JBpressとWedge Infinityは、私が毎朝チェックしているサイトですが、今回、JBpress編集長の川嶋諭氏、Wedge Infinity編集長の大江紀洋氏の対談が、JBpressに載っていました。
川嶋氏が言う「叩くと相手が結束」「太陽政策云々」、大江氏の言う「意見の対立だけでは前進ができない」との意見は、私も同感です。
(メディアとしての主張ではないですが、元東電社員の木村俊雄さん(ブログカテゴリー『人物』参照)、住友金属やアサヒビール等々(ブログカテゴリー『CSR』参照)は、本当の前進に向けての主張をしているのでしょう。)
JBpress 2011年12月22日
『原発、増税、TPP...日本的妥協は最悪の選択
北風と太陽、メディアはどちらの方法をとるべきか』
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/33510
抜粋:
川嶋 今年は3月11日の東日本大震災、そして原子力発電所の事故、ユーロ危機、北朝鮮では金正日総書記の死去と、大変な年でしたが、振り返ってみていかがですか。
大江 うちの雑誌としてはやはり原発問題でしょうか。割と早い段階で原発推進を表明したので、読者の方からの批判も多くいただきました。
川嶋 産業界や大手のメディアは推進派が多いですよね。
大江 財界寄りだとか、いろいろなことを書かれました。
川嶋 私たちJBpressは脱原発が基本的スタンスで、逆に推進派からの厳しい批判を受けました。この問題は国を二分する大きな争点になりましたね。ところで、WEDGEはなぜ原発推進なのか教えていただけますか。
大江 脱化石のためには原発は要るだろうというのが我々の考え方です。原発が新エネルギーの妨げになっているという議論はありますが、新エネの未熟さの方が圧倒的な問題じゃないのかと。
世界全体でみれば、人口は増え続け、原子力抜きのエネルギー安全保障は考えられない。そこで日本が脱原発という選択をして本当にいいのかと。
川嶋 減原発か脱原発か、私の中では原発を徐々に減らしていくという方法はありだと思っていたんですけど、次第にそれは意味がないんじゃないかと思うようになってきました。
というのも、将来原発をやらないということであれば原発産業は成り立たなくなる。将来なくなるものに対して人間は力を入れないですよね。
それならば一気にやめちゃって新しいもの、太陽熱や風力、あるいは地熱に切り替えた方が、新しい産業が育つという意味ではいいんじゃないかと。目標が定まれば、日本人はものすごい力を発揮する。いまは新エネルギーが未熟だとしても、必ず世界一の効率化、低コスト化を実現すると思います。
大江 いまは減原発が社会的な合意点になりつつありますが、それは一番危険だと思います。40年経ったらなくなるものに誰が本気で向き合うのか。
どういう判断をしても50何基分の廃棄物はあるわけで、地層処分の考え方にもよりますが、今後数百年単位の核廃棄物ビジネスは確定しています。これは好むと好まざるとにかかわらず、やらなければいけない仕事です。
それだけ長い期間つき合っていかなければならないのに、技術者を失っていいのか。人類全体のエネルギーの確保、技術立国としての日本の立ち位置、原子力発電の将来発展性、廃棄物管理の必要性、と考えていくと、やはりやるべきだという考え方になると思います。
川嶋 産業的に考えると私もそうだと思います。やるなら徹底的にやる、やめるならキッパリとやめる。中途半端に日本的な妥協の産物になると大変なことになる。
ちなみに先日、下北半島の六ヶ所村に行って驚いたんですが、新興住宅地ができていて、すごく人が増えているんです。「あれ数カ月前に来た時にはなかったカフェができている」と、よく六ヶ所村に足を運ぶ人は驚いていました。
ここはエネルギー特区なので風力などの新しい実験が行われているということもあるのですが、原発はなくなっても放射性廃棄物はなくならないので、その処分場・貯蔵施設の場所として有力だと見込まれて人が住み始めているようです。
いずれにしろ、こうやって対立する議論を1つのテーブルに載せてみると、一番取ってはならない策、中途半端な妥協点の危険性が見えてきますね。
(中略)
川嶋 既得権益を叩くのはすごく必要だと思うんですけれど、TPP(環太平洋経済協力協定)の問題でも日本医師会のようなところに矛先を向ければ向けるほど、彼らの結束が高まる。
ですから最近は「北風と太陽」じゃないけれども、「太陽政策」を取っていかなければいけないのかなと。成功例を積極的に紹介したり、新しくて良い取り組みをプッシュするようなコンテンツを作っていかないと、本当の意味で日本は変わらないのではないかと思い始めています。
大江 それは同感です。震災以降、あらゆるテーマで意見が二分していて、対立が先鋭化する感じです。たぶんみんな分かっているんだけど、越えられない壁のようなものをお互いにつくりだしてしまう。
TPPも増税も社会保障も原発も、相手をつぶしにかかるようなことでは壁を越えられない。お互いが完全に納得するのは難しいのかもしれないが、未来を直視すればいま何をしなければいけないかという冷静な議論をして、決断していかなければいけない。
だから原発推進についても中身は極めて冷静に、書き方やトーンを激しくしないように気を配りました。なぜそういう結論になるのか、立場が違う人が読んでも、そういう考え方もあるねと納得できるようなものにしたつもりです。
(後略)
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