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2020年のアメリカ大統領選以後はムチャクチャ

授業でいえない「公共」 37話 財政政策と予算

2024-03-26 14:23:41 | 高校「公共」

2023.11.9

【政府の役割】
前回、ビットコインを言ったあとに、財政のところに入ったんです。今までは金融政策、そしてここからは財政政策ということです。財政の機能というのは、1番目は終わった。2番目のところまでやった。

1番目は国民から取った税金を皆に還元すると。その際には、個人の車を買ったやりするといけないから、公共財を提供する。物に見える道路とかもあるけれども、みんなの財産として、教育、それから治安を守る警察費、もっと言えばプラス・マスナスはあるけれども、軍隊、日本では軍隊はないということになっているから、自衛隊の防衛費ですね。これは何を守るか。生命を守る。一番基本的なことです。

後で出てくるけど、生命を守るというのは当たり前すぎる無駄に考えているけれども、食料の問題についても日本は先進国中、食料は最低限です。自給率は。30%も満たない。こんな先進国はないんですよ。これはズーっと教科書では日経など経済分野でとらえてるんです。他の国では政治問題なんです。これはどう違うか。経済問題でいうと、日本の高い農産物よりも外国の安い農産物を買った方が得する。それでチャンチャンで終わるけど、食い物がなければ、ミサイルが飛んでくる前に、日本人は餓死するじゃないか、こういう捉え方が外国です。捉え方が全然ちがう。基準は何か。経済効率か、それとも国民の安全か。食料が無くなれば、石油が無くなるどころか、日本にはミサイルは要らないというのは、ずっと前から2つある。まず石油をストップすればミサイルは要らない。食い物をストップすればもうミサイルは要らないと。しかしこれは経済で扱うんです。そこらへんは教科書の書き方なんでしょうけど。

そしては2番目が出て所得の再配分。貧富の差がある。お金持ちからは余計に取る。そうじゃない人からは安く取る。高く取る。安く取る。これは比例的にではなくて、どっちも10%じゃなくて、割合が。高い所から20%、30%、40%、昔は50%を越えていた。今は最高45%です。こういうふうに取る。これは貧富の差の是正。格差があるというのは、社会が不安定化して、国家としてよくない。やっぱり平等性というのは大事です。所得の再配分ということです。
こういうことが、税金の取り方としての考え方の基本にあって、累進課税という。累進というのは、給料が高くなれば高くなるほど高くなる。これが累進です、平等で10%じゃない。これは消費税の考え方で、ここ20年ばかりで出てきた考え方なんです。所得税は、君たちのお父さんの給料、これは安かったら5%、本当は非課税もある。税率は5%から45%まで。これでも何か、高額所得者優遇で、50%から低くなった。
お金持ちの親の相続、これも10%、こういうふうに10%~55%、開きがあります。これが所得再配分という考え方だったんです。しかしこれには、お金持ちは税金が高すぎると言って、そういう声があって、だんだんと低くなった。私はお金持ちになったことがないからよく分からんけど、そういう声が上がっている。

3番目が、経済の安定化です。具体的には経済面はここらへんです。景気は浮き沈みする、好況期、不況期があるけど、それをなるべくなだらかに、波を小さくしたい。そういう政策をとります。具体的には次に言いますけれど、こういうのを財政政策といいます。今まで日本銀行を中心にやってきた政策は、金融政策と言います。お金の量でどうにかなるという、今から50年ぐらい前にアメリカのミルトン・フリードマンという人が言った、マネタリズム、ここは試験範囲で教科書にも太文字で書いてある。えらく難しいみたいですが、アメリカのシカゴ大学ですメモ経済学の巣窟みたいな大学がある。そこでお金の量さえ調整しておけば、経済は安定するんだという考え方が出てきて、非常に今はこの考え方が大きくなって、それを今説明したところです。これが1本の柱です。


【裁量的財政政策】
もう1つは、財政政策です。この財政政策というのは、税金の取り方によって、自動的に景気は調整される。そういう考え方に乗っ取っている。これを裁量的財政政策という。裁量というのは、政府の裁量です。政府が安定すると考える政策です。裁量です。裁量に任せるというのは政府の任意です。税金を上げる、上げない。財政政策ですから、フィスカルポリシーという。ここらへんはヨーロッパの考え方だから、必ず横文字がついてきます。フィスカルは財政です。ファイナンシャル、フィナンシャルというのは財政です。ポリシーは政策ですね。これは財政操作によって景気の上下を調整する。なるべく少なくするということです。基本は文字の量じゃないんですよね。2本柱、これは2つ書いてある。景気が悪い時、景気が良い時と。

日本で1番のお金持ちというのはやはり日本政府です。普通の家にも、お父さんの収入とお母さんの支出がある。お母さんだけじゃないけど、収入と支出があるように、政府にも収入と支出がある。それぞれを変えていくんです。税収というのは政府の収入です。あとこれをどう使うかというのが支出です。この2つです。

それで好景気、景気が良いところから、ここで2つに割れて、これが基本なんです。すこぶる簡単に書いてあるけど、景気が良い時は、私が政府で、君たちが国民として、君たちはいっぱいお金を持っているとします。景気がいいから。それならそのお金をたくさん取れると思って、増税する。

一方が分かれば、不況期はその反対なんですよね。景気が悪くて給料が安くて、君たちはお金を持たない。お金を持たない人間からお金を取るとは言いにくい。人道的にも。だから減税するということです。


【自動安定化装置】
今度はお金の使い方は、景気が悪い時は、お金がないから、仕事もなくて、失業して、働き口がない人が多いから、政府は財政がお金が苦しいけど、政府が借金してでもダムを作ろうとか、高速道路を作ろうとか、そういう事業を起こす。すると君たちの働き口が出てくる。君たちは働いて給料をもらう。生活保護というのはもっと最後の手段です。タダで国からお金をもらうというのは、最後の手段です。普通は働かないとお金はもらえない。
公共事業、これを増やす。景気が悪い時は。景気がいい時は、君たちは働き口もいっぱいあって、ちゃんと給料ももらってるから、する必要はない。縮小するという事です。その時に景気が悪いと、私は借金してでもやる。これが公債です。その借金で国道を作ったりする、先生は大変だな。しかしちょっとした打ち出の小槌があって、まあ誤解を恐れずにいうと、国は日本銀行からお金を借りればいいです。日本銀行は1万円を刷れる。お金は紙でしょう。表面的にはこれは禁止ですよ。これは禁止なんです。しかし裏技はあります。借りれます。

こうやって景気を調整していく。これは銀行ではなく、政府が。このことにも名前がついていて、これを自動安定化装置といいます。また横文字があって、ビルインスタビライザーという。これは丸呑みしてください。ビルトインスタビライザー、これを自動安定化装置という。税金にはこういう経済の自動安定化装置が組み込まれていると。自動的に経済が調整されるんだということです。

そこにまず政府の税収、我々からの税金の取り方については、基本は累進課税です。まず景気がいい時から行こう。何となくこっちからが説明しやすい。好況期には君達の給料が増えるから、さっきの半分の繰り返しですけれども、所得が増加してるから、そのぶん税金を余計とる。政府の所得が増えるとこういうことです。
不況期は、その反対です。もう説明しませんが、この考え方は前にも言ったように、年収100万の家と年収200万の家があって、どっちも税金を10%とる。そうすると、景気が良くなると給料が上がるでしょ。給料が上がるから、税率10%だったら、年収100万円の場合には10万円の税金になる。年収200万円の場合には、税率10%だから20万円の税金になる。それで税収が上がったじゃないか。でもこうじゃないよ。
これは増加分の半分です。年収100万円で10%払うんだから、年収200万円では20%の税率で取ろうということです。そしたら200万円の20%は40万になるから、税収は4倍になる。こういう考えです。これが累進課税です。消費税と全然違う。この消費税の問題点は、この裏側です。どっちが貧乏人、といったらいけないな、生活が苦しい人にとってよりきついか、という問題です。
逆に、考え方は生活が苦しい人はどっちがきついかではなくて、お金持ちはどっちがいいか、税率20%より10%がいいに決まっている。税率が20%に上がったら困る。10%ままでいいのが消費税です。同じ税率です。でも所得税は20%になる。お金持ちにとっては消費税がいい。お金のない人にとっては、みんな一律の消費税はつらい。
不況期にはその逆です。所得が減少して、消費税や所得税も減るということです。


【金融政策】
大きくこの金融政策と財政政策について言いましたけれども、これをここでまとめます。今まで言ったことを。これは1つだけ考えていても、全体が矛盾してるということはよく起こるんですよ。本当は4本柱があるんです。1つは、教科書には触れてないけど、そこまで行きます。

まず金融政策から、ここらへんが試験のメインではある。インフレとはまず何か。正式にはインフレーションですけど、インフレでもオーケーです。これは物の量がリンゴが2つしかない場合、物の量が変わらなかったら、そこにお金だけをどんどん刷りまくって、このクラスにばらまけば、通貨供給量の増加により、インフレが起こる。今実際にこんなことをやっている。アベノミクスっていうのはとにかくお金を刷っていった。そうするとお金の量が100万円のとき、100万円しかなかった時に、これが200万円になれば、これが50万円、100万円の時には。50万と50万で、100万円。物の量と通貨の量というのは、お金は紙でしょう。お金が表してるのは世の中の富の量なんです。だから100万円しかなくて、世の中にリンゴが2つしかなかったら、2で割って50万と50万になる。100万円=リンゴ2つです。

そしたらお金を刷っただけで、100万を200万に倍に刷っただけで、リンゴが4つに倍に増えるのか。そんなことはないでしょう。リンゴの量は変わらないわけですよ。すると、リンゴの値段が50万から100万に倍に上がるだけなんです。実体は何も変わってない。一種のトリックです。
ということは、インフレーションとはお金から見るとどういうことか。もともとは100万円でリンゴ2つ買えた。100万円がリンゴ2つの価値があった。しかしお金を2倍印刷してお金の量を200万円にしても、リンゴ2つは変わらないでしょ。リンゴ2つの量は変わらない。200万円=リンゴ2つです。ということはリンゴの値段が高くなって、逆にお金の価値が安くなったんです。

逆に言うと、リンゴの値段が50万円から100万円に増えたでしょう。リンゴの価値が倍に高くなった。リンゴの価値が倍に高くなったということは、お金の価値は逆に半分になったということです。つまりインフレとは通貨量が増大すること、そして物価が上昇することです。ここらへんは、いつも言うように、文系はけっこう頭が混乱して文系は苦手です。理系のほうが理解する。難しい数式は要らないけれども算数は要る。全体を見る目が要る。特に数字が要る。だからこの場合には、これ以上リンゴの値段が上がらないように、お金の量を減少させる。これが対策です。

では逆に、最近20~30年のように、物の値段が下がっている。これはデフレといいます。それは通貨供給量が減少したからです。さっきとベクトルが逆ですね。そうすると、100万円のリンゴが50万円になるということです。それは物価が下落したということなんです。物価が下がったということは、つまりリンゴの値段が下がったということは、逆にお金の価値が上がったということなんです。100万円で1つしかリンゴが買えなかったのが、100万円で2つのリンゴが買えるようになるということなんです。だから100万円の価値はリンゴ1つから2つに倍増したんです。つまり通貨価値が上昇したということです。

だから、この対策は、物価がこれ以上下落しないようにするためにはお金の量を増やす。これが対策になるということです。アベノミクスというのは、今デフレの中で、これをやろうとしたんです。しかしみんな銀行からお金を借りなかった。銀行から借りてもお金の量は変わらないじゃないか。そうじゃないでしょう。これは試験に出るよ。銀行から借りるだけでお金の量は増えるでしょう。教科書に書いてある。これを何と言うか。これは試験に出します。これは何というか。信用創造と言った。お金は銀行から借りるだけで、お金の量は増えるんです。1万円が増えた。1万円だけがお金ではない。何を言っているか、分からないでしょう。それは支払い準備率の%で、増えるんです。日本はそれを増やそうとしたけれども、誰もお金を借りなかったんです。だから早く貸さないか、貸さないほうが悪いと言って、マイナス金利にした。それでも増えなかった。そういう失敗気味の政策をやってますけれども、ここで書いていることがセオリーです。


【貿易効果】
もう1つ、教科書に書いてないことをいうと、お金の量に関係するのは、貿易が関係するんです。為替は今1ドル150円ぐらいですが、これはどんなにでも上がる。私が知っているここ10年で、下は70円から、上は160円まで。だいたい110円だったのが、いくらでも上下します。なぜそんなに上下するかということも含めて、これは次の国際経済をしないといけないんですけども、ぼちぼちこのことも説明していたほうがいい。
輸入するとどうなるか。実は日本の円というのは、世界にはあまり通用しないと思ってください。個々の国とは通用するじゃないかとか、個別にはあるけれども、日本円では誰も物を売ってくれないんですよ。すぐ、円でいくらじゃなくて、ドルでいくらかという。ドルで売る。100ドルで売るという。日本の円は関係ない。だから日本は、例えばアメリカから100万円のパソコンを輸入しようとした時には、まず円を売ってドルを買う。そのドルでアメリカのパソコンを買うんです。

今から先はどうなるか分からないけど、去年も戦争、今年も戦争で、ここらへんと絡んでるのは、先はよく分からないけれども、少なくとも戦後80年間、世界で最高に強かった通貨はアメリカのドルなんです。この通貨を基準に世界の貿易取引をしてきた。このドル基軸通貨という。ドルが基軸通貨です。だから貿易での物の売り買いは、ほとんどドル表示している。これをドル建てという。


これが少なくとも今までの常識だったんです。ではドルを買ったらいいじゃないかということは、為替に関係するでしょう。円を売ってドルを買えば、どうなるか。需要と供給の関係で値段というのはこのグラフもやった。これは当たる。すべてじゃないよ。半分ぐらいは当たる。需要と供給の関係で、この均衡価格というけど、この均衡価格が上がったり下がったりする。ドルと円の関係も、そうなる。

そうすると、円を売ると、売ったら安くなるんです。ドルを買うと、ドルが高くなるでしょう。これはドル高になる。輸入ばかりしているとドル高になる。そこから次々に連鎖反応が起こっていく。

日本も輸出大国です。日本車は強いですよ。輸出するときには、相手はドルで払う。日本は円でほしい。いやドルだドルだ。100ドル、日本車を売ったら、その100ドルをもって、セブンイレブンで、おばちゃん、コカ・コーラちょうだいと言えば、たたかれる。日本ではドルを使えない。必ず円に換えないといけない。そうすると逆の作用が起こる。ドルを売って、円を買う。こうやって円買いが起こるんです。円買いが起こると、円が今度は高くなる。ドルが安くなる。これを円高ドル安という。
この言い方は、日本のメイン交換通貨は円とドルだから、円高ドル高はあまりません。円が高くなったらドルは逆に安くなる。ドルが高くなったら円は安くなる。そういう十円玉の裏表の関係です。

そうやって輸入をし続けて、外国に日本の円を払えば、このクラスがみんな輸入したとしたら、他のクラスから何か買かったとしたら、君たちのお金は減るでしょう。君たちのこの2年5組のお金は減る。通貨量は減少するんです。お金が減少すると、前のところで言ったように、通貨不足によるデフレ現象、物の値段が上がっていくということが起こる。

では次は、その逆です。輸出すればどうかというと、君たちが隣のクラスに物を輸出したら、君たちはお金をもらって、このクラス全体のお金の量は増えるでしょう。増加する。実体は変わらないのに、お金ばかりが増えたら、モノの値段は上がる。インフレが起こる。こういう循環が起こる。


【まとめ】
次です。このような連鎖反応を大きく4つにまとめると、財政支出、この2つが財政政策です。次が金融政策です。ちょっと先走りして貿易まで言いました。本当は財政支出と税が、財政政策部分です。次が金融政策部分です。この2本柱です。
これで日本の景気調整をやればそれでうまくいく。ホントはうまくいってないですけどね。ここ20~30年は。結果的にはうまくいってない。給料は下がっていく一方で。教科書にもそう書いてある。日本の経済成長率は年率1%であって、先進国中最低です。ここ20~30年間。教科書にそう書いてある。その通りです。うまくいってない。


では何が原因なのかということか、誰も説明しないです。これを説明するのは君たちの仕事ですよ。申し訳ないけど。こうやって組み合わせてポリシーミックスという。要は、柱の狭いジャンルを、1本1本見ていくと問題ないですね。正しいことをやっているように見えるけれども、この4つのどこかが矛盾していくと、結果がうまくいかない。この4つを同時にできる人間というのは、日本は縦割り行政で、ここは金融庁がやるけど、こっちは経済産業省やってる。こっちは財務省がやってるとか、そうやってバラバラにやりだすと、結局全体としては間違っている。そういう全体として間違ったら、誰が間違ってると言うか、それは内閣総理大臣しかいない。そこに政治の役割があるんですけど、しかしその内閣総理大臣はパーでしょ。よく分からないけど。

【財政】 財政支出で、景気が悪い時には、君たちはお金がないから、政府はお金を使う。財政を拡大するという。こういう言い方をするんです。一方が分かれば、あとはその反対です。景気がいい時にはこのクラスは、いっぱいお金を持ってるから財政を縮小する。お金を使わない。

【税金】 そして税金は、景気が悪い時には君たちはお金を持たないから、お金持たない人間から、お金をとるのは悪徳業者以外はそんなことはきない、普通は。お前生活困っているだろうと思ったら、穏便の情というか、税金を下げてやろうかというのが普通ですけどね。それで減税する。景気が良くて、君たちがお金を持っていたら増税です。

増税をしないで、君たちが、どんどんお金というのは人間の欲望で、昔ターザンが、人間は金と女と何とかに目がくらむと言ったんだけど。ターザンという映画があったんです。目をくらんでだんだんバカになる人間が増えていく。日本のバブル経済期の1980年代がまさにそうだった。だからあんまりお金をジャラジャラ持っていたら、税金で取る。

【金融】 景気が悪い時にはお金が足らない。君たちはお金がなくて貧乏になる。だから金融を緩ゆるめてお金を増やすんです。緩めるためには日本銀行何をすることだけを、上げるんですか、下げるですか。タダでは、誰もお金はくれない。お金というのは。足らなかったら借りる。借りたものは必ず返さないといけない。それでも、明日のメシがなかったら、お金を借りる。それが10%で借りるのか、1%で借りるのかは、負担が全然違う。そこなんです。緩和は金利の引き下げです。これは前に説明しました、ここらへんは1つ1つはそんなに難しくないけど、4つを同時にすることはものすごく難しい。普通の人間ではできない。大学を出た人間でも。
それで好況期は、その反対です。君たちはお金を持っているから、金融を引き締めて、金利を上げたら、君たちはお金を借りられないです。お金は返さないといけないから。金利10%で100万を借りる。これは返済が大変です。

【貿易】 そして景気が悪い時にはお金がないから、貿易では外国に売れ売れと、外に売ってお金を儲けて、この2年5組を豊かにしましょうとする。これが輸出促進です。

逆に景気が良くて、君たちがいっぱいお金を持っているときには、これ以上売らなくてもいいとなる。逆に余ったお金で何かを買おうかとなる。これが輸入促進です。こういうのが4本柱、いま言っているのは、基本はここです。これとこれです。財政政策と金融政策、もう一つおまけに貿易対策、そこまでいいました。この4本柱は分かっていないといけないです。



【国家予算】
【一般会計】
次に行きます。熱弁しているつもりですが、なかなか進まない。もう少しサラッといきます。国家予算です。
国がお金をどう使うか。税金をとること、これを独特の言い方をしても教科書用語で歳入といいます。国民からとった税金は、国民に返さないといけない、これは支出になる。これを歳出という言い方をします。これは理屈ではなくて覚えてください。どういう使い方をするか、というのを予算といいます。学校にも予算があります、生徒会だってありますよ。その大規模なものだと思ってください。それに2つあるんですよ。一般的にテレビ新聞で見るのは、一般会計といいます。これが約100兆円ですね。概算で覚えてください。2年前にコロナが起こって、110何兆円になった。一気に10何兆円。新聞にも載っていた。そのうちの9割方は使途不明金、何に使ったか分からない。それで今は済んでる。

それともう一つ、我々がネットで掘れば分かるけれども、なかなか目に触れないのが特別会計です。普通メインはこっちですけれども。不思議なのは特別会計は400兆円です。一般会計よりも4倍もこっちが大きい。これは分からない。公開はしているけど、なぜ分かりにくいかというと、予算がいろいろある。予算が13種類あるんです。


簡単な方から行くと、一般会計は、あの教育予算とか道とか橋とかダムとか、社会保障とか、そういうもんですよ。この特徴は単年度会計という。単年度というのは、1年間でこれだけ使うという事をしていたら、次の年に余らしたら、来年もらえなくなる。これは差し引きゼロ、この分を絶対に使ってしまわないといけない。本当はこれだけで良かったけど、これを来年度にまわすとかダメです。使い切るんです。だから年度末の2月、3月になったらよく見るのが、道路工事が急に増える。余ったといって、道路工事をしようとか。そういうことが起こる。


【特別会計】
それに対して特別会計というのは、繰り越し可なんです。次の年に持ち越し可です。どういうものがあるかというと、一番国民が関係あるは、国民健康保険、今インフルエンザが流行っているけど、ウチのばあさんも病院に行ったけれども、風邪で薬もらうと支払いは3000円ぐらいでしょう。しかし病院の収入は、我々が3000円払ったら、1万円でしょう。3割負担だから。そんなことがなんてできるかというと、君たちのお父さんお母さんたちが毎月の国民健康保険料を払ってるから、1億2000万人が払っている。それを国がプールしている。これは膨大な、膨大な金額になります。これを運営しているのが特別会計の1つですね。

その他に年金です。60歳とか65歳、もっと上がるかもしれないけど、働けなくなったら年金もらいますね。高齢になったら。何でもらえるか、働きだして、20代から30年、40年とずっと掛けてるから。払ってきたからです。払ってなかったら、もらえないです。これを国民年金とか厚生年金とか、それをプールしているのも国です。


余ったお金というのは寝かしていたら利子を生まないから、いろいろ投資してるんです。安全安全と言いながら、損失も結構出しているんですけれども、こういうものがいろいろあって、あと大きいのが、例えば1ドルが70円ぐらいの時には、ドル安でしょう、どるがやすくなったから、これを上げないといけないと言って、政府が1日で5兆円ぐらい介入する。5兆円も。年間収入が100兆円の国が、1日で5兆円の介入をやる。これで80円ぐらいまで上げる。こんなお金がどこにあるかと、これは外為特会といって、外国為替特別会計という長い名前です。でもこの中身が分からないですね。


今から21年前の2002年、ある国会議員が、オレは特別会計を質問してやるといって、すると暴漢に襲われて亡くなった。石井紘基というけど。これも有名な話で、ここらへんはなかなか言いづらいところがあるからこれ以上言わないけど、それくらい特別会計はデカい。

一般会計、これだけではないということは知っておいてください。我々の国の予算は、この一般会計で新聞に載るお金だけではない、ということは知っておいていいことです。こういう2つがある。良く報道されるのは一般会計のことで、もう一つの特別会計の実態は分からないのです。


【財政投融資計画】
その他に、郵便貯金があった。これは過去形で「あった」というべきでしょう。2005年まで郵便局は政府機関であった。世界最大の預金量を誇っていた。政府機関だからこの預金は政府が使えたんです。これをなくして民営化したのが竹中平蔵と小泉純一郎です。これは選挙まで行った。それで国民の了解を得た言ってやったけど、郵便局は結局、民営化されたんですよ。今使えなくなった。2005年というと日本の景気がものすごく悪いころです。1990年からバブル崩壊して。それまで使っていたものを、社会資本としてそれまでは使っていた。お金がない政府にとっては非常によかったんだけれど、選挙したらみんな賛成だとしたんです。これも私はおかしいと私は思ったんだけれど、まあそれはいいです。

それで今は、この名前が財政投融資という。財政投融資。これは郵便貯金からではなくて、債権つまり借金です。国はますます借金が増えてる。借金によって財政にお金を使っている、ということになっている。郵便貯金は今は使えない。今は使えないです。民営化というのは、郵便局が、地元銀行と同じように株式会社なったということだから、地元銀行は民間会社です。民間会社は自分がいいように経営していいから民間会社なんです。それを政府が、オレに1億円使わせろといわれても、イヤだと言える。政府にそういう権限なくなったんです。だから使えない。


【水平的公平】
税金の中心になるもの、税金のことですが、これも正式用語では租税という。税金は国民から公平にとる。公平とは何かというとこれに2つある。1つは、簡単なほうから行くと、水平的公平という。これが一番分かりやすい。所得が同じなら、男であろうと女であろうと、東京に住んでいようと地方に住んでいようと、同じ額の税金をとる。これは当たり前でしょう。難しいことではない。20%の税率だったら、私の収入が100万円だったら税金20万円を取る。東京にいるとか、出自がいいとか、家柄が良かったら、10万円にするとかはない。当たり前のことで、これ以上説明する必要はないでしょう。


【垂直的公平】
もう一つ、垂直的公平がある。これがさっき言ったことと関係するけど、所得が高ければ高い税率を負担する。これがさっき言ったことです。100万円の年収の人と、200万円の年収の人で比べると、年収100万円で税率10%だったら、10万円の税金です。年収200万円で税率10%だったら、20万円の税金です。それで多く負担しているじゃないか。そうじゃないです。そうじゃないよ。

200万円だったら税率20%を負担しなさいという考え方です。これは私が大金持ちだとしても1ヶ月で、いくら贅沢しても、ふつう私は月10万円の生活費だったとして、大金持ちになったとしても、おいしい飯を食って贅沢しても、12万円の生活費ぐらいで、そんなに増えない。人間が1人の生活費はそんなに増えない。そしたら、年収の増え方のほうが大きいでしょう。すると、年収200万円の人はお金が貯まる一方になる。税金は必要最低限の分、つまり必需品を差し引いた余剰金から取るという考え方からすれば、給料の高い人は当然、高い税率を払うべきだという考え方です。これが垂直的公平です。だから所得税、お父さんたちの給料の税率は、給料の金額によって違う。それが不公平だという考え方ではない。それが公平だという考え方です。


この取り方については、我々サラリーマンは自動的に取られてます。1回1回、税務署、税務署というのがある。税金を払いに行くところが、駅の北あたりにある。めったに行かなくていいのは、我々は否応なしに給料から取られているから。給料が入ってきた時には満額で入ってない。すでに差し引かれて、ウワーこんなに引かれているのか。額面20万あっても手取りは10何万ぐらいで、すでに差し引かれている。こういうのを源泉徴収という。もともとの泉から取られている。源泉徴収という。サラリーマンはこれなんです。自分で商売している人は、帳簿付けて、毎年3月に、1年でこれだけ儲けて、オレはいくら税金を納めたらいいですかと納めに行く。これを確定申告という。こういう仕事によって納付の違いがある。要らないことを言うと、日本はこの源泉徴収制度が最も徹底した国です。先進国のなかでも。我々もそれに慣れてしまった感がある。

あとは具体的な税の種類について言うと、直接税と間接税、2つの税金があります。君たちが、すでに払っているのは間接税のなかの消費税です。次の時間に言います。
終わります。






授業でいえない「公共」 36話 金融自由化とBIS規制

2024-03-20 09:07:28 | 高校「公共」

2023.11.7

【イスラエル戦争】
いろいろ気になる政治上のことはありますけれども、今は経済をやっています。今日のG7は、外務大臣会談とかをやってますね、東京で。一言いうと、先月から起こったイスラエル戦争についても、アメリカとロシアの代理戦争のようになってますけど、ロシア側が停戦をいっている。即時停戦と。でもアメリカ側は一時休戦といってます。これはどっちが戦争をやめたいといっているか。ロシア側です。ロシア側のパレスチナ側、アメリカ側のイスラエル側があって、日本の女性の外務大臣がこの間ここに行ったけど、私は見ていてハラハラする。新聞発表はないけど、イスラエル側にもイスラエルを応援しますとか、微妙なことを言っていて、今日G7が東京で開かれています。日本はアメリカ側だから、イスラエル側です。戦争をやめるという方向が非常に弱いですね。日本が議長国となって何かできるか、何か危ない感じがするんですけど。どうなるか、どういう報道になるかね。

アメリカの情勢もいろいろです。前トランプ大統領と現バイデン大統領。ちょっと今週、今までと違うなと思ったのは、アメリカはトランプ優勢なんです。かなり何か月も前からそうだったんですけど、先週ぐらいから新聞でトランプ優勢だと言い始めた。今日の地元新聞も、激戦州でトランプ優勢だとか、地元新聞が本当のことを言い出したなと、私は思ったんです。今は何が本当かというのが非常に分かりづらい。でも、そういう話はずっとネット上では流れてました。
ただ一方では、トランプ大統領が裁判所に起訴されて、裁判にかけられているという報道もあっていて、何が正しいか、見ていてよく分からない人も多い。よく報道を見極めてください。今起こっていることは一種の情報戦だと見ていいでしょう。世論をどちらに誘導するかの。

このイスラエル戦争が起こってから、NHKがあれだけ言っていて、今ほとんど報道されないのが何ですか。ウクライナ戦争です。あれ一体どうなったの、という感じです。ずっと続いているんだけれども、ウクライナ戦争があっているときには、ウクライナの報道ばかりして、それがイスラエル戦争になると、ほとんどウクライナの話題は消えて、イスラエル側の報道ばかりしている。でもウクライナ戦争はちゃんと続いている。これも前に言ったように、ウクライナが劣勢だ、負けそうだという話は、ずっと前からあったんですけど、先週ぐらいから、ウクライナは非常に厳しい、ということが言われはじめているところです。しかし目の前の問題で、我々の生活に一番影響が大きいのは何かというと、石油ですね。

日本がイスラエルを支持したら、パレスチナ側はアラブ諸国でしょう。アラブ諸国というのは産油国です。日本の経済で一番大事なのはこの石油です。石油が来なくなるという危機、それが経済的には一番大きいことです。でもそのことはあまり言われない。人道的なこと、殺されている人たちを人道的に救済する、それは確かにそうですけど、石油の危機についての報道が弱い。





【公開市場操作】
前回言ったことで、ちょっと混乱して説明したなと、私はあとで思った。これは2段階なんです。なぜ混乱したかというと、経済上の日本銀行がやる公開市場操作、横文字でいうと、オープンマーケットオペレーション、このことには国債が絡むんです。この国債は政府の動きなんです。
我々が君たちぐらいのころには、日本は無借金経営で、非常に健全な国だった。経済的には。思想的にはあまりよくなかったけれども、文化的にもあまりよくなかったけれども、経済的には発展していい国だったんです。それが1970年代から、お金が足らないようになって、国の借金がどんどん膨らんで行ったんですよ。そういう状況が話の大前提だった。だから国と国民の関係で言い始めた。それが第1段階です。


この国債を、国の借金の国債を、次に日本銀行がどうするかというのが、この公開市場操作です。この公開市場操作というのが、これなんです。その第1段階では、私と政府で、君たちが国民になってもらったような例えをしたけれど、ここでは私が宣言しないといけなかった。
私が今から日本銀行になると、君たちは地元銀行、ここの金融機関というのは地元銀行とか都市銀行なんです。そこで第2段階にバージョンが変わったんです。それがあいまいだった。これはあくまでも日本銀行の金融政策です。


もう一つ、今日の最後あたりで説明するのは、財政政策といって国のお金の使い方がある。今まで言っていたのは日本銀行のやり方です。これを金融政策といって、そのことを説明しました。これは基本的に難しい。難しいから、試験問題はまだ作ってないけど、出そうか、出すまいか。出せるんです。ここらへん、どっちが増加するかとか、景気がいいときか悪いときか、非常にレベルとしては、昔は高校生に、こんなことは教えてない。それはそのはず、今までやったことがような、教科書に書いてある「非伝統的」というのは、今までやったことはないようなことをやり始めている。それしかできない。ここ20~30年間は。非常に例外的で難しいことをやってるという事なんです。


【日本の低金利】
それで日本の異常さというのは、これは金利です。もう20年、1990年代から、10年前からでもそうですけど、このグラフをみてください。他のこっちのほうのイギリスとかアメリカのこの金利が普通です。ふつうは5~6%あるけど、日本はもう20年間ほとんどゼロでしょう。こういう低金利です。金利は5~6%あれば上下できるんですよ。これが今までの金融政策の中心だったんです。しかし金利がゼロになると、上げられないから、ゼロにせざるをえないですね。しかしゼロ以下というとこれは異常です。だから上にも行けない、下にも行けない。これぐらいゼロに張り付いてる非常に例外的な期間です。例外的というか、異常な期間です。今は。そういう景気の悪さがある。景気がもっとよかったら普通は5~6%ある。景気が悪いから、金利がほぼゼロになってる。ゼロに張り付いている。

そのおまけで、これは応用技ですけど、金利が低いと日本の円は安くなる。10年前まで1ドルは70円台だった。これはあまりに日本の円が高すぎる。ドルが安すぎたから、その後110円ぐらいで10年間ぐらい来ていた。どんどん今150円ぐらい来ている。ドルが高くなっている。円の価値が安くなっている。つまり円の価値があると思う人が少ないんです。だから円が安くなっている。円が安くなると、昔は100万円持っていれば海外旅行に行けた。しかしこの円が安くなるということは、100万円でなかなか行けない。もし行っても、向こうの物価が、外国の物価が高も高くなるんです。

逆に円が安いというのは、日本の物価が安い。資産が安いんです。だからインバウンドで、どこが来ているか。中国人がいっぱい来てます。外国人がいっぱい来てます。東京の雷門とか浅草とか、あのあたりに行ったら日本人もう半分もいない。外国人ばかりです。東京だけではなくて、九州では湯布院とか、温泉の。日本人と同じ顔です。中国人とか韓国人とか。ちょっと見かけは派手です。ずっと近寄っていくと、何を言っているのか、日本語が聞こえてくるか、近づいても、何を言っているのかよく分からない。日本語ではない。中国人とか韓国人とか。なぜ日本に来るか。日本の物が安いからです。安いところをめがけて、その割には日本のサービスはいいから、こんなに安かったらと。まあ日本の資産が落ちているんです。円安が進行している。ここらへんは連続技になる。金融というのは。ボケーッとしていて分かるほど、君たちは受験は関係ないけど、受験用に勉強させようという気は全然ないし、私も受験用の説明はしないけれども、ボケーッと聞いていて分かるほど簡単でもない。次から次に連鎖反応が起こっていくから。

今までは金融政策をやりました。しかし次の時間からは財政政策をします。これが2本柱になります。これは次の時間に言いますけれども、こういうふうに2つの柱でやる。政策はポリシーでしょう。政策が2つミックス、混合している。これをポリシーミックスという言い方をします。その一方の金融政策を今まで言いました。


【金融の自由化】
それで金融のことは、もうちょっと続きます。このあたりも難しいですよ。難しいと思う。10年前だったら、大学の経済学部の先生が説明するようなことだと思う。最近初めて起こったことですから。

日本は1990年から景気が悪くなった。これがバブル崩壊です。バーンと落ちて。1990年、バブル崩壊です。景気が悪くてみんな日本人が苦しんでいる中で、政府は金融の自由化というのをやるんです。自由化の意味は、自由でのびのび、そう考えてもいいけれど、その反面、自由にやるということは競争の世界に入るということです。競争、経済的に自由競争することであって、日本は痛めつけられている。体を鍛えられるときには健康なときにやる。病み上がりの人間にグランド10周走らせたら死んでしまう。これはそういうことなんです。結論から言うと。この金融の自由化というのは、大きく分けて3つあるけど、なぜか教科書には2つしか書いていません。

1つは業務の自由化という。今まで銀行というのは、預金と貸し出しだけだったんです。君たちは銀行に行かないかも知れないけれども、今の銀行は国債も売っている。進んでる都銀なんかは株を売っている。これは証券会社の仕事だったんです。それからどうかすると、終身の、いつ何時死ぬかもしれないから、保険を売っている。交通事故にあうから車の保険を売っていたりする。これは保険会社の仕事だったんです。これを今はやっていい。業務の相互乗り入れを可能にした。こういうふうに自由化したら、普通の小売店だって、オレだって送金ぐらいできるぞといって、セブンイレブンで送金できる。セブン銀行があるね。セブンイレブンの横にある。あれは銀行です。自由化したら誰だって銀行ができる。こういう業務の自由化。そのぶん、銀行、証券会社、保険会社、そういうもの競争が激しくなっていく。体力はこういう時期です。競争するというのは、ここでやられる。しかし、ここでやり始める。

2つ目は金利の自由化、それまでは、国が全国一律、A銀行の預金金利は例えば5%にする、それならB銀行の金利も5%というように国が決めていたんです。金利は一律だったのが、A銀行が6%にしたいと言えば、していいよ、という。B銀行が4%にしたいと言えば、していいよ、という。すると預金はどっちに集まるか、4%よりも6%のほうが預金にはいい。これは競争です。銀行も競争にさらされていく。金利の自由化というのをやる。

教科書に書いてない3つ目は、実はこれが一番、目に見えないけれどもボディブローのように効いてくるんです。ボディーブローはプロの技です。素人がボクシング見て、ウワーっと沸くのは顔面パンチ、特に一発でボコッとやるラッキーパンチ、しかしプロでこいつはと思うのは、ボテッ、ボテッと打つ。打たれる方は、ウッと一瞬うなるんですよ。顔面パンチはパンと天国に行く。ボディーブローはウッウッとくる。ずっと打たれていると、足からガクッと来る。顔面パンチは打たれた瞬間にパーンと倒れるから分かりやすい。
このボディーブローのように効いてくるのが、為替の自由化という。為替というのは1ドル70円とか、110円とかいう、そのことです。これは今までは、円をドルに換えるのは、それまでは貿易取引、つまり物が介在しないとドルを買えなかったんです。


私がいくらお金を持っていても、ドルを買いたいと言って地元銀行に行っても、買えなかった。海外旅行に何十年か前に、若い時に行く時に、ドルは買えないから、当時はトラベラーズチェックといって、ものすごく面倒くさいことを、小切手みたいなものを持っていかないと行けなかった。それくらい円とドルを交換するというは禁止されていたんです。それで必ず物を介在させた。外国車を輸出したらドルと交換できるとか、しかし今は、物は全然なくても、私が1万円をもっていてこれを、100ドルにもならないけど、100ドルに換えたいと、地元銀行に出向けば、これは交換できる。これがいわゆるドル預金です。ドル預金ができるということは、アメリカ人も日本で円預金できるということです。では円預金したアメリカの大金持ちは何をするか。日本の株を買っている。そのほかにも、いろいろ買える。そうすると、こういうことはそれまでできなかった。でもそれができるようになって、外国人の株式保有、5%から30%に上がった。30%を超えたら、過半数を超えなくても、仲間を呼んで、会社の経営権を握れる。
こうやって買われた企業がいっぱい出てきている。

こういう3つの柱というのを1990年代からやり始めました。これもタイミングです。元気な時にやるのは競争させる、競争というのが自由化です。自由化の意味は、分かりやすくいうと競争です。経済的な意味は。体が弱ったときに、こんなことしたら勝てないでしょ。


【バーゼル合意】
さらにこの金融の自由化の影響はどうなるか。金融政策を世界的に一律にやろうという動きがあって、世の中の銀行にはドルと円を、貿易とかで、これをどこで決済するかというのは、とても難しくて、一つ一つやっていたら、こんなこと、貿易の総額をどうやって国家間で調整するかというのはできないから、全世界をまとめて、銀行同士の通貨のやりとりをまとめて、一括して決済する銀行というのが、実はスイスにある。

スイスのイメージは、アルプスの少女ハイジが日本の定番ですけれども、金融界ではそうじゃない。あんな小さな国が今まで侵略も受けずに、しかも中立で独立国を維持できるのか。それはがっぽりお金を持っているからです。ここに世界のお金が集まっているからです。スイスは金融国家です。スイスはアルプスの少女ハイジのイメージで、戦争は中立、中立というと戦争をしない国だと思っている、非武装中立と思ってる人がけっこう日本にいる。
あのイメージで、草原で羊がいて、ハイジがそれを可愛がっている、そういうイメージがあるんですけれども、スイスは軍隊を持ってます。徴兵制もあります。重武装中立です。攻めて来たら絶対戦ってやるぞと。ただどこの国とも仲間にはならないという。それはそうです。スイスは、こっちにフランス、こっちにドイツがいて、南にイタリアがある。どこと仲間になっても、あと2つが文句言う。それぐらいなら仲間にならない、そっちのほうが健全な知恵です。スイスはどことも仲間にならないということもあって、お金が集まるところです。そのスイスのバーゼルというところに、今の話は余計なことです。スイスのイメージは、アルプスの少女ハイジじゃないということです。


バーゼルというところ、スイスの都市の名前です。そこに国際決済銀行といって、円とドル、円とユーロを決済するような銀行がある。ここがお前は仲間に入れないとか言われたら、日本は貿易ができなくなる。だから日本銀行だって、ここには頭が上がらない。言われたとおりにするしかない。この国際決済銀行、これは分かりにくく書いてある。書いてあるというか、省略して書くと分かりにくいでしょう。この国際決済銀行のことを英語の頭文字をとって、BISという。私が単語が分かるのはBがバンクでしょう。Iはインターナショナルでしょう。Sがシステムか、分からないけれども、誰も知らないです。略してBISという。そこが取り決めしたんですから、それをBIS規制という。
それは加盟国、ほとんどの主要国は、これは話が長いでしょう。これは難しいです。日本人の多くは知らないです。簡単に分かるような話ではない。これに参加してる国が、分かりました、言うことを聞きますと合意した。これをバーゼル合意という。


話はまだ続きます。それが1988年、日本がバブル崩壊して弱っていく2年前ですよ。その時にどういう取り決めをしたかというと、5年後、日本はこの時にはバブル崩壊してます。1993年です。銀行の自己資本比率を融資額の8%以上にしなさいという。君たちで、これで意味が分かったら天才だと思う。しかしこれぐらい試験に出るんです。模擬試験とかに。これはどういうことかというと、自己資本というのは、株式の量ですよ。銀行も株式会社だから。その株式が、銀行はそしてお金を貸し出してるでしょ。貸し出している量を融資額といいます。そして自己資本、これが株です。これを8%以上にする、というよりも、下の書き方が分かりやすい。融資額は自己資本の12.5倍以内にしないといけない。この言い方は意味もなく難しいです。


融資額があって、自己資本額があって、つまり株があって、言葉通りいうと、融資額に対して自己資本比率は8%以上に自己資本を増やさないといけない、ということは、逆に融資額から見たら、自己資本がどうなるか。融資額が100万円だとすると、そしたら、ここらへんはもろに算数が要る。雑談みたいに聞いていても分からないです。自己資本というのは、融資額が100万としたら、8万です。8%以上にしなさい、だけども、日本は健全経営だったけれども、歴史的にこの自己資本比率がヨーロッパの銀行よりも低かったんですね。


そこが日本の銀行とヨーロッパの銀行やアメリカの銀行との違いだったんです。だから、例えば自己資本が7万円しかなかったら、この12.5倍以内しか融資、つまり貸し出しはできないんですね。ということは、融資額が87.5万円になるんです。


そのころ銀行はバブルが崩壊して、経済状態が非常に悪い。会社の社長はお金がなくて困ってる。だから銀行からお金を借りたい。しかしそこにBIS規制はお金を貸すなと言ったんです。意味が分かるかな。よく考えてください。これはそういう意味なんです。自己資本比率を8%以上にしなさいと言ったけれども、自己資本である株を、7%を8%にするのは、ものすごくお金がかかって、なかなかできない。できなければも、これを守ろうとすると、かえって自分が貸している100万円、これを明日返せと言って融資額を減らしたほうが、手っ取り早いんです。貸さないどころか、貸しているお金を明日までに返せという。引きはがしです。つまり貸し渋り、引きはがしが起こります。景気は悪い。一般の中小企業はバタバタと潰れる。ここらへんが国際的な動きと、日本のバブル崩壊後の経済というのが、非常にタイミング悪くぶつかるんです。ワザとじゃないかと思うくらい。

1990年にバブル崩壊です。
このバブル崩壊の時も、私はこのとき100万円ぐらいのお金を持っていたけど、バブルが崩壊して景気が悪くなったら、普通は金利を下げないといけない。これがバブル崩壊後1年間、非常に不思議だったのは、私が銀行の100万円の金利を見ていると上がった。景気が悪いときに金利を上げたんです。1年間。金利を上げたら、お金がない人はお金を借りられなくなる。そうすると倒産する。これを決めたのは、有名な日銀総裁の三重野康という日銀総裁だったけど、この人が金利を上げ続けた。あれも不思議だった。こんなことしてたら経済の復活できるもんかと、人は言っていた。その通り30年間、復活できない。ここらへんは言い始めたらキリがない、なぜこんなことをやったのか、ということがいっぱい出てくる。

とにかく日本は景気が悪いなかで、銀行が中小企業にお金を貸さない。つまり助けない。これが貸し渋り、これを続けていったということです。なぜ日本の不況が30年も続いたかという理由の1つかも知れない。ただそういったことこれおかしいという大学の先生はあまりいなかった。私のようなバカ人間は、バカでもないけど、後になって分かる。10年、20年経ってから分かってきた。そういえばあの時、と。


それでバーゼル合意以後の日本は、銀行の積極的な融資が困難になっていく。
そして、お金も貸せないけど、それをきちっと守れる銀行も少なかったから、こういう民間の銀行に政府は、これを助けるために、中小企業ではなくて、銀行を助けるために、政府が公的資金を投入した。

これは政府の資金です。銀行は民間です。このことの意味は何か。公的資金というのは我々の税金です。一番わかりやすく誤解を恐れずに言うと、我々の税金を地元銀行を救済するために使った。では地元銀行は政府機関なのかというと、民間の株式会社です。一民間企業を政府のお金で助けるということは、そんな簡単にやってはいけないことなんです。でもこういうことをやった。


【大蔵省の解体】
同時に、今まで金融行政をやっていた大蔵省というのを解体した。今は財務省になっている。大蔵省というのは、君たちが生まれてからは聞かないでしょう。我々はお金というと、やっぱり大蔵省、これは奈良時代からある大蔵省ですけれども、それを解体して、お金の使い方、税金の使い方、これは財務省になったんです。今は。

しかしもう一つの管轄が、大蔵省は銀行の金融政策を監督する省庁だった。それを分離した。大蔵大臣の管轄じゃないようにした。金融庁という別の組織にした。だから財務省がどうしろと、オレたちに関係ない、という。財務省の言うことを聞かない。この時に、ノーパンしゃぶしゃぶ事件とか、大蔵省たたきの事件もあったんですけど、あれもいろいろ言われて、まあいいか、それは。


【金融機関の独占化】
日本の経済的な苦しさは変わらない。銀行も苦しい。その一方で、外国為替の自由化で、外国資本がどんどん日本に入ってくる。外国の巨大資本が。これから守らないといけないという理由です。これから日本の銀行を守らないといけないということで、体力の弱い銀行同士を早く合体して、ずうたいを大きくしろ。小さかったら食われてしまうから、ドンドン大きくなったら食いにくくなるから、大きくなれ。見事に、独占禁止法どこ行くものぞです。それで巨大銀行ができた。これをメガバンクといいます。

それまでは大銀行でも、東京銀行とか、太陽神戸銀行とか、第一勧業銀行とか、富士銀行とか、君たちが知らないような銀行、一流企業がいっぱいあって、世界のベストテンぐらいの銀行だった。それがどんどん合体して、今はもう一般的に3つしか知らない。都市銀行というと。三菱UFJ銀行、これは三和銀行というのがあって、それと三菱銀行。もう1つは三井銀行というのがあった。住友銀行というのがあった。三大財閥の2つでライバルだったんです。合体です。三井住友銀行になった。そしてみずほ銀行、これは第一勧銀かな。ほぼこういうトップ3の銀行の独占が進む。こういうことをやったのは、外国企業への対抗上ということになっています。


これは、次の時間にも言うけれども、その間に国民からの税金は上がってるでしょ。消費税も、3%、5%、8%、10%まで上がっている。では大企業も税金を払わないといけない。法人税というのを。これが上がってるか、落ちているんです。なんで国民の税金を上げて、企業の税金、税率は下がっているのか。これを使う。大企業に対抗上。外国企業に負けないように。これもいろいろな話はあるんですけど、これは教科書に書いてあることです。


それでますます巨大銀行が成立した。そういうのを金融コングロマリットといいます。コングロマリット、大大企業みたいなものです。これが成立した。つまり金融の独占化が進んでる。しかしさっきまで独占したらいけないという話をしていたけど。ある年の3年生、先生、独占したらいけないと言っていたじゃないですかと言う。そうです。矛盾してます。企業の独占化傾向です。

あとは、例えば地元銀行は民間企業で、株式会社だから、民間の株式会社が倒産した場合には、そこの負債というのはパーになります。だから、イヤ地元銀行は健全な銀行ですよ。ただ例です。噂が噂を呼んでから、地元銀行は危なくない。私が100万円を地元銀行に預けていて、もしその地元銀行が倒産したら、私の100万円は戻ってくるか。これは戻ってきません。原則的には。しかしそれでは国民の不安がるからと言って、ペイオフというのをはじめた。ペイオフ解禁という言葉で。これは何か。金融機関が倒産しても、1金融機関につき1000万円までの預金は払い戻しますということです。それで国民が安心する。なんで、安心させないといけないか。金融不安がずっとあるから。これをペイオフいいます。このような金融不安も、2000年代初めぐらいまでは、今でもあるけど、ずっとありました。不良債権問題というのが続きました。


【仮想通貨】
それで最近は、この金融というのが、最近は理系の仕事ですよね、パソコン上で、フィンテックという技術が、ここらへんは私はよく分からないけど、そういう技術が開発されている。どういう単語かというと、2つの単語の造語です。テックはテクノロジーです。フィンはファイナンスまたはフィナンス、フィナンステクノロジーという。詳しいこと分からないけど、こういう技術を使って生み出されたサイバー空間上の通貨が、今は通貨としての市民権を得ている。これがビットコインです。発明者は不明だけど、ナカモトサトシといわれる。イヤ日本人? 分からない。しかし、サトシナカモトというと、普通は日本人でしょう。でも分からない。どこの誰か。その人がバラまいた。こういうのを仮想通貨といいます。それは政府が発行したんじゃない。勝手にバラまいた。便利だぞということで。

それが盗まれない暗号があるみたいだから暗号資産ともいう。この暗号技術がブロックチェーンです。聞いたことあるでしょう。これを使ってる。私はこの意味が分からなかったけれども、こういう仕事をしているから、何でも試すんです。10年前、1ビットコイン、2万円ぐらい。20万だったら買えないけれども。2万で買った。そして何年か待っていると20万円になった、そしたら差額が18万円だから売りたくなる。それで売った。儲かったと喜んでいたら、1年もたたずに200万円になった。人からは、おまえバカじゃないかと言われた。儲けたけど。これは最高で800万円ぐらいまで行った。それが今は600万円ぐらいかな。とにかくもともとはタダです。大化けしている。でもこれは異常ですね。

これは通貨で、不法通貨ではない。ただこれが不思議なのは、お金には、ふつう発行元、昔の金貨だったらもともとは政府が発行する。しかし200年前のアメリカ、300年前のイギリスから、政府に代わって中央銀行が発行するという、発行元がある。これは発行元がないんです。こういう通貨です。ナカモトサトシ、サトシ・ナカモトさんという人が作ったと言われる。ここが一番の特徴です。こういう通貨が出てきた。ちょっと不自然ですけど。


【デジタル通貨】
この仮想通貨ともう一つ、似て異なるものがある。同じようなイメージだけれども違うものがある。デジタル通貨というのが今出ようとし始めている。これに一番熱心な国はどこか。日本は出遅れています。中国です。中国人のお金の払い方、私も中国に行ったことがないけれども、現金はほとんど使えないといっている。日本人の若い人たちが、電車でも何でも携帯でピッピッとやる。何でもそれで買う。映像で出ているからたぶん本当じゃないかな。

デジタル人民元。中国の通貨は人民元というんです。中国語ではレンミンビとかいうみたいですが、日本語読みして人民元です。これはビットコインのように発行主体がないわけではない。これはしっかりと中国の政府、正確にいうと中国の中央銀行が発行するものです。日本に日本銀行があるように、中国にも中国人民銀行という中央銀行があります。そこが発行するんです。大まかに言うと、セブンイレブンのペイペイみたいなものかな。このブロックチェーンは教科書用語です。ペイペイとブロックチェーンのビットコインとは違うんです。構造が違う。価値は同じかも知れないけど、構造が全然違う。ペイペイは発行元があるんです。
こういう訳の分からない、お金とはいったい何なのかという世界で、コンピューター技術だけで、いくらでもお金ができたりする。これでいいんだろうか。これは理系の技術です。こういう世界になっている。これには発行主体がある。今各国の政府は、こういうことを狙っている。そういう国がある。実現するのかしないのか分からないけれども、よく話題になる。
それでここまでが今お金の話、金融政策の話です、最後はビットコインです。




【財政政策】
ここからは、次に政府の動き、財政政策に行きます。さっきまでは日本銀行の金融政策です。2本柱の一つ。あとの一つです。政府の行う経済活動のことを財政という。この主体は政府のことです。国民からお金を集めて、1億2000万人から何十万のお金を集めてる最大の金持ちというのは、やはり何といっても政府です。1億200万人から税金を取っているんだから、すごいお金です。これに匹敵するような大企業はない。これがどうお金をっていうの日本の経済に直結する。基本的な仕事は、我々のお金を使って、みんなの役に立つようなもの。君の家とか何とか、君のクルマを特別に買ってやるとか、それはダメよ。こういうのを横領という。政治家のポケットに入れる。こういうのを横領という。そうではなくて、みんなの役に立つ。道を作る、高速を作る。ダムを作る、公園を作る、港を作る、飛行場を作る、飛行場は株式会社か。こういうのを公共財といいますね。これにお金を使うことを公共投資という。

学校を作るのもそれです。ものだけではなくて、そして優秀な生徒を育てる。これ一番価値があることだと思うけど、これにお金を使う。しかしこれも20年前から変わったんですよ。昔はいろいろもっと、学校に使うお金はあったんですけど、やっぱり減らされてきた。これは現実としてある。私も30数年やってきて。教育もその一環です。お巡りさんを増やして治安をよくするとか、道路や公園も、人的または物的に。こういうのを公共財といいます。こうやって国民から集めたものを適正に配分する、という役割が政府にある。それが回り回って、我々のメリットにもなる。

それからもう一つは、所得再配分という。世の中、自由主義というのは、年収1000万もらう者と、年収100万もらう者、そういう差はどうしても、あまりよくないけれども必ず出てくるんです。そういう人には、例えば年収100万円だったら税金を10%取る。年収1000万の人は、月収でもいいけど、月収1000万というのはまずいない。年収1000万だったらいる。これも10%。これが平等か。そうじゃないんです。100万で10%なら、1000万だったら20%、30%取る。これが平等だという考え方です。消費税で考えると分からない。消費税は老いも若きも、貧乏人も金持ちも、全部10%です。これで平等だと我々は慣れている。そうじゃない。税金の考え方というのは。こういう考えが10%、20%、30%、所得によって違う。こういうのを累進課税という。こうやって所得税は、お父さんたちの給料の税率は、一律10%じゃない。5%~45%の開きがある。昔はもっと50%以上あった。相続税、お金持ち、親が財産を持っている。その相続税、10%~55%、違うんです。差をつけるのが公平だという考え方です。

ここらへんは何が正しかは、歴史的に決まってないです。決めるのは誰か。民主国家は国民の投票です。どういう政治家を選ぶかで。それで変わる。30年間ズルズルと別の方向に行った感じがあるけど。

終わります。



授業でいえない「公共」 35話 日本銀行の金融政策

2024-03-08 07:37:28 | 高校「公共」

2023.11.2

前回の授業では金本位制とか金融機関のことを話していました。これは現代社会だから、今は公共という名に変わりましたけど、もともとは現代社会ですから、評価が固まってないここ20~30年間で起こったことも出てきて、それは新聞レベルではあるけど、高校生レベルから見ると、昔から見るととても内容が難しくなってきている。イレギュラーな時代になって、基本的なことをやれなくなったからです。

そういう話の続きなんですが、9月から国会が始まった。政治面はまだやってないですけど。国会中継をテレビでやってないから、ネットで国会中継を見ていたら、こういうのが出てきたんです。やっぱり国会が始まらないと分からない。なぜ国会中継をしないんでしょうか。
今あってる国会、9月から始まった国会、これを臨時国会といいます。これは臨時なんですよ。では本物はいつあったのかというと、もう今11月でしょう。もう終わったんです。1月から6月までで。1月から6月までを、通常国会というけど、これが本物なんです。しかし今年はテレビ放送がなくて、見れなかったでしょ。なかったんですよ。でも例年はあるんですよ。でも今年はなかった。NHKは放送しなかったんです。

最近の日本は不思議な国で、相撲中継はやっても国会中継はしない。それで「みなさまのNHK」といっている。その国会中継がなかったんです。それが異例だった。なぜ国会中継がないのか。報道されないことに気づくというのは結構難しいことです。我々は仕事があるからなかなか全部は見れないけど、時々NHKを見たら国の政治がどうなっているかが分かっていた。しかし今年はテレビで放送しなかった。だから見れなかった。その間にも、マイナンバーとか大揺れに揺れて、河野太郎がマンナンバー大臣で、マイナンバーを作ったら2万円やるというキャンペーンみたいなことまでやっていた。その2万円は我々の税金です。しかしどうも雲行きは怪しくなってきた。大もめなんです。でも放送されなかった。この本当の国会、通常国会が今年は放送がなかった、これが今年の一番の問題ですよ。通常国会は常会とも言って、二つの言い方があるけれど、今あっているのはそれとは別の臨時国会です。本物は放送しなくて、臨時国会を放送し始めたというのは、おかしいことです。しかも時々しか放送しない。

このプリントは昨日の国会資料ですが、私もずっと見てるわけじゃないけれども、あることをネットで検索していたら、こういう国会質疑があった。それはYouTubeでも見れます。これは分かりやすい。それが今配ったプリントです。こういうのが昨日、国会で取り上げられていました。

【非正規雇用】
1番目のグラフです。これはモノの本には書いてあることですが、しかし新聞テレビでこういうことを取り上げたのを、私は初めて見たんです。モノの本には書いてあるけど、しかし新聞やテレビがキチンと報道しない。だから普通の人は知らない。私は仕事だから知っているといっても別に自慢にはならないけど、こんな分かりやすいことをなぜ報道しないのかとズッと疑問に思っていた。新聞で言わないから、ある国会議員がついに国会で取り上げて、放送された。
これは非正規雇用の問題です。この雇用問題は労働問題のところでやるはずですけど、まだ政治分野もやってないから、このあたりは飛ばそうかなと思っていましたが、いい機会だからここでやります。
20年前から何が変わったかというと、非正規雇用というのが当たり前のように世間に広まった。でもこれはもともと禁止だったんです。それはアルバイトとかパート労働は昔からあったけど、ここでの中心は派遣労働です。派遣労働とは、雇い主と働いている会社が別ということです。こういうイレギュラーな契約は、従来はしたらいけなかった。それができるようになった。
これは教科書にも書いてあるけど、今までは一般的に終身雇用だった。今でもそうです。一度大学を出て働いたら定年まで勤める。しかしこれが批判的に教科書には書かれている。そして年功序列は古くて、これからは能力主義だ、みたいなことが書いてある。そういう雇用形態に変わってきた。そうやって非正規雇用が増えてきた。


非正規雇用の反対は何か。君たちは働いたことがないからピンとこないかも知れないけど、いわゆるサラリーマンは普通は正規雇用だったんです。1か月の給料というのがちゃんと決まっていて、有給休暇もある。健康保険や年金の負担も企業が援助する。
逆に一番不安定なのは時給労働です。いま新聞では最低賃金のことばかり言ってるけど、この最低賃金というのは時給労働です。時給労働がダメだとは言うつもりはないけど、このクラスの人は時給労働する人は少ないでしょう。多くの人は正規雇用になる。本当は最低賃金よりも、その基本給が大事なんです。ベアと我々は言うけど、ベアをいくらにするか。毎年5月に春闘があるけど、そこで給料が上がるかどうかなんです。その給料が30年間ほとんど上がってない。それどころか非正規雇用のこのグラフを見ると、これは1990年からの30年間のグラフですが、非正規雇用がどんどん増えている。それに対して実質賃金はダダ下がりです。このグラフはハッキリとそれを示しています。


しかし一方では、これからは終身雇用ではなくて能力主義だという考えが、この30年間に出てきた。教科書にもムニャムニャと、そんなことも書いてあるけど、30年間で一応結論みたいなものが見えてきた。私も20年前は、こういうことを教科書通り言っていた。これからの働き方はこうなると。教科書に書いてあることを。しかしその結果、30年たって日本のGDPは上がらない。給料も上がらない。雇用は不安定になって、実質賃金はどうかというと、逆に下がっている。上がったのは税金だけです。そのころは消費税は5%だった。

景気が悪い時は、普通は税金は下げるんです。景気が悪い時はそうです。例えば、このクラスが一つの経済圏だとすると、君たちのお小遣いが1日100円から50円に減らされたとして、その時に私が税金みたいにクラス費を100円取っていたとして、景気が悪い時は、私はクラス費を100円を200円に上げたりはしないんです。逆に100円を50円に減らすんです。しかしそういう時に、逆に日本の税金は上がったんです。これは知ってるでしょう。
君たちは消費税が5%の時に生まれているけど、それが8%になった。そして4年前にさらに10%に上がった。安倍晋三さんは、約10年近く総理大臣をして、2回も消費税を上げた。アベノミクスといいながら、景気を回復するぞと言ったけど、実際には消費税を上げた。
その結果、バブル崩壊から30年経ってどうか。このグラフは非常に分かりやすいです。マスコミではあまり言わないけど。これは国会資料です。昨日の参議院予算委員会の国会中継の資料です。11月1日、昨日です。国会に出た資料がもし間違っていると、国会議員は責任問題になるから、ヘタなデータは出せない。

【消費税と法人税】
次の2番目のグラフです。ここ30年間、日本の景気はずっと悪い、ということは言いました。それで国民の生活が苦しくなっているんです。では日本の大企業はどうかというと、逆に利益は増えている。普通の考え方は、企業の利益が増えれば、そこで働いてる人の給料も増えていくんです。でもそうなってない。企業利益は増えているけれども、逆に我々の給料は少なくなっている。それがタマタマかというと、しっかりと政府の政策に沿っている、ということを国会議員が言った。

これはどういうことか。我々にも税金があるように、企業にも税金があります。その企業の税金が減っている。企業の税率は法人税です。これは、ピーク時で43%ですが、今は23%です。半分近くに法人税率が下がっている。それとは逆に、個人からの税金はどうか。これが1989年からの消費税です。これが約30年間の推移です。最初は1989年、もともと消費税はなかったんです。それまでは。私が君たちの頃までは、消費者から税金を取るなんてなかった。税金は給料から取るものだった。君たちはまだ収入がないでしょう。収入がない者から税金をとるという発想は、もともと日本にはなかったんです。お父さんたちは働いてるから、10万円の給料もらえば税金をとられるというのは分かるけど。高校生の君たちのなかに、オレは税金を払ってない、という人がマタにいるけど、そうなんですか。君たち税金を払ってますよね。何か買うたびに消費税を払ってます。

それが1989年にでてきた。最初は3%でした。しかしこれはだいたい気づかれていた。最初は3%にして、絶対上げませんと言いながら、30年後にはヨーロッパ並みに20%近くなるぞと。そういう政治的手法です。政治は結構ズルいんです。3%ぐらいならいいかなと思っていると、あとでどんどん上げていく。そういう話が最初からあって、その8年後の1997年に5%に上がった。この間、日本の経済は不況にあえいでいたけど、それでも上げた。
そして2013年から安倍さんがアベノミクスというのをやり始めて、あのアベノミクスから10年たって、今はどうか。安倍さんは暗殺されたけど、経済が上がっているか。上がってないです。アベノミクスとは、首相の安倍さんをもじってアベノミクスと言ったんです。アベノミクスが何かというのは、これも難しいけど、教科書で言わないといけないようになっているから後で言います。しかしその間に消費税を5%をさらに8%に上げた。それが2014年です。それからたった5年後の2019年にさらに10%にした。つまり消費税率を5%から10%に倍に引き上げたのは安倍晋三さんです。


逆に企業の法人税率は減っている。国民の消費税率は上がる一方、という形になっている。グラフを見ると、ほぼその消費税引き上げのタイミングにあわせて、法人税を下げたんですね。消費税を上げる。その代わりに法人税を下げる、ということが見て取れる。政府は否定しているけど、だいたいこのタイミングです。つまり、法人税を下げて国家の税収が減る代わりに、国民からの消費税を上げたということ。これは時期的にほぼカブるんです。これが昨日の国会質問でした。こういうふうに分かりやすいことを、分かりやすく言うことが政治を理解するうえで大事なんです。それが分かるのが国会中継だったんですけど、今年はそれがありません。今は簡単なことを難しく言う政治家が多いのが現実です。人は何かを隠したいときにそういう言い方をします。私もしゃべる仕事をしてますから、それはよく分かります。

【企業の内部留保】
3つめのグラフは、日本企業の内部留保についてです。内部留保というのは、個人でいうと貯金です。企業の内部留保が過去10年で139兆円が522兆円に、倍以上に膨らんでいる。大企業は儲かっているということです。利益がグーっと上がっている。
そして実際に、企業が銀行に預けている預金、取引銀行に預金してる額も、過去10年で135兆円から295兆円へと倍以上に増えている。最近ここ10年ばかりのうちに急に上がっている。そういう資料が出たところです。
時間がなくて、授業では消費税のこともあまり言えないかもしれないから、一つには消費税のこと、それから非正規雇用についての考え方、これをここで言いました。


何十年も前、私が君たちぐらいの時から、雑誌にトラバーユとか、君たちは知らないと思うけど、そういう雑誌が出て、どういう雑誌だったかというと、終身雇用というのは古臭いぞ、転職がいいぞと、そういうことを勧める転職雑誌みたいなものが非常に流行ったんです。1980年代から1990年代にかけて。これに乗って定職につかなかった人を何人か知っているけど、やはり生活が苦しいです。だから流行っていることが本物かどうか、よく見ておかないといけない。それは1年ごとに仕事を変えたりして、仕事自体は飽きもしなくて、おもしろいかもしれないけど。


終身雇用というのは、1人の時には10万円でも生きていけるけど、結婚して子供ができたらそれだけでは足りなくなる。その分だんだん年功といって給料が上がっていくんです。スライド式に。
それに対して時給制度は、20歳で働いても時給1000円だったら、60歳で働いても時給1000円、これが平等だという考え方です。それは独り身で独身を貫くんだったら、それでもいいかもしれないけど、そういう働き方を望んでいる人は少ないです。もっと待遇のいい働き方を望む人が多い。しかしそれが実現できないところが今の現実の問題になっているんです。今の日本の経済は厳しい。あまり詳しく触れられるかどうか分からないけど、一番国民に関係するのは消費税のことですね。もう一つは派遣労働です。




【日本銀行の金融政策】

それでは教科書に戻ります。前回は金利のことを言ってました。銀行預金は金利がつく、利息が付く。景気が良い時にはどうなるか、景気が悪い時にはどうなるかと。もともとはこれが日本銀行の金融政策の基本だったんです。なぜそれが通用しなくなったか。30年も不況が続くなんて国は日本だけです。景気が悪いといってどんどん金利を下げていくと、ついにほぼゼロまで来たんですね。もうこれ以上は下げられないところまで来た。だから、もうこの手は使えない。この低金利が20年以上続いている。

だから、この金融政策は分かりにくい。教科書事項だけど。政府がやっている財政政策のほうが、国民の税金を集めてそれを使ってるから、分かりやすいんです。しかしこの金融政策は何も無いところからお金が発生したり、市場という目に見えないところで、何やかやと売りったり買ったりして、どこでやっているのか分からないから、本当に分かりにくいです。しかしこの金融政策のほうが政府の財政政策よりも影響力が大きい。その金融政策は日本銀行がやってる。この日本銀行というのは別に国家機関ではなくて、やっている人も公務員じゃなくて、ほぼ民間機関です。日本銀行の株式も君たちだって買える。誰だって買えます。

この銀行の親玉の日本銀行というのは、銀行の銀行です。日本銀行に我々は預金できません。日本銀行は福岡には支店があるけど、我々は日本銀行にめったに行かない。行くのは誰か。民間銀行の人です。銀行がお金を預けたり借りたりするだけで、我々とは関係ないけれど、銀行の人がお金を預けたり、貸してくださいと頼むところが日本銀行です。だから、どっちが命令権をもっているか。強いのはダントツに日本銀行です。普通の銀行にとっては、日本銀行さまさまです。日本銀行さまがこう言ったら、そうしないといけない、という感じです。それでどういった事をするかというのが次です。

日本銀行は何をしなければならないか。日銀がやっていることを金融政策といいます。では何のためにこれをするか。まず物価の安定です。最終的には経済の安定ですけど、そのためにまず物価を安定させる。物価が高くなりすぎないように、安くなりすぎないように。そして経済を安定させて、君たちを安定して就職させる。これを雇用の安定といいます。経済が安定していれば努力して良い企業に就職できるけれど、経済が悪くなるといくら努力しても個人の力では就職できないということになる。14年前のリーマンショックとか、その前の1990年のバブル崩壊の時とかはそうでした。

日本銀行の金融政策のポイントは一点です。通貨の量を増やすか、減らすかです。日本銀行が港を作ったり、高速道路を作ったり、そんなことはしない。ただ通貨の量を増やすか、減らすかです。それだけだったらパソコンをポンと押すだけで、1億円、1兆円、いくらでもすぐ入るんです。それだけで効果は絶大です。その通貨の量をマネーストックという。日本語でいうと通貨供給量という。数字を入力して、パソコンのリターンキーを押すだけですが、それを間違うとバブルになったり恐慌になったりして大変なことになります。

基本はどうするか。不景気の時には、お金が足りなくて困ってる人が多いから、通貨供給量をどうするか。増やすか、減らすか。増やします。つまり通貨増大策をとる。今は景気が悪いから、政府が給付金として国民に10万円配ったりしたでしょ。あれは本当は禁じ手というか、そんなことしたらいけないことです。ちゃんとした金融ルールは貸して返すことです。さらに金利を上乗せして、どのくらい返さないといけないか、そういうルールでやらないといけない。政府が直接国民に支給するなんてことをやりだしたら、初めから税金を取らないことが一番簡単です。だからタダで給付金を配るということは、経済政策としては禁じ手なんです。めったにやらないことです。それを政府がやってるということは、それほど景気がうまくいってないということです。

逆に景気が良い時、好況の時には、お金を持ってる人が多くて、お金が余ってるから、お金の量は増やすか、減らすか。これは減らすんです。つまり通貨抑制策をとる。これを日銀の用語でいうと、お金を増やすことを金融緩和策という。逆にお金の量を減らすことを金融引締め策といいます。こういう言い方をします。


【金利操作】
今は異常事態です。そういう不景気が30年間も続いています。本当は、この金融政策の方法は、30年前のバブルが起こる頃までは、今の教科書の最後に書いてある金利操作がメインだったんです。本当はこうでないといけない。だから最初にこれを説明します。しかし今は死んでいる方法です。それが金利操作です。金利とは利息です。今は死んでますが、本来はこれだったんです。
我々の目には見えないけど、日本銀行と民間銀行の間で、お金を貸したり、預かったりしています。何十兆円というお金をやりとりしてます。お金を預けたら、やっぱりタダじゃないから金利がつきます。その金利をいくらにするか、逆にお金を貸したらその金利をいくらにするか、これはすべて日本銀行が何%にするか決めていきます。そしてそのレートを公定歩合と言っていました。そしてそれに伴って一般銀行が貸し出す金利も連動して決まっていたんです。でも今はこの金利操作は死んでるから、ほとんど効いていません。

なぜ効かなくなったのか。本当は、私が近くの民間銀行に100万円預けたら、1年で5%~6%の金利がつくのです。しかし景気が悪いと、金利は上がるか下がるか。景気が悪いときには、お金を増やしたいから、お金を借りやすくする。だから金利は下げていくんです。それで、バブルが崩壊した後の1990年以降、金利はどんどん下がっていった。4%、3%、2%ぐらいで、あれっと思った。これは大変だと。そして1%になったときには、これは異常だと思った。それでも止まらずに、いま何%か。1%以下です。1%以下でも景気が良くなれば、また元に戻す予定だったけれど、景気は上がらない。今も1%以下のままです。だから私が100万円預けた銀行預金の利息は今年はたった30円でした。100万円預けて1年間での利息が30円だった。本当だったら、5万円ぐらい付いているはずです。1%以下だからもうこれ以上は下げられない。かといって景気が上向かないから、金利を上げることもできない。つまり金利調整ができない。だから金利操作は死んでます。もう10年間以上そうです。今は金利操作という従来の1番メインな政策が効かない状態です。

経済が正常だったら、景気が悪い時には金利を引き下げて、お金を借りやすくして、通貨量を増やす政策をとるはずです。逆に景気が良い時にはお金が余ってるから、金利を引き上げて、お金を借りにくくする。預金金利を上げて預金する量を増やし、世の中に出回る通貨量を減少させる。戦後50年間はこの公定歩合操作でやってきました。しかし1990年にバブルが崩壊して、これはもう効きません。この1番メインの政策ができなくなった。


【公開市場操作】
【国債】
ではどうするか。次の手をどうするかというと、ここから国債のことを言わないといけないんです。公開市場操作のことを説明することは3分でできるけど、しかし分からないんです。なぜ分からないかというと、国債があるんです。国債とは国の借金のことです。国債とは、国の債務のことです。つまり借金です。これがだんだん増えていると言います。公債残高の増加です。公債と国債は兄弟みたいなものです。ほぼ同じです。実は県だって借金してます。市だって借金してます。公共機関で借金しているのは国だけではなくて、それを全部ひっくるめるともっと大きくなる。それが公債です。

国だけの借金は国債です。これが90%を占めている。それで県や国が、将来に有益だから、その便利になるからといって、道をつくるとき、ちょっとがお金が足らないからといって、そのためだけに借金する。これはまだしも良い方です。借金のありようとしては。これを建設国債という。建設公債ともいう。国の借金の中でも良いほうの借金です。

しかしAさんから100万円借りると、やがて返さないといけない。でもお金がない。するとまた別のBからお金を借りて、そのBさんから借りたお金で、Aさんに返済する。
国がやっているのはこれです。赤字を補填するために、また別の人から借金する。これを特別公債という。赤字国債ともいいます。借金の返済用にまた借金する。これは非常に不健全です。



【日銀の直接引き受けの禁止】
ただ伝家の宝刀がある。国は何もないところから、お金をつくれる機関を近くにもっている。1万円札の正式名称は何だったか。日本銀行券です。でもあれは1万円刷るのに10円ぐらいしかかからない。9990円はまるまる儲けです。
では政府はこの日本銀行に借金すればいいじゃないか。しかし、これやったら何でもありになるから、国が直接に日銀から借金したらこれはダメです。このことを「日銀の直接引き受けの禁止」といいますが、これはダメです。禁止されています。

すると不思議なことなんですが、例えば国が近くの民間銀行からお金を借りたらどうか。これはオーケーです。するとその民間銀行にはお金がなくなる。すると民間銀行は日本銀行からお金を借りる。結局、日本銀行からお金を借りているのと何も変わらない。こういうことをやっている。


【公開市場操作】
本当は2番手の政策だったのが、今ではトップの政策になっています。言葉は難しいけれども、これを公開市場操作といいます。これをいうときの注意は、政府はお金をつくれないけど、しかし日本銀行はお金をつくれるんです。印刷すればいいからです。金本位制じゃないから、金銀はなくても、紙とインクさえあれば、いくらでも1万円札は刷れます。その権限は政府ではなくて日本銀行にある。



すると今はどうなってるか。市場というのがこの図のイメージです。ここの小さい黄色の四角のなかに我々がいます。君たちのお父さんお母さんたちも、この中で働いている。いま日本政府はお金が余っているか、足らないか。お金が足らずに財政赤字になって借金してます。国が借金するときに発行するのが国債です。

日本銀行はお金をいくらでも印刷できるから持っているはずです。だから、日本銀行にこの国債を直接売れば一番簡単ですが、さっきも言いましたが、こんなことをしたらもう歯止めがかからなくなるから、これは禁止されてます。日本銀行が直接国債を買ったらいけないと、禁止されている。

しかしまた矛盾したことをいいます。でもそれは守られてないです。国は、日本銀行に国債を直接売ったらダメだから、国はまず一般の民間銀行に国債を売る。すると国債を買った民間銀行がその代金として、日本政府にお金を払う。こういう構造です。でもこれが日本銀行の公開市場操作じゃないです。

そうすると民間銀行にお金がなくなる。でも景気が悪いからお金を貸したい。日本銀行はどうするかというと、この民間銀行が持っている国債を買うんです。100万円の国債だったら、その代金100万円を民間銀行に渡す。そうやって日本銀行が民間銀行から国債を買うと、国債はどうなるか。

①政府が国債を発行し、
②それが民間銀行に行って、
③次に日本銀行に行くんです。この③です。

ではその日本銀行のお金はどこから来たか。印刷しただけです。そうなると結局、日本政府が発行した国債を、日本銀行が直接買ってることと変わらないわけです。
国 → 民間銀行 → 日本銀行という形になっただけで、日本銀行が国債を買っていることに変わりはないです。でもこれは、直接引き受けじゃないから、間接的に民間銀行から買ったから、法律的にオーケーという解釈なんです。いま政府はこれでもってる。しかし、やってることは本来は禁止されてる「日銀の直接引き受け」と同じことです。

もっというと、国債だけではないです。企業は株式市場で株式を発行する。企業も株が高くなったほうがいい。でも国民は、お金を持たないからこの株を買えない。どこが買ってるか。この日本銀行が民間企業の株式を買っているんです。いま株高で、アベノミクスが始まってから10年で、4倍になった。4万円ぐらいになった。なぜ景気が悪いのに、株ばかり上がっているのか。日本銀行が買っているからです。

つまり日銀は、市中の国債や株をどんどん買っている。これが公開市場操作です。今ではこのことを量的金融緩和と言っています。

株を持ってる人は大金持ちです。日本最大の大金持ち、つまり株を持っているのは誰か。現状では日本銀行です。日銀が株主になる。なにか変なことです。民間企業の株主というのは経営権をもつんです。だから理屈上は、民間企業の経営権を日本銀行がもつことになる。

これをやっていた日銀総裁が黒田東彦さんです。安倍晋三首相の時に、アベノミクスが始まりました。アベノミクスとか訳の分からない名前ですが、その中身はこれです。日銀が買っているんです。黒田日銀総裁と手を組んで。とにかく株を買え買え、株価を上げろ上げろと。日銀は無尽蔵にこれをやっています。そしてそれを異次元の金融緩和と呼んでいます。アベノミクスというのは、テレビなどで聞いたことはあると思うけれども、教科書からいうと、これを徹底したものです。それを異次元の金融緩和だとか、言ってる。これは健全なことではありません。異次元の金融緩和ではなく、異常な金融緩和です。

ではそのお金、日本銀行のお金はどこにあるか、と聞きたくなるけど、それは最初に言ったように、日本銀行はお金を刷れます。1万円札を作るのは政府じゃない。日本銀行です。いくらでも刷れます。理屈上は。こういう権限を持っているのが中央銀行です。

もともとは政府がお金を発行していましたが、政府は発行しなくなって、中央銀行が発行するようになった。こんなことを始めた最初の国は、やっぱりイギリスです。世界初の中央銀行というのは、1694年、日本ではまだ江戸時代ですが、イギリスのイングランド銀行がやりはじめた。それが全世界的に広まったということです。日本銀行がやってる2つ目を言いました。順番は逆ですが。次は3番目、もう一つやってる。これは簡単に行きたいと思います。


【預金準備率操作】
日本銀行がやってる金融政策の3番目は、預金準備率操作といいます。この預金は我々の預金じゃないです。一般の民間銀行が日本銀行にいくらか預金しているんです。それは半ば強制です。おまえ100万円預金しろと言われたら、親分だから、日本銀行は命令的に言います。今年は100万円預金してもらおう、来年は200万円預金してもらおう、この額を日本銀行が指定できる。日銀に市中銀行が預ける、預金準備率というのは預金の量です。これを上げ下げする。通貨量をそれで増やしたり、減らしたりする。世の中の通貨の量を。

景気が悪い不況期には、この準備率を引き下げて、民間銀行の手持ちのお金を増やして貸しやすくする。好況期には逆です。
考え方を1つ間違うと、全部ダメになるから。お金を増やすのはどっちか。不景気の時にはお金を増やす。逆に景気がいい時には逆にお金は減らす。好況期には、これを引き上げる。預金準備率を、民間銀行が日本銀行に預ける預金の量を引き上げて、通貨量を減らす。


社会科は文系科目だといっても、ここだけは算数の知識が要る。算数といっても、高校の数学じゃない。小学校の算数です。経済には、数学は要らなくても算数は要ります。これで日本の景気への影響は、政府のやる財政政策よりも、こっちのほうが大きい。効果は大きい。日本銀行は非常に強い力を持ってます。

こういう力をもつ中央銀行ですが、国ごとに中央銀行がありますけれども、日本銀行はそんな世界の5本の指に入るほど強くない。


【資金流出】
日本というのは変な国で、国はものすごい借金を抱えてます。そんな莫大な借金を抱えながら、対外債権というけど、これは経済用語だから分かりやすく言うと、外国に貸してるお金です。これが世界一なんです。これがおかしいと思わない人は、逆におかしい。日本は借金して人に貸してる最大の国です。一言でいうとそうです。まあ理由はいろいろで、政治家はいろんな理由を考えるから、何が正しいか分からなくなるけど、一言でいうと、日本は借金しているのに、そのお金を外国に貸している。この借金は誰からしているか。これは国民からしている。
その額は1000兆円です。日本の国家予算はその10分の1の約100兆円です。これが日本の年収です。給料でいえば、家でいうとお父さんの稼ぎが100兆円です。その10年分の借金をしてる。普通の家だったらパーでしょう。100万円の給料で、1000万円の借金を抱えている。それでいて外国に貸している。


では最大に日本が貸しているところはどこか。アメリカです。国民からお金を借りて、外国にお金を貸す。ではこの日本の国民は、さぞかし金持ちなんでしょうね。それだったら理屈は合う。しかし生活が苦しくて、みんなあえいでいる。この日本の国が借りている1000兆円の借金のことを国債といいます。これは国の借金であって、国民の借金ではありません。国民は逆に貸している方です。

この国の借金のカラクリは、普通は国民に、誰かが、AさんがBさんにお金貸してというときには、100万円貸してというときには、いいよ、貸そうというときに、大人はそのあとに100万円の借用証書を取るんです。あんたから100万円借りました。1年後には利子付けて、10%の利子つけて返しますからという証書を一枚貸し手に渡すんです。1年後、貸した金は必ずもどってくるとは限らないから。ごめん、オレは返せなかったとしたら、どうなるか、裁判です。証書があれば、負けて、家も抵当、自己破産をする。

しかし、国はやっぱり強くて、借金というのは、この借りた国が100万円の借金に10%の金利つけるから、お前たちから借りてやるぞ、といって、小分けした証書を、いっぱい発行するんです。これが国債です。個の国債を発行して、10%の金利つけるなら、国民も買おうかなと、買うという。国債を。国民は国債を買うという感覚です。お金の流れは同じですけど、この場合は、借りる側の国が強い。国がこの国債を売ってやるぞというと、買いますという国民がいっぱいいる。この国債が全部、国民の側にある。それが1000兆円です。


【買いオペレーション】
そういう前提で、日本銀行が景気対策としてどういうことをするかというと、私が政府だとして、君たちが2年5組の経済市場ということにすると、君たちは私にお金を貸してるんですよ。だからその証券をもってる。これが国債です。昔はちゃんと現物があったけど、今は電子化されて、すべてネットの中です。その売り買いはパソコンで行います。
君たちは国にお金を貸したけど、今の現状は君たちにもお金がないでしょ。今はその状態です。今は不況です。


そういう時には、君たちが持ってる国債を、日本銀行が買うんです。買うということは、君たちが持っている100万円の国債を日本銀行が買うんだから、君たちは国債を日本銀行に渡して、日本銀行は君たちに100万円を渡すんです。2年5組に渡すんですよ。そしたらこの2年5組経済圏に、お金がなかった経済圏に、100万円が増えたことになる。こういうことを国家規模でやる。これを買いオペレーションといいます。または資金供給オペレーションといいます。

こんなことは難しくて20年前には詳しくは言ってなかった。金利操作を中心に言っていました。しかし金利がほぼゼロになって、今はどうしょうもなくなっているから、ここでは例外的なことをするしかない。それでますます難しくなったんですよ。本当は大学の経済学部でやってもいいようなことを高校で教えている。確かにこれは難しいし、カラクリが複雑です。しかし今や新聞読むときも、こういうことを説明なしで書いてある。だから、私も新聞は10分ではサラッと読めない。経済記事の1面を読むときには10分では読めない。どういうことかなと、いろいろ考えながら読んでいる。
基本の基本は、国債は国の借金だということ、日本政府はその国債を大量に発行しているということ、そしてそれを日本銀行が捜査しているということです。

ここからは、君たちは市中銀行になってください。九州だったら、福岡銀行とか、鹿児島銀行とか、宮崎銀行とか、いろいろあるでしょう。そういう地方銀行から、君たちも国債を買うことができるけれども、政府からまずはシンジケート団といって、政府は市中銀行に国債を売るんですよ。市中銀行が国債を買うと、市中銀行は日本銀行にお金を払うから手持ちのお金が減る。

銀行間でもお金がないと、銀行同士、A銀行とB銀行がお金の貸し借りを実はしてます。めったに目につかないけれども。そのことを、お互い信用してるから、何の担保も取らずに、1億ぐらいポンと貸すんです。これを無担保コールレートという。コールというのは短期ですね。短期金融市場金利といいます。


【売りオペレーション】
次のページです。ここらへんはちょっと骨が折れる。景気が良い時、つまり君たちもお金を潤沢に持ってる時は、市中銀行もお金を潤沢に持ってる、まぁお金が余ってる時です。余ってるときには日本銀行は手持ちの国債を売るんです。国債を売るぞ、欲しい人いるか、これは10%の金利だからいいぞと言うと、市中銀行が手を上げる。そして売ってやる。断れない部分もある。
100万円の国債を日本銀行が売ったら、買った市中銀行は、日本銀行に100万円を渡さないといけない。その分、この2年5組の経済圏からお金が減ったことになる。こうやってお金を減らす。これを資金吸収オペレーションという。略して売りオペレーションともいう。どっちでもいいです。こういったことを日本銀行がやるんです。

前のページで先に言った買いオペレーションは景気が悪い時で、お金が足りない時です。日本銀行がするんですよね。
逆に景気の加熱期、好況の時には売りオペレーションです。


【非伝統的金融政策】
【量的緩和政策】
今のお金は紙だから、刷ろうと思えばいくらでも刷れるでしょう。金本位制じゃないから。この前提で20~30年前に、アメリカのシカゴ大学のミルトン・フリードマンという人が経済学を考え直したんですよ。経済の好景気とか不況というのは、お金の量によってどうにでもできるという経済学説を作った。だからお金の量を調整することによって経済は回復できるんだと、ということを言った。しかし、結果的に30年たって、どうもうまく行ってない。これはアメリカから来た考え方です。これを新自由主義という。経済的にはマネタリズムともいう。マネタリズムのマネはマネーです。マネー中心主義ですね。

ここ30年間の日本は景気が悪いです。でも日本銀行はお金を無尽蔵に刷れるでしょう。さっき1万円札は政府紙幣じゃないと言った。日本銀行券です。原価は印刷代10円です。その1万円札を原理的には勝手に刷れる。だからお金が足りないと市中銀行が言えば、日本銀行がその市中銀行が持ってる国債を買い入れて資金を供給する。資金を供給している。資金を供給するというのは、市中銀行の国債を日本銀行が買い入れて、日本銀行が市中銀行にお金を渡すということです。


でも、その市中銀行の口座はその市中銀行には実はないんです。日本銀行は、銀行の銀行でしょう。我々は日本銀行にお金を預けられない。日本銀行に口座を持ってるのは市中銀行なんです。
すると私の給料が地元銀行の口座に入るように、地元銀行が手持ちの国債を売ったこの代金は、日本銀行のなかのこの市中銀行の口座に入るんです。これは普通預金ではなくて当座預金という。教科書に当座預金と書いてあるけど、それはあまり気にしなくていいです。こうやって日本銀行が市中銀行に資金を供給すると、日本銀行にある市中銀行の口座の残高がどんどん増えていく。それをもっと増やしていこう、となるんです。この政策の延長線上にあるのがアベノミクスです。とにかくお金を供給していこうと。つまりは資金供給です。


図の中の、逆のお金を減らす側は時間がないから言いません。ここはカットします。30年間、景気が良かったことはないし、今言ったことの逆をやるだけです。売りと買いを。国債をこっちは買った。今度は国債を売るほうです。逆です。


【ゼロ金利政策】
これを公開市場操作といって、今までなかった方法を30年間取り続けているのが今の日本です。だから私たちが50年前に習った現代社会は、そんなことまで習ってない。金利操作が中心でした。私は1970年代の高校生ですけど、このあと社会人になってから詳しく知って、なにか難しいことをやりだしたなーと思って新聞を読みだしたんです。一体何してるんだろうか、最初はなかなか分からなかった。

バブル崩壊後の1990年代というのは、景気が悪いから金利は上げられない。だから、どんどん金利は下がっていった。金利を下げると、お金は借りやすくなるから。そういう政策をとった。通常は金利は5~6%あるんですよ。市中銀行の金利は。
私がビックリしたのは、それが4%ぐらいに下がってもそんなに驚かなかった。その後の3%、まああり得るかな。2%を切ったときには、これはやはり異常だなと思った。それでも止まらなかった。1%を切ったんです。これは完璧に異常です。それが限りなくゼロに近づいた。ここらへんまで来ると私はしびれた。一体どうなることかと。それが1990年代から起こった。

一方ではさっき言ったことで、ここは寝ていて分かるようなことではない。パズルのようなカラクリがあります。日本政府と日本銀行という2つの主体があるから、とても複雑です。
こうやって資金供給をする。日本銀行のなかの民間のA銀行の口座に。それをどんどん増やして行こうというのがこの目的なんですが、これを量的緩和政策という。
日本銀行のなかの民間のA銀行の口座、それは普通預金ではなくて当座預金という。当座預金とは何かと聞かないでください。とにかくその預金量をどんどん増やしていこうとする。まずこの名前です。量的緩和です。量はお金の量です。緩和とは緩めることです。お金を増やすことを緩和というんです。逆にお金を少なくすることを引き締めという。経済用語でそう言います。


日本銀行の当座預金、これは民間のA銀行名義ですよ。この残高が一定以下にならないようにする。「一定以下にならないように」と、変な否定語で書いてあるけれども、この残高を増やそうとしたんです。分かりやすくいうと。A銀行の口座にお金が増えたら、A銀行はそれを貸さないといけない。銀行はお金を貸して儲けてるんだから。その預金量が増えたら、A銀行はそれを貸し出そうとするし、世の中の君たちはお金がなくて困っているからそれで助かる。これで景気がよくなる、という計算だった。しかし、まったく良くならなかった。

なぜか。借りたものは返さないといけないから、それならもう商売を縮小した方がましだとなった。または商売をたたんだ方がましだと。リスクをとって1000万借金しても、もし事業が失敗したら夜逃げしないといけない。そんなことするよりも商売をたたんだほうがましだとなる。地方のアーケード商店街とか、ここ10年でバタバタとシャッター通りになった。息子には、おまえ商売を継がなくていいぞと。それでだんだん景気が悪くなっていく。
もともとの狙いは、こういうふうにお金の量を増やしていけば、お金が世の中に回って景気が上向くはずだった。物価も、ジワーッと良いぐらいに上がるはずだった。


【インフレターゲット政策】
その物価上昇率がどれくらいが一番いいかというのは、インフレ率2%、これに狙いを定めたんです。狙いをターゲットという。物価上昇率の狙いだから、インフレターゲットという。略してインタゲと言ったりする。これが安倍さんから始まった。2%をめざして10年間やったのが、今年やめた黒田東彦日本銀行総裁です。でもそうならなかった。
これも10年近くやってほぼ結論が出ました。日本銀行の総裁を10年間も務めたのは黒田さん以外にいない。普通は4~5年が任期です。その倍の時間をかけて、結果を出せなかったというのが正直なところです。インフレ率は数字的にも上がってないです。うまくいかなかった。狙いは金融緩和を推し進めて、お金の量を増やせば景気が上がるというものだったけど。


【量的質的緩和政策】
それを量的金融緩和というけど、今度は教科書に太文字で書いてあるけど、量的に質的が加わった。これはカットします。ただマネタリーベース、これを増やすということです。ではマネタリーベースとは何かというと、太文字で書いてあるけどサラッと書いてある。日本銀行のなかの市中銀行の当座預金、その残高を増やそうとした。これにただ1万円札、つまり現金が加わっただけ。これを経済用語でマネタリーベースといいます。


【マイナス金利政策】
しかし、ぜんぜん市中銀行の貸出は増えなかった。増えなかったから、どうしたか。
例えば、日本銀行のなかの市中銀行の口座に、例年100万円あったとします。金融緩和で日本銀行が、市中銀行の口座に、こうやって金融緩和でどんどん預金量を増やす。そしたらこれが預金が、企業に貸し出されるはずだったんだけれども、そうならなかった。だからどうしたかというと、100万円以上を超える日本銀行の口座預金にはマイナス金利をつける、と言ったんです。
意味わかるかな。100万円の預金があって、これを貸し出しできなかったら、マイナス5%の金利だったら1年間で約95万円になる。マイナス5%の金利というのは、100万円預けて95万円しか戻ってこないということです。こういうのがマイナス金利です。こんなことは史上初ですね。世界でこれをやったのは日本だけです。日本はマイナス金利を実施をした。念のために言っておくと、
これは君達の預金を市中銀行に預けていたら、100万円の預金が95万円に減るということではない。市中銀行が日本銀行に預けていたお金が減るということです。
何のためか。日本銀行が市中銀行に、もっとお金を貸せというんです。減りたくなかったら貸せということです。これはもう脅しですね。しかし市中銀行は、我々もイヤ貸そうとしているけど、誰も借りないんですよという。私は一生懸命、借りてくれ、借りてくれと言っているけど、実際、市中銀行は、個人向けには住宅ローンだけだったのが、今は車のローンでも組める。借りてくれ、借りてくれです。でも誰も借りないです。国民も収入が少ない。だから銀行は貸そうとしているけど、みんな借りない。そんな時に銀行にマイナス金利というペナルティーを課して、無理にでも貸そ付けようとしても、うまくいくはずがない。


本当は、強制的にでも貸付を増やしたい。でもそんなことはできない。銀行に半強制的に、お前たちがお金を貸せという。この商品を売って来い、売ってくるまで帰ってくるな、みたいな感じです。銀行も迷惑な話だと思う。こういうことをして、結局うまくいってない、というのが今の現状です。

次のグラフでは、日本の銀行の金利は、ここ20年間、2000年から去年の2022年まで、日本の金利はほぼゼロに張り付いている。でも、どこの国もそうだから仕方がないとは言えない。アメリカは緑ですよ、イギリスは紫です。やっぱりアメリカもイギリスも平均的な金利は5~6%ぐらいはある。日本だけでしょう、こんなゼロに近い金利は。日本はこういう状態で今まで来てます。こういうのだって、物の本には書いてある。書いてあるけど、新聞テレビは、なかなかこれを言わない。

これだけ低金利だったら、次に何が起こるか。今まで10年間、1ドルは約110円だった。今は150円になっているでしょう。アメリカと日本で、アメリカの金利が5%、日本の金利は1%として、君たちはどっちにお金を預けるか。
30年前は、日本人は日本にしか預金できなかった。でも金融自由化があって、今は日本の市中銀行にドル預金ができる。君たちはどっちに預けるか。日本では100万円預けて、1年後に101万円にしかならないけど、アメリカでは100万円預けたら、1年後に105万円になる。

では日本人がアメリカのドル預金をするということは、どういうことか。日本円を売ってドルを買うことです。お金の流れは、円からドルに向かうんです。円は捨てられたみたいな形になる。するとどうなるか。上がるのはどちらか。ドルが上がるんです。それで1ドルが110円から150円に上がった。円は逆です。これを見て円が上がったという人がいるけど、上がったのはドルです。経済は算数は難しくないけれど、理屈がとても複雑です。頭のなかをよく整理しておいてください。これはドルが上がったんであって、円は下がったんです。こうやって日本の金利が低いと円安になります。そうなると日本の価値はどんどん下がります。


なぜいま中国人があんなに日本に来ているか。日本の円が安いからです。つまり日本の物価が安いからです。中国で買うよりも、日本で買ったほうが安いからです。こういうことに連鎖していく。100万円の金利が1万円しかつかないだけではない。円自体の価値全体が低下していく。今こうやって円安が進行中です。

去年から戦争が起こって、ますます円安が進行してます。10数年前は1ドルは70円台だった。今の倍です。それほど高い時期もあった。それから見ると円の資産は2分の1になってる。日本の資産は。これはすごいことです。


【ポリシーミックス】
いま言ったのはお金の話です。これは日本銀行が中心になっている。この政策のことを金融政策といいます。しかしお金を持ってるのは、我々のお金を吸い上げて税金で取っているのは日本政府です。日本政府は日本政府でまた別のことをやっています。これは別の政策です。これを財政政策という。これはまだ言ってません。これから言います。ただ大事なのは、もともとは財政政策が中心だった。しかし今言ったように、新自由主義の流行でお金の量でうんぬんかんぬん、景気が良くなるんだという学説が流行ると、今は金融政策が中心になった。この金融政策が中心です。しかしこれは車の両輪です。クルマのタイヤが、大きいタイヤと、小さいタイヤでは、前に進まないでしょう。同じところをグルグル回って前に進まない。バランスが取れるかどうかが大事です。

それが伝統的なもので、これをポリシーミックスという。ポリシーは政策。ミックスは混合です。ポリシーミックスと言います。いまその金融政策まで行きました。財政政策についてはあとで言います。

それで、次回は金融政策をもうちょっと行きます。今は肥大化したこの金融政策ですけど、日本が景気が悪くなるに従って、また新たな金融の自由化の動きというのが加わっていきます。
終わります。


授業でいえない「公共」 34話 中央銀行と金本位制度

2024-03-04 15:01:36 | 高校「公共」

2023.10.31

【イスラエル・ハマス戦争】
信用創造というちょっと変なからくりのところを終わったところだったけれども、授業は経済に入ってますが、世界で起こっていることは戦争です。ここ30年間の世界で起こったことは、いわゆるオーソドックスではない、特殊なことが起こっているから、説明するのに時間がかかる。今起こってることも、深刻なことです。日本はいま引き裂かれた状態です。ガザ戦争ですよ。イスラエルハマスです。イスラエルのほうにアメリカがついていて、ハマスのほうにはイラン、そのうしろにはロシア、もっというと中国があって、日本は戦後ずっとアメリカ側です。国連のガザ休戦要請にアメリカが反対したんです。日本は棄権したんです。意思表示をしませんと。あっちを立てればこっちが立たずで、いま日本はどうしょうもないところに追い詰められているんです。

棄権は確かにあまりよくない。和平に対して棄権するというのは、どうとられるか分からない。でも日本はそう決めた。これはニュースで流れていることです。アメリカが反対したんです。和平に対して。本当は日本も反対に回れと言われたんだろうけれども、そうするとハマス側が腹を立てる。攻められて虐殺されてるのはハマス側、アラブ側です。なぜアラブ側に応援できないか。前に言ったように、日本は石油ですね。これが来なくなったら、50年前、私が君たちぐらいの時、スーパーマーケットから何もかもなくなった。最近まで石油輸入の8割はアラブ側からだった。あと2割はロシアから輸入していた。しかし去年ウクライナ戦争が起こって、岸田さんは自分からロシアを切った。今はもうアラブからの輸入がほぼ100%です。この石油がなくなるとどうなるか。

前も書いたけれども、地中海がこうあって、こっちはエジプトです。イスラエルというのは、こうなっている。ここにイランがある。もしイスラエルとこうなったら、ここが前に言ったように、ここです。ここに地雷を埋める、イランが。日本にはパイプラインがない。ヨーロッパとか中国とかは、ちゃんと陸のパイプラインがある。それで石油を運んでいるけれども。日本はパイプラインはないです。以前はその計画あったけれども、ロシアとのパイプを失うまいと鈴木宗男さんがロシアに行ったけど、所属する政党から批判されて離党した。だから実質的にこのロシアとのラインは消えた。


あとは石油はここを通らざるを得ない。ここをホルムズ海峡という。ペルシャ湾の出口です。でもここに地雷を埋められたらパーです。石油がいま値上がりして、3倍ぐらいになっている。今の補助金で少し安くなっているけど、それでもかなり上がった。原油の原価からみると3倍ぐらいに上がっている。上がるどころじゃない。これが来なくなるともう大変ですね。しかしアメリカには逆らえない。だから休戦に賛成とは言えない。かといって反対とも言えない。それで棄権した。とても中途半端です。態度が決められない。

人が殺されているときに、自分の豊かな生活を追求ばかり考えている日本というのは、国際的には認められない。今起こっている世界のレベルと日本は違いすぎる。世の中はガザでの虐殺に対して、反対デモとかいっぱい他の国では起こっている。日本のテレビはあまり報道しないけど、デモとか、何万人の規模になっている。ヘリコプター写真とかで見たら、スゴイ数です。それが、いろんなところで、イギリスとか、あっちこっちで起こっていて、ニューヨークでも起こっているけど、そのレベルから言うと、日本はあまりにも自分の国のことだけということで、ちょっとズレている。
石油がなくなると、日本が大変なことになるというのは確かです。他の国はパイプラインがあるんだから。でも日本はないです。これは日本が自分で切った。ウクライナ戦争の時に。これ自体はやっぱり危険なことだと思う。

今日はハロウィンでしょう。でも警察は5~6日前から何しているか。東京の渋谷のスクランブル交差点、人が一番集まるところで、警官隊が規制している。ハロウィンパーティーで今日の夜とか、どうなるかな。規制ばかりです。あそこはだいたい普通でも混雑するんです。立ち止まったら、動け、動け、立ち止まるなと、何が起こっているのか。そういう騒動が3日も前から起こっている。東京でこんな規制がはじまることが不思議なんだけれども、東京だけのことかと思っていたら福岡の警固公園、あそこもハロウィンパーティーの規制地区になったみたいです。福岡でも警官隊が出動している。一体何を恐れているのかという感じです。国際状況から見て、何か別のことを恐れているようにも取れる。夜中にどこに行こうが、我々には行動の自由があって、通行する権利はある。天下の公道なら、どこ行ったっていい。それを規制するというのは、やっぱり結構大きなことです。それをもう1週間前から日本は始めている。何を恐れているのかな、という感じがします。ちょっとイヤな感じがしますね。

しかし今やっているのは、イスラエルとハマスの戦争がこれから、どうも大きくなるのではないかな、という感じになっている。イランはここです。イランと一文字違いでイラクもある。この二つは仲が悪かったけれども、最近は仲が良くなってきている。それにサウジアラビアとイランも仲が悪かったけど、去年から仲が良くなった。アメリカに対してアラブ世界全体が敵対しつつある。こうなると、イランが出てきたらサウジが出てくる。サウジが出てきたらロシアが出てくる。たぶん中国も出てくる。そんな中で日本はアメリカべったりです。

今ささやかれてることが、WW3、これ何ですか。ワールド、ワー、スリー。第3次世界大戦ですね。私が生きている間に、目の前に、こういう危険が現れるとは思わなかった。ちょっと転べば、どうなるか分からない。日本にとってとても厳しい状況だというのはヒシヒシと感じる。ちょっと目が離せない。日本はハロウィンで浮かれている人たちが、今日どうするかということが焦点になって、問題のレベル的には違うけれど、それに対して警官隊があれだけ出動する。福岡でも出動するということが、例年にはないことです。例年こんなことはなかった。そういう今年2023年10月です。


【信用創造】つづき
それで教科書に行くと、信用創造というのをやりましたね。時間ギリギリで説明は難しいかったけれども、信用創造がいくらかというのは数字を出せる。もともとのお金が100億円しかなくても、もともとは現金100億円だった。それで信用創造額がいくらになったかというのは、最初の現金100億円をある数字で割る。支払準備率というのがあって、この説明は前回しました。この支払準備率で割る。支払準備率が10%なら0.1で割る。そうすると通貨量は1000億円になる。ただ問い方として、信用創造額は、と言ったときには、当初の現金100億円を差し引く。そうすると、1000億-100億=900億円になる。算数自体は難しくない。しかし、銀行によりお金が発生する仕組みの意味を理解するのは難しいです。ここで何が起こっているかというのは難しい。半分手品っぽく感じるのは、お金というのは、昔からみんなが欲しがったと同時に、非常に恐れたものでもあるんですよ。いろいろ化けるからね。お金の話はけっこう難しいです。

ここでは信用創造について言いました。支払率が10%というのは、0.1でしょう。10%は0.1でしょう。パーセントに直すと、0.1は10パーセントになる。それで割る。ということは一番単純にいうと、このお金を10億円だけ預かってるんではなくて、100億をそのままにしていても、このX銀行はこの10倍のお金を貸し出せるということですよ。イヤ金庫に全部保管したら、貸し出せないじゃないかと思うでしょう。しかしこれは紙幣です。紙幣はいくらでも書けばいいんです。印刷すればいいだけなんです。アレっと思うでしょう。何を言っているのかと思うでしょう。

ここで一つ言ってないのは、これ言い出すとキリがないんですけど、例えば私が100万円の金貨を預けたこの銀行が、勝手にその100万円の金貨を貸し出した。そのことだけ言ったけれども、もうちょっと紙幣のことを言うためには、この銀行の人が悪いことをするかもしれないから、私が100万円を預けた時には、確かに預かりましたという証拠書類をもらうんです。その証拠書類を持っていたら、1万円札みたいな紙でそれを持っていたら、いつでも本物のお金、つまり金貨と交換しますという、この人の約束書をもらうんです。実はこれが1万円札です。これが紙幣です。もともとは引換券です。銀行はこの引換券を大量に発行することができる。いろんな銀行がこういう引換券を発行したら、それが紙幣になる。金貨は重たいでしょう。それよりも紙で、この引換券をお金とみなして、多くの人がそれで物を買い出すんです。だから紙がお金のようになっていく。これが紙幣です。これは1000年前に、最初に中国で始まったけれども、それは一度世界史やれば分かるけど、中国はそれ以上発展させなかった。しかし、その約600年後にヨーロッパで始まったこういう紙幣というお金が、21世紀の今まで続いています。それはもともとは金貨との引換券だということです。

ということは、ここでもし100万円預かったら、そして支払準備率が10%だったら、その10倍の引換券を、この人が実際のお金の10倍の引換券を発行したって分からない。10倍のお金を発行できるという考え方だってここでは成り立つんです。ここらへんの実際のところはよく分からない。これは教科書外ですけれども、教科書で書いてあるのは、あくまでもこの流れ、これを信用創造という。しかしこれでよかったら、ここで100万円の金貨を預かって、その10倍の引換券を、この人がこっそり発行しても分からないじゃないか、といういう理屈にもなっていく。ここらへんが恐いところです。


【信用の創造と国債・完全解説シリーズその1】信用の創造とは~銀行はお金を生み出すことができる~

以上で信用創造は終わりです。お金の手品は終わりです。でも本当は終わりじゃない。その続きがあります。




【中央銀行】
その紙幣を発行する大もとが中央銀行です。日本では日本銀行と言います。日本銀行というと、政府の役所みたいにイメージしてるかもしれないけれども、もともとは民間企業です。正式には半官半民ですけど、政府の役所とは別です。
これをもっと分かりやすくいうと、日本の親分格であるアメリカにも中央銀行はあるんです。これは名前がものすごく難しくて、俗にFRBというんです。しかも日本語では連邦準備制度理事会といって銀行という名前がついてないんですね。だから銀行だと分からないけど、新聞では普通にFRBという。これがアメリカの中央銀行で、日本でいえば日本銀行のことです。このFRBはもう100%民間出資の民間銀行です。この地域の地元銀行と変わらないです。ここがドルを発行している。ドルを発行しているのは、アメリカ政府ではない。ドルというと、今のところ世界で最も強い通貨です。これを政府ではなくて、民間銀行が発行している。

日本はそれではあんまりだといって、半分は政府がお金を出してるんだけれども、日本銀行が民間銀行である証拠には、日本銀行の株式は市場で誰でも買えます。お金さえあれば。400万ぐらいして、ちょっと高いけど、買おうと思えば誰でも買えます。政府機関だったら、こんなことはできない。パソコン使ってネットで買える。お金さえあればね。こういう中央銀行が銀行のボスになって、1万円札を刷っているということです。

この機能が3つあって、日本銀行の機能には3つあって、まず1万円札のことを日本銀行券という。試験で答えるときには、1万円札とか、紙幣とか書いてもダメです。日本銀行券と書いてください。そう書いてあるというのは前回見せたでしょう。この機能を発券銀行という。券を発行する銀行、券とは何か。日本銀行券のことです。お金のことです。政府が発行してるんじゃない。政府紙幣ではないということです。

2つ目は、どういう機能か。我々のような一般庶民は、日本銀行に100万円預けようとしても預けられない。では誰が日本銀行にお金を預けるか。地元銀行が預ける。都市銀行が預ける。だから銀行の銀行です。我々は預けられない。だからといって我々に関係ないわけではないけど。

もう一つ、3つ目、我々は日本政府には税金を取られます、イヤオレは取られていない。ウソコケです、消費税は自動的に30年前から君たちも取られてます。そのお金はどこに行くか。やっぱり政府は貯まったお金はプールする。財務省の金庫はない。ぜんぶ日本銀行の口座にある。だから政府の銀行です。この3つ、言葉で覚えてください。日本銀行は、銀行の銀行、政府の銀行、発券銀行です。一番難しいのは発券銀行です。まず政府が1万円札を発行しているのではない。これをよく理解していてください。

通貨発行権というのは、ものすごいです。1万円札の印刷費用はたった10円ぐらいです。差し引き9990円はどこに行ったのかという問題がある。これは発行者の利益になります。この利益はどこに行ってるかと考えると、夜寝られなくなるけど、確かにこれは発生している。1万円を刷るたびに10円の費用しかかかってないのだったら、これが発生している。これを通貨発行益という。これがどこに行くのかという話と関係してくるけど、これがよく分からない。


【金本位制度】
その1万円札というのはもともとは金本位制度という。本当のお金は金貨だった。私もこういう仕事してるから金貨をもってるけど、君たちはそんなもんあるもんかと思っているけど、あるんです。これ本物の金貨です。授業用のサンプルとして買いましたけど、本物です。しかし不思議なことが起こって、十数年前に買った時には10万円ぐらいだった。それが今は30万円ぐらいになっている。これは金貨だから、価値は決まってるんです。ここには何と書いてあるか。100ユーロと書いてある。これは100ユーロ金貨です。

今1ユーロが約160円ぐらいです。100ユーロだったら、160円✕100だから、1万6000円です。それがこのお金の価値です。お金としての価値は1万6000円です。これは31グラムです。1オンスといって31グラムなんです。新聞でニュースにもなっているけど、いま金がものすごく高くなっている。金1グラムが1万円を越えた。ということは、これを1万6000円で使う人がいるでしょうか。これをお金と見れば1万6000円です。しかし金(キン)と見れば、いくらの価値になりますか。1万円✕31グラムだから、31万円になる。お金としては1万6000円です。なにそれ、という話です。31万円の価値があるものを1万6000円、つまり100ユーロと書いてある。それができるんだったら、逆だってできるんです。例えば1グラムの金(キン)、この金の価値は1万円ですが、金1グラムをコインにして、10万として表示すれば10万円にもなるんです。

言ってる意味、分かるかな。ここらへんは半分は手品です。手品に引っかからないようにしてください。これは10円の紙代とインク代で、1万円にするのといっしょです。だから紙幣にかかわらず、金貨にかかわらず、通貨発行益というのは必ずコインを発行する者には発生するんです。言っている意味わかりますか。半分ぐらいの人は分かっているみたいですね。だから2000年前のアレキサンダーの時代から、みんな時の権力者はコインを発行したがったんです。有名になりたいからじゃない。自分の像を掘りたいからじゃない。そこに通貨発行益が発生する。こういう構造がある。今の紙幣というのもその延長線上にあるということです。そういうものが紙幣になる。

ただこういう金貨がある、これ見てください、100ユーロと書いてあるでしょう。100ユーロと一番下に書いてあるでしょう。重たいでしょう。だからこういう理屈です。日本は逆に、10万円金貨というのを何十年か前に発行したんです。金貨だから本当に10万円の金の値打ちがあるかというと、6万円ぐらいの金(キン)を使って10万円の表示をした。こういうことだってできる。そしたらいくらの儲けになるか。通貨発行益は10-6だから、4万円です。これは政府の利益になる。これは政府が発行したからです。

貨幣は前に言ったように、政府に発行権がある。しかし1万円札の発行権は、今は日本銀行にある。日本銀行が儲ける。では日本銀行の儲けはどうなるか。ここから先が謎なんです。日本銀行はふつう株式会社です。厳密に言えば、株式会社と銘打ってないけれども、株を買えるということは株式会社なんですよ。では、この利益は誰のものかというと、株主のものでしょ。日本銀行の株主の半分は政府だけれども、その分は政府の収入になるけど、後の収入、あと半分は株主がいる。それが非公開ですね。誰が持っているか分からない。株主に行ってるのか、それが分からない。こういう話が、教科書に書いてないお金の恐ろしいところです。

それで、この金貨は大事にしまっておきます。そして、いや別に、これは儲けるためじゃなくて、こういう仕事をしていると、こういう小道具が時々必要になる。仕事のついでに買ったら、たまたま上がったんです。ただお金で、さっきの話ではないけど、金が上がるときは、どういうときか。この1万円札というのは法定通貨です。1万円札に1万円の価値を与えてるのは誰か。これはもともとは単に紙でしょう。紙とインクにどう考えたって1万円の価値はないです。しかしみんな1万円と思ってそれを使えるのはなぜか。政府が保証してるからです。政府の信用によって1万円の価値が出てくる。

しかし国というのは、世界史を見たら分かるように潰れることが簡単にある。いっぱい国は潰れてます。大きくもなるし、小さくもなるし。だから政府がもしつぶれたら1万円の価値はパーです。日本が戦争に負けた時の日本円にも、そういうことがありました。パーになった。戦争が起こると、紙幣をみんな欲しがらなくなる。お金より、戦争が起こった時には、みんなが政府への信用を失うと、さっきの金貨のコインは、お金としては見なくなって、金(キン)として見るんです。
去年から今年にかけて、金(キン)がものすごく上がった。去年はウクライナ戦争が起こって、今年はガザ戦争、つまりイスラエル・ハマス戦争が起こった。すると見る見るうちに、金1グラムが1か月で1000円上がった。戦争が起こるときは、金が上がる。金が上がるときは非常に危ない時です。数字がそうなっている。これほど急激に金が上がる。私がもってるから言っているんじゃない。これぐらいの金はチャチなものです。本当の金持ちは、1キロバーといって、何千万円とする金を持ってる。そんなものは私は持ちません。金がこれほど急に上がる時は、非常に世の中が混乱するときです。政府の信用が落ちるときです。金の動きを見ていると、そうだなと思います。理屈はあってます。ちょっとイヤな感じです。

そういったことは別にして、この金本位制度というのは何かというと、紙幣を発行して、それが流通している時に紙幣は仮の姿です。その1万円札を日本銀行に持っていけば、ハイお願いしますというだけで、今見せたのが1万円金貨だとすると、必ずこういう本物の金貨と交換しなければならない。これは絶対交換しなければならない。いやうちは交換できませんというと、銀行は倒産です。それは信用に値しないということです。これが金本位制です。


【管理通貨制度】
だから日本では約90年前の1929年まで実は金本位制です。これは昭和4年で、日本がものすごい不景気であえいで、小学生、中学生がお弁当も食えない、欠食児童というのが発生して、今でも子供食堂とか笑えない状況の悪化がある。貧困家庭がものすごく増えて、もうお父さんたちは失業の嵐ですよ。昭和枯れすすきという状況。そういう中で、とにかくお金がないという人が増えて、お金を、つまり紙の紙幣を発行しすぎたんです。とにかく救済しようということで。
これは全世界的にそうです。1929年は、アメリカで世界大恐慌が起こった年です。大恐慌が起こって、世界中がお金を刷りすぎた。でもお金を刷っても金(キン)は増えないでしょ。1万円札だけどんどん刷れる。印刷代の10円でいいから。そしたら1万円札を持って、金(キン)が欲しい人が交換しに来たら、絶対足りないでしょう。だからオレは交換するの止めたという。日本も、イギリスも、次はアメリカも。交換しますという約束を一方的に破棄したんです。そしてそのあと90年間、ずっとその状態が続いている。それにあとで名前がついた。管理通貨制度という。

だから今の1万円札と、90年前までの1万円札は名前が違う。90年前は兌換紙幣という。兌換の兌は、可能なという意味です。ほとんど使わない漢字ですけど。換は交換するという意味、これは分かる。交換できる紙幣です。何と交換するか。金とです。金が来る。今の1万円札は、私が1万円札もって日本銀行にハイお願いします、と行っても、不審者と間違われて追い出されるぐらいのものです。何しに来たんだと。交換できない。これには1万円金貨の価値はありません。これを不換紙幣といいます。しかし、これでよければ印刷代10円で、いくらでも1万円紙幣を刷れるでしょ。今はそういうことになっています。

もうちょっと正確にいうと、ドルショックというのがあって、別に説明が必要ですけど、基本的には今言ったことです。だからお金の量をいくらでも増やせるから、それによって経済を上げることも、下げることもできるという経済学が30~40年前にアメリカで発生した。これを新自由主義のマネタリズムといって、ミルトン・フリードマンという資料集には載っている経済学者ですが、そこから量的金融緩和という発想が出てくる。量的というのは不換紙幣の量です。10円でできるから、原理的にはいくらでも刷れます。金(キン)だったらできない。紙だったらできる。これはあまり難しくない。難しくないでしょう。この管理通貨制度、名前をよく覚えていてください。

しかし今余計なこと言うと、ここ10年間~20年間で、私がもうちょっと若いころ、40歳ぐらいの時には金1gは1000円だった。それが今は1万円です。20年で10倍です。グッと上がった。この動きは、ちょっと恐い。金が上がるのは、平和な時ではない。政府に信用がない時です。90年前に金本位制が崩壊したときから、そういうふうになった。
そういうなかで金融政策がどういうことをしてきたかというと、お金の量じゃなかった。我々が若い頃は。

100万円貸して100万円返したからといって、これでチャラにはならない。これは子供の世界です。何がつくか。これに加えて金利がつくんです。普通は5~6%ぐらいつくんです。これが大人の世界の常識です。しかしバブル崩壊以降は、金利がほとんどゼロになって、これが通用しなくなった。今はそれほど異常な30年間です。歴史を見ると、だいたい金利が5~6%つきます。その金利というのは上げ下げできるんです。日本銀行が上げようか、下げようかと考える。そうやって金利の調整を行ってきた。そのことは教科書にも書いてあるけど、太文字ではなくなって目立たなくなった。それはなぜかというと、今はもう30年間、ほぼ金利がゼロになったからです。金利はもう金融政策に効かない。ここ30年間は、それくらい異常です。

結果的なことを言うと、私が説明したことは、うまくいってないんですよ。教科書に書いてあるけど。それがうまく行ってない。ではなぜ言っているのかということにもなるけど、そうなったら教科書を教えられなくなる。この30年間のどこがおかしいかというのは、教科書が終わった後、考えてください。結果には必ず、原因があります。日本だけがなぜ不況から抜け出せないか、それには必ず原因があるはずです。しかしそれが分からない。教科書に書いてあること以外に、どこかに原因があるはずです。それはまだ隠されているかもしれません。


【日銀の金融政策】
【金利操作】
金利というのは不況の時と、景気が良い時、つまり好況の時とで違う。不況の時は、このクラスは、みんなお金がないからお金が欲しいですよ。ただお金は黙って天から降ってこない。人から借りざるを得ないですね。借りやすくするためには金利は、上げるか下げるか。私が地元銀行としよう。君たちはお金が欲しい。明日のパンもない。お金を貸してやるぞと言ったときに、私の金利は低いほうがいいか、高いほうがいいか。ここ意外と間違うんです。お金を君たちが欲しい時には、金利を引き下げないといけない。金利引き下げ。

逆に好況、景気がいい時、給料もどんどん上がっている。そういうときには、お金はこれ以上は要らないです。君たちもお金を持っているから、金利を引き上げて借りにくくする。これが基本です。金利操作の基本です。不況の時には金利を引き下げて、君たちが借りやすくする。このクラスが世間だとして。2年〇組経済圏だとして。逆に好況の時には金利を引き上げて借りにくくする。30年間、ずっと不況でしょう。金利を下げて、下げて、下げて、今どうなってる。ほぼゼロ金利です。去年から戦争が起こって今0.1%が0.85%ぐらいに、何日か前になったけど、それは小さなものです。やはり1%以下です。ゼロになると、普通はゼロ以下の金利というのはないです。それでもゼロにしたんです、日本銀行は。それは別の話です。これ以上引き下げられないところまできた。それでも景気が上がらなかった。では次の手をどうするか。難しいでしょう。これが30年間で起こったことです。


不景気だから、日本の景気は、これはいろいろ金利設定があるけれど、私のお勧めは、このグラフです。0.30、グラフのこの緑色の線、これ教科書から名前が変わったけれども、公定歩合といって、それまで、日本がこんな悪い経済になる前までは、これが中心だったんです。公定歩合といって。これは日本銀行の金利です。地元銀行ではなくて日本銀行です。公定歩合と言います。見てください。だいたいどのくらいですか。昔は金利があるでしょう。100万が、105万と。上下するけれどもだいたい5%、6%あるんです。我々の若い時の感覚は、5%、6%、それが複利になるから、100万を銀行に預けて10年間寝かせていたら200万になった。そんな感覚がある。今はもう、ほぼ0パーセントだから、100万円預けて、利息が3円ぐらいついた。月とスッポンです。急激に落ちて上がってないでしょ。どこからですか。ほぼこの1990年からでしょう。この1990年です、この年に何が起こったか。バブル崩壊です。

その前の1985年からの5~6年がバブル経済です。みんなウハウハです。土地と株価がバカみたいに上がった。前に話しをしたでしょう。どこかの社長が5000万円借りて、社長何するんですか、と聞くと、何もしない、寝かしておくだけさ、1年で倍にしてみせるぞ。でも1年もかからなかった。半年で1億になった。たった半年で、5000万、その社長は儲けた。こんなことが、あっちこっちで起こった。バカみたいなことが起こった。それで皆ウハウハです。さらに株で儲けた、儲けたという人間がいっぱい出てきた。しかし1990年から先はストンと落ちて、株で儲けた人間が100人いれば、株で損した人間が100人出てくる。株で損した人間はいるけど、誰も言わない。聞かなかった。そういうことで日本経済はずっと沈んでいる。後で言うけど、他の外国はこんなことにはならなかった。ここ30年間でも上がっています。日本だけが。


【公開市場操作】
だから金利が効かないから、どうするかというと、これが中心になった。これを公開市場操作といますね、漢字でもOKですが、ヨーロッパ経済学で英語がついてます。公開はオープンです。市場はマーケットです。操作はオペレーションです。英語で言っている。オープン・マーケット・オペレーションと言います。でもこれが難しいんですよ。しかもこれは金融の基本ではないです。基本ではない部分の特殊な30年間でやったことを教科書でも説明しているから、とっても特殊で難しい。何が難しいかというと、国債のことはまだ説明してないけど、この国債のことを言わないといけない。国債は国の借金です。日本は変な国で、こんな不況の中で、外国に貸しているお金は、世界一です。今年も、岸田さんは、外国に何兆円貸しているか。日本はこんなに不景気なのに。そんなに外国にお金を貸していながら日本政府は、ものすごく借金まみれなんです。この話はまだ説明してないけど、聞いたことはあるでしょう。この膨大な借金が1000兆円ある。

この1000兆円の国の借金をどうするかというと、普通は、普通はAさん、Bさんがいて、AさんがBさんにお金を借りる時には、、、、、、、、
時間が来ました。なかなか進まなかった。ここはやっぱり時間がかかりますね。
終わります。



授業でいえない「公共」 33話 通貨と信用創造

2024-03-03 15:29:47 | 高校「公共」

2023.10.26

前回は、実質経済成長率でした。名目経済成長率は単純に数字を足し合わせて、去年と比較したらいい。実質経済成長率というのは、それから言葉でいうとインフレ率で割るんですよ。1番簡単にいうと、世の中にアンパン1つしかなかったとして、去年まではアンパンが100円だったのが、今年は150円になった。そしたら名目GDPは150円になる。世の中にアンパン1つしかなかったら。ではその1.5倍も150%も、世の中が豊かになったのかというと、味も大きさも何も変わらないアンパンだとすると、そうするとインフレ率は、アンパン100円が150円になったらインフレ率は150%でしょう。だから150%で割るんです。あとはこれを%にするだけだから、これをもう小学生のパーセントと小数の100をかけるだけです。何も変わらないと。

だから言いたいことは、この名目経済成長率に惑わされたら何も分からない。実質はどうかということです。お金は食べられないからそれ自体では何にもならないけど、経済はお金で計るんです。そのお金というのはとても不思議なんですよ。これはカラクリなんです。このカラクリが分からないと、お金だけがすべてだと思うと、ちょっと変なことになってくる。お金というのは、当てにならないです。そこあまり難しく考えないでください。GDPデフレーターは特殊な専門家的なもので、教科書にも出ないから分からない。インフレ率みたいなものですよね。ただ、みたいなものとは教科書に書けない。インフレ率みたいなものだとは教科書には書けないからカットしてある。インフレ率で割ったらいい。

今日は、世の中はいろいろ起こってますが、イスラエルはどこかと言ったら、誰かがどこか分からないとか言っていたけど、注目してください。アメリカが停戦しようと案を出した。これはロシアがイヤだと言った。これ結構大きく取り上げている。しかし10日前に何があったか。ロシアが停戦案を先に出したんですよ。アメリカが拒否した。これは小さい記事だった。そこに日本のスタンスがバッチリ表れています。同じことなのに記事の大きさによって、受ける印象が違うんです。それもあるし、日本はこのことに関しては、ちょっと一歩はずれている。微妙にはずれている。私はもっと行くかなと心配していたけど。このまま行ってほしい。ただどっちにしても停戦しないと、とんでもないことになるという点では共通している。

ただこの停戦案が、大人の世界ですよ。微妙に違うんです。そこが焦点になっているけれども、これはホントこのまま行ったら大変なことになるという点では一致している。だからといって、イスラエルが軍事侵攻しないかどうかは、まだ分からない。着々と準備を進めていると、イスラエルのネタニヤフが言っている。それに戦争当事者はピリピリしてます。

しかし日本では性転換手術が全面に出たり、うちは新聞は地元新聞しかとってないけど、学校に来てみたら全部、学校はいくつかとっている。一面トップでガバーッとそのことが出ていた。しかし今は、そんなことで世界は動いてない。LGBTとか。あれもやっぱり、男女クラスはこういうところが言いにくいですね。昔は男子クラスがあったけどね。LGBT法が、理解増進法が、理解しなさいと頭の中のことを、法律で理解しなさいという法律ができたというのも、私には違和感はある。しかしそれが今年通った。そしたら裁判官は、私情を交えずに法律に基づいて判断しないといけないから、裁判所の裁判官は、性自認に性転換手術は必要ないとする。そういう判決が最高裁で出た。

これはどういうことか。君たちも、男女トイレは昼休みは満杯でしょう。女が男の方に行ってもあまり問題ないかも知れないけど、男が女の方に行けば、これは結構困ったことになると思う。そうなるでしょう。〇になったんです。今までは生殖機能とか、こういう言葉も露骨だけれども、見かけがそうじゃなくなる手術をしなさい。それ以前に、肉体的な男が、オレは女だと自称していいのか、という問題があったんですよね。これがまず性自認の問題だったけど、しかしLGBT法が法律として通ってしまった。そうなると、なぜ手術をしないといけないかになる。性自認を認めるということは。オレは男の体だけど、オレは女だ。それが性自認でしょう。それがどこまでいくのかな、それが一面トップ、新聞はそれを一斉に報道してました。今日は何が一面トップかなと思っていたら、これを一斉にやってました。

しかし世界は紛争の中です。いろんなことがあってます。
イスラエルとハマス。ハマスがイスラエルを人質にとった。人質にとって、昨日人質を解放した。80歳ぐらいのあばあさんを。そのおばあさんのインタビュー記事が、アラブ側の報道と、日本の報道とが全然違うんです。いやーフレンドリーだった、というんです。おばあさんは。人質に取られていて、その2~3週間の間、ハマスは非常にフレンドリーだった。しかし、一方では地獄のようだったと書いてある。全然ちがう。どっちが本当か分からない。
今の暴動も、何が本当なのかというのが。私でも、私でもといったらいけないけど、分からない。君たちは分からなくて当然です。よほど注意しておかないと。こんなに分からない世の中というのは、君たちより多少は長く生きているけれども、私も初めてです。ニュースも国によって言ってることが違う。
それで、経済のGDPが終わって次のページの金融機関にいきます。


【金融機関】
経済の中の金融です。経済全体でいうと二つの流れがある。貨幣を通したもの、貨幣です。通貨ともいいます。これは売り買い、支払われる流れというのは。分かりやすくいうと、売り買いです。
しかし厄介なのが、もう一つある。貸し借りがある。人を信用して貸したら、黙って私の本が他人に貸されていたことがあったと言ったでしょう。半分笑い話みたいだったけど。あのルールと、100円のアンパンを買ったというのは、根本的に違う。次にどうなるかというのが。そういう貸し借りのことを金融という。金は分かるでしょう。お金です。金融の融は、お金の融通、融通するという、1万円貸してと言われると、では融通しようかという、お金の貸し借りですよ。このことを金融という。これをやるところで代表的なのが銀行です。

銀行はお金だから、銀を行うところとなぜ名前がついているか。本当は金行というのが一番わかりやすいんですけれども、ヨーロッパは金だった。日本は江戸時代、金を持っている者は、よっぽど金持ちだった。大名クラスです。庶民はいいところ銀なんです、銀の取引がメインだったから、明治の時に、銀行はバンクと言うけれども、これをどう訳すかと言ったときに、金行といったら、なんかおかしいとなって、銀行という、この言い方ができた。世界は金ですよ。メイン通貨は。その銀行です。

100万円を借りて、100万円を返す。それで終わりか。そうじゃない。大人社会ではこれに利息が来る。金融機関は。これがないと金融機関は儲からない。利子です。これを金利という。そしてこの金利というのは、需要と供給の関係で決まる。何%でないといけないという決まりはありません。お金を借りたい人が多くなればなるほど、金利はどうなるか。需要と供給の関係で。貸して、貸して、1%で貸すよ。貸して、貸して、オレは1人にしか貸さない。すると2%でもいいから貸して、となる。こうやって金利が上がる。逆に、借り手がないと金利は下がる。金利が変化する。

しかし、金利のことは去年の2年生までは教科書に載っていたけど、今は異常な世界で、金利はゼロだもんね。こんな不況が30年続いている。カットされた。でもこれを分からないと、お金一つ借りれない。景気によって金利が変動するということです。


【お金の種類】
ではそのお金の種類というのが、何かと言うと、1番目はこれは当たり前ですが、まず紙幣、つまりお札がある。これを日本銀行券という。前にも言ったでしょう。これは書いてあるんです。お札に。1000円札にも書いてある。日本銀行券と書いてある。こういっても、日本の1万円札は政府が発行したものである、と試験に出すと、みんなマルにするんです。政府が発行してないんです。どこが発行してるか。日本銀行が発行している。だから日本銀行券というんです。この日本銀行券の意味はそういうことです。
この日本銀行というのは、政府の組織で、ここで働いている人は公務員だと思っている人がいるけれども、もともと民間銀行です。東京証券取引所を通じて、お金さえ持っていれば、日本銀行の株は君たちも買えます。誰だって買えます。お金さえ持っていれば、300~400万円するけれども、買えます。政府機関だったら日本政府の株とかはない。買えるということは日本銀行が政府機関ではないということです。

では政府が発行するお金はないのかというと、これもある。というか、もともとお金というのは政府が発行してたんです。今はないのかというと今もあります。100円玉、500円玉、10円玉など。これを貨幣と言います。ただこれは名前以上に意味が違うんです。これは政府が発行する権限が失われてはいない。政府も発行していいんです。

だからお金に2種類がある。1万円札の原価はいくらか。その紙代と印刷代は10円前後です。前は2~3円だった。偽造できないように、コピーができないようにより精度が求められて、だんだん上がってきた。でも10円前後です。たった10円で1万円の価値を生み出せる人間というのはすごいでしょ。この発行権を持っていたら、もうウハウハです。

バカな高校生が昔がいて、変な話ですけど、昔の部活動というのは上下関係が厳しくて、3年生が1年生に、ジュース買って来いといじめて、昔は日常的にあった、それがいいとは言わないけど、言いたいのはその次ですよ。先輩、ジュース買ってきますから、お金ください、というと、紙を半分にちぎって、これ何だ、1000円に見えるだろうという。1年生が、ハイ1000円に見えますという。3年生は、これで隣の店からジュース1本買って来いという。1年生は、その紙切れをもらって、隣の店にジュースを買いに行った。店で、その1年生がジュース1本ちょうだいといって、その紙切れを、これ1000円です、と渡した。店のおばちゃんは頭にきた。それで警察を呼んだ。これはもう見事な贋金作りです。それで前科一犯です。お金を発行する権利、紙幣を発行できるとところは日本銀行だけだという法律に違反したんです。


イヤ、見ただけでオモチャの1万円だと分かるじゃないか。オモチャかどうかは関係ないです。このニセ金で、ジュースを買おうとしたという事実で犯罪が成立する。これは本当にバカみたいな話ですけど、そういうことがずっと昔にあった。そういう発行権を持った人は絶大な、1万円と書いただけで、1万円分の買い物ができたらウハウハです。何でもできる。通貨発行権を握ってるというのは、それだけ絶大な力を持っている。

なぜこんな変化が出てきたかというと、詳しいことは省略しますけれども、もともと日本銀行券というのは、本物のお金ではないです。本物のお金との引換券で、仮の姿だった。本物はこの金貨だった。昔のお金というのは、江戸時代の大判でも小判でも金貨だった。読んで字のごとく、金はお金ともいうけれども、金(キン)とも読む。これがすべてを表している。お金には2つの性質がある。人間社会では。もともとはキンだった。

でも古代ギリシアのアレクサンダー大王でも権力を持った人間は、お金を作りたがる。自分が有名になるためではないです。なぜ作りたいかというと、例えば1万円の金を刻印して、そこに10万円と彫れば、本当に10万円の価値が出てくる。すると、お金を発行した人は、差し引き9万円がまるまる儲かる。こんなことができる。だからお金を発行したいです。世の中の王様は。これ自体が不思議です。それなら10円の紙で1万円の紙幣をつくっていい。


これもその延長かというと、これはもともと、これが本物のお金だとすると、1万円金貨というのは、例えば今から100年前、1920年代まで、昭和の初め頃までは、私が日本銀行に、地元にはないけど福岡には支店がある、そこに持って行って、お願いしますと言えば、分かりましたといって、何が来るか。1万円金貨が来るんです。金貨とか今は見ないですね。でも、ありますよ。その引換券として始まったのが、この銀行券です。もともとは引換券です。本物の金貨との。しかし今はそうではない。だから逆転して紙幣がメインです。硬貨は100円、最大500円です。しかし紙幣は1万円でしょう。何倍か。20倍ぐらいの差がある。どっちがお金として力を持っているか。政府よりも、日本銀行のほうが力を持っている。しかし政府が日本銀行にお金の面で太刀打する手段がないかというと、10万円硬貨を作ることは許されますね。100万円硬貨だって、1億円硬貨だって理屈上は作れます。ただ政府はしませんけどね。

こういう目に見えるお金に発行元の違う2種類があるということです。

しかし、これで終わりではない。さらに目に見えないお金がある。それが普通預金です。君たちも大学に行けば、親から月に何万円か仕送りをしてもらわないといけないから、銀行口座を作らないといけない。父ちゃん母ちゃんが、銀行の通帳をもって、それに入金して、君たちはキャッシュカード持って、キャッシュカードで毎月のお金を引き出す。そういう使い方をするんですけど、私がここ1年間で、一番大きいお札を見たのは20万円も見てない。最高10万円です。日常的には。うちのお母ちゃんは月3万円しかお小遣いをくれないから、月3万円です。これが私の日常見てるお金の量です。では私が本当に3万円しか持たないかというと、いくら貧乏な私でも銀行に100万円は持ってる。では人が聞いたときに、お前はお金はいくら持っているかと、親しい友達から酒飲んで聞かれたときに、私は100万円持っていると答える。100万円持っているけれども、ここ2~3年は100万円の現金を見たことはないです。世の中はそんなもんです。会社の社長だって、10億の収入がある会社だって、10億が社長室にずっとあるわけじゃない。社長は、20万、30万、10万ぐらいにしょうが、ポケットに持って、会社のお金は銀行の中にある。この銀行にあるお金がの方がダントツに大きいでしょう。何十倍と大きいじゃないすか。これが実はメインなんです。これが預金です。こっちのほうが大きいということです。

我々庶民は普通預金ですけども、会社になると当座預金というのをつくる。でも普通預金と同じと思ってください。ただ違いは小切手で支払いができる。小切手の説明は言いません。面倒だから。とにかく、お前、いくら欲しいか、1億円欲しいというと、じゃあ1億円だしてやる、小切手帳を出して、印鑑押せば、ハイ持って行け、銀行へ。それで銀行で1億円もらえる。こんなことができる。そういうのが会社なんです。

これらのお金をすべて合わせた量が、世の中のお金の量です。これをマネーストックという。マネーは分かるでしょう。ストックは貯蓄額、貯めた量です。これをマネーストックという。
そのうちの現金の量は、1万円札、5000円札、1000円札の紙幣と、500円玉、100円玉、50円玉、10円玉、5円玉、1円玉の硬貨、これだけです。たった7.3%。約7%。10%に満たない。大まかに10分の1と思ってください。たった10%です。あとは預金です、半分以上は。
金持ちになると、100万か200万が貯まったら、安全面から定期預金というのをする。こういうのを定期性預金という。こっちのほうが利率が高かったんですよ、しかしここ30年は異常だから、今ほとんど金利がつかない。だから意味が分からなくなってるんだけれども、長く預ければ預けるほど金利は普通は上がるんです。
あとは、ここ10年ばかりで、日本人でドルを預金する。日本はほとんど金利0%です。アメリカは金利が5%ぐらいある。どっちに預けるか。日本に預ける人は、減るでしょう。単純に金利だけで比べたら、アメリカが人気が上がる。あとで言うけれども、円ドル相場はドンドン変わっていく。そこにリスクがあって一概には言えないけれども、それを外貨預金といいます。これもできますよ。

それから譲渡性預金といって、これは大金持ちがやる一部です。こういうふうに目に見えない部分、めったに目に見えない部分が通貨の圧倒的多数です。これがお金です。目に見える量としてはその10%程度。だいたい10%と覚えてください。この総額が1500兆円です。概算でいいです。概算でいくと、お金は、目に見えるものと見えないものがある。見えるものは、足し算で、小学生でも分かるんです。高校生でやるのは、この見えない部分です。目に見えない部分を頭の中でやっていく。理系向きですね。しかし手品にかかったようで、なかなか分からないけど。何かおかしいなと思いながら、たぶん君たちは聞くと思う。しかしそれはウソではない。見えない部分が圧倒的です。現金は100兆です。15分の1ですけど、しかしだいたい10%です。あとの定期性預金などを合わせると1500兆円です。財布の中に入ってるお金だけが世の中のお金だけじゃないということを頭に入れてください。財布以外のところにお金はいっぱいあるんですよ。目に見えないものが。これがどう動くかというのが経済上は、一番大事なことです。


【直接金融と間接金融】
そしてこの貸し借りですね。この貸し借りをするときに、今まで株式会社でやっていたのは、株の調達とか、お金が欲しい株式会社が、直接お金を貸してと頼む。Aさん、Bさん、Cさん、お金を欲しい会社が、Aさんに直接貸してくれという場合です。これを直接金融といいます。そのために借りる会社が、株を発行したり、または社債というものを発行する。これは直接金融です。

            A → B → C

もう一つはこの中間にABCのBが入る、ちょうどうまくバンクのBです。バンクとは銀行です。

Aの私が100万円を銀行に預けると、その100万円は銀行に眠ってない。銀行は、他のお金を借りたい人に貸している。どこが銀行の儲けになるのか。これは言ったでしょう。私が銀行にお金を預ける場合、正常であれば5%ぐらいの金利はつく。最高で、私が若かったころは、7%~8%ぐらいの銀行の預金がついていた。今では考えられないでしょうけど、7%ついていたら、10年寝かしていたら倍になる。複利計算で行くから、それぐらいついていた。でも今は0%です。だからそれを5%で貸したら商売にならない。10%で貸す、例えばね。そうすると100万円が1年後には110万円で戻ってくるでしょう。私、つまりAさんには105万円を返せばいいでしょ。この差し引き5万円が銀行の儲けということになります。これが間接金融です。
この仕組みが、直接金融と間接金融の違いです。いま銀行で言ったけれども、こういうのを金融機関という。その間接金融の代表が銀行です。

次です。前にもちょっと言いましたけれども、もともとはAさんとBさんの関係は、ここで終わってたんですよ。ヨーロッパは金貨でしょう。それを預かった人が、なぜこんなことをするのか。自分のお金ぐらい自分で日本人は管理するんですけれども、または庭に壺を埋めて隠したりするけど、向こうはやっぱり治安が悪いんですね。泥棒がいっぱい居て、泥棒からお金を守るために、専門の業者、ドカンとした金庫、破られない金庫を持ってお金を預かっているようなところに、お金を払ってでも預かってもらう。そしたらその金庫の中に、自分で預けた100万円は100万円があるはずです。しかし人に貸せば利息がもらえるでしょう。この利益をもらうために、金貸しは最初はこっそりと貸したんです。Cさんに。

それが何十年か経って、それがバレてくると、なぜお前はオレの金を勝手に使っているのかと文句を言われ始めるんですよ。オレの金をちゃんと預かるという約束を守ってないじゃないかと。それで裁判になる。1回ではない。もう何百件という裁判が起こる。それも1年~2年ではなくて、それが100年~200年ぐらい続くんですよ。1600年代、1700年代ぐらいまでかかって。それがどうにか決着がついたのは1800年代の日本にペリーがやってくるころです。どういう判決が出たかというと、最初はダメだったのがオーケーになる。預かった以上は、預かった金貸しのこのBさんに使用権があるという。ホントかなと思うけどね。普通は、人から預かったものは、自分のもの以上に大切に保管する、それが本当じゃないかなと思うけれども、すったもんだあって、結局オーケーになった。これが1848年の判決です。やっぱりイギリスでのことです。


そうなると利益が出るから、Cさんに貸して10万もうけた。この10万円は丸々金貸しのBさんのものだったけれども、預金を使用していい代わりに半分、半分かどうかは決まってないけど、半分の5万円は元の持ち主のAさんに還元しなさい、というふうになって、預金に利息が付くという今の銀行スタイルになる。もともとは預金者にものすごく不満がある。なぜオレの物をお前は勝手に貸しているのかと。しかしそうなったら、みんな分かったうえで銀行に預けている。100万円を持っていても、家が火事で燃えたらパーになる。それよりも銀行に預けていたほうがいい。通帳だって燃えるじゃないかというと、燃えたのは通帳であって、銀行に預けた権利が燃えたわけではないから、こういうことで火事になって通帳が燃えてしまったけれども、通帳を再発行してくださいと言えばできる。でも現金が燃えたらパーです。現金が火事で燃えたから再発行してくださいと、日本銀行に言っても、それはダメです。通帳の場合、燃えたのはお金じゃない。そこの違いです。


それで今のような銀行ができた。いま言っているのは、預金と貸付け、この関係です。これはどっちか。直接金融か、間接金融か。これは間接金融です。ここに銀行という仲介者がいるから。株発行は逆に直接金融ですね。お金が欲しい人が直接、お金持ちからお金を借りる。この違いです。

今イスラエルのユダヤ人が戦争していますが、このお金を商売にすること、日本でも金貸しというのはあまりいい言葉ではないんですよ。あそこは金貸しだったとか言われると、ちょっと暗いイメージがある。金貸し商売というのはズルいとか、あくどいとか、それはヨーロッパにもある。ヨーロッパでこれをやっていたのが、実はユダヤ人なんです。「ベニスの商人」に書かれていますが、このユダヤ人がいま戦争してるんですけれども、ユダヤ人は非常に蔑まれたんです。なんだ金貸しじゃないかと。

このユダヤ人というのは、全世界で1400万人ほどです。日本人の10分の1ぐらいしかいない。非常に少ない民族です。しかも世界中に散らばっている。その中の半分の600万人がイスラエルにいる。このイスラエルは今から約80年前にできたばかりの国なんです。2000年間なかった。その前はあったんです。2000年前にあったんです。そういう複雑なところです。あとの600万人はアメリカにいる。アメリカの中のどこかに多いかというと、これがニューヨークのウォール街です。金融街です。しかも世界最大の金融街です。あそこに多くのユダヤ人がいる。今も世界の金融の中心です。
なぜユダヤ人が、そんなところにいるのか。ユダヤ人が悪いわけじゃないけど、いろいろ複雑で、3分では何を言ってもどっちみちウソになる。大まかなことを分かってください。細かいことは、興味のある人は自分で調べてください。歴史の秘密に触れるようなところがあります。そういう金融の中心にもアメリカ成立のころからいる。金貸しとして。その他が200万人です。その合計が1400万人です。アメリカのウォール街というと、アメリカの中央銀行のFRBがあったり、世界金融の中心です。

もう一つついでに言うと、このユダヤ人の中に、血筋的に2系統あって、これは旬の話題だから言うと、一つはスファラディーという系統です。もう一つがアシュケナージです。これは英語ですらない。ユダヤ語なんでしょう。とにかくこの2系統がある。それがどうも出身地が違う。スファラディーの方がもともとの、2000年前のイスラエル出身です。アシュケナージというのは、あまり詳しく分からないけれども、別のところ出身です。それがウクライナ出身だといわれる。去年と今年で不思議なのは、去年起こった戦争がウクライナ戦争でしょう。今年起こった戦争がイスラエル戦争でしょう。ユダヤ人がらみで、なんかちょっと気持ち悪いような、不思議な感じなんです。それはおまけの話です。

それから金融市場の種類には、短期と長期がある。金融事業は一緒だけど、短期と長期があるということです。その基準の違いは、貸付の期間でいうと1年です。1年より短いか長いか、それによって利子率が違う。一般的に言うと。世の中が正常であれば。今は崩れているけれども。もし正常であれば。短期貸しの方が金利は低いのか、長期貸しの方が金利が金利は低いのか。短いほうが金利は低いです。長くなれば長くなるほど金利りは高いです。一般的に。君たちの中にも、住宅ローンを、お父さんたちが組んでいる。あれは30年ローンぐらいする。高いです。住宅ローンは長期だから。この金利の高さは景気の良し悪しによってまた上下する。


【銀行の信用創造】
それもすべてお金です。お金をいくらで貸して、いくらで預けるか。そのお金の量というのは、さっき半分は答えを言ったんですよ。世の中の、目に見えるお金の量は実は、10分の1もない。すべてのお金の量の。なぜこんなことになるかというのは、さっきはお金を発行しているところは、日本銀行だといったでしょう。これはなかなか説明しにくいんです。さっきは世の中のお金、目に見えるお金を作るのは、日本銀行だと言いました。確かに言いました。しかし、日本銀行だけではないです。地元の銀行も作ってるんです。では地元銀行券はあるのか。ないです。それは目に見えないお金を作っているからです。
それはおかしいだろう。それはあとで聞いてください。

どういうシステムで地元銀行がお金を作っていくかと言うことを今から言います。これは多分すぐには納得できないだろうけれども、ここは簡単にテストに出せるんです。これには数学が要ります。というか数学ほど難しくない。君たちがやってる数学に比べたら。しかし算数程度は要る。その算数のレベルは、たぶん小学校5年生レベルかな。だから誰でも解けるんだけど、言葉の意味が分からない。言葉が。

まず世の中にあった最初のお金が100億円だったとする。この100億円を、B社がX銀行に預けたとする。そしたら、X銀行はそれを寝かせない。誰かに貸します。しかし、タマには私が明日5万円の小遣いがいるなあと思って、銀行引き出しに行く人がいる。その分のお金がなかったら銀行は信用不安で倒産するから、その分のお金だけは残しておかないといけない。銀行の金庫のなかに。その残す割合というのは時代によっても違うし、地方と東京によっても違うんですよ。ただ、この残しておく割合のことを支払準備率といって、ここではそれを10%とした場合、というケースです。どういうことが起こるか。

そしたらX銀行は、100億円の10%の10億円を金庫にしまって、残り90億円はお金を貸すんです。今度はC社に。そしてその90億円で支払いしなければいけないD社に払うんです。受け取ったDさんは90億円を社長室に持っていても泥棒に入られたら困るから、また90億円を銀行に預けるわけです。
ここからは繰り返しです。こうやって次々に銀行に預けるわけです。90億円を。この段階で世の中のお金はもともと100億円だった。しかし私に、あんたはお金をいくらもっている? とたずねた時に、私はポケットのなかの3万円とは言わない。銀行に預けている100万円という。これはウソではない。私は本気で銀行に預けている100万円を降ろそうと思えば、いつでも降ろせますから。D社に、あんたお金をいくら持っていますか、ポケットの3万円とは言わない。銀行に預けている90億円という。これで世の中の預金の量はいくらになったか。190億円になった。お金の量はもともとは100億円しかない。現物は。しかし世の中の預金は190億円になった。これは誰もウソを言ってない。ウソを言ってないけど納得できない。でも現実はこれで動いている。誰もその190億円のお金をナマで見たことはないけど。これは信用なんです。あるつもりです。答えを言うと、これを信用創造という。

あとは繰り返しです。90億を預けたら、10%の9億だけ金庫に眠らせて、あとの81億をE社に貸すんです。そのE社も81億でF社に支払いをして、お金を受け取ったF社はまたZ銀行に預ける。これをずっとやっていく。果てがない。最後の1円になるまで、これを繰り返していくと、私は計算したことはないけど、私よりも頭のいいある数学者が計算したら、すると世の中のお金の量は1000億になる。こういう計算が出た。これは試験で出せます。こういうふうに銀行がお金も作っていくことを信用創造といいます。


どういう計算式かというと、まず信用創造額は、当初の預金額が100億だった場合、それを支払準備率10%で割ります。%を小数に直す。これは説明しません。0.1で割る。そうすると1000億になる。これがお金の量なんだけど、ここで試験で聞くのは、信用創造額はいくらかだから、もともとあった100億を引く。すると900億円になる。計算自体は小学校5年生レベルです。手品みたいですけど。

終わります。


授業でいえない「公共」 32話 景気循環

2024-02-24 16:47:36 | 高校「公共」

2024.10.24

【イスラエルとハマス】
経済のところからですが、今現実に起こっていることは戦争です。エルサレムはどこですか。イスラエルとハマスのこと、そのあらすじを書くと、こうです。ハマスがイスラエルを攻撃した。先に手を出したほうがどうしても悪くなる。これに対して、叩かれたら叩き返すという自衛権があるから、反撃は正当化される。法的には、先制攻撃と自衛権の争いですね。しかし自衛権は自国を守ることですが、イスラエルは明らかにもうめちゃくちゃパレスチナ人を殺している。今もパレスチナ人にガザ地区の北から南に逃げろといって、そこにバンバン爆弾を打ち込んでいる。しかも子供が半分ぐらい死んでいる。ニュースでは。日本はG7のうち、このイスラエルの自衛権を支援するかというと、日本はハズレた。日本はここには入らなかった。

こっちがアラブ側、ロシア側です。その反対に、こっちがアメリカ中心の米英側です。日本はこれにかかわると、もう平和憲法の憲法9条もへったくれもないようになる感じですね。陸戦では、戦車投入が今日か明日か明後日か、1日伸ばしできているけれども、これになったらどうなるか想像がつかないけど、とんでもない戦争になるんじゃないかな。これは核が絡むんです。よく日本は外れたなという感じがする。臨時国会が今週からはじまったし、危ないところですね。

何回も言うけれども、まずはこれです。石油です。あそこのペルシア湾を封鎖されたら、ホルムズ海峡を封鎖されたら、日本にはパイプラインはないし、タンカーから運んでくるしかない。そのタンカーが入らなくなると、日本の備蓄はどのくらいあるかな。2~3か月ぐらい、半年あるかな。そんなところで、ガザ地区が陸戦に行くかどうかという固唾を飲んで見守っているというところですね。ここがどうなるか。どうなるか。

前にも言ったけど、こうなるのが分かっていて、なぜこのハマスがこれをやったのかというのが、これが謎です。イスラエルは弱くない。それを分かっていて、なぜハマスがこういうことをしたのか。イスラエルの自衛権発動を許すようなことを許すようなことを、ハマスはしたのでしょうか。叩かれたら叩き返していい。そこに正当性が発生することを、ハマスはなぜやったのか。ただアラブ人迫害はイスラエルは今に始まったことではなくて、ずっと潜在的にやっていた。



【GDPの限界】

お金のことを隣のクラスでは言いましたけれども、今のお金というのは、前に見せましたよね。これは日本銀行券でしょ。日本銀行券は二つ注意。政府紙幣ではないんですよね。第二次世界大戦前の80年前までは、これを私が日本銀行に、福岡の支店に持って行って、おねがいしますと言ったら、実際の金貨が来たんですよね。この引換券だった。今は、これで私が日本銀行に行ってお願いすると、追い返される、おちょくりに来たのか、おまえはと。これは引き換えできないんですよ、では金貨には1万円の価値がある。これは多分10円ぐらいですよね。印刷代として。10円が1万円になる。なぜされを1万円だと信用しているか。金の価値じゃないよ、政府の価値なんです。政府の信用です。政府が決めている、1万円とすると言って。お前の1万円は1000円の価値しかないと、どっかのコンビニの店員さんが言ったら、その人は犯罪者です。

政府が決めた1万円札を1万円と認めないというのは。政府の信用です。戦争が起こると、国が潰れたりする。石油が来なくなったりすると、経済ガタガタになって、お札の信用が落ちる。何が上がるか。もともとの金貨が上がる。いま金が上がっている。戦争が起こってから。もうセオリーどおりです。でもこれはあまり良くないです。どれだけ危険かというのは、金が上がる時はよくないです。いまその金がボンボン上がっている。逆にいうと、これは政府の信用が失われているということです。

そういうお金の話に絡んでいきますが、前回はGDPのことについて言いました。1年間でどれだけ価値あるものを、これを付加価値というけど、これを生産したか。これを国内総生産という。20年数前までは国民総生産といっていた。GNPです。実はこれは教科書にはふれてないけど、結構大きいことなんです。国民がどれだけ豊かかということと、国内でどれだけ生産したか。うちの県でも珍しくない、外国人は。外国人の分が入るか入らないか。入ります。とにかく国内で生産すればいいんだから、誰が生産したかは関係なくなった。このGDPは、それが変わったんです。欠陥というよりも、GNPとの比較として。君たちはあまり聞かないかもしれないけど、我々は物心ついて、中学校から高校、大学まで、ずっとGNPで来たから、GDPのほうはあまりなじみがない。

他に欠陥というのは前回言ったように、これはあくまでもお金と交換した場合にカウントされるんだから、私が裏の畑で大根をつくって、私は大根を好きだから大根おろしをしてムシャムシャ食っても、それは生産したことにはならない。
1番言われるのは、お母さんたちの家事労働です。こう言うといけないけど、性別がいけないとか、お母さんでもお父さんでもいいけれども、弁当を作ってくれた、洗濯してくれた、掃除してくれた、ものすごく貴重な労働です。でも入らない。なぜか。お母さんが働いたから、弁当作ってくれたからといって、君たちはお金を払ってない。お金を払ってないものはGDPに入らない。だからGDPだけでいうと漏れてくるものが結構出てくるんですよ。ここは。貴重な労働が逆に排斥されていくような、変なことにもなっていく。


このクラスでも前に言ったでしょう。お母さんが家のことをしてくれていた。しかし外に働きに出て、月に10万もらってきた。これはGDPに入ります。では家のことは誰がするか、する者がいないから、お手伝を雇った。雇ったら10万円の給料を払わないといけない。差し引きゼロ、家にとって豊かさは変わらない。これでも国のGDPとしては20万円増えるという変な事になるんですよ。そういうところが欠陥です。

それから、売り買いすれば何でも良いから、例えば、ミサイルを買う。あまり欲しくないですね。しかしそれも1機、何十億とする。それを何十機分と、GDPに加算される、軍事費が。それから公害対策への費用。以前、重油が流出したことがある、あれにも工事代で何千万と払うでしょう。そういうのがGDPに入る。価値としてはマイナスでも、価値という人間が決めるものであって、お金には色がないから、お金が流れた量が増えればいい。その中には黒いお金もある。だからGDPにも欠陥がないわけではない。だからGDP一辺倒ではいけないんじゃないかということは、ずっと言われています。

他の指標としては国民純福祉。一日、24時間働けますか、という昔のコマーシャルがあったけれども、あんなことをして寝る時間を惜しんで、日曜日でも会社に出て、それでGDPだけ上げて、おまえは楽しいのか、と言われれば、おもしろくもおかしくもない。それでも日本は豊かになればいい。でもそれはおかしくないか。お金の量と同時に、遊ぶ時間とか、自分が好きなことをする時間とか、そういうものも反映するような指標が必要になる。これも結構難しいですけれども、それも入れようと。


それから最近は、カーボンニュートラルとか、二酸化炭素、これは地理でも出ている。現代社会でなくなった分、地理に出ている。二酸化炭素をとにかく少なく少なくと言って、二酸化炭素の量で証券市場までできた。今年、先月だったかな。空気にも値段がつき始めたんですよ。そして国同士や企業同士で権利を売り買いするとか。そういうマイナスの価値である廃棄物の分を差し引いて、GDPをだそう。グリーンGDPという。グリーンというのが環境です。木のイメージのグリーンです。そういう経済の指標もある。



【経済成長】
経済というのは成長するにしろ、衰退するにしろ、理想は安定していることです。こうやって、じっくり登っていくのがいい。高級車はそうです。スプリングが効いて、エンジン音も少なくて、おんぼろな私が乗っているクルマになると上下の振動がひどい。この上下の揺れが絶対出てくるんですね。波がある。景気変動しながら上がっていく。これは落ちてもいく。落ちるときもある。しかし今まで100年ぐらいがじわじわ上がってきた。ただここ30年間は衰退傾向ですけど、日本だけは。

それで経済成長するのも、このGDPで表される。ただ去年と比べて、GDPがどれくらい成長したかを見るときに、経済成長するときには、君たちは経済成長を経験してないけれども、物価も上がっていくんです。ここ2~3年、上がりはじめたけど、あれは悪い上がり方です。石油が上がったから、それに連動して上がった。
高度経済成長期、私がハナタレ時分には、子供のころには、土曜日は半ドンだった。土曜日は午前中まで学校があった。昼で終わって、家に帰ってきて、昼飯を食っていた。その時にアンパンを買いに行くのが楽しみだった。小学校1年の時はアンパンが20円だった。1日の小遣いが10円だったです。あまり給料は変わらないようになったけど、これが小学1年です。それが6年生の時には、アンパン1つが確か60円になった。5年間で何倍になったか。300%でしょう。これぐらいのインフレ率です。だから経済成長が3倍になったかというと、給料も上がっていたからいいんだけれども、20円のアンパンが60円になっていたら、同じアンパンが3倍になっていたら、本当の経済成長はしてない。


10万円の給料が30万円になっても、しかし物価は20円から30円になったとする。そしたら、表面上の経済成長が5年で、本当は年間だから、5で割ったら、60%ぐらいになる。5年で300%の経済成長したかというと、そこから物価上昇分を差し引かないといけない。これは難しくないけれども、算数が要ります。君たちがやっているような難しい数学は要りません。これは小学校の算数レベルなんだけれども、意味が大切です。問題の意味が。計算上は単に算数です。

物価が上がることをインフレーションという。俗にインフレでもオーケーです。一般的にもインフレーションとは言わない。インフレ、インフレという。
逆に物価が下がることをデフレーションという。これも、デフレ、デフレという。我々がハナタレ時分に経験したのは、このインフレです。君たちが今まで経験しているのは、このデフレです。そういう物価の変動です。物価の上昇がインフレ。そうすると表面的にはGDPは増大する。お金が動いた量だから。
物価が下落するとき、落ちるとき、これをデフレという。そうするとGDPも下落するとこういうことです。ただ単純にそれだけかというと、ここで困ったことが起こるんです。



【インフレ】
例えば、リンゴ1個がもともと100円であったのが、物価が上昇するんだから、10倍は大きすぎるけど、計算しやすいようにそうすると、リンゴが1000円になった。その分、給料も上がる。では私が地元銀行に預けていた預金の1000円も上がるのか。自動的に増えるのか。これは増えない。給料が上がろうと、私が銀行に預けている預金の1000円は1000円のままでしょう。これは変わらない。1000円は1000円です。預けているのは1000円だから。

そうするとリンゴ1個100円の時には、1000円の貯金でリンゴ10コ買えた。しかしリンコ1個が1000円になると、私の1000円の貯金でリンゴは1個しか買えなくなる。あまりにも当たり前です。しかし私は喜ぶんですか、困るんですか。ここが大切です。ものすごく困るよね。私が汗水たらして働いた1000円の貯金の価値が10分の1に下がったんです。リンゴ10個の価値からリンゴ1個の価値に。

仮に私が1000万円持っていたら、数年間は遊んで暮らせる。それが10分の1の100万円の価値になったとすると、1年も遊んで暮らせない。そんなことが起こる。

これは10倍でも大変だけれども、1923年にドイツで起こったことは、1919年に第一次世界大戦が終わった。ドイツは第一次世界大戦でも負けて、第二次世界大戦でも負けた。そうすると、第一次大戦が終わった4年後に、インフレが起こる。これがどれくらいのインフレかというと、君たちは中学校で見たと、他のクラスで言っていたから、パン1個を買いに行くのに、リアカーいっぱいの1万円札を積んで買いに行かないといけない。リヤカーは分かるかな。こういうの。リアカーとは、リアワイパーのリアは、うしろのことでしょう。カーはクルマです。これちゃんとした英語です。リヤカーです。こうやって引っ張っていく。
ここに1万円札をいっぱい積んで、パン1個です。1兆倍です。1兆倍、これが私みたいに1000円しかもたなかったらいいけど、ドイツの大金持ちで1兆円持っていたら、これ本当に1兆%のインフレになる。1兆円を持っていてウハウハだったのが、一夜明けたら、これは1年ぐらいで起こる。1円になると、まるまる1兆円が盗まれる。

ドイツ人がインフルを嫌いなのは、まだ100年たったかな、ちょうど100年前です。この記憶を親から聞いて、爺ちゃんから聞いているから。インフレは怖い。身ぐるみ剥がされる。私はここまでは分かる。

しかし分からないのは、物には質量保存の法則とか昔習ったけど、これは理系の方が得意だろうと思うけれども、ものというのは完全になくなることはないんです。なくなったら、それはどこかに行かないといけない。富の量も。みんな1兆円が1円になった。富が奪われた。ではその富はどこに行ったのかというのが、よく分からない。どこかに行っているはずなんです。何冊か本を読んだけど、どこに行ったのかよく分からない。損した人間のことだけしか書いてない。では儲けた人間は誰なのか、それがよく分からない。君たち分かったら、いつか教えてください。



【デフレ】
今度はデフレーションです。今のようなリンゴが安くなっていく時です。そういった場合には、逆に何が困るかというと、例えば地元銀行から私が1000円を借金していたとすると、借金していたら、この借金の1000円は、リンゴ1個が100円の時にはリンゴ10個分の価値があったんですね。しかしリンゴが安くなって10円になれば、この借金はリンゴ100個分の価値になる。借金は実質的に増えたんですか、減ったんですか。借金が10倍に増えたんです。100万円の借金だと思っていたら、1000万の借金になった。10万円の借金だと思っていたら、100万円の借金になっていた。これは怖い。

これはみんな、家は住宅ローンを組んでいる。何千万の家を、30代、40代で、キャッシュで、現金でポンと払えたらすごい。みんな定年まで住宅ローンを組んでる。物価が落ちて、キャラメルが100円から10円に落ちて、良かったのか。大変です。こういったときには。だから借金するのは恐くなる。これは家のお父さんも、会社の社長もそうです。企業を大きくしようかな、ちっっと家をつくるのに、1000万円を銀行からお金を借りろうかな。しかしデフレだと恐い。どれくらい借金が膨れるかわからない。ということは生産活動が落ちてくる。こういうふうに単純にものの値段が上がってよかった、下がってよかった、そんな問題ではない。他のところに、いろいろ影響がある。預けた金はどうなるか。借金した金がどうなるか、全然違った効果が出てきます。



【2つの経済成長率】
次のページです。だから経済成長率というときには、表の経済成長率が1つある。お金だけで見る場合です。しかし実際に豊かになったのか、そうでないのかにはもう1つある。
表面上の成長を名目経済成長率という。物価の変化を調整しないまま、ただ表面のお金の量だけを見る。しかしこれでは生活の実体が分からないから、もう一つ実質経済成長率というのがある。これは表の経済成長率から、物価の上昇率を差し引いて調整したものです。差し引かないといけない。ここで小学校5年生の算数が出てきます。
名目経済成長率というのは、これが基本ですけど、実質は下です。読むだけだから理解してください。たぶん小学校5年程度の算数だと思う。本年度のGDP-前年度のGDP、これを前年度のGDP、で割ったら、去年から今年はどんくらい成長したかが分かる。あとはパーセント計算です。100を掛けるだけです。

では実質経済成長率というのはどういうことかというと、100円のアンパンが150円になったとすると、実際には、名目上の計算が150%増えたことになっても、生活の豊かさから見ると、これを物価上昇率で割らないといけない。これGDPデフレーターというのは、教科書にも計算式は書いてない。ものすごく複雑だから、1億2000万人の経済活動をどうするというのは。ただイメージとしては、これが物価上昇が、150%で、50%増えた。そしたらこの分の1.5で割るんです。150%は1.5でしょう。そしたら実質の、物価が上昇した分を差し引いた実質のGDPになる。ここは分からないかな。100分の150、でしょう。物価が100円が150円になったら、物価が100分の150、倍になったでしょう。というのことは、単純に1.5でしょう。この1.5で割ったら、その分が減る。去年の名目GDPは減るんです、、、、、、みんな沈黙してますね。私はこの算数上の説明はできない。これ以上、どういったらいいかな。どう言ったらいいかな。

100円のアンパンが150円になったら、実質的にどれくらい値上がりしたかというのは「100分の150」になる。これは小数に直すと1.5になる。1.5で、表面上の成長率を、けっきょく成長してないでしょう、150%成長したように数字上は表示上はなってるけど、物価が上がっただけなんですね。1個のアンパンであることには変わりはないわけです。ここは100円のアンパンよりも150円のアンパンがうまくなっていたら、また別ですけど、しかし同じ味付けで、同じ大きさのものが、100円で買っていたものが、150円で買っただけ。そしたら、その分を経済成長率から差し引くんです。割り算で。これ以上は説明できない。理解してください。

こういうGDPデフレーターというのが何かというのは、これは教科書にも書いてないけど、ここでほっておくと、必ず誰かがたずねる。GDPデフレータはどうやって出すんですか。誰かが聞くんです。この計算はできない。ただイメージ的にはその分を割り算で差し引けばいい。

もう1回言います。去年のGDPが100万円だったとする。それが今年は150万円に増えたと。そしたら、名目上150万になったとしても、アンパンが100円だったのが150円になっていたら、何も変わらないでしょう。そしたら、150万円を1.5で割ったら、結局100万円になるじゃないですか。これが実質なんです。なんだ成長してないじゃないか。数字が上がっただけで。ここらへんの経済は、名目と実質というのを分けて考えないと、一種の手品です。算数自体は難しくない。手品が難しいだけです。どっちを言っているか、というのを見分けないと。君たち理系が分からなかったら、文系はもっと分からない。実質GDPがメインです。経済成長は、実質で見ないといけない。



【景気循環】
それでこういう景気変動がある。こういうふうに波打っていくんです。波打って上がる。しかしこれは半分は希望的観測です。波打ちながら下っていく場合だってあり得るわけです。この変化を4つに分ける。
景気が良い時は好況期です。でもこれがずっと続いて行くかというと、これもあまりよくない。山高ければ谷深し、になる。あまりに景気が上がりすぎるとガクンと落ちる。これを私は経験した、社会に出てからすぐの20代に、これがバブルです。あの頃、私もまだ若くて経験がなかったから、ほー、世の中はこんなものかと思って、こういう角度で経済成長していくのだなと話していたら、30~40年前ぐらいの、定年前の同じ社会科の先生が、「バカか、お前は」と言われた。なぜバカかというと、当時の高校生は、私は職業高校にいたけれども、勉強しないといいところに就職できないぞというと、先輩たちが、オレは勉強しなかったけど、就職はいっぱいあったという。実際に4~5年間は、どこにでも就職できた。引く手あまたで。1人に対して10社ぐらい求人が来て、もっと生徒をくださいと。生徒は選び放題だった。生徒がそれに味をしめて、そういう。その定年前の先生が、その先生は戦前生まれだから、経験の厚みが違うんです。こんなバカな景気がいつまでも続くわけがないだろう。そんなことがあるわけがない。それで4~5年は続いた。いつまで続くのかな、これがバブル崩壊ですね。

おまけに、山高ければ谷深しで、10年たっても全然回復しない、20年たってもまだ回復しない。30年経ってもまだ回復しないでしょう。そして今もです。この原因がバブルです。みんな不思議がっていた。私は、別の仕事も若いころしていて、あるお金持ちは、ある社長が5000万で土地を買った。社長それは何に使うんですかというと、イヤ何も使わない、売るんだという、5000万で買って5000万で売ったら同じじゃないですかというと、見ていろ、という。そのうち倍になるからと、1年で倍になるからという。それがたった半年で倍になった。これがバブルです。買っただけで5000万もうかる。これがバブルです。


こういう儲け話は、みんな人に言う。人に言うなよといいながら。お前だけに言おうと、自慢話はするんですよね。しかしこのあとバブルが崩壊すると、これと同じ数の人が損したわけです。これは言わないですね。だから、端から見ていると、あの人は儲けた、あの人は儲けたと、そんな話ばかりになる。それで、バブルで踊った男たちとか、バブルで踊った女たちとか、そんな小説がいっぱい出てきた。
だからあまり高くなるのは良くない。ある程度でおさえて、そうすると、本当はなだらかに行くのがいいんですけど、そうはいかない。これが後退期です。恐慌というのは、それが急に落ちる。これが時々起こる。まだゆるやかに波打っているぐらいはオーケーです。これをまったく波打たずに、全くブレずにやろうとすると社会主義経済になる。国家管理の経済になる。しかしこれは失敗したんです。それで落ちる加速度がつくと、ピタッとここで止まらずに、下にもぐる。不況期ですね。不況が深くなると恐慌です。しかしある程度のところで回復する。それで回復期になる。


だから好況期と不況期がある。特徴は。好況期は物がよく売れる。給料も上がる。だから物も売れる。物が売れると、第1工場だけでは追いつかなくて、第2工場をつくる。生産が拡大する。生産が拡大すると、社長はもっと人を雇おうとする。高校生を、高校に求人をいっぱい出す。そると雇用の増加する。でもこれは30年前に終わった話です。そのあとは今まで、こんなことは起こってないです。そして給料も上ってるから、商品が売れる。物価は上昇する。するとインフレになる。これがインフレです。

逆に不況になると、もう売れない。売れない在庫を抱えて、クルマを100台つくったけれども、30台が売れ残った。そしたら工場を稼働するのは、第2工場はやめようとなる。すると生産が縮小する。そして給料も落ちる。会社経営も悪くなる。すると社長は働きの悪い社員はクビです。そこまでいかなくても、新入社員の採用は100人採っていたものを10人におさえる。すると高校に求人が来なくなる。それでも会社が生き残っていけばいいけど、民間企業というのは倒れる。倒産するんです。倒産したら給料もらえません。働いたから給料がもらえるのは、それは会社が儲かっているから初めて給料が出る。それで倒産企業が増加する。そうすると首を切られたお父さんは、給料を持ってこないから、物が買えない。物が売れないと、逆に物価は下落する。デフレになる。こういう循環です。

なぜこんな事が起こるかっていうのは、人間の欲です。一言で分かりやすく言うと。今年クルマが10台売れたとして、ここで来年どうするか。ここが4~5年の幅がある。クルマが10台、20台、30台と売れて、これが山だなと思えばいいけど、こうなれば40台売れるんじゃないか。作るんです。作りすぎたと、すぐに軌道修正すればまだ生き残れる。いやいやまだ50台いけるさ。一気に100台売ろう。一本勝負に出る。それが当たればいいけれど、当たらないことが多い。すると企業ばかり大きくなって、会社ばかり大きくなって、売れなくなる。給料は出なくなる。会社は倒産する。こうやって景気はブレるんです。

景気が落ちて行くときにも、今度はクルマを50台から40台、30台と。さらに20台と。20台作っていたら、本当はもっと売ってくれというお客さんが10人来ていた。その10人の分は作ってないから、みすみす損したことになる。それで慌てて増産しようとなる。こういうところは、経営者の判断次第です。経営者は何も仕事をしなくて、朝から晩までニュースを見て、新聞を見ながら、本を読みながら、時々お茶を飲んでいるだけじゃないか。それが仕事です。来年はどうなるか、当てないといけない。何もしていないように見えても。鉛筆倒しで当たればいいけど、そういうものではない。人に電話して、情報仕入れて、あんたの会社はどうか、情報が命です。情報を仕入れるのは、汗水たらして働くのとちょっと違う。経営者の仕事はそれです。予測を当てないといけない。



【キチンの波】
こういう好況、後退、不況、回復、こういう波がどのくらいの波の長さか。通常は4~5年です。4~5年の波、名称はキチンの波という。これは発見した経済学者の名前です。まる覚えしてください。これはここで言ったような在庫が原因です。作りすぎて残った。前にも言ったけど、スーパーの弁当を午後4時で500円の弁当だった。学生のとき私もよくやっていたけど、6時半過ぎたぐらいから、館内放送で、弁当の値段が落ちていく。だんだんと。聞いたことないですか。「弁当500円のところ、大サービスして450円で、ただいまから販売いたします」と。大サービスではないんです。もし売れ残ったら明日は売れない。特に食品は。売れなくて残るよりも、450円で安くして売ったほうが、まだしも儲かる。だから、いくつ作るか。これが20個しか売れないのに、25個作って売ってやると、欲の皮が突っ張っとるとこうなる。20個しか売れなかったら、5個分は作り損でしょ。会社の損失になる。こういう周期があるんです。弁当が一番わかりやすい、作ったけど度売れない。売れないと損失になる。こういう在庫、在庫の変化です。



【ジュグラーの波】
それから10年の中期波動、ジュグラーという人の名前をとって、ジュグラーの波という。この原因は設備投資です。在庫は分かるでしょう。弁当の作りすぎとか、クルマだって売れ残ったクルマとか、あるでしょう。クルマだって、売れるまで待っておけばいいのか。日本車は良くモデルチェンジする。モデルチェンジで、次のモデルチェンジまでに売れ残ったら、もう売れないですね。または中古車センター行き、新古車として、または値段が落ちる。やっぱり時間との勝負です。
次、設備投資というのは、設備だから機械です。機械が古くなった、または技術革新で、新型の機械を、新型ロボットを入れようとか、これがだいたい10年周期です。もうちょっと言って、建物まで言うと、第2工場をつくったのが、だいぶ老朽化してきたから建て替えようかとか、最新式の工場を作ろうかとか、そういう周期です。



【コンドラチェフの波】
それから50年周期というのがある。コンドラチェフの波といいますけれども、こういうのは私のような凡人では、ちょっと分からないような産業の変化です。私が遭遇したのは、例えば私が高校の時に、今のような高校生でもスマホを持って、ポケットの中で持ち歩いて、滅多に合わない友達とラインができて、どこにいても繋がる。そういう時代が来るなんて、夢にも思ってなかった。それには3段階ぐらいあって、パソコンブームが起こって、Windowsが流行って、今度はネットです。インターネットです。この3段階ぐらいで。それがパソコンに、スマホというのはパソコンでしょう。パソコンに電話機能がついているのと同じです。そういう技術革新です。

これが50年に1度ぐらい起こる。人の一生が80年、だいたい一生のうちに1回ぐらいは遭遇する。君たちはもう1回、何かが来るかもしれない。私はその時いないかも知れないけど。だからここからここまでが、キチンの波が、1番短くて4年だとすると、この倍の10年ぐらいのこういうジュグラーの波がある。それから50年だとすると、この5倍ぐらいのこういう波がある。経済学者の仕事というのは、この短い波の方程式、この中位の波の方程式、この長い波の方程式、3つの連立方程式を解かないといけない、みたいなものです。複雑すぎて、誰も解いたことがない。解ける人は解いてください。これは文系の仕事ではない。文系はこんなことはできない。だからこんなことやっているのは理系です。理系が予測を当てているかというと、ぜんぜん当てていない気がするけど。



【金融の役割】
次のページです。今は工場だった。工場で何を作るか。そして作った物を金に換える。お金の総和が生産量です。ではお金を管理するのはどこか。これが金融機関です。金融機関の意味が分からない人は、銀行です、1言でいうと。
では銀行とは何か。お金を扱うところです。このお金という漢字には二つの意味があります。一般的にはお金です。しかし音読みすると金(キン)ですね。2つの意味がある。では金を扱うところが銀行だったら、金行でいいじゃないか。それでもいいんですよ。ヨーロッパは金中心の経済で金のお金だった。しかし日本は銀中心のお金だった。だからバンクという言葉を、金行では発音も悪いから、だから銀行にした。銀行は、金を扱うところです。お金を扱うところです。
終わります。




授業でいえない「公共」 31話 国内総生産 最近の動向

2024-02-19 19:27:09 | 高校「公共」

2023.10月17日

【イスラエル・ハマス戦争】
世界はいろいろ毎日毎日動いてるからね。このあいだ、どこまで行ったかというと、ちょっと気になるのがイスラエルでしょう。新聞を読めてますか。試験でいそがしいと言うかもしれないけど。今起こっているのは私から見ても、君たちよりも何倍か生きてるでしょうし、結構大きい。結構ビクビクしてる。ホント。去年あたりから。イスラエルハマス。イスラエルは何人ですか。ユダヤ人です。こちらは。ハマスは何人ですか。アラブ人です。言葉の使い方が、まず分からないんです。ハマスはアラブ人ですが、これを言うときには地域名でいう。パレスチナという。これが、だんだん大物が今出てきているでしょう。水面下から。何が出てきそうですか。イランが出てきそうでしょう。イランの次には、サウジが出てきそうでしょう。サウジアラビアですよ。今日あたり動いてるのは、この後には中国がいる。その後ろにはロシアがいる。
今日、もうプーチンが中国に行った。なにか大物がドカンとでてきて、ここらへんが動き始めると、日本が何を言っても止められんない。逆にイスラエル側には誰がいるか。アメリカがいる。今朝プーチンが中国に行って、これは何を話すか。しかし間髪入れず、バイデンが明日中国に行くと言った。大物が出てきたな。このアメリカの後ろには誰がいるか。これはNATOがいて、NATOというのは政治はまだやってないけど、北太平洋条約機構という軍事同盟です。ヨーロッパです。日本はどっちですか。このNATO側です。

ガザでのイスラエル・ハマス戦争が1週間前の10月7日に起こって、今日が10月17日、10日前に起こった。3日も経ってからで遅かったけれども、その時には首相の岸田さんは、何と言ったか。まずハマスを非難した。先に攻撃したのは悪いのは悪いけど、その背景はよく分からない。よく考えると、ウクライナ戦争では、ウクライナはアメリカ側でしょう。ロシアと戦っている。日本はアメリカ側です。すると、どうなったか。輸入量の10%ぐらい原油をロシアに仰いでいたんですよね。今はゼロでしょう。
石油のあと90%は、誰から日本は仰いでいるか。昔は90%、去年から97%は仰いでいる。何処からですか。中東のアラブ諸国からです。その中で最大のものがサウジアラビアです。ウクライナ戦争以後、日本はサウジアラビアと敵対関係になっている。
50年前、1973年の第4次中東戦争は、やっぱりこの構図だった。私はまだ中学生です。どうなったか、日本は油が来なくなったら、原油が上がるだけではない。電気がつかなくなる。その前に、なぜか知らないけど、トイレットペーパーがスーパーからバートなくなった。昔はティッシュとか、そんな洒落た言葉はなかった。よくてトイレットペーパーです。昔はチリ紙と言っていた。それが全部なくなって、インスタント食品なんかもなくなった。まだ当時、今から50年前というと、戦争中の高校生が40~50歳ぐらいですから、戦争の記憶があるわけです。あっ来た、と思ったんでしょう。まず買い占めた。物がなくなったんです。

岸田さんはまずハマスを非難した。私は今までの岸田さんの動きを見ていると、またこれはまずいことを言うんじゃないか、そういう恐れがある。ここ1週間の動きをみていたら、最初は非難するといった。今度は、イスラエルに対して、深く憂慮すると言った。心配するという感じです。前回が強いでしょう。そして世界には双方に対して戦争の抑制を望む、と言った。3つ言ったんです。この順番で言うと。私は、まずいほうに行くなあと。しかしここ1週間はイスラエル批判です。中途半端です。でもこれしかないです。これしかないんです。
日本の基本スタンスは、ハマス批判なんだけれども、このイスラエル・ハマス戦争については、何かここらへんで。ただ新聞を見ていると、一応、担当大臣は外務大臣です。女性の上川陽子、上川さん、あの人はイスラエル支持で動くみたいな発言してますから、政府内でもブレている。上川さんは、昔、アメリカの民主党で働いていた人です。毎日毎日、あと1週間たったらどうなっているか分からないけど。こんな感じで、非常に微妙なバランスで行ってます。


【石油危機になる危険】
日本は9条もあるし、戦争したらいけないとなっていたら、それしかない。イスラエル側についていたら、まず石油ですね。原油が来なくなる。次は、どうもイランが出てきそうでしょう。地図で言うと、サウジアラビアがあって、アラビア半島があって、こうインドがある。日本は島国でしょ。
中国というのは、石油はどこの国だって大事です。全部こうやって、陸路で供給網を確保している。パイプラインというんです。それがあるんです。しかし日本は島国だから、絶対に船じゃないとダメです。船で運ぶと、油田地帯というのは、イラク、サウジ、イラン、全国絶対ここのペルシャ湾通って、ここから船でもってくるしかないんですよ。それでイランがここにある。イランは何をするか。この海峡を封鎖するかも知れない。

パイプラインあるところはいいです。タンカーが全部せき止められたら、日本はものすごく危ない立場です。日本にはタンカーでしか原油は来ないんだから。この海峡は戦略的拠点で、何とか海峡というけれども、知ってる人、誰か1人ぐらいいるかな。ホルムズ海峡という。ここを封鎖されると、日本はもうパーです。そういう、こっちを非難するということは、その危険がある。頼みの綱はロシアだったけれども、早々と岸田さんは切った。だから先週言った鈴木宗男さんは、私はそんなに好きじゃないけれど、あの人は良いことも悪いこともやるけど、言わないといけないときには言う。昔から。それで人気がある政治家なんです。日本では非難されているけど、唯一ロシアに行ったでしょ。パイプはいっぱい持っておかないといけない。それは確かです。日本に爆弾が落ちる前に、エネルギー安全保障の点から、これが必要なんだと。この2つがなくなったら、日本はもうダメです。どうしようもないです。50年間の再来なんですよ。

今こんな状況で、ここは中途半端で、真ん中ぐらいにいるというのは、アメリカが中心に先進国7か国会議、これをG7という。これが今年5月に日本で会議をした。日本もその一つなんです。おまけに広島であったから、日本は議長国だったんですよ。ウクライナのゼレンスキーまでなぜかここに来てる。ウクライナは関係ないけど、こちら側に立った。これがアメリカを中心にして、声明を出したんです。ウクライナ支持、ウクライナ支援の声明。そして7ヵ国、おまえたち全部サインしろと言って、5ヶ国はサインした。しかし日本は断った。サインしませんと言った。ということは、ハッキリとイスラエルを支持しませんとは言わないけど、ぼかしたんです。どっちにつくか分からない。あと一つカナダがそうだった。これで完璧にイスラエル側ではない。バランス取っている。でもどっちに行くか分からない。本当にここ1週間は、毎日毎日状況が変わっていくから、私も気が気ではないけど、今日あたりまた動くでしょう。さっき言ったけど、ロシアのプーチン、今朝中国に行った。するとアメリカのバイデンが明日中国に行くと言った。ここで何が話合われるのか分からないけど、和平協定で停戦をしなさいと言ってるのは、アメリカじゃなくてロシアです。しかしアメリカの反対で、国連がそれを拒否している。

この戦争はやめるしかないです。結論いうと、ちいさいウクライナとなんとかの代理戦争だったらまだしも、もう役者がそろってるでしょう。ロシア、中国、アメリカ、世界のナンバー1、2、3がそろったら、これらはどっちかが、どこかの国が一発ロケット弾を発射したら、もう止められないです。誰が止めることができるか。日本か。絶対に止めきれない。
ちょっと、そういうところで、前回の訂正というか、前回は非難をしたなあ、マズイなと思って、心配もあって言ったけど、一応日本は、G7のイスラエル支援の署名を断ったんです。というところです。だから非常に綱渡りしているような、ハラハラどうなるかは全く分からない。

だから岸田さんもいいことしているかというと、そうでもないです。日本人がここガザ地区に、何百人も日本人がいる。本当は何千人といるかもしれない。これを救助する必要がある。ここにいたら、地上戦がある。戦車が入ってくるかどうかです。だからここにいる日本人を助ける義務があるのはどこですか。これは日本政府です。彼ら日本人はちゃんとパスポートを持ってガザに行ってるんです。パスポートを。あれは高い。4~5万円する。4~5万円のうちの3万円ぐらいまでは何かあったときに、日本政府が彼らを救助する資金のためです。それが含まれている。それはどこの国もそうですけど、日本人を救助しに来ました。救助のために飛行機を出します。3万円ちょうだいと言った。しかも日本への直通ではなくて、ドバイとかいう中途半端なところまで連れて行きます。あとは自分で帰ってください。

ここには韓国人もいる。韓国も同じように韓国人救助の飛行機を出した。新聞にそう書いてある。当然タダです。あとまだ何人か乗れる。日本と韓国は仲がいいですか。仲が悪いですよ。領土問題とかあって。日本人が3万円、そしてドバイまでしか行かない。そしたら席が余っているから、乗って、乗って、と言った。50何人かな、日本人が日本の飛行機に乗らずに、韓国の飛行機に乗って帰ってきたんです。こういうのは国際的に笑われるんですね。日本政府は何してるんだと。日本は、日本の国民の安全さえ守れない国なんだなと。外務大臣が言った。上川さんという女の外務大臣が。ありがとうございましたと。またよろしくお願いしますと。ちょっと違うんですね。何のためにパスポートに4~5万も出してやっているのかということです。こんなことするんじゃないです。小さなところをケチって、大きな恥をかいてるところがある。こっちはこっちで署名しなかったことは良いかもしれないけど。これにもいろいろ意見はあります。絶対ハマスが悪い、これを叩けという人もいるんだから。

君たちがどう考えるか、分からないけど、私はこの戦争が拡大したら、ものすごく危険であって、私が60数年生きている中でも、目を見張るほど危険だと思う。これはとても危険。そんなところです。日本は原油が上がれば物価がどんどん上がってるのですか。物価を押さえないといけない。
押さえるといっても、普通は企業対策の補助金とか、何兆円の予算を補正予算で組むかと思ったら、ベビーシッターの割引券を送るとか。ヘビーシッターとは子守りだから、子守が悪いという意味ではないよ。しかしそのくらいで良かったら私だって考える。もうちょっと専門家のプロならプロとしての大々的な経済対策とか、ドカンと打ち出さないかなと期待していたら、子守の割り引き券だった。これも地本新聞に載っている。やることが小さい。だからどうなるかなと。半分は良かった。G7で署名しなかったことはよかったけれども、大丈夫かなぁと思いながら今見ているところです。前回、日本はハマス非難にまわったと言ったけど、ここ1週間はそこまでいってない。先は分からない。




【M&A】
次のページに進んで行きます。今は株式会社のところの説明をずっと続けてやってますが、株式会社の近年の変化というのは、会社が他の会社の株を持っていいんだったら、どんどん小さい会社を吸収して、大きくなることができる。これを持株会社といった。これは20数年前に解禁された。つまり禁止されていたのが解除された。こういうのを解禁といいます。だから今、持株会社オーケーになりました。とうことは独占企業、巨大企業がどんどんできていくということなんです。
しかしそれは、大きい企業が小さい企業の株を買っていいということだから、中小企業の社長が怯えてるのは、利益が出るかどうかのほかに、自分の会社の株を他の企業から食われはしないかということです。巨大企業から。実際それが、ここ20年ばかり進んでいるんです。これが合併、買収です。これはぜんぶ株です。お金の動きですよ。お金の動きです。株を買えばいいんです。これをM&Aという。単語は難しいです。合併と買収のことです。このM&Aを、日本の政府は半分いいことのように持ち上げてきた経緯があるんだけれども、これをやっているのは実は外資です。外国の大きな企業です。これが日本の企業、小さい企業を、ちょっとした町工場を、ガバッと食ってしまう。これで泣くに泣けない中小企業の社長はゴマンといます。こういうのを俗にハゲタカファンドと言う。これはほとんど外資です。外国企業です。そういう名前の経済小説も一時流行った。ハゲタカと言うのは、動物のハゲタカじゃない。そういう企業のことです。資金力によって企業が食うか食われるか。株対策をしないといけない。そういう状況に今おちいっています。


【多国籍企業】
そういうのは外国企業です。外国企業がよけい成長してるのも事実です。日本の企業に比べて。傘下にいっぱい子会社を持って、いろいろな産業部門に手を伸ばしている。そういう企業のことを、横文字がよく出てくる。ここ20年でてきたのは、ほとんど横文字ですね。もともとあのアメリカのことだから、これをコングロマリットといいます。複合企業です。巨大企業です。こういうのがいっぱい発生して、日本にも乗り込んできている。アマゾンもアメリカ企業です。そんなところありますよ。企業の資産価値としてはも世界も5本の指に入る。アマゾン、グーグル、そういうネット企業もそうです。
そういう企業は、アメリカ発のアメリカ企業といっても、日本でも営業活動してるし、他のイギリスとかフランスなどのヨーロッパでもいっぱいあります。マクドナルドでもそうですよ。スターバックスでもそうです。多国籍化している。

多国籍化したら、自然人の普通の人間が税金を払わないといけないのであれば、法人である企業も法人税という税金を払わないといけないです。それを法人税というけれども、その法人税をいくら払うかというのは、国際ルールで決まってないです。国によって高いところもあれば、低いところもあるんです。50%取るところもあれば、5%しかとらないところもある。多国籍企業というのは、こういう国がいっぱいあって、本社をどこに置くかというのは、本社のビルを建てるのではなくて、紙一枚で登記すればいい。早い話、この教室だって〇〇株式会社として、私が登記所に行って登記すればできる。ウチの家だって登記できますよ。そしたら安いところに行きます。払わなくていいから。こういうふうに、他の平均して40%の法人税を取るのが世界の平均だとしたら、極端に安い法人税をしてるところが、特に貧乏な国に多い。そういう国に逃げていく。法人税の取り方は二重取り禁止で、どこか1か国に払えばいい。こうやって安い国、ゼロにはならないにしても、こう言う国をタックスヘイブンという。タックスは税金です。ヘブンといえば天国で税金天国ですけど、それと似たヘイブンは本当は避難場所という意味で租税回避地という意味です。ということは日本にもグーグルとかの日本の現地法人があります。あの人たちは、日本に税金を落としているか。落としてないです。多国籍企業で、何が悪いか。日本人の売上がぜんぜん日本に税金を落とさないで、他の国に流れている。

これは例えば、例えばうちの県に、東京の大企業が進出したら、東京に本社があるとしたら、うちの県で営業活動して、例えば大規模店舗がウチの県にも3つできた。うちの県で売り上げて、その利益は入らない。地元の商店街だったらウチの県に税金が入るけど、ぜんぶ東京に行く。本社の利益になって、本社の所在地は東京になる。その世界版です。多国籍企業というのは。こういうのが問題になるんです。公平じゃないということで。
こうやって吸い上げらるだけのところは、着実に貧困化していきますよ。君たちは、20年まで15年ぐらい、昔、私が若いころに比べたら、地方はもっと豊かだった。そして何年か前に地方を歩いて回ったことがあるけれども、うちの県にもアーケードがあったんですよね。長い、何百mっていう、あれがほとんどないでしょう。そこまで地元商店街がつぶれてる県は珍しいです。他の県はまだアーケードが残っている。そしてまだ営業している。それはやっぱり変わった、大型店舗がボコボコボコと3つもできたら、地元商店街は潰れてしまう。さびれた。頑張らないといけないという気持ちで言っているんです。しかしどこの県もシャッター通りが増えた。地方は。
ではそういう地元商店街、東京が一番先に潰れていくか。東京の地元商店街は今も残ってます。何も変わらないです。そのまんまです。私が若い時のままです。かえって栄えている。残ってます。だから昔の商店街のイメージ、昭和の商店街のイメージを探しに旅行に行くとしたら、地方に行ってもないです。東京にある。変なことに。今はそんなことになっている。

タックスヘイブンは税の回避地という意味で、このことについては資料のページにありますから、ここではもう見る時間はカットしますので、自分で見てください。この租税回避地については、税率が国によって違うということです。税率が国によって違う。すると多国籍企業は、税率の安い国に本拠地を置くようになる。そうすると置かなかった日本には、税金が入ってこない。しかし日本で営業はできる。こういう問題がいろいろ発生します。多国籍企業になると。


【企業の社会的責任】
だから株式会社も利益の追求だけで本当にいいのかというのは、あるんです。何十年か前から。そういう考えもいいかもしれないけど、こういうこともしないといけない。利益の追及だけでなくて。それをいくつか言います。
まずリサイクルとか、産業廃棄物を出さない取り組みをしましょう。これはぜんぶ英語です。これはゼロエミッションといいます。

それから全部枕詞は、企業の利益の追求だけじゃなくて、芸術活動もしなさいよと、文化も高めなさいよ。こういうのをメセナという。変な名前です。どうも英語じゃない。フランス語みたいですよ。フランス人が考えそうなことではあるけれども。

次、社会的貢献活動。社会的貢献とは、社会的にいいもの、ボランティアとかそういうものもあるんです。これをフィランソロピーという。

それから、あとは法的な一般的なものですけれども、法令順守です。日本語でこう書けばそういいものを、企業であっても、株式会社法とか商法とか、ちゃんとルールがあると、それをちゃんと守りなさい。これを何というか、コンプライアンスという。これは良く政治家が使います。国会答弁で、コンプライアンスと。だから必要単語になってくる。企業の利益だけじゃなくて、社会的責任というものが、非常に問われるようになってきている。

その社会的責任は、品質の安全性、これは当然ですが、日本の食品というのは、10年前までは遺伝子組み換えを認めないし、人工甘味料とかの添加物とかの添加物とかも、認めても1番基準が厳しかったりして、安全ナンバーワンだったんです。そういうことを言う半面で、その後は遺伝子組み換えを認めてるでしょう。商品の裏側見ても、昔は遺伝子組み換えを使ってますという表示が義務づけられる、書かなくてよくなってから、私も何を食っているのか、よくわからない。非常に落ちた。しかしずっとこれは言ってます。品質は。食品の安全をはじめとして。ストーブでも火事になるようなことがあったら回収しないといけないとか、そういう安全基準があります。

それからソーシャルビジネスというのが新しい単語です。これは普通、利潤の追求から二酸化炭素を出す、工場廃液を出す、巨額環境を汚す。しかしその環境を汚したのをクリーンにするための企業です。環境保全です。それは、清掃活動のようなボランティアじゃないか。ボランティアは無償でしょう。それを有償でする企業です。金もらって。こういうのをソーシャルビジネスといいます。こういう考え方が出てきました。

しかしこのことは、さっき言った外国の多国籍企業が日本に乗り込んで、ハゲタカになっていることをどう防ぐか、その対策にはなっていません。逆に日本の企業をいかに従順に従わせるか、その手段になっているように思います。




【経済成長と景気変動】
【GDP(国内総生産)】
次のページですね。株式会社が終わって、その株式会社が何を生産して、いくら生産したかという量を計る。この量のとらえ方に、これだけいろいろ指標があるわけです。しかし全部は覚えなくていいです。覚えなくてはいけないのは、圧倒的にいつも使うのはGDPです。国内総生産といいます。1年間で日本の企業が、日本の国内でどれだけのものが生産されたか。あと国民総所得、国民所得、この3つを次のプリントで言いますけど、一番大きく変わったのは、30年前まではこう言ってなかった。国民総生産GNPと言っていた。
国民総生産から国内総生産に変わった。これはどう違うか。1993年に。私がこの学校に来た頃です。30年前です。国民だったら「日本人の」です。しかし国内だったら「日本での」ですよ。日本人でなくてもいい。外国人もオーケーです。基準の違いが。日本人の総生産といったら、外国人は入らない。外国人と日本人の違いは戸籍です。肌の色とか関係ない。戸籍があればいい。外国で生まれたって、日本の戸籍をとればいい。これを帰化という。別に差別的なことではない。戸籍です。外国人もオーケーとなった。ここらへんは世のなかの動きで、今は外国人留学生とか、外国人労働者とか呼んでいる。日本の子供の数は少ないし、ではどうやってGDPを増やすか、日本人が少なくなって、外国人に働いてもらう。理屈は合っている。けれども、それが本当に幸せなのかという疑問はある。そういう基準を次のページでいいます。そこが一番の変化ですね。30年間で。

あとの勘定の仕方は同じです。GDP、国内総生産というのは、国民じゃない、国内です。一文字違いで意味するところはかなり違う。考え方もかなり違います。一見この人(絵)は日本人に見えるけれども、外国人でもOKです。日本人とは書いてないから。こういう顔した外国人でもオーケーです。
いくら付加価値をつけたか。この人は、お百姓さんが小麦を10億で売れたと。そしたら、この付加価値はゼロから10億だから、イヤ種代があるじゃないかとか、あまり細かいことにこだわらないでください。そこまで言うと話が細かくなっていくから。10億もうけた。製粉会社は小麦粉にしたいから、小麦を10億で買って小麦粉を15億で売った。差し引き5億もうかった。その小麦粉を15億でパン会社が買って、パンを30億で売った。差し引き15億のもうけでしょ。そしたら国内総生産は、10億と5億と15億を足して30億円になる。付加価値をそれぞれ加える。単純に最終生産物の30億、これで済むじゃないか。実際には、1億2000万の人口がいて、どれが最終生産物かというのは、本当は分からないです。だからその都度、付加価値を計算していく。そしたら最終生産物の額と同じになる。計算方法はその都度やっていく。日本人であろうとなかろうと、どこでも。外国企業であろうとなかろうと、いいわけです。

だからGDPを上げるだけだったら、熊本にTSMCという台湾企業が来た。前にも言ったけど、台湾企業というのは日本の半導体のお株を奪って、もう今は台湾です。この時までは、何を隠そう日本は半導体王国だった。若い技術者がとても有能で。しかしここ30年はそうじゃない。そのころの台湾企業のノートパソコンは、台湾企業のものは安かったんですよ。しかし質が、画面でも見にくかった。お前のパソコンは台湾製品だろうとかといっていた。今は違う。だから、そういう企業を呼んで、しかもそこに日本政府が補助金5000億を出してます。あと5000億出そうという話もある。外国企業にですよ。しかしそれでいいのかという疑問がある。なぜか。外国企業でしょう。さっき言ったように、外国企業は日本に税金を落とさない。そういう企業に税金を使っていいのかという議論がある。外国企業でもいいじゃないか。でもそこです。誰のためなのか、というところです。

あと、GNI国民総所得という。これは外国への所得の支払いを差し引いたものですね。ここは名前を覚えるだけにしておいてください。

NI国民所得という。これは前もちょっと言ったけれども、固定資本消耗分を差し引いたものです。この教室の机だって10年に1回買い替えなければならない。これが100万したとしたら、このクラスでいくら稼いでも、その分をプールして、利益から差し引いておかないと、1年間に10万円ずつ差し引いておかないと、これは買い替えられない。そういうのを差し引くんです。
あと、その間接税というのは消費税に係るから、それも利益にはならないから引く。しかし政府で補助金を出す。これは利益になる。これは細かすぎる。こういう指標がある。


【三面等価の原則】
ポイントは三面等価の原則というんですけれども、これだけ説明します。三面というのは、生産分配支出の3つです。ちょっとこれでは分かりにくいから言葉を変えます。生産はそのままです。分配というのは、これは売りです。作ったものを分配するとは売ることです。支出というのは、売った以上は誰かが買う。勝った人はお金を払うでしょ。その買いですよ。例えば、パンを100円で売って、100円で売ったものは絶対100円で買わないといけない。ある取引で100円で売ったけれども、150円で買ったというと、それはどっちかがウソを言っている。この2つは絶対成り立たない。これは難しいことではない。説明するのが難しいだけで。売った値段と買った値段は、イクオールです。何を売るかというと、その前に作らないといけない。これが生産です。作ったものというのが生産で、それが全部売れたら、売った額といっしょ、売った額は買った額と同じでしょ。難しく言っているけど、あまり難しいことではない。これを三面等価という。
すると、頭のいい君たちの先輩は、イヤ在庫があるという。クルマ100台作っても10台売れ残った。そしたら90台しか売れてないから、だから生産額と売った額は違う。正解です。だからそれは入れないです。だから、作った量というのは売れないものをいくら作っても、これは仕事したことにはならない。早い話、私がおにぎりを3つ作って自分で食べた。作らなかったら、500円の昼飯を買いに行く。自分で握って、それが生産量になったかというと、売ってないから、これは生産したことにはならないです、ということです。これはお母さんの家事労働が、経済のGDPに入らないのと同じ理屈です。そこにお金が介在してないから。だから売れないものは生産したことにならないです。作ったものがすべて売れたとして。あとはこれは算数上の問題ですね。これを三面等価の原則という。


【フローとストック】
では作って売れただけが、経済的な富なのかというと、2つの考え方があって、まず言葉をいうと、フローとストックに分けます。
フローというのは、君たちは英語を習っている。どんな意味か。流れるという意味です。逆にストックというのは、貯まってるものということです。これを分けて考えるんです。具体的にいうと、女性が結婚相手を探すとき、男でもいいけど、Aさん、Bさんがいて、Aさんは月収100万あったけど、しかし貯金は10万しか持たなかった。Bさんは月収10万だったけど、しかし貯金は1億円もっていた。どっちがいいか。これはなかなか難しい。
何を言いたいか。これがフローです。給料が。流れてる、毎月毎月。もう一つは、貯まったもの、貯金です。これがストックです。フローとストック、その関係。おまえは金持ちだと言ったときに、給料を言っているのか、貯金額を言ってるのか。給料は多くても、そういう人は結構派手に使うから、貯金はほとんど持たなかったりする。結婚してこんな人とは思わなかったとがもある。逆もある。真面目にコツコツ働いたて、貧乏な生活をしているけど、実はガバーッとお金を持っているとか。意外といるんです。貧しいところに住みながら、お金をガバッと持っている。どっちが豊かなのかという問題。こういうのをフローとストックといいます。

そのストック、これは貯金です。貯金です。フローは給料です。こう答えたらダメです。でもイメージはこれです。分かりやすくいうと。ここで分かりやすく説明したことは試験には使えません。試験には試験用語があります。ただ理解の手段として、押さえてください。こうやって勉強するでしょう。
この貯金に、国富というもう一つある。これも結構大事で、国の富とは何かというと、君たちはこの教室で当たり前に電気がつく。インドとか行ったら電気がつかない。電気がついても手術している途中で良く停電する。すると手術がパーになる。死ぬんです。今はクルマは舗装道路で行ける。昔は砂利道で、本当に10キロいくにもゴツゴツした道を揺られに揺られて行っていた。田舎道というのはそういうものだった。でも今はほとんどないでしょう。県外へも高速道路があってパッと行ける。そういうインフラの整備状況も富の一つです。
そういうものというのは固定資本、住宅の立派さ。この学校の建物だって、何年か前に建て替えられてよくなった。木造校舎はなくなった。機械とか道路とか、それは固定資産です。

それから無形固定資産というのは、知的財産権です。どういう特許を持ってるかとか。特許をもっていたら、それだけで収入が入ってくる。本を書いた作家には印税が入る。一冊書いて売れると、仕事しなくても、それが50年間売れれば、50年間ずっと給料が入ってくる。それも財産です。それからソフトウェアもそうです。当たれば、1回作って当たれば、左うちわで仕事しなくていい、そういう人はあまりいないけど、そういったこともある。

それから土地がどれぐらいあるか。そしてその土地の下に、何か貴重なもの、例えば石油が埋まっているか、埋まっていないか、これも大きい。日本には石油がない。サウジアラビアなどは砂漠で不毛の土地でも、その下にがっぽり石油がある。土地の価値は全然違う。だからほとんど税金をとらなくていい。

最後に対外純資産というのは、貸付金ですね。海外への。これ日本は、実は世界最大です。しかしどこに貸しているかというと、それがアメリカなんです。アメリカにどうやって貸してるかというと、米国債を買っているんです。アメリカの国債です。そうやってアメリカの政府に貸し付けている。でも返してもらえないです。だから全く減りません。つまり塩漬け状態で、使えない資産になっている。日本は、これが秘密の問題なんですね。当たり前に返してもらえれば、ちゃんとした国富なる。国富というのは、こういうのを加えたものです。一応、表面上は日本が使えるタテマエにはなっているけど、ここらへんは日本特有の問題があって、それこそがここ30年来の日本の低迷の一番の問題なんですけどね。


【GDPの限界】
こういう指標の中で、一番使うのはGDPです。それも完全ではない。完璧ではない。前に言ったように、その欠陥は、金銭と交換されない貴重な労働がある。それは全く計上されない。分かりやすいのは家事労働、お母さんの家事労働です。君たちも、お母さんにお金を支払いはしないでしょう。でもしてくれるでしょう、そういうのは数字に入らない。
それからふさわしくないもの、例えば防衛省が1兆円、今度増税する。これはGDPに入る。軍事費です。そんなもの、なければ一番いいじゃないですか。これも国の富に入る。国の経済規模に入る。公害対策で、汚染水処理に機会を投入した。これも本当はないほうがいいでしょう。しかしそれも入るんです。なかったほうがいいものを使っても入る。このあいだオスプレイを日本が買いましたけど、あの費用だって、入ります。プラスで。日本が買うんだから。本当はないほうがいいですけど。そういうものも含む。
終わります。


授業でいえない「公共」 1話 青年期について

2024-02-17 06:59:00 | 高校「公共」

2023.4月

【公共について】

今から「公共」をやっていくわけですけど、「公共」というのは、君たちもすでに聞いてるかも知れませんが、10年に一度、教育課程が変わって新科目なんです。これはこの高校が変わったというよりも、日本全国、文部科学省の指示によって変わっていくんです。そういう意味で「公共」は新しい科目として変わりました。去年までは何をやっていたかというと「現代社会」をやっていました。基本的にはこれを受け継いでいます。
名前が「公共」に変わったその意図は何なのかというと、それは偉いお役人たちが決めるんでしょうけど、ただネイミングでいえば「現代社会」というのは、良いも悪いもない、ただ現代社会なんです。ニュートラルなネイミングです。価値的には。
しかし「公共」というのは、あとで政治面で言いますが、これには対立概念がある。これは「自由」の対立概念なんです。自由の権利とかよく言いますけど、ここには独特の理屈が絡みます。日本は法治国家ですから、日本人である以上は、その法を破ったら手が後ろに回る。ではどういう理屈かというのはあとで説明します。

自由に対してあまりにも行き過ぎた自由を主張する人もいる。ではそれに対する歯止めがないのか。その時に、憲法上「公共の福祉」という、この「公共」という言葉が出てくる。現代社会という価値的にプラスマイナス・ゼロの言葉から、右と左、政治的な右ではないけど、右に寄った。あくまでもネイミングとしては。

君たちは高校生で、もう小学生ではないから、もうちょっと大人の世界のことを話します。教材の1冊目、これは教科書です。教材の2冊目が資料集です。1冊目のこの教科書は君たち以外には手に入りません。これは非売品です。書店に売ってない。でも2冊目の資料集は近くの本屋に売ってあるかどうかはともかく、注文すれば誰だって手に入ります。この差は何か。
教科書を開けてください。教科書の一番最後のページに何と書いてあるか。「検定済み」と書いてある。これは検査しているんです。この教科書を書いた人は、その上にある10人ばかりの人です。偉い大学の先生と、有能な高校の先生です。ではこの人たちが何を書いてもいいのかというと、検定というのは何ですか。検査することです。どこがするんですか。国です。もっといえば文部科学省です。
検定の表示は教科書に載っているけど、説明する時間はあまりないからここで言いますが、正しいと思ったことを教科書に書いた大学の先生が、ダメと言われることがある。頭にきて、何でなのか、どこが悪いのかと、裁判になったりする。でも国は権限として検定する。

ここに書いてあることは、例えば、日本の経済面で、10年間も金融緩和をしてきた。10年間も。誰がしたんですか。こういう新聞ネタが出てくるんです。日本銀行の総裁です。あの人は10年もやったんです。ふつうは長くて5年です。私はこんなに長い金融緩和を見たのは初めてです。何でこんなに長いのか。安倍さんの指示のもとです。でもその安倍さんが去年暗殺された。すると日銀総裁も首になった。そして新しい総裁に代わった。そう最近の新聞に載っていた。
10年間の金融緩和で何をやったか。この言葉はまだ教科書には出てきてないけど、アベノミクスというのをやった。これは一言でいうと金融緩和なんです。ではこのアベノミクスの評価が良いのか悪いのか。景気はよくなったのか。良くなってない。GDPという日本の経済成長率は、先進国中で最低です。全然、上がってない。上がっているのは税金だけです。消費税も、3%、5%、8%、今は10%でしょう。昨日たまたまプリンター買ったら、30000円で買って、33000円払わないといけない。アレッと思ったら、消費税10%、結構大きいなと思います。最初は3%だった。それが5%、そして8%、さらに10%になる。これで終わらないね。
いま岸田さん何と言っていますか。防衛費を上げようとしているでしょう。税金も上げるんです。この方針の評価はどうなのかというのは、反発が強い。中にはこれで行くべきだという人もいれるけど、何をしているんだ、不景気の中でこんなことをされたら堪らないという人が多い。普通は、景気が悪い時には減税するんですよ。生活が苦しいでしょ。そういう時には、税金を下げるんです。でも日本は例外。それにいろいろ理由をつけている。そういうことが新聞に載ってます。

ここに書いてあるのは、こういう反対意見があるなかで、国家検定をした文科省の見解です。しかしこれだけが唯一の意見ではない。なぜこんなことを言うか。例えば、数学の教科書だったら構成が違うだけであって、1+1が3になったりしないんですよ。そうなったら世の中は壊れてしまうから。しかし現在の政治についてどう書いているかというのは、日本と中国で違う。日本と韓国でも違う。さらに10年前と違うんです。そういうものです。政治というのは。

君たちも来年から18歳で投票権があるでしょう。君たちは2年生ですけど、3年生が私に聞くんですよ。「どの政党に投票すればいいですか」と。それが分かれば苦労しないですよ。仮に私がこの政党がいいといっても、そんなことはたいして意味がないでしょう。私が、例えばA、B、Cの3つの政党のなかでAがいいと言っても、必ずイヤAは良くないという人がいる。これが民主主義です。そういうふうに、いろんな意見がまだはっきり定まってないことを選挙によってはっきりさせることが民主主義です。そういうまだはっきりしないことも、この教科書は含んでいるんです。数学だと、1+1が3になったら大変なことになるでしょ。これが歴史だっら、もう50年、100年、昔のことだから、過去のことは動かないから、まだしも言いやすいんですよ。しかし実際の社会はまだ動いてるんです。動いていることを、これが良いんだ、悪いんだといっても、これは誰にも分からない。一つの意見が正しいといっても、反対意見もある。しかし国がこういうふうに検定した。そういうことです。

ただ、もう少し言うと、これは検定教科書なんですが、制度によっては国定教科書というのもある。こうなると一冊だけです。日本の高校生の「公共」の教科書はこれ1冊だけ。これが国定です。では検定教科書というのは何かというと、これは○○出版という会社の教科書です。○○出版という会社が、こういう偉い先生たちにお願いして、書いてくださいと言って書いてもらい、そして国の検定を受けていくわけです。出版会社は他に有名なところで、4つ5つぐらいある。これは進学校用です。あとは実業高校用とかですね。1社で3種類ぐらい出している。だから10種類以上ある。そのなかでうちの高校が選んだのがこれです。選択肢はちょっとだけある。しかし国定教科書になると1冊です。


しかしもう一つのこれは資料集だから検定はないです。こっちの問題集もそうです。だから読んでみて、余計なことは書いていないのはこれ(教科書)です。もっと自由に、本音をぺろっと書いてあるのはこっち(資料集)です。だから資料集は1ページから全部読むものじゃないけど、ホンネはここら辺なのかというのが、ペロペロ書いてある。これが資料集です。これは教科書ではありません。
そういう特性のある教科です。



【青年期】
まず倫理面から、1番目にさっそく行きます。まず青年期の問題についてです。君達は青年期です。青年期というのは、けっこう危険なんですよ。私は、君たちよりも多少は長く生きているから、少しは分かっているかも知れないけど、青年期の後もずっと波があるんですね。だいたい10年に一度ぐらいは。
青年期を通り過ぎて結婚しない人も多いけど、結婚というのは、自分がしたいと思っても、相手がイヤだといえばできないでしょう。ここは文句なく男女同権です。結婚してくれというのは男かも知れないけど、女には拒否権がある。逆に女から結婚してくれと言われても男が結婚したくなかったらできないでしょう。それはそれでいろいろ山あり谷ありで、振られて落ち込んだり、いろいろあるんですよね。
次に子供ができる。子供ができて、かわいい2~3歳の時はいいけど、10年経つと君たちみたいに憎たらしくなる。親御さんたちも大変です。思春期の子供をもつ親というのは。なぜかというと、思春期は荒れるから。学校での表情と家での表情が全く違う生徒もいる。でもそれは異常じゃない。普通そんなもんです。だから青年期の山は非常に高いです。ここでやり損なう人もいる。ただこういうふうに10年~15年スパンで、一つの課題がある。こういう人生の周期をライフスタイルという。これは教科書用語です。

なぜこの青年期は危機の時期かというと、波が高いのかというと、まず体が変化する。これを第2次性徴という。第2次成長ではない。まず性的に変化する。性長でもない。長というのは長短で、プラスの意味が加わっている。プラスでもマイナスでもない単なる特徴です。性的な特徴が現れる。私はこれ以上、性のことについて話すのは得意ではありません。男の性がどうのこうのというのは。分からない人は、保健体育の先生によく聞いてください。とにかく体つきが変わる。子供の時期のものと。体つきが変わると、それに引きづられて、考え方も変わるんです。

今やっている、この倫理面は、政治経済面に比べると、まだしも世界共通のことです。検定をすると、国の意見と違うようなことをいう大学の先生の意見は外されるでしょう。ということは国の意見と違うことはなかなか教科書には書けないです。そういうことはよくあるでしょう。ある県だって、何十年と、あの諫早湾で、国が訴えられている。有明海が今年は超不作です。それは諫早湾の堤防が締め切られて、5~6キロぐらいの堤防ができます。しかし環境被害で国が訴えられている。これ最高裁が、結局、国を再度訴えることはダメと言ってしまった。そのことに対して、いろいろ意見はある。それは新聞に載っているとおりです。国がしたことを、文科省という国の機関が、国に対してそれは間違っていると言うことは、基本的に書けない。
それを書いた検定教科書、教科書審議官と言うけど、もしいれば偉い。首をかけて検定を通したら。でも教科書審議官も、なかなか首をかけてまで、国に反対する教科書を通そうというのは、ないんじゃないかな。だから国のことは基本的に、この国はダメだとはなかなか書けない。ただ教科書以外にもいろいろな意見はある。

ただ倫理面では、そういう縛りが少ないから、純粋に学問上ことのほうが多い。ただそれにも異論がないわけではない。そこにも学説という形でいろんな意見があります。環境問題、異常気象とか、地球の温暖化とか、これなんかも、ちょっと、去年の2年生の教科書には、いっぱい載っていた。

しかし教科書には異論のことは書いてないけど、去年の2年生の資料集には、ちゃんと異論があることは書いてあった。温暖化じゃなくて、寒冷化であるとか、その他いろんな考え方があります。
検定教科書というのは、大なり小なりそういうものですが、1番影響を受けるのはこの「公共」です。去年までの「現代社会」です。過ぎ去った
過去のことではなく、いま現在進行形で起こっていることが載ってる。今も反対運動とか賛成運動とか、いろいろある。そういうことが、まだ結論が分からないうちから、一つの考え方が載っているんです。
そこらへんは、君たちも1年前倒しすれば大人だから、選挙権もつということは大人だから、ある程度は分かってください。でも共通テストは国がつくるでしょう。それは教科書に載っていないことを○×問題で、教科書と違うことを○にしたら問題になる。そういう大人の構造があるんです。



【ジェンダー】
しかし倫理面は、そういうことをあまり注意しなくてもいいほうです。この第二次性徴で、体が急激に変化する。中学、高校生は。そして男らしく、女らしくなる。男が女を求める。女が男を求めるというのは、それはそれで自然なことです。なぜ求めるか、そこらへん分からない人は、また保健体育の先生に聞きに行ってください。私はそこら辺は苦手なんだけれども、君たちはそういう性的な特徴の渦中にある。大人はもうちょっとうまい対応の仕方を覚える。しかしまだ分からない人もいる。
昔はこれ単純でよかったんです。しかし今は、これに加えて、後で出てくるけれども、ジェンダーの問題がからんでくるんです。
ここでいう第二次性徴は肉体的です。あくまでも肉体的です。しかし
肉体的じゃない性的特徴というのがある。これは文化的・社会的につくられた性差です。男が女を求める、女が男を求める。でもそれ以外のものが、新聞、テレビ、雑誌、いっぱい出てきている。教科書にも出てきている。これは何ですか。LGBTです。
私は正直いって、ここら辺のことは得意じゃないんですね。Lはレズでしょ。Gはゲイでしょ。Bはバイセクシャルでしょう。それからTはトランスジェンダーでしょ。レズは、女で女が好きな人、何が悪いかと言われれば、理屈としてはそうかも知れない。ゲイは男で男が好きな人、バイセクシャルというのは男で男も好きだし女も好き、女で男も好きだし女も好き、それで何が悪いのかと言われれば、なかなか反論できないです。トランスジェンダーというのは、男の肉体でも心は女だという人です。

実は、こういうのは、今に始まったことではなくて、江戸時代の元禄文化にはハッキリ文学として出てきているんです。昔は、男で男が好き、これいい男たちのたしなみだった。男色といって。数十年前、大学のときには卒業論文がある。同級生の綺麗な女の子が国文学科だった。彼女が卒論に何を選んだか。「井原西鶴における男色の研究」と言うのをやった。私は彼女には声をかけきれないままに終わったんですけど、残念なことをしました。そういうふうに前々からあるんです。問題は、それをなぜ今あえて法制化しなければならないのかと言うことです。
終わります。

 


授業でいえない「公共」 2話 通過儀礼

2024-02-17 06:58:00 | 高校「公共」

2023.4月

【第二次性徴】

「公共」には、倫理と政治と経済があります。倫理面はけっこう抽象的で、哲学者名前がいっぱい出てくる。教科書一冊終わらせるには、ここらへん飛ばせるところは、ある程度飛ばすかも知れません。

それでその倫理面ですが、「公共」という言葉に表れてるように、今の3年生と君たち2年生はちょっと違う。科目の名前自体が。去年までの「現代社会」とは。君たちは新課程です。君たちは今の3年生と違うんです。特に社会科は。
この「公共」というのは、公共の福祉というのがあるように、これは社会性というのが強く出てきてます。これに対立するのは何か。個人と社会は、どこにもある対立概念で、個人、そこからでてくる自由、これには重要な政治的な対立概念がある。対立概念というのは考え方が相反するものです。これが出てきてる。それが公共です。
その「公共」ですけれど、今年の3月まで現代社会をやってたことと、教科書が違うと、温度差というのかな、微妙にニュアンスが違ってきているんです。そういう「公共」です。「公共の福祉」の公共、これが一番有名な言葉です。

この青年期という時期、中学・高校時代。人生にはライフサイクル、こういう波があって、だいたい10年に1度ぐらい大きな山が訪れるという話はしました。
それぞれ結婚する20代、子供を育てる30代、40代、中年になって人生の午後3時、そして私のように60才過ぎたら、死なない人間はいないわけですから、死ぬ時間の方が明らかに近いです。それでも死ぬまでそれぞれ悩みはあるわけです。ただ一発目の青年期はこの波が高いんです。こういう高い波がある。ライフサイクルがある。個人差もあるけど、それでも他の波よりも高い。青年期の特徴というのは、この第2次性徴。性の「成長」じゃないよ。長というのは長短の意味が加わってます。長は良い意味になるね。そうじゃない。ニュートラルで、ただ特徴です。

ここらへんは、あんまり保健体育の先生ほどうまくなくて、私はちょっと苦手なんですけど、これは肉体的特徴です。肉体的特徴とは何か。昔の学校では、悪さ坊主が私を困らせるためにわざとよく聞いてきたりしていたけと、まあそういうことですよ。肉体的特徴が出てくる。通常は、小学生でお手々つないで男女が登下校していたのが、急に意識しだして話さなくなる。しかし次には、男が女を求める。同時に女が男を求める。これは人間が何万年の歴史があるか分からないけれども、きわめて自然なことです。永遠の営みと言ってもいい。そして子供が生まれる。それに責任を持つ。それができる社会というのが尊ばれてきた。


【LGBT】
しかし、君たちが非常に、我々の時代と比べて、年は50歳ぐらい違うけれども、50歳と言えば人間の歴史のうちで、ほんのちょっとです。しかし私たちが高校のときと教えることが違う。私たちはここら辺はニヤニヤしながら、それに疑問もたなかったけれども、性に関してここ十年急速にでできたのが、肉体的性ではなくて、性は社会的に形成される、文化によって形成されるんだというのが、今大きく出てきてます。

20年前には、雑談としてしか言ってない。言わなかったことはないけれども、言ってはいたけど試験に出すとか、そういうレベルではなかった。みんなニヤニヤと笑ってすますような感じだった。しかし今は大まじめに教科書に出ている。LGBTです。肉体的性ではなくて、文化的に作られる性、または社会的に作られる性です。男らしさ女らしさというのは、国によって地域によって文化によって違うんだと。こういう考えが全面に出てきた。
確かにコレはウソじゃない。未開社会に行くと、日本とかヨーロッパでは化粧するのは女性の方ですけれども、最近は男でも何かイヤリングをはめたり、お化粧したりする。未開社会の研究なんかによると、化粧するのは女性ではなく男だったりする。それはそれで、いいかもしれないけど、我々の感覚とはどうも違う。


これは、化粧は女のものという感覚と違う。例えば楽園の野鳥なんか見ていても、カモでもいい。綺麗なのはどっちですか。カモのメスとか、地味な灰色っぽくて、あまりキレイじゃない。雄がキレイでしょう。孔雀なんかはパーッと尾を広げるのは、あれどっちですか。雄でしょう。雄がキレイになる動物というのいっぱいある。メスにもてないといけないから。子孫繁栄のために。そういうことを考えると、あながち男が化粧して良いかも知れない。しかしそれは男が女を求める、女が男を求める、それとは矛盾していない。

しかし、LGBTになると違うんです、Lはレズでしょ。ここら辺は我々はニヤニヤしながら言っていたことです。昔、中学生、高校生のときには。Gはゲイでしょ。Lは女が女を求める。社会的につくられた性だから、これを認めようという動きです。ゲイは、男が男を求める。コレも社会的につくられた性でいいじゃないかという。Bはバイセクシャル。男が男を求めてもいいし、男が女を求めてもいい。両方ともいい。女が男を、女が女を、どっちもいい。これがバイです。男女2つともオーケーです。Tはトランスジェンダー、これは肉体的には女だけども心は男。肉体的には男だけども心は女。こういうのも社会的につくられた性として認めようと。

これは、前にちょっと言ったかも知れないけど、私が昔、学生で卒論のとき苦労した。100枚書くのに。私が、告白できずにグヂグヂ思い悩んでいた綺麗な女の子がいたんです。卒論の題材は、井原西鶴という元禄文化の人、君たちは日本史はあまり分からないかも知れないけど。

それでいろいろ考えて、文化をいろいろ見ていたら、哲学者の言葉だけ教えても分からないと思って、例えばソクラテスとは何か、プラトンとは何か。愛の姿を説いたと言っても、分からない。ギリシアの歴史や世界史をしないと。これではしょせん無理だなあと思うところはあるんです。だから補足は、特に倫理の補足はかなりやるかもしれない。

何の話かというと、綺麗な女の子が、元禄文化の「井原西鶴における男色の研究」というのをやった。井原西鶴というと、江戸時代の「好色一代男」とか、教科書に書いてある。受験用語で、日本史選択生だったら覚えないといけない。「好色五人女」とか。近松門左衛門だったら「女殺し油の地獄」とか、そういうのがある。この男色の研究というのは、男が男を愛でることです。これは昔からあったんです。これを、かわいい顔して、すごいことやるなと。しかしいたって評判良かった。君はよくやってると。
私なんか、メチャクチャ言われた。こんなことじゃあ卒業認定できるもんか、そこをなんとか、お願いしますと言って頼み込んで卒業したけど、この女の子はよくできてると。世之介という金持ちのドラ息子が女遊びに飽きて、男色の世界に身を費やす。最後は船をしたてて世界の果てにある女護ヶ島、女だけが住む世界に向かって船出していく。そこで終わる。荒唐無稽な、半分遊びで半分冗談みたいな物語ですけど、その研究をやった。大真面目で。それは男と男を性的な関係でよかったけれども、ご結婚するということはなかった。女と女が結婚する。いま新聞にも載っている。

今どこまで来ているか、男と男の結婚を認めるかどうかです。女と女の結婚を認めるかどうか、そういうこと。それは良いか悪いか分からない。それを決めるのは、日本は民主国家だから、政治家が決めるんじゃない。政治家がもしバカだったら、バカな政治家を選んだのは誰か。国民がバカだからです。民主主義のルールは最終的にそうです。そこを決めないといけない。今年中に法案を通すかも知れないけど、来年だったら、君たちは投票しないといけない。18歳選挙権で。目の前のことです。そういうことを見ると、変わったなあと思うと同時に、君たちの青年期は大変だなぁと思う。

私も同じ戦後生まれです。私も戦前教育なんかは受けてない。戦前教育は、ウチのお袋が、ちょうど高校の時が戦争まっ最中だった。私の時は高度経済成長だった。君たちは低成長時代ですけど。しかし同じ戦後教育の雰囲気の中でも、とても変わった。それをどう教えようかと悩みます。今、このLGBTについて法律化されようとしているのは何かというと、同性婚です。これをどうするか。
そういう混乱した雰囲気の中で、君たちは人格を形成していかないといけない。今はタブーのように言われてしまうけど、男らしく、女らしくというと、時々文句が来たりする。ある団体から。昔は男のくせにとか、女のくせにとか、よく言われていた。だから、男はこうしたらいけないのか、そういうことを当たり前のごとく思っていたけど、何か社会が違うようになってきた。


選択肢が増えたらいいかというと、選択肢が増えるということ、自分で決めるということです。そのためには悩まないといけない。当たり前のことは当たり前で済ましたほうが楽なんです。君たちは選択肢がいっぱいある。
昔のように小さい電気屋さんだったら、ひげ剃りを買おうとしても、一つしかないから、コレちょうだいといって買えばよかったけど、近くの○○電器に行くと10種類ぐらいある。10種類あると考えるのに1時間ぐらいかかって、だんだん悩んでしまって、1時間半ぐらい○○電器にいたら、訳が分からなくなって、もう帰ろうとなる。大変です。それで動けない。選択肢があるというのは、良心理的にはいいことばかりではない。物理的には便利でも。同性婚の問題も今入ってきているところです。君たちは、こういうなかで第2次性徴が始まっています。


【通過儀礼】
この第2次性徴があると、男の特徴が出てくる、女の特徴が出てくるけど、昔は一日で、ある日突然大人になっていた。これを通過儀礼という。これは子供の時から、こういうのがあるぞと、見て聞いて知っているから、子供の時からオレはこういうことをやらないといけないのだと思ってる。
どういうことかというと、資料に載っている。これが代表的です。よくテレビでもある。派手な通過儀礼だから。いわゆるバンジージャンプというものです。これ未開社会のメラネシアというから、南太平洋のバヌアツという、私も行ったことはないけれども、小さな島といっても沖縄ぐらいはあるかも知れないけども。
島といっても、沖縄に行くと、島と分からないぐらいには大きい。そういうところに、いろいろな人が住んで、部族がいる。その部族の成人式は、こんな高い矢倉の上から、言わゆるバンジージャンプです。

これ1人でやるんじゃない、みんなが見てる中でやる。特に、男が結婚するかもしれない村の娘さんたちがジッと見ている。だれと結婚しようかと。だからそこで足にヒモつけて、20~30メーターもある校庭の大木のような木のてっぺんから落ちることができるか。そして何事もなかったように、これを自分で足に縛ったツタを手でほどいて、これ緊張してたら、手がブルブル震えてできない。それをほどいて、何もなかったかのようにスタスタと会場を出て行くんです。その一部始終をみんなが見ている。それができて、おまえオーケーだとなったら、1日で一人前の大人です。
今はこういう青年期ではない。青年期は、中学校・高校ぐらいから始まって、これ今は前倒しで、もしかすると小学校の5~6年生から青年期に入ってる小学生もいる。早くなったくせに、18歳で大人とはいうものの、君たちの多くは大学に行って、まだ親のスネかじりでしょう。理系になると、多くは大学院にまた2年、またそのあと3年行く。本当に飯が食えるのは30歳近くなる。10年分ぐらいかけて青年期がある。文系の大学院はあまり聞かないけれども、理系の大学院は多い。それは「いかんば」じゃない。大学4年間で就職していいけど、しかし長くなっている。どんどん長くなっている。そこら辺が昔と非常に違うところです。


この通過儀礼に伴うのは厳しい試練です。それをみんなに見られる。そこに社会性があるわけです。あの人は立派だった、あの人はどうだったと、後々まで言われる。その例として、正式名称は知らないけれども、バンジージャンプという。バヌアツです。
今でも、大木を山から一過期に落とす。またはもみ合いをする。うちの県でもあるお祭りで死人が出たから、30年前におとなしくなったれど、ホントはケンカ祭といって、危ないものだった。ときどき人が死ぬ。死をかけてやるのは、冗談じゃないぐらいの危険度でやる。そういう死と再生の儀式です。それをみんながジッと見てる。そこに社会性がでてくる。生き死にが、かかっているんです。これは子供だって通過儀礼はある。結婚式なんかも通過儀礼の一種ですね。


最近まで、コロナで、結婚式に人を呼べないということで、結婚式をしない人たちも増えました。ホントに人を呼べなかった。私のときは1日でした。披露宴は1日でしょ。しかしウチの親父とおふくろの話を聞くと、三日三晩やったという。昔はみんな家で結婚式をして、次に親戚で一日目の披露宴、村の人で2日目、3日目に自分の友達を呼んで3回披露宴をやった。
祝言屋 | 自宅で結婚式をする意義。オリジナルウエディングで ...

3日目はヘトヘトだった。もう二度としないとオヤジは言っていた。二度とこんな結婚式とかするかと。だから離婚も少なかったのかも知れない。そういうハードルがあるわけです。

他にも、子供だったら、君たちもやってもらったかも知れない。七五三です。
七五三 | お祝い・ご会食 | 西宮神社会館 - 結婚式、披露宴 ...

この七五三というのは何かというと、昔は医療も発達ないし、生まれてすぐの子供の幼児死亡率はとても高い。二十歳すぎてもよく死ぬ。八代将軍徳川吉宗とか、昔は時代劇、このごろ時代劇がなくなったから、君たちは分からないかもね。八代将軍吉宗というのは、あれは紀州の三男坊です。三男坊というと独立もできような部屋住みと言って、冷や飯食いなんです。それが何で殿様になって、将軍になれたか。長男が死ぬんです。次男が死ぬんです。それは珍しくない。オレはダメと思っていたら、オレは殿様だ。そして将軍が死ぬんです。本家徳川の。7代将軍は病弱だった。病弱な将軍が多い。ボンボンで育てられた将軍はよく死ぬ。そしたら紀州というと、御三家の筆頭だから、紀州の三男坊が、あれよあれよという間に将軍になる。それはみんな死ぬからです。

昔は3歳まで生きれるかどうかは定かではなかった。あー、3歳まで生きたか。これは生きるかも知れないぞ。えー、5歳になった。これはホントに可能性ができたぞ。アッ、7歳だ、これは10歳までは間違いなかろうとか。七五三というのは、そういうお祝いだった。これも一種の通過儀礼です。3歳までは、まだ人間に入れない。「7歳までは神のうち」と言って、いつ死ぬか分からないから神様あつかいです。7歳になってやっとお披露目する。ウチの息子は7歳になって生きるかも知れないから、よろしくお願いします、という感じです。もともとはそういうものです。

近代以降は、世の中も複雑になる。勉強しないといけないことも増える。学習期間が長くなるんです。学習期間が非常に長くなる。その間は、社会に出ていくハードルが高くなる。
昔の子供の鬼ごっこで、「ダメ子」というのがあったんですけど、小学生の遊びに弟を連れてきて、弟はまだ幼稚園にもいってない。遊びには加えてやるけれども、そこで捕まっても鬼にはできない。遊ばせているだけです。そういう見習い期間です。見習い期間、これが青年期、この時間が非常に長くなっている。


【モラトリアム】
そういった長い青年期の心理状態を、アメリカの学者エリクソン、こういう学者が教科書には結構出てきます。アメリカです。もう20世紀です。これを何と呼んだかというと、これもちょっと言葉が変わたけど、もともとは去年までモラトリアムと呼んでいた。でもモラトリアムというのは心理学用語じゃなくて、もともと経済学用語なんですよ。例えば今月の末までに100万円を返さなければならない。これは約束ごとです。しかし地震が起こって返せなくなったとしたら、銀行がそんなら半年だけ待ってやるということが、国家の指導のもとにあったりする。今年なんかは景気がおかしいから、どうなるか分からない。そういう支払い猶予期間のことです。猶予とは伸ばしてやることです。このことをモラトリアムと去年までは言ってました。しかしこれでは経済の借金のモラトリアムと分からないからということで心理社会的モラトリアム、ということになった。

大人としての責任をあと3年、4年、5年伸ばしてやるという時期です。こういうことをエリクソンが言いました。伸ばしてもらっている間に、しっかり鍛えてくださいということです。社会人のレベルというのは突然、新入社員で行って、難しい仕事を任せられるわけではない。それは安心してください。もともとすぐにできると思ってないから。だから研修期間があって、とにかく早く覚えろと言われる。一回失敗したら、怒られます。二回失敗した。そこまではどうにか許してもらえる。しかし三回同じことしたら、バカかおまえはとなる。これは人生の実験室という言い方もします。


【自我の誕生】
この青年期には、生と死が絡むと言ったけど、そういう意味を含めて別の言い方をした人もいる。
それがルソーという人です。これはあとでも出てきますけど、フランス人です。この人は200~300年も前、1700年代、18世紀の人です。あとで政治のフランス革命でもでてきます。子供から大人になり変わるとき、死と再生、これは子供の時と大人の時、それが変わらない人はウソです。本当に人間は変わる。二十歳すぎて急に変わるということは、あまりないです。小学校の時の自分と、高校の時の自分、君たちも変わったでしょう。ハナタレのころから比べたら。半ば生まれ変わるんです。だから第二の誕生という言い方をした。

その前提になるのが第二次性徴です。まず体が変わるんです。昔だったら、男らしさ女らしさ、今はすぐ差別といわれるけど。でもそれがないとちょっと説明しにくい。それが言えないと、次にアイデンティティーが出てくるけど、これも性別とけっこう関係する。男として自分をとらえる。だからこうなんだという因果関係がある。しかしそこが今は非常に言いにくい。しかし肉体的にまず変わる。そこで何に目覚めるかというと、男の自覚、これ書いて良いのかな、20年前は堂々と書いていたけど。女の自覚。これは悪いことではないです。男女平等と違うじゃないかとか言われたら、何といっていいか分からんけど、性差と人格は関係するんです。


ただこれは、私はあまりエッチな話は私はできないけれども、ちょっと不安でしょう。体が急に変わるという時は。男も女も最初は不安です。まあいいでしょう、これは。

不安だから、自我という独特のもの、これはいつから発生したのか。2000年前の縄文時代からあったのか、よく分からない。しかし自我とは何か。自分があって、自分のことはふつうよく分からないけれども、なにか自分のなかにが出てくるんです。自分をシレーっといつも見ている、こんな感じ。
    
  ↓
  自分

こんなことないですか。この目は、他人の目じゃなかろう。自分がよそから自分を見ている。こんな感じです。これが自我です。不安になるとこういう自我が出てくる。これは、いつの時代から出てくるか分からないから、例えば江戸時代の村の青年に、自我があったのか、そこらへんは分からないけれども、とにかくはっきりと分かるのは、ヨーロッパで300年ぐらい前、日本では明治維新以降、これを近代という。だからこれを近代的自我ともいう。


今の日本人には、都会生まれ、田舎生まれに関係なく、これはある。どこに行っても、高校生のレベルは変わらない。他の県に行ったって、大学に行っても、北海道から来ても、東京から来てもレベルはあまり変わらない。言葉が少し違うだけで、話せば十分通じる。近代的自我といいます。


ではこの自我というのは何なのかというと、これもハッキリ分からないけれども、教科書に「らしき」ことを書いてる。自分の心を自分でコントロールしようという心です。しかし、これはすぐにできないんですね。自分も他人と同じように見る心。だから何をするか。君たちは。もう私みたいに60すぎたら、あまり気にならなくなるけど、人と比較するんです。人と比較し始めるんです。前に言ったかも知れないけど、分かるとは何が分かることか。まず違いが分かることです。あいつとオレはどう違うのか。数学の先生でも、質問はあるか、といわれて、一番分からないのは、何が分からないのか分からない状態、これが一番分からない状態です。オレはここが分わからないとなると、これは半分、分かっている。ココが分からないと言えたら、すでに半分は分かっている。
人と比べて自分はどう違うのかという、これイヤなものなんですよ。自分が特に優れていると、小学生なんかの半分は自分が一番強いとか、優れてると思っている。しかしだんだんと、オレは人よりそんなに優れてない、普通の人間なんだと、だんだん気づいてくる。みんなそうなんです。オレは特別すぐれてないと、だんだん気づいてくる。これはイヤなものです。こういう気持ちが大きくなったり小さくなったりする。でもそれを隠して、君たちは、まあ顔で笑って心で泣いて、という時期です。

しかし不安がいっぱい高まったときに、人から何か言われると反抗するんです。一番言われるのは一番心配している親です。イヤ、オレはそうじゃないと反発する。これが第二次反抗期です。これは、みんなあることを言っているんですよ。非難しているんじゃないんですよ。ただ君たちは、あいつがそうだと思うその前に、自分のことだと思って聞いてください。これみんなあるんです。これが全くないと、10年遅れて30歳すぎて出てきたりするから、やるべき時にちゃんとやった方がいい。かといって、親と喧嘩しろとか言ってるんじゃない。

でも反抗したくなる。これはやるときにやっとかないと、人間の一生というのは、不安な気分を埋めていかないと、あとに戻るという穴埋め修正というのがあって、18才で出すべきときに出さないと、30才過ぎて出る。そんなことするぐらいなら、18才の出すべき時に出していたほうがいいです。かといって、親を殺した事件とか、この間もあったけど、そんなを言っているんじゃないです。
こういうのをやりながら、親から自立していく。これは教科書用語です。早くいえば乳離れです。離乳です。これを心理的離乳という。親から離れていく。そして自分を作っていく。これは、父ちゃんと母ちゃんがいて、父ちゃんがこうしろ、母ちゃんがこうしろ、いろいろ意見があって、いろいろと言われても、最終的には父親とも違う、母親とも違う、そういう別人格を自分で作っていく。いやホント、喧嘩しろと言ってるんじゃない。親子は違うんだから、似ているけど親子は違う。でも似ているんですよ。


だいたい年取っていくと、自分の父親と同じようなクセになって、「あんた、うちのお父さんとまったく変わらないね」ということになっていく。私もそう言われている。親父の癖が嫌でよく文句を言っていたけれども、「あんた、あんなに文句いってたけど、30代の時には。でもお父さんが亡くなると、まったく変わらないことをあんたがしている」と、うちの家内がよく言うんです。だいたい当たってます。女は母親のとおりにだいたいなる。男は父親のとおりに、年取っていくと、だいたい似ていくんです。


ただ昔は、親から離乳しなくても、それなりにしとけば、自立するということは、結婚相手も、それはお見合いはあっていい、お見合いが悪いとか全然言ってないけど、自分で結婚相手を探すけど、探しきれない人が増えた。独身の人も増えた。経済的に1990年代から日本は不景気に入って、それが30年間続いて、これは経済でまた言いますけど、それもある。お金もいる。しかし女性をデートに誘う。自分に関心を持ってもらう。結婚するためにはそういうことも必要です。自分で相手を見つけるためには必要です。でも昔は、「父ちゃん、オレも二十歳すぎてそろそろだから、ちょっと動いてくれないか」。すると父ちゃんが「そんなら動こうか」となる。

私の知り合いに、A家は男、男、男の三兄弟。B家は女、女、女の三姉妹。最初の縁組みで、長男と長女が縁組みしたら、そしたら次男坊、オレもそろそろだ、ちょうどいい、このパターンがある。ウチの親戚には、三兄弟が三姉妹と、それぞれくっついているというパターンがある。結婚も親に任せとけば良かった面があるんです。これだって別に変な話ではない。普通の人です。その孫が私の友達です。任せとけばよかったんだけれども、自立するというのは大変です。結婚相手さえ自分で見つけていかないといけない。昔は、父ちゃんが動いてくれた。昔はそういう意味で、楽は楽だった。


【マージナルマン】
あともう一つ、青年期の言い方として、レビンという人で、レビンはドイツ人ですね。精神医学者です。これも20世紀です。青年期の人間を何と言ったか。マージナルマンと言った。マンは人ですよ。マージナルとは、日本語に訳すと、この教科書は親切なほうです。境界人とちゃんと書いてある。教科書の後半になると、漢字訳がない場合がある。そのたびに辞書引かないと分からないものもある。カタカナそのものを覚えろ、とかになる。マージナルマンというのは境界人です。大人と子供、どっちでもあり、どっちでもない領域、この中間の部分です。そういう言い方をする。ベクトルは子供のほうに向かったらダメです。これはフロイトのいう退行です。大人のほうに向かう。この通過期間がどんどん大きくなっている。昔は1日で終わっていたけど。


それで次です。青年期の欲求です。不安の中でどういうふうに欲求に対処するかということです。青年期だけに限らず、人間にはライフサイクルというのがあって、年齢によって、求める欲求が違うということを言った人が、アメリカ人のマズローという人です。マズローはアメリカ、米国と書く。これを、たまに読めない人がいる。アメリカのことです。米国て何だろうと。
日本は明治維新以降、主要なヨーロッパ国を漢字一文字で表すという慣習があって、これは現代でも新聞などでも続いてます。日英同盟の英はイギリス、米はアメリカでしょ、独はドイツでしょ、露はロシアでしょ、仏は何か。分からない人は覚えてください。1年間でよく使うから。フランスです。仏は仏のインドじゃないです。音訳です。フランスだから仏、意味はないです。伊はイタリアでしょう。まだあるかな。

終わります。




授業でいえない「公共」 3話 心を読む

2024-02-17 06:57:00 | 高校「公共」

【青年期の欲求】
青年期の自己形成の課題では、さまざまな欲求がある。この欲求が年齢によって、成長過程によって違ってくるということを言った人がいます。心理学者のマズローという人です。アメリカ人です。20世紀の人です。19世紀、20世紀ぐらいです。このあと出てくるフロイトが19世紀。そういう実現、1、2、3、4、5段階あって、生まれたままの最初は生理的欲求、これは一次的欲求と教科書に書いてある。それからだんだん違う欲求がででくる。一次的欲求、つまり生理的欲求というのは、おっぱい飲みたいとか、おしっこしたいとか、これは説明しなくても分かるでしょう。生まれたままの子供のというのはそうです。

余談ですけど、それが不思議なのは、母親というのはこの欲求が分かるんです。何で泣いているのか、私は分からなかった。子供が生まれた時に、なかなか男は分からない。なぜ泣いているのか分からない。でもおっぱい飲ませる母親はそれが分かるんです。それが私は非常に不思議で、なんでおまえは分かるのかと嫁さんに聞いたら、逆に何であんたは分からないの、と怒られていた。でもそれは、なかなか分からない。

いろんな欲求があるけれど、赤ちゃんの欲求はそんな複雑な欲求ではない。おしっこしたいとか、何か食べたいとか、暑いとか、寒いとか、気持ちが悪いとかです。それがだんだんと次に、安全の欲求になる。安全の欲求というのは、食い物の欲求ではなくて、少し高度ですね。まだ精神的・社会的欲求ではない。次に所属の欲求になる。どこかの集団に所属して安心する。小学生、中学生はそうです。高校生になると、バリバリそうです。それから、部活動とか一生懸命に頑張る。これは何かというと、自分を認めてもらいたい。自分が偉いじゃないけど、これは他人からの承認の欲求です。ここら辺になると二次的欲求です。これは社会的欲求になる。単純に腹が減ったとか、そういうレベルではない。


【自己実現】
そして最後が一番言葉は難しい。すぐには何のことか分からない。自己実現の欲求というのがある。本当の自分、これもなかなか分からないけど、とにかく本当の自分を実現したいということです。三番目、これが自己実現の欲求です。言葉でいうのは難しいです。君たち、胸に手を当ててよく自分に問いかけてみてください。君たちはどういう人間になりたいですか。
この自己実現の欲求と言うときに、考えてみると、社会的な欲求というのを経験した上でのことだから、単純に自分の欲望を満たす欲求、そんな単純なものではないんです。犬猫じゃあるまいし。これは大きく分けて二つです。自分のためにもそうであれば、君たちには社会的に相手のことを考える能力も備わっているから、自分と他人というのは同じ欲求を持っていることを知っている。承認もされないといけない。それから所属も、愛情も感じないといけない。これは、自分のためだけではなくて、他人のためにもです。こういう二つのものが自己実現です。自己実現という言葉が難しいのは、自分のためだけ、と誤解してしまうからです。


【葛藤】
それで二番目ですが、欲求にはいろいろな欲求がある。フグは食いたいけれど毒には当たりたくないとか、勉強はしたくないけれども、しないと怒られるとか、いろいろある。それぞれ葛藤がある。葛藤です。これは心理学用語で、日本の心理学は外国から来たから、もともとこれではない。コンフリクトという。親切に日本語に訳したら葛藤ということになる。「コンフリクト(葛藤)」と、日本語に翻訳してあるのはまだ親切なほうで、最近10年ぐらいでまたカタカナの字がますます増えた。教科書見たら漢字がないものもある。カタカナで丸覚えです。どんな意味かなと思ったら、自分で調べなさいということです。翻訳語さえなくなってきた。それでどんどんカタカナ文字が増えていく。
そういう葛藤です。いろんな欲求をかなえるのは難しい。高校生になればそれは分かるでしょう。自分のやりたいことの半分もなかなかできない。それで腐っていても何も前に進まないから、とりあえず少しずつやっとこう。そのとりあえずというのが大事です。これが適応です。100%やろうと思うと、私は「神様になりなさい」とアドバイスします。100%じゃないから気にくわないとか言われると「神様にでもなれ」と。そうでないと適応行動は取れません。でも
100%にはなれない。
適用しながらも、100%ではないから、どこかには欲求不満、これを抱えることになる。自分だけではないよ、みんなそうです。この欲求不満ももともとは英語ですから、フラストレーションといいます。訳して欲求不満です。この欲求不満があまりに高まると心が折れていく。人間は心が折れると、ちょっと困ったことになる。折れないようにしないといけない。成長とともに、ストレスも比例して大きくなる。体力のないところにストレスが来たら、小学生に大人みたいな要求してもできない。それは当たり前だから、年に応じてです。
君たちもそれに耐えられるように、その能力だけではなくて、うまくいかなかったときの心の強さも鍛えていかないといけない、という意味です。これを難しく言うと、欲求不満耐性という。耐える力ですよ。耐性というのは。これが難しくて、どうしたらいいですかと聞かれても、これは分からない。自分で強くなりなさいと言うしかないけど、一般的な言葉で言うと、欲求不満耐性です。社会の中で人間関係の中で、もまれるしかない。もまれてどうなるか、それは社会というのは、学校も社会の一種ですから、顔で笑って心で泣いてということはいっぱいある。


【防衛機制】
ここらへんが人間の心の、100%の欲求充足は赤ちゃんではない限りは、赤ちゃんは100%になるまで、何かグゼるでしょうが、そんなことしていたら、人間社会は成り立たない。そういう欲求不満を抱えるのは人間の常ですけれども、人間というのはそこで心が折れないようにする心の動きがある。これを防衛機制といいます。防衛というのは、自分を防衛するんです。
だからプラスの意味半分ですけど、あとよく見ているとマイナスの意味も半分ある。すべて手放しで素晴らしいというものではない。こういう心の動きがあるということを発見したのが、心理学者のフロイトです。心理学者のなかでは一番有名じゃないかな。ドイツ人です。ドイツ人なんだけど、ドイツ語文化圏の本当はオーストリアなんです。あのカンガルーの、という人がいるけど、あれはオーストラリアです。てれではなくてオーストリアです。ドイツの横にあります。今はヨーロッパの小さい国ですけども、昔は大帝国だったんです。


フロイトは、19世紀から20世紀にかけて、1856~1939年、別にこんなことを覚えなくていいです。ただいつ頃の人かということです。正確には国籍はオーストリア人なんですけど、民族的にはユダヤ人です。このユダヤ人というのを説明するにはとても時間がかかる。世界中で、人口は日本人の10分の1ぐらいしかいないんです。しかしとっても頭が良い。ノーベル賞とかよくもらっている。一番有名なノーベル賞をもらったユダヤ人は、アインシュタインです。こういう有名人がいます。アメリカ人がよくもらうといっても、アメリカ人のユダヤ人という人もけっこういます。これを言うのはとても難しいから、あとで少し言います。そういうユダヤ人です。

このフロイトが言ったこの防衛機制というのは、ハタから見てると分かるけど、本人はなかなか気づかない。これを発見した人です。無意識の発見です。それまでのヨーロッパというのは、人間の心はこういうふうにあるとする。それで、自分の心は自分が一番よく分かってる、それを考えるのが理性だとする。これが古代ギリシャのソクラテス以来の、ヨーロッパ人の考え方なんですよ。でもそうじゃないと言った。無意識がある。意識は海に浮かぶ氷山の氷です。海に浮かぶ氷山は、目に見える部分だけか。そんなことはない。ちょこっと氷が水面の上に見えていても、その何倍もの氷が水面下に隠れている。こういう無意識があるんだと言った。しかも、見えないんだ、自分に見えないんだといった。

自分のことだから自分で分かるだろう? フロイトは分からないと言った。そんなことがあるもんかと反発を受けた。だから最初は、学者として生きて、常識を打ち破るような学者は、最初は不遇ですね。しかしこの無意識はみんなある。今では常識でしょう。しかしこれはまだいいんですよ。フロイトのいうこの無意識は個人で違う、個人的無意識であった。
しかし、この弟子にユングという人が出てくる。この人はもっと他の無意識があると言った。親の代から受け継いだ無意識というのが。これを集合的無意識と言った。これになると自分ではますます手に負えない。
時々、君たちも、私もそうですけれども、変な夢を見るでしょう。オレはなんでこんな夢を見るのかな、そして目覚めが悪い。あれは自分で分からない。言葉で言えないような、言ったらいけないような変な、とにかく、自分は変態じゃなかろうかと思うような、ありとあらゆる変な夢を見るんです。毎日じゃないよ。毎日そんな変な夢に苦しめられていたら、辛くて生きていけなくなるけど、忘れた頃に、この動きが出てくる。これは自分であやつれない。今日は楽しい夢を見ようと思っても見れない。そんなことをできるのは人間業じゃない。


一方で、無意識があるということは、理性が中心のヨーロッパで、理性への疑問が出てくる。ただ科学的には理性で考えないといけない。特に理系はそうです。数学的なもの、物理的なものは。感情で考えてもどうしようもないから。しかし人間というのはこれだけじゃないという。自分では制御できない心の動きがある。それが時々病理となって現れる。今これを疑う人はいない。

その防衛機制の動きは、様々な機能を分析すると8つある。
これが防衛機制です。防衛機制には8つある。

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1番目が「抑圧」です。ここに書いてあるのを見ていきます。抑圧は、欲求不満や不安を無意識に押さえ込んで、自分で押さえ込むということです。例が良いかどうか、例えば野球部が、とってもみっともない負け方をした。もう思い出したくない。そうすると思い出したくないから、家に帰ったらナイターのシーズンでしょ。好きな野球のナイターの番組を見ようと、弟がスイッチ入れると、コラー見るなと言う。思い出したくないわけです。これが抑圧です。しかし本人は、自分が自分の心を押さえていると分かってない。逆にそう言われた弟が、なんだ自分が負けたからだと、あとで陰口たたく。周りがわかる。これが抑圧です。

2番目に「合理化」がある。合理化というのは、実際は合理的ではない合理化です。自分が負けたときに、野球はもともと親父が、オレが小学校のときに無理やり連れてってくれ、野球させたんだ。本当はオレは野球したくなかったんだ。でもホントはしたいんですよ。こうやって親父が悪いんだとして、それですっきりする。こういうのが合理化です。あまり合理的ではない合理化です。


3番目の「同一視」というのは、練習がきつい。野球の練習をサボって、サボったことを思い出したくないから、自分の部屋にプロ野球の大谷翔平の大きい写真をドカンと掛けて、オレは将来こうなるんだ。でも練習はさぼった。全然一貫性がないわけです。スターと同一視して、オレはできるんだ、これで安心する。


4番目が「投射」。投射は同一視とちょっと似ている。相手の欠点を、人間はみんな欠点はあるけれども、ただ目につくのは、自分と同じ欠点にピッと反応する。それが分かる。こいつは自分と同じ欠点をもっていると思うと、ピっと反応する。自分のことを棚に上げて、おまえはこうだこうだと、自分と同じ欠点を特に指摘する。そのことで、どうも自分が同じ欠点を持っていることを知られたくない。ちょっと頭良いです。そういう心の動きもある。これを投射といいます。


5番目は「反動形成」です。これはよくある。小学校のいたずら坊主が、隣に座ったミヨちゃんが好きでたまらないけれども、逆に鉛筆を隠したり、消しゴムも取ったり、いたずらして気を引こうとする。それで逆効果になる。好きだからイタズラする。これは小学生がよくやる。これは反動形成という。


6番目は「逃避」です。逃げ込むことです。この逃げ込むことは、これは、童話のあのマッチ売りの少女が、寒い夜空でマッチを売って、誰も買ってくれない。使ったらいけない商売のマッチを擦って、自分が幼かった頃の、やさしいお母さんが生きていた頃の、家庭の暖かい風景が目に浮かぶ。最後は凍えてかわいそうな結果になるんですけど、解決にならないような所に逃げ込むしかないという、かわいそうな話ですね。


7番目は「退行」です。これは、3才のお兄ちゃんがいて、次にお母さんが弟を産んだ。そしたら今まで、母親の愛情が一身に来ていたのが、弟に半分あげないといけない。それが嫌で、生まれたばかりの赤ちゃんのように駄々をこねていくと、構ってもらえる。成長するんじゃなくて、逆に生まれたばかりの赤ちゃんと同じようなことで母親の気を気を引こうとする。これも子供の頃からやる。これは犬猫はしない。犬猫よりも頭がいいけど、こういうのを退行といいます。


8番目に置き換えがある。置き換えの中の、「代償」というのは、他の欲求に置き換える。メロンは高くて、うまいです。病院に見舞いに行くときはよくメロンを持って行く。あれはおいしい。私もメロンは年に1回ぐらいしか食わしてもらえない。メロン食いたいというと、ミカンでも食べなさいと言われる。ミカンも嫌いじゃないから、それはぞれで満足できる。


本当は「昇華」が一番いいです。自分の不満を自分でちゃんと見据えて、どうすればいいかという緻密な努力、これはなかなかできないけど、その不満の中身をよく知った上で高い芸術性の絵を書くとか、音楽的才能を発揮するとか、大谷翔平のような、最初は二刀流はムリだムリだと言われていても、スポーツ界で才能を発揮するとか。これができる人は、偉い人です。

一番ダメなのでは、その合理的解決の二番目の「攻撃」です。メロンが食いたいけれども100円しか持たない。だから盗む、万引きする。これは破壊的行動です。身を滅ぼす自分は、前科一犯になる。犯罪です。頭にきたから殴る。昔、20年前は、この学校にもいたんです。おまえ、なんで人を殴るのか、ムカついたけん。それでいいなら、おまえ人間やめろ、というと、でもムカついたという。本気で言ってはいないんでしょうけど、これはダメです。

それで、一番最後、葛藤や欲求不満をどうすればいいかというと、意識的に受けとめて合理的にやる。前の合理ではなくて、よく自分で考えて合理的に解決する努力が必要ということです。でも、自分が自分のことを一番分かっているというのは、ウソでしょう。でも、それ以上に人は分からない。だから、分からない自分があったら、こういうで、こんな感じです。青年期になってくるとこの目が発達する。こういうのを自我といったりする。自分を見る目です。
    
  ↓  ↘
  自分  =  他人

自分を見て、これが出てくると何が分かるかというと、オレは他人といっしょだ、というのが分かる。ということは、自分が分かれば他人の心が分かる。逆に言うと、自分が全くわからない人間は、他人の心が読めない。

自分で自分の心を読むということです。こういう作業は、青年期、高校生ぐらいでは非常に大事なことだと思う。でもこれは楽しいことではない。結構イヤなことです。自分を見て、自分は素晴らしいなとは、あまり思わないでしょう。自分はダメだなあと。私と違って、自分は素晴らしいと思う人もいていいけど、まあそういう人は少ないんじゃないかな。ふつうは、オレはダメだなと、自分の至らなさが目につく。これは辛いことです。辛いことだけれども、それをやれると、相手の心が分かる。こういうことです。これが何か。これが社会性です。相手の気持ちが分からないで、犬猫じゃあるまいし、一つの饅頭の取り合いで、喧嘩ばかりするわけにはいかない。これは社会性です。こういう能力が青年期に出てくるということです。

※【比べること】
※(●筆者注) 「考える」ことの本質は「比べる」ことにあるようです。我々はあまり意識しませんが、比べる対象がなかったら、「違い」が分かりません。その「違い」が分からなければ「考える」ことはできません。これが思考の本質なのです。料理のプロは、味の違いが分かるからプロなのです。医者は、病気の違いが分かるからプロなのです。比べて、同じか、違うかが分かること、これが思考の本質です。
 同じように見えて違うものもあれば、違うように見えて同じものもあります。どこが同じで、どこが違うか、そこまで見分けることができるようになると、それは「分析」と呼ばれます。でもそのベースにあるのは、どちらも同じ「比較すること」です。これを我々の脳は無意識にやっています。
 そして同じもののグループができあがると、それが「概念」と呼ばれるものになります。これは現実社会では存在しないもので、頭のなかでしかとらえることのできないものです。「愛」とか「憎しみ」とかは目に見えない一つの概念です。「神」も人間がグループ化しえた一つの概念です。
 鉄が磁石にくっつくことと、リンゴが木から落ちることはまったく別のことだと思われていましたが、ニュートンはそれを同じことだととらえました。そして「引力」という概念を生みだしました。これを見た者はいませんが、今ではその存在を疑う人はいません。「星の王子様」を書いたサンテグジュペリは言いました。「だいじなものは目に見えない」と。人間は、目に見えないものを見ることができます。
 さらに人は、自分が考えていることと、他人が考えていることを「比べる」ようになります。こうやって、考えている自分を見て、その考えている自分をさえ考えることができるようになります。これが「メタ認知」です。これも自分と他人を「比べる」ことがベースにあります。
 この「比べる」という脳の働きは、もともと別のことをしていたパソコン同士がある時ふと結びつくようなもので、自分が意図してできるものではないことが多いのです。例えば、磁石のことを考えているときと、リンゴのことを考えているときとでは別のパソコンが働いていて、磁石とリンゴのあいだには何のつながりもありません。その無関係なものが、ある時ふと結びつくということは、何かの拍子で思考と思考とが重ね合わせられるということで、思考が重層的になるということです。それは右の頭で磁石のことを考え、左の頭でリンゴのことを同時に考えていないとできないことです。例えて言えば、らせん階段を上りながら、上から下を見おろすような感じです。
 われわれは人と話しながら、よく別のことを考えたりします。先生から怒られながら、「先生の顔はゴリラに似ているなあ」と関係のないことを思ったりします。人間の脳はこのようなことを3つも4つも同時に行っています。そしてそこから似たものを引っ張り出してきます。でも先生の顔がゴリラに似ているからといって、「先生はゴリラだ」とはしません。でも鉄が磁石にくっつくのと、リンゴが木から落ちるのは、「引っ張られていることは同じなんだ」と気づくことはできます。こうやって、似ていても違うものと、違うけど同じものを、仕分けしていきます。
 それは頭のなかで多くのパソコンを同時に動かしていないとできないことです。そこから「違うけど同じもの」を一つのグループとして概念化していきます。
 これはものごとを視覚でとらえることではなく、機能でとらえることです。機能をとらえることは、脳の働きそのものです。われわれは脳の働きそのものを比較しているのです。これがわれわれ新人の脳に特徴的なことです。


その社会性が出てこずに、自分の心が分からないと、相手にウソをつくようになる。人はなぜ他人にウソをつくか。そうじゃないでしょう。人は他人にウソをつく前に、まず自分にウソをつくんです。そのウソが分からないから、他人にもウソをつくんです。自分にウソをついていることが分からないから、他人にウソをついても平気なんです。相手の心が分からないからウソをついても平気なんです。でもウソつきは泥棒の始まりです。みなさんも気をつけましょう。
「自分に厳しく」と昔はよく言われたけど、自分に甘い人は、他人にウソをつくんですよ。それは自分が自分についたウソを見抜けないからです。すると他人にも同じレベルでウソをつくようになるんです。でも他人は、自分のウソは分からなくても、他人のウソは分かるものです。


【遺伝と環境】
今日もあんまり進みませんね。こういうことばかり言うから。

自分を見ていくと、自分がどういった人間かというのが、最初は分からないけど、年とともに少しずつ分かってくる。自分が他人と違うということも分かるし、分からないなりに自分の性格も分かる。

性格のことをパーソナリティという。性格、個性、または人格かな。これをパーソナリティという。キャラクターというと性格です。キャラがあるという。パーソナリティというのは、もうちょっと深いね。
そのパーソナリティというのは、ではどうやって形成されてるのかというのが、これではよく分からない。ただ言えるのは、親と子は当たり前ですけど、似てる。似てるけど違うでしょう。兄弟も似てるでしょう。似てるけど違う。一つには遺伝的要素がある。遺伝的要素があるんだけれども、双子にも二種類あって、二卵性双生児と一卵性双生児。遺伝子情報が全く一緒なのは一卵性双生児ですが、その一卵性双生児をいろいろ事情があって、別の親のところで育てたら、同じ人間になるかというとこれもまた違う人間になる。


遺伝的情報が同じでも、育つ環境によって違う。この二つ、遺伝と環境。これは、100年ぐらい、どちらが正しいのかという論争があったけど、どっちも正しいか。どっちも正しくない。足して2で割ったぐらいですね。この二つの要因がからむ。ただ環境のほうは、自分の努力次第でどうにかなるけれども、親から受け継いだ遺伝情報は受け入れるしかない。今さら変えられないでしょう。
これは受け入れるしかないです。どうしようもない。人間の力が及ばないところです。イヤ遺伝子組み換えとか、またアメリカあたりで、生物学者が言うかも知れない。これは4~5年前に中国がやった。受精卵の遺伝子をゲノム編集とか、触っている。これからどんな時代になるのか。これをやり始めると、ちょっと私も分からないことが起こり始めてます。

君たち青年期というのは、他人との比較を通して、前も言ったと思うけど、自分が分かることです。自分が分かるとは何かというと、分かるというのは、まず違いが分かるということです。違いが分かるためには、比べないといけない。比べるのが社会的第一歩です。何が分かるの前に、まず違いが分かることです。あいつはここが分かっている。オレはここが分かっていない。そういう違いです。

他人と比較すると、自分というのが分かる。でも他人の芝生は良く見えるんですね。なんか相手が上のように思う。よくある劣等感です。それはプラス・マイナスの両面あります。少しでもましな人間になろうとなろうとする努力もでてくる。
しかしパーソナリティというのは、遺伝も違うし環境も違うでしょう。これは、同じ5人兄弟でも、昔は多かったんです、一番上で生まれるか、一番下で生まれるか、それだけで人間のでき方は違う。同じ遺伝情報でも。長男は、長男なり、末っ子は末っ子なりに。それぞれ違う。

だから、人の能力は均等ではないです。平等じゃない、とまでは私も言わなくていいかなと思うけど。ただ均等じゃない。これは次で言うけど、もって生まれた性格の違いというのがある。


【人間三類型】
これがパーソナリティの類型ということで、1番目は、クレッチマーという人の人間三類型です。
パーソナリティのクレッチマー。クレッチマーというのは、ドイツ人です。ドイツの人で時代は1888年から。フロイトよりもちょっと後の人です。この人は、50年前の私が高校のときから一貫して、公民の教科書に載ってます。君たちの教科書から落ちたのは、法然さんとか、親鸞さんとか、そういう日本の思想化、宗教化なんか、今年からいっぱい教科書から落ちましたけど、この人は落ちないです。

3類型というのは、まず体型で、①やせ形・細身、②それから太った人、③それからキン肉マン・闘志型。体型もかなり関係している。書いてある通りです。
1番目の痩せ型というのは内面的、非社交的かな。非社交的です。
2花目の太っちょおじさんというと、言葉がペラペラと、愛想よく話す。社交的です。
3番目のキン肉マン・筋肉質というのは、非常に誠実ですけど、時として怒った時には手がつけられない。爆発的に怒る。昔そんな先生がいました。今はそんなことすると新聞から叩かれるけど。生徒指導の先生とか。しかし今や社会が変わって、まず新聞から叩かれる。少なくなったというより、見なくなった。体罰のこと言うとあまりよくないね。筋肉質は爆発性ありです。


【アニマとアニムス】
さっき言ったユングです。この人は1875年から。ユングの横に書いてください。個人的無意識とは別に、集合的無意識というのを主張した。集合的無意識です。普通はこうなっているけど過去(図)、意識がこれだけだとすると、個人的無意識がこれだけ、その下に集合的無意識がある。これ一言でいうと深い闇です。これはホントに闇です。この人は、フロイトもそうだったですけど、特に第二次性徴から第二の誕生とか、肉体的な変化がある。そこで人間の心は大きく作り変えられるんです。異性に対する好みというのも、そこで深く沈んでいく。
教科書には書いてないけど、男性像、女性像というのをアニマとアニムスといった。自分で意識的に作ったわけじゃないけれども、男がもってる理想とする女性の像があるとした。これをアニマという。
逆に、女がもつ理想的な男性のイメージ。これをアニムスという。これは変えられない。私も、私の理想の女性というのは高校のときから一貫して変わらずにある。それはそれで理想と現実でいいことです。別にそれを実現しなくてもいいことです。

しかしこういうのをずっと温めながら、人間の芸術、芸術が何かというのもよく分からないけど、音楽家とか絵描きさんとか、芸術性というのはどうもこれと関係している。理想とする女性の像、これが男の中では一番キレイですね。女にとってもそうかも知れない。こういうのと芸術性は何か関係していると思う。これが崩れると、ちょっとまずいんです。そしてこれは前回言った、男らしさ、女らしさとも関係している。それが崩れると、人格そのものが成り立たない。人格にはそういう性の深みがある。


【内向と外向】
教科書的にはユングは、何を言ったかというと、人間には、内向きの人と外向きの人、どっちがいいじゃないです。こういう類型に分けられる。興味関心が、面白いなあと思うものが、内側の人は自分の内側に向かう。こういう無意識のこととか、自分の心の動きとか、こういうのを面白いなと思う人。
それから外向的というのは、自分よりも、人がどう動いているか。日曜日にこの人とこの人が何をして遊んだかとか、そういうところにも興味を感じる。どっちがいいかじゃないです。自分が好きなことを選んでいいということです。
小学生にこんなことを言っても分からない。自分が内向きの人間なのに、外側の人間と比べてばかりとか、自分が外側の人間なのに、内側のことが分からずに悩んだりとか。やっぱり内側の人間は内側のことに興味をもてばいいし、外側の人間は外側のことに興味をもてばいい、どっちがいいということではないです。


【アイデンティティ】
それで次です。青年期というのは、いろいろ言い方があって、モラトリアムの時期でもあるし、マージナルマンといって、大人と子供の境界人でもある。
こっちが大人、逆が子供、二つに引っ張られるんですよ。引っ張られる人間というのは分裂する。分裂すると心が壊れる。分裂しないことがいいんです。一つになったほうがいい。どうにか両方から引っ張られることから自分を守らないといけない。あやふやながらも、どうにかまとまったら、これをもつことが、言葉としては、これも難しい言葉ですけど、アイデンティティと言います。
こういうのが青年期の課題です。青年期、自分で意識して培っていかないといけないもの、自分が自分であること。こういうことを言った人がエリクソンという。この人は2回目です。アメリカの20世紀の学者、心理学者です。
でもこのアイデンティティというのは、これでは分からない。IDカードとかいうじゃないですか。IDカードのIDは、アイデンティティのIDです。IDカードとは、自己証明書のことで、カードと自分がいっしょのことです。自我同一性という。漢字で書いても難しいね。しかしこれが青年期は、非常に波が高くて、これを維持できるかどうかというのが、君たちにとっての試練です。本当は試練なんだけれども、発達課題という言葉をつけた。課題というのは、自分が努力して時間作って、成し遂げて提出しなければならないものです。これを発達課題と名付けた。

ではアイデンティティとは、どういうものか。なかなか説明しきれないけど、ただイメージです。私のイメージでいうと、自分を見るがこうある。この目はイヤなんですよね。自分で自分を見るというのは。しかし、まあ自分はこんなもんかなあと。100%じゃないけど、まあオレはこんなもんかな、まあゆるせるという感じ。それが納得です。アイデンティティというのはこれだろうと思う。
100%の自分にこだわったら、神様になってくださいとしか言いようがない。人と神様の違いは、私はそこだと思うよ。神様がいるかどうかは知らないけど。ただ神様のことは思想家、これからヨーロッパのことをいうけど、神様がいっぱい出てくる。神様どこにいるんですかと、他の学校で聞かれたけど、そんなこと、私は知りゃしないです。

ただ社会科の教師をしていて分かるのは、日本はともかくヨーロッパでは神様の考え方が変わると、確実に何が変わるか。社会全体が変わっていく。これは言える。神様がいなくなったことは、人類史上一度もないです。宗教がなくなったことはない。これは言える。
終わります。



授業でいえない「公共」 4話 和の精神

2024-02-17 06:56:00 | 高校「公共」

青年期のところです。パーソナリティーの類型としてクレッチマーの3類型。痩せ、太ってる人、それからキン肉マン、そんな感じです。
それに対してユングというのは、内向型、外向型を言った。このほかにそのユングで注目されてるのは、氷山の一角の自我の下に無意識がある。しかしもっと奥があるという集合的無意識を唱えた。これはどこまで行くのかわからない。これがその意味するものは、このあと思想面で、理性という言葉がよく出てくる。これはヨーロッパの得意技なんです。意識で考えるんです。しかしだんだん分かってきたことは、意識が100%と思ってきたのが、ホントは10%もないんじゃないかとか。前にも言ったけど、自分の夢をコントロールできる人はないでしょ。夢は変な夢でしょう。自分は変態じゃないかと思うぐらい変な夢を見る。あれがそれでいいのは、半日もすると、あれっ変な夢を見たんだけど、何の夢を見たのか忘れていく。だからいいんです。あんな強烈なイメージの夢が、うなされてウッと起きたりする。あんなイメージが一日中続いたら、とても嫌な一日になるけど、2~3時間で、何を見たかなと、忘れていくからいいんです。そういう動きはコントロールできない。ということは理性は万能じゃないんじゃないか、という考え方になる。これは結論でてないですけど、そんな話がいっぱい出てくる。19世紀末あたりから。

ユングはそういう心の深みに入っていく人ですね。
だからこの人を嫌いな人は、何と名付けるか。カルトというんです。確かにカルトはカルトであるけれども、しかしよく分かってないものを、分かっていないからと言って閉じ込めで、それでカルトと言われたら、何も考えられなくなる。分からないものを考えていかないと科学的ではないでしょう。でもこれが嫌いな人は嫌いなんです。おもしろい人はおもしろいんですけど。そういう何とも言えないところがあるんです。私が別に結論を言えるわけではないけど、そいういう話もあります。

君たち青年期にとって、大事なのは、人間にとって大事なのは、自己実現という言葉が前に出てきたでしょう。これも何なのか、けっこう難しい。いくになってもこれは目標なんです。私も60年以上生きているけれども、別に死にたくはないけど、60数年以上生きていると、明らかに今まで生きた時間が長くなる。平均寿命が80年とすると、もう400メーター走の第3コーナーをかなり回っている。そしたら次に死に方を考えないといけない。それをうちの家内に言ったら、努力しなくても人間は死ぬから、そんなことを考えなくてよろしいという。それはそれで悟った考え方だと思うけれども、いかに生きるかというのは、いかに死ぬかというのと、さほど変わらないような気もします。これはずっとついて回るんです。

その前に君たちは、アイデンティティの確立というのをしないといけない。アイデンティティの頭文字は「ID」です。身分証明書をIDというでしょう。これはアイデンティティの略です。自分が自分であることです。でもこれでは意味が分からない。しかしそういうふうにしか訳せない。自分が自分であることとは、どういうことだろうか。これは分かる者にしか分からない。漢字にすると自我同一性というけど、これでもよく分からない。感覚でしか分からない。自我が同一する。こういうことを言った人がアメリカ人のエリクソンです。名前を覚えておいてください。
青年期、大人と子供と中間地点にある人のことを、マージナルマンとかいったでしょう。大人なのか子供なのか分からない。両方から引っ張られるわけですよ。君たちここにいる。右に引っ張られて、左に引っ張られて分裂する。これが一番の危機です。


人間にはいろいろと自己実現の波があるけれども、18歳、20歳前は特に高い。一番最初にハードルがある。それはなぜかというと、子供の世界、大人の世界の分かれ目だからです。これは体だけでなく、社会的にも違う。子供は無責任です。それでいいんです。大人は、自分がやって失敗したことは自分の責任で解決しないといけない。解決しきれずに、むかついたからといって人を叩けば、ひどい場合には傷害罪で手が後ろに回る。それも責任を取り方です。子供には責任は問えない。子供は悪いことしたら叱られるけど、大人と同じような責任は問えない、という社会の良識があります。


しかしこれも、あとでやっていくけど、子供の人権とか言われて、人権を認めた以上は、権利と責任は一体ですから、子供にも大人と同じような責任を認めて行こうという動きはあります。上のほうから。上というのは国際社会ですけど、そういう動きもあります。ただ救いは、日本は民主国家だから、どう考えるかというのは最終的には国民の選挙で決まるはずです。これはバカな政治家がやったら、バカな政治家を選んだのはバカな国民です。そういう理屈にしかならない。民主国家というのは。


なかなか難しい面はあるけれども、こういうふう青年期の課題が発達課題です。これ波がかなり高いということは知っていてください。かなり高いです。やりそこなうと、どうなるか。心を病むんですね。これをアイデンティティの拡散という。これはアイデンティティの危機ですよ。アイデンティティが拡散すると、いっぱいあちこちバラバラと分裂症みたいになる。二重人格とか、小説の世界であるでしょう。二重人格というのは、昼の顔と夜の顔が別で、夜になると人格が様変わりして、朝になったら元の自分に戻るけれども、人格が別だから、夜の顔でどんな悪いことをしていても覚えていないんです。それは責任問えないという。精神的な病だから。免責されるんです。私も見たことないけど、小説では呼んだことはある。これはアイデンティの拡散でしょう。自分は自分で一体化しないといけない。

こういったときに普通考えるのは、では自分はどうあるべきか、ということです。君たちはまず自分ですけど、十年後君たちが結婚して、子供をもったとする。子供が君たちぐらいになっていくと、大人というのは、自分だけじゃなくて、自分がつくった子供、この世代が大人になったときに社会が一体どうなっているんだろうかということが、妙に気になるんです。自分の子供の世代がどうなるか。そのときには、自分たちは死んでるから、考えなくていいかといえばそうかも知れないけれども、でもこれは子供を持たないと分からないことではないです。世間が変わっていくと、この子供たちが大人になった時には、どういう世の中になっているんだろうか。自分は死んでるから関係ないといっても、気になる。
課題として、自分がどうあるべきかということを考えたら、必ず社会がどうあるべきかというのを考えるようになるんですね。なるというか、ならない人も100人に1人ぐらいいるかも知れないけど、多くの人はそう思うんです。

君たちは、まず自分のこと、これなんです。これが、今どっちに傾いているかというと、二つあって、自分と社会というのは永遠のテーマですね。個人と社会、自分と国家とか。でもこの自分が肥大化していく傾向にある。自分、自分、自分と。これを肥大化した自己という。逆に、この自分をもてあます人が増えている。これは本の名前とかにもあって、教科書には出てないけれども、このタイプが非常に増えてきて、こういう名前で呼ばれることもある。自己愛人間という。自分が可愛くて可愛くて仕方がない。ふつうは自分が可愛かったら、自分のことが分からないといけない。自分のことが分かれば、相手の気持ちも分からないといけない。だいたい同じなんです。だから分かるんです。しかし自分のことばかり考えていると、相手のことが分からない。このタイプが非常に増えてきている。これはあまりいいことではない。個性だ、個性だといっても、個性とは社会の中での個性です。教科書的に言うと、相互承認、社会における相互承認に気をつけなさい、ということです。そして自分のあり方を確立してください、と書いてあります。


【職業選択】
ただ社会を生きて行くときに、避けて通れないものが、金を稼いで自立していく、自立していくということです。自分の力で生きていく。そのためには給料が必要になる。誰もカスミを食って生きているわけではないから、まず生計を立てて暮らすということです。これは言わなくてもいいでしょう。
いくら金持ちだって、働かないほうがいいかというと、金を持っている人ほど仕事熱心な人が多いような気がします。金を持っているほど自分で商売を始めたりするし、そうすると全責任が自分にかかってくるし、熱心に仕事していく。そういう人たちのほうが多いような。その生計というのは、ただ単に自分のお金は生活費を稼ぐだけでなくて、その中で、さっき言った課題がある。これは君たちだけのテーマではない。20代、30代、40代、私のように60代になってもこのテーマはあります。うちの家内は、どうやって死ぬか、そんなことはみんな死ぬから努力しなくてもいい、という。でもどうするかなあ、人によっていろいろあるわけですね。あと10年、75歳まで生きるかな。あと20年生きるかな、それは誰にも分からない。別にそんなことを、はかなんでも仕方がないし、私の友達も、同級生なんかも、みんな同じようなこと考えてる。オレは絶対死なないとか、そんなこと言っても仕方がない。

ただこの就職する時には、自分が何に向いてるか分からない。だから自分と人との違い、オレは人とこう違うんだ、それが大事です。それが分かると、今度は自分を試してみたくなる。これがインターンシップです。今どこの高校もやってます。我々のころにはなかったけど。無給で職場体験する。

しかしその一方では、定職につかない若者もいる。働いてはいるけれども、アルバイトです。アルバイターです。アルバイトでもいいですよ。しかし、経済面でいうけれども、年功序列型賃金というのが、かなり崩れていったとはいえ、20代でもらった賃金と、かなり違います。アルバイトというのは、20代で時給1000円だったら、60代でもやっぱり1000円でしょう。正社員はこうなってない。人は30前後で結婚する、30代で子供を産む。その分の生活費というのは自分一人の時よりも必然的に増える。子供が小学校に行く。中学校に行く。ここまでは義務教育だからいいとしても、高校になると私立学校が地方にもできたから授業料が違う。大学に行くと、親元を離れていくと、これは大変です。地元の大学と、他県の大学は、ぜんぜん違う。下宿を借りないといけないから。昔は下宿だった。私のころは、地方の木造の古い下宿に住んで月5000円だったけど、今はアパート住まいです。東京では部屋代だけで5~6万です。それが12ヶ月だと5万として、年60万でしょ。その上に生活費と授業料が要る。とにかくお金が要るんです。そこを計算に入れておかないと、将来設計ができない。

でもアルバイトでいいという人。これをフリーターという。フリーアルバイターの略です。次に、無職で働かない人も出てくる。働こうとをする努力もしてない。これをニートという。昔はプータローと言っていた。仕事はと言うと、聞くなよ、オレはプーしてる。プーという。そういうスラング、俗語もありました。これが社会問題としてあります。

これに加えて、あと結婚しない、という独身者。これは人口問題につながる。少子化でしょ。この学校だって、20年前に私がいた時は9クラスあった。3~4年に1クラスずつ減って、8クラス、7クラス、6クラス、どこの学校もそうです。とにかく減ってる。君たちのお父さんたちの世代というのは、日本がバブルが崩壊して、そのころに高校卒業したぐらいです。とっても厳しい就職難で、その時代にかぶるんです。そういう時代もあります。

それであとは、自分を形成するためには、自分の家の中に閉じこもっていても、自分を見つめようと言うけど、その見つめ方は、部屋に閉じこもっただけで自分の鏡を見ていても分からない。社会参加が必要です。これは人と比較しないと分からない。人の動きと。オレは、彼のようにはできないとか、でもたまにオレのほうがよけい知っているとか、人と違うことがいろいろあるわけですよ。そういうのを見つける。比較しないと分からない。そのためには社会に出ないと人と比べられない。昔のコマーシャルじゃないけど、「違いが分かる男」にならないといけない。女でもいいけど。

その社会参加の一つとしてボランティア活動です。このポイントは、自分からやるということです。人から言われてじゃなくて。最近、けっこう人から言われてのボランティアもあって、その見分けが難しくなりました。
あとは無償でということです。無給でやるということです。台風が吹いて災害があった。そういう時にボランティアに行くというのもいい。しかしあれは、行く人は行っていいんだけれども、民放・NHKはじめ、なにか言いすぎのような気もするんです。日本は福祉国家だから、災害復旧というのは基本的には、政府の仕事なんです。まず政府が責任もってしないといけないことです。日本の国民に対して。しかしこれが十分にできないから、ボランティア、ボランティアという。順番としてこれ(国)からこれ(ボランティア)、だったらいいけど、まず最初にボランティアを言う。それは順番が逆です。順番はけっこう大事です。順番、特に優先順番を間違うと、世の中はひどいことになる。

ある授業を見たことあるけど、ボトルのような容器のなかに、大きい石、小さい石、砂を入れる時、小さなものから入れたら、全部は入らない。大きいものから入れて、次に小さいものを入れて、最後に砂を入れたら全部はいる。この順番を間違うと入るものも入らない。順番というのはとっても大事です。優先順位です。一生懸命やっても、優先順位を間違うとうまくできない。
この話はいつあったかというと、君たちは小学校英語教育を習っている。英語教育が小学校にはいる時にもあった。それは英語はやっていいです。でも日本の小学校の教育というのは、日本の教育が強いのは実は小学校だった。20年前までは。日本の大学教育なんかは、東京大学だってアメリカのハーバード大学と比べたらずっと下だった。小学校教育が落ちていったころです。落ちていったころに、優先順番として国語、算数よりも、なぜ英語なのか、という批判があった。20年ぐらい前に。それでも英語が入っていった。優先順位というのは、意外と盲点ですけど、それを間違うとうまくいかない。


【和の精神】
実はここで切れます。次は日本のことです。日本のことに行きます。
日本の文化というのは、今の3年生の教科書までは、いろいろ思想家とか出てきていたんですけど、大きく削られてとても単純になりました。ここで出てきているのは、外国と比べて日本人の特徴は、違いが何かというと、この教科書では和の精神ということを言っている。これは1000年以上前からよく出てくることです。言い始めたのは、1400年前の聖徳太子です。奈良時代の前です。これは中学校で習ったでしょう。中学校の日本史で。君たちは1年生の時に歴史総合、これも新しい科目です。習ったといっても、それはほとんど産業革命以降です。1800年代以降です。それ以外に世界史には、古代史もあれば、1000年代の中世史もあるんですが、そこら辺はほとんど習ってない。いや君たちが悪いわけじゃないけど、習わないです。


次にソクラテスとかプラトンとかギリシア思想がでてくるけれども、ギリシアの社会というのが一体どういうものだったのか、基本に社会があって、次に政治があって、一番上にある哲学とか思想とか、そういうものがあるけど、その土台を知らない。土台を知らないのに、その上だけ教えろというのは難しい。どうやって教えようかと悩んでいます。時間も取れないし。


古代の聖徳太子です。日本史では本名、厩戸王(うまやどおう)として名前が出てくるけれども、この公民教科書では聖徳太子として出てきてます。その人がまず強調したものです。この人はとても不思議な人で、人によってはその実在を疑う人もいるけど、少なくとも彼のことが書かれた奈良時代には、和の精神というのが政治的に重要なテーマとしてとらえられていたというのは確かでしょう。


日本と西洋を比べてみたときに、どんな違いがあるかというと、日本は相手と対立することを好まない。一言でいうと調和的です。それに対して、ヨーロッパは対立的です。自己主張というと、主張するのはいいけど、一つの主張には必ず反対意見があって、自己主張する以上は必ず反論を覚悟しておかないといけない。みんな違うんです。違うのは当然です。
クラスに40人いて、みんながみんな金太郎飴のように同じ考えをしていたら、逆に気色悪いでしょう。みんなそれぞれ微妙に違うから話し合う。それが一発で、中国の全人代のように、賛成の人というと、みんなハーイという。それでは会議する意味がない。
全人代>第1回会議の第7回全体会議を開催_中国国際放送局


今の日本は個性、個性というけれども、その割には伝統的には、自分より集団、この集団性を非常に大事にする。それに対して西洋というのは、個人主義といわれる。言葉もあります。個人主義は一般的にいいます。ただ集団主義という言葉は、ちょっと曖昧です。

それから日本人は、これは我々もそうですけど、職場で飲み会に行く、グループで行くと、校長先生もいっしょに行く時、オレは上から何番目に座ったらいいか、これが分からないと、なかなか座れない。どうでもいいから早く座れと言われても、今日は無礼講だと校長先生が言えばいいけど、それでもあの先輩が上だとか、オレは何番目かなとか、みんな2~3分、立ったまま座席の配置を見ている。これはタテ社会です。タテの序列がないと、なかなか動けない。それに対してヨーロッパ人というのは上司の前でも、時々ヨーロッパの映画であるけれども、上司が自分の椅子のところに来て仕事の話をしだしても、部下は机に足を投げ出したまま上司と話す。上司は立ったまま、部下が足を投げ出して仕事の話をする。そういうシーンがある。日本人はそんなことはしないでしょう。そんなことしたら、なんだおまえ、その態度は、と腹を立てる。でもヨーロッパはそれでもいいんです。あんまり意識がない。これはネットワーク型です。

それから文化的には日本は、こう言われると恥ずかしいとか、恥の文化といわれる。これは戦後、日本がアメリカに戦争に負けた時に、アメリカの文化人類学者が日本の負けを見越したように、徹底して日本の文化を研究しているんです。これは戦後のベストセラーです。「菊と刀」といって。ルース・ベネディクトという女流学者が書いたんですけど。それに対してヨーロッパは罪の文化と名付けた。この人が。これはハッキリ言ってないけれど。日本は恥の文化で、レベル低いなと。それに対してヨーロッパは、これは神様ですね、キリスト教の罪の文化がある。こっちが上だ。そういう言外のニュアンスがあります。自分たちを上に見てる。

それから、最近では、意外ですけど、日本の「甘え」は難しい言葉でもなんでもないですが、ヨーロッパにはこの言葉がないという。これが日本文化の人間関係を特徴だと言ったのが、心理学者の土居健郎という人で、「甘えの構造」という本を書いた。これもベストセラーになりました。読んでみると、簡潔な言葉でおもしろいことを書いてある。甘えをお互いに許している人になると親友になる。親友になるから自分のことも分かってもらえるし、相手のことも分かる。これが一時流行った言葉で、空気を読め、ということにもなる。

でもこの空気を読み過ぎると、忖度(そんたく)をして、変なことになったりもする。公文書を偽造して自殺した人が安倍首相がらみであった。そういうこともあった。政治的な事件として。どっちが良いか分からないけど、甘えの反対側にあるのに、大人の社会ではこれが難しい。忖度(そんたく)という。上から言われてするんではなくて、これ言われそうだなという時に、言われる前に仕事やったりすると、株が上がる。上の覚えがめでたくて早く出世できたりする。それをやり過ぎると、この人はこうしてほしいと思っているけど、それを隠したがっている、それなら先にオレがしておくかといって、、、、、、、、、安倍さんも殺されたから、あまり言えないかも知れないけど。そこら辺が微妙なところです。これは今もこういう考え方は、けっこう大きい。日本の社会の中では、和を重視している。和を大切にするということです。

大人になってもあの人は有能だけれども、職場の和を乱す。これは最悪の言葉です。あの人はとても有能だけど、みんな嫌がるとかもある。和を乱すからと。これはとってもまずい言い方です。和を乱す人間というのは。それを聞くと、この人にはあまりお近づきになりたくない。

伝統文化と若者文化のところ。現代の若者というのは、討論しなさいとよく言われるけれども、討論というのは自分の主張をすることだけれども、自分の考えを主張すると必ず対立意見が出てきます。
この自己主張というのは、前にも言ったけど、自分の利益のことだけ考えて、主張するのが自己主張ではないです。自分の利益も相手の利益も考えた上で、自分の考えをいう。これが自己主張です。しかしそれでも、考え方の違いというのは出てくる。だから、それを恐れる。日本人の特徴として、もうちょっと滑らかな人づきあいをしたいという気持ちも出てくる。君たちもそういう雰囲気は分かると思う。


そこで大事になってくるのが、相手の心を読むという能力の高さ。これができる間柄というのは、漢字があるんですけど、阿吽(アウン)の呼吸とか、聞いたことないかな。仲がぴったりいい。何も言わなくても分かっているという。これを阿吽の呼吸という。そういうのを求めるのは、優しさの現れ、とも考えられる。断定じゃなくて、とも考えられるということが、教科書には書いてあります。ここらへんは微妙な言い方ですね。ここ30年、個性だ、個性だと、教科書は言い続けてきたけど、今はとてもモノの言いにくい世の中になりました。たぶん君たちもそのことを肌で感じていると思います。


【独立自尊】
しかし、150年前に明治維新になって、今まで見たこともない外人が来た。江戸時代の初めにちょこっとヨーロッパ人が来たんだけれども、そのあと江戸時代300年間は鎖国だった。そこにペリーが来た、それも大砲向けて来る。決して平和的に来たんじゃない。ペリーが来たあとは、それに対して、こんな失礼な奴とは戦わないといけない、戦わないのは日本人の名折れだと言って、そういう動きもありました。これを攘夷運動という。これは日本史で出てきます。中学校でも出てきたでしょう。そういう攘夷論がある。攘夷というのは、外国人を夷という、それを攘つこと、追い払うことです。それに対して、日本人もバカじゃないから、ヨーロッパがどんな手段でやるか、その10年前には中国がやられている。麻薬を売りつけられている。アヘンと言って。こんなもの買えるかと言って中国が断るんです。するとイギリスは中国めがけてボンボン大砲を撃ち出してくる。それで中国はアヘン戦争に負けた。そのことを日本は知ってるから、こいつらには勝てない、ということは知っている。

これに危機感をもっていた藩もある。例えば1キロしか飛ばない大砲をもっていて、これを10本買うのと、10キロ飛ぶ大砲を1本もっていたら、これ戦争の時にどっちが役に立つか。素人は10本あったほうが多くていいと思うかも知れない。1キロ大砲は太いし、頑丈に見えるんです。逆に10キロ大砲は細い、これはアームストロング砲といって。太い方が強そうに見えるけれども、逆です。こっちから打って、相手に届く大砲を一本もっているのと、逆から打って全然届かない大砲を10本持つのと、どっちがいいか。1キロ大砲は何の役にも立たない。その10キロ大砲をもっていた藩もある。そういうものを手に入れる危機感は、どこから来るか。長崎に出島があって、そこが唯一の貿易港です。そこから情報を取り入れている。
だから情報バッチリです。外人が何をするか、日本人は知っている。戦って勝てるか、勝てない。勝てないときに戦ったら犬死だという、これを分かったのが、1500年代の日本の戦国時代です。約100年間、そういう時代がありました。勝てない相手と戦っていたら、命がいくつあっても足りない。織田信長の前後ぐらいです。勝てない相手とは戦えない。そういう厳しい世の中のあと、やっと江戸幕府ができて、徳川将軍が天下泰平を続けていった。
天下泰平を続けていた時、日本が平和な時に、ヨーロッパではずっと三十年戦争とかユグノー戦争とか、戦争ばっかりしている。その結果、発展するものがある。戦争は普通は破壊されるけど、しかし戦争して発展するものが一つだけある。武器です。だから300年の間に武器の差が出る。その発達した武器を向けてペリーがやってきたものだから、これは戦えないとして開国論が出てくる。これで日本人同士殺しあう。しかし約10年です。10年は短いです。10年で決着がつく。中国なんかは30年、40年かかっても、まだ決着つかない。そして日本では開国派が勝った。これが明治維新です。


これは、なぜか知らないけど下級武士ばっかりです。伊藤博文とか大久保利通とか、家を見に行ってみると、小さな貧しい農家みたいな家です。彼らの生まれた家は。なぜこんな下級武士が急に偉くなったのか。どこで誰がどうしたというのは分かるけど、一番分からないのはお金です。こんな下級武士が、何でこんなにお金を持っているか。京都に行ったら芸者あげてワーワー遊んでいる。芸者遊びは、今でも一晩一人10万はかかる。ではどこからその金が出ているのか。それが分からない。


その明治維新の思想家で開国派、これが福沢諭吉です。知らない人はいないでしょう。一万円札です。九州の小さい藩、大分の中津藩という小さな藩の人です。これからはヨーロッパ文化だといって、日本は近代化をやっていく。近代化というのは、君たちが着ているズボンとかネクタイとか、女子が着ているスカート、これは日本の伝統的な衣装ではないでしょう。全部ヨーロッパ流じゃないですか。
昭和初期の、うちの親父の小学生の頃の写真をみたら、先生は紋付き袴です。本当はあれが正装なんです。

日本はここから近代化が始まる。近代化というのは何か。ほぼ西洋化と同じことです。勉強の方法から、考え方から、西洋流になっていく。こんなことをやってきた歴史が明治維新以後、150年間、日本にはあります。しかも、日本は西洋化の優等生です。日本はヨーロッパではないけれども、ヨーロッパ化して一番成功した国の部類ですね。
福沢諭吉が説いたのは、日本の国として何が必要かというと、独立自尊と言った。まず独立すること。そういうことを言いました。独立して堂々と自分の考えを持っていこうという。これが弁論とか自己主張とか、そういったものに繋がっていくわけです。

この自己主張というのもよく叫ばれますけれども、たださっき言ったように、日本の文化の中には、みんなが持っている自分の意識というのはなるべく出さない方が武士のたしなみだ、人間として1ランク上なんだ、そういう考え方もあるんです。
これは無私の精神ともつながる。人は人様で、自分のことはその次だ。自分のものは盗られても、人様の物には手を出すな。人は人様です。僕という一人称ですけど、僕は謙譲語です。下僕の僕です。私という言い方も、人のものを私(わたくし)するという言い方は、これは泥棒といっしょのことです。私するということは、決していい言葉ではない。だから一人称というのは謙譲語です。私とか、僕とか。無私の精神に似た言葉に、無我の境地とか、こういうものもある。これは仏教から来てますけど。仏教とキリスト教も、また違います。かなりちがう。あの人は無私の心がある人だとか言われるのは、これは最高の褒め言葉です。これは自分がないからダメだと非難されているのかというと、日本では無私の人だと言われるのは逆に最高の褒め言葉です。

終わります。




授業でいえない「公共」 5話 日本の伝統文化

2024-02-17 06:55:00 | 高校「公共」

前回、一万円札の福沢諭吉が出て来て、これはいつ変わるかな、来年渋沢栄一に変わる。明治の有名な人ですよね。明治維新いうのは、失礼なペリーが大砲向けてやってきて、こんな失礼を許したらいけないという人もいた。

昨日、私の友達からラインが来て、会津に行ってきたと言うんです。土日に、2~3日。そして白虎隊を見てきたという。会津は官軍に刃向かったところです。官軍とは薩長土肥です。会津は分かるかな。福島県。10年前から原発事故があっているところですけれども、あそこはもともとは会津藩といって会津が中心だったんです。しかし会津には国立大学もないし、福島大学は福島にあって、なぜ会津が県庁所在地ではないかというと、あの明治維新の時に官軍と戦って負けたんです。この官軍の中心が薩摩、長州で、会津ではどこから来たかと問われても、薩長土肥と言わない方がいい。今でもコーヒーに塩を入れられる。150年前の恨みで、ウソかホントか知らないけれども、そんな話があるとか聞きましたけど、逆にそういう土地柄も骨っぽくていいなと思います。

ペリーに対してあんな失礼な奴は許されないという考え方もあったんだけれども、これからはヨーロッパ思想で、どんどんヨーロッパに追いつくべきだという人も出てくる。福沢諭吉というのは、こっちですよね。そういうこと言った人です。前にも言ったけれども、明治以降は、近代化とか現代化とかいうのは、基本的に先進文明というのは西洋ですから、これをマネすることで来たんです。ネクタイとか、ズボンとか、女子のスカートまでマネしてきたんです。

しかし、アメリカ人の心理学者のエリクソンという人が、青年期の発達課題として、自己実現の前にアイデンティティの確立が大事なんだ。アイデンティティ、IDというのはIDカードがある。自己証明書とかIDカードという。これは自分が自分であること、みたいな意味です。
これはイメージとしてしか私も言えないけど、自分を見る目、これが中学のころから芽生えてくるんです。ちょっと色気づいた頃からね。これは男も女も変わらない。やっぱり自分に満足はしないけれど、あまり満足はしないけれども、納得はできるという感じかな。納得もできない、満足もしない、これだと自分が分裂していく。乗り越えるハードルは高い。満足したら終わりでしょう。ふつう高校生で自分を完成しようとか、私のように60年生きてても全然満足できないです。たぶん死ぬまで満足できないだろうと思う。まあ凡人はそんなものかなぁと思って納得してます。ああ悟りの道は遠いなあと。そんな感じです。満足はできないけれども、まあ仕方がないなあ。それでも自分に納得はしている。

もうすぐ高校総体ですけども、試合で勝てないけれども、試合に負けたことに満足はしないけれども、戦い方に納得はできるという戦い方があるじゃないですか。負けたけど納得はできる。あいつはオレよりも強かったと。一番イヤなのは、負けて悔しいけれど、自分の戦い方がなってないこと。これは自分で分かるんです。練習の時はできたのに本番でできない。よくあるんですよね。それがまずいんです。負けたけれども納得できるかどうかというのが、非常にアイデンティティにとっては大事なところです。これは受験もそうですよ。


何をいっているかというと、納得を目指してください。満足はできない。これは自信もって言える。なかなか自分に満足はできない。納得を目指してください。
それでこの納得の仕方というのが国によって、つまり文化によってかなり違うんですね、ヨーロッパでも人生の納得の仕方というと、すぐ神が出てくる。日本人はちょっと違う。まあそういう文化に影響されていくということです。

そこら辺まで前回言ったと思いますけれども、現代日本人、自己主張をちゃんとやりなさい。この自己主張の意味は、というところまで言った。自分の利益だけ考えても、それはまとまらないんですね。自分の利益、それから相手のため、両方考えた上で自分の考えを言う。これが自己主張です。自分のことだけ言っていたら、まとまらない。相手のことを考えていても、9月の学園祭があって、クラス討議するかも知れないけれども、相手のことを考えていてもそれぞれ意見は違う。それをクラスでどうまとめるかということです。
その自己主張という言葉につられて、この次は日本の伝統文化に行きますけれども、くりかえしになるけど、無私の精神とかいうのは、これと対立してるみたいですけど、日本ではこういうのは非常に大事にされてきた伝統があります。


【見返り美人図】
今は時代劇が少なくなったけど、昔はいい時代劇があったんですよ。男が主人公でも、女優の立ち振る舞いでも、歩き方でも、ちょっと膝を曲げて、今のように女の子が堂々と歩いてもいいかもしれないけど、そういうふうに歩いたら時代劇ならない。女性の歩き方というのは、女は膝を曲げるんです。和服着ているから、それが合うんですが。手を大きく振ったりしない。手はほとんど動かさずに、さっさっさっと歩いて、おいちょっと、とか言われると、君たちは、今の振り返り方というのは、こちらの内側の足をまっすぐ立てて、なんだ、と大きく振り返るでしょう。
昔の女性は、腰の上下運動を体の左右運動に女性は変えていた。日本史選択生はたぶん習うと思うけど、江戸時代の元禄文化に「見返り美人図」というのがある。あれは中学校の歴史の教科書に載っていたから、今でも日本史受験する時には必須の絵画です。あの振り返る瞬間というのは、今のように体が後ろを向いてない。右足に体重乗せてない。後足(左足)を曲げるんです。後ろ足を曲げたら顔は右にいくんです。後ろ足を曲げたら、顔は絶対に左には行かない。あとでやってみたらいい。サッサッサッと、オイと言われて、後ろ足を、エッとかいって、この瞬間です。元禄文化の粋です。あれから日本の浮世絵が大成していく。そういう女の腰つきを「柳腰」とかいって、非常に美しいものだとしていた。

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明治になってこれにビックリして、これはいい絵だと思ったのは、日本に来た外国人です。だからみんな、それを買っている。原本は大英博物館とか、パリのルーブル美術館にあったりする。日本人だけ当たり前すぎて気づいていない。そういう女性の身のこなしも、今とはだいぶ違います。

10数年前、我々も100メーター走では、足よりも手を一生懸命振れと習ったんですよね。しかしどうしても世界に勝てなかった。世界陸上でも短距離で3位になったことはなかったんだけれども、君たちが生まれるころかな、末続慎吾という短距離選手が、手を振らずに走って、日本人で世界陸上で初めて3位になった。君たちはもう知らないかな。日本人が短距離走で世界の3位に入るというのは前代未聞です。10数年前の末続慎吾が最初で最後です。

末續 慎吾 Shingo Suetsugu - 公益財団法人日本陸上競技連盟

あの走りは、一生懸命手を振るんではなくて、ほとんど振らないです。どうしてそんな走り方をしたかというと、昔の日本人の走り方を取り入れたという。我々のように手を振れと小学校の先生から教えられた世代から見ると、変な走り方ですけど、コーナーリングでワッと伸びる。200メーターだから直線ではなくて、コーナーリングがあって、第三コーナーでグンと伸びる。今から見ると不思議な走り方だなと思う。そういうふうに、身のこなしさえ違うんだから、考え方だって違うんです。


【八百万神】
それで、昔の武士は拙者(せっしゃ)でしょう。拙者とは、自分を下にみる。「僕」は下僕の僕です。私というのも人様の物を私(わたくし)するっていうのは非常に恥ずかしいことで、盗むのと同じです。ぜんぶ謙譲語です。人が上で、自分が1ランク下、そしてこれが一人称になる。これは今の自己主張の考え方とは違うから、そのまま言っても私が何を言っているのか、なかなか伝わらないです。

日本人の文化のことをいうと、神様、この神様はどこにだっているんですよね。人間の歴史の中で神様がなくなったことはないんですよ。宗教がなくなったことはない。いつだってある。神様の姿は、ときどき変わる。変わるたびに、これを信じてきた人たちが作ってる社会の姿が変わるんです。神が変わるときには、社会が変わっていくんです。地域によっても違う。神様によって社会のあり方が違うんです。何の神様が正しいかは分からない。何が正しいとか、言っているんじゃない。そういうふうに、神様が違うと、国によって、民族によって、社会が違う。

福沢諭吉的に西洋化をするときには、西洋のキリスト教は一神教といって、神様は一つしかないんですね。この考え方は日本と同じなんですか。これは全く違うんです。日本は何でも神様になります。徳川家康だって日光東照宮で神様じゃないですか。明日、3年生が行くと聞いたけど、太宰府天満宮に行く。太宰府天満宮に行って拝む。合格しますようにと。誰に拝んでいるんですか。菅原道真でしょ。菅原道真というのは、空想上の人物ですか。これは日本史の教科書にちゃんと書いてある。実在の人物です。1200年ぐらい前の人です。そういうふうに人間だって神様になっているんです。誰だってなれるんです。早い話、山だって、石だって何だって神様になる。この学校の北にそびえる山は、神の山でしょう。その麓には神社がある。その神社の御神体は何かというと、その後ろにそびえる山そのものが神様です。こんな神社はいっぱいある。カマドの神様だってあるし、宗像大社のような海の神様だってある。これは多神教です。その数は幾らあるかというと、八百万あるという。これ何と読むか。八百万神と書いて、やおよろずのかみ、という。誰も数えたことないです。数えなくていいです。キリがないから。無数にあるということをこう言っているだけです。ヨーロッパのキリスト教とたいそう違う。向こうの神様は一つだけです。

そういうことは今から1300年前の奈良時代にできた、初めての日本の歴史書、これを古事記という。これにも出てくる。もう一つ、日本書紀というのがあるんですね。これとセットなんですけれども。そこででも、初めての一番偉い神様は、天の御中主の神とか、どこから出てきたか、無駄な説明はしてない。すでに、いるんです、そこに。その何代かあとに、天皇の祖先になる天照大神とか。これも読めないでしょう。アマテラスオオミカミという。ミは尊敬語です。これを小学生はテンテルオオカミと読んだりする。アマテラスです。伊勢神宮に祭ってある。伊勢神宮は三重県です。テンテルオオカミではない。こういう神様がいっぱい出てくるんですけど、すでにいるんです。自然にいた。これで済ます。それほど当たり前に居るんです。有名な神様です。そういうふうに神様だって難しいこと言わずに、自(おの)ずからいるんだと、それでいいじゃないかという感じです。


【アニミズム】
ところが一神教になると、詳しい説明が要ります。イヤ、そうじゃなかろうなどというと、魔女裁判で殺されたりする。キリスト教は愛の神様とはいうけれども、けっこう怖い世界です。
神というのは何にでも宿る。日本ではこういう考え方です。石にだってなる。これをアニミズムという。アニミズムです。何時でも宿る。多神教です。アニミズムです。時々書かせると、アミニズムとか、妙に覚え損なっているんです。これは心があるものです。心があるもの、犬、猫は、これはアニマルでしょ。アニマルのアニミズムです。言葉の構成要素は同じです。心があるもの、犬、ネコは「アニマ」ルです。アニマは心です。その心が何でも宿ってる。ウソだろう、石に心があるものか。そう考えると分からない。そう考えてきたということを言っているだけです。そのアニミズムです。
神様というのは、こうしなさいというのが、一神教にはあるんです。例えばイスラム教徒でも、1日に5回メッカの方を向いて礼拝しなさい。これは決まりなんです。だからしないといけない。でも日本にはそんなことない。だだ祭りなさいという。だから神様を祭る。そして祈る。


お祭りというとお祭り騒ぎに行くことだと思ってる人がいるかも知れない。確かに、くんちの祭りでは騒いでいいんです。でもくんちの祭りの一番先頭には、こういう御神輿があります。御神輿とは何か。神様を運ぶ乗り物です。これが御神輿です。御神輿の下をくぐっていくと御利益があるとかいって神輿くぐりをよくやる。これは一方くぐりはダメです。行ってまた戻って来ないといけない。これはうちらあたりの集落でもやってます。ここ数年コロナでできなかったけど、今年はできるかなという感じです。


【日本文化の重層性】
この祭りのことを祭祀(さいし)といいます。こういうふうに神様を祭る。日本古来の神様を祭るこの宗教のことを神道という。漠然としたものですけど。日本で今ある宗教的な考え方というのは、このやおよろずの神のほかに、早いものから順番に4つあります。

一番下のベースにあるのが神道です。しかしこの上に仏教がある。神道と仏教の違い。時々、10人に1人ぐらい分からない人がいる。それは無理もない。学校で教えてないから。この授業でしか言う場所がないです。これは地図のマークから違うんですよね。神道は神社です。マークは鳥居です。仏教のマークは卍です。拝むところは、仏教はお寺ですよ。


神社とお寺は行く時期も違う。おめでたい時、明けましておめでとうございますというときは、お寺に行かない。近くの神社に行くでしょう。三社参りで。逆に人が亡くなったとき、悲しいとき、お寺に葬るでしょ。全然ちがう。神道はどこか。これは日本です。仏教も、日本の宗教だと思っている人が、たぶん半分ぐらいいる。そう言われたら、知っていたと言うけど、仏教は日本古来の宗教であると〇✕問題に出したら、半分ぐらい〇にする。違うでしょう。どこの宗教ですか。お釈迦様はどこの人ですか。インドです。お釈迦さんは空想上の人物ですか。教科書に2600年前に生まれたと書いてある。実在の人物です。インドです。

拝み方だって違う。お寺では手を合わせて静かに拝む。これを合掌という。あけましておめでとうございますの時、三社参りの時は合掌しない。どうするか。手をたたくよね。あれは柏手(かしわで)というんです。

これを間違ったらダメです。神社に行って合掌するのはまだ目立たないからいいとしても、人が亡くなってお通夜で人が悲しんでいるときに柏手を打つ。これはみんな凍る。いくら作法を知らないといっても、そんなことしたらダメです。人が亡くなって、みんな悲しんでいる時に、遺族に対してご愁傷様でしたと言うときに、あけましておめでとうの柏手をしたらダメです。綺麗な女性が一度した、私の目の前で。びっくりした。その場の雰囲気が変わった。こういう間違いはしないでください。
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次に、儒教というのがありますね、江戸時代にこれが一番盛んで、例えば「温故知新」、故きを温ねて新しきを知るとか、古いもののなかに新しいものがあるんだとか。巧言令色少なきかな仁、ぺらぺらしゃべる奴にかぎってロクな奴はいない。私みたいなものかも知れないけど。これは儒教です。こう言ったのは孔子でしょう。漢文で習うでしょう。これは中国流です。

その上に約150年前の明治維新から西洋思想がある。こういうのを我々は無意識のうちに使い分けている。ヨーロッパ人は一神教だから、神様は一つです。しかし我々はお盆にはお寺に行く。お正月には神社に行く。ヨーロッパ人から見たら、この日本人の宗教行動はとても謎らしい。でも我々は何が謎なのか分からない。悪いと言っているんじゃない。とても違う。こういうふうに、ざっと見て、神道、仏教、儒教、西洋思想の4つあるんです。

日本人は北海道から来た人でも、鹿児島に行っても言葉が通じるでしょう。これ一つの民族だからね。しかしヨーロッパとか、大陸に行くと、一つの国で全部言葉が通じて、一つの民族がいるということはまずないです。民族と民族が混じりあっている。混じり合う前は対立している。それで戦っていく。なぜこれを言うかというと、戦う以上は勝ち負けができる。勝った人間はいいけど、負けた人間はどうするか。3つあるんです。
1番目は皆殺し、2番目はどうにか逃げ切る。3番目は奴隷にするんです。次に言うギリシア・ローマというのは、市民よりも奴隷の数が多いんです。だから働かなくていい。だから民主主義がでてきて、哲学がでてくる。暇だからそういうことができるんです。学校のことをスクールというけれども、ギリシア語ではスコラという。これがスクールになる。スコラとは何か、暇ということです。学校はもともとは暇な人間が来るところです。今の学校は忙しいけどね。本当は暇じゃないといけない。今の学校とはだいぶ違います。


【日本の神】
日本にはこういう民族とか階級の対立がない。そこから日本人独特の宗教観、世界観、そういうものができてくる。そういう中で、この神道の教えというのは、言葉ではないです。ただ純粋であれ、清い心を持ちなさい。清き明き心、と書いてある。漢字で言うと、清明心とだけ書いてあって解説なしです。ただ私のニュアンスでいうと、この清い心、清明心というのは、こういう私心のない心ですね。こういうのを非常に大事にしてきた。そういう文化があります。


【産土神】
そういう神様を日本人はいろんな所で祭ってきた。徳川家康も神様になっているし、菅原道真も神様になっているけど、普通の村々にだって神様はありますね。我々が祭ってきた村の神社というのは、君たちも農村から来ている人は分かると思うけど、私も田舎から来てます。私の村は50~60軒あるけど、近くの村はずれには、だいたいどこの村も小さな神社を持ってる。この平野には、ギリシアのような丘がない。神様はなぜか知らないけど、天から降りてくる感じなんです。小高いところに神社がある。近くの神社だって、上宮はいちばん山の頂上にあります。北のほうの山に行くと、山があって、麓に村があると、やっぱりその村の神社というのは、山のちょっと高いところの村はずれにある。そして村を守る。これが土地の守り神です。村を守っている。
この読み方が分かる人。産土神という。うぶすなしん、というのはこれです。赤ちゃんが初めて湯で体を洗う。その湯のことを何というか。産湯(うぶゆ)というでしょう。知らないかな。「帝釈天で産湯を使い」とか昔の映画の「男はつらいよ」でもあった。産土神の産湯(うぶゆ)ですよね。これが俗に言う、村の鎮守の神様です。これが神社の半分以上かな。鎮守というのは、村人を守ってくれる神様です。




【氏神】
もう一つは、一族の守護神、これは少ないけれども、やっぱりあります。その守護神というのは一族のご先祖様です。それも年代の桁が違って、何百年も前のご先祖様です。ここに一番早く、例えば私だっら、ウチのもともとの実家は、隣近辺ぜんぶ同じ名字です。親戚同士なんです。どこまでさかのぼっても同じ名字なんです。その最初の人は誰かよく分からないけど、場所によっては、こういう一族のご先祖様のことを、300年、500年後でも祭って、お墓じゃなくて神社にする場合がある。これを氏神という。土着の神としては、だいたい鎮守の神と氏神の2種類です。多いのは鎮守の神です。

そのキリスト教の場合には、人間は死んだら遠い世界に行って、二度と戻ってこないですけれども、日本の場合には、死んだ自分の爺さんとか父親とか、親父も数年前に亡くなりましたけど、どこらへんにいるかというと、どこか近くのそこらへんにいるイメージがある。

お父さんを早く亡くして、息子が、変な悪いことばかりしていたら、そんなことをしたら、「おまえの死んだ父ちゃんは草葉の陰で泣いてるぞ」という言い方をする。草葉の陰とはどこかというと、どこかそこらへんにいる感じなんです。そうでなくても8月13日に御霊を迎えるでしょう。そして3日間いて、8月15日にはまた送るでしょう。船に乗せて、昔はここらへんにもあったんです。今残っているのは、長崎だけですけどね。これは何流しですか。精霊流しでしょう。
「富士宮」神田川精霊流し 8/15 | リンクタウン富士宮

今は環境問題で、舟のゴミがたまるからダメだとか行政が禁止してるからできないけど、昔は普通にやっていたんです。8月13日はだいたい迎え提灯(ちょうちん)でしょ。提灯つけて迎えるでしょう。あれもこのへんでもちょっと流儀が違う。うちらへんは縁側から来ることになっているんです。ほかに玄関から来るところもある。地域によって、縁側から来るところと玄関から来るところ、ここらへんでも二流派ある。それは小さいことですけど、そういうふうに、結構近いところに祖先がいる感じがある。


【儒教】
そういうところに、次に仏教が来て、ほぼ同時ぐらいかな、中国流の儒教が来る。この中国流の儒教が江戸時代に盛んになったんですね。儒学という言い方、儒教という言い方、二つあります。これは学問なのか、宗教なのか、それが学者によってとらえ方が違って、これは宗教だといえば儒教という言い方をする。私は宗教に近いと思うから、儒教と言ってます。

その儒教が非常に流行ります。武士の間では特に。儒教が強調するのは、本当は親子関係がベースにあるんです。子は親に従うものという感じ、これがベースにあります。しかし儒教は、これですまない。親は自分より先に死ぬでしょう。それで親を敬うのが終わるかというと、終わらないです。親が死んでも子が敬いつづける。こうなるとは祖先崇拝です。日本の仏壇には先祖崇拝がある。仏様だけを拝んでいるかというと、仏様の下に位牌がある。後でいうけど、私の死んだ爺さんとか、数年前に死んだ親父とかを拝んでいる気持ちがある。これは儒教流です。仏様には、いろんな梵天さんとかいろんな仏様があって・・・・・・これはいいです。ちょっと先に進みません。


ここでは江戸時代の日本ではこれが、殿様に対する家臣としての忠義になる。うちの学校は昔の藩邸です。隣の公園は、その殿様の庭です。ここはいいところです。市内の学校にいくと、もっと砂っぽいです。私はここに来て、市内の学校から来ると、緑が多いなというのがやっぱり第一印象です。君たちは慣れてしまって、あまり感じないかも知れないけど、ここは緑が多いですよ。


【国学】
江戸時代の初期は、儒教中心に中国流が非常に栄えたんだけれども、江戸の中期ぐらいになると、そんな中国流のことばかりして何になるんだ、オレたちは日本人じゃないか、という考え方もでてくる。オレたちは中国人ではないだろうと。それを国学という。この国学の国は、日本のことです。自分で自分の国のことをいう時には、日本とか言わないです。日本語を学ぶ教科は何ですか。日本語とはいわないでしょう。国語というでしょう。日本で日本の国の歴史を学ぶことは何というか。もともと国史というんです。戦前までは高校でもそうだった。日本は戦争に負けたでしょう。するとGHQがこれはダメと言った、日本史に変えろと。それで日本史になった。国と言ったら、自分の国を指すときには、日本の国と言わないです。国です。その国を研究する国学です。

これはどういうものかというと、日本の仏教以前の姿を見いだそうとした。もともと仏教は外来思想でしょう、それ以前の日本人の姿がどういうものか、そこが一番大事なんじゃないか。または中国流だったら、儒教が中国から入ってくる儒教以前の日本の姿、これを見つけようと。ということは、神道に近づく考え方になる。これも幕末にかけて非常に栄えていった。


これを考えた江戸時代の学者が、本居宣長(もとおりのりなが)といいます。本居(もとおり)さんというのは今でも時々そういう名字の人がいるでしょう。本居宣長です。こういうその学問のことを、惟神(かんながら)の道といういい方をしました。大事なことは何か。これも一言です。あとは取り方次第です。真心だ。もののあわれを知ることだ。もののあわれを知らないと、あいつは風流を解さない奴だなぁといわれる。とても悪い非難する言葉ですね。


【西洋文化】
そういうふうに日本を見直そうというところにやってきたのが、大砲向けてきたペリーです。そして、前にいったように、開国派が勝って福沢諭吉のような人が出てくる。小さな九州の藩の人間です。大分県の。大分の大藩ではない。小さな藩、中津藩という。これからはヨーロッパの考え方がこれからは大事なんだということで、この考え方を天賦人権論という。人間の大切なもの、権利というのは、誰が与えたのか、天から来たんだという。この天はキリスト教です。これ以上は面倒くさいから言ってないけど。でもこういう考え方は日本になかった。これが何になるか。個人に主権があるという政治思想になる。これが国の方向を決める。これは中学校から習っているでしょう。これが国民主権です。何をいいたかったか。この人は国民主権を言いたかった。国民に主権があるから、何という政治になるか。これが民主主義になるんです。

社会主義や資本主義は経済のところでまた言います。しかしこの考え方は、天からでしょう。人権は天からくる。天からというのは、ヨーロッパ流の神から与えられたということで、これはヨーロッパ流です。こういうのを早く日本も学びなさいと、ヨーロッパ流を学びなさいと言った。


【夏目漱石】
しかし次に、明治の終わりに活躍した小説家、夏目漱石はどう考えたか。この人は昔の1000円札の人です。今は野口英世ですけど、野口英世の前、君たちは知らないかな。この人は1000円札だったんです。しかしこの人は、日本人が近代化すること、これはヨーロッパ化することですが、西洋化することは、内発的ではないからダメなんだと言った。日本人はその意味を分かってないといったんです。単なる猿まねだと言ったんです。内発的開化ではなくて外発的開化だといった。分かりやすくいうと猿マネだと。ただ単に形だけ西洋のマネをしているだけなんだと。

何でこんなこと言うか。この人はエリートで、東大を出て、イギリスに3年間、国費で留学した。しかしまったくなじめない。彼らイギリス人はオレとは違う。何が違うんだろうか。オレはとてもついて行けない。そして心を病んで帰ってくる。胃を壊して。そして49歳の若さで死ぬんです。49歳は、君たちは年だと思うかも知れないけど、私のように60数年生きてると49歳はまだ若いです。その彼が分からないなりに考えたのが、エゴイズムではなく、自己本位に生きなさいということをいった。自己本位と。
しかし死ぬ前は、何でも人間は死ぬ前に思ったことが本音だと、私は思うんですけど、何と言ったか。こういうことを言った。「則天去私」と。私の心を去りなさい。これは日本的な考え方に近づいて最後は血を吐きながら死んでいった。こういう人です。これはよく言われることでいうと、最後はやっぱり、無私の精神に近づいていった。


この人の小説で、この人は熊本にもいたんです。熊本大学、当時は五高というけど、その熊本の一地方を舞台に「草枕」という小説を書いて、そこでハッキリ書いている。この世をつくったのは、ヨーロッパ人は神様だ、神様だというけど、そんなことはないと。
「この世をつくったのは神でもなければ鬼でもない、向こう三軒チラチラするただの人である」
そこら辺のおじちゃん、おばちゃんたちがつくったんだと、はっきり言っている。「草枕」の最初の1ページに。私はこれが一番分かりやすいね。神様じゃなかろう、やっぱり人間の世の中は、人間が作ったんじゃないかなぁ。そういうのを山道を登りながら考えたといって、書き出しで書いている。これが「草枕」です。舞台は熊本から玉名あたりの熊本の北部ですね。あまり知られてないけど。

(草枕の舞台になった峠の茶屋跡)

終わります。

 


授業でいえない「公共」 6話 ソクラテス

2024-02-17 06:54:00 | 高校「公共」

2023.5月

【日本の近代化】

前回は、珍しく日本文化のことをやっていました。青年期のことを最初にやって、次に日本文化のことです。これは君たちの新課程から「公共」の授業では、一番多く欠落した。もう多くがなくなった。だから日本文化はここでしかないです。
それで、大きなテーマは何かというと、政治経済をしていくから、近代なんです。ここ100年ばかりの。近代というのは、前に言ったように、「近代化=西洋化」のことなんだということです。明治維新以降、怒涛のごとくがヨーロッパ文化が流れてきて、それを明治の人たちはどうとらえたか、というところまで言ってたと思います。

福沢諭吉は、民主主義の原理、天賦人権といいました。人間の基本の権利が、天から与えられるといっても、この天はキリスト教のことですから、肝心のこの「神」が日本にはないから、こういう観念がどこを探しても、日本の歴史の中には出てこない。出てきてないんだけれども、結局、何か月か後に政治や民主主義をやるときに、人権のこととかは20ページ、30ページぐらいある、とても長いんですよ。
では人権とはいったい何なのか、天から与えられた、それで終わりです。これでは分からない。天とは何か。誰から与えられたのか。これはキリスト教なんです。どうしてもそこにハードルがあるから、なかなか分からない。だから最初から寄り道して行ったほうが、かえって近道なんてす。でも人間の人権は天から与えられた。そう言った。この福沢諭吉は平然とそう言った。

しかし文豪、夏目漱石、「坊ちゃん」とか、「吾輩は猫である」とか、ちょっと冗談ぽく書いた人ですけど、彼は日本人は何も分かっていないといってる。日本の近代化は外発的、外から来たんであって、日本人は何も分かってない。中身は何もない。内発的開化ではないと、はっきり言いましたね。日本人は何も分からないまま、ただ西洋のマネをしてるだけじゃないか。まあ猿マネですよ。
この人は、エリートだったからイギリスに派遣されて、3年ぐらい行って、オレは合わないと、心を病んで帰ってくる、そして胃ガンになって49歳で死んでしまうんですよ。49才というと、私のような年取った者から見ると若いです。ずっと胃弱で、イギリスに馴染めないまま帰ってくる。日本人は分かってない。分かってなくても、しないといけない。君たちも投票しないといけない。日本の近代化に疑問を持ってます。

この人は熊本にもいて、熊本にいたときの旅を小説にした「草枕」というのがあります。草枕の冒頭はみんな知ってる。「知に働けば角が立つ、情にさおさせば流される、意地を通せば窮屈だ」と。聞いたことあるでしょう。
そこは有名なんですけど、実はその次の行に「この世を取ったのは神でもなければ鬼でもない」とはっきり言っている。あれは、西洋のキリスト教と比較していると思う。ではこの世は誰が作ったかというと、向こう三軒両隣チラチラしてるそこらへんのおじちゃん、おばちゃんたちだ、と言っている。多分西洋のことを念頭においていると思う。そういったことも言っているんです。日本人にとってキリスト教の神様を説明するというのは、とても難しい。

若い頃は、この人は独特の、自分勝手ではなく、自己本位という、そういう生き方を考えたんですが、死ぬ前は何といったか。こういう言葉を残して死んだ。「則天去私」。これは教科書には書いてないけれども、私は人間が人生の途中で考えたことよりも、死の間際に言ったことの方がその人の結論だと思う。でも教科書には、これは書いてない。自己本位で生きなさいとだけです。
「則天去私」というのは、日本人の考え方によく出て来るような、無私の精神に近いものです、前にも言ったけれども、日本の文化の中で、私を前面に出すというのは非常に、はしたないことです。自分はへりくだって、武士だったら拙者という。一人称の僕というのは下僕の僕であって、しもべであって、人様のものを私(わたくし)するなんてことは、これは盗みと同じようなことだった。私を出す、自分を出すというのは、はしたないことだった。結論はこういうことだろうけれども、自分本位と、独特の個人主義というところだけが教科書に出てます。

今日はここからです。
次には、和辻哲郎っていうこの大正時代の人ですが、大正から昭和です。人間というのは、自分というのではなくて、間柄的存在という表現をした。間柄です。人間というのは孤立した個人じゃない、関係なんだと。こういう考えもある。
このあとで言うけど、おシャカさんが説いた言葉に「縁起」という言葉があるんですよ。縁です。縁起が悪い、とよく使うけれど、仏教では全然別の意味です。縁起が悪いのは悪い縁ではなくて、縁によって起こる。自分じゃなくて人との関係によって起こるという。それがもともとの意味です。「ご縁があって」とか言うでしょう。「人との縁を大切にしなさい」とか言うでしょう。その縁です。そういう考えかたをした人です。


間柄的存在というのは、人が大事ではなくて、AさんとBさんという人そのものが大事ではなくて、この間(ま)です。日本の剣道はモロこれです。打つ前に間を取れという。これを間合いという。剣道はAさんとBさんの間の取り方のスポーツです。剣道は打突とか、打つのが勝負と思ってるけど、そうじゃない。これは間の取り方、取り合いです。そこで半分は決まる。それに近いですね。剣道の場合には、人がこう刀を構えて、ヤーヤー、言うわけですけど、その時の相手との間です。この「間」、簡単にいうと相手と自分の距離ですけど、どうもそれだけではない。そこに竹刀と体の動きが加わる。さらに気合いも加わる。剣道はこのスポーツです。

剣道

①距離、②竹刀の動き、③体の動き、④気合い、それに相手の動きも同じだけありますから、この2倍です。つまり8つの変数の連立方程式を解くようなスポーツです。でもそんなものを頭で解く暇はありません。打突のチャンスは一瞬です。だから感覚で瞬間的に解くのです。日本人は
これを「勘」と呼んできました。「勘」は自然とわいてくるものではありません。鍛えるものです。これは、個人差はありますが、長くやればやるほど自然に分かってきます。そして分かれば分かるほど、打突の時の力は要らなくなります。剣道が高齢者になっても続けられるのは、こういうことからです。そこに高齢者の意味があります。

日本はここで終わりです。残念ですが、もう出てきません。


【ソクラテス】
古代の人間は何と考えたか。古代ギリシャに行きます。突然、なぜ古代ギリシアというかというと、民主主義の歴史的なルーツは古代ギリシアでしょ。これはヨーロッパ人も長いこと忘れていたけれども、15世紀頃に突然発見して、オレたちのルーツはギリシアにあるんだ、と言い始めた。でもね、これは、ギリシャとイギリスの場所は、とても遠いです。世界地図を見ると、ギリシャはここです(地図)。
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イタリアのローマはここです。イギリスはこの地図には入りきれないほど遠い。大英帝国のイギリスなんかは。イギリスは、スペイン、フランス、ドイツがあって、そのまた海の向こうです。そんなに遠いけれども、オレたちの故郷はアテネだという。遠すぎるけど、しかしそう言ったんです。そうだそうだと言って、ここで民主主義が定着したんだと。ここでホントに珍らしい古代民主主義ができたから、これがおれたちの御先祖だと。


ついでだから言うと、次に出てくるのが、ヨーロッパに入ってくるのがキリスト教なんです。イエス・キリストというのはみんな知っているでしょう。普通はこの人をヨーロッパ人と思っている。少し勉強した人でもローマ人と思っている。全然ちがう。エルサレムです。今でも政情不安で、爆弾がいっぱい飛んでいるところです。生まれたのはそこです。ここは3000年間、世界のヘソみたいなところです。そんなところが舞台になって、それがグルグル波及して回って、こうやってローマに行きつくんです。これには長い時間かかる。とても3分では言えないですけど、ザッと言えるところだけは言っていきます。

ここにはどういう社会で、どういう人が住んでいて、どういう暮らし方をしてて、その上でどういう事を考えたかというんであれば分かるけれども、教科書では、1番目、2番目を全部スッ飛ばして、はいこう考えました。それだけ言う。これでは分からないと思うけど、仕方がないです。あとでちょっと補足するけど。

元に戻ると、
ソクラテスが生まれたのは紀元前です。紀元前は「BC」と表示します。アテネ生まれです。主なものはアテネとスパルタです。これはポリスという都市国家が発生する。ギリシアは九州ぐらいです。九州に都市国家、つまり吉野ヶ里遺跡みたいなものが、100も200もいっぱい発生する。アテネというのはその中の一つです。ここの市いっぱいぐらいの小さな国家です。ソクラテスはアテネ生まれで、資料集には職業は無職と書いてある。プータロウです。なぜ? この社会は、働かなくて良かったからです。なぜ? これは中学校で習うでしょう。自分で働かずに、誰が働いているか。この社会は奴隷社会です。

アテネは市民と同じぐらいの奴隷ですけど、隣のスパルタなんかというのは市民が10人いたら、その10倍ぐらいの奴隷がいて、それを支配している。スパルタ教育というでしょう。スパルタ教育は厳しい教育の代名詞みたいですけども、筋肉ばかり鍛えている。なぜそんなに筋肉を鍛えないといけないのか。
あれは男も女もです。10倍の奴隷がいるから、自分たちがそれを支配しないといけないからです。つべこべ言っていたら自分たちが殺されてしまう。だからいつも朝から晩まで筋トレしている。そのスパルタが、このアテネのライバルです。
ソクラテスはBC470年生まれ。彼が生まれて20歳ぐらいのときに、ここは実はずっと戦争中です。アテネは小さいです。しかしその東には、今のイラン、当時はペルシアといいます。そこは大帝国です。それが攻めてくる。そのペルシアと約50年ぐらい戦って、前449年、そのペルシアとの戦争に勝利している。ここからです。ここからアテネの民主主義が発展していくんです。

なぜ戦争と民主主義が関係するかというと、戦争があると兵隊もいる。でもオレは死ぬのはイヤといって、戦争に行かなかった者には発言権がありません。戦争に行って戦ってきたから、一人前です。だから発言権がある。この人は哲学者だったから、発言権があるのではない。彼は戦争には行かなかったか。当然行きます。だから発言権があるんです。ただ彼はその時の民主主義をどう考えたかというと、結論的に言うと、おかしいと思いはじめた。
働かなくていいから、勉強もするんですね。学校というのはスクールというでしょう。スクールの語源は古代ギリシアにあって、これはスコラというんです。どんな意味か。これは「暇」ということです。学校は暇な人間が来るところです。今の学校と全然ちがいます。今の学校は忙しいけどね。ここ30年でますます忙しくなった。それは間違いない。でも、もともと学校は暇人の集まりです。ソクラテスは、勉強してオレは頭がいいという人間がいると、おまえウソつきだという。そんな人間をソフィストといった。ソフィスト。ソフィーというのは知恵です。オレは頭がいいと、自分で言う人間は、だいたいバカでしょう。自分で自分を褒めるのは、だいたいバカです。こういうのを詭弁家という。こういう人間ばかりではないかという。なぜそれが分かるか。話をしたら分かる、という。何でだ、なぜだ、違いは何か、こんなことをずっと聞いていたら、何も知らない人間だというのがすぐ分かるという。
ソクラテスは、オレも頭がいいわけではないけれども、オレとの違いは、オレは何も知らないということを知ってる。あいつらは自分が知ってないことを知らない。そこが違うんだといった。そういう自分が知らないということを知っていることを、無知の知と言った。知らないということを知っているという自覚です。
何を知らないかを知るためには、勉強しないとダメなんです。数学でも「分からなかったら聞け」と言われるけど、どこか分からないかが分からないということがある。どこが分かないかを分かったら、それはもう半分以上は知っている。自分が知らないということを知ってる、とはそんなことです。
それが学ぶことの出発点であって、それをフィロソフィア、知識を愛する、これが哲学だ、と言った。そういうことを自覚するためには、人と話していけばいい。自分1人で考えてもなかなか分からないし、さっき言ったようにバカな人間は話していくとすぐボロが出る。だから話さないと分からない。

彼の関心は、ただ知識を求めることではなくて、目的論があるんです。よく生きるということですよ。よく生きるというのは、やっぱり幸福論です。人間として幸福に生きるとはどういうことか。物ではない。心だということでしょうね。これをプシケーという。魂と訳されてますけど。これをよーく自分で見つめないといけない、ということです。

政治についても考える。政治を行う偉い人、日本の内閣総理大臣になるような人は知識だけじゃないといけない。やっぱ人間としての良さ。こう言っても分からないから、普通、これも英語に訳しにくいですけど、あの人はがある人だとか、人徳があるひとだとか。徳がある、人間的にいい人じゃないといけない。こういう発想をしたんですね。徳がない人はダメだ。人の上に立つ人間は知識だけでなく、頭のよさだけではなくて、徳がないといけない。この徳をアレテーと言った。外国の言葉はなにか難しく感じるけれども、アテネでは日常語ですよ。普通におじちゃん、おばちゃんたちが使っていた言葉、それがアレテー、つまり徳です。

徳がある人は、知識だけではないものを持っている。徳と知は一緒であって、徳は知であるという知徳合一、こうでないといけない。そして、それを知ったら知っただけではなくて、実際に動けという。口ばっかりの人間はいるでしょう。あれはダメだ。口では何とでも言える。知ったら行いなさいということを言った。これを知行合一という。それで初めて幸福と人格、これが一致するんだ。物じゃないということを言ったんだけれども、それで褒められたかというと、この絵がソクラテスですよ。
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これは何の絵かというと、毒薬です。裁判にかけられた。裁判にかけられて、この時代の裁判は人民裁判です。あとで裁判員制度のことも言いますけれども、普通の素人が殺人犯の裁判を判決したり、日本でも10年前にそういう裁判員制度がはじまったけど、あれはヨーロッパのマネです。総理大臣だって国民が選ぶんだったら、犯罪者の有罪か無罪かだって、国民が判断するという考え方です。

民主主義で、それを陪審というけど、普通のおじちゃん、おばちゃんたちが、訴えられたソクラテスを、有罪か無罪か、と裁く。そしてこんな奴は死刑だと、彼らが決めたんです。民主主義で。それでソクラテスは死んだんです。するとある弟子が、それはあんまりだろう、何も悪いことしてないのに。逃げたほうがいいですよという。しかし、死刑といわれた以上は死なないといけないじゃなかろうか、と言って、自ら毒杯を仰いで死ぬ瞬間です。まあこれはあとの想像図でしょうけど。そうやって死んでいった。彼は民主主義によって殺されたんです。ヨーロッパはこういう話をずっと受け継いでいく。

ソクラテス自身は何も言ってない。この絵のなかにいるかどうか知らないけど、ある弟子がいた。プラトンという人が。この人が自分の先生のことをずっと書いていく。今でも「ソクラテスの弁明」とかいろいろな本がある。今でも岩波文庫で400~500円であります。これを何千年経っても、ヨーロッパ人は読み継いで来た。途中で断絶はあるけど。それが日本にも伝わっている。

ソクラテスは、青年を惑わした罪で死罪になった。だから、頭のいい青年のなかには、ソクラテスが正しいと思う人はやっぱりいるんです、その中の一人がプラトンで、次に教科書に出てくる。だからソクラテスの次はプラトンです。ソクラテス、プラトン、アリストテレスという系譜が教科書に載ってます。ソクラテス、プラトン、アリストテレス、彼らが弟子です。年は30~40才ずつ違う。だからソクラテスも、次のプラトンも、民主制や、オレは頭がいいという職業教師、詭弁家、それに対して非常に批判的です。
民主主義というのは、人間の社会というのは算数と違って、100%というのは、いつの時代もないんですよ。8割がた良かったらまあ良い社会です。歴史を見てたら5点か10点の価値しかないような社会というのはよくあります。それが80点取るというのはすごいことです。100点というのはなかなかないです。





【補足 古代ギリシアのポリス】
では、ここからは今の補足になります。これをやるのは、君たちは去年、歴史総合をやったはずですけれども、それは近代以降でしょう。フランス革命あたりから。産業革命以降です。でもその前の歴史がずっとある。これは文系が「世界史探究」でやっているところです。高校レベルではあるけど、君たちは古代史を習ってないと思う。歴史があって社会があって、その上に政治学があって、最後に思想が出てくる、と私は思ってますから、これが分からないと、私はうまく説明できないですね。私はそんなに頭がよくない。君たちはこれだけで、すべて分かるという人も、中には居るかも知れないけど。

それでいくらかでも説明をしたいと思います。ギリシャの場所はさっき言いました。ギリシャの場所はここですけれども、アテネが中心です。しかしその前から、だいたいこれが、紀元前800年ぐらいからアテネのポリスが発生する。でもその1000年以上前から、もっと先の文明はあった。それがクレタ島です。ここに宮殿があった。この宮殿の名前も有名です。クノッソス宮殿といって、迷宮があって、そこに伝説があって、どんな人間か。体は人間、顔は牛、ミノタウロスという。これは伝説です。そういう王宮跡があります。これをクレタ文明といいます。
ギリシア本土には、ミケーネ文明というのもあります。ギリシア人というのは日本と違って、海に囲まれてないから、いろんな民族が混ざって来るんですよ。エルサレムあたりなんかは、もっとひどいです。このエルサレムというのは、こっちからも来るし、あっちからも来る。海からも来るし、山からも来る。ギリシア人はどうも北から南下してきたようです。どこにいたのかは、よく分からない。もともと今の白人、アーリア民族と言いますけれども。なんか中央アジアあたりにいて、インドに南下して行く者もいる。インド人は肌が黒いじゃないかと思うかもしれないけど、インド人で肌が黒のは南部の人です。インド北部の人は白人で、肌は白いです。3000年間で、混じりあっているんです。

この間のことは、ギリシア人が南下してきた後のことは、よく分からないけれども、とにかくポリス同士で戦争してる。伝説で一番有名なのはトロイの木馬のことは知ってるかな? 木馬の中に兵隊を入れて、敵の城門の中に入れて、バカが入れてしまったから、それでトロイは滅ぼされてしまった。それがトロヤ戦争です。トロヤというのは、このあたり(今のトルコ)にある。そういうポリスがいっぱいあって、しょっちゅう戦争してる。
このトロヤ戦争の始まりが何かというと、あまり人に言えないです。トロヤの王子が、人の嫁さんにちょっかい出すんです。そこからです。その嫁さんが王の嫁さんだった。それで王が腹を立てて、近隣の国家を巻き込む戦争になっていく。始まりからして、あまり道徳的ではないでしょう。この世界はとても道徳的ではない。もうルール無用の悪党みたいな感じです。この世界はヤワな世界じゃないです。物語は、おもしろ、おかしく書いてあるけど。

そういう戦争ばかりの中で、紀元前8世紀頃から敵が攻めてくるから、その防衛の必要から都市国家が生まれる。これをポリスといいます。訳すと都市国家です。これは国家です。吉野ヶ里などでも危ないから、周りに堀を掘っているでしょう。これはもっと強い壁です。エルサレムでもこれです。このなかに入りたかったら条件がある。戦争で逃げたら、追放するぞ。みんな戦うから安全になるんです。だからこの中に入りたくてたまらないわけです。
そういうポリスができたのが、紀元前8世紀です。始めは王様がいたみたいですけれど、どうもこの王様は役に立たなかったみたいで、殺されたかどうか分からないけれども、王政から貴族制に変わっていく。


【オリンポス12神】
ただ神様を祭るということはよくやる。うちの学校の南側には平野が広がっていて、小高い神殿はないけれども、ギリシアに行ってみると小高い丘がよくあるんですよ。その一番高い丘に日本でいう神社を建てる。アテネもそうです。これが有名なパルテノン神殿です。そこで神を祭る。神を祭って、神を祭ることをお祭りというけれど、日本の江戸時代まで政治という言葉はなかった。政治のことを「政りごと」という。これは何と読むか。「まつりごと」というんです。政治は神を祭ることからはじまるんです。お祭りと政治というのは、何の関係もないようでいて、実はとても関係がある。
それで神殿を祭る。うちの学校の北には山があって、山の近くに小高い〇〇さんという神社があるでしょう。川の横に神社があるでしょう。高いところに、神様はどうも上から降りてくる信仰というのは、世界共通みたいで、なるべく小高いところに神社をつくる。このあたりは山がないから、普通はどこまでも平地ですけど、それでも村があったら、村はずれには小道の参道があってその奥に神社がある。なぜかというと、昔の感覚では、神様が守ってくれなかったら怖くて怖くて、こんな無防備な村には住めないです。ぎりゃの様にギリシャのように実際に敵が攻めてくる。

アテネは、アテナという女の神様を祭ったんですが、その他の村々というか、ポリスは何十とありますから、それぞれ別の神様を祭っている。だから、ここはキリスト教と違って、多神教です。日本と同じです。神様はいくらでもいる。でもキリスト教は一神教です。キリストさんだけです(本当はヤーヴェです)。そのギリシアのなかでも有名なのが、オリンポスの神々です。下の図のこれだけいる。これだけいっぱいあります。
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一番偉いのは誰かというと、このゼウスです。この話も神話ですが、どういう神話かというと、日本とたいそう違う。ゼウスは父親から殺されようとする。するとゼウスはいくら父親でも、殺されはしないぞと、戦うんです。オレに味方する者いないか。オレにつくか、親父につくか。その結果これだけゼウスの仲間につく。それがオリンポス十二神です。それで勝ったあと、オレたちは仲良くやろうね、となった。
一番有名なのは、愛の神、美の神のビーナスでしょうけれども、これはローマ読みです。この神もローマにも行くんです。ローマもキリスト教の前は、ギリシアと同じ多神教です。
ビーナスのギリシアでの本名は何というか。知ってますか。アフロディーテという。これが本名です。愛の神アフロディーテです。昔の流行歌にもなっている。
こういうふうに、ギリシアの神とローマの神、ギリシアとローマ、これはもともと同じ神様です。そこに強引にキリスト教という別の一神教が入ってくるんです。そこで一悶着ある。

このビーナスの神話を読むと、これもメチャクチャです。ビーナスは結婚している。美の神だから独身かとばかり思っていたら、そうではない。相手は誰かというと、ヘファイストスというまじめな鍛冶の神です。結婚しているんです。彼は地味な神で、ただ一生懸命、刀を作る。やっぱり刀が出てくる。武器です。戦争と関係がある。しかしマジメだけがとりえで、面白くないダンナだ、と浮気するんです。ビーナスはよく浮気している。だから美の神とか愛の神になるんです。浮気相手が誰かというと戦争神です。この戦争神が大好きです。戦争する神なんてあるのか。これはどこにでもあるんです。日本だって武門の神様はいっぱいあるでしょう。君たちは知らないかな。これは日本では代表的なものは八幡神というんです。
日本三大八幡とは?八幡さまとは?日本一多い「八幡宮・八幡神社 ...

八幡さまは、これは戦の時に拝む神様です。どこにでもあります。これはどういうことかというと、ギリシャ世界は家族の絆がどうも弱い。親は子を殺そうとするし、嫁さんは浮気をするし、あまり日本人から見ると道徳的ではない。家族の絆が非常に弱い社会です。
しかも戦争も多い。家族の絆が弱くて、ギリシア神話は有名だけど、神の力も実は弱い社会です。ふつう、恐れ多い神様の姿は、恐れ多過ぎて彫らないんだけれども、この社会は神様も人間と同じように彫っていく。そして人間とあまり変わらないような扱いをする。神様が喜劇になったりする。笑い者になったりする。神様の力が弱いから、神に代わるものとして人間が中心になっていく。神様というのは人間の姿とまったく変わらなくなるんです。だからギリシャ彫刻を見て、これは人間だと思うと、いや神様だという。完璧な人間の姿が神様だという考え方です。だから絵に描いたような、八頭身のとても現実にはありえないような美しい女神の像を彫るんです。
ミロのヴィーナス - ニコニコMUGENwiki - atwiki(アットウィキ)

それがギリシア彫刻の美しさとも言われますけれども、逆に言えば神は人間と同等で、神様の力がどうも弱いところです。

しょっちゅう戦争があっているなかで、この12神がまとまっているでしょう。この12神を祭っている村々というかポリス同士で、4年に1回、盛大にお祭りするんですよ。それが行われるのがオリンピアという神殿です。お祭りの時には、実はスポーツをする。4年に1回。なぜお祭りの時にスポーツをするかということも、不思議なことではない。君たちはピンとこないかも知れないけれども、我々がハナタレの時分までは、日本の村々には秋祭りの収穫祭があっていた。これは私がハナタレの時に終わってしまったけど、そこには必ず土俵があって、そこで村の若い衆が集まって相撲大会やって、それはもう人で賑わって何百人という男女ふくめて観衆がやれやれワーワーと歓声を上げていた。そこで優勝したら村の超有名人です。相撲は裸です。誰に見せるためか。神様に見てもらうためです。これは神への奉納相撲です。
これは資料集にある。横綱の白鵬が土俵入りしている写真がある。相撲のルーツは神社での奉納相撲です。神事でスポーツとは変だな? 変じゃないです。どこの国でもこれはやります。もともとは奉納相撲です。それが変形して、100m走になったり、やり投げになったりするだけです。だからギリシャ人は素っ裸でやった。相撲だってまわし一つでやる。もともとこういう神事として行ってきたものです。今のオリンピックは、それをまた近代になって復活させた。現代オリンピックのモデルはやっぱりギリシア人気のなかで、古代ギリシャにあります。ギリシアは多神教です。日本と同じです。


【奴隷制度】
ただ、ここで民主主義が始まったとはいっても大きく違うのは、奴隷制社会であることです。自分は働かなくていい。近代民主主義のところで言ったように、奴隷になりたいから分かりましたといって、納得して奴隷になったわけではない。民族と民族が戦って、部族と部族が戦って、負けたほうはどうなるか。だいたい3通りあります。①殺される、②逃げる、③奴隷になる、この3つです。この3つ目がギリシャです。戦争があるところでは、これが必ずある。奴隷は2000年前の話じゃないか、と思いますか。ではアメリカの奴隷はいつまでいたか。アメリカはたった150年前まで奴隷制社会でしょう。南北戦争後になくなった。最近まで続いたんです。その始まりは戦争奴隷です。

もう一つは、アテネの場合は、お金が流通し始める。そのころ隣のリディア、今のトルコですけど、そこで貨幣が鋳造されて、それがギリシアにも流通し始めるんです。お金は結論的なことを言うと、お金は拡散しない。お金はお金のあるところに集まる。ないところには集まらない。お金のない人は借金する。借金したら首が回らない。首が回らないと、身売りする。身売りとは奴隷です。これが借金奴隷です。教科書的には、これを債務奴隷という。債務とは借金です。奴隷はこの2パターンです。でも不満を持っているから、さっき言ったようにスパルタなんかでは、いつ奴隷の反乱が起こるかわからない。不穏な状態です。奴隷の数は市民の10倍以上です。
だからスパルタ教育で朝から晩まで筋トレしている。これもひどいです。文系の世界史選択生の資料には書いてあるけれど、結婚していても、とにかく強い男の子を産むのが女の使命なんです。強い戦士にしないといけないから。そうじゃないと生き残れない。だから弱い旦那で病気がちだったら、種を別の男からもらっていい。ウワーすごいなと思う。どんな社会かなという感じです。今とかなり違う。


【民会】
アテネ社会はこの借金奴隷が中心です。でもかなりの数です。100人に1人程度じゃない。普通の市民は奴隷が働いてくれるから、自分は働かなくていいんですね。だから暇です。暇だから考える。学校がスコラになったように。暇だから朝起きて買い物に行く、公衆浴場があって風呂入りにくい。そして昼飯食って散歩して、隣のおじさんと世間話をする。今度誰を将軍にしようか、誰に票を入れようかと、そういう話をする。晩になってビール飲みながら、今度の選挙はどうしようかとか、暇だからそういう話をして情報を回していくんです。では誰が稼いでいるか。それは奴隷です。
実はそういうところで民主主義ができる。だから民主主義は、国民が忙しすぎると機能しない。これは分かるでしょう。朝から晩まで働いていていると、忙しくてなかなかできない。30年間で日本人の所得が落ちたでしょう。もう一つ、それに比例して落ちていくのが投票率です。土日も休みなく働いて、たまの休みに選挙か。オレは忙しい、という感じです。それで投票率が下がる。暇でないと民主主義は機能しない。暇というのは、けっこう重要な民主主義の要素です。そして考える時間も必要です。仕事以外のことも考える余裕も必要です。

アテネが民主主義の中心です。貴族政治です。ポリス間の争いがあるけど、ギリシアがペルシア帝国やローマ帝国と違うのは、領域を広げていかないことです。帝国を形成しません。ただ戦争があるというのは、城壁の外は危ないということだから、そこの城壁の中に住める条件は、戦争の時に逃げたりしたらつまみ出される。必ず戦争に参加すること。軍役がある。戦争と民主主義はこういうところで関係している。こういうのも歴史を見ないとなかなか分からないところです。

戦争があってるから、自分の国のことは自分たちで決める。その前に、自分のことは自分で決めるんです。自分の国のことは自分たちで決める。日本の安全はアメリカ軍が守ってくれるからそれでいい。そうでしょうか。ギリシャとはかなり違いますね。
それなら、自分の国を守るのは、自分たちしかないだろう、という結論に普通はなるはずですよ。民衆が自分たちで国を守る。では給料は? バカたれです。刀ちょうだい? バカたれです。自分で持って来ないか。何しに来てるんだ、バカたれが、という世界です。ぜんぶ自分でそろえるんです。自弁です。ここで給料とか何とかいうと、根本的に分かってない。市民として当然しなければならないことです。給料とかありません。だから農民というのは同時に戦士であって、戦士になるから市民になるんです。


これが民主主義の前提ですよ。普通の市民が、騎兵や貴族とともに戦いに行く。鎧兜は自分で準備する。そして盾を持って、槍を持って、隊列組んで、一二一二と行進する。これを重装歩兵といいます。
重装歩兵 - Wikipedia

騎兵というのは、もうちょっと偉い人です。馬に乗る人です。普通の市民は歩兵です。歩いていく。その前提に、こういうことをするから1人前であって、1人前だから発言していい、政治的発言をしていい、そういう民会を持っている。この民会というのは、もともとは戦士の集まりです。誰を将軍に立てようかとか。軍隊というのは、どんなに運動能力のある人間が100人いても、指揮官がバカで作戦ミスしたら全滅する。血筋がいいとか関係ないです。一番能力のある人間を自分たちが選ぶ。生き残るための知恵です。このための総会が民会の起源です。


【ペルシア戦争】
そこに、ペルシア戦争というのが起こる。ペルシアはギリシアの東です。アケメネス朝ペルシアという。広大な領域をもつ大帝国です。それがどころまできたか。アテネはここです。その目の前まで来た。あと少しです。戦うか戦わないか。やめなさいよ、勝てるわけないやん。イヤ戦うんだ、と言う。ここで戦うんですね。しかし490年、負けるはずの戦いに勝った。マラトンの戦いといって、アテネから北方に40キロぐらい。そこで勝ったんです。ある若者がその勝利を連絡しにアテネに走っていった。40キロぐらい。これがスポーツ名になっている。マラソンのルーツです。ここから来ています。あろうことかペルシャに勝ってしまった。

ここからアテネの繁栄が始まる、ペルシアがつぶれたわけではないけど、追い返したんです。ここから民主政治が繁栄していく。その全盛期の政治家をペリクレスといますけれども、この頃に、さっき言った470年ソクラテスが生まれます。その後の戦争にも行きます。ソクラテスが生きた時代というのは、こういう時代で、民主政治全盛時代なんだということです。

これで終わります。



授業でいえない「公共」 7話 プラトン ユダヤ教

2024-02-17 06:53:00 | 高校「公共」

【古代ギリシア】つづき
ギリシアのところですね。ギリシアは民主主義のルーツといっても、今とはかなり違っています。民主主義のルールというのは、中学校から聞いているように、キーワードでいうと自由平等なんです。
ついでだから言うと、この二つはイクオールではない。自由と平等というのは対立概念です。「自由にしていい」と君たちにいったら、この教室の40人はバラバラになる。北に行く者、南に行く者があって、帰る者もあったり、部活に行く者があったりで、自由にしていいぞというとこうなる。ここから違うことが生まれる。
しかし平等というのは読んで字のごとく同じことをして、同じになることでしょう。違うことと同じことがイクオールなわけがないです。これは全然違うことをいっているけど、当たり前のごとく「自由で平等」な社会という。これは実はものすごく難しい。違うことを両立するというのは。自由であれば自然と平等になるか。そうならないです。自由であれば差がつきます。今の日本のように。ここ30年の日本のように格差社会になる。貧富の差が広がる。
逆に平等にしようとすると社会主義になる。でもこれは働かなくなる。さぼる人間と努力した人間が同じ給料もらったら、昔のソ連みたいに、みんな働かなくなる。
自由と平等、これはぜんぜん違うことです。とても両立しがたいことです。

古代のギリシア社会というのは自由でもない。平等はまだ出てこないです。では民主主義がなぜ成立したか。それには条件があった。それが戦争に行くことだった。ここはポリス同士が戦う社会です。給料は、とかいうと、バカタレだったでしょ。軍役の義務を果たして、初めて一人前の口が効けるんです。そういう社会です。
というか、権利義務の関係は今だって同じです。権利というのは、基本的に義務を果たした人間だけの特権から発生します。もともとは一部限定のものです。お前はこれをしたから、これをしていいと。それが広く国全体に行き渡ったときに、この権利というのが憲法で保証されるようになるけど、そこまでいくには紆余曲折のカーブをいくつも回って2000年かかる。


そういうことを今説明してるんですけど、このギリシアは戦いの世界ですけど、そこに大きな敵が現れた。これがアケメネス朝といいますけれども、ペルシア帝国ですよ。ギリシアの「シア」とか、ペルシアの「シア」というのは国のことです。イタリアの「リア」も国のことです。「シア」も「リア」も似てるでしょう。ペルシアは今のイランです。ペルシアはこんなに大きい。アテネは、ギリシアはここです。こんなに小さい。

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ペルシアがどこまで攻めて来たか。ギリシアの目の前まで来た。これは勝てないだろう、イヤやるよ、という。そして大番狂わせで勝ったんですよ。これが前490年マラトンの戦いです。この戦いが、この地図で見ると小さいけれども、この縮尺が500キロぐらいです。九州と大阪ぐらいある。この距離感で見てください。マラトンというのは、ここらへんです。アテネから40キロぐらい北にある。勝ったぞ、勝ったぞという知らせを、早く嫁さん子供に知らせたくて、一人の兵士がずっと走って知らせに行く。その距離が40キロぐらいだったから、これがのちにスポーツ化してきますね。これがマラソンです。それがマラトンの戦いです。
オリンピックだってオリンピア競技でしょ、日本の奉納相撲と同じで、裸でふんどし一つで、フルチンでやったという話ですけど、これが100メーター走になったりやり投げになったりするだけの話しです。神様に見てもらうんです。そうやってこれがスポーツ化して、今のマラソンになった。この大番狂わせで、ギリシャが勝った。

ここからです。大敵ペルシアに勝ってギリシアの古代民主政治が始まる。紀元前5世紀です。その全盛期の政治家はペリクレスといいますけれども、ここから全盛期なんです。アテネが一番華やかな頃、しかし同時に腐敗していくのもここからです。ソクラテスが死刑になったのはこの民主政治が舞台です。ソクラテスが生まれたのが紀元前470年です。全盛期で生まれる。もともと民会はあるけど、これは戦士の総会だった。将軍を選ぶためです。バカを将軍に選んだら、戦争に負けて全滅するから真剣そのものです。

しかし働かなくていい社会です。奴隷制社会です。アテネでは人口の3分の1、人口の10倍のスパルタ程ではないけれども、人口の3分の1の奴隷がいる。市民も少しは働くけれども、きつい仕事はぜんぶ奴隷がしてくれる。その奴隷制度に基づく直接民主制です。これは今とはとても違います。少なくとも奴隷は自由でも平等でもない。それが社会の基盤にある。奴隷が働いてくれるから、市民には自由な時間ができる。市民が暇なんですね。暇だから勉強もするし、話し合いもする。政治的な情報も入る。槍の訓練もする。戦さがあればちゃんと戦う。これはソクラテスも同じです。別に哲学者だからといって戦争に行かなくていいわけではない。あの人の職業は無職と書いてある。それには奴隷制度が欠かせない。

しかし、こういった繁栄のなかで、アテネが中心になって軍事同盟を他のポリスと結ぶんですよ。軍事同盟というのは、日本とアメリカの関係を見てください。思いやり予算といって、名前だけ見ると福祉関係の予算かと思うけどそうではない。これはあとで試験にも出てきます。軍事予算です。日本が提供している思いやり予算というのはアメリカへの軍事予算です。すごい金額です。それと同じように、アテネは周りのポリスからお金を集めて、デロス同盟という、世界史の教科書には出てくるけれども、軍事同盟の基金を集める。敵が攻めてきたとき、この金を使うからといって、年に10万円ずつ持って来いというけど、しかしそれを勝手に着服する。その金で、自分たちのパルテノン神殿をつくったりする。すると周りのポリスは、なんだあいつは、自分で集めて自分のポケットに入れてと。それで反アテネの機運がギリシャで高まって、あのアテネをどうにかするは、あんたしか頼りはいないとスパルタに頼む。この反アテネの中心がスパルタです。あのスパルタ教育のスパルタです。それでアテネとスパルタが対立していく。だからこのときのアテネは金銭的に腐敗している。ここらへんは今ととても似ています。

もう一つは、政治が投票で決まることです。投票で決まる。いつか言ったように、日本はここ30年間、GDPもG7で最低でしょう。賃金上昇率も最低です。今年の正月ぐらいからやっと雑誌とかで言い始めた。前々からも少しは言っていたけれど、何か言ったらいけないかなという禁句みたいなところがあって、そんなに大きく言われなかった。しかし30年間最低です。今はこういう政治です。政治がうまくいってない。

政治家が悪いとすれば、ではバカな政治家を選んだのは誰なのか。バカな国民だろうという話になる。民主主義のルールは必ずそうやって自分にはね返ってくる。ご多分にもれず、アテネもこういう衆愚政治に陥る。この衆愚の意味は、「衆」は皆の衆の衆です。衆議院の衆でもある。それが愚かになる。皆の衆が愚かになる。そうなるとの愚かな政治家がでてくる。そして民衆にウソを言う。民衆はそのウソにダマされる。政治家はホントはきついことも言わないといけないけど、甘い言葉ばかりで、善人の振りをして民衆をだまして当選する。民衆もそれに気づかない。これも今のどこかの国と同じようなことです。こうやって歴史は繰り返すんです。そういう人たちのことを扇動政治家という。民衆を扇動するんです。原語ではデマゴーゴスという。デマゴーグというと扇動政治のことをいう。デマをいうなのデマとはどこから来るか。この「デマ」ゴーゴスのデマです。今でも生きてる言葉です。あいつはデマばっかり、デマ太郎といわれる政治家もいるけど、こういう人間がいっぱい出てくる。

それでアテネとスパルタが戦う。これがペロポネソス戦争です。ペロポネソスというのはギリシャの地名です。紀元前430年から30年間ぐらい戦う。ソクラテスが生きていた時、兵隊に行って戦ったのは、これです。ソクラテスは殺されずに戻ってくるけれども、アテネはこの戦いに負けた。そこからアテネのポリス社会が没落していく。アテネがギリシアの東京だとすると、この東京が腐敗していくようなものです。こんなところにいられるかと言って、みんなアテネを捨てて、ギリシアの田舎の方、今の日本ではいえば東京から九州に、有能な人間が移動する。ここでは北方に逃げます。この北方の国が、それまでのギリシアのなかでは田舎だったけれども、急に強くなっていく。これがマケドニアです。マケドニアというのはギリシアの北方にある。(地図で)これはアテネでしょ。ギリシアでしょう。アテネでしょう。マケドニアはここです。もともとギリシアの一部です。アテネが東京だとすると、マケドニアは九州です。ここがどんどん強くなる。
そしてそこに若き大王が出てくる。これをアレキサンダーという。ギリシア語でアレクサンドロスという。東のイスラム圏になると、これは別の高校にいたとき誰かが知っていたけど、イスラム圏ではアレキサンダーを何というか、知ってますか。イスカンダルという。昔の「宇宙戦艦ヤマト」の歌に出てくるけど、これは君たちは知らないでしょうね。そういう漫画があったけど。そのアレキサンダーが、アテネなんかつぶしてやると、真っ先につぶすんです。これでアテネ崩壊です。


そして、ものにはついでだといって、征服を続ける。どっちに行くか。もし西の方に行けば、そこではローマが繁栄し始めてます。そうなればローマはつぶれてますけど、アレキサンダーそっち(西)に行かずに、逆に東に行った。東方遠征です。そしてここ(地図)まで来た。インドの入口まで。インダス川というのは「インドの川」の意味です。アルファベットで書くと分かりやすいけれども。
するとその遠征に危機を感じて、今まで国がなかったインドに、初の王朝マウリア朝というのができたりします。これが紀元前4世紀です。アレキサンダーが東方遠征に向かったのが前334年です。仏教のおシャカさまはすでに生まれてます。
その過程でギリシアでは民主政治が崩壊していく。あとはこのアレクサンドロス大王の東方遠征になっていくということです。

ソクラテスが生まれたのが前470年です。そして青年を惑わしたという罪で死刑になったのが前399年。アテネがペロポネソス戦争(前430年~)に負けたころです。この間の前427年に、弟子のプラトンが生まれています。ソクラテスのことを書いていくのは、弟子のプラトンです。プラトンは次に出てきます。そのプラトンのさらに弟子格に当たるのが、アリストテレスです。マケドニア出身です。頭が良くて、アレクサンドロス大王の教育係をした人、前384年にアリストテレスが生まれます。このアリストテレスは九州のようなマケドニアで生まれて、東京にあたるアテネに行きます。でも変なところだと思う。そこでソリが合わずにアテネを追放される。そしてマケドニアに戻る。その後、マケドニア王のアレクサンドロスがすぐアテネを潰していく。そういう流れになる。でもアテネは美化して語られています。
教科書にも衆愚政治のことも書かれていますが、あまり強調されません。でも民主政治には衆愚政治がつきものです。民主主義は外側からつぶされるんじゃない。民主政治が腐るのは内側からです。それは2000年も前からが分かっていることです。これは我々日本人にとっても人ごとではありません。
ここではまずこの3人を覚えてください。ソクラテス、プラトン、アリストテレス。
アレクサンダーは、さらにアケメネス朝ペルシアを征服して大帝国を建設していきまが、すぐに崩壊します。


【プラトン】
ソクラテスを受け継いだ哲学者がプラトンです。前427年生まれです。ペロポネソス戦争の頃です。この世界は神様の力が非常に弱いんですね。王様が殺されたりすると、王様が拝んでいた神様も一緒に殺される。それがこの地域の特徴です。そういうことが繰り返されると、神々が零落していくんです。それで神様への信仰よりも、現実的な人間の考えを大事にするようになる。そこで理性が発達する。自分の理性で考える。自分の理性でとらえるのが本当の世界だという。そしてこれをイデアという。日本人から見ると、難しい言葉のように思いますけれども、普通のギリシアのおじちゃん、おばちゃんたちが使っていた言葉です。イデアはアルファベットで書くと、Ideaでしょう。英語読みしたら何ですか。アイデアでしょう。これはアイデアのことです。
このイデアの最初の2文字のIDというのがIDカードなると今の自己証明書になる。アイデンティティのIDもそれです。アイデンティティのアイディアです。つまり、アイデアがない人間は、自分で自分を考えない人間は、アイデンティティを確立できない。人間は、人のことを考える前に、まず自分のことを見つめないといけない。考えきれないと、人間はウソをつくでしょう。そのウソの付き方は防衛機制といって、すでに言いました。19世紀の心理学者のフロイトが言ったことです。いろいろな防衛機制がある。合理化とか逃避とか。


人はなぜウソをつくのか。人がなぜ人にウソをつくか。そうじゃなかったでしょう。人はまず自分に対してウソをつく。自分の心に対してウソをつくんです。そしてそれに気づかない。だから人にもウソをつく。気づかないまま、防衛機制とか白昼夢とか、ごまかしながら、どうにか自分の心のバランスが崩れないようにしていく。半分いい面があるけど、それをやりすぎると、あいつはウソつきだとなる。あいつの言うことは耳半分で聞いておけと。いやこれは人のことではなくて、みんなやるんですよ。自分のこととして聞いてください。ああオレがやってるのはコレだなとか。こんな自分を見つけるのは非常に嫌なことです。自分で自分の心を知るというのは。オレはこんな奴なのかと思うのは。


今いってるのはイデアのことです。このイデアを求める心、そこにたどり着きたいと思う心、これがなんとエロスなんです。今エロスというと、エロ・グロ・ナンセンス、それとは全然違う。今のエロスというと、変態みたいな、いやらしいことでしょう。もともとはそうじゃないです。エロスというのは。

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この絵が、年取ったプラトンです。右の若い方がアリストテレスです。象徴的です。どこを見るか。まず二人の手です。プラトンは上と言った。アリストテレスは下と言った。イメージはこれです。イデアは上にある。心にある。アリストテレスはこれと違って下です。今でいう自然科学的・理系的な発想をしていく。プラトンは文系的というか、よくプラトニック・ラブというでしょう。非常に美しい男女の恋愛を、プラトニック・ラブと。プラトニックとは、どういう意味ですか。プラトン的なと言う意味です。プラトニック・ラブというのは、このプラトンから来ます。

政治についても言っています。彼は民主主義の時代に生まれたけど、自分のお師匠さんのソクラテスは、この人が若い時に、青年をたぶらかした罪、惑わした罪で死刑になった。弟子から逃げませんかと言われても、人が死ねというんだったら死んでやるよと言って、毒杯を仰いで死んでいった。そういう話を書きとめたのがプラトンです。

だからプラトンはあまり民主主義がいいとはいってない。いい政治は民主政治ではない。哲人政治だといった。哲学者のような、よく考える人がやる政治がいいと言った。しかもその哲人には、人間としてのがないといけないという。師匠のソクラテスは、これをアレテーと言った。日本もそうで、最高の日本人の褒め言葉は、あの人は人徳があるとか、人徳があるから人が集まってくるとか、そんな言い方をする。これは最高の褒め言葉です。
人徳がある人というのは、そういうことを含めてよく物事が分かって、徳があって、そういう人を哲人として、彼はこういう人による政治が最高なんだと言った。ということは、民主主義を少なくとも褒めてないです。
ただ、この哲人をどうやって選ぶか、これは謎です。これが分からない。ただ中国人も同じようなことを言う。中国人も、王たるものは、ただ知識があるとか、頭がいいとか、お金を持っているとか、それだけじゃなくて、この徳が必要なんだという。そういう点では昔は共通していたんです。


ヨーロッパは一言でいうとこういう徳のある政治に失敗したんです。ロクな王が出てこない。しかも奴隷を認める社会です。それで民衆の信用を失う。だから人による支配はやめたという。これは何ですか。今の社会はこれでしょう。法治主義でしょう。すべて法律で決まってる。憲法で決まっている。これがいいんだと言う。
ヨーロッパは、徳知主義という、徳のある人間による政治をやめた、というより諦めたんです。江戸時代の日本はそうじゃなかった。「大岡裁き」とか言うでしょう。知ってるかな。人を見て裁く。おまえは貧しいなかで一生懸命働いていた。確かにりんご1個盗んだことは悪いことだが、それは病気の母親に食わせるためだったから、罪は問わないとか。そういうのが日本人好みなんですけれども。法でしばったら、リンゴ1個につき懲役10年とか、決まった通りしないといけない。善人とか、悪人とか関係ない。そういう社会に変わっていく。


【アリストテレス】
次にアリストテレスです。マケドニア生まれで、王子のアレキサンダーを教える。アレクサンドロスでもいいです。この人は、質量的なものが大事なんだと言った。物質的なもの、これが大事なんだと言って、非常に自然科学的な発想をしていく人です。
このアリストテレスは、政治的には何と言ったかというと「人間はポリス的動物である」と言った。この言葉は有名です。ポリスというのは都市国家です。国家なんです。これは前の教科書もそうだったけど、社会的動物であると変わった。でも50年前、我々はこう習った。「人間は国家的動物である」と習ったんです。最近、この国家という言葉を使いたがってない。国家ではなくて、社会という。しかしポリスは都市国家という。ポリスは社会じゃなくて国家の一種なんだと私は習ったし、今でもそう思ってます。しかし教科書にこう書いてあるあるから、社会的動物であるということです。
ここでギリシャは終わります。






【ユダヤ教】
次にユダヤ教に行きます。ここは宗教です。世界の人口は70億人です。キリスト教徒は何億人ぐらいか。ちなみに仏教徒は5億人です。日本人も含めて。神道は日本人だけです。1億人です。仏教徒は5億人。東南アジアのタイとか含めて。それに対してキリスト教徒は24億人もいる。
日本は前に言ったように八百万神で多神教です。でもキリスト教は一神教です。神様は一つしかない。それ以外の神はぜんぶ邪教です。邪教を信じる人間は魔女裁判で縛り首です。ヨーロッパの歴史では、こんな裁判がいっぱい起こる。フランスのジャンヌ・ダルクだって、英雄として祭り上げられたかと思うと、最後には邪教を信じる魔女だといって吊されていった。ガリレオ・ガリレイだって、それでも地球は回るといって、太陽が回っているんじゃない、地球が回っている、と言っただけで裁判にかけられた。キリスト教の価値観にあわないものは邪教にされる。つまり他の信仰を許さない。これが一神教です。この一神教にキリスト教の他にもう一つあって、それがイスラム教です。これは次に言います。イスラム教徒は20億人です。この二つの一神教で軽く世界の人口の半分を超えている。だから教科書に取り上げてある。

日本人の考え方と、どっちがいいとか言っているんじゃないですよ。これはとても違うんです。これをすぐに理解するのはちょっと難しいという。でも教科書に書いてあるのはこれだけです。でもキリスト教はそれ単体で突然生まれたんじゃない。その前段がある。母体がある。その前の宗教をユダヤ教といいます。

このユダヤ教というのがまた複雑で、これはユダヤ人の宗教です。ユダヤ人は国家を持たずに2000年間、世界をさまよってきた民族なんですが、今から80年前に初めて2000年ぶりに国をつくったという民族です。でもこの話、これだけでは分からないでしょう。これには3000年の歴史があって、これを3分で言うことは私にはできない。
80年前に国が2000年ぶりにできた。これがどこですか。中東のどこですか。イスラエルですね。世界でいまも一番、爆弾が落ちているところです。民族紛争があって、壁でさえぎられて、紛争の絶えないところです。今も世界のヘソです。そのイスラエルです。そこで発生したしたのがユダヤ教です。それを母体としてさらにキリスト教が生まれます。

この信仰は独特で、世界初の一神教と言っていいでしょう。ここで一神教が発生する。世の中に神様は一つしかないと。この神をヤハウェという。これは読み方が分からないけど、いろいろ書いてあって、ヤハウェとか、ヤーヴェとも書いてある。ヘブライ語、つまりユダヤ教の言語というのは、文字に母音がないんですね。YHWH、子音だけでこう書いてある。何と読むか、母音がないから分からない。たぶんヤハウェだろうということです。世の中の神はこれだけです。いや他の神様、八幡さまとか天神様とか、いっぱいあるじゃないかと日本人は思う。でもこれらはすべて邪教になります。
こんな奴は生かしておけない、人間じゃない、だから殺せるんです。邪教を信じるのは人間じゃないから、犬や猫と同じように殺していく。犬と猫を殺しても罪にはならない。だから邪教を信じる人間はそれと同じだから殺していく。インディアン、アメリカのインディアンなんかもそうです。アメリカの黒人はアメリカの原住民じゃないですよ。アメリカにもともといた人たちはインディアンで、私たちと同じ黄色人種です。彼らはどんどん殺されていく。コロンブス以後は、そういう歴史がある。

ユダヤ人は流浪の果てに、それに耐えながら、こんな厳しい思いをしながら、絶対自分たちを救いに来てくれるくれる神が出てくる、という信仰を持ちます。これを救世主という。これをユダヤ語でメシアといいます。ついでに言っておくと、ユダヤ語ではメシアなんですけれども、ギリシア語ではこれをキリストというんです。こうなると次のキリスト教の話になります。こうやってずっとキリスト教と関係してくるんです。

神の教えと言うのは、我々日本人は神様というのはあの世を支配するものだと思ってますけれども、一神教はあの世を支配する神様だったら、この世も支配するんです。この世のルールはぜんぶ神様が決めていきます。これはイスラム教もそうです。それが経典の「クルアーン」に書いてある。だから1日5回拝めと書いてあったら、イスラム教徒はちゃんと1日5回拝む。いやウチに帰ってから拝めといっても、イヤ何時に拝め、とちゃんと書いてあるからそうするんです。そういう決まりを律法という。

このユダヤ教が最初にできたのは、話せば長くなるけど、彼らがエジプトに住んでいたときに、奴隷だったから嫌になって脱走する。それ率いたリーダーをモーセといいます。この人が脱走の途中で突然、神の言葉を聞いて、10の決まりを聞いたんです。この10の戒めをモーセの「十戒」といいます。
この第一番目に、オレ以外の神を拝むな、と書いてある。言葉は違うけど、正確には資料集を見てください。これが第一番目にくる。次に神様の像を彫るなという。いやキリスト教はキリストの像を彫って拝んでいるじゃないか。そうなんです。キリスト教はこれを破ってます。だからユダヤ教とキリスト教は非常に仲が悪い。なぜ偶像崇拝がダメか。神聖なものは恐れ多くて、とても人間が形にできるようなものではない、それは恐れ多いことなんだ、という信仰があるからです。しかしキリスト教はこれを拝みます。そこらへんがキリスト教はなかなか一筋縄ではいかない。

ユダヤ教には聖典があります。日本の神道には教えがありません。パンパンと手を叩いて、ただ純真に拝みなさい、です。しかしユダヤ教にはちゃんと本があります。これを旧約聖書といいます。1冊かと思って買ったら20巻もあった。とても読めない。ちょっと読んでみるかと思って1巻を開けたら10分で眠ってしまった。スヤスヤと深い眠りに陥ります。とても気軽には読めないです。しかし解説書で読むと、最初に出てくるのが「アダムとイブ」の話です。これは知っているでしょう。食ったらいけないリンゴの実をイブが食ったから、楽園を追放されたと。


そこまではいいけど、そこで神はいうんです。おまえたちの子孫をずっと呪ってやると。ウワー、やめてよ、という話です。ユダヤ教では人間の祖先は、このアダムとイブなんです。私たち人間の祖先は、楽園を追放された罪人なんです。そしてその子孫は未来永劫に呪われるんです。すごい話です。だから原罪、人間にはもともと罪がある、ウワー、やめてよ、という話です。私のご先祖さんがこういう神様だったら、とても拝めようにないけど、聖書にはそう書いてある。そういう人間観や世界観がユダヤ教の根底にはあります。

では人間としての正しさとはどこにあるかというと、アダムとイブは神様ではないですよ、ヤハウェという、人が見たこともないような神様がいて、その神様が我々人間の決まりを作ったんです。どうやって作ったんですかと、聞かないでください。私には分からないから。そういうことは、モーセに聞いてください。彼が神の声を聞いたと言うんだから。ホントですかと言わないでください。私には分からないです。彼らはそう信じてきたという話を言ってるだけです。そしてこういう人たちが24億人もいるということを言ってるだけです。そういう信仰のない私には分かりません。そして神が作ったこの律法を決まりをきちりと守れという。
守らない人間は地獄に落ちると。彼らを救わなくていいのかというと、当然だろうという。救われるのは信仰を守ったオレたちだけだと。ユダヤ人だけだと。これが宗教上の約束になっている。これを選民思想といいます。だからこの世で救われるのはユダヤ人だけです。これが選民思想です。ユダヤ人以外にも全世界に人がいるけど、それは知らない。
これは何の話しかというと「ノアの方舟」の話があるでしょう。善良なノアがいて、大水が起こるから、彼にだけ事前に教えて、そこにお猿さんとか猫さんとか集まって、助かった話ですけれども、子供に聞かせるような易しい話になっているけど、ではその方舟に乗らなかった他の人はどうなったのか。その人たちは死んだんでしょ。ぜんぶ死んだんです。だから人類は全部このノアの子孫だとなっている。これが選民思想です。

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こういう話の舞台になる場所ですけど、ローマではないです。イスラエルです。さっきアテネを言ったけど、アテネはギリシアでしょう。このあとキリストさんが生まれて、キリストさんはどこの国の人かと聞くと、イギリス人と答える人が何人かいる。少し勉強した人で、古代ローマの人だという。ちがう、ちがう。イエス・キリストさんは、ここイスラエルで生まれた人です。だからヨーロッパ人ではないです。今の舞台のイスラエルはここです。これを拡大したのが下の図です。戦後の地図です。舞台はここです。ヨーロッパではない。ユダヤ人の活動もこのイスラエルです。キリストさんもここイスラエルです。このキリスト教がグルグル回って波及してローマに至る。そういう流れになる。

さっき言ったけれども、このユダヤ人が2000年間、国を持たずに、、、、この国を持たないということがまた日本人には分からないですよね。例えば、君たちに子供ができて、そのときに日本が滅んで、その子孫が日本という国がないまま、世界を流浪して2000年後、オレたちは日本人だと思うと思いますか。普通は思わないでしょう。こんなことができたのはユダヤ人だけです。そして約2000年ぶりに、戦後の1948年にユダヤ人がイスラエルを建国した。
では2000年の間に、ここには誰も住んでなかったのかというと、ちゃんとアラブ人が住んでいるんです。おまえたちは、どけ、という。だから彼らアラブ人は難民になる。だから戦争が起こる。これがアラブとイスラエルの対立です。しょっちゅう爆弾が落ちている。今も世界のヘソです。

このユダヤ人の歴史を言います。


【ユダヤ人の歴史】
そういう長い話になるんですけど、そのことを補足します。ユダヤ人はヘブライ人ともいいます。この人たちはもともと遊牧民です。ラクダに乗っている人たちです。迫害されて社会の底辺にいた人たちで、一時エジプトに行っていた。この地域は島国の日本と違って、言葉が違う顔つきが違う異民族が、東西南北、あっこっちからくるんです。すると、おまえたち、どけ、となる。それで戦う。勝てばいいけど、負けたら殺される。または逃げる。そうでなかったら奴隷になる。それで奴隷のように扱われて、エジプトに行っているんです。エジプトの東がメソポタミアといって、古代文明の発生地です。非常に近いです。ここがメソポタミアで、今のイラクです。エルサレムはその西のここです。九州と大阪ぐらいの距離があります。今このエルサレムにいて、さらにエジプトに行った。

こういったところでは民族が興亡して、都市国家がつぶれていく。滅ぼされていく。王がつぶれていく。そうするとそれといっしょに神様も殺されていくんです。国もろとも神が滅びます。そういう神殺しがけっこう多くて、トーナメントで優勝したチームの神様だけが生き残るような構造があるんです。そういう構造が一神教が生まれる母体です。戦いの多いところは王が殺されると、国が滅んで、さらに神の殺害も起こっていく。そういう地域で、彼らユダヤ人がエジプトで見たものは何か、ということになります。
では終わります。



授業でいえない「公共」 8話 ユダヤ教 キリスト教

2024-02-17 06:52:00 | 高校「公共」

【ユダヤ教】つづき
キリスト教のところですが、キリスト教は突然、出現したんじゃなくて前段があったんですよね。それがユダヤ教です。このユダヤ人は全世界で1000万人ぐらいで、日本の人口の10分の1ぐらいしかいないけど、何かと有名な人たちですよね。1番有名なことは、人口の割にはダントツのノーベル賞受賞者がいる。アインシュタインとか。その他にも前に言った心理学者のフロイトというのも、ドイツ人またはオーストリア人として出てくるけれども、本当はユダヤ人です。そういう人達です。そして今の世界の金融界を動かしているニューヨークのウォール街には、非常にお金持ちのユダヤ人が多い。あまり触れるとやばい世界になっていく。ここらへんは言い方が難しいです。その1面、第二次大戦ではドイツで何万人と虐殺されたりしてる。

このユダヤ人というのは、今から3000年前から登場します。3000年の歴史があります。前にも言ったように、それを3分でしゃべれというのはちょっと無理なんです。しかもとても複雑です。でも避けて通れるかというと、私はこれが分からないと世界史は分からないんじゃないかと思う。世界のヘソみたいなところです。


【ヘブライ人】
ユダヤ人、と今では言うけれども、歴史的にはヘブライ人という。もともとその場所は、この舞台は、この地図でみると、ここは地中海です。そしてここにギリシャ、その西にローマがある。エルサレムはずっと離れていて、ここです。
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ここがユダヤ人の舞台です。今も爆弾がいっぱい飛んでいるところです。民族的にも、ものすごく複雑です。イエス・キリストさんが生まれたのもここです。ユダヤ人だろうと言われる。これもユダヤ人というとキリスト教徒が怒ったりして、とても言いにくい。ユダヤ人か、ユダヤ人と一緒に住んでいた人です。イエスの舞台もここです。これを拡大したのが下のパレイチィナの地図です。世界の中心は、ここらへんですよね。


ここにアルプス山脈があって、その北にフランス、ドイツがある。ここは田舎です。さらにこの田舎の向こうに何があるかというと、それがイギリスです。中国人や朝鮮人が日本を見るのと同じです。大陸から見たら、日本は海の向こうの田舎の島国です。それと同じ島国のイギリスが歴史のなかで、近代市民革命を真っ先に起こしていく。さらに産業革命を起こしていく。そして大英帝国になって、七つの海を股にかけていく。早い話、君たちがなぜ英語を学ばないといけないか。英語はパスポート言語になっている。どこに行っても英語ができればだいたい通じます。だからパスポート言語みたいになってる。それは、世界全体がイギリス中心に動いていった時代があるからです。


ユダヤ人は複雑です。キリスト教は、エルサレムから、ローマに行って、さらにヨーロッパに行く。そういう3000年間の流れになります。このエルサレムはキリスト教の聖地でもあるけど、その前にユダヤ教の聖地でもある。さらにもう一つ、これは詳しい理由は言わないけど、イスラム教もオレの聖地だと言う。だから3つの宗教の取り合いです。今私たちがいるこの町よりももっと狭い。もともとは1キロ四方というから、1キロといったらちょっとです。そこに四つの宗教の聖地が密集してる。そういうところがエルサレムです。

ここら辺の事情は、日本人の海に囲まれた島国とたいそう違って、いろんなところから、いろんな人が攻め寄せてきて、土地のぶんどり合戦になります。エルサレムの東のメソポタミア地方、そこのバビロン、ここも民族の興亡の地です。都市国家がいっぱいあります。このような都市国家はギリシアだけではないです。
都市に他民族が攻めてくるとどうなるか。3つ言ったでしょう。戦って勝てばいいけど、①負けたら殺される。②殺されるのがイヤだったら逃げる。③逃げ遅れると奴隷になる。だからここは奴隷制社会です。そこで都市国家がつぶれると、まず王がやられます。王がやられると、王が崇めていた神様もやられます。こうして神殺しが起こっていく。

その点、日本はどうするか。近くの○○町から来ている人は知っているでしょうけど、そこに国府跡の公園ができた。あそこは今でいう古代の県庁があったところです。国府跡の国庁がある。1300年ぐらい前の奈良時代の。そのときの国司というのは今の県知事ですが、彼らは中央からやってくるお役人で、今の転勤族です。彼らが現地について真っ先に何するか。国府の近くに神社を祭って、この神社のなかに、県全体からも、郡部からも、田舎の神様をぜんぶ並べて神様を祭る。これを「総社」という。こういう名前の神社もあります。国司がまず第一にすることは、そこにお参りすることです。こうやって神を殺さない。これで神が鎮まって、県全体をちゃんと守っていく。国司はそれに祈りをささげる。
でも世界ではそうじゃない。まず敵の神を殺します。だからよく神様が死ぬ。神が死ぬという意味はそういうことで、日本ではそういうことをしないから、このことの意味がなかなか分からないのです。向こうはけっこう厳しい社会です。だから奴隷制社会が発達します。

この古代民主主義社会というのを、1700年代ぐらいから、イギリス人はじめ、それを社会のモデルにしていったんですが、民主主義をモデルにしていったということは分かるけれども、民主主義社会と奴隷制社会というのはつながっている。古代民主主義はそうでした。だからイギリス人は、奴隷制社会を否定しませんよ。イギリス人がアメリカに移民していくと、アメリカは奴隷制社会になり、今度は奴隷をアフリカから連れてくる。これが黒人奴隷です。今でもアメリカは、白人と黒人でものすごい人種対立があってます。バイデン政権になって、今のアメリカは一説によると内乱状態という話があって、うまく機能していない。日本もそうですけど。あのデフォルト危機も、5月末にアメリカが破産の危機だというのも、表のニュースであっている。アメリカが破産する、破産、、、、いいです、この話はまたにします。

アメリカの奴隷制は1860年代まで続く。廃止されてまだ200年も経たない。奴隷制がなくなったのは2000年前じゃない。200年前までバリバリの奴隷制でしょう。これをダメじゃないかという大統領が有名な誰ですか。奴隷制を廃止したというのは。これがリンカーンです。明治維新のころです。西洋はそういう世界の出来事です。


【エジプト】
ユダヤ人というのは、もともとラクダに乗った人たちで、昔はあまり豊かな人ではない。このころには半ば奴隷としてエジプトに逃れている。エルサレムはエジプトにも近い。東はメソポタミアです。南にエジプトです。どっちも昔は4大文明といっていたけど、今はあまり言わないけれども、メソポタミア文明、エジプト文明は、文明が一番進んだところです。どっちにも行けるんですよ。エジプトにも行って、そこで見たものは何かというと、エジプトもこれと同じです。よく神を殺します。

はじめて、世の中に神様は一つだと言ったのは、エジプトに一神教をつくった王様がいて、アメンホテップ4世という。自分が崇める神様だけの世界にしようとした。こういう神様はふつう全知全能の神というけど、これはどういうことかというと、ふつうは「あの世」を治める。日本の神は「あの世」だけです。でもこの神は「この世」も治めます。神のルールで。それから「現在」も治める。「未来」もです。「過去」だってそうです。すべてです。神のルールがすべてを支配する世界です。でもこんな神様は日本にいないでしょ。我々にはちょっと想像できない。でもこれが全知全能の神です。そういう一神教の世界の話をしています。

しかしこれは最初はうまく行かなかった。最初の一神教の神様をアトンという。なぜこんなことが分かるかというと、自分の名前がイヤになって、アメンホテップはイクナ・アトンと名前を変えた。アトン神を崇めるという意味の名前に変えた。
アクエンアテン(アメンホテプ4世)の胸像

もともとは、一文字違いですけど、アメン・ホテップというアメン神をあがめる王だった。しかしそのアメン神を信じる神官と対立して、それとは別のアトン神だけを拝もうとしたんです。そういうことをやったんですが、だがどうも失敗しいてる。なぜそれが分かるかというと、次の王様の遺跡が発掘されて黄金のマスクが出てきた。これがとても有名になったツタンカアメンです。聞いたことないですか。ツタンカ・アメンです。
エジプト】世紀の大発見!ツタンカーメン王 - クラブログ ...

アメンが復活している。王様の名前が、アメンが一緒でしょ。アトン神と言っていたのに、アメン神が復活している証拠です。だからアトンの一神教は失敗しているんです。


【出エジプト】
最初はどうも失敗作なんですが、これをユダヤ人はエジプトで見ていたらしくて、一神教はどんなものかという知識はある。でも奴隷でしょう。それがイヤになって逃げる。エジプトを脱出する。何千人とも何万人ともいわれるけれども、その脱出のリーダーをモーセといいます。この事件、このエジプト脱出事件のことを「出エジプト」という。これは紀元前13世紀、今から3300年前に起こったことだろうと言われます。そう旧約聖書に書いてある。
その脱出途中で不思議なことに、この人は、突然この一神教の神様から10の戒めを聞く。これを守ったらお前たちは幸せになると、そういう神のお告げを聞く。これを10の戒めだから「十戒」といいます。その10の戒めの一番目に何と書いてあるか。「他の神を拝んではならない」、と書いてある。オレだけ拝めと書いてある。これが一神教の成立です。

十戒(1956) : 作品情報 - 映画.com

これは映画にもなって、けっこう有名なシーンです。資料集にも出ています。時々資料集を見ます。でもこれを扱う時間はあまりありません。資料集は1ページからキレイに読むものじゃない。君たちが時々拾い読みすべきものです。上の写真は50年前の映画です。エジプトから逃れていくときに、どこか分からないけど海があって先に行けないから、モーセが出てきて「神よ力を、海よ開け」といったら海が開いた。そこを渡って行ったという。ホントですか、と聞かないでください。そう信じられているんです。今でも。ウソを言うなというと困ったことになる。信者に対しては。その海が開いた有名なシーンです。

そうやってエジプトから脱出して、40~50年間も荒野をさまよったらしい。もともと砂漠しかないでしょう。砂漠しか見てなくて、エジプトから脱出してさまよっていたら、ペンペン草が生えている。日本人から見ると、ぺんぺん草が生えてても不毛の土地だなと思うけど、しかし砂漠の人間から見たら、草が生えてる土地というのは、蜜がしたたる豊かな土地です。ここに住みたいということで、どうも戦争やって、やっと40~50年後に国を建てたらしい。


【ヘブライ王国】
その国が、ユダヤ人はヘブライ人というからヘブライ王国といいます。紀元前1020年、ヘブライ王国の成立です。その首都がエルサレムです。ということで、エルサレムの話につながります。
しかしこのヘブライ王国はすぐ南北に分裂して。北と南に分かれる。北の国がイスラエル王国です。南がユダ王国です。今のイスラエルという国の名前はここから来る。しかし北のこのイスラエル王国は異ぐ滅亡します。異民族のアッシリア王国に征服されます。3000年前の国名がイスラエルです。この地域名がパレスチナです。首都の名前はエルサレムです。パレスチナにイスラエル王国があった。その首都がエルサレムです。今もそうです。そういう国が3000年ぶりに、今から80年前にできた。

イスラエル王国が滅亡すると、神様が守ってくれるといったけど、守ってくれなかったじゃないかということになる。我々が約束した神はウソをつく神だと。でもそうなるかというと、逆なんです。「信じるものは救われる」というでしょう。この論理の逆を取るんです。信じる者が救われるんだったら、お前が救われなかったのは、信じていないからだ、というんです。つまり信仰が不十分だからだと言うんです。こうやって生き残ったほうの南のユダ王国では、逆に信仰が強まっていく。ユダヤ人という名前はこのユダ王国から来ます。

しかしこのユダ王国も前586年に、新バビロニアに滅ぼされて、殺されるか、逃げるか、奴隷にされるか、3番目の奴隷にされてバビロンに連れて行かれる。殺されはしなかったけど、50年間も奴隷にされる。これをバビロン捕囚といいます。バビロンというのは、メソポタミアのここがバビロンです。九州と大阪ぐらい離れています。500キロぐらいあります。これで50年間の苦しみの中で、さっきの信じるものは救われるの理屈が強くなる。救われないのは、おまえの信仰が足らないからだという。そこで神への信仰がますます強くなって、今のユダヤ教が成立する。ユダヤ教には、辛い目に会えば会うほど信仰は強まる、という不思議な面があります。しかし、この論理は神の一人勝ちの論理です。どこまで行っても信仰が足りないという論理です。もっともっと強い信仰を求めます。

そして50年後バビロン捕囚から解放されて帰国する。紀元前500年代です。ここで新バビロニアを滅ぼして、ユダヤ人を解放したのはどこか。それがアケメネス朝ペルシャです。これは一度言ったけど、のちにこのアケメネス朝ペルシャを滅ぼすのが、ギリシャの北方マケドニアの若きアレクサンダーだった。順番が逆だけれど、テレビが2台あって同時には見れないから、時間軸を合わせてください。このあとアレクサンダーに滅ぼされる。ここでは、アケメネス朝ペルシアがバビロンからユダヤ人を解放した。だからユダヤ人はペルシア人が大好きです。オレたちを解放してくれたと。

そのユダヤ教の神様を何というか。前の時間にもいったけど、この神がヤハウェです。これが神様です。まだキリストではないです。キリストのことは後で出てきます。
ヤハウェはどういう神様か。ここは、しょっちゅう王を殺したり、民族を殺したりしているところです。ヤハウェは戦争神です。戦いに勝たせてくれる神様です。戦争神などというとエッと驚くかも知れませんが、実はこれはどこにでもあって、うちの県は天神様が多いけど、これは菅原道真でしょ。でももう一つ多い神社があって八幡様です。八幡神というのは、源氏の守り神で、武門の神様です。つまり戦いの神様です。戦さに勝ちますようにと。武門の神様というのは、戦さの神様です。これは日本中どこにもあります。ヤハウェはその強力なものと思ってください。戦争神、軍神です。ここで一神教が、かなりはっきり姿を現します。

この地域はかなり好戦的な地域で、多くの戦争があって、戦争があれば奴隷制がある。こういうところで、貧しいユダヤ人が信仰を深めていくのは、オレたちが苦しみに耐えれば、いつか救ってくれる神が出てくるという信仰です。これを救世主という。でもこれでは分かりにくい。簡単にいえばスーパーマンです。映画のなかでスーパーマンは空の向こうから、主人公を救いに来る。この場合にはユダヤ人を。これをユダヤ人はユダヤ語でメシアと呼んだ。それがギリシアに伝わったら、ギリシャ語ではこのメシアのことをキリストという。だからキリストは、生身の人間から神様になったんです。そこから別の宗教が発生する。これがキリスト教ですけれども、それはあとのことです。
まだこの時には、ユダヤ人だけを救う宗教です。これを選民思想といいます。ユダヤ人が嫌われることが多いのは、この考えのためです。オレたちだけが救われる。そのほかの人間は救われない。それはなぜか。ヤハウェを拝んでないからだ、と言うんです。


【旧約聖書】
前も言ったように「ノアの方舟」の話はコレだった。ノアだけが救われて、あと何万人という人は、ぜんぶ死ぬわけですよ。こういう話が旧約聖書に載ってます。こういうお話をまとめた本が旧約聖書です。20数冊もある。とても読めないけれど、こういうのを旧約聖書といいます。キリストさんの話はあとで出てくる新約聖書という。聖書には新旧二つある。

その旧約聖書の始まりは、何の話だったか。これは誰でも知ってるアダムとイブのお話です。食ってはいけないリンゴの実をイブが食ったから、楽園を追放された。楽園を追放されるときに、神様は何といったか。お前たちの子孫を呪ってやると言ったんです。そう書いてあります。人類は神から呪われているんです。恐ろしいことが書いてある。呪ってやると。おまえたちの子孫は、未来永劫に呪われるんだと。これを原罪という。人間には生まれ落ちたときから深い罪がある。でも日本人はそういうふうには考えません。赤ん坊が生まれたら、赤ん坊の目はキラキラ輝いて純真だなと思う。でもここでは違います。人間にはもともと原罪があるという。

そのユダヤ教の1番目に、オレ以外の神を拝むな、と書いてあります。強烈な一神教がここでできます。全知全能の神です。この世も、あの世も、現在も、未来も、すべて神様が支配している。これを昔のことだと思わないほうがいい。1500年後また復活してきます。それが近代社会につながります。
もう一つ、モーセの十戒の2番目に書いてあるのが、神の像を彫ってはならない、です。神の像は恐れ多くて、人間が彫れるものではない、もっと恐れなさいという意味です。偶像崇拝の禁止、または聖像崇拝の禁止ともいう。でもこれをキリスト教は守っていない。キリスト教徒は像を拝みます。
その他にも、人の物を盗むなとか、ウソをつくなとか、常識的なことはいろいろある。人をねたむなとか、盗むなとか。変な言い方ですけど、人の女に手を出すなとか、具体的に言えば、そんなことまで書いてある。それを守らなければ、地獄に落としてやる、ということことまで書いてある。そういう宗教です。
さっき言ったように、ユダヤ教はイギリスが舞台でもローマが舞台でもない。エルサレムが中心です。


【国家離散】
しかしこのあと、彼らはローマ帝国から征服されます。そしてユダヤ人は国を失って、世界各地に離散していきます。散らばっていく。これをディアスポラという。そして2000年間、国を持たない。ふつう日本人が、日本の国が滅んだら、2000年後の君たちの子孫は、日本人という意識を持てないと思うけど、それでもユダヤ人という民族意識を持ち続けた。オレたちはユダヤ人だと。そして2000年ぶりに国を復活したということを言いました。今から約80年前です。それが今のイスラエルです。





【キリスト教】
そういうユダヤ人の一神教の世界に、紀元前4年に生まれた人がイエスさんです。これが本名です。もともとはヨセフという大工の息子と言われる。母親は有名なマリアさんです。このマリアさんが神の霊にお感じになって、ご懐妊されたという話になってます。ということは父親はヨセフではない。これはどういうことなんでしょう。いろいろなことが思い浮かびますけど、あまり言うと不都合なことにもなります。

今は西暦2023年ですけれども、西暦0年というのは、もともとはキリスト紀元です。キリストが生まれた年です。違うじゃないか。歴史の研究が進んで4年ずれていたというのが最近わかった。歴史上は紀元前4年の誕生です。しかし宗教上は、キリストは紀元0年に生まれたと信じられていた。それがキリスト紀元です。これが西暦です。
イスラム世界では2023年ではない。何年か忘れたけど、600年ぐらい引く。これは何かというと、ムハンマドが生まれた年を紀元0年にしているから。世界全部が2023年ではない。少なくともイスラム教徒20億人の世界では、今年は2023年といっても通じない。ヨーロッパとイスラム社会は今、血が流れたり、爆弾が飛んだりして危ない。対立が深まっています。

このイエスは、何を考えたか。一番イヤだと思ったのは、ユダヤ人の選民思想です。ユダヤ人だけ救われる。教えを守ってる人だけ救われる。これ、おかしくないか。全能の神様だったら、あの人もこの人もすべて救えるはずだと。これがアガペーといって神の愛です。全知全能だったらそれくらいできるだろうと。この神の愛のことを隣人愛といいます。すべての人を愛しなさいという。
でもそうするとユダヤ人が腹を立てる。これは何の対立概念か。ユダヤ教の選民思想との対立です。ここでユダヤ教徒対立する。
そして黄金律をいう。これは世界中に通じると思うけれども、人に好かれたかったらどうすればいいか。あなたが、こうしてもらいたいじゃなくて、自分がしてもらいたいことを、まずあなたがしなさい。そうするとちゃんと人に好かれます。これを黄金律という。

こういういろいろな教えを周りの弟子たちに伝えた。キリストさんは殺されますけど、プラトンがソクラテスの言葉を書いていったように、そのあとそれを聞いた弟子たちが、お師匠さんの言葉をまとめる。それをまとめたが「新約聖書」になる。その新約聖書のことを、神があなたを救う良い知らせ、知らせは音ですよ、福音という。福音を説いた。
しかしイエスはこうやってユダヤ人と意見が対立したから恨まれて、そのときにはすでにエルサレムはローマから征服されています。支配層のローマ人にたきつけて、あいつは死刑にした方が良いですよという。おまえはローマに反逆しているからという。そしてゴルゴタの丘でイエスは処刑される。胸も突いてやらない。死ぬに任せる、多分一週間ぐらいかかるでしょう。とっても残酷な十字架の刑です。ここまではイエスは人間なんです。ここで死にます。
ゴルゴタの丘(Golgotha):ジュリアン・デュヴィヴィエの ...


【復活】
しかし弟子の一人のパウロが、3日後に死んだイエスを見たと言う。それを周りの友達がみんな信じる。だからこれを復活という。ここでイエスさんは、生身の人間から何になるか。神様になる。ホントですかの話しじゃない、そういう人たちがこのあと、1000人、2000人、10万人、100万人、ローマ市民全体に広まっていく。

ただ問題は、神様は一つだということです。もともとそれは何かというとヤハウェです。これは理屈に合ってる。でもイエスさんがキリストという救世主になる。これは人間ではない。神様の一種です。だからこれだと二神教になるんです。この矛盾が発生する。神様が二つでは一神教にならない。この二つの神を一つの神にするのがキリスト教です。(正確には3つですが)

ではなぜイエスが復活したかというと、人間には罪深い原罪がある。これをイエスは自分一身に背負って贖(あがな)ったんだという。罪を償った。人類に代わって。イエスの死は、贖罪(しょくざい)の死だといいます。イエスは人間ではなくて神なんだと。いや神になる前にスーパーマンなんだと、救世主なんだと、これをギリシア語でいうとキリストといいます。だから本名とあだ名を混ぜて、イエス・キリストという。これで神様なんです。人間じゃないです。ホントですか、と誰かが聞いたから、私はそういう信仰もってないから分かりませんとしか言えない。でもそうはキリスト教徒の前では、なかなか言えない。信仰上の問題です。
もっと大事なことは、ここで呪われた人間が、救われた人間に変わったことです。呪われた深さが深かっただけに、救われたあとの自信の大きさも絶大です。救われた人間が間違うはずがないという自信になります。この人間観も日本人とは違いますね。

絵画】イエス・キリストの顔はどう変化したか - 歴ログ -世界史 ...
こういう人(上)です。イエスさんは。最近はこういう人ではないという見解もあります。出身地から見るとアラブ地域で、白人じゃないでしょう。中近東のアラブ系の人でしょう。我々と同じ有色人種ではないかと言われる。これはデフォルメされているんじゃないかと。最近復元された画像がこれ(下)です。
これがイエスの顔 | 東亜日報

彼が生まれたベツレヘムというのは、これはほぼエルサレムです。県庁所在地とその隣の町みたいな関係です。それから新約聖書と書かせると、よく君たちは間違う。翻訳の「訳」を書く。そうじゃないです。約束の「約」です。この宗教は、神様と約束です。この教えを絶対守りますと。その代わりに幸せにしてくださいと。交換条件を出して取引している。約束です。翻訳じゃないです。こう言っても、10人中半分は間違うんですけど。



【補足 ローマ帝国】
そういう話があらすじですが、これを補足していきます。ここにローマ帝国があって、ローマがここです。この時代のローマ帝国というのは、もうほぼここら辺まで来ている。エルサレムも併合されて、ローマ帝国内で起こっていることです。場所はここです。九州と東京以上に遠いです。九州と北海道ぐらいある。いまイエスが死んだ。そしてキリスト教が発生した。そして20~30年でどんどん広がっていく。でもローマの神はギリシアと同じ多神教です。オリンポス12神もある。そこにまた別の新興宗教として、キリスト教という一神教が入っていきます。

ではローマとはどういう社会だったのか。ローマには奴隷制があり、戦争があり、征服がある。周りを征服して、ぶんどってくるですよ。だから地方は廃れて食えない。でも東京に行けばどうにか食える。今の日本みたいな感じです。イヤな感じです。だからローマは人であふれる。でも仕事がない。そこでぶんどってきたお金を給付する。だからローマ市民の多くは遊んで暮らしてる。それを「パンと見世物」という。これは世界史の教科書に書いてある。パンは食い物です。それが無料で支給される。そして暇がある。コロッセオがあるでしょう。スタジアムみたいな。あそこでライオンと人間を戦わせると、これが盛り上がる。ワーワーと、仕事をしないローマ人が、ウワー人が負けたぞ、それで喜ぶ。あまり健全な社会じゃないと思うけれども、そういうふうに人が遊んで暮らせたのは、奴隷制社会だからです。奴隷制はギリシアといっしょです。


【アウグストゥス】
ローマではいつも軍人が征服活動をやってますから、彼らが力を持ちます。それで軍人政治家が登場して「俺たち3人でローマを支配していこう」ということになった。そのトップがカエサルです。英語読みでシーザーという。聞いたことないですか。カエサル、ポンペイウス、クラッスス、この3人がローマを支配するようになる。第一回三頭政治といいます。そうするとローマ市民は独裁を嫌う。独裁になった途端にカエサルは殺される。暗殺される。

日本も似てきてますね。日本のもと首相が白昼堂々殺された。私も60年以上生きて、去年初めて身ました。これはある一定の危険レベルを超えたかなと思います。まだ裁判がまだはじまらないのも変な話です。山上達也容疑者。安倍さんが殺された。そうやって殺されるんです。

次に出てくるのが息子じゃないけど養子です。オクタヴィアヌスという。あと2人は、アントニウス、レピドゥスの3人です。第二回三頭政治です。
カエサルは、このクレオパトラというエジプトの女王といい仲になっていた。息子もいた。でもその息子は後継者にはならない。この養子のオクタヴィアヌスは「エジプトの女王は要らない」と攻めて殺す。これもけっこうドラマ仕立てになっていて、敵から囲まれて、殺される前にも自分で死んでいく。その死に方もヘビにかませる。どこを。おっぱいをヘビにかませて、というふうにドラマ仕立てですが、半分以上はウソだろうと思います。こうやって絶世の美女、クレオパトラか楊貴妃かという、このドラマのシーンはこの時代です。


こうやってローマを統一したオクタヴィアヌスは、別名アウグストゥスといって、皇帝じゃないけど、こういう称号を与えられる。余談だけど、このアウグストゥスが、ある月の名前になっている。なぜだか知らないけれど、アウグストはオーガストです。8月です。8月の名前の由来は、このアウグストゥスです。
ただこの人は実質的な初代皇帝と言われるけど、中国の皇帝と違うのは単に司令官にすぎない。中国のような権威がない。徳のある政治をやるとかじゃない。とにかく軍事力で国をまとめる。そういう時代です。これが紀元前43年です。このアウグストゥスの治世でパレスチナのイスラエルに、イエスが生まれて、ほぼ同時にローマの属州になった。エルサレム近郊で生まれて、成人してゴルゴダの丘で磔にされて死んだけど、その3日後に復活して神様になった。そこでキリスト教が誕生した、ということになります。

終わります。