新型コロナワクチン接種に伴う健康被害の補償申請受理件数がこれまでに4000件を超える一方、約3200件が審査中となっており、受理件数に占める割合(審査未了率)が75%を超えていることが、9月9日、厚生労働省が公表した資料でわかった。審査未了件数は半年前の6倍に増え、審査がパンク状態になっている可能性がある。

 これまでのところ、主要メディアはこうした健康被害救済制度に基づく審査の実態や結果の詳細をほとんど報道していない。(詳報とデータファイルはこちら

 

 昨年8月以降、厚労省は、コロナワクチンの健康被害補償申請の審査を本格化。疾病・障害認定審査会にコロナワクチン専門の部会も設け、月1〜2回のペースで審査結果を公表してきた。

 ただ、審査件数のペースは上がっておらず、それを上回る申請件数に追いついていない状況にある(下記グラフ参照)。

 

厚生労働省の疾病・障害認定審査会の資料に基づき、筆者作成
厚生労働省の疾病・障害認定審査会の資料に基づき、筆者作成

 

 9月9日までに989件の審査が終了。920人が被害認定されたのに対し、被害を否認されたのは69人だった。

 被害認定者の大半が死亡に至っていないケースで、入通院費用(医療費等)が補償の対象。

 被害認定者の8割超が女性となっている(詳細はこちら)。

 接種と死亡の因果関係が否定できないとして、死亡一時金・葬祭料の補償が認められたのは3人にとどまっている(90代2人、70代1人)。

 

 健康被害の補償申請受理件数は4200件を超えているが、これは申請書類を受け付ける居住自治体から厚労省に上がってきた数字。「実際に全国の各自治体が受理した件数はこれより多く、実数は不明」(厚労省の担当者)という。

 

健康被害救済制度についての厚労省のパンフレット

 

厚労省のサイトより
厚労省のサイトより

 

 コロナワクチンの健康被害認定者数は、インフルエンザワクチンの認定者数(1977年から44年間の累計で191人)を大きく上回るペースで増えており、現在の申請件数と否認率から、最終的に数千人になる可能性がある。

 仮にそうなったとしても、日本人の約1億人が接種しており、接種者に占める被害認定者数は1万人あたり1人(0.01%)を下回り、大半が入通院治療にとどまるとみられる。

コロナワクチン健康被害認定者数の掲載を見送り

 ただ、厚労省は、一般国民向けQ&Aページで予防接種健康被害救済制度について一通り説明しているが、コロナワクチンの被害認定状況については明らかにしていない。

 別のワクチン別に健康被害認定者数をとりまとめたページでも、2021年末時点のデータに最近更新されたが、コロナワクチンの被害認定者数(2021年末時点で400人)だけが記載されていなかった。

 厚労省の担当者はコロナワクチンのデータ掲載を見送ったことを認め、「その時点ではまだ死亡一時金の給付はなかったため」と説明している。(より詳しい分析記事はこちらへ)