立近代美術館

折しも当時はアール・デコの時代。まずはシャローもフランスの装飾の伝統を踏まえた作品を生み出します。

面白いのは金属に対する強い関心です。

1922年に金属職人ルイ・ダルベとの協働関係を築いたシャロー。インテリアに次々と錬鉄を取り込みます。また金属を用いることで家具や照明の接続可動部分に耐久性を得ることにも成功。単に装飾的だけではなく、実用にも耐え得るような機能性の高いインテリアを生み出しました。


ピエール・シャロー「テーブルランプ」1923年 ポンピドゥー・センター、パリ国立近代美術館

照明も数多く手がけています。うち素材としてはアラバスターを用いているのが特徴です。これは半透明の白い鉱物によって出来たものですが、シャローは照明のシェードに使っている。光源があたると少しオレンジ色がかった温かみのある光が放たれます。

またシェードしかり、扇形や円などを組み合わせたデザインが多いのも興味深いところ。そもそもシャローはピカソやブラックを収集するなど、キュビズムに関心がありました。それにシャローはアール・デコ期の建築家ではありますが、最終的に志向したのはモダニズムです。(実際に途中からアール・デコとは決別します。)ひょっとするとその源泉にキュビズムがあったのかもしれません。


ピエール・シャロー「マレ=ステヴァンスのための 事務机」1927年 ポンピドゥー・センター、パリ国立近代美術館

化粧台も目を引きます。茶色のマホガニーにカエデの素材を重ね合わせた化粧台。曲線と直線が交差する。「マレ=ステヴァンスのための事務机」(1927年)はどうでしょうか。天板は木製、支柱は金属製で平べったい。また別の金属の椅子は扇子のように折り畳むことも出来ます。シャローは扇形の構造を好みました。近未来を思わせるような仕上げです。工業的とも呼べる幾何学デザインと木と金属の組み合わせ。これもシャロー・インテリアの特徴と言えそうです。


ピエール・シャロー「ガラスの家」1927-1931年

代表作「ガラスの家」に進みましょう。アパルトマンを改造しての建築作品。顧客であった医師夫妻のための新居です。巨大なガラスブロックのファサード。9m×9mもあります。階段は金属製。得意とした可動式のタンスや間仕切りなどもある。見るからにスタイリッシュな空間です。なお会場では「ガラスの家」の模型のほか、写真資料のスライド映像、さらに室内に設置されていたコート掛けなどを展示。「内」と「外」を分かりやすく見せる工夫がとられていました。


ピエール・シャロー「ガラスの家」1927-1931年

1930年代半ば頃になるとシャローの活動は急速に縮小します。ヨーロッパでは二次大戦も目前。経済状況の悪化も要因だそうです。結果的にシャローは1940年、アメリカへ亡命しました。

よって亡くなるまでの10年間はアメリカでの活動です。「ガラスの家」までの流れからすると作品も少なく、やや寂しくも思えますが、画家のロバート・マザウエルのためのアトリエ兼住宅などは興味深い。アーチ状の建築物。長さは28m。地下を掘り下げている。一方の壁にガラス窓がカーブを描いています。何でも米軍の避難施設を転用したのだそうです。

ところでシャローの装飾デザイン(特に初期)の魅力に鮮やかな色も挙げられていましたが、展示写真は時代もあってか白黒です。まるで分かりません。この辺は図面やスケッチにあたるほかなさそうです。

「世界現代住宅全集13 ピエール・シャロー ガラスの家/ADAエディタトーキョー」

汐留のスペースに17章立ての展示。出品は200点近くにも及びます。如何せん手狭な感は拭えませんが、ガラスの家を頂点に時系列でシャローの制作を追う構成。時に家具や図面が交互に並ぶ。なかなか効果的な展示です。また会場はみかんぐみが手がけています。その辺も見どころの一つと言えそうです。

「建築家ピエール・シャローとガラスの家/鹿島出版会」

10月13日まで開催されています。

「建築家ピエール・シャローとガラスの家」 パナソニック汐留ミュージアム
会期:7月26日(土)~10月13日(月・祝)
休館:水曜日。夏期休館:8月11日(月)~15日(金)
時間:10:00~18:00 *入場は17時半まで。
料金:一般800円、大学生600円、中・高校生200円、小学生以下無料。
 *65歳以上700円、20名以上の団体は各100円引。
 *ホームページ割引あり
住所:港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階
交通:JR線新橋駅銀座口より徒歩5分、東京メトロ銀座線新橋駅2番出口より徒歩3分、都営浅草線新橋駅改札より徒歩3分、都営大江戸線汐留駅3・4番出口より徒歩1分。
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