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エアバス-「ヒューマンエラーが多いから自動操縦」という前にすべきだったことは

2015年04月15日 | 企業・CSR

昨日のブログで、ティムさんが、「パイロットの(マニュアルで操縦するしかない)プライベートジェットの経験のあるなし」について言及したことを書きました。 

私が自動車免許を取得したのが36歳の時でしたが、初期段階の教習中に教官の一人が、「君、自転車に乗れる?」と私に聞きました。これは、私のあまりに下手な運転にあきれて、「悪いことは言わない、君は自転車だけにしておきなさい」と言いたかったのかと思いきや、「自転車も自動車も、近くばかり見るとフラフラ運転を見てしまう。気が付かないかもしれないけど、自転車に乗っているときは遠くをみているんだ。それと同じことをしてごらん。」ということを説明したいがための質問でした。
(…結局は、まあ私の運転が目に余るものだったのでしょうね。) 

自転車と車の関係にも似て、飛行機においてもマニュアルの小型機の操縦の経験があるかないかは、大型旅客機の操縦士の信頼度を左右すると思います。
(ティムさんは「米国と一部の欧州の国々」と言っていましたが、途上国であっても、軍隊でマニュアル飛行機を操縦した人が旅客機のパイロットになるケースもありますね。) 

しかし、たとえば車がどんなに高級だとか、性能が良いとかいっても、ハンドル、アクセル、ブレーキ、(クラッチ)、ギアは格安車と装置も操作方法も大きく変わることがないのに比べて、ボーイングとエアバスの飛行機の操縦桿等、操作方法に大きな違いがあります。 (軍用機に乗っていた人にしてみれば、操縦桿はエアバスのスティック状のものに慣れているでしょう。)

以下は昨年の記事ですが、ANAのパイロットがその違いについて話してくれています。 

中華航空事故20年:ハイテク機の「監視」 葛藤続く操縦士
http://mainichi.jp/feature/news/20140426mog00m040008000c.html
 

(前略) 

 「自分は航空機のシステムを十分に理解できているのだろうか」。米ボーイング社製のB777のコックピットで、全日空の男性機長はしばしば自問してきた。過去4機種に乗務し、操縦歴30年以上のベテランだが、それでもめまぐるしい技術の変化は骨身に応える。「今のハイテク機の操縦は、コンピューターを操作するようなものですよ」 

 機長は3年ほど前まで、欧州エアバス社製のA320を操縦していた。ボーイング機とエアバス機の設計思想は根本的に異なる。一目瞭然なのはコックピットだ。ボーイングは旧来型の操縦輪(コントロールホイール)、エアバスは操縦席横のサイドスティックを採用。また、ライトを点灯させる動作一つをとっても、ボーイングはスイッチを「押す」が、エアバスは「引く」といった具合だ。ただし、機長は気にしないという。「その点は、慣れるかどうかの問題」と自信を見せた。 

 ボーイングは人間を優先し、エアバスは機械を優先する−−。世界2大航空機メーカーの思想の違いはしばしば、そんなふうに語られてきた。 

 例えば、前述の操縦装置について、ボーイングはパイロットの感覚を重視する。操縦輪の操作に機体はダイレクトに反応し、重い、軽いなどの手応えをパイロットも感じる仕組みになっている。B777などのハイテク機は、「フライ・バイ・ワイヤ」という電気信号による操縦システムを採用しており、操縦輪を握る手に重みをわざと生じさせた擬似感覚だ。 

 対するエアバスのサイドスティックは、純粋に電気信号の入力装置にすぎない。どのような飛行をしたいのかを入力すれば、コンピューターが最適の旋回、加速などの機体制御をしてくれる。 

 操縦輪は航空機の誕生からあり、セスナなどの小型機が採用するなど、パイロットとの親和性が高い。一方で、サイドスティックにすると操縦席の手前に余裕ができ、パソコンのキーボードに入力するなどの作業がやりやすくなる利点もある。 

 自動操縦については、ボーイングは操縦士が手動操作をすれば解除されるシステムをとってきた。中華航空機事故もあり、現在のエアバスも同様のシステムを採用している。 

 ただし、その際もボーイングはパイロットの意思を尊重して失速などの恐れがあれば警報装置を作動させ、パイロットに他の操作をするようにうながす。これに対し、エアバスはそもそも失速などの恐れがある操作は受け付けない。システムが安全と判断した操縦限界の中で、パイロットは操作できる。 

(後略) 

 【高橋昌紀/デジタル報道センター】 

この記事(リンク内)の最後の方で評論家が言っているように、「ボーイング方式とエアバス方式のどちらが良い悪い」というわけではないとは思うのですが、一度失敗したら多くの命を失うことになる飛行機の操縦装置や操作方法を、後発のエアバスが大きく変えすぎたことには疑問を感じます。 

「ボーイングは人間を優先し、エアバスは機械を優先する」と言いながら、エアバスも事故が起きたときは人間が頼りなら、従来に沿った設計にするべきだったのではないか・・・素人考えですが、そう思ってしまいます。 

(先のブログのエアバス幹部の発言が画期的だと私が思うのは、『機械を優先するというエアバスの基本思想』の限界を受け入れているように感じるからでもあります。
それにしても昨年12月のエアアジア、今年3月のジャーマンウィングス、3月29日のカナダ機、4月14日のアシアナ機、皆エアバスA320ですね。)

また、エアバスの「ヒューマンエラーが多いから、コンピューターに頼ろう」という発想には「『人間工学』を駆使してヒューマンエラーを減らすようにする努力」というのが抜け落ち、「差別化で売れる商品を」という本音が見え隠れしていることも、私のエアバスに対する評価を下げます。 

さて、この記事が書かれたのがいつ書かれたものかわからないのですが(2009年頃?)、エアバス関連でもう一つ記事を紹介します。 

朝日Globe
攻勢かける「欧州スタンダード」
http://globe.asahi.com/feature/090907/03_1.html 

抜粋: 

世界最大の航空機メーカー・エアバス(本社・仏トゥールーズ)の日本法人エアバス・ジャパンの社長兼最高経営責任者(CEO)グレン・フクシマは、ボーイングがほぼ独占する日本の航空機市場の特殊性をこう指摘した。エアバスのシェアは世界で約5割。米国でも4割を超すのに、日本では発注ベースで、わずか3~4%に過ぎない。 

2階建ての最新鋭機A380は燃料効率、騒音対策のいずれでもボーイングの競合機747―400を上回るとされるが、日本の航空会社の導入実績はゼロ。全日空がいったん導入を決めたが、金融危機で中断したままだ。フクシマは「政府専用機にぜひエアバスも加えてほしい」と語る。 

エアバスは、医療機器や農産物とともにEUが日本に対して求めている市場開放の象徴的存在だ。 

日本でだけ、なぜ売れないのか。EU幹部は、そこに何らかのアンフェアな「非関税障壁」があるとみる。あるEU幹部が明かす。「A380の共同生産を日本の企業にもちかけたが、余力がないと断られた」。一方、ボーイングの最新鋭中型機787は機体の約35%が日本製で作られる。 

そのエアバスは、中国・天津に域外初の最終組み立て工場を建設、今年6月には同工場で初めて組み立てられたA320が中国の航空会社に引き渡された。EUにとって今後、大幅な航空機需要の伸びが期待できる中国に拠点を持つ意味は大きい。 

追記:

ジャーマンウィングスの事故以降、飛行機の話をいくつか書いてきていますが、これは私が飛行機好きだからではなく、飛行機が怖いので、少しでも安全なものにしてほしいと願うからです。

私がエアバス批判をしていても、それは「ボーイングを信頼している」というわけではありません。

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