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転載:湯浅からのおしらせ(都知事選についてのコメント)

2012年11月07日 22時45分11秒 | 都構想・IRカジノ反対!
 都知事候補として期待されていた湯浅誠氏ですが、結局不出馬となりました。その理由がご本人からのコメントで述べられています。それがそのまま都政ひいては日本の政治の民主的転換にとって何が必要かを語る展望論となっていますので、長文になりますが、続編の「人にやさしい都政をめざす会」声明や、この下の私の付記と併せてお読み下さい。(コメント転載に際し読み易くする為に改行等の編集を施しました)

(転載開始)
■湯浅からのおしらせ

都知事選についてのコメント(11月4日執筆、6日発行)

 この間、多くの方から、都知事選についてお問合せなどいただきました。ご推薦いただいた方もおられて光栄かつ恐縮でした。率直に申し上げて、今回の都知事選で私が「勝てる候補」などと言われるのは、ほとんど身の丈に合わない話と思わざるを得ないので、わざわざ態度表明するのもどうかと思っていました。しかし、新聞紙上でも取り沙汰されるようになり、沈黙していることによる不利益も生じかねない情勢になってきたことから、コメントしておきたいと思います。結論から申し上げると、出馬はしません。
以下、この間の経緯や考えたことを書きます。

1)大きな社会状況として、すでに数多くのご指摘があるように、橋下維新、石原新党とつづく世の中の流れには、私も危機感を持っています。石原さんが事実上の後継者として指名した猪瀬直樹さんが石原都政路線を引き継ぐのだとすると、また、出馬を取り沙汰されている東国原さんが橋下さんとの連携を示唆されているのだとすると、この間の流れも踏まえつつ、それに違和感を抱いている人たちの思いを集結させられる対抗馬の擁立(オルタナティブの提示)は必要だと、私も思います。

2)ただし、1000万人を超える有権者を抱える巨大都市・東京都の知事は、広範な人々の利害を調整する官僚機構と良好な関係を保ち、企業から生活者を含めた多様な人々に共感を得る必要があります。イメージとしては、1000万人有権者を自分から近い順に一列に並べたときに、真ん中(500万人目)からちょっと先くらいの人たちに言葉を届けられるくらいの幅の広い陣容を組めるかどうかが重要に思います。

3)では、それは誰か、となるのが選挙です。固有名が出ないことには選挙になりません。ただし、その前段階では「こういう人」というイメージが必要です。私のイメージは以下のようなものでした。

① 原発事故以降、飛散する放射能や食の安全に対する不安は高まっています。それは社会運動や市民活動に参加したことのなかった人たちも抱いています。人によっては濃淡があって、人によっては漠然としてもいる不安感を抱く人たちが共感できる人が望ましい。上から降ろしたような脱原発・反原発ではなく、重要なのは「生活者としての共感でしょう。したがって生活者目線を(「生活者目線!」と訴えるだけでなく)体現している人が望ましい。

② 加えて、グローバル化が進行する中、グローバルな競争関係にいかに対処するか、という知見も必要です。とりわけ巨大都市で一人勝ち状態の東京では、「東京が牽引役」と漠然と感じている人が多いと思われます。直線的なグローバル批判よりも、多様性(ダイバーシティ)、普遍性(ユニバーサル)をキーワードに、「グローバルとは競争の激烈化とイコールではない」「多様性と普遍性の尊重が発展と成長につながる」という主張を説得的に展開でき、それを体現するグローバルなキャリアを持った人が望ましい。

③ 石原新党や橋下維新の諸政策を「新自由主義」と断じる人たちは、どんな対抗馬でも票を入れる。しかしそれだけでは数十万票規模にしか達しないだろう。むしろ問題は「あのマッチョな感じについていけない」と肌感覚で違和感を抱いている人たちの共感を得られるかどうか。ソフト・柔軟・親しみといった対極的な諸要素を併せ持つ人が望ましい。

④ 知名度や実績は高ければ高いほどいい。ただ、仮にそれほどの高い実績や知名度がなくても、諸分野の専門家のバックアップや候補者に欠けているものを補う態勢の担保を選挙戦中から示すことで、知名度不足からくる不安感、不信感をできるかぎり払拭することは不可能ではない。
その他、政党人でないことなど、さまざまな要素がありますが、ここでは割愛します。

4)そのようなイメージから、私は今回、都知事選には「生活者としての立ち位置とグローバルなキャリアを併せ持ち、猪瀬さんや東国原さんとは対極的なキャラクターを持つ女性」が望ましいのではないかと考え、それに当たる人を探しました。幸い、お一人おられたので、11月頭に急遽お会いしてお話してみましたが、残念ながらお子さんが小さいことなどから固辞されました。この時点で、私にとってベストの候補はいなくなり、あとは誰がベターかという話に移りました。

5)「勝つ」ことが困難でも、「勝てない可能性が高いが、オルタナティブを提示し、一定の票を獲得することで、異なる民意を示す価値のある選挙戦ができるか」という次元もあり得ます。理想的な形は作れなくても、意味のある選挙戦ができれば、それは都知事選に続く衆議院選挙、都議会議員選挙に向けて、オルタナティブを望む少なからぬ都民の存在を可視化できる(それは、都知事選を、次の総選挙で自分の政党の得票数増加に結びつけようといった個々の政党の思惑とは別のレベルの話として)。そのラインは、過去2回の選挙で次点候補が獲得した169万票だろうと思います。対戦候補によってはそれだけ取っても勝てないかもしれない。しかし、次点候補がそれ以上の票数を獲得したのは1975年以来ありません。オルタナティブを提示しつつ、それだけの票を獲得したとしたら、仮に選挙で勝つことができなくても、一定の民意を示したと言えるのではないか、と思います(もちろん「選挙なんだから勝たなくては意味がない」という言い方もありますが…)。

6)そのためには、いわゆる「左派」系の政党を支持している人の数では到底足りません。それ以外の100万人近い人たちが支持してくれないと、その数には至りません。これは、投票する人たちの5人に1人という気の遠くなるような数です。現在の社会運動の広がり具合、浸透具合を冷静に見るかぎり、その人たちが仮に現在の石原新党、橋下維新といった流れに何らかの違和感を抱いているとしても、同時に社会運動や市民活動にも違和感や拒否感を抱いている可能性は少なくない。「どちらを選ぶか」と問われれば「まあ、どっちもどっちだろうけど、まだ前者のほうに実績と勢いと展望があるのではないか」「後者では、東京がどうなってしまうかわからず不安だ」と感じる人も少なくないのではないかと推測します。危ないのは「石原新党、橋下維新に違和感を抱いている人は少なくないはずだ」という点に重きを置きすぎて、「自分たちに違和感を抱いている人も少なくない」という点を軽視したり忘れてしまうことです。

7)そうだとすると、目指すべき戦略は、①社会運動や市民活動に対する不安や不信感をいかに払拭し、②相手候補に対する違和感にいかに明確な言葉を提供できるか、ということになります。②は社会運動や市民活動が比較的ふだんからやっていることで、相対的な得意分野と言えるかもしれません。①は比較的ふだんから忘れられがちなことで、相対的な不得意分野です。しかも①と②はバーター関係にあり、どちらかに偏りすぎると他方を失いますから(先鋭化すれば広がりを失い、広げすぎれば無原則となる)、両者が得票数最大化に向けて絶妙のバランスを取るように工夫する必要があります。それは容易なことではありません。選挙の事務局内でも「ここが均衡点」の判断は分かれるでしょう。容易ではないから、今まで勝てませんでした。そして、①が不得手で②が得意なのだとすれば、当面力を入れるべきは、当然不得意分野である必要があります。

8)そのためには、自分たちにないものを補っていく布陣が必要です。実績不足については実績のある人を、不安に対しては安心感を与えられる人を、不信感に対しては自分たちと対極にいるような人でチームを構成し、応援団に配置できることが望ましい。もちろんそれも容易なことではありません。ないものを補ってくれるような人たちが、社会運動や市民活動に不安や不信感を抱いている可能性も少なくないからです。だからこそ、対話と調整の技法が必要です。それができなければ、結局選挙戦も広がりを欠くものになります。そして選挙が組織戦でもある以上、社会運動や市民活動に携わる一人ひとりがそれを身につけていかなければ、候補者だけにその広がりの獲得を期待しても、無理な話です。結局、草の根ベースで一人ひとりがそれをできるかどうかが、選挙でも問われることになります。その点は、社会運動や市民活動の日々の現場と変わりません。『ヒーローを待っていても世界は変わらない』ゆえんです。タテに突き抜けるような一点突破型の手法だけでいけるなら、そもそも苦労はありません。

9)諸般の事情から、今回の都知事選で私自身がそれを担うことは不可能になりました。当初から自分自身についてはきわめて消極的でしたが、現在では完全にゼロです。「諸般の事情」については、いずれご説明する機会も来るかもしれませんが、いま詳細を述べることは差し控えます。ご了承いただければ幸いです。

 最後に、蛇足ながら一つだけ。11月4日の朝日新聞紙上(東京都版)で、私のことについて以下のように報じられています。「『失敗した。石原氏がここで辞めるなら、東京にいた』。10月末、立候補を求めにきた脱原発運動の関係者に漏らしたという」。これは事実無根か、またはかなりの歪曲があると思います。そもそもカギ括弧付の一人称で紹介されていますが、朝日新聞からこの発言を確認されたことはありません。「脱原発運動の関係者」という匿名の者からの伝聞を私の第一人称の発言として紹介するのは初歩的なルール違反ではないかと思います。そもそも大阪でも活動を始めた目的は、私にとっては上述した都知事選で焦点化されている課題と同根であり、石原氏が辞任するまで、このタイミングで辞任する可能性があることを予期していなかったことはうかつだったと思っていますが、大阪に来たことを「失敗だった」とは考えていません。この点、当日のシンポジウムの記録が残っているようですので、自分自身の正確な発言内容を確認した上で、朝日新聞に対して、しかるべき対応を取りたいと思います。

http://yuasamakoto.blogspot.jp/2012/11/2012116.html
(転載終了)

(付記)
 このニュースをネットで調べている中で、kojitaken氏のブログで、橋下徹がやたら湯浅誠を持ち上げている事を知りました。何でも「内閣府参与時代に消費増税の必要性を認めるに至った湯浅氏は、他の左派とは違い、政治の現実が分かっている!」という理由で持ち上げているとの事。私は寧ろその点には一抹の不安を覚えつつも、それでも「石原亜流に勝てる候補となると湯浅氏ぐらいしかいない」から彼に期待していたので、橋下の湯浅ヨイショは私にとっては心外でしかありません。しかし、それを機に、この橋下という男の狡猾さを改めて知る事が出来ました。
 橋下が、右翼・新自由主義者であるにも関わらず保守派の受けが必ずしも良くないのは、脱原発などの「左派受け」する事もたまに人気取りで言うからであって、「そんな物は只の目眩ましにしか過ぎない」と今まで思っていました。しかし橋下の湯浅ヨイショや、この間の「石原人気にはあやかりたいが不人気なその他の『立ち上がれ』の年寄り連中は不要」発言を聞くにつけ、「こいつはどこまでも自分の損得勘定でしか動かない、徹底したエゴイストだ」という事を改めて思い知らされました。
 橋下の本質は権力迎合、勝ち組志向で、所詮は体制の補完物、寄生虫でしかないのですが、元々エゴイストなので、前述の本質を損なわない範囲内でなら、損得勘定で誰とでもくっつくのです。「君が代斉唱強制」「TPP推進」などの右翼・財界寄り政策も、それとは一見矛盾する「ベーシックインカム」や一時の「脱原発」などの一見「左派的」な政策も、橋下にとっては共に己の人気取りにしか過ぎず、そういう意味では何ら矛盾しないのです。世論が左右にぶれる度にそれに合わせ、その時流迎合の中で己の栄達を図る事しか考えていないのです。そんな奴による弱肉強食・弱い者虐めの右翼・新自由主義の政治に、いつまでも翻弄されて堪るか!
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4 コメント

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これが重要 (三浦小太郎)
2012-11-11 10:38:24
湯浅氏のコメントで最も重要なのはここだと思います。

「危ないのは「石原新党、橋下維新に違和感を抱いている人は少なくないはずだ」という点に重きを置きすぎて、「自分たちに違和感を抱いている人も少なくない」という点を軽視したり忘れてしまうことです。」

ここを本当によく認識しないと、左右いずれであれ「勝つ」ことはできない。勝つことがすべてではなくても、少なくとも支持を大々的に増やすことはできない。

自分たちのことからまず言いますと、はっきり言って私たち右は、暴力団と一緒、うるさい街宣をしている迷惑な人、軍国主義や差別主義者とみられてるわけじゃないですか。それは違うとかいう前に、そう見られているかもしれないという前提をまず考えないといけない。左派の方々もいろいろな誤解を受けているかもしれない、また、自分たちには石原氏とは違う欠点があるかもしれないという点をまず自己認識する必要があるのではないかと。
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小太ちゃん、視野狭すぎ!w (バッジ@ネオ・トロツキスト)
2012-11-12 11:13:46
前々回、「反石原」は230万票あったんだぜ!
だから、まず、前回の東の160万の内訳が問題になる(共産は前回も前々回も60万だったんだからね)。

それと、この間、反原発運動で掘り起こされた新しい層。
これは、民・自公系へはほとんど流れませんよ。

オレは、現時点でも宇都宮は150万以上固いと思いますね。
どうせ桝添・民主のラインは腰砕けかか空洞化するだろうから、宇都宮の相手は落ち目のそのまんまと猪瀬がどのぐらい「健闘」するのか?ということぐらいだと思いますよ。

ま、ご忠告は遠慮無く傾聴しておきますがw
返信する
miurakotarou@hotmail.com (三浦小太郎)
2012-11-14 10:06:11
個人的な予想ではずれるかもしれませんが、東国原氏は多分立候補しないような気もします。私が氏であれば出ないですね。まあ、タレントが政治家になるとしばしば判断を誤ることは多いから、彼の周りが都合のいい情報だけを吹き込めばわかりませんが・・

都知事選についてはバッジさんのおっしゃる通りかもしれませんが、とりあえず、私はそれほど楽観的に観ないほうがいいと考えています。もちろん、宇都宮氏が勝利する可能性は客観的には前回の浅野氏よりはるかに高い。しかし、ここでのバッジさんのおっしゃるとおりに行くかどうかは、私は周囲の意見を聴く範囲では疑問なだけです。まあ、あとは結果が出るまではコメントは明日以降この問題では控えます。候補者も出そろっているわけではないし。

確かに、私の視野が狭いことは認めます。やはり付き合っている都民の政治的傾向は保守派がほとんどですからね。私自身、宇都宮氏の、特に闇金に対する活動には敬意を表しているんです。その上での指摘のつもりでしたが、不要であったのならお目汚しでした。
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舌足らずでしたかねw (バッジ@ネオ・トロツキスト)
2012-11-15 00:04:11
小太ちゃんに「視野が狭い」なんて言ったのは、オレが楽観してるからでもないですよ。
党派的、反石原的な「基礎票」だけでは予想出来ないと言いたかったんです。
要は、前々回、前回の選挙での無党派層の動向やこの間の反原発の流れを折り込んだ見方しないと首長選挙のような非党派選択選挙は把握出来ないということです。
特に、小選挙制導入以降の選挙では、「戦略的投票」と呼ばれる動きが少数政党支持層や無党派の間に出て来ていますからね。「基礎票」の把握すら難しい時代になっている。

ただ、いずれにせよ都知事選は宇宮と猪瀬の対決が軸になると思いますよ。選挙構図は判り易くなった。笹川も松沢も桝添も泡沫候補でしかないでしょう。
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