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アフガン・イラク・北朝鮮と日本

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西成高校の反貧困教育(前編)

2013年03月31日 17時39分20秒 | 一人も自殺者の出ない世の中を
446 & SHINGO★西成 / 「生きる」っていうこと 【MV】


 またブログ更新の間が空いてしまいました。3月25日の夜にたまたま見たNHK総合番組の感動をどう伝えてよいか悩んでいるうちに、もう一週間近くも経ってしまったのです。いつまでも悩んでいても仕方ないので、思いつくまま書いていこうと思います。
 「泣き笑い 俺たちと先生の就職活動~西成高校・生きる力を育てる1年~」というのがその番組の名前です。舞台は大阪の府立西成高校。そこの3年2組の若い担任教師と落ちこぼれクラスメイトが就職内定に漕ぎ着けるまでの一年間を密着取材したドキュメンタリー番組です。

 西成高校は「あいりん地区」からも程遠くない所にあり、未解放や在日朝鮮人、母子家庭や生活保護世帯の生徒が数多く通う、いわゆる「ど底辺」の公立高校です。バイトで学費を稼ぐ生徒や授業料減免措置を受けながら通う生徒も多く、経済的困窮や学業不振などによる中退者も少なくありません。また、卒業生を受け入れてきた地元企業の方でも、長引く不況の影響で採用枠を絞らざるを得なくなっており、もはや高校を卒業しても簡単には就職できない世の中となってしまいました。
 その中で、西成高校では「格差に挑み、生徒の希望と誇りを育む」(同校HP)教育方針を掲げ、履歴書の書き方や求人票の見方、就職面接の受け方を徹底的に指導してきました。

 番組ではとりわけ二人の生徒の成長する姿を取り上げていました。一人はK君。彼はクラスの人気者ですが、母子家庭で、母親がかまってやれない後ろめたさから甘やかされて育ったせいか、遅刻や保健室登校からなかなか抜け出せません。一度は心を入れ替えて自分から頭を丸刈りにしてみせたものの、その後も遅刻は相変わらずで担任から「何の為に頭を丸めたんや!」と怒られ、大事な面接の日にもボロボロの学生ズボンで登校し、進路指導の教師から「全然心構えがなってないやないか!」とどやされる日々が続きます。その為、幾ら面接を受けても内定が貰えず、最期の土壇場で心を入れ替えてようやく内定に漕ぎ着けます。
 もう一人はUさん。彼氏の子を身ごもってしまったものの、高校生ながら自分で子供を生み育てる事を決意し、今は彼氏の家で家事・育児もこなし、子供を保育園に送り迎えしながら通学しています。大人びた性格故に、今までたびたび虐めも受けてきました。彼女は育児の事もあり一旦は就職を諦めかけます。しかし、教師から24時間保育の施設を紹介して貰う事で、介護の仕事に見事就く事が出来ました。

 この番組を見てまず感じたのが、西成高校の先生は生徒の表面的なマナーの悪さにいちいち目くじらを立てていない事です。高校HPに「スカートの下にジャージ着用禁止」の規定があっても、番組ではそういう格好の女子生徒が、椅子に立て肘をつきながら、それでも先生の意見に真剣に耳を傾けている姿が印象的でした。この光景と言い、先のUさんの例と言い、安倍政権の道徳教科復活にエールを送るような保守派には到底受け入れられない姿です。しかし、西成の現実の前には、空虚な道徳論・精神論なぞ何の役にも立たない。
 西成高校の先生方は、そんな事にはいちいち目くじらを立てず、しかし言うべき所では生徒を思いっきり叱り付けています。また、連日繰り返される企業面接の練習も、見ようによっては調教とも取れなくはない。でも、それが調教ではなく人間教育として立派に機能しているのも、教師が生徒の個々の生活の崩れだけに目を奪われる事なく、その裏にある生活の貧困にも思いやりながら、決して生徒を甘やかせず、一人の人間として見る中で、場合によっては必要な援助も与えてきたからではないでしょうか。

 西成高校は、反貧困学習でも有名な所です。遅刻などに対しては厳しく対処し、企業面接の練習を繰り返す一方で、例えば労働基準法の内容についても、通り一遍の知識ではなく、解雇されたらどうすれば良いかを、実際にバイトを解雇された生徒の事例を教材に取り入れる中で、「生徒に生きていく力をつけさせる」教育を実践してきました。昨今、ともすれば「内定を得る為にどう面接の空気を読むか」「如何に即戦力として企業側に気に入られる人材となるか」という視点ばかりが注目されがちですが、ここではただ杓子定規に「ルールを守れ」と言うだけでなく、「間違ったルールは是正し、より良いものに変えていく」事もきちんと教えています。
 その上で、遅刻防止・時間厳守などの社会人として必要なルールもきちんと教えている。だから、地域社会や地元企業からも支持され、弱肉強食の橋下市政下でも、少なくとも今の所は区長も蔑ろには出来ない存在となっている。この西成高校の先生の様な経営者や政治家が一人でも多くなれば、日本は確実に良くなる。これこそが本当の教育再生・政治再生ではないか。私も出来るならそんな職場で働きたい。それを一番感じました。(後編に続く)
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