ひょうきちの疑問

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イギリス流銀行資本主義とアメリカ流株式資本主義を掛け合わせた連立方程式1

2017-08-17 11:10:03 | 旧世界史12 20C前半

木曜日

銀行と証券会社は今でも金融界の双璧で、互いにパイを奪い合う関係にあるが、
18世紀のイギリスではそうではなかったようだ。

18世紀といえば世界に先駆けてイギリスで産業革命が起こった時期だが、
その産業革命の中心は株式会社ではなかった。
個人経営か同族企業などの中小企業が産業革命の中心だった。
つまりイギリスの産業革命は株式会社が起こしたものではなかったのだ。
しかもそれでイギリスは大発展したのだ。

その時期は金融面では銀行資本の発展期に当たる。
株式会社はまだ発展していないのだから、証券会社(西洋では投資銀行)もまだ発達してはいない。
(株式会社自体は17世紀初めにはオランダ東インド会社の成立によってその形態を整えている。ただこれは当時としては大資本の形態であった。)

つまりイギリスの産業革命は銀行資本の発展によって金融面では支えられていた。
銀行活動の金融的な意味は、他人の資金を預かってそれを別の他人に貸すというだけではない。
そのことによって新たな貨幣を創造することにある。
いわゆる『信用創造』というがそれだ。
(このこと自体は高校生が習うことで難しいことではない。ただどれだけの人がその重大さを理解しているかは疑問である。)

貨幣を造るのは日本銀行などの中央銀行だけだと一般には思われているが、一般の市中銀行も中央銀行に負けず劣らず、貨幣を造っている。実際には中央銀行のつくる通貨量よりも、市中銀行が創造する通貨量の方が大きい。
この目に見えない通貨量の増大が、イギリスの産業革命の裏側にある。
この通貨量の増大に応じて、イギリスは生産活動を増大させていった。
今流にいえば、通貨量の増大に合わせて、国内総生産(GDP)が拡大していった。
そしてこれは株式会社の活動ではなかった。

株式会社の活動が活発になるのは、次の19世紀になってからである。
1775年のアメリカ独立戦争の時期にアメリカではウォール街に証券取引所が発生している。
株式会社の隆盛はここから始まるようなのだ。
いわば18世紀のイギリス流の銀行資本主義に対して、新たに19世紀のアメリカ流の株式資本主義が台頭してくる。

銀行が通貨を創造するのに対して、株式は通貨を創造しない。
銀行への預金が(もともとは詐欺的行為であったにしても)通貨を創造するのに対して、株の売買は通貨を創造しない。
銀行が『貸借』の原理で動くのに対して、株は『売買』の原理で動く。
だから株の売買は通貨を増大させない。
いくら株価が高騰したとしても、それは通貨量そのものが増大したのではなく、資産としての富が株に変化しただけで、通貨自体が増えたのではない。
仮に100万円で買った株が200万円に高騰したとしても、それは200万円で買いたい人がいるからであって、
株を売って200万円手にするのは、株を買った人の200万円を手にしただけであって、世の中の通貨量自体は変わらない。

問題なのは、株を買った人がその株を銀行に預けそれを担保にお金を借りた場合である。この場合には、世の中の通貨量は増える。
そして株が暴落した場合には、銀行は不良債権を抱える危険が高まる。
これが20世紀の金融資本主義である。

現在の金融資本主義の危険度は、このような銀行資本主義と株式資本主義を掛け合わせた連立方程式で解くべきであり、
10倍の危険度と10倍の危険度を掛け合わせれば、100倍の危険度が発生するようなものである。

銀行の信用創造機能と株(証券)取引を結びつけると、かなり危険なことになるが、これは現在普通に行われている。
この連立方程式は普通の人間では解けない。
解けるのはごく限られた一部の人間だけである。
その一部の人々も時々間違いを犯す。
さらに恐いのは、間違いを犯したように見せかけるときである。
その場合はいつも不問にされる。
誰も解けないことをいいことに。

こうやって特定の人間に富が集まる。

ただバブル崩壊の原型はかいま見ることができる。
株をつり上げ、そのつり上がった株を担保に銀行からお金を借りること。
(ただ日本の場合は株ではなく、土地のこともある)
そして株が暴落すれば、株を買った人も、その株を担保に銀行からお金を借りた人も、そして株を担保にお金を貸した銀行も、すべてパーになる。
そしてそれを安値で買いたたく人が出てくる。
1999年、かつて日本を代表する日本長期信用銀行が、アメリカ資本のリップルウッドに二束三文で買いたたかれたことはその典型。