「絵画の在りか」 東京オペラシティアートギャラリー

東京オペラシティアートギャラリー
「絵画の在りか」 
7/12-9/21



東京オペラシティアートギャラリーで開催中の「絵画の在りか」を見て来ました。

いわゆる現代アートの領域において活動する美術家たちの表現。うち絵画に注目した展覧会です。出展は24名のペインター。いずれも今日も制作を続ける作家ばかりです。

「出品作家紹介」@絵画の在りか展

さて同館内のスペース、区切られた壁面に各作家毎の作品が数点展示されていく。構成はいたってシンプルです。というわけで直感を頼りに惹かれる作家を探して歩きました。

まずは政田武史です。5~6年前になるでしょうか。ワコウ・ワークスなどで何度か個展を見たことのある作家。ともかく特徴的なのは筆触、まるで点描を面的に広げたかのような表現です。


政田武史「HAITOKUKANのマーチ・覗き見OK、カモン」 2012年
油彩、キャンバス 117.0×91.0cm


今回は5点。いずれも映画やテレビ、それに記録写真などを素材としているそうですが、例えば「赤の他人列伝」(2012)は面白い。船に乗る三人の男。猿もいる。映画のポスターでしょうか。それに「HAITOKUKANのマーチ」(2012)も目立つ。高層マンションの立ち並ぶ夜景、都内かもしれません。空は濃いワイン色に染まっている。マンションの窓から白い明かりも漏れています。筆触は太く、細いものもある。そして手前には何故か甲冑を着た男たちが並びます。どこかシュールではないでしょうか。


竹崎和征「67 V」 2013年
ペンキを塗った古い雨戸、アクリル絵具、古い窓枠、キャンバス、油彩 199.0×170.5cm


竹崎和征、テーマは「風景の記憶」だそうです。興味深いのは支持体そのものに古びた窓枠や木の雨戸を用いていること。その一部にペンキで色を塗る。雨戸は作家の身近な場所にあったのでしょうか。平面とは言えどもインスタレーション的な表現ではあります。


五月女哲平「Saturn」 2011年
アクリル絵具、キャンバス 116.5×116.5cm


五月女哲平の「Saturn」(2011)は文字通り土星を描いたものでしょう。白く輝くリングが斜めに星を囲む。星は青いボーダーで塗り分けられています。何でもキャンバスの裏地を利用して薄い絵具を何度も塗り重ねているとか。真っ正面からバスを捉えた「Bus」(2014)も面白い。色面のみで示されたバスのフロント部分。まるで何かのアイコンのようでもある。極めて平面性の強い作品です。奥行きはありません。


今井俊介「untitled」 2013年
アクリル絵具、キャンバス 51.5×45.0cm


今井俊介はどうでしょうか。まるで旗を描いたようなシリーズ。今年の資生堂アートエッグにも出品がありました。色がストライプ状に広がっては交錯し、また流れていく。蛍光色を多用した色遣いも鮮やかですが、シルバーの使い方もことさらに魅惑的。平面の中に揺らぎや動きが生じています。


高橋大輔「無題(マドンナ)」2012-2013年
油彩、ボード 25.0×26.0cm


絵具を盛りに盛る高橋大輔、また魅せてくれました。5点の油彩、他の作家からすると小さな作品かもしれません。ただし存在感は強烈です。溢れてさも垂れ落ちそうな絵具。さらに厚みが増したでしょうか。まるで小さな花を散りばめたような作品もある。絵具が単なる素材を超えてモチーフそのものへと化しています。またタイトルには無題とありますが、サブタイトルにはマドンナとも記されています。東西の絵画作品が参照されているそうです。

まるで静物画のようです。ポットや矩形をモチーフにする高木大地。「window」(2013)は窓というよりも瓶の断面を描いたようにも映ります。水色と白の絵具。そこへ黒い影が切り込む。地と対象との関係は曖昧です。また水色の絵具の下には丸く突き出たようなモチーフが見え隠れしています。モランディという記述もありましたが、そのような雰囲気も感じられました。


風能奈々「片目は鳥の目 片目は虫の眼」 2013年
アクリル絵具、キャンバス 227.5×324.0cm


天井高のあるオペラシティのスペースがあってからこその展示でしょう。風能奈々の「数多夜一夜物語」(2013)です。40センチ四方のパネルがゆうに10枚以上積み上げられています。動物や植物、それにスプーンに鳥かご、はたまた食べかけのチーズなどが描かれている。「片目は鳥の目 片目は虫の眼」(2013)でも同じく動植物。さらに紋様のように広がっています。それにしても緻密な線描です。これは惹かれました。

今感想に挙げた作家は一部に過ぎません。また今回の展示では作家を幅広く紹介することを心がけたそうです。同館のプロジェクトNに出展した作家も南川史門、一人しかいません。そういう意味でも私にとって知らない作家が多く、発見の多い展覧会ではありました。


工藤麻紀子「いぬとねこ」 2011年
油彩、キャンバス 130.0×162.0cm


ただし如何せん20名以上のグループ展、作品の大小はあれども一人4~5点の出品です。個々の作家をじっくり追いかけるというよりも、多くの作家を見せようとする企画。もちろん章立てなどもありません。だからでしょうか。作品単体では面白くとも、一つの展覧会として捉えにくい面はあったような気がしました。

8月3日は日曜日ですが、オペラシティビルの点検日のため入館出来ません。翌8月4日(月)と連休になります。ご注意下さい。

9月21日まで開催されています。

「絵画の在りか」 東京オペラシティアートギャラリー
会期:7月12日(土)~9月21日(日)
休館:月曜日。(祝日の場合は翌火曜日。)8月3日(日)*全館休館日。
時間:11:00~19:00 *金・土は20時まで開館。入場は閉館30分前まで。
料金:一般1000(800)円、大・高生800(600)円、中学生以下無料。
 *( )内は15名以上の団体料金。
 *閉館1時間前以降の入場、及び65歳以上は半額。
住所:新宿区西新宿3-20-2
交通:京王新線初台駅東口直結徒歩5分。
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