Various Topics 2

海外、日本、10代から90代までの友人・知人との会話から見えてきたもの
※旧Various Topics(OCN)

彼が遺したもの

2008年11月18日 | 友人・知人

話が前後しますが、今回の旅行は、結局仕事の調整がつかなかったK氏に同行してもらうことは叶いませんでした。それ故、パリにいるHと私が週末にかけてフィレンツェに入ることになったのですが、Hはそれまで仕事。その為実際に再会したのは、私がシャルトルの小旅行から戻った後でした。

この晩は、Hの勤め先に日本から出張してきていたI氏という若いロシア専門家が一緒でした。

今回の旅行は、先のアケミさん、ケイコさん、S氏という思いがけない人との出会いもありましたが、セッティングされた出会いとはいえ、このI氏と知り合えたことも私にとっては、奇跡的にさえ思える貴重な出会いとなりました。

実はこのI氏は、K氏とは友人同士。年齢も職場も違う彼らを結びつけたのは、10年前に国連タジキスタン監視団に参加し、現地で襲撃にあって殉職した国際政治学者の男性。彼はK氏の親友であり、I氏の恩師。彼らは、敬愛、崇拝するこの人物を失ったということで、より一層深く結びついているのです。

この国際政治学者の男性の口癖は「自分で調べ、自分で組み立てたものしか語らない!」で、彼は自らの足で扮装地域を歩きまわりました。それは単に学術的研究の為だけではなく、世界平和を願う気持ちの強さの表れでもありました。

「紛争の解決の方程式を探しに行って来ます。」タジキスタンがどんなに危険か誰よりもわかっていたからこそ、その役目を誰かに託すことなく自ら現地に赴きました。

彼は「脅かされず、踊らされず、踊る」という言葉を残しています。この言葉は残されたものたちにとっては辛い言葉でもありますが、同時に信念となって根付きます。

そしてそれは、ご家族にだけでなく、多くの友人、知人、教え子、そして次の世代にも受け継がれていきます。

I氏は、K氏から聞いていた通り、とても人当たりの良い好青年。柔らかい物腰と、素朴さで、一見しただけでは、新鋭アナリストには見えません。そんな彼も仕事の話になると人が変わったように紅潮した顔で熱く語ります。その彼の話のなかにあの「脅かされず、踊らされず、踊る」という言葉のような強さ、したたかさがありました。

しかし、彼の見地は必ずしも彼の恩師やK氏とは同じものとは思えなかったので、正直に言うと最初私は違和感を覚えました。でも、彼は熱弁を振るうだけでなく、人の意見に耳を傾ける時も熱心です。

こうしたI氏の態度は、彼のような職業の人には大切なものであり、また一般の人であっても同じことが言えます。(残念なことに、経験をつむほど、人は自分と違う意見を排除する傾向があります。)

亡くなった国際政治学者の恩師が教え子に遺したものは多かったのだな、と感慨に浸ると同時に、I氏との意見交換を通じて、間接的に彼から自分の足りない部分や方向を考えさせてもらえたような気がした晩でした。

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