先週、社会学者のドーア氏からメールが入り、「今日本にいます。今回は帽子を持ってきました」というようなメールが飛び込んできました。
この帽子とは、2008年の秋に、パリに出向していた友人Hと私がパリ経由でイタリアに住むドーア氏を訪問したときに、Hが御宅に忘れてきたボルサリーノのフエルト帽。
気がついたドーア氏がHに「郵送で送りましょう」とおっしゃってくれたものの、Hは、「いえ、帽子は預かっておいてください。これで『帽子を取りに行く』との名目で、再訪させてもらえるきっかけができました」などと言って、「無骨なわりに、気障なことを言えるもんだ」と私を感心させていたものの・・・結局Hはイタリアにさえ行くこともなく、フランスから帰国してしまっていました。
そして今回、ドーア氏は日本に帽子を持参してくださったと言います。
今回の来日以前にも何度か日本にこられているドーア氏ですが、今回は急に思い立ったのか、それともご家族に無理やり持たされたのかは分りませんが、とにかくかさばる帽子をわざわざ持ってきてくださる律儀さ、ますます彼のファンになりました。
さて、ところで実は私は来年の3月にトモエさんと一緒にイタリアに行く予定です。そのときにもしご都合があったなら、ドーア氏を再訪させてもらおうと思っていたこともあり、イタリアでのドーア氏の密着取材をした話が書いてある、故柳原和子さんの『さよなら、日本』(株式会社ロッキング・オン発行)を読んだところでした。
この本なかに、
「日本、というより日本人、個々の日本人を見つめるのが私の趣味であり、意味のある行為だと考えています。これから合理的な世界を作り上げていく上で、個人が国籍を離れて世界を見つめなくてはならない。」
というドーア氏の言葉が紹介されていました。
著名な学者であれば、世界各国に友人・知人がいてもそれは当たり前であると思いますが、ドーア氏の場合、とにかくその層が幅広い-実際に繋がりがなくとも、私が話す一般の人々-息子から、生活保護者から、職場の同僚、主婦仲間、議論仲間、海外の友人達-の様子や意見を大変興味深く聞いてくださったり・・・。
このブログの題名”Various Topics”、実はこれはドーア氏が以前にくださったメールの表題”Various”を取ったものです。それだけ真面目な話からくだらない話まで興味を持ってくださるドーア氏。
私は彼の主張すること全てに頷けるわけではないですが、それでも彼の言うことに頷けることが多いのは、著名になろうとも、実際の世を見ることに重点をおき、それぞれの立場の人たちに関心を持ち続け耳を傾ける-“初心”を忘れない学者だから、ということがあると思います。
学者のみならず、政治家などは特にドーア氏の姿勢を見習って欲しいですね。