Various Topics 2

海外、日本、10代から90代までの友人・知人との会話から見えてきたもの
※旧Various Topics(OCN)

「原子炉メーカーの製造物責任は問わず」というのが国際標準!?-2

2011年04月20日 | 原発・核・311

前回のブログで、韓国野原発事故について触れましたが、その関係の記事が本日のJBpressにありましたので、リンクを貼り付けます。

福島に怯える韓国、原発大国の野望に暗雲

急速に広がる反原発の声、古里1号機再稼働は無期延期

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5899

なお、記事に、「古里原発1号機は、韓国初の原発だ。米ウエスティングハウスが原子炉を、米ゼネラル・エレクトリック(GE)が発電機を建設し、1978年に運転を開始した。」と書いてあります。

おそらくこの原発がもし大きな事故を起こしたとしていたとしても、WH社もGE社も韓国から賠償を求められないということでしょう。

福島や数々の中小の原発事故を受けて、国民に原発反対者が増え、原発購入を考えていた国も今後は慎重にならざるを得ないと思いますが、それでも原発購入はしばらく減らないでしょう。せめて今後購入国が原発メーカー及び輸出国に製造物責任を問えるよう、契約書に盛り込むような動きが出てくることを望みます。

そうすれば、「前の原子炉はちょっと問題ありだったけど、今の原子炉は大丈夫」などと、まるで「旧タイプの洗剤では落ちなかった汚れが、新しい洗剤ではこんなにすっきり落ちます」と同じような語り口で言う原発関係者もいなくなるでしょう。

それにしても、前回のブログで紹介したコラム

http://www.westlawjapan.com/column/2011/110207/

を読んだりすると、IAEAの存在意義にますます疑問を感じます。国際機関が守るべきものは、最終的には地球と人間であるのではないかと思うのですが、どうも違って見えます。

(蛇足ですが、IAEA(国際原子力機関)他、IEA(国際エネルギー機関)、ITER(国際熱核融合実験炉機構)というエネルギー関係の国際機関のトップは現在すべて日本人であることを付け加えます。)

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「原子炉メーカーの製造物責任は問わず」というのが国際標準!?

2011年04月20日 | 原発・核・311

私「原子力発電を輸出して、人災・天災による事故の不具合、その後の技術的対応がうまくフォローできずに放射能漏れを起こした場合、その賠償はどうなると思う?

放射能汚染が酷くてその国の人的・経済に多大な被害を及ぼしたとしたら、下手したら戦争にも発展しそう。」

友人「まあ、戦争にはならないでしょうが、確実に国家賠償マターになりそうですね。」

私「最近のアメリカのワシントン州の原発での事故は人為的ミスだったけど、韓国の原発の場合は欠陥があって止めたみたい。韓国が作った原発だったのかどうか。

それにしても、今までだったら「危ない原発を作るな」と日本は言えたけど、もう言えなくなってしまったわ。」

・・・なんて話を今日友人としていましたが、賠償に関しての参考となるレポートがありましたので、貼り付けます。

http://www.westlawjapan.com/column/2011/110207/よりすべて貼り付け

原子炉メーカーの製造物責任 

(早稲田大学大学院法務研究室教授・弁護士 道垣内正人)

メーカーにとって製造物責任は大きなリスクである。しかし、原子力損害の賠償に関する法律43項は、「原子炉の運転等により生じた原子力損害については、・・・製造物責任法 (平成六年法律第八十五号)の規定は、適用しない。」と定めている。原子力事故の場合の責任主体は原子力事業者(電力会社等)だけであって、原子炉メーカーは責任を負わないのである。 これは責任集中と呼ばれる。

なぜ、原子炉メーカーは製造物責任法の適用除外を受けているのであろうか。それは、日本がアメリカから原子力関連技術の供与を受け、原子力発電事業を始める際にアメリカから提示された条件のひとつだったからである。アメリカの原子炉メーカーとしては、原子炉設備の瑕疵による事故が万一起これば巨額の賠償責任を負うことになりかねず、そのようなリスクを負うことはできないというビジネス判断をしたのである。 

アメリカの技術をもとにして原子力発電を始めた国々は、原子力事故の民事責任についてはほぼ同一の法制となっており、それらの国の間では原子炉メーカーの製造物責任は問わないというルールが国際標準となっている。

1986年、チェルノブイリ原子力発電所事故が発生した。ソ連時代に発生した事故であるから、死の灰の飛散により西側諸国の酪農家等が被った損害についてソ連が何らの賠償をしなかったことは不当とはいえ、当時はいかんともしがたいことであった。ソ連の崩壊後、ドイツはロシア型原子炉の危険性を理由として、旧東ドイツの原子力発電所をすべて停止したが、ロシア・東欧の多くの国は主要なエネルギー源として原子炉を稼働し続けた。これをめぐって、上記の問題がクローズアップされた。すなわち、それらの国の多くは製造物責任の特則を設けていないため、西側のメーカーは、ロシア型原子炉の補修工事を受注することによって生ずるリスクを回避したのである。 

IAEAは国境を越える原子力事故に備える様々な法的対応をとったが、そのひとつとして、1997年に「原子力損害の補完的補償に関する条約(CSC)」を作成した。CSCは、責任集中のほか、無過失責任、一定額以上の賠償措置(責任保険、国の措置等による)等を定める法制を有している国が締約国となることができ、締約国で原子力事故が発生した場合には、原則として事故発生国のみが裁判管轄を有することとするとともに、国際基金から一定額が賠償資金として提供されるという仕組みを定めるものである。ロシア・東欧のほか、新たに原子力発電を始めようとする国々に国際基金というバックアップを提供する代わりに、国際標準の原子力損害賠償法制を作ってもらおうというわけである。そのため、CSCは原子力ルネサンスを謳歌して設備の輸出を積極的に行おうとする原子炉メーカー、その多くを擁する日本のためのものであると言われている。

もし、国際標準の原子力損害賠償法制を有していないA国に日本の原子炉メーカーYが設備を輸出し、同国の電力会社Bが発電中にY製設備の瑕疵により原子力事故が発生した場合、A国居住者を中心とする被害者Xらは、日本の裁判所においてYを被告として損害賠償請求訴訟を提起することになろう。この場合、日本は被告住所地国であるので、日本の裁判所は国際裁判管轄を認め、本案の審理に入る。そして、国際私法によれば事故の発生地であるA国法が準拠法となり、同法には通常の民事責任法しかないとすれば、Yは倒産リスクにさらされることになる。

これに対して、もしA国も日本もCSCの締約国になっていれば、裁判管轄は事故発生国に限定されるので、Xらが日本で提訴してもその訴えは却下され、A国で請求するほかない。そして、責任集中を定めるA国法により、A国の電力会社Bにのみ賠償責任があり(A国法上、Bは原子力損害賠償のための責任保険等の措置をとっているはずであり、それに加え、その賠償能力を補うため国際基金から一定額の拠出がされる)、Yに対する請求は認められない。 

最近、ベトナムに対する日本からの原子炉の輸出が決まったという報道に接し、日本は進んでCSCを批准するとともに、その世界各国での批准を推進する役割を果たすべき時期に来たのではないかと思う。 (なお、ロシアは現在、責任集中等を定めるIAEAの古い条約の締約国となっている。他方、アメリカ等4ヵ国がCSCをすでに批准しているものの、発効要件である5ヵ国に達せず、CSCは未発効である。) 

(掲載日 201127日)

それにしても、「危険物なのに、売る側に製造物責任を負わせない」というのがスタンダードになってしまっているというのは、これは普通の感覚では理解できません。

(このおかげで、福島の欠陥品といわれる原子炉Mark Iを設計したGEはつつかれないのでしょうね。米国に対してもどの国も文句は言わないだろうし。)

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